中国の景気減速止まらず 統計、歴史的低水準の項目続々

中国の国家統計局が 13 日発表した 10 月の経済統計によると、生産や消費、投資の伸びが軒並み、鈍化を示した。 2008 年のリーマン・ショック時と比べても歴史的な低水準となっている項目が多く、中国の景気の減速は歯止めのかからない様相だ。

10 月は鉱工業生産の伸びが 7.7% となって 9 月より 0.3 ポイント鈍化し、リーマン時以来、5 年半ぶりの低水準だった 8 月 (6.9%) に続いて 8% を割り込んだ。 消費の伸びは 11.5% となってリーマン時の伸びも下回り、06 年 2 月以来の低さとなった。 投資の減速も深刻だ。 固定資産投資は 1 - 10 月に 15.9% 増で 1 - 9 月よりも 0.2 ポイント減速。 1 月からの累計のみ発表されるため単純な比較は難しいが、01 年以来、約 13 年ぶりの低水準だ。 不動産投資は 1 - 10 月に 12.4% 増と 0.1 ポイント減速し、09 年 1 - 7 月以来の低い伸びとなっている。

中国の景気は、今春から広がった不動産価格の下落に引きずられ、落ち込みが鮮明になっている。 政権は大規模な経済対策を否定してきたが、国家発展改革委員会が 10 月以降、続けざまに鉄道や空港の建設プロジェクトを認可するなど、景気刺激をねらった政策も出始めている。 (北京 = 斎藤徳彦、asahi = 11-13-14)


ノーベル賞経済学者、中国金融に "最終警告" 「日本は心配しないといけない」

ノーベル経済学賞受賞者で米プリンストン大教授のポール・クルーグマン氏 (61) の来日講演での発言が話題となっている。 アベノミクスへの支持を表明する一方、消費増税への懸念を示したところ、タイミングよく日銀はその直後に追加金融緩和を決めた。 そのクルーグマン氏が最も心配しているというのが中国経済の行方だ。 成長率の低下や債務の上昇など状況は深刻で、「ここから数年の間、世界経済にとってリスクになる」と警告する。

「中国のことを本当に心配している。 当然、日本のみなさんはもっと心配しないといけない。」 講演でこう強調したクルーグマン氏は、1982 年にレーガン政権で大統領経済諮問委員会の上級エコノミストを務めたほか、世界銀行、EC 委員会の経済コンサルタントを歴任。 2008 年には国際貿易理論でノーベル経済学賞を受賞した。 米ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストも務めるなど世界の経済状況にも積極的に発言し、影響力も大きい。

10 月 31 日に日立製作所が東京都内で開いたフォーラムで、「イノベーション(革新)」をテーマにした特別講演を行ったクルーグマン氏は、アベノミクスをはじめ、米国や欧州、新興国など世界の経済状況について縦横無尽に語った。 そのなかで「中国の抱える問題はイノベーションや技術ではなく、マクロ経済の問題だ」と指摘、「消費や内需が弱く、巨額の貿易黒字や投資で景気を下支えしてきたが、もはや可能ではない。 世界経済の緊張の源になっている。」と分析した。

7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) 成長率も 7.3% と、リーマン・ショックの影響が残っていた 09 年 1 - 3 月期以来の低水準になったが、統計の信憑性そのものに疑問が持たれており、実際の成長率は 3 - 4% 程度にまで落ち込んだとの見方もある。 「中国の投資額は国内総生産 (GDP) の 48 - 49% というばかげた水準となっている。 年率 10% 成長ならこれだけの投資を維持することも可能だが、成長率はどんどん下がっており、債務水準が上昇している」とクルーグマン氏は懸念を示す。

中国の経済不安が噴出しているのが不動産だ。 9 月の新築住宅価格指数が主要 70 都市のうち 69 都市で前月より下落、上昇した都市はゼロだった。 政府は住宅市況を下支えするため、住宅ローンの融資条件を緩和。 各地の地方政府も、バブル抑制のために実施していた住宅購入制限策を相次いで取りやめた。 不動産開発の資金は主に「影の銀行(シャドーバンキング)」で調達されており、金融機関の信用リスクも拡大している。

クルーグマン氏は続けた。 「(不動産バブルが崩壊した) 1980 年代後半の日本に似ているが、もっと悪いかもしれない。 今後、中国は大きな調整が必要になってくるが、うまく着地できるか。 深刻な状況になっており、心を痛めている。 これから数年、世界経済にとって中国はリスクになる。」 クルーグマン氏は日本経済にも精通しており、1990 年代からデフレ脱却策としてインフレ目標政策の導入を提言するなど、アベノミクスの源流ともいえる理論の持ち主でもある。

講演でも当時を振り返り、「日銀はデフレを阻止しようとせず、97 年に政府が消費税を上げたのは重大な過ちだった。 その批判は間違っていなかったが、現在同じことが欧米諸国でも展開されている。」と語った。 デフレを放置した日銀を「(責任者たる総裁は)銃殺に処すべきだ」と批判したこともある同氏だが、この日は「日本に謝りたい」という表現を使って現在の欧米の金融当局者のていたらくぶりを批判した。

現在のアベノミクスについて「革新的で、政策のイノベーションとして成功例だ」と支持を表明したうえで、「日銀はインフレ目標を 2% としているが、もっと高い方がよい」と提言した。 その一方で、不安要因と指摘したのが消費増税だ。 「増税延期を願っていたが、(4 月に)消費税を上げたことで経済の回復は大きな打撃を受けた。 さらなる政府のイノベーションが必要で、型破りな考えを政府は取るべきだ。 日本がリーダーとして模範になることを期待している。」とクルーグマン氏は締めくくった。

日銀が追加緩和策を公表したのは講演終了から約 2 時間 40 分後のことだった。 中国経済のクラッシュ確率が高まる中、日本の役割はますます大きくなっている。 (zakzak = 11-5-14)


中国経済の減速に潜む莫大なリスク 世界経済に甚大な影響

金融引き締め後の軟着陸は可能か

中国政府は成長を持続可能な水準まで減速しようと努めている。 内需主導でサービス業中心型の経済へ移行する過程で、より緩やかな成長へ向かうことは不可避であり、望ましい。 しかしそれに伴う課題は計り知れないほど大きく、ソフトランディング(インフレを伴わない経済成長抑制)は簡単ではない。

中国では、多くの地域で大気汚染や水不足が深刻化しているのに、消費を拡大し生活の質を向上させねばならない。 債務を GDP の 200% を超える水準まで急増させた国が、大投資プロジェクトの破綻を広範囲に引き起こすことなく、成長を徐々に抑制していくのは容易ではない。 十分な資力を持つ中国でさえ、リーマン・ブラザーズ級の倒産が 1 つ起こればパニックに陥る可能性は否定できない。

不景気の増幅は金融引き締めがきっかけ

過去の多くの不景気は、金融引き締めがきっかけで、増幅されてきた。 1990 年代にグリーンスパン元 FRB (米連邦準備制度理事会)議長が「マエストロ」と呼ばれたのは、インフレの抑制と力強い成長の持続を同時に成し遂げたからだ。 公式発表の市場成長予測で判断するなら、リスクは小さいとの結論に行き着く。 中国の公式な目標成長率は 7.5% だ。 7% を予測する人は「弱気筋」と見なされ、6.5% 予測は異常とされてしまう。

では現状はどうなのか。 大部分の証拠が、中国経済が大幅に減速したことを示している。 電力需要の年間伸び率は、2014 年の 1 月から 8 月までで 4% を下回るなど、大幅に低下した。 2008 年の金融危機を除くと、記録したことのない低さだ。 電力需要の減少によって、国内の石炭産業が厳しい不況に陥り、多くの炭鉱が事実上破産した。 住宅価格の低下も、景気の低迷を示す典型的な指標だ。 ただし、主な住宅価格指標は、提示価格を評価するだけで、実際の販売価格を評価の対象としていないため、低迷の度合いを正確に評価するのは難しい。

中国の景気減速は、オーストラリア、インドネシア、ブラジルなど、1 次産品の輸出国にも影響を与えている。 ドイツやスイスなど、資本集約財に対する中国の旺盛な需要を満たすことに軸足を置く国々についても、同じことがいえる。 残念ながら、中国のデータは、先進国の信頼性には程遠い。 電力使用量は通常、経済成長を測る最も信頼性の高い指標の 1 つだが、経済がサービス業へと重心を移し、セメントや鉄鋼生産など、エネルギー集約型産業の多くが減速する状況では、電力需要低迷は経済再均衡化の兆しにすぎない可能性も十分にありうる。

住宅価格の下落も、短期間に倍増以上に高騰した後の現象だ。 中国が穏当で健全な修正局面にあるのか、明白な破綻に直面しているのか、判断は難しい。 中国の指導部が、13 年度の第 3 回全体会議で承認された市場志向の改革の大半を実現しようと躍起になっているのは明らかだ。 習近平主席は積極的に汚職防止キャンペーンを推進しているが、これは経済自由化を見据えて政治的抵抗力をつけるためだと考えられる。

改革努力自体が引き金になりかねない

その一方で、中国の汚職は従来、経済をマヒさせる要因というよりも経済に課された一種の負担金であり、物事のルールを民主的に改革しようとすれば、その改革努力自体が引き金となって生産高を急減させかねない、という見方も成り立つ。 中国政府は汚職を撲滅し、公害を減らし、市場を自由化して長期的な成長を確保しつつ、ソフトランディングできるだろうか。 危険度は高い。 もし中国の成長が行き詰まれば、米国の標準的な不景気が引き起こす悪影響よりも、はるかに甚大な悪影響を世界中に及ぼしかねない。

中国の成長率は極めて高い水準にとどまっており、下落する余地はかなり大きい。 西洋諸国では、輸出と株価が潜在的に非常に大きな脆弱性を抱えている。 米国と中国が引き締め政策を取っているが、FRB の策のほうが理解しやすい。 しかしそれは必ずしも、米国の動向のほうが中国より重要だというわけではない。 (ケネス・ロゴフ・ハーバード大学教授、東洋経済 = 10-25-14)


中国の景気減速、FRB 悩ます可能性も 価格下落

米国のインフレ動向をめぐっては、中国の景気減速が下押し圧力をもたらしており、今後もこうした影響が強まる公算は大きい。 最近では市場予想を下回る経済指標が相次いだことから、中国の成長率予想を見直す動きが出ている。 先週には世界銀行が中国の国内総生産 (GDP) 成長率見通しを、今年は 7.6% から 7.4%、2015 年は 7.5% から 7.2% へとそれぞれ下方修正した。 さらに低い民間予想も多い。

中国の景気鈍化は米連邦準備制度理事会 (FRB) をいら立たせるような価格下落の前触れになる可能性もある。 FRB のインフレ指標はすでに目標である 2% を割り込んでいる上、経済には停滞感が強く、リセッション(景気後退)に陥ればデフレに至るリスクも高まる。

中国の減速はここ数カ月間で商品価格が下落した大きな理由になっている。 アルミニウムなど中国からの原材料は、最近までは内需に吸収されていたものが現在は輸出へと回っており、国際価格を押し下げている。 長年にわたる中国のエネルギー需要の増加はシェール開発など新たな石油資源の開発へとつながったほか、先進国における燃料消費効率の向上をけん引した。 しかし、中国の景気が鈍化した現在、過剰供給の懸念もあって原油価格は急落している。

特に原油価格の下げはガソリン価格を通じて今後何カ月かにわたって消費者物価を押し下げる。 また、製造費や輸送費の減少につれて価格上昇を抑える力は他の物品へと広がる見込みだ。 さらに、中国の減速がインフレを継続的に押し下げる要因は米国が輸入する中国製品の価格となる可能性もある。 中国製品の価格には低下の兆しが見られる。 米労働省は 10 日、中国輸入価格指数は 9 月に前月比 0.1% 低下し、前年同月比では 0.1% 上昇したと発表した。 中国が急激な景気減速を回避するために輸出を進めれば、米国の輸入価格は一段と弱含む可能性もある。

中国は目標 GDP 成長率を 7.5% 前後としているが、政権指導部は来年の成長がこれを若干下回ることを許容する方針だ。 社会情勢の不安定化を免れるために、指導部は過度な減速を回避するよう万全を期するだろう。 中国の低インフレは自律的成長をけん引するには消費需要が不十分であることを示しており、中国は経済の伸びを保つために輸出に頼る可能性がある。 しかし、輸出主導の成長は過去ほど容易に成し遂げられない見込みだ。

中国は 2000 年代に輸出国としての存在感を大幅に高めた。 米国の輸入製造品、機械・輸送機器に占める中国の比率は 1999 年の 10.4% から 2009 年には 29.2% に上昇した。 しかし、その後の輸入は頭打ちとなり、昨年には同比率が 28.8% に低下した。 この一因は金融危機にある。 また、2011 年の東日本大震災や津波、タイの洪水などの災害を受けて長いサプライチェーンの体制を見直す企業も増えた。 また賃金上昇によって中国における人件費面のメリットは薄れた。 さらに衣服からパソコンまで多くの品目で中国製輸入品は飽和点に近づきつつあるが、残る品目は参入がはるかに難しいものだ。

これは米国や他国での中国製輸入品のシェアに上昇余地がないことを意味するものではない。 しかし、これを達成するには価格値下げが必要になることも考えられる。 FRBが 2% インフレという目標を達成する時期は一段と遠のく様相を示している。 (Justin Lahart、The Wall Street Journal = 10-11-14)


減速する中国経済、健全な発展の道に向かう

世界銀行が最近、中国経済成長率予測値を小幅に下方修正したことを受け、一部の西側学者は再度中国経済悲観論を持ち出している。 実のところ一時の減速はまさしく中国経済がさらに健全で持続可能な発展モデルにまい進する正確なルートで、世界経済にさらに多くのチャンスをもたらしている。 国際通貨基金 (IMF) と世界銀行によると、中国政府は経済ハードランディング防止に十分な能力と措置がある一方、世界も中国経済減速とモデル転換の常態化に慣れているはずで、何でもないことに驚いて慌て恐れる必要がない。

中国経済は高度成長段階から成長の効率、低コスト、持続可能性をさらに重視し、モデル転換に力点を切り替える中高度成長期に入っており、積極的なモデル転換と政府からのコントロールによる減速は常態化している。 世界銀行によると、地方債制御、シャドーバンキング抑制、生産能力過剰対応、汚染整備における中国政府の措置によって、中国経済は持続可能な発展の道に入っている。 多くの世界経済体は、成長維持を最優先課題にする背景のもとで、中国が経済運行を合理的な区間に据え置くかわりに構造調整と改革に力を入れることは、下振れリスクが高まる世界経済の安定化にプラスである。

IMF により公表されたばかりの「世界経済見通し」によると、金融危機を引き起こした従来の問題が徹底的に解決されておらず、人口高齢化と生産性伸び悩みを受けて潜在的経済成長率低下が表面化し、一部の先進国が経済停滞リスクに直面している。 世界銀行のカウシィク・バス上級副総裁兼チーフエコノミストによると、中国経済モデル転換は喜ばしい成果を収めており、サービス業の経済全体に占める割合の拡大にしたがってたとえ高い成長率を維持しないとしても就業増加と社会安定を確保できる。

中国は依然として世界経済成長をけん引する動力源で、多くの国も中国の経済モデル転換から恩恵を受けている。 アメリカ商務省のステファン・セリグ商務次官によると、中国経済が内需牽引に切り替わっていくことはアメリカの企業に大きなビジネスチャンスを生み出し、アメリカ政府は中米貿易の先行きに楽観的である。 2007 年以来、中国はアメリカの 3 位の商品輸出市場となっており、メキシコとカナダに次ぐだけだ。 中国は投資と輸出に対する依存度を軽減する一方、消費のけん引役を強化する背景のもとで海外に渡航する中国人観光客は大幅増、世界各国に大きな恩恵をもたらしている。

経済モデル転換はどの経済体にとっても簡単なことではなく、中国経済構造調整は投資が多すぎて消費が軟調であるとの問題に悩むほかに、サービス業の占める割合は先進国の平均レベルを下回っているため、モデル転換は大きな潜在力がある。 経済減速、構造調整、モデル転換が常態化する背景のもとで、世界市場はさらに中国から恩恵を分かち合えると見られる。(中国・新華網 = 10-10-14)


不動産経営者の夜逃げラッシュが招く

中国経済の崩壊

今年 6 月 27 日に掲載した『破滅へ向かう中国経済 四面楚歌の習近平 政治介入する軍』では、中国における不動産バブルの崩壊がすでに始まったことを実例に基づいて克明に記述したが、それ以降の数カ月間で崩壊は確実に進んでいる模様である。

「早く売り捌いた方が良い」

8 月 1 日の中国指数研究院の発表によれば、今年 7 月の全国 100 都市の新築住宅販売価格が前月比で 0.81% 下落し、4 月、5 月以来 3 カ月連続の下落となっているという。 そして 9 月 19 日に中国国家統計局が公表した数字を見ると、8 月に全国の主要都市の 70 都市のうち、不動産価格が下落したのは 68 都市にのぼる。

その中で、たとえば 8 月 25 日に新華通信社が配信した記事によると、全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの不毛な競争が既に始まったという。 開発業者が競ってなりふり構わず価格競争に走れば、それはすなわち不動産価格総崩れの第一歩であることは誰もが知るところであろう。

8 月 23 日、山東省済南市にある「恒生望山」という分譲物件が半月内に 25% 程度の値下げを断行したことで、値下げ以前の購買者が抗議デモを起こした。 9 月 3 日には、広東省珠海市のある分譲物件は値段が一夜にして 4 分の 1 も急落したとのニュースがあった。 そして 9 月 15 日、大都会の北京市では一部の不動産物件で 30% 以上の値下げが断行されたと報じられている。 この一連の動きは、「総崩れ」が既に目の前に迫ってきていることの前兆であろう。

こうした中で、不動産バブルの崩壊は不可避とする声があちこちから聞こえてきた。 9 月 3 日、新華指数公司首席経済学者の金岩石氏は「中国の 9 割の都会で不動産バブルが崩壊する」と警告した。 また 11 日には、中国最大の自動車ガラス製造企業・福躍硝子集団のオーナー会長曹徳旺氏は、香港フェニックステレビの番組で「不動産バブルの崩壊は時間の問題だ」と言って投機のために不動産を持った人に「早く売り捌いた方が良い」と薦めた。 そして 27 日、高名な経済学者で北京天則経済研究所理事長の茅于軾氏は、「中国の不動産価格は今後、半分以下に落ちるであろう」と断言した。

中国国内の実状をよく知る人々のリアリティある発言からも、どうやら史上最大規模の不動産バブルの崩壊はいよいよ、目の前の現実となってきている模様である。

不動産バブル崩壊で中国経済はどうなるか

不動産バブル崩壊の最大の原因は、今年 2 月 26 日に掲載した『既に始まった中国史上最大の不動産バブル崩壊劇』で指摘した通りのものだ。 要するに、2000 年代に入ってからこの十数年間、中国政府はずっと、お札をバンバン刷って金融緩和を行い、民間の不動産投資の拡大を刺激するような方策で経済の高度成長を支えてきた。 しかしこのような節度のない経済政策の結果、市場に流通する貨幣が溢れすぎて「流動性過剰」という現象が生み出された一方、過剰になった貨幣の多くは不動産投資に流れ込んで価格を高騰させてバブルを膨らませた。

市場に流通している貨幣が溢れすぎると、それが当然インフレの発生 = 物価の高騰を招くこととなり、食品を中心とした物価の高騰が目の前の現実となると、それが原因で社会的不安が高まることを危惧した中国政府は一転、貨幣の供給を抑制する金融引き締め政策を実施した。 そして 2011 年からの金融引き締めの中で、不動産開発業者に対する銀行からの融資が激減する一方、多くの商業銀行は 2013 年の秋頃から、個人住宅ローンに対する貸し出しを停止するという断固たる措置に踏み切った。

そこから始まったのがすなわち、不動産物価の販売不振 → 開発業者の資金繰り難 → 不動産在庫の値下げ処分 → 価格の下落という悪循環であるが、そのたどり着くところはすなわち不動産価格の総崩れ、要するに不動産バブルの崩壊である。

問題は、不動産バフルが崩壊した後に中国経済がどうなるのかであるが、現在、全国の不動産投資の GDP(国内総生産)に対する貢献度が 16% にも達しているから、バブル崩壊に伴う不動産投資の激減は当然、GDP の大いなる損失、すなわち経済成長のさらなる減速に繋がるに違いない。 しかも、バブル崩壊の中で多くの富裕層・中産階級が財産を失った結果、成長を支える内需はますます冷え込み、経済の凋落によりいっそうの拍車をかけることとなろう。 しかし問題の深刻さは、それだけにとどまらない。 不動産バブルの崩壊に伴ってその次にやってくるのは、全国規模の金融危機の発生なのである。

「邯鄲恐慌」で「経営者夜逃げラッシュ」

不動産バブルの崩壊に伴う金融危機の発生、それは一体どういうことなのか。 実はこの原稿を書いている 9 月 29 日現在、中国河北省の邯鄲市という中規模都市で吹き荒れている「邯鄲恐慌」の嵐が、この事情を端的に物語っている。 今、全国のマスコミを騒がしている「邯鄲恐慌」は、今年 7 月下旬、邯鄲市内最大の不動産開発業者である「金世紀房地産公司」で起きた経営者の夜逃げ事件から始まった。

たとえば前述の金世紀房地産公司の場合、抱えている 29 億元の借金のうち、実は 15 億元ほどが闇金融からの借金である。 それ以外の夜逃げした開発業者たちも多かれ少なかれ、闇金融からカネを借りていた。 地元銀行による試算では、彼らの借金総額は約 92 億元(約 1,700 億円相当)に上っているという。 しかも、邯鄲の闇金融では、その年間利息は一律 30% という吃驚仰天の高い利息がついているのである。

開発業者たちがこれほどの高い金利で闇金融から借金しなければならない最大の理由は、やはり前述のように、政府による金融引き締めの中で正規の銀行がリスクの高い不動産開発に融資しなくなったことにある。 正規の銀行がカネを貸してくれないため、やむを得ず闇金融に手を出したわけである。

しかし問題は、闇金融からあれほどの高い金利で資金を借りると、開発業者たちに残される唯一の道はすなわち、不動産価格が暴騰し続け、年間利息 30% の借金を返済できるほどの儲けを得ることである。 暴利があるうちは何とかやっていけるが、一旦不動産が売れなくなると、巨額の負債を抱えて高い利息の返済に追われる開発業者たちが直ちに悲鳴を上げることなる。 その際、たとえば手持ちの不動産在庫を値下げして売り捌いたとしても、闇金融からの借金とその高い利息の返済に足りることはない。 だとすれば、いっそのこと、借金そのものを踏み倒して夜逃げするのが最善策となる。

一般市民も抗議行動に

このように邯鄲市の不動産開発業者の夜逃げラッシュは始まったわけであるが、彼らに大量の資金を貸している闇金融にとって致命的な打撃となろう。 しかも、闇金融が融資に使う資金の多くは一般市民から調達したものが多いため、貸し出しのカネが踏み倒されると、闇金融に出資している個人投資家たちはいっせいに財産を失うこととなる。

たとえば邯鄲の場合、闇金融に出資している民間人は市民の 1 割以上であるとの試算もある。 金世紀公司から始まった開発業者たちの夜逃げラッシュは当然、邯鄲市全体に未曾有の大混乱を引き起こした。 一夜にして全財産あるいはその大半を失った一般市民たちは連日のように抗議行動を起こし、市政府を包囲して「金を返せ」を合言葉に暴動寸前の大騒ぎを演じてみせた。 邯鄲市そのものは今、世紀末のような騒然とした雰囲気である。

その一方、夜逃げした開発業者たちが正規の銀行からの借金まで踏み倒しているため、各商業銀行は大変苦しい立場となり、これまでよりいっそうの貸し渋りに走っていることは言うまでもない。 そしてそれはまた、不動産市場のいっそうの低迷と開発業者たちのさらなる資金難を招くこととなり、今後夜逃げラッシュはますます盛んになることが予想される。 そうすると、正規の金融も闇の金融と共によりいっそうの苦境となって、破綻への道を一直線に走ることになる。 つまり、不動産バブルの崩壊の後にやってくるのは金融破綻であることを、邯鄲の実例がわれわれに教えているのである。

「影の銀行」の破綻で経済破綻は免れず

もちろん、邯鄲で起きていることは邯鄲だけの問題ではないはずだ。 今年 3 月 26 日、中国新華通信社傘下の『経済参考報』は、中国の金融事情に関する記事を掲載した。 金融市場で大きなシェアを占める「信託商品」は、今年から来年にかけて返済期のピークに達し、約 5 兆元(約 82 兆円)程度の貸し出しが返済期限を迎えることになるという。

ここでいう「信託商品」とは、正規の金融機関以外の信託会社が個人から資金を預かって企業や開発プロジェクトに投資するものであるが、高い利回りと引き換えに元金の保証はまったくないリスクの高い金融商品。 中国の悪名高いシャドーバンキング(影の銀行)の中核的存在をなすのはまさにこれだ。

問題は、返済期を迎えるこの 5 兆元規模の信託投資がきちんと返ってくるかどうかである。 申銀万国証券研究所という国内大手研究機関が出した数字では、全国の信託投資の約 52% が不動産開発業に投じられているという。 そう、邯鄲の実例でも示されているように、シャドーバンキングという名の闇金融の主な融資対象の一つは結局不動産開発業者なのである。 そしてこれこそが、信託投資だけでなく、中国経済全体にとっての致命傷となる問題なのだ。

本稿の冒頭からも克明に記してきたように、今の中国で、不動産開発業はまさに風前の灯火となっている。 バブルが崩壊して多くの不動産開発業者が倒産に追い込まれたり深刻な資金難に陥ったりすると、信託会社が彼らに貸し出している超大規模の信託投資が踏み倒されるのは必至である。 邯鄲ですでに起きていることがそれを実証している。

そして前述のように、信託投資の不動産業への貸し出しはその融資総額の約半分にも達しており、今後広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行はそのまま、信託投資の破綻を意味する。 それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招くこととなろう。

しかし融資規模が中国の国内総生産の 4 割以上にも相当する「影の銀行」が破綻すれば、経済全体の破綻はもはや避けられない。 中国経済はただでさえ失速している最中であるが、今後において、不動産バブルの崩壊とそれに伴う金融の破綻という二つの致命的な追い打ちがいっせいにかけられると、中国経済は確実に「死期」を迎えることとなろう。 (石 平 = 中国問題・日中問題評論家、Wedge Infinity = 10-1-14)


中国、工業生産低水準化 背景に構造改革優先

【北京・井出晋平】 中国国家統計局が 13 日発表した8月の工業生産は、前年同月比 6.9% 増とリーマン・ショック後の 2008 年 12 月(5.7% 増)以来、5 年 8 カ月ぶりの低い水準となった。 背景には、不動産市況の低迷に加えて中国政府が経済の構造改革を進めていることがある。

李克強首相は今月 10 日の演説で、「経済発展方法の転換を加速させ、中国経済をグレードアップさせなければならない」と、大規模な景気対策は行わず、構造改革を優先する姿勢を強調した。 今年 1 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の実質成長率は、前年同期比 7.4% と今年の政府目標 (7.5%) を下回ったが、「少し上回るのも下回るのも合理的な範囲内だ」として、目標達成にこだわらない姿勢も示した。

李首相の自信の背景には、雇用や物価の安定がある。 中国政府は過剰生産の解消や過剰投資抑制など改革を進めているが、今年の都市部の新規就業者数は 8 月までに 970 万人に達しており、政府目標(1,000 万人)に迫っている。 物価上昇率も 2% 台で推移し、インフレ懸念も遠のいている。 ただ、欧州経済の低迷を受けて欧州向け輸出が伸び悩むなど先行き不透明感は増しており、追加の景気対策を求める声が高まる可能性もある。 成長減速に耐えて、どこまで改革を進められるか。 李首相の手腕に改めて注目が集まりそうだ。 (mainichi = 9-14-14)


中国景気、減速鮮明 住宅販売不振が波及

【北京 = 大越匡洋】 8 月の工業生産の伸びが 5 年 8 カ月ぶりの低水準に沈み、中国景気の減速が鮮明になった。 全国的な住宅販売の不振の余波が広がり、企業の生産活動の停滞を招いたためだ。 中国政府は「景気は安定圏」との認識だが、不透明感は増しており、景気のてこ入れを求める声が強まりそうだ。

「納得できない。 差額を補償すべきだ。」 9 月初め、大手不動産会社の重慶市内のオフィスに興奮した人々が詰めかけた。 同社がこれまで 1 平方メートル当たり 1 万元(約 17 万円)強で販売していたマンションを一気に 2 千 - 3 千元も値下げしたことがきっかけだ。 先に購入を決めた顧客が不満を爆発させるといった騒ぎは各地で頻発している。

鋼材価格「白菜並み」

不動産会社からすれば値下げ以外に販売不振の打開策が見当たらない。 販売額は落ち込みに歯止めがかからず、新規投資もさえない。 1 - 8 月の不動産開発投資は 13.2% 増と 1 - 7 月から伸びが 0.5 ポイント縮み、新築住宅価格の下落は主要都市の 9 割に広がった。 住宅市場を見舞った「冷夏」は、景気全体を冷やし始めている。 中国政府による下支え策への期待から製造業の景況感指数は 7 月まで改善が続いていたが、8 月は新規受注の鈍さなどから半年ぶりに低下に転じた。

景気の「体温」ともいえる価格は低水準が続く。 調査会社 CEIC によると、1994 年 12 月の水準を 100 とする中国の鋼材価格指数は昨年 11 月半ばに 100 を超えて以来、一貫して低下し、今年 9 月初めに 89 まで落ち込んだ。 マンション建設などに使う異形棒鋼(鉄筋)の取引価格は 1 年間で 15% 下落し、500 グラム当たりに換算した価格は約 1.5 元で「白菜並みの低価格(中国メディア)」と報じられる。

企業収益を圧迫

企業間の取引価格の全体像を示す卸売物価指数は 8 月まで 30 カ月連続で前年水準を下回り、下落幅が 5 カ月ぶりに拡大した。 価格の下落と生産の鈍化の両面から、企業収益は圧迫されている。 小刻みに政策を繰り出す中国政府への信頼感もあり、今年の成長率が 7% を割り込むような急激な悪化を予想する声はほとんどない。 海外経済の足取りは不確かで、中国景気は政策頼みの状態がしばらく続きそうだ。 (nikkei =9^14-14)


中国のリコノミクスは幻だったのか

[天津] 1 年前、中国の李克強首相は市場主義経済の旗手のように見えた。 それが今では傍観者の様相を帯びている。 資本主義改革、そして外国人投資家の優先順位は下がってしまった。 10 日に中国で開かれた世界経済フォーラム (WEF) の夏季ダボス会議における李首相の講演が、そうしたトーンを決定付けた。 昨年の同じ会議で首相は、資本管理の緩和から銀行預金保険まで、金融改革のリストを並べ立てた。 それが今年は中身が空っぽの美辞麗句ばかり。 「イノベーション」という単語が 34 回も登場した。

懸念すべきは、市場改革が脇に追いやられていることだ。 過去最大を記録した 8 月の貿易黒字を、あるいは 4 兆ドルを超えてなお増大中の外貨準備を見るだけでよい。 いずれも管理為替制度と資本管理を反映した数字である。 人民元は 1 月の高値以来、実質実効レートで 6% 下落した。 金融商品のデフォルトを看過するとか、非戦略的国有企業の管理を放棄するなど、その他の面でも進展の兆しは見えない。

市場改革が減衰するとともに、李首相の影響力も衰えた。 改革を管轄するために設立された共産党の「指導グループ」は、習近平総書記(国家主席)がトップに就いている。 これまではトップ 2 人体制をとり、経済問題は少なくとも表面上、首相の裁量に任せる傾向があったが、そうした体制からの決別となる。 李首相が 1 年前にぶち上げた上海自由貿易試験区 (FTZ) はほとんど成果を収めていない。

一方、小粒な改革は小粒なままにとどまっている。 李首相は昨年 3 月以来、600 の行政手続きを撤廃、あるいは他に委任したと誇らしげに発表した。 しかし未だに新支店を開けず、中国の総銀行資産のわずか 2% にとどまる外資系銀行にしてみれば慰めにもならない。 開始を間近に控えた上海・香港間の株式取引計画は進展しているが、厳しい取引枠が課せられており、資金を呼び込むより流出させる効果の方が大きいかもしれない。

もっとも、李首相の時代が今後到来する可能性は残っている。 汚職摘発、そして中国の主要議題となっている談合をめぐる捜査も重要だ。 市場管理の緩和を早まると事態をさらに悪化させかねない。 とはいえ熱狂は冷めつつある。 「リコノミクス」の時代到来を歓迎した投資家は、それが幻だったことを嘆いていることだろう。 (John Foley、Reuters = 9-12-14)


中国が金利自由化など改革断行、経済急減速回避 = 首相

[天津(中国)] 中国の李克強首相は 10 日、人民元や金利の自由化などに向けた改革を断行すると表明した。 世界経済フォーラム (WEF) の夏季ダボス会議で講演した。 「中国が推進する金利や為替の自由化が、金融機関や監督当局に困難をもたらすことは避けられない」としたが、改革を推進すると述べた。 向こう数カ月間に、国有企業の改革や財政制度の改善、市場原理の導入に向けた取り組みを続けるとしている。

また労働市場は力強さを増しており、中国経済は政府の目標通り、今年 7.5% 程度の成長率を達成するとの見方を示し、経済減速をめぐる投資家の懸念払しょくに努めた。 「中国経済は極めて粘り強く、高い潜在能力と調整の余地を備えている」とし、政府は政策面で一段の「的を絞った調整」を行うと語った。 その上で「われわれは、成長の急激な変動を回避する能力を有しており、ハードランディングは想定していない」と言明した。

また経済指標の一時的な振れには惑わされず、構造改革など長期的な課題により注力する姿勢を示し、景気浮揚に向けた大型刺激策の実施は行わない考えを強調した。 中国の国内総生産 (GDP) は第 1・四半期に前年同期比 7.4% 増と 1 年 6 カ月ぶりの低成長だったが、第 2・四半期には 7.5% 増に持ち直した。 しかし、7 月の各種指標は総じて弱い内容となっている。 (Reuters = 9-11-14)


「死期」の前兆ちらつく中国経済 マイナス成長か?

先月 20 日、中国煤炭工業協会は中国経済の真実をよく表した数字を公表した。 今年 1 月から 7 月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ 1.45% と 1.54% の減となったという。 つまり、両方ともがマイナス成長となったということである。 李克強首相が地方政府のトップを務めた時代、統計局が上げてきた成長率などの経済数字を信じず、もっぱらエネルギー消費量や物流量が伸びているかどうかを見て本当の成長率を判断していたというエピソードがある。

この物差しからすれば、今年上半期の中国経済の成長率は決して政府公表の「7.4% 増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある。 中国エネルギー産業の主力である火力発電を支えているのは石炭であり、その生産と販売がマイナスとなっていれば、この国の経済が依然、成長しているとはとても思えないからである。

「石炭」一つを取ってみても、中国経済は今や崖っぷちに立たされていることが分かるが、今年上半期の全国工業製品の在庫が 12.6% も増えたという当局の発表からも、あるいは同じ今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残したという 8 月 23 日付の『中国経営報』の記事から見ても、中国経済の凋落ぶりが手に取るように分かるだろう。

実は今年 4 月あたりから、中国政府は一部銀行の預金準備率引き下げや鉄道・公共住宅建設プロジェクト、地方政府による不動産規制緩和など、あの手この手で破綻しかけている経済を何とか救おうとしていた。 だが全体の趨勢から見れば、政府の必死の努力はほとんど無駄に終わってしまい、死に体の中国経済に妙薬なし、と分かったのである。

政府の救済措置が無効に終わったのは不動産市場でも同じだ。 今年春先から不動産バブル崩壊への動きが本格化し、各地方政府は慌ててさまざまな不動産規制緩和策を打ち出して「市場の活性化」を図ったが、成果はほとんど見られない。 8 月 1 日に中国指数研究院が発表した数字によれば、7 月の全国 100 都市の新築住宅販売価格は 6 月より 0.81% 下落し、4、5 月以来連続 3 カ月の下落となったという。

それを報じた『毎日経済新聞』は「各地方政府の不動産市場救済措置は何の効果もないのではないか」と嘆いたが、不動産市場崩壊の流れはもはや食い止められないことが明白だ。 現に、8 月 25 日に新華通信社が配信した記事によると、全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの「悪性競争」が既に始まっているという。 開発業者が競ってなりふり構わずの価格競争に走っていれば、それが不動産価格総崩れの第一歩になることは誰でも知っている。

同 23 日、山東省済南市にある「恒生望山」という分譲物件は半月内に約 25% もの値下げを断行したことで、値下げ以前の購買者が抗議デモを起こした。 それもまた、「総崩れ」の前兆と見てよいだろう。 国内の一部の専門家の予測では、「総崩れ」の開始時期はまさにこの 9 月になるというのである。 経済全体が既にマイナス成長となっているかもしれない、という深刻な状況の中で、不動産バブルの崩壊が目の前の現実となっていれば、それが成長率のさらなる下落に拍車をかけるに違いない。

しかも、不動産バブルの崩壊で銀行が持つ不良債権の急増も予想されるが、それはまた、中国の金融システムが抱えているシャドーバンキングという「時限爆弾」を起爆させることになるかもしれない。 そうなると、中国経済は確実に破綻という名の「死期」を迎えるのであろう。 (sankei = 9-4-14)

【プロフィル】 石平 : せき・へい 1962 年中国四川省生まれ。 北京大学哲学部卒。 88 年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。 民間研究機関を経て、評論活動に入る。 『謀略家たちの中国』など著書多数。 平成 19 年、日本国籍を取得。