中国経済、下方圧力が強まっている = 李首相

[北京] 中国の李克強首相は、中国経済への下方圧力が強まっているとの認識を示した。 10 日夜の発言が 11 日、政府のウェブサイトに掲載された。 李首相は「国家経済は現時点では円滑に運営されているが、下方圧力が引き続き強まっている」と指摘。 雇用や収入への影響を避けるため、政府は「下方圧力に立ち向かう」必要があるとの見方を示した。

また、同国北東部に対して改革を加速するよう訴え、インフラや農業、機器輸出などで、中央政府としても支援を強化する方針を示した。 中国北東部は鉱業や重工業の中心地としてかつて栄えたが、1990 年代には政府が非効率な産業の整理を進めたことから大規模な人員削減に直面。 現在でも、他の地域と比べて成長率が大幅に見劣りする。 (Reuters = 4-13-15)


中国経済のアキレス腱、不動産問題へ政策総動員

中国はこれ以上景気が減速して大丈夫なのだろうか - -。 そんな国内外の心配をよそに成長鈍化を容認するかにみえた中国政府にも、看過できない問題があった。 不動産市況の混乱だ。 中国人民銀行(中央銀行)は 30 日、住宅ローンの規制を緩和すると発表した。

住宅投資制限の政策を転換

人民銀が銀行業監督管理委員会などと連名で発表した不動産市場の刺激策は、住宅ローンの頭金の比率の引き下げが柱。 2 軒目を買うときの頭金比率はこれまで 6 - 7 割だったが、今後は 4 割払えばすむようになる。 投機的な住宅購入を厳しく制限してきた政策からの転換だ。 中国の住宅価格は 2 月、主要 70 都市のうち 69 都市が前年同月比で下落した。 不動産取引全体の低迷も続いており、とくに地方の中小都市になるほど状況は厳しい。 人民銀の決定は、こうした流れに歯止めをかけるのが目的だ。

予兆はあった。 李克強首相は 3 月上旬の全国人民代表大会(全人代)で公表した政府活動報告で「住民のマイホームの需要を支持し、不動産市場の安定的で健全な発展を促す」と強調した。 これを受け、不動産業界の間で市況のてこ入れ策を期待する声が高まっていた。 政府が大きな方針を決めると、各部門が競って手を打ち始めるのが中国のやり方だ。 人民銀が住宅ローンの規制緩和を発表する 3 日前には、国土資源省が「不動産市場の安定的で健全な発展を促す通知」を公表していた。 活動報告の文言をそのまま踏襲したような通知だ。

こちらは、住宅の供給過剰による値崩れを防ぐのが狙い。 住宅の建設用地を新興企業向けや文化施設の建設にあてたり、民間のマンションを地方政府が買い取り、家賃の安い公営住宅にしたりすることなどを打ち出した。 地元のメディアは「売れ残ったマンションを政府が買えるようになる」と報じた。

ただこのときは「2 軒目を買う住宅ローンの頭金比率の引き下げが入ってない」、「効果はけして大きくない」とひややかにみる報道もあった。 人民銀の決定はそうした市場の要望に応えるもので、国営の新華ネットは、政府の各部門が同じ目的で政策を出すことを指す「組合拳」という言葉を使い、今回の措置を特集した。

「リーマン」後に 2 つの節目

2008 年のリーマン・ショック後の中国の不動産政策には 2 つの大きな節目がある。 1 つは 10 年初め。 リーマン・ショックに対応する巨額の景気対策のあおりで住宅価格が高騰したことを受け、投機的な売買を禁止するための措置を打ち出した。 このとき決めた頭金規制が 4 割で、その後どんどん内容を厳しくしていった。

次の節目は昨年の夏ごろ訪れた。 不動産価格の下落にたえきれなくなった地方政府が中央の決定を待たず、独自の判断で住宅の購入制限を緩和し始めたのだ。 さらに 10 月に中央政府が住宅購入の促進を決めたことで流れは加速し、全人代で政府の方針がはっきりした。 中国政府はいま、ゆるやかに景気を減速させながら、安定成長への移行を模索している。 昨年の成長率は実質ベースで 7.4% と前年比で 0.3 ポイント下がった。 今年は目標そのものを「7% 前後」に引き下げたことで、成長率はもっと落ちる可能性がある。

問題の難しさは、リーマン時の景気対策の後遺症である地方の債務と企業の設備という 2 つの過剰を解消しながら、しかも公共投資に頼らない民間主導の経済成長を達成しなければならない点にある。 中国はなお財政余力があり、景気を刺激して成長率の鈍化を止めることはそう難しくない。 だがそれをやれば、債務と設備の過剰の解消と成長パターンの転換の両方にブレーキがかかる。 そこで政府は、成長率の低下を「新常態(ニューノーマル)」という言葉を使って肯定し、景気刺激を求める声を抑えてきた。

安定成長シナリオに黄信号も

その際、アキレス腱(けん)になるのが不動産問題だ。 地方政府にとって不動産収入は有力な財源なため、市況が混乱し、収入が大幅に減れば債務の圧縮が遠のく。 不動産関連融資が焦げ付いて金融システムが揺らげば、安定成長へ移行するシナリオそのものに黄信号がともりかねない。

中国政府の各部門が繰り出し始めた「組合拳」は、そうした危機感が背景にある。 北京や上海の中心部では市況を刺激すればすぐに過熱する可能性がある一方、地方の中小都市は多少手を打っても市況の悪化に歯止めがかからない恐れがある。 地域によってまだら模様の不動産事情にきめ細かく対処しながら、経済の混乱をいかくに防ぐかに今後の注目が集まる。 (編集委員 吉田忠則、nikkei = 4-2-15)


中国経済の下押し圧力強まる、一部で明るい兆しも = 張副首相

[北京] 中国の張高麗副首相は 22 日、中国経済が直面する下押し圧力は年初から強まったものの、雇用の分野やサービス業などで明るい兆しが見受けられると指摘した。 同副首相は北京で行われた会合で、中国経済への下押し圧力が「幾分強まった」と指摘する一方、「明るい材料もある。 例えば雇用やサービス、IT、新興産業、民間投資、技術革新の分野だ。」と述べた。

また、中国が積極的な財政政策を推進し、「引き締まり過ぎず、緩め過ぎない」金融政策を維持する方針を改めて示した。 的を絞った成長支援策に焦点を絞るという。 張副首相は「過去のような高成長を維持することは不可能で、必要もない」と述べ、そうした高成長は代償を伴うものだったとの見方を示した。

張副首相は、中国が質や効率性の向上に注力し、経済モデルを転換し、構造調整を進める必要があるとも指摘した。 一方、国家発展改革委員会 (NDRC) の連維良副主任は、金融上のリスクや地方政府の債務など、成長鈍化に伴って高まるリスクを中国政府が注視していると明らかにし、「リスクが効果的に制御できれば、安定成長を達成することが可能だ」と述べた。 (Reuters = 3-23-15)


中国経済に「空洞化」リスク … 相次ぐ「外資撤退」で = 中国メディア

世界の工場として名をはせた中国から大手外資メーカーが相次いで工場を撤退させている。 中国メディアの証券時報網は 25 日、マイクロソフトが広東省東莞市と北京市の工場を閉鎖し、約 9,000 人の人員整理を行ったと伝え、「外資メーカーの撤退は中国経済にとって短期的な試練となる」と報じた。 記事は、日本の大手メーカーをはじめとする外資メーカーが中国国内から生産拠点を海外に移していることを伝え、「外資メーカーのあいだで中国撤退の歩みが加速している」と報じた。

続けて「かつて世界の工場として名をはせた中国はなぜ外資メーカー撤退という問題に直面しているのか」と疑問を呈し、外資メーカー撤退は 2015 年の中国経済に多くの "不確実性" をもたらすことになるだろうと論じた。 さらに、世界金融危機がぼっ発して以来、中国はさまざまな景気刺激策をとってきたと紹介する一方、中国経済は思うように成長しなかったと指摘。 中国の実体経済において製造業は安定した経済成長の支えになれなかったばかりか、むしろ安定成長を阻害する存在になってしまったと伝えた。

また記事は、「製造業によって国を成長させてきた中国が製造業に足を引っ張られている現実は、近年の経済戦略の失敗と関係がある」とし、不動産を中心とした実態の薄い経済が中国経済のバランスを崩してしまったと主張。 中国は自然環境や資源を犠牲に輸出主導で成長してきたとし、「中国は世界第 2 位の経済大国に上り詰めたが、その基礎は非常に脆い」と論じる一方、このまま製造業のコスト優位を失ってしまえば中国の輸出主導型経済は「命を失うことになる」と主張した。

さらに、不動産などへの投資は中国経済の成長にとって短期的には有益だったとの見方を示す一方で、「持続可能な成長にはつながらない」とし、中国が今後も持続可能な発展を遂げるためには製造業など実体経済を強化する必要があると指摘。 一方で、中国から外資メーカーが相次いで撤退していることは「中国経済で極めて深刻な空洞化が起きる可能性もある」と論じた。 (SearChina = 2-27-15)


中国・佳兆業債務残高は 100 億ドル超、再編急ぐ方針

[香港] 中国の不動産開発会社、佳兆業集団は 16 日、債務残高が 100 億ドルを超えると明らかにした。 迅速な債務再編に向けて債権者と協議しているという。 融創中国による救済策の実現は、債務再編が前進するかどうかに左右される。 証券取引所に提出した文書によると、佳兆業集団の 2014 年末時点の有利子負債残高は 650 億元(約 104 億ドル)。 このうち最大で 355 億元の債務が、2015 年末までに返済期限を迎える、という。

佳兆業集団は今年に入って、HSBC から受けた 4 億香港ドル(約 5,100 万米ドル)の融資を期限内に返済することができず、また 2,600 万ドルの社債の利払いも遅延。 アジアの社債市場に衝撃が走った。 融創中国は佳兆業の 49.25% 株を取得する計画を示しており、実現すれば佳兆業の債務問題は一服すると期待されている。 ただ、きょう公開された債務規模が大きいことから、懸念が再燃する可能性がある。

米格付け会社スタンダード & プアーズ (S & P) は、佳兆業の株式取得によって融創中国の信用力が悪影響を受ける恐れがあるとして、同社の格付け「BB マイナス」を引き下げ方向で見直す方針を示した。 佳兆業集団はまた、浮動株の発行済み株式に占める割合が 20.81% と、証券取引所の上場規則で規定される 25% を下回ったと公表。 可及的速やかに浮動株を引き上げると表明した。 同社は海外の債権者と来月末までに債務再編で合意し、4 月に手続きを完了することを目指すとした。

ただ、アナリストらは目標通りに債務再編を完了し、融創中国による救済策を実現できるかは疑わしいと指摘。 調査会社クレジットサイツのシンガポール在勤アナリスト、イン・チン・チョン氏は、「株式取得合意に絡む条件に基づくと、融創中国の計画は成立しない可能性がある」と指摘。 「この問題を解決するには時間が足りない」とした。

佳兆業集団はまた、2014 年の純利益がかなり減少する、と警告。 深センの開発物件の販売差し止めが依然として続いていることから、キャッシュフローも打撃を受ける可能性があるとの見方を示した。 同社は昨年 6 月 30 日時点で 96 億元の現金を有すると報告していたが、年末の残高は公表していない。 (Reuters = 2-17-15)

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中国・佳兆業のデフォルト危機、外国人投資家に新たな試練

[香港] 中国の不動産開発会社、佳兆業集団 は、わずか 2 カ月前には財務的にまずまず健全と見られていたが、今ではデフォルト(債務不履行)懸念が広がっている。 中国のオフショア社債を購入する際に、政治的なリスクをどう見極めるのか、投資家に重い課題を突き付けている。

中国の不動産会社は近年、中国本土と比べて安価な借り入れコストに誘われ、オフショア債市場に殺到。 トムソン・ロイターがまとめたデータによると、中国もしくは香港市場に上場している不動産会社は 2014 年、アジア企業(日本とオーストラリアを除く)が米ドル建てで発行したハイイールド債のうち、61% (283 億ドル)を占めた。

しかし、今回の佳兆業のトラブルは、キャッシュフローを合計することで不動産開発会社の社債価格の妥当性を判断するという従来型の方式では、中国の社債の場合にはもはや十分ではないことを示している。 中国では、政府が予想外の行動をとるリスクが高まっているほか、 外国人投資家が当該企業の国内資産に対してどのような請求権を持っているのか、前例がない。 投資家は今やこうした点にも目配りが必要だ。

佳兆業をめぐる問題を受けて、中国不動産開発会社の既存社債の利回りは急上昇している。 投資家が佳兆業問題の推移を見守るなか、中国の企業は、新規の社債発行を手控えざるを得ない状況になっている。 米企業のある弁護士は「佳兆業問題は外国人投資家に 2 つの大きな問題を突き付けた。 1 つ目は、こうした企業の債券を購入する際、政治的なリスクをどう判断するか。 そして 2 つ目は、債権者の優先順位において、外国人投資家はどの位置にいるのか、という点だ」と指摘した。

中国不動産会社の起債ブーム終焉

佳兆業の問題は昨年末、深セン市が同社物件の一部の販売を差し止めたことから始まった。 その後、会長など複数の幹部が突然辞任。 そして先週には、オフショア社債の一部について、利払いを行わなかった。 佳兆業には、1 月 8 日から 30 日間の猶予期間が与えられるが、その期間中に利払いができなかった場合には、中国の不動産デベロッパーによるドル建ての債券では、初めてのデフォルト事例となる。

佳兆業の問題を受けて、中国の不動産会社の起債ブームに終止符が打たれた。 1 月は例年ならば、高利回りの発行体によるドル建て債や点心債市場での資金調達が極めて活発に行われる。 しかし今年は、中国の不動産会社による高利回り債の発行は、今のところゼロだという。 香港在住のあるファンドマネジャーは「12 月初めに佳兆業の点心債をすべて売却した。 われわれは目先(佳兆業問題の発端となった深センのある)広東省の不動産会社について警戒している。」と語っている。 (Reuters = 1-14-15)


中国政府、伊藤忠を不良債権処理に利用か 最大国営企業への巨額出資に懸念、株価下落も

伊藤忠商事は 1 月 20 日、タイ財閥チャロン・ポカパン (CP) グループと共同で、中国政府が 100% 出資する複合企業、中国中信集団 (CITIC) の傘下企業に合計 1 兆 2,040 億円を出資すると発表した。 中国国営企業への外国投資としては過去最大級となる。 出資先は香港証券取引所に上場している中国中信集団傘下の持ち株会社、中国中信(CITIC リミテッド)。 伊藤忠と CP グループが折半出資する共同出資会社を通じて、4 月に普通株式の約 10% (約 5,150 億円)を取得する。 その後、10 月に普通株式に転換可能な優先株(約 6,890 億円)を引き受ける。

普通株に転換後の出資比率は約 20% (約 58 億 1,800 万株)となり、共同出資会社の持ち分法適用会社となる。 伊藤忠などが出資後、中国中信集団の中国中信への出資比率は 80% から 60% に下がる。 出資総額は 1 兆 2,040 億円で、伊藤忠は 6,020 億円を出資する。 伊藤忠は全額、金融機関からの借り入れで賄うとしている。 伊藤忠の持分法適用会社となることで、年間 700 億円程度の利益の押し上げがあると説明している。

20 日、都内で記者会見した岡藤正広社長は、「(提携により) 2015 年度から始まる次期 3 カ年中期経営計画の最終年度に当たる 17 年度には非資源商社 No. 1 の地位は確固たるものになり、業界トップの座も視野に入っている」と述べた。

中国中信集団は中国最大の実力者、トウ小平氏の開放・改革政策の下、1979 年に設立された国有企業。 創設者の栄毅仁氏は「紅い資本家」と呼ばれ、後に国家副主席を務めた。 中国政府の国務院(内閣に相当)が管轄する中国最大の複合企業集団で、グループの事業分野は石油化学、金属、重工業、自動車、銀行・証券、不動産、小売り、出版などに及んでいる。

伊藤忠が出資する中国中信は CITIC グループの金融分野の一翼を担う。 中信銀行、中信証券など金融サービスを中心に、傘下に中信資源、中信建設など 20 社を持つ。 有価証券報告書によると、13 年 12 月期の売上高に当たる営業収益は日本円換算で 6 兆 1,587 億円、1,699 億円の営業利益を上げている。

CP グループの存在

今回の投資スキームを伊藤忠に提案したのは、CP グループのタニン・チャラワノン会長だ。 CP グループは中国出身のチャラワノン一族が 1921 年にバンコクで種苗販売店を開いたのが発祥。 タニン会長は創業者の 4 男。 香港の商業専門学校を卒業し、CP グループに入社。 69 年に社長へ就任、89 年から会長兼 CEO を務める。 現在の中核事業は食料、食品、小売りと通信。 グループ全体の従業員は 30 万人を超え、年間売上高は 4 兆 4,000 億円に上る。

タニン氏の最大の転機は 79 年だった。 トウ小平氏による開放・改革路線が始まった時、真っ先に中国へ乗り込んだのがタニン氏だった。 トウ小平氏とタニン氏の会見の様子は後にアニメ化された。 番号「00001」。 中国が外国企業に門戸を開いた際に与えられる営業許可証の第 1 号が、CP グループの大規模養鶏場だった。

CP グループと中国当局とのパイプは太い。 外資系企業がチャイナリスクを避けて中国市場から撤退する中、CP グループはタイに本社を置く外資系企業でありながら中国での投資を拡大し、巨額の利益を手にした。 これまでの投資額は 80 億 - 90 億ドル(約 9,500 億 - 1 兆 700 億円)に達し、飼料・畜産事業を中心に中国事業を拡大してきた。 タニン氏の中国名は謝国民。 CP グループは、中国では「正大集団」として知られている。

タニン氏は東南アジアで活躍する華人企業家の中で、習近平・中国指導部に最も近い 1 人といわれている。 今回の中国中信への出資のスキームは、タニン会長が習氏や李克強首相に働きかけて実現させたとされている。

伊藤忠の巨額出資、不良債権処理に利用か

なぜ伊藤忠の国営企業への出資に、中国指導部が関わるのか。 時系列で見ていくと、1 兆 2,040 億円出資の意図が見えてくる。 14 年 7 月、伊藤忠と CP グループは資本・業務提携した。 CP グループは伊藤忠が実施する 1,020 億円の第三者割当増資を引き受け、伊藤忠の株式 4.9% を取得。 実質的に伊藤忠の筆頭株主となる。 伊藤忠は CP グループの飼料・畜産事業を展開する香港の上場会社の株式 25% を 870 億円で取得した。

14 年 9 月、中国中信は香港証券取引所に上場した。 伊藤忠と CP グループ、東京海上日動火災保険、みずほ銀行が、それぞれ 1% を出資した。 15 年 1 月、伊藤忠と CP グループが中国中信に 1 兆 2,040 億円を出資すると表明した。 この一連の流れで最大のポイントは、中国中信の香港上場である。 何を意図して上場したのか。 ブルームバーグは 14 年 12 月 5 日、「中国中信は親会社から 370 億ドル(約 4 兆 4,300 億円)相当の資産を今年買い取った際に CP グループを含む 27 の投資家に株式を売却」と報じた。

 

中国政府が 100% 出資する中国中信集団は、4 兆 4,300 億円の巨額資産を子会社の中国中信に売却したのだ。 中国中信集団は幅広い業種を傘下に持つが、中国経済の減速の影響を、銀行、証券、不動産、建設のいずれの業種も受けている。 中国のバブル経済の崩壊に備えて、中国中信集団から不良資産を切り離し、上場した中国中信でこれを処理することを意味している。

中国中信が不良資産を処理していけば、自己資本を食い潰し、債務超過に転落する恐れが出てくる。 それを回避するために、1 兆 2,040 億円という巨額増資を実施することにしたわけだ。 つまり、伊藤忠・CP 連合への株式売却を中国政府が承認した目的は、中国最大の国有複合企業の不良資産処理だとみられている。

株式市場は巨額出資に懐疑的

見返りは用意されている。 CP グループは養鶏や鶏肉の加工・販売といった食料分野が主力。 需要拡大が続くアジアで、家畜の飼料となる穀物を伊藤忠が調達し、中国中信の融資で CP グループが農場を整備して鶏肉を加工・販売することが検討されている。 習近平指導部と緊密な関係を築いている CITIC グループに出資することで、伊藤忠と CP グループは外資規制が厳しい中国で資源開発や物流網の整備、不動産開発など、これまで参入が難しかった分野に入りやすくなる。

前述の通り伊藤忠は、提携により商社業界トップの座も視野に入っていると胸を張るが、市場(マーケット)は懐疑的だ。 1 月 20 日の東京株式市場では、同社株は一時、前日比 57 円安の 1,181.5 円まで売られた。 21 日の安値は 1,179 円と 2 日連続安だ。 中国は経済成長が鈍化している。 中国中信の株価上昇が続く保証はどこにもない。

中国では、すでにバブル処理が始まっている。 中国証券監督管理委員会は 1 月 16 日、中信証券など 3 社に対し、信用取引口座の 3 カ月間新規開設禁止を命じた。 過熱する信用取引ブームに当局が警鐘を鳴らしたのだ。 その乱気流の渦中に、伊藤忠は巨額出資へ踏み切る。

ある商社首脳が次のように語る。 「みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長が『商社と銀行の見方は違うが、伊藤忠の岡藤社長とは意見交換している』と語っていた。 みずほが単独で融資するのかもしれないが、6,000 億円を借り入れるということは、年間 600 億円の利益を出さなければペイしない。 岡藤社長の言う 700 億円程度の利益の押し上げでは、投資案件としてそれほど有利とはいえない。

伊藤忠が最後まで融資に慎重だったのはよくわかる。 非資源分野をテコにトップ商社を目指すとのことだが、資源投資のリスクより、中期的に見て中国のリスクのほうが大きい。 伊藤忠のターニングポイントになることは間違いないが、下に振れたらダメージは大きい。 うちだったら絶対に手を出さない案件だ。」 こうした懸念を裏付けるかのように、格付け会社ムーディーズ・ジャパンは 1 月 21 日、伊藤忠の発行体格付けを現在の「Baa1」から格下げの方向で見直すと発表。 多額の現金支出でフリーキャッシュフロー(純現金収支)の減少や有利子負債の増加につながる可能性があると判断した。 (Business Journal = 1-29-15)


中国人民銀に試練、流動性供給の効果奪う資金流出構造

[上海] 中国人民銀行(中央銀行)は減速している経済に何とか刺激を与えたいと必死になっている。 ただ伝統的な金融政策手段が思い切って使えず、別の戦術を採用せざるを得ない状況にあり、金融調節面で大きな試練にさらされている。 通貨供給量を管理し、金利水準を誘導する上で透明性が高いのは公開市場操作(オペ)だ。 しかし金利を低めに持っていくために短期市場で資金を供給しても、中国が直面する資金流出の拡大を穴埋めできず、効果がないことが証明されている。

実際に市場参加者によると、人民銀行によるオペの効果が持続的な資金流出のせいでどんどん効力を失っていったので、とうとう昨年 12 月初めにはオペはほとんど実施されなくなってしまった。 ANZ (上海)のエコノミスト、ゾウ・ハオ氏は「貸出金利を押し下げるのは非常に難しい。 これは根深い問題だ。 短期市場への資金供給は市場の不安を鎮静化することができるだけで、金利を下げるための長期的な流動性はもたらさない。」と指摘した。

人民銀はこうした市場調節の代わりに、臨時貸出制度 (SLF) や中期貸出制度 (MLF) といった、いわば裏口から銀行向け与信枠を直接的に拡大する新たな手法に頼っている。 もっともこれらも流動性は提供するものの、その不明瞭な性格から多額の債務を抱えた中国企業の資金調達コストを低くする効果は今 1 つだ。 そして結局のところは、長らく続いた外貨準備蓄積の流れの反動と中国企業が 2014 年を通じて対ドルでじりじりと下がってきた人民元をますます保有したがらなくなっていることが相まって、せっかくの大規模な流動性供給が無効化されてきた。

JP モルガンのエコノミスト、ズー・ハイビン氏は 22 日の調査ノートに「外貨準備蓄積を通じた流動性注入という伝統的な経路はなくなっている」と記し、14 年下半期には外貨準備が毎月減少したと付け加えた。 ロイターが公式統計に基づいて計算したところでは、昨年 12 月の中国企業による人民元売却規模は 190 億ドルと、7 年ぶりの高水準になった。 中国企業が人民元を積極的に売るのは対ドルでの為替差損から身を守るためで、資金の奪い合いが激しい国内資本市場から締め出された企業がドル建ての借り入れに依存するようになって、こうした為替リスクは増大している。

大規模な資金流出

問題は資金流出だ。 これはドル建て資産の利回り上昇で人民元建て資産の魅力が薄れたり、中国政府による改革のために海外投資が容易になったことが影響している。

資金流入も最近は枯渇する様相を呈してきた。 外国人による中国株直接購入の道を開いた香港株と上海株の相互取引が低調な滑り出しだった上に、マークイットのデータによると、昨年第 4・四半期に中国本土の株価指数が 50% 上昇したにもかかわらず、中国関連の上場投資信託 (ETF) からは大規模な資金が流出した。 ロイター・リッパー IM のデータでも同様の傾向が見られ、中国専門 ETF は平均で 2 億 7,500 万元(4,430 万ドル)、全体では 340 億元が昨年 12 月に逃げ出した。

戦術変更

こうした事態は全て中国政府にとって厄介な問題を生み出している。 当局がもし、国内短期金融市場に緩やかに資金を流し込みたいのであれば、今年は海外投資に向けたこれ以上の新規口座開設を停止したり、口座を縮小する必要があるかもしれない。 逆に口座開設を認める方針を維持したいなら、すべて流出することが不可能なほど膨大な資金を供給しなければならないだろう。

これは銀行預金準備率 (RRR) の引き下げを意味する。 だがエコノミストは RRR 引き下げが、当局が過去 2 年でようやく縮小させてきた資産バブルを再燃させかないと懸念している。 昨年 1 月の利下げ以降の中国株高騰は、その大半が異常に活発な借り入れを原動力としている点を踏まえれば、資産バブルの心配を高める結果になった。

JP モルガンのズー氏は「人民銀による最近の対外発信からすると、RRR 引き下げに反対ではないものの、金融政策の波及経路における構造問題に不安を抱いていることがうかがえる」と述べた。 その不安とは、資金供給が不動産投機に回り、生産的に利用されるよりも過剰投資を招く展開になることだという。 ロイターの計算では、融資の乗数効果を考慮に入れると、RRR の引き下げによって最大で 2 兆 4,000 億元が供給される可能性がある。

人民銀はそこまで踏み切るかどうかはともかくとして、既に政策手法の変更を示唆している。 22 日にはオペを再開して 7 日物の資金 500 億元を供給した。 適用金利は 3.85% で、4% 超という現在の指標短期金利の水準を低めに誘導したい意図が見える。 また一部の MLF について、四半期報告よりも前倒しで結果を公表(ただし資金供給先の銀行名は非公表)するとして透明性向上の姿勢も示した。 それでも ABZ のゾウ氏は、そうした金融政策は、経済成長を高めるよりも、事態のさらなる悪化を防ぐ効果しかないことが判明するだろうとの見方をしている。 (Reuters = 1-23-15)


7 兆ドルをどぶに捨てた中国に明日はあるか

世界第 2 位の経済大国になった中国がこのままトントン拍子にアメリカと肩を並べるシナリオのあり得なさ

どうやら中国政府は、ここ数年で 7 兆ドル近い大金をどぶに捨てたらしい。 英紙フィナンシャル・タイムズ中国版が先日伝えた中国国家発展改革委員会の報告によれば、09 年以降の中国の総投資額の半分近くは「無駄な投資」に向けられていたという。 中国共産党が直面している経済改革の困難さと党官僚の腐敗の深刻さをあらためて思い起こさせる報告といえる。

アメリカの世紀は終わり、21 世紀は中国の世紀だと強気な予想をするアナリストたちは、13 年に貿易総額で世界一になった中国が、GDP でも世界一になるのは時間の問題だと言う。 そのとおりだろうが、国力の真の基準は国民 1 人当たりの所得だ。 そしてこの点では、依然としてアメリカが圧倒的に強い。 世界銀行によれば、国民 1 人当たり GDP を比べると、アメリカは中国より 4 万 5,000 ドルも多い。 しかもこの差は、縮まるどころか拡大している。

中国への期待(つまり投資)に慎重になるべき理由はほかにもたくさんある。 なかでも広く知られているのは人口動態だ。 長年にわたる「一人っ子政策」の結果、中国はもうすぐ人類史上最も急激な高齢化の危機に直面することになる。 現在は高齢者 1 人を現役労働者 6 人で支えているが、40 年にはこれが 1 人を 2 人で支える形になるという。

また中国経済は短期的・中期的に高い成長を続けるとみられていたが、14 年の成長率は 90 年以降で最も低い水準となる見込みだ。 政府系の中国社会科学院は 12 月に、15 年の成長率が 14 年見通しの 7.3% よりも低い 7% になるとの予測を発表した。 そうであれば、中国経済の次の 10 年は相当に悲惨だ。

これまでにも、中国のバブル崩壊を予測する声は多くあった。 だが、そのすべてが誤りだった。 どうやら中国共産党政治局には、欧米の中国悲観論者が思っている以上の力量があるらしい。 経済改革に寄せる党幹部の決意も本物とみていい。 確かに中国は歴史的に前例のないペースで産業化を進めてきた。 しかし共産党による一党独裁のまま、1 度の経済的ないし政治的な挫折を経験することもなく先進国の仲間入りを果たし、一気にアメリカと肩を並べることなどあり得るのか。 そんなシナリオは、最も可能性が低いと言わざるを得ない。 (Newsweek = 1-9-15)


中国の超高度成長は終わったか?

[香港] 中国経済は、向こう 20 年の間にどのくらい成長するのだろうか。 大半のエコノミストは、過去の国内総生産 (GDP) 伸び率をそれほど下回らない程度だと予想している。 だが、世界的な観点から見れば、それは拡大解釈のように見える。 Breakingviews の分析ツールはその理由を示している。 中国は、2000 - 2010 年の 1 人当たりの GDP が年率 9.85% という驚異的な成長を遂げた。 同じ成長率で経済が拡大し続けるなら、中国の GDP は 2033 年までに 65 兆ドルに達する。 これは 2013 年の GDP 全体のほぼ 7 倍に当たる。

では、残る世界全体の 1 人当たり GDP 伸び率が 2% だとしよう。 その場合、向こう 20 年間で、世界の GDP に占める中国の割合は 35% 以上となる。 大半のエコノミストが、中国の 2 ケタ成長は過去の話だと認めるものの、中国が 2014 年に目標としていた 7.5% を少し下回る程度の成長率で同国経済は拡大可能だと考える人も多い。 だが、これは長期的に見るとかなり野心的な数字だ。

1 人当たりの中国 GDP 伸び率が向こう 20 年間で年率 6.45% でも(この数字は 1963 - 83 年の日本の成長率と類似)、世界の GDP に占める中国の割合は、2013 年のほぼ倍となる 22% 超になる見通しだ。 過去の経済成長の主な要因は、農村地帯から都市部の工場に出稼ぎに出ていた比較的若い年齢層にある。 今後、中国の人口は高齢化し、労働人口が拡大することはほとんどないだろう。 世界の GDP の 3 分の 1 以上を占めるには、中国の労働者が生産性を飛躍的に向上させる必要がある。 技術的な進歩がこれに寄与するかもしれない。 だが、そうした技術的進歩を中国が独占することは難しいだろう。

また、中国の成長率が年率 2% 程度に減速するという別の可能性も考えられる。 これは、ハーバード大学の経済学者、ローレンス・サマーズ氏やラント・プリチェット氏らが主張する、急成長を遂げた国の傾向と合致する。 現代史において、中国は前代未聞の 40 年の長きにわたる成長を遂げた。 しかし現在の経済規模を考えると、持続的な超高度成長はいっそう不可能に思える。 (Peter Thal Larsen & Robyn Mak、Reuters = 12-18-14)


中国経済に一定期間の痛み、影の銀行が主要問題 = 財政次官

[ブリスベーン] 中国財政省の朱光耀次官は、国内経済をより緩やかな持続的成長に向けるには「一定期間の痛み」が伴うとし、影の銀行が主要な問題だとの見解を示した。 20 カ国・地域 (G20) 首脳会議に同行している同次官は記者団に対し、「長期にわたり積みあがった問題」があるとした。 そのうえで、国家主席が提唱した「新常態」というフレーズを繰り返し、成長速度を超高速から適度に速いスピードに切り替えていると述べた。

そのうえで、これまでに打った大規模な景気対策をこなしていくにあたり、一定の痛みを伴う期間のなかにあるとの見方を示した。 影の銀行問題については「銀行業務の派生、つまり銀行の信託商品となっていることが大きな問題」と指摘。 しかし国内金融の規模に比べて影の銀行はそれほど大きくなく、「急激に拡大したことが最大のリスク」と述べた。 次官は世界経済の成長速度は遅すぎ、均衡がとれていないと指摘。 また米国に対し国際通貨基金 (IMF) の出資比率などで早急に合意するよう求めた。 (Reuters = 11-16-14)


中国、持続可能な均衡のとれた成長が続く = 国家主席

[北京] 中国の習近平国家主席は 15 日、国内経済について、力強く持続可能な均衡のとれた成長が続くとの見通しを示した。 20 カ国・地域 (G20) 首脳会議での発言。 新華社が報じた。 習主席は経済成長の機会を促す構造改革を進めることで、世界経済に一層の需要と投資機会を提供する意向も示した。 中国経済が「新常態」に入ったとも表明。 成長の勢いは強く、発展の見通しは明るいと指摘した。

主席は中国が国際通貨基金 (IMF) の「特別データ公表基準 (SDDS)」を採用することも明らかにした。 IMF のウェブサイトによると、SDDS は経済・金融データに関する透明性と情報開示を促進するための基準で「国際資本市場にアクセスを持っているか、いずれ持つかもしれない国々を導くために」制定された。 中国では地方政府が発表する経済指標と中央政府が発表する経済指標の整合性が取れないなど、統計の信頼性に疑問の声があがっている。 (Reuters = 11-16-14)


中国経済が世界の重荷になる日

中国の経済成長率が 10 年後には今の半分近くになると米有力調査機関が予測

毎年のように記録的な高度成長を重ね、世界経済の屋台骨を支えてきた中国経済。 だがシャドーバンキング(影の銀行)や巨額な地方債務などの問題が山積している。 政府は GDP 成長率目標を従来の 8% から 12 年には 7.5% に引き下げて軟着陸を目指してきたものの、今年 7 - 9 月の成長率が 7.3% と 5 年半ぶりの低水準だったことが先週明らかになった。

これが中国経済停滞への予兆になるかもしれない。 中国経済の成長率は 25 年までに今の半分近くに落ち込むだろうと、全米産業審議会(非営利のビジネス情報機関)は先週の報告書で予想した。 主因は生産性の低下と改革の失敗だ。 中国経済の 15 - 19 年の成長率は年平均で 5.5% に、20 - 25 年は 3.9% 程度にしかならないと予想する。

外国企業は中国が「長くゆっくりとした景気減速期」に入っていることを認識すべきだと、報告書は指摘する。 「競争の性質は投資主導型の事業拡大から市場シェアの奪い合いへと変わった」という。 外国企業にとってはメリットもある。 安価な労働力の供給が増えて大勢の従業員を雇いやすくなり、価格が下がるため企業の買収もしやすくなる。 中国政府も「これまでになく親切」になるだろう。

11 年までの約 30 年間、中国経済は年平均 10.2% という急速な成長を遂げてきた。 07 年の成長率は 14% に達したものの、12 年以降は成長が鈍化している。 全米産業審議会の予想は、他の著名なエコノミストたちの見解とも一致する。 IMF (国際通貨基金)も 7 月、中国は 15 年の成長見通しを 6.5 - 7% に引き下げるべきだと指摘した。

サマーズ元米財務長官はこう分析している。 「途上国では、経済の急速な成長は中断されることが多い。 そのような非連続性は、成長率の変動の大きな要因になる。 強い国家管理と汚職の蔓延、独裁的支配といった中国の特徴は、そうした経済成長の後退を、通常よりも起こりやすくすると考える。」 (ミーガン・クラーク、Newsweek = 11-14-14)