消えた中国のブローカー、進まぬ改革

なお残る市場の機能不全と政治の思惑

中国最大の証券会社、中信証券では先週、さらに 2 人の経営幹部が姿を消し、これで経営幹部 8 人のうち 6 人が行方不明となっている。 6 人は警察に身柄を拘束されたとの見方が大勢だが、当局は何も明らかにしておらず、同社も業務は「通常通り」と言い続けている。

こうした発言は、中国の金融市場がこの 1 年、バブルの発生と崩壊を経て、いまだに機能不全に陥っていることを裏付ける。 中信証券の幹部が最初に行方不明になったのは 8 月。 当局が「悪質な」空売りや相場操縦、インサイダー取引など、夏に株価が 40% 近く下落した原因と考えられる行為について調査しているさなかだった。 警察は北京の証券当局者と中国の有力経済誌「財経」の記者の身柄も拘束した。 両者はいずれも国営テレビで「自白」した。

規制当局は、不正取引を理由に約 30 の証券口座の株式売買を停止した。 これには米ヘッジファンド大手シタデルが保有する 1 口座も含まれる。 世界最大の上場ヘッジファンド、英マン・グループの中国部門トップを務めるリー・イーフェイ氏は外部との連絡を絶たれた。 同氏の夫はマスコミに、妻は北京郊外で当局と面談していると語った。 リー氏は数日後に帰宅し、「業界会合」に出席した後、休暇を取って瞑想していたと説明した。

当局は先月、著名ファンドマネジャーの徐翔氏を逮捕したことを公表。 その後、国信証券、海通証券、中信証券など国内証券大手数社を調査していることを明らかにし、取り締まりを強化した。 中国の規制当局は、何でもありの風潮が国内株式市場に広がるのを容認していたため、いざとなればインサイダー取引などの不正行為を見つけるのは簡単だ。 ある中国の調査会社によると、徐氏が運用している 5 つのファンドの今年 1 - 9 月の上昇率は 249% に達し、上海総合指数の 2.8% をはるかに上回った。

中国政府は株価急落に対する国民の怒りをなだめるために、市場改革ではなくブローカーを痛めつけることを選んだ。 国民が怒るのは無理もない。 政府が政治的な理由で国民に「習近平国家主席の上昇相場」に乗るよう促したからだ。 中国指導部は国内経済への信頼を取り戻し、企業の借入依存度を低減するために株価が上昇することを望んでいる。 しかし政府の干渉は再びバブルを招く恐れがある。 ブローカーらを刑務所に送ることは、それが常に法を執行するという新たな誓約の一環でない限り、市場の機能強化にはつながらない。

国際通貨基金 (IMF) が先ごろ、特別引き出し権 (SDR) の構成通貨に人民元を採用すると決めたことで、一部では中国の市場改革に対する期待が再燃した。 だが、国内の金融システムが市場原理ではなく政治的な思惑によって左右されているうちは、人民元が広く受け入れられる通貨になることはないだろう。 (The Wall Street Journal 【社説】 = 12-10-15)


中国の成長鈍化は自然な流れ 下支え策は無用

中国は、約 7% という目標を掲げていた年間成長率を直近の四半期に達成した。 しかし、この数字は全ての状況を物語るものではない。 中国経済の苦悩は終わりにはほど遠い。 中国の製造活動に関する公式な指数が再び落ち込み、2012 年以来最低の水準に達した。 投資家の中には、中国政府がさらなる刺激策を導入すると予想する向きもあり、その展望からアジアの株式市場には楽観的な考えが広まっている。 しかし、これは中国経済とって適切な処方薬ではないかもしれない。

経済構造の再調整には製造業の回復が必要

中国の製造業が厳しい逆風に直面しているのは疑いの余地がない。 既に過剰な生産能力に苦しむ製造業は、今度は需要の低迷に苦慮している。 商品価格の下落もデフレ圧力に拍車をかける。 過去 35 年間、製造業は中国のめざましい成長をけん引し、生まれたばかりの中産階級の台頭を後押しする原動力だった。 総需要の半分は投資が占めており、その低迷は、政府が 7% という控えめな成長目標でさえ達成するのをいっそう難しくする。

中国政府が再び本格的な刺激策を導入しようとしているのは明らかだ。 政策金利は今年、既に 6 度引き下げられ、さらなる金融緩和策が実施される可能性もある。 そうなれば、製造業者や不動産業者は多額な投資を維持できるだろう。 また、新たに財政拡大についての議論もはじまった。 地方自治体は積極的なインフラ支出の目標を定め、それに基づき新たなビルや工場の建設を急速に進めている。

財政支出の拡大には明らかにけん引力がある。 しかし、正しい措置かどうかは明白さを欠く。 製造業の混乱で見過ごされているのが、他部門による経済衰退の埋め合わせを支えるサービス部門の静かな台頭だ。 11 月のサービス業購買担当者景気指数 (PMI) は 53.6 に上昇した。 内需が加速している兆候は他にもある。 不動産販売の回復が鮮明になり、不動産ブーム時に建設された数千ものアパートの空室が埋まりはじめた。

政府は長らく、中国経済を輸出と投資から消費へと再調整すると宣言してきた。 これは製造業からサービス業への移行を意味する。 このような歴史的な変化を、製造業の減速なく実現するのは事実上不可能だ。 中国政府は工業部門が風邪を引く度に薬箱に手を伸ばすべきではない。

政府の業界下支え策は無用

中国が試みている規模の変化が全てスムーズに進むことはあり得ない。 共産党指導部が経済の減速と雇用への影響を心配するのはもっともだ。 中国という存在の大きさや世界的な重要性は、国内の指導者のみならず国外においてもその安定が不可欠であることを意味する。 中国政府は長期的な目標を見失うべきでない。 市場にパニックの兆しが見える度に、慌てて製造業や不動産業の下支えに走るのは間違いだ。 国内消費の促進を目指すのであれば財政政策も悪い考えではない。 しかし、ゼロから新たな道を開くと約束する代わりに、大きく後れをとっているクリーンエネルギーに投資を向け直すべきだ。

同様に、資金の海外流出による中国市場の流動性逼迫のバランスを整えるために、金融政策を緩和する必要があるだろう。 しかし、もともとは構造的な問題をそうした政策で解決できないかと考えるのは間違いだろう。 製造活動の最新の指数は悲観的だ。 しかし、古典的な景気循環の後退期のように見える状況が、長く待ち望まれた中国経済の再調整となる可能性は十分にある。 移行は苦痛を伴うが、それだけの価値があるものだ。 (The Financial Times 社説 = 12-2-15)


中国の銀行、景気減速で不良債権増加の見通し

【北京】 中国東方資産管理の推定によると、中国経済の減速で銀行が抱える不良債権がさらに拡大し、国内金融システムはさらに圧迫される見通しだ。 同社は中国 4 大資産管理会社の一つで、主要な不良債権の受け皿となっている。 これによると、中国の銀行融資債権に占める不良債権の割合は、年内に 1.67% まで膨らむ恐れがある。 政府統計によれば、9 月末時点では 6 年ぶり高水準となる 1.59%、1 兆 1,900 億元(約 22 兆 8,000 億円)だった。

東方資産管理は、24 日発表した不良債権に関する年次報告で、2016 年内にこの割合が 1.94% まで上昇する可能性があるとの見方を示した。 商業銀行や資産管理会社を対象とした調査結果を引用しつつ、「中国の銀行システムにおける不良債権は今後 4 - 6 四半期にわたり増加し続けるだろう」と指摘した。

専門家の間では一般に、中国の不良債権関連の統計の信用度は低い。 中国の金融機関は不良債権の拡大を避けようとして融資を延長する場合が多いため、同国の不良債権比率は他国と比べ低くなっている。 ただ、こうした統計からもうかがえるのは、経済成長が引き続き減速していけば、中国の銀行に対する圧力がさらに高まるだろうということだ。 中国の 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) 成長率は前年同期比 6.9% に鈍化し、世界金融危機以来の低水準に落ち込んだ。 (Grace Zhu、The Wall Street Journal = 11-25-15)


中国からの資金流出加速、「拙速な人民元改革」に警戒感

[東京] 中国からの資金流出加速に懸念の声が相次いでいる。 人民元は国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権 (SDR) 構成通貨に採用される見通しで、今後は主要通貨として存在感を高めることになるが、拙速な人民元改革は投機的な動きを誘発し、さらなる資金流出を招きかねないと警戒する向きもある。 中国が 8 月に人民元の切り下げに踏み切って以降、同国からの資金流出は約 2,000 億ドルに達した。 米財務省の推計によると、中国当局は 7 - 9 月、資金流出に歯止めをかけるため、総額 2,290 億ドルの元買い/ドル売りの為替介入を行ったとされている。

ある関係者は、資金流出のペースは「警戒レベル」としたうえで、「中国の金融システムが不安定化すれば、日本やアジア諸国への影響は計り知れない」と語った。 人民元の SDR 入りに伴う改革が与える影響を懸念する声もある。 SDR 入りを目的に無理な改革を進めるのは「議論が逆(国際金融筋)」で、適切なペースで為替の自由化を進める必要があるとの見方だ。

元財務官の榊原英資・青山学院大学教授は、8 月の上海株安など市場の動揺に触れ、金融システムの整備や市場安定のための措置なしに為替の自由化を進めると「市場は確実に混乱する」と指摘。 その上で「ヘッジファンドによる投機的な動きが起こるので、金融システムをきちんと整えてから(為替の)自由化をしないと危ない」と警鐘を鳴らした。

また、前 IMF 副専務理事の篠原尚之・東京大学教授は、中国の金融機関が直面する不良債権問題が、資本・金融市場自由化のあるべきペースを考える上で重要と分析する。 「経済が減速する中で銀行資産・貸出の質がどこまで劣化しているのか。 今の数字は問題ないが、将来分からない」とし、中国の金融システムをめぐる市場の疑念をどう当局が払しょくするかが、今後中国経済のハードランディングを回避できるかどうかの鍵を握っているとの見方を示した。 (木原麗花、Reuters = 11-16-15)


脆弱企業の破綻容認に動く中国、ドル建て債デフォルトも

[香港] 中国のセメント会社、中国山水水泥が、12 日に満期を迎えるオンショア債務の返済ができないとして会社清算を申請することを決定した。 アナリストは、中国当局が脆弱な企業の破綻を容認する動きを強めている兆候だと指摘している。 同社は、業界全体の設備過剰の打撃を受け、資金調達が困難になっていた。 中国の格付け会社、大公国際資信評価の格付け責任者 Warut Promboon 氏は「誰もが救済されるわけではなく、非投資適格等級の企業に景気減速が影を落としていることを示すものだ」と指摘した。

業界の設備過剰抑制に向け、当局は市場がより正確に信用リスクを織り込むことを望んでおり、体力がある企業とそうでない企業の選別が一層進むとアナリストはみている。 「人民銀行は流動性を潤沢にし続ける方針で、強い企業は低コストの資金調達ができるが、リスクがある借り手は借り換えが難しくなるだろう」と Pomboon 氏は述べた。 中国の債券市場は、大半が政府の保証付きという前提の下で取引されており、リスクを織り込むことは難しい。

中国市場で初めてデフォルト(債務不履行)に陥ったのは 2014 年のチャオリ・ソーラー・エナジー(上海超日太陽能科技)。 それ以降、自力でのデフォルト回避を余儀なくされる企業の間で債務の返済遅延が散見されている。 今年 4 月には保定天威保変電気が国有企業初のデフォルトとなった。

ドル建て債券もデフォルト

中国山水水泥が 11 日に香港取引所に提出した文書によると、デフォルトとなるのは子会社の山東山水が発行した 20 億元(3 億ドル超)相当のオンショア債。 このデフォルトにより、2020 年償還のドル建て債 5 億ドルの繰上償還を促すトリガー条項が発動され、同債券もデフォルトとみなされた。 これらの債券は 10 日に額面 1 ドルに対し 0.80 ドル近辺で取引されていたが、同社の発表を受けて 11 日には 0.45 ドルに急落。 その後は 0.65 ドル近辺で推移している。 ロイターの算出によると、同社には 2016 年償還の既発債が 2,800 万ドル相当ある。

DBS (シンガポール)のクレジットアナリスト、ナンシー・コウ氏は「セメントセクターの有意義な再編が今求められている。 設備過剰と環境問題に直面し、企業の間ではスケールメリット(規模の経済)を実現して市場シェアを維持するために競争をなくすよう、一段の圧力がかかっている」と指摘した。 中国山水水泥の上半期業績は主要地域でのセメント価格下落が響き、31% の減収で最終赤字となった。

格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S & P) は 6 月に同社の格付けを「B プラス」から「CCC」に引き下げ、今後 12 カ月間に期限を迎える債務の返済リスクが高まったと警告していた。 11 日の発表後、フィッチ・レーティングスは中国山水水泥の格付けを「C」から「一部債務不履行 (RD)」に引き下げた。 (Umesh Desai、Reuters = 11-12-15)


中国の地方財政、その混迷の行方 許成鋼・香港大教授

- - 中国の 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) の実質成長率は 6.9% と、6 年半ぶりに 7% を下回りました。 1 - 9 月期も 6.9% で、中国政府が目標とする 7% 前後の達成は微妙です。

「最大の問題は内需の不足です。 (分配面からみた) GDP に占める家計の収入の比率は過去 20 年ずっと下がっています。 もちろん絶対額は増えているのですが、伸び率は GDP の成長率をずっと下回ってきました。」 「これに対して、GDP に占める比率が上がってきたのは政府部門です。 政府がお金や土地など資源を動かす力を握っているので、国有企業や公共事業に限らず、政府部門が動力を失えば、成長率は下がります。」

- - 現在の経済減速は政府部門の動力不足、と。

「もちろん、政府が経済活動に占める比率を下げ、家計収入の比率があがるように改革を進めることがなにより重要です。 ただ、目下の構造では、中国経済は、地方政府の動きとやる気に大きく影響を受ける構造です。 改革を推進するにも、経済を発展させるにも、地方政府がかぎを握る。 私は『分権式権威体制』と呼んでいます。 中国は共産党の一党支配でありながら、インフラ整備から社会保障給付まで行政の実態はかなりの程度、地方政府に依拠しています。 皇帝の時代から軍事と地方官吏の任命は朝廷の仕事でしたが、経済を動かしてきたのは地方の役人でした。」

- - 長い歴史に根ざした仕組みなのですね。

「いまも、土地をどう動かすかという実際の権限は、地方政府の手の中にありますし、銀行からお金をどこに流すかといった金融を差配する力も強い。 過去の高成長は、経済の実動部隊としての地方の役人が、GDP の成長率を伸ばせば出世するという評価システムのもとで達成されたものです。」 「いま、投資主導の GDP 至上主義は資源や環境の面からみても持続的ではない、というところは共有され始めています。 しかし、GDP に代わる出世の物差しとなる指標がない。 地方の役人はどう動いてよいか、分からないのです。」

- - 役人はお金を動かして、腐敗退治の標的になることも恐れて経済活動にちゅうちょしているとききます。

「腐敗退治じたいはもちろん、やらなければならないことですし、良いことです。 ただ、GDP に代わって、何をやれば評価されるのかをはっきりさせることが必要です。 罰則だけでなく、インセンティブが要ります。 その議論がされていません。」 「GDP の成長率で測れば良い時代は簡単でした。 しかし、環境保護や不平等の解消、役人としての清廉さなどをどう測ればよいのか。 中国は広く、中央政府ではわかりません。 その行政サービスをうける地域の人々がもっとも良く判定できることです。 必要なサービスはなにか。 それを住民の声を受けて推進するなかで新しい産業や経済の成長点も生まれてくるでしょう。」

- - 2014 年第 3 四半期から財政支出の伸びが急速に鈍り、第 4 四半期はマイナスになりました。 その後、中央政府も地方の公共事業の失速に気づき、春以降は回復させていますが、投資の鈍化は顕著です。 財政省は 9 月に「安定成長を財政が支援する政策措置」を発表しました。 重大建設プロジェクトの早急な実施を推進するとして、遊休資金の消化の加速を促しています。 お金を使え、と。

「上から目線で『都市化』を進めても、結局、不要な施設を増やすことになるでしょう。 何がほんとうの需要なのか、住民から聞く仕組みとして、身近な自治体での選挙が必要です。 しかし、現在進められている議論からは、こうした政治改革が抜け落ちています。」 「さらにいえば、司法の独立がないうえ、権力を役人に集中させ、腐敗をうんでしまうシステムを改革しないまま、取り締まりを強化すれば、誰もが自分も捕まる恐れを抱きます。 現在の政権の風向きを見ながら、経済活動に積極的に関与するのは危険だと思うのは、ある意味、人間としては自然なことです。」

「中国がいま直面している経済問題を解決するには、政治改革は避けて通れない段階にきているのです。 中央政府は安定を望むがゆえに選挙を避けようとしているのかもしれませんが、地方レベルでの選挙は人々の不満や意見を吸収し、政策に反映できる仕組みとして安定作用があるはずです。 もともと進めようとしていたはずですが、止まったままです。」

- - 地方が抱える借金についてどうみていますか。 今年満期が来る元本部分については債券を発行して借り換えをすすめました。 地方政府が責任を負う債務とそうでないものに分けて責任の所在を明らかにしたり、地方債の発行を進めて市場による規律を取り入れたりしようとしています。 シャドーバンキングにもからんでいた地方融資平台(地方政府傘下の投資会社)の閉鎖や合併も進める、としています。

「財政状況は悪化の速度を落としたかもしれませんが、改善しているとは言えません。 中国の地方政府の借金はこれまで、基本的には債券という形で自ら調達したものではなく、シャドーバンキングなどを含めて土地を担保に金融システムのなかから借りたものです。悪化にまかせれば、金融システム不安につながりかねない問題です。」

- - 中央政府が助けるでしょう。

「みながそう考えているなら、まさにモラルハザード(倫理観の欠如)に陥っています。」 「中国で一線、二線と呼ばれる上海や北京、広州や各省の省都を除く、三線、四線と呼ばれる地方の都市の不動産市況はますます悪くなっています。 土地を担保にお金を調達してきた地方都市はどうするのでしょうか。 地方財政が(中央政府に頼らずに)独立していれば破産してしまってもおかしくない。」 「中央政府が助けるとすれば、中央財政に圧力がかかります。 銀行に借金を棒引きさせて始末をつけさせようとすれば、不良債権になります。 まだ顕在化していませんが、経済成長率が下がるなかで非常に深刻な問題です。」

- - どうすれば?

「地方の財政に住民の意思が反映されるものにしていく必要があります。 住民も財政に責任を負うことによって、地方政府を監視する力が働きます。 やはり地方の選挙が重要な役割を果たすでしょう。独立した司法を含めて、政府をしばる仕組みがないなかで、規律ある財政システムを持つのは難しい。 政治改革を議論の対象から避けたままで、経済成長を続けることはますます、難しくなっていると思います。」(編集委員・吉岡桂子)

許成鋼 (シュイ・チョン・カン) 1950 年生まれ。 文化大革命に青春期がぶつかり、高校、大学期は農村で過ごし、独学で清華大学大学院(機械)に入った。 84 年に奨学金を得て米国へ。 ハーバード大学では、東西冷戦下のハンガリーからやって来ていた社会主義経済の批判的研究で知られる学者、コルナイ・ヤーノシュ教授(現在は名誉教授)に学ぶ。 その後、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教壇に立ち、2009 年から香港大学教授を務める。 主な研究領域は、経済体制の移行と政治や金融、土地、法律制度との関係。 中国経済にかかわる論文が多い。

中国では「右派」に位置づけられる知識人一家に生まれて育った。 父親がアインシュタイン研究で著名な民主派科学者の許良英さん(2013 年死去)。良英さんは天安門事件で捕らえられた若者を救おうと声明を出し、10 年間自宅に軟禁された。 成鋼さんによると、両親が住むアパートの一階には父を見張る公安が住み込んでいたという。 米国の物理学会から人権擁護に尽くした科学者として、アンドレイ・サハロフ賞が贈られている。 母親も歴史学者、王来棣さん(2012 年死去)。両親の没後にようやく出版された「民主の歴史(2015 年)」の序文は、中国の改革派の重鎮、法学者江平氏と経済学者呉敬l氏が寄せている。

成鋼さん自身は母校の北京の清華大で特別招聘(しょうへい)教授として教えることもあるが、常勤の職場は大陸には置いていない。

取材を終えて

中国共産党が 10 月 29 日まで 4 日間にわたって開いていた中央委員会第 5 回全体会議(5 中全会)で固めた 2016 - 20 年の「第 13 次 5 カ年計画」の概要について、中国の習近平(シーチンピン)・国家主席の発言が伝えられました。 11 月 3 日の新華社通信によると、経済成長は「中高速成長の維持」とし、2020 年までに国内総生産 (GDP) と住民の一人当たり所得を 2010 年の 2 倍にするという目標を重視して、5 年を通じて少なくとも「年 6.5% 」の成長が必要といいます。

同時に「年平均の潜在成長率は 6 - 7%」で、さまざまな条件を考えると「7% 前後」の成長は可能だろう、とみています。 来年 3 月の全国人民代表大会(全人代)で採択される詳細な計画のなかに、具体的な数字が書き込まれる見通しです。 最低条件とする 6.5% まで引き下げるか、可能性としての 7% を維持するか。 「直面する不確実性は高い」と指摘しているところをみると、6.5% に下げる可能性が高そうです。

私は特派員として北京に勤務していたとき、第 11 次、第 12 次の 5 カ年計画の報道に携わりました。 目標値はそれぞれ 7.5%、7% でした。 中国は各地方都市も、毎年分と 5 カ年計画と両方の GDP の成長率目標を出しています。 2014 年は 31 の省・直轄市・自治区のうち、チベット自治区を除くすべてで、経済成長率の目標を達成できませんでした。 こうした事態に、上海市は 2015 年から設定を見送っています。 私は中央政府ももう、やめたらどうか、と思います。 とりわけ、長い歳月をしばる「5 カ年計画」の目標はナンセンスではないでしょうか。

経済は生きものです。 GDP は、雇用や物価など具体的な目標ではなく、経済活動の結果としての指標です。 その目標値が政治的な「メンツ」となり、あらゆる政策手段を駆使して、あるいは数字をごまかして「作る」弊害のほうが大きいのではないか、と思うのです。

許さんが指摘するように、地方の役人が人事評価を得ようと必死で「作る」結果、全国には人が住まないマンションや使われない施設が乱立します。 住民のニーズに見合わない人を豊かにしない「GDP」の典型ともいえます。 「和諧」をスローガンにした胡錦濤(フーチンタオ)政権時代、成長率目標に代わる評価基準を「緑の GDP」と言って、環境に求めるとみえを切ったこともありました。 しかし、評価の基準が難しく、機能したとはいえません。

今回の「5 中全会」の目玉となった一人っ子政策の全廃。 これは、「すべての夫婦に二人まで認める」わけですから、自由になったわけではありません。 「ふたりっこ政策」の開始といった方が良いかもしれません。 このニュースで思い出したことがあります。

1970 年代末に一人っ子政策を始めた中国政府は、政策を徹底させるために、やはり地域間の競争をさせました。 一人っ子の違反率を優劣をはかる基準に加えたのです。 このことが、強制的な中絶や不妊手術を招き、一部では重大な人権侵害を引き起こしました。 生まれてきた赤ん坊を母親のそばで水につけて殺してしまう事件もありました。 もともと子供をとても大切にする国柄で、役人がそこまで徹底して残酷になった背景には、数字ではかれる地域間競争があったことは大きいでしょう。

では、経済成長を支える労働力を増やそうと「ふたりっこ政策」に転じたいま、二人目を奨励するには何が必要でしょうか。 今度は、教育費の補助や施設の整備などで、地方政府にとっては財政負担になることばかりです。 一人っ子政策のときの罰金収入や避妊手術や薬にからんで業者とつるんで役人ももうけていたような利権のインセンティブもなくなります。 しかも、すでに農民や少数民族、都市住民でも夫婦どちらかが一人っ子なら二人目は認められていることもあって、簡単には出産に踏み切る夫婦が増えるとも思えません。 地域間競争で、「ふたりっこ」を徹底させることはできるでしょうか。 難しそうです。

許さんの言う「分権式権威主義」体制の歴史が長い中国で、その風土をいかして様々な政策を機能させるためには、やはり住民のニーズをくみ取る自治体での選挙が有効な道具になるでしょう。 ただ、5 中全会のコミュニケにも、「党が経済・社会発展活動を指導する体制・仕組みを整える」、「各民族人民の祖国を建設する主人公としての意識を引き出す」とはありましたが、伝えられた習氏の発言を含めて政治改革につながるような文言は見あたりませんでした。 (asahi = 11-4-15)


中国主席「年 6.5% 以上の成長必要」 新 5 カ年計画で明言

定年退職年齢を引き上げへ

【北京 = 大越匡洋】 中国共産党は 3 日、2016 - 20 年の第 13 次 5 カ年計画の草案を公表した。 習近平国家主席は同日、計画で目標とする「中高速成長の維持」について「年平均 6.5% 以上の成長が必要だ」と明言した。 高齢化の進展や働き手の減少に伴う経済成長の鈍化への危機感を鮮明にし、計画では定年退職年齢を段階的に引き上げる方針を打ち出した。

今回公表された中国の 5 カ年計画の草案は 10 月 29 日に閉幕した党中央委員会第 5 回全体会議(5 中全会)で採択したもので、国営新華社を通じて公表した。 新華社は併せて、習氏自身による「計画の解説」も配信した。 中国では 15 - 59 歳の就業年齢人口が減り始めている半面、60 歳以上は総人口の 15% 強に当たる 2 億人超に達している。 働き手の減少が潜在成長率の低下を招いており、習氏は「高齢化の圧力を和らげ、労働力の供給を増やす」と強調した。

16 年からの計画を巡っては、すでに 5 中全会閉幕時のコミュニケで、30 年余り続く「一人っ子政策」を撤廃し、すべての夫婦に第 2 子出産を認める方針を表明していた。 加えて、現在は原則、男性 60 歳、女性 50 歳としている定年退職年齢を「段階的に引き上げる政策を公布する」と明記した。 習氏は、次期計画で目標とする「中高速成長の維持」の具体像にも初めて言及した。 経済成長がいくぶん鈍る「新常態(ニューノーマル)に入った」との認識を示しつつ、20 年までに 10 年比で国内総生産 (GDP) と所得水準を倍増する目標の実現を重視し、向こう 5 年で必要となる「年平均 6.5% 以上の成長が最低ラインだ」とした。

今年までの現行計画では年平均 7% の成長を前提としていた。 計画には通貨・人民元の改革をさらに進める方針も盛る。 国際通貨基金 (IMF) の準備通貨である特別引き出し権 (SDR) への人民元の採用をめざし「交換が可能で、自由に使える通貨とする」との目標を掲げた。 数値目標などを盛った詳細な計画は、来年 3 月に開く全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で正式に決定する。 (nikkei = 11-3-15)


中国中鋼の債務不履行、政府はジレンマに直面

[上海] 中国国有の大手資源商社、中国中鋼集団(シノスチール)が事実上の債務不履行(デフォルト)に陥り、政府は国有企業改革を断行するのか、中国中鋼を救済して従業員の雇用を守るのか、難しい選択を迫られている。 中国中鋼は 19 日、流動性の問題を理由に社債の償還期限を延長し、利払いも遅らせると発表。 中国国有企業のデフォルトリスクをめぐる懸念に火が付いた。

政府は 9 月に一部赤字企業の閉鎖容認などを盛り込んだ国有企業改革プランを打ち出している。 計画実行には 5 年を要する見通しだが、大手国有企業の多くは巨額の負債を抱えており、早急に手を打つ必要がある。 こうした国有企業の従業員数を合わせると約 750 万人に達する。 国内メディアは政府が中国中鋼の救済に動きそうだと報じているが、金属業界の内部からも救済は悪しき前例になるとの声が出ている。

ベイジン・メタル・コンサルティングの Xu Zhongbo 社長は「中国中鋼は典型的なゾンビ企業。 政府は経営破綻させるべきだ。」と話す。 中国財政省のデータによると、今年 1 - 8 月の国有企業の負債総額は 71 兆 7,600 億元(11 兆 2,900 億ドル)で、前年同期から 11% 増加した。 この期間中に調達コストは 12.1% 上昇し、企業の返済負担は増している。 中国の格付け会社の中誠信国際信用評級によると、中国中鋼の負債総額は 1,000 億元を超えており、2011 - 13 年の資産に対する負債比率は 98% に達した。 中国中鋼の広報担当者のコメントは得られていない。

社会の安定を優先

中国の国有企業は景気の減速、とりわけコモディティと造船の両セクターが悪化に見舞われており、複数の幹部は政府は改革計画を後退させざるを得ないとみている。 鉄鋼 2 位の宝鋼集団の徐楽江会長は 21 日記者団に対して「政府は社会的な安定を最優先事項に据える必要があり、傍観しないだろう」と語った。 しかし一方で政府は鉄鋼業界の一部から、最初の段階で国有企業を優遇し巨大化させてしまったと批判も浴びている。

ベイジン・メタル・コンサルティングの Xu 社長は、中国中鋼の過去 10 年間の軌跡は多くの国有企業がたどった道を象徴していると指摘。 「買収を精力的に進め、海外の鉱山に大型投資を行い、民間鉄鋼会社をもてあそんだ結果がこのありさまだ」と話す。 中国中鋼は 2004 年に当時の会長が事業の多角化に乗り出し、防火材や機械製造分野に進出した。 さらに世界金融危機が勃発し、海外の鉄鉱石供給網で支配権を強めたい政府が鉄鋼会社に鉱山向け投資の促進を働き掛けたため、鉄鋼会社の負債は膨らんだ。

中国中鋼傘下のシノスティール・ミッドウェストは 2011 年 6 月にオーストラリアで進めていた 20 億ドルの鉄鉱石開発プロジェクトの中止を余儀なくされた。 今年 4 月には同じくオーストラリアのブルー・ヒルズ鉄鉱石鉱山も閉鎖した。 政府は国有企業改革の一環として、国有企業が取得した合弁事業のうち経営効率が悪いものについてはどんどん解体し、再編しようとしている。 しかし国有企業の負債増大で、デフォルトの瀬戸際に陥る前にことを成し遂げるという困難に直面している。

中国アルミ(チャルコ)の幹部は「政府がどう国有企業改革を進めるのか分からないが、とてつもなく難しいだろう」と述べた。 (Ruby Lian and David Stanway、Reuters = 10-23-15)


中国は日本の「失われた 10 年」前夜と似た軌道たどる - チャノス氏

中国は現在、日本の「失われた 10 年」前夜によく似た軌道をたどっている。 ヘッジファンド運用者のジム・チャノス氏がこのような見方を示した。 債務水準が経済成長の 2 倍のペースで膨らんでいる状況を指摘した。 キニコス・アソシエーツ創業者の同氏は 22 日にニューヨークで開かれた中国に関するパネル討論会で、「これは借金中毒の経済だ」と述べた。 中国の「破綻が差し迫っている」とは思えないとしながらも、1991 年の資産バブル崩壊の直前の日本に似た道筋をたどっているとの認識を示し、「ステロイドに依存している状態だ」と語った。

中国の融資拡大ペースは前年比で約 15% と 2009 年の 30% 強から減速しているものの、なお経済成長率の 2 倍の伸びとなっている。 家計と企業の負債合計は 6 月時点で国内総生産 (GDP) の 207% と 2008 年末の 125% から増えた。 日本の負債は 90 年の段階で GDP の 176% と 80 年の 127% から増大していた。 チャノス氏は突出した債務問題の「解決には時間がかかる」とした上で、中国の見通しに弱気だが、中国株を空売りしてはいないと述べた。 株式市場は経済活動の信頼できる目安ではなく、中国経済の減速によって世界の資源・鉱山会社がむしろ犠牲になると予想した。 (Bloomberg = 9-23-15)


中国経済、7% 成長は本物か GDP 統計に疑い

我々はとっくに、中国の偽物には慣れっこになっている。 腕時計の偽物。 DVD の偽物。 最近ではゴールドマン・サックスの偽物まで登場している。 しかし、もっと根本的なものまでが偽物だったら、どうなるのだろう。 中国の国内総生産 (GDP) の数字がいわれているほどすごいものではなかったとしたら、一体どうなるのだろうか。 これは多くのエコノミストが以前から抱いていた疑念だ。 第 1 に、中国が発表する GDP 成長率のデータは、本当だろうかと疑ってしまうほどスムーズだ。 ほとんどの国が好不況の波にさらされている一方で、中国だけはそんな波には関係なく成長しているように見える。

第 2 に、省のデータの合計と国全体のデータが一致しないことがある。 中国の貿易統計と貿易相手国のそれとがマッチしないことも少なくない。 こうした不一致は、国土があまりに広く経済活動の計測が非常に難しいためでもある。 だが、政府幹部の報酬が経済成長の粗雑な指標に基づいて決められるという、ゆがんだインセンティブのせいでもある。

中国経済が恐ろしく速いペースで成長している間は、そうしたことはあまり問題にならなかったのかもしれない。 8% だろうと 10% だろうと、経済が成長していることは間違いなかった。 次々に姿を現す建物、好況にわく都市への人口流入、国民の生活水準の明らかな改善など、証拠はそこら中に転がっていた。

5% 位なら軟着陸できない可能性

だが、経済成長が - - ことによると劇的に - - 減速している今、GDP 統計の正確さを判定することは以前よりも重要になっている。 もし現在の成長率が中央政府の言う通り 7% であるなら、官僚たちは昨今の市場の変動にもかかわらず、投資主導の経済成長からの脱皮を進める一方で中国経済のソフトランディング(軟着陸)を成し遂げつつあることになる。

だが、その一方で、もし現在の経済成長率が 5% かそれより低い水準に低下しているのであれば、ソフトランディングという望みはかなえられないかもしれない。 低成長は社会不安を引き起こす恐れがある。 あるいは、当局が景気刺激策の追加に踏み切る可能性もあるだろう。 その場合、成長率は短期的には上昇するだろうが、長期的には返済できない債務という形で問題が積み上がっていくことになる。 現在の経済成長をうんぬんする前に過去の成長を調べることが有用だ。

最も状態が良いときでさえ、GDP は経済活動を計測するにはかなり粗雑な指標だ。 人々の幸福度を測るとなればなおさらだ。 中国の経済成長のかなりの部分は、若い(無給の)母親を工場労働者に、地中の石炭をエネルギーと汚染に、そして共有地を私有地にそれぞれ転換することでもたらされてきた。 中央計画経済の過去を持つこの国は、第 3 次産業の活動よりも、鉱工業生産という粗い指標を計測する方を得意としている。

独立調査機関コンファレンス・ボードのエコノミスト、ハリー・ウー(伍暁鷹)氏の研究によれば、中国の 1978 年から 2012 年にかけての経済成長率は年率 7.2% だ。 実に目覚ましい高成長ではあるが、中国政府の推計値 9.8% を 2.6 ポイントも下回っている。

「12 年の成長率はわずか 4.1%」

またウー氏によれば、中国は生産性の伸び率を過大に表示する一方で GDP デフレーターという指標で測るインフレを過小に表示している。 もしデフレーターが過小に表示されれば、インフレ調整後の「実質」成長率は過大に表示されることになる。 ウー氏はさらに、中国当局は不況期に成長率を過大に表示したり、外的ショックの影響を実際よりも小さく見せたりしていると述べている。

同氏が英国の経済史家、故アンガス・マディソン氏とともに開発を手伝った手法で行った推計によれば、中国の 08 年の成長率は 4.7% (政府当局の推計値は 9.6%)で、12 年の成長率はわずか 4.1% (政府推計は 9.7%)になるという。 では、現在の値はどうなるのだろうか。 キャピタル・エコノミクスをはじめとするいくつかの調査機関は、現首相の李克強氏が 07 年に口にした言葉にヒントを得た。 GDP を信頼するよりも電力や鉄道貨物、そして銀行貸し出しに着目すべきだという、あの発言だ。

キャピタル・エコノミクスは貨物輸送、海上輸送、電力使用量、不動産販売、旅客数などから「経済活動代理指数」なるものを算出して使用している。 これらのデータは量で測られるため、正確さの疑われる推計価格に左右されないのが特徴だ。 この代理指数によれば、第 2 四半期の経済成長率は 4.3% で、政府当局の推計値である 7% を大幅に下回る。

捕捉できないサービス部門の成長

ただ、この指数には欠点が一つある。 キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ジュリアン・エバンズ・プリチャード氏も認めているように、最近は中国の成長のかなりの部分がサービス部門で見受けられるものの、この代理指数はサービス部門の活動を十分に捕捉できていないのだ。 そのため、真の成長率は恐らくこの代理指数と当局の推計値の間のどこかにあるのだろうと同氏はみる。

ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディ氏は、この議論をさらに推し進める。 同氏によると、エコノミストたちはおおむね、現在 GDP の半分近くを占める中国のサービス部門のダイナミズムを評価できなかった。 サービス業の活力の大半は統計に反映されていない。 ラーディ氏は、中国が公式数値の 7% を下回る水準まで減速したと考える理由はほとんどないと言う。 悲観論が広がるこの時期にあって、大胆な主張だ。

この意見は中国の経済的な重心が一般的に国有の製造業から一般的に民間所有のサービス業に移ったとの見解を決定的な根拠としている。 そのような変化はまさに中国が必要としているものだ。 もしラーディ氏が多少なりとも正しければ、次第に厳しさを増す数字にも希望の兆しがあるのかもしれない。 (David Pilling、The Financial Times = 9-18-15)