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中国、力任せの株価対策 市場ルール軽視に懸念 急落が続いていた中国の株式市場は 10 日まで 2 日連続で反発し、パニックは収束の気配を見せ始めた。 政府の力任せの株価対策が効果を発揮しつつある格好だ。 ただ、市場ルールを軽視したとも取れる対策が、市場をゆがめたことの「副作用」も懸念される。 代表的な指数の上海総合株価指数は 8 日、直近のピークから 32% 安まで下落したが、その後の 2 日間で同 25% 安まで値を戻した。 株価が暴落して個人投資家が財産を失えば、社会不安につながる可能性がある。 これを恐れて中国政府は 4 日以降、なりふり構わぬ市場への介入に乗り出した。 値下がりの要因となる新規株式の発行を停止。 国有証券大手を中心に株式の買い支えを打ち出した。 対策は日を追ってエスカレートした。 理論上は無限にお金を刷ることができる中央銀行の中国人民銀行が、国策会社を通じて証券市場に資金を供給すると発表。 株の買い支え指示はほとんどの国有企業に広がり、上場企業の大株主も株の買い増しを求められた。 9 日には捜査機関まで加わった。 孟慶豊・公安省次官が証券監督当局に乗り込み、「悪意のある空売りを取り締まる」とアピールした。 国内からは「法的には不透明だ(上海の研究者)」と批判も起きた。 自社株の取引停止を申請できる制度の利用も殺到し、8 日からは全上場企業の約半分が取引できない異常事態が続く。 取引される株の数をしぼり、株価の上昇をねらった当局の意向、との見方もある。 停止している銘柄の取引再開や、政府の対策が終わる「出口」が今後、市場の波乱要因となりそうだ。 みずほ銀行(中国)の細川美穂子主任研究員は「中国市場から離れる投資家が出てくる可能性もある」と長期的な影響を指摘する。(北京 = 斎藤徳彦、asahi = 7-12-15) 急落する中国株式市場、奇妙な 5 つの特徴 中国の株式市場は政府による厳格な統制と個人投資家比率の高さという点で、世界でも独特な市場だ。 株価が急落する中、中国政府は下落を食い止めるため奔走しており、ますます特異な状況が生まれつつある。 奇妙な 5 つの特徴点を挙げてみよう。
中国株価対策に新たな犠牲者 - やればやるほど証券会社に負担 中国が株価急落に歯止めをかけようと打ち出した緊急対策が新たな犠牲者を生み出しつつある。 国内の証券会社だ。 バンク・オブ・アメリカ (BOA) の中国株式戦略責任者、崔●(= 山冠に魏)氏は、週末に発表された株価対策で最も大きな打撃を受けるのは証券会社だろうと指摘。 相場を支えるため株式を買い入れる「国への奉仕」で、証券各社の利益とバランスシートに悪影響が及ぶとみている。 中国国際金融 (CICC) によれば、政策当局者による介入は本土株を短期的にある程度支えるとしても、業界のビジネスモデルを揺るがしかねない。 こうした長期的な影響をめぐる懸念が、緊急対策の効果が薄い香港で証券各社の株価に織り込まれつつある。 6 日の香港株式市場では、国聯証券が上場初日の取引で一時 42% 下げた。 中信証券(CITIC 証券)や海通証券も下落。 対照的に上海上場の海通証券株は上昇した。 京華山一国際の調査責任者キャスター・パン氏(香港在勤)は「中国政府が新たな対策を発表すればするほど、市場の背後で問題が増えていることを意味する。 株式市場を支える中国のやり方は投資家が望んでいる方法ではない。」と述べた。 中国の主要証券会社 21 社は株式購入基金に 1,200 億元(約 2 兆 3,700 億円)を拠出すると表明している。 (Bloomberg = 7-6-15) 中国株安、IPO 拡大で当局が直面するリスクに [上海] この 2 週間で 20% 下落した中国株。 主因は新規株式公開 (IPO) ラッシュで需給が悪化したためだが、このことは景気鈍化に株式市場の活用を考えていた中国当局が直面するリスクも示している。 26 日に中国株は 7% 強下落し、1 日あたりの下落率としては世界的な金融危機以降で最大となった。 これを受け、中国人民銀行(中央銀行)は 27 日に追加利下げなどを実施した。 スタンダード・チャータードのアナリストは顧客向けの 27 日付ノートで「中国政府は資本市場を拡大し、銀行融資への依存度を引き下げるために強気相場を維持することに躍起となっているようだ」と指摘。 実際、中国株式市場の主要指数は昨年 11 月以来で最大 150% も上昇しており、景気が減速して不動産価格も下落するなか、数少ない明るい話題の 1 つとなっていた。 中国当局は企業がこうした好環境を生かし、IPO などで資金調達を図ることを後押し。景気の下支えと、信用取引の拡大に伴う過剰流動性の吸収という 2 つの目標をいっぺんに達成するシナリオだった。 しかし、目論見通りに進むとは限らない。 最近における一連の IPO で 1 兆ドル強に及ぶ資金が一時的にロックアップされたことが、中国株急落の要因となった。 中国では IPO に申し込む際、投資家は抽選が行われている間、代金を預け入れる必要がある。 この短期間に多額の資金がロックアップされることになる。 6 月 14 日から始まる週には 24 件計約 65 億ドルの IPO が認められ、一時的に 1 兆 1,300 億ドルがロックアップされた。 先週の数字はまだ明らかになっていないが、26 日に上海市場に上場した国泰君安証券 は IPO で 49 億ドルを調達。 中国市場では 2010 年以降で最大の規模となった。 中国証券監督管理委員会(証監会)は 26 日、中国株安について、正常な調整だと指摘。 同委員会はその前日、向こう 2 週間でさらに 28 件の IPO を実施することを認可した。 2013 年に 1 年強にわたり IPO が凍結されていたことに伴い、IPO の承認待ち企業が積み上がっていた。 証監会はこのため、1 月に IPO 承認ペースを月間当たり約 20 件に倍増。 4 月にはさらに倍増となる月間当たり 40 件超に加速させた。 証監会はさらに、上場企業の増資についても認可ペースを加速させている。 今年上期の増資規模は 700 億ドルを上回っており、既に 2014 年通年の 2 倍となっている。 (Reuters = 6-29-15) 中国の追加緩和、株価安定図るも投機煽る恐れ [上海] 中国人民銀行(中央銀行)が 27 日発表した追加緩和は、わずか数週間で 20% も下落した株式市場の安定が狙いとみられる。 しかしエコノミストの間からは、経済の基礎的諸条件からかい離した株高を誘発し、経済に悪影響を及ぼすと懸念する声も聞かれる。 中銀は 27 日に貸し出しと預金の基準金利を引き下げ、預金準備率も一部で引き下げた。 スタンダード・チャータード銀行のエコノミストチームは「政府は強気の株式市場を維持し、資本市場の拡大と銀行融資への依存低下を望んでいるようだ」と指摘した上で、「しかし金融政策をこうした目的で使うのは疑問だ」とした。 問題の 1 つは、中銀が株安を食い止めるため金融緩和を利用しているとの印象を投資家に与え、一方向の投機を促しかねない点だ。 また中国では株価上昇が成長鈍化への対応策にならないという問題もある。 株高は「資産効果」を通じて経済の他の分野での投資や支出を刺激するのが一般的だが、中国ではこうした効果が出ていない。 株式市場の時価総額は過去 1 年間に差し引き 7 兆 6,000 億ドルと 2014 年の国内総生産 (GDP) に匹敵する規模で増大したが、小売売上高は減少傾向が続き、企業投資は弱いままだ。 民間の調査からは、第 2・四半期に始まった国内企業の業績回復が緩慢で株高の効果をそいでる様子がうかがえる。 民間のまとめた「中国版ベージュブック」は「全ての指標から読み取れるのは、株高に反応するはずの設備投資がほんのわずかしか上向かず、融資需要も同じ傾向を示しているという点だ」と指摘した。 株高は経済への波及効果が薄い一方で、相場が大きく崩れたときの悪影響は小さくない。 キャピタル・エコノミクスのマーク・ウィリアムズ氏は調査ノートで「株安の継続によって金融セクターの足元での過熱が沈静化し、中国の GDP 成長率が 1% ポイント下押しするというのが最良のシナリオだ。 しかし過去 1 年間に借り入れが急速に拡大しており、中国経済は急激に鈍化する恐れがある。 株安に絡んで債務不履行が続発し、カウンターパーティーリスクが高まり、信用市場が機能停止に陥るというのが主要な下振れリスクだ」と分析した。 アナリストによると、中国の株式市場は事実上、昨年 11 月の予想外の利下げ後に上昇し始め、以来、中銀による流動性供給の動きが注目の的となってきた。 そのため景気の緩やかな回復を示す材料が出ると投資家は金融緩和サイクルの終了を意識し、株価の急落を招きかねない。 中銀は今回の追加緩和を株式市場の動きと直接結びつけてはいない。 しかし政府が商業銀行の預貸率撤廃を発表した直後というタイミングから、株式市場の動きだけをにらんだ決定だとの受け止め方が多い。 大手行の銀行筋は「下落している株式市場の救済に近いと考えている」と話した。 ((Pete Sweeney、Reuters = 6-29-15) 高債務が中国企業圧迫の恐れ 銀行は債務株式化を = 人民銀高官 [上海] 中国人民銀行(中央銀行)の高官は 11 日付の中国証券報に寄稿し、過去数年間に高金利で資金を借り入れた非金融企業は「債務のわな」に陥る恐れがあると警告した。 銀行は不良債権を優先株に交換できる制度を活用して企業の債務削減を支援すべきと主張した。 債務の株式化により銀行は貸し出し余力が増すと指摘した。 人民銀行金融研究所のディレクター姚余棟氏が、富裕層向け金融サービス会社ノア・ホールディングス(諾亜財富)の調査部門責任者と共同で執筆した。 今後 5 年間で約 2 兆 5,000 億元(4,028 億ドル)の債務を優先株に交換する必要があると試算している。 (Reuters = 6-11-15) 中国経済、下半期に上向く見通し = 人民銀エコノミスト [北京] 中国人民銀行(中央銀行)のエコノミストは、2015 年の経済成長率予測を 7.1% から 7.0% に下方修正した。 経済活動の下振れ圧力が強まっていることが理由。 ただ、下半期の経済成長率が上半期を上回るとの見方も示した。 2015 年の消費者物価指数 (CPI) 上昇率の予測は 2.2% から 1.4% に大幅に下方修正した。 予測は人民銀行の首席エコノミスト、馬駿氏を中心とするエコノミストがまとめた。 人民銀行の見解ではなく、エコノミストの見解としている。 経済の先行きには慎重ながらも楽観的な見方を表明。 不動産市場の「安定化が始まりつつある」との見方を示した。 金融緩和の効果が感じられるには 6 - 9 カ月かかるとも指摘した。 2015 年の生産者物価指数 (PPI) の予測は、従来の 0.4% 低下から 4.2% 低下に大幅に下方修正した。 (Reuters = 6-10-15) ノーベル賞経済学者クルーグマン「気をつけなさい、中国が世界経済を崩壊させる」 そのとき、日本は … 一見、高い成長率の裏で、中国経済のバブルは膨らみ続けている アベノミクスに多大なる影響を与え、世界中の市場関係者から一目置かれる経済学者が「次なるバブル」に懸念を示している。 もし、これが弾ければかつての日本のバブル崩壊を超える大惨事になる。 それはすでに始まっている 今、こうして話しているあいだにも、バブルが崩壊しつつあります。 中国経済のバブルのことです。 今の中国は '80 年代後半の日本のバブル経済と似たような状況。 とりわけ過剰な投資が問題を肥大化させています。 さらに悪いことに、中国という国には日本のように社会的な「結束力」がない。 日本のバブル崩壊と比べものにならないくらい深刻な事態が起こる可能性が高いのです。 '08 年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏。昨年 11 月に来日した折には安倍首相と面会し、消費増税の中止を進言。 結局、首相は再増税の時期を延期した。 一国の政策決定者にこれほど影響力を持つ経済学者は極めて稀だ。 米国では NY 市場が史上最高値を更新し、日本の東証も 15 年ぶりの高値圏にある。 一見、好調に見える世界経済だが、次なる「火種」はないのか、たっぷりと語ってもらった。 まずはアメリカの状況から話しましょう。 現在、世界中の市場関係者が注目しているのがアメリカの利上げについてですからね。 一言でいえば、アメリカ経済は好調です。 何もかもが正しい方向に向かっています。 住宅着工件数も個人消費も順調に伸びており、雇用も活気づいている。 雇用が増えて住宅販売が伸び、それがまた新しい雇用を生むという好循環です。 もっとおカネを刷ろう では、利上げが正当化されるかと言えば、そうではありません。 ただでさえドルが強くなりすぎており、それがアメリカの輸出に打撃を与え始めています。 さらに原油価格の低下も景気の足かせになっています。 アメリカはシェールガスという新エネルギーに多大な投資をしてきましたが、原油安で競争力が落ちている。 世界全体で見ると原油価格の下落は経済の追い風になりますが、アメリカでは事情が異なるのです。 だから私は早すぎる利上げに断固として反対します。 確かに経済はよくなってきているが、まだ充分なインフレになっていないし、賃金は増えていない。 急いで利上げに踏み切ってはいけない。 '00 年の日本や '11 年のヨーロッパが、早すぎる利上げのために景気を腰折れさせてしまったことを反面教師にするべきです。 アメリカがデフレに陥ったら世界経済に対する打撃は大きい。 そこから巨大な経済危機が起こることも考えられます。 次に日本の状況ですが、昨年、2 回目の増税を中止したことは大正解でした。 安倍首相に直訴した甲斐がありました。 黒田東彦日銀総裁は安倍首相と国会の支持を得ているので一貫した政策を行うことができ、日本経済は金融面では最適の環境にあります。 しかし、インフレ率はいまだ望ましいレベルに達していません。 そもそも 1 回目の消費増税は必要ありませんでした。 デフレを完全脱却してからでも増税は遅くなかった。 そこまで財政規律を気にしなくても、日本には十分な国内資産があるため、ギリシャのようにデフォルトの懸念にさらされることはありません。 それより重要なのはおカネをもっと刷って、デフレから完全に脱却することなのです。 アベノミクスを成功させたいなら、昨年の消費増税を撤回することです。 デフレから脱却するには相当の「脱出速度」が必要で、そのためにはアメリカのように個人消費が伸びてこなければなりません。 賃金の上昇が追いついていないのに増税しては、脱出に十分な速度が得られない。 ですから、まだまだ日銀が出口戦略を描く段階ではありません。 無茶な金融緩和は国債暴落を引き起こすという人がいますが、その説は信憑性がない。 ハーバード大の経済学者ケネス・ロゴフのように国家破綻の可能性を煽るのが好きな学者がいますが、彼の論文は誤りが多い。 一方、日本にとって深刻なのは人口減少の問題です。仮に少子化対策に成功して、急に子供がたくさん生まれたとしても、その好影響が現れるのは、子供が働くようになる 20 年後です。 その前にすべきことは女性をもっと労働市場に呼び込むことです。 日本の女性の労働人口割合が他の G7 国並みになれば、1 人当たりの GDP が 4% も上昇するという IMF の試算もあります。 再び世界経済に目を転じましょう。 大きな懸念事項として、ギリシャ問題があります。 ギリシャがユーロから脱するべきだという声もありますが、今はそうすべきではない。 今、離脱するとかなり破壊的な事態になります。 そもそもギリシャのような国をユーロに加えてはならなかったのですが、今それを言っても詮ないことです。 ヨーロッパはギリシャを離脱させないまま、もっとアグレッシブに金融緩和を進めるべきです。 ECB (欧州中央銀行)は月に 600 億ユーロ(約 8 兆円)の金融緩和を行っています。 これは一見、巨大な額に思えますが、数兆ドル規模の緩和を行ってきた米国に比べれば、まだまだ穏当な額です。 EUは 政治的に複雑なので、ECB のドラギ総裁は政策決定に苦労していますが、デフレの瀬戸際から脱するためには大胆になるべきです。 言うまでもなく、まだまだ出口戦略を考えるべき段階ではない。 しかし、本当に注視すべき対象は日米欧ではなく、他にあります。 異常にバランスが崩れた経済である中国です。 数字の上では、中国は今でも 7% 以上の成長率を達成しています。 しかし、問題なのはその数字が政府による「極めて政治的な表明」に過ぎず、信用に足るものではないということです。 中国の投資額は GDP の 50%、消費が GDP の 30% です(日本はそれぞれ約 20%、55%)。 つまり投資が過剰でバランスが悪い。 投資のかなりの部分が不動産なので、大規模な不動産バブルが発生しています。 賃金が上昇し、労働力不足が生じているので、古い成長モデルはもう通用しません。 投資を 30%、消費を 50% という構造に変えていく必要があります。 その移行がうまくいかなければバブルが崩壊します。 現在もバブル崩壊は進行中です。 不動産バブルが大きく弾けると、中国の地方自治体は突如として財政難に陥ります。 中国経済は明らかに失速しています。 その証拠に鉄鉱石や銅といった商品価格が急落しています。 中国が原材料を輸入しているオーストラリアやチリの経済には深刻な影響が出始めている。 今後、中国経済は大きな調整を迎えるにちがいありません。 そしてその調整は世界経済にとって大きなリスクになります。 言うまでもなく、中国は巨大な経済圏です。 GDP の規模でいえば日本をはるかにしのいで世界 2 位の地位にあります。 人口が多いので、一人当たりの GDP で考えるほうがいいと思うかもしれません。 しかし、中国は物価が安く、購買力平価 (PPP) はすでに世界トップクラスです。 つまり中国の消費力は世界的に見てもかなり大きい。 中国経済の失速が世界経済に与える影響は計りしれません。 そしてとりわけ日本に与える影響は途方もないものになる。 '14 年度の日本から中国への輸出額は 13 兆 3,844 億円(前年比 6% 増)、輸入額が 19 兆 1,705 億円(前年比 8・6% 増)であることを考えれば、それも当然のことといえるでしょう。 先進国の中で、中国経済の動向に最も影響を受けるのが日本であることは間違いない。 このように私は中国経済の行く末を大いに心配しています。 しかし、中国のことをもっと心配しなければならないのは、あなたがた日本人なのです。 (「週刊現代」 2015 年 6 月 6 日号より、現代ビジネス = 6-4-15) 中国経済の高度成長はいつまで続くのか?
中国経済は 1980 年代以降、急速な成長を遂げ、GDP (PPP ベース)は既に米国と肩を並べるに至っている。 しかし、1 人あたりの GDP は、6,800 ドルと少ないのが現状となる。 巷では中国が高度成長は既に終わりを告げたとする見方で生じてきているが、果たして、専門研究者は中国経済の成長路線にどのような見方をしているのだろうか? そのようは中、ミネアポリス連銀の Jingyi Jiang と Kei-Mu Yi の 2 名の経済学者が連名で公開した中国経済の成長率の予想分析が注目を集めている。 この 2 名の経済学者は、過去において中国と同じように高度成長を遂げた韓国と日本の成長モデルをモデル化し、そのモデルを現状の中国経済にあてはまることにより、今後の中国経済がどのような成長を遂げるか、分析した。 その結果、中国経済は、韓国や日本経済のような低成長期にはまだ突入してはおらず、今後、更に半世紀近くに渡って高い成長率を遂げることが判ったとしている。 この結果、中国経済の 1 人あたりの GDP は、2061 年頃には、米国の半分近くにまで迫るものとなるだろうとしている。 また、この 2 名の経済学者は、韓国や日本経済の高度成長期とは異なり、中国経済の場合、世界経済にシームレスに統合を果たしていること、さらに、韓国や日本とは異なり、中国は世界の人口の 20% を抱える超大国であることを考慮すると、今後の中国経済の動向は、過去の韓国や日本経済とは比較にならない程、世界経済(もちろん米国経済にも)に影響を及ぼすものとなるだろうとまとめている。 (Harry Martin、business newsline = 5-28-15) 「超高層ビルの呪い」が中国経済を襲う? 興奮する大衆と慎重な投資家が見守るなか、上海タワーの完成が近づいている。 しかし、超高層ビルの完成には経済危機が続くと警告する経済学者がいる。 超高層ビルの呪いはまたしても中国を襲うだろうか。 前回、中国で最も高い超高層建築物が完成した 2008 年には、株式相場が大暴落した。 今夏、その向かいには、スチールとガラスでできた光沢を放つ建物が完成する。 上海タワーは世界で 2 番目に高いビルになる。 5 月 20 日、その中を覗いてみた。 「上海タワーの 120 階に来ています。 ここからの上海の眺めはすばらしいです。 他の中心商業地域が見え、有名な 2 つの高層ビルを見下ろすことさえできます。 この眺めは、間違いなく旅行者の間で人気を博すでしょうが、このような立派な建築物はビジネスとして採算が合うのでしょうか。(ロイター・リポーターの Jane Lanhee Lee 氏)」 このような自己満足的なモニュメントに対する常軌を逸した投資は、結局、危機を引き起こすことになると考える経済学者もいる。 中国経済は大丈夫なのだろうか。 上海タワーの完成は、中国の経済成長がここ四半世紀で最も遅く、株式市場の高騰が 2008 年に起こった前回の暴落以来、最大の水準となっている時期にあたり、新たな危機が懸念される。 とにかく高い、そして細い しかし、ブルジュ・ハリファの設計にも携わった建築家のマーシャル・ストラバラ氏は心配していない。 「世界で最も利益が出ている超高層ビルの一つはエンパイアステートビルだと思う。 でも完成後の 10 年間まったく利益が出なかった。 景気後退期に完成したからだ。 それは、世界最高のビルの呪いにも当てはまると思う。 完成直後に景気後退があったが、現在では、世界で最も借り手が多いビルの一つになっている。 象徴的なビルだからだ。 人々はそれを知っているから入居したがる。」 とはいえ、超高層ビルの呪いを信じている者たちは今夏、そびえ立つ輝かしい建築物が暗い時代をもたらすこと恐れて、投資をヘッジするかもしれない。 (東洋経済 = 5-21-15) 中国財政省、地方債の発行急ぐよう指示 税収悪化に警戒感 [上海] 中国の財政省は、税収の伸び鈍化に警戒感を示したうえで、地方債の発行を急ぐよう、地方政府に対して指示した。 声明で明らかにした。 中国財政省は、地方政府の財政担当局に対して「地方債の発行に関する作業をスピードアップし、発行を早急に完了するよう」要請した。 中国の地方政府は、土地の売却収入が大幅に落ち込むなど、財政状態が急速に悪化している。 さらに、地方債を発行して税収の減少分を補うという計画についても、当局の思惑通りには進んでいないもようだ。 江蘇省の債券発行は当初、4 月 23 日に入札が予定されていたが、理由が明らかにされないまま延期となった。 政府系メディアは、銀行はオファーされた利回りで引き受けることに消極的だったと報じている。 また新華社系のメディアは、投資家の関心が集まらないため、ある別の省も計画していた債券の発行を延期する可能性がある、と報じた。 (Reuters = 4-28-15) 中国 景気減速で海外へ「資金流出」 政府高官 中国では国内の景気が減速するなか、通貨 = 人民元を売ってドルを買う取り引きが活発になっていて、中国政府の高官は海外への資金の流出が起きているという見方を示しました。 中国の国家外貨管理局は、企業や個人などがことし 1 月から先月までの 3 か月間に行った為替の取り引きについて、通貨 = 人民元を売ってドルを買った金額が、ドルを売って元を買った金額を 914 億ドル(日本円でおよそ 10 兆 9,000 億円)上回ったと発表しました。 これは前の 3 か月間に比べてほぼ 2 倍の増加で、先月だけでも元が 7 兆円以上多く売られるなど、中国でのドル需要は月を追うごとに増えています。 この背景には、中国経済が減速する一方で、アメリカの景気が回復傾向にあるなか、企業の間で資金をアメリカなど海外への投資に充てる動きが広がっていることなどがあるとみられます。 国家外貨管理局の管涛国際収支局長は記者会見で、ドルの需要の高まりは中国から海外への資金の流出を示すものだと指摘したうえで、流出の規模は想定の範囲内であるものの、今後も資金の流れを注意深くみていく考えを示しました。 その一方で、短期的な投機資金、いわゆるホットマネーや違法な送金などの存在について、管局長は「あるとは言えない」と述べるにとどまりました。 (NHK = 4-23-15) 「AIIB」は習政権の頼みの綱 : 急降下する中国経済 中国の成長率が急降下している。 今年 1 - 3 月期の実質成長率は 7.0% と、昨年 10 - 12 月期の 7.3% からさらに低下。 「4 - 6 月には 6% 台突入が確実(証券系アナリスト)」の情勢となった。 過去 5、6 年、成長を牽引してきた過剰なインフラ建設、不動産開発を抑制し、成長を健全化しようとする習近平政権の政策が背景にある。 だが、成長率低下は膨大な過剰生産設備を抱える中国産業を全面崩壊させるリスクがあり、雇用不安、消費低迷も招きかねない。 起死回生を狙った習政権が進めるのが、この数週間、世界を揺さぶったアジアインフラ投資銀行 (AIIB) である。 中国全土に出現した「鬼城」 中国の成長率は 2007 年の 14.2% を直近のピークとして、ずるずると低下、昨年は政府目標 (7.5%) を下回る 7.4% まで低下した。 大きな流れを捉えれば、中国経済は 30 年間以上続いた高度成長期を終え、成熟化への入り口にさしかかったといえる。 アジアで同じように驚異の成長を遂げた日本や韓国がたどった道に重なる。 ひとつ違うのは、中国がまだ 1 人当たり国内総生産 (GDP) が 6,000 - 7,000 ドル水準の "中進国" で、農村に限ってみれば依然、途上国並みという点だ。 日本、韓国や欧米の先進国は、高成長の過程で国民全体の経済水準が底上げされ、工場労働者、農民も中流と呼べるまでになったが、中国は底上げができないまま成熟化しようとしている。 中国でこの数年、回避すべきリスクとして指摘されて来た「未富先老(豊かになる前に老いてしまう)」である。 構造的な低下傾向が見え始めた胡錦濤政権の後半から、中国政府がすがったのはインフラ建設、不動産バブルである。 必要性や収益性を度外視した高速道路、高速鉄道、港湾、空港、工業団地、高層ビル、集合住宅などが全国に驚異的な勢いで建設された。 その主役は地方政府と国有企業、不動産デベロッパーであり、財政資金に加え、ヤミルートでの資金調達が活用された。 ヤミの資金とはシャドーバンキングであり、その調達手法の 1 つが庶民を巻き込んだ高利の「理財商品」だった。 その結果、中国各地で槌音が響き、鋼材、セメント、アルミなどの素材からトラック、鉄道車両、重電機器、プラントなどの需要が生み出された。 その効果はすさまじく、中国の成長押し上げだけでなく、2008 年 9 月のリーマンショックからの世界経済の回復を中国の需要が牽引した。 だが、作っているうちは需要を生んでも、完成してしまえば多くのインフラは利用されず、全国に人の住まないマンション群、車の通らない高速道路、工場の建たない工業団地など「鬼城(ゴーストタウン)」が出現した。 さらに、建設資金の返済をしようにも多くのインフラは収入を生まないため、地方政府やその外郭企業は重債務を負うことになり、返済を受けられないシャドーバンキングや不動産会社の破綻が昨年あたりから現実化し始めている。 中国「大不況」の可能性 習政権はそうしたインフラ建設、不動産開発に依存した成長からの脱却を掲げ、成長の健全化、成長率の低下を意味する「新常態(ニューノーマル)」という用語を昨年春頃から使うようになった。 中国政府としては、ここで成長メカニズムを転換しなければ、いずれ中国が巨大な不良債権の塊になってしまうという危機感があった。 結果、習政権が財政による下支えをやめたことで、中国経済は一気に坂を転げ落ち始めた。 産業活動の指標である工業付加価値増加率は、2010 年に前年比 15.7%、2011 年に 13.9% だったが、2013 年には 9.7% と 1 ケタ台に落ち、2014 年の 10 - 12 月は 3 カ月連続で 7% 台となった。 また、消費の指標である小売売上高は、2010 年に 18.4%、2011 年に 17.1% だったが、昨年 8 月以降は 11% 台で低迷している。 さらに、住宅バブルの崩壊で、住宅販売総額は今年 1 - 2 月には前年同期比 16.3% のマイナスと大きく落ち込んでいる。 「このまま行けばデフレに突入し、失業率の上昇、企業倒産の連鎖から大不況に陥る可能性がある。」 中国の政府系シンクタンクの関係者ですらこう漏らすほど、中国経済の実態は深刻になっているのだ。 豊かさの果実をつかんだ中流層の手から果実が再び奪い取られ、果実を夢見て耐えてきた労働者、農民の目の前から果実が消え去れば、中国経済の崩壊というだけでなく、共産党一党支配の中国の体制そのものが根底から覆される恐れがある。 かといって、インフラ建設と不動産バブルに舞い戻れば、遠からずより大きな打撃を中国経済は受ける。 この手詰まり状態を打破する武器として中国指導部が考えついたのが、「シルクロード経済ベルト」と「21 世紀の海のシルクロード」の2つを包含する「一帯一路構想」であり、それを資金面で支える AIIB なのである。 数兆円規模の効果 シルクロード経済ベルトは、紀元前 2 世紀ころから絹、金、陶磁器、香料などの交易ルートとなっていた中国から中央アジアを抜け、中東、欧州に至るシルクロードの 21 世紀版を構築し、貿易の活性化、沿線の工業化、市場拡大を狙う構想。 そして海のシルクロードとは、海上貿易の拡大に加え、インド洋進出の拠点づくり、中東からの石油、天然ガスなどの輸入ルートの安全確保などが狙いだ。 そうした中国の新たな対外進出戦略に加え、AIIB でその一帯のインフラ建設を活発化することで、中国の企業のビジネスチャンス、端的に言えば、中国の過剰生産の製品への需要を創出することを習政権は考えているのである。 AIIB はすでに 57 カ国が参加を決めており、500 億ドルの資本金でスタートするものの、当初の構想以上に大きな融資能力を持つ可能性がある。 日本と米国が主導するアジア開発銀行 (ADB) は、資本金が 1,531 億ドルで融資残高が 850 億ドル前後、年間の新規融資が 130 - 140 億ドル。 AIIB がこの半分程度の融資を出せば、年間約 1 兆円規模となる。 中国経済からみれば小さく見えるが、国際金融機関は単独ではなく、民間銀行や各国の輸出入銀行などの政府系金融機関と協調融資をするケースが多い。 また、国際金融機関が融資をコミットするだけでプロジェクトの信用力が増し、民間企業の投融資も出てきやすい。 1 兆円は、実際には数倍の資金力として効果を発揮する可能性があるのだ。 中国共産党の "出先機関" 現状でも、鉄鋼産業だけで年間 3 億トンの過剰な生産能力を持ち青息吐息の中国産業は、中央アジアや東南アジアなどで巨大な建設プロジェクトが動き始めれば、その需要の過半を獲得できるだろう。 もはや国内では作り出せなくなった有効需要を、アジアの途上国、とりわけ中国の周辺国、影響力を及ぼせる地域で創出しようというのが AIIB の実態だ。 しかも、中国企業にとって有利なのは、AIIB の資金調達の柱のひとつが海外での人民元建て債券になることだ。 人民元はすでに貿易決済を通じて世界に流出しており、海外起債ができる環境にある。 人民元建てで調達した資金がそのまま人民元建てでプロジェクト代金として支払われれば、中国企業や中国の銀行は為替リスクを回避できるだけでなく、自国通貨であるがゆえに支配的立場になれるのは当然だろう。 かくのごとく、AIIB には人民元の国際化も含めてきわめて多重な目的が込められている。 日本と米国の参加、不参加に関係なく、中国は新たな成長戦略として一帯一路と AIIB を組み合わせて推進してくるのは間違いない。 つまり、AIIB は ADB や世界銀行との競合という側面で捉えるべきではなく、行き詰まりかけている中国経済の突破口、国際的な仮面をかぶった中国共産党の "出先機関" として見るべきなのだ。 とすれば、AIIB が慎重な融資姿勢になるはずはなく、10 年たてば大量の焦げ付きを抱えた国際金融機関に転落している可能性は十二分にある。 日本が静観を決め込むのは、決して間違いではない。 (高村悟、The Huffington Post = 4-20-15) |