中国経済の失速を示すものではない = 成長率見通し下方修正で ADB 総裁

[東京] 中尾武彦・アジア開発銀行 (ADB) 総裁(前財務官)は 17 日、都内で講演し、ADB が中国の 2014 年の経済成長率見通しを 8.0% から 7.5% に下方修正したことについて、「経済の失速を示すものではない」との見解を示した。

足元で広がる「中国リスク」について、短期的に大きな問題になるとは思っていないとした。 ADB は 16 日、中国の 2013 年の実質経済成長率の見通しを 7.7%、14 年は 7.5% に、いずれも 4 月時点の予想から 0.5 ポイント下方修正した。 最近の輸出入の減速や金融引き締めを反映したものと説明した。

中国の金融引き締め、「短期的に大きな問題になるとは思っていない」

足元では、影の銀行(シャドーバンキング)と呼ばれる銀行融資以外の金融取引に対する不透明感から「中国リスク」への警戒感が広がっている。

中国リスクについて中尾氏は「短期的には、ノンバンクのバブル的状況を抑えようと、人民銀行が信用の量を少し締めた結果、短期金利が振れ、人民銀行のやり方としてどうかという議論や引き締めが強化されればさらに減速するなどとの議論は確かにあり得る」としながらも、中国政策当局者には「成長は大事だが、消費を喚起し、不動産や民間の設備投資に偏らないバランスのとれた成長」に対する明確な意識があると強調した。

金融政策の手法についても「偏った形でノンバンクが発達し、消費者保護の観点からも放置できない問題になりかねない。 中小企業にカネがうまく回る形になっていない。」ことに対して「明確な形で行動した」と述べ、引き締めによって「短期的に、大きな問題になるとは思っていない」とした。 一方で、輸出の減速傾向は明確で、中国の主要輸出相手である欧州経済が低調なため「これまでのような輸出の勢いはないかもしれない」と見通した。

米出口戦略と資金フロー問題を注視

米国の量的緩和の出口戦略と新興国への資金フローの問題では、インドネシアでの株価の下げなどを挙げ、「資金の巻き戻しの恐れを感じ、彼らが注意していることは確かだ」としながらも、「リーマン・ショック後のような大きな動きになっているかというと、今までの困った経験から、各国の中銀によく注意しておかなければならないとの意識がある」と語った。

アジア共通通貨構想、アジェンダとする考えない

アジア共通通貨構想については「アジア開発銀行として、いまアジェンダとして取り上げて進める考えはない」と語った。 (吉川裕子、Reuters = 7-17-13)


中国シャドーバンキングは 100 兆円規模の可能性 = JBIC 副総裁

[東京] 国際協力銀行 (JBIC) の渡辺博史副総裁(元財務官)は 17 日、都内で開いた記者団との懇談会で、中国のシャドーバンキング(影の銀行)市場について、100 兆円レベルに達している可能性を指摘し、どこかの段階で処理をしなければいけない問題であり、要注意だと語った。

ただ、損失の大部分は中国国内にとどまる可能性が大きく、システミックリスクを回避する姿勢を明確にしている中国当局の対応次第では、問題が表面化しても世界経済や国際金融市場への影響は最小化できるとの見方を示した。

中国のシャドーバンキング市場は、一部で 300 兆円を超える規模とも言われている。 渡辺氏は「さすがに中国の預貯金の動きなどを見ると、300 数十兆円というのは大き過ぎる」としたが、預金金利がインフレ率を下回っている中で「ある程度の金額が動いていることは間違いない。 100 兆円ぐらいのレベルでも不思議ではない」と語った。 その上で、過剰生産を抱える中国経済の減速が鮮明になっている中で「どこかで処理をしなければいけない。 要注意だ。」と警戒感を示した。

ただ、「幸いなことに中国の市場は上海を含め、外国の投資家がどっと入ってきているわけではない」とし、「損をするのは、あくまで中国国内の人。 個人か、事業法人か、国営企業か、銀行かという意味では、中国の中のゼロサムゲームのようなところがある」と指摘。

中国当局も不良債権問題に伴うシステミックリスクを回避する姿勢を明確にしており、問題が表面化しても「悪影響は最小化できると思う」との見解を示した。 株安など国際金融資本市場を通じた影響についても、レパトリ(本国への資金還流)などの動きは欧米や日本の市場に比べて「はるかに違うので、そこは冷静に見た方がいい」と語った。

中国経済の先行きについては、7% 程度まで成長率が減速する可能性があるとしたが、「ハードランディングというほどひどくはならないと思う」と展望。 もっとも、成長率が 7% 程度まで落ちる過程で低所得の階層にしわ寄せがいく可能性があるとし、「社会的にいろいろな意味でガタガタするかもしれない」と語った。 (Reuters = 7-17-13)


中国、資金供給の伸び鈍化鮮明 当局の抑制策で

6 月 14% 増

【北京 = 大越匡洋】 中国人民銀行(中央銀行)は 12 日、6 月の通貨供給量(マネーサプライ、M2)が前年同月比 14.0% 増だったと発表した。 伸び率は 5 月に比べ 1.8 ポイント縮小し、昨年 12 月以来の低水準となった。 人民銀など中国当局は銀行以外の資金調達である「影の銀行(シャドーバンキング)」を通じた信用リスクの膨張を抑制する姿勢を強めており、その効果が出始めた形だ。

中国の資金供給量の伸びは今年に入って 15 - 16% の高水準が続いていた。 今年 1 - 3 月の経済成長率は昨年 10 - 12 月より鈍化したにもかかわらず、資金供給量の伸びは 12 - 14% 台だった 2012 年の水準を大きく上回り、実体経済とかけ離れてマネーが膨張していた。

背景にあるのは、高利回りの金融商品(理財商品)や企業間の余剰資金のまた貸しなど「影の銀行」の拡大だ。 中国では銀行融資について金利規制など硬直的な金融制度が残っており、当局の規制の緩い「影の銀行」を通じて個人や企業の資金が地方の不動産開発などに流れ込んでいる。

中国の信用リスクの拡大に世界は懸念を強めており、人民銀は 6 月、短期金融市場で銀行間取引金利が急上昇しても資金供給の拡大に動かなかった。 実質的な金融引き締め効果があり、企業間のまた貸しなどを含む広義の資金調達を示す「社会融資規模」は 6 月に 1 兆 400 億元(約 16 兆円)と、5 月に比べて約 1,500 億元減少した。 このうち銀行融資の新規増加額は 5 月より約 1,900 億元増えたので、「影の銀行」の拡大ペースが鈍った格好だ。

ただ通貨供給量の伸びは、鈍化したとはいえ、中国政府が13年通年の目標としている水準(13% 前後)を依然として上回る。 一方で、中国景気は生産の伸び悩みなどで減速感を強めており、資金の流れに目詰まりが起きれば景気を一段と下押しする恐れがある。 中国の金融政策は引き締め、緩和の双方に動きにくい難しいかじ取りが続いている。 (nikkei = 7-12-13)


異能の中国人経済学者 明快だった楽観論にさし始めた影

中国経済の「7 月危機説」は、6 月末に上海市場を見舞った株価の急落で世界的に注目を集めた。 引き金となった短期金利の急騰は、中国人民銀行(中央銀行)が短期金融市場の秩序維持に回ったことで息をついたものの、中央も地方も高度成長の夢を追い続けた構造的な課題は未解決のままだ。

減速への警戒感が世界の市場関係者に広がる中国経済だが、北京の識者からは楽観論も根強い。 それぞれ興味深い説なのだが、ここはあえて、中国政府の目標とする 7.5% 成長をも飛び越える「8% 成長の 20 年持続論」を取り上げてみたい。 あまりに豪気な話なので、中国投資ファンドの勧誘と錯覚しそうだ。 だが、提唱者はほかでもない、世界銀行(本部・ワシントン)の副総裁兼チーフエコノミストという重職を昨年まで務めた中国の経済学者、林毅夫博士 (60) )である。

高説を拝聴する前に、林氏について紹介したい。 もともと台湾出身の林氏は、台湾大学在学中に志願して陸軍将校となったものの、最前線の金門島で中隊長を務めていた 1979 年、兵営を抜け出して 2 キロの海を渡って中国側に身を投じたという、数奇な経歴の持ち主である。 最高学府から兵営への転進も、故郷で「敵前逃亡」の汚名を着てまでも中国行きを果たしたことも、本人なりの「大義」に従ったのだとか。

世銀在籍当時から、林氏は中国経済の長期成長論を繰り返してきた。 北京での最近の講演でも、基本的には「20 年にわたる 8% 成長」を繰り返している。 持論の柱は、中国経済を支える「輸出」、「投資」、「消費」という「トロイカ」のうち、財政出動による「投資」を最重視することにある。

「中国での経済成長鈍化は周期的であって構造的ではなく、投資によって解決できる。 投資に刺激されて労働生産性が高まれば賃金水準も向上し、消費は自然と伸びる。 トロイカのうち、投資と消費が鈍化することはないのだ。」 これは最近の講演からの引用だが、別の発言では、2030 年には中国の国内総生産 (GDP) が米国の「2 倍に達する」とも予測した。 林氏の持論には、「楽観的に過ぎる」といった批判や疑問が中国の内外で示されてきたが、林氏はやはり 20 年間の高度成長を予測した 1994 年の論文が「的中した」として、批判を退けてきた。

だが、今年になってからの発言記録を注意深く読み返すと、「8% 成長の "潜在力" があると言っただけ。 すべては改革の実行次第だ。」 「必要なら国家による資本統制も」など、明快だった持論に「ただし書き」が増えたことに気づく。 積極財政の旗振り役にもかかわらず、中国で一斉に進む地方都市建設が、産業振興抜きの不動産開発に終わる懸念にも触れ始めた。 直情径行で知られた異能の学者の横顔に、いま影が差した。 私の誤解でなければ、事態はいささか重いのではないか。 (中国総局長 山本秀也、sankei = 7-11-13)


中国経済支える「影の銀行(シャドーバンキング)」 中小企業の生命線に

[上海/香港] 上海の贈答用カード会社を経営する Wang Zhiyong 氏は、銀行に 2 回融資を申し入れたが断られた。 そこで、Wang 氏が頼ったのが、中国国内で幅広いネットワークを持つ代替金融のいわゆる「場外 (curb side)」融資。 銀行を介さない「影の銀行(シャドーバンキング)」の一つだ。 「銀行は、われわれのような新興企業には絶対貸さない。 銀行が貸すのは大企業や国有企業だけだ。」と Wang 氏は話す。

政府が経済の不均衡是正を目指すに伴い、ただでさえ厳しい中小企業の借り入れ環境は厳しさ増すと予想される。 中国人民銀行(中央銀行)は前月、不動産投機関連の融資の取り締まりや、地方債務増大に歯止めをかける狙いで資金供給を絞り、短期銀行間金利が上昇するにまかせた。 ところが、当局の取り締まりは、非国有企業の影の銀行への依存を高めるだけだった。 格付け会社フィッチ・レーティングスは、中国の与信残高の約 36% が銀行融資以外と試算している。

中国政府は今、自らの政策が生みだし、経済を支えてきたノンバンクの資金融通システムの利用をやめさせるという難しい課題に直面している。 クレディ・スイスは 2 月の調査リポートで「シャドーバンキングが活発化したのは、経済が成長を必要とする一方で銀行セクターは金融仲介機能を著しく落とさなくてはならない状況が原因」と指摘した。 銀行は普通、零細企業には融資しない。 Wang 氏にとっては影の銀行が唯一の選択肢だった。 Wang 氏は 6 カ月、500 万元のローンを組んだ。 金利は年 14%。 銀行融資の約 2 倍だ。

政府の融資規制がきっかけ

影の銀行は、非正当的手法でだが政府の金利政策を自由化させ、中国国内の資金調達メカニズムの多様化をもたらしたとも言える。 それでも当局の監視の目がほとんど届かず、信用力をきちんと評価するメカニズムも持たない与信システムはリスクをはらむ。 中国ではこれまで社債のデフォルト(債務不履行)はまったくないが、アナリストはリスク評価が適切にされているのか、と疑問を投げかける。

影の銀行が急成長したのは、政府が銀行融資規制に乗り出した 2010 年以降。 当時、政府は、2008 年の大規模景気刺激策を受けて急増した融資がインフレを加速させることなどを懸念していた。 国有企業は銀行から借りることができたが、その他企業の大半は銀行以外から資金を調達する必要に迫られた。 それが影の銀行の繁栄をもたらした。

影の銀行には、質屋、信託会社、その他さまざまな貸金業者による融資のほか、「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品も含まれる。 高い利回りをうたって企業や個人に「理財商品」を販売したのは銀行。 銀行は影の銀行の仲介をし、顧客は債務をオフバランスで持つことができた。 そのような状況を政府は黙認していた。 しかし、影の銀行退治に乗り出すにあたり「理財商品」も対象となった。

実質、人民銀行が演出した 6 月の銀行間金利急上昇は、短期資金に過度に依存していた銀行を直撃した。 アナリストは、銀行は、毎月末の「理財商品」償還・利払い資金を短期金融市場で手当てしていたことが背景と指摘する。

存在感大きい質屋

「場外(curb side)」融資は合法だが、規制対象外の高利融資。 利点は、素早く資金を手にできることだが、返済金利は月 40% を超え、年間で 500% 近くに達する。 影の銀行の重要な一角を担うのが、認可制で規制対象の質屋。 バンク・オブ・アメリカが昨年出した調査リポートによると、2011 年末時点で質屋の業界規模は 1,180 億元。 しかし、Wansui Micro Credit (広州)の幹部によると、現在の業界規模は 5,000 億元前後。 質屋の融資は期間が大体 3 - 6 カ月程度、金利は 35% になるケースもあるという。

利点はスピード。 数カ月もかかる銀行融資と違い、数日で実行できる。 上海の大手質屋、Oriental Pawn の幹部は、銀行がリスクが高いとみなす零細企業に融資しているとして、自分たちは零細企業の重要な支援役と胸を張る。 この会社のホームページによると自動車を担保にした 6 カ月の融資金利が月 4.7%、不動産を担保にした場合では月 3.2% となっている。

質屋業は、1956 - 87 年の間は禁止されていた。 しかし商務省によると、2012 年末時点でその数は 6,084 社、総資産は 1,168 元、それぞれ前年から 16%、34.3% 増えた。 Oriental Pawn に金のネックレスを持って入った、小さな葬儀屋を営む Wen Shijie 氏は「緊急に必要なカネを借りたい」と言った。 また親族に借りるより、質屋で借りる方が良い、と述べた。

「毒」を飲む

景気が減速する中でリスク融資の取り締まりに動いたことで、政府は自ら難しい状況に陥った。 影の銀行を取り締まることは、非国有企業の資金調達環境を一段と厳しくするからだ。 上海交通大学の Yan Hong 教授は「シャドーバンキングは実は中国経済にとってプラスの役割を果たしている。 現在の金融システムはあまり合理的で健全でないからだ。」と指摘する。

そんな Hong 教授も、影の銀行が中小企業の資金不足を補う程度はバランスが崩れてきていることを認める。 教授は「毒を飲んで渇きをいやすリスクがでてきている」と述べた。 (Samuel Shen、Michael Flaherty、Pete Sweeney、Lawrence White、Reuters = 7-9-13)


「影の銀行と地方負債を一体分析」 中国財務次官が言及

【北京 = 斎藤徳彦】 中国財務省の朱光耀次官は 5 日、中国での金融リスクの高まりについて「シャドーバンキング(影の銀行)と、地方の借金の問題を一体で分析する」と述べた。 金融と財政が結びついた深刻な課題として、習近平(シーチンピン)政権が取り組んでいく決意を示したものと見られる。

6 月下旬に中国の金融市場が混乱して以降、財務省幹部が公式の場で金融問題に言及するのは初めて。 朱次官は「中国の金融は、挑戦に直面している」と認めた上で、「リスクは影の銀行だけでなく、地方政府の資金調達会社にもあり、強く警戒するべきだ」と指摘。 「地方の調達会社のリスクをつまびらかにして、総合的に分析する」とした。

中国では正規の銀行融資以外のやり方でお金を貸す「影の銀行」が急速に膨らんでいる。 その多くは、財政不安のある地方政府の資金調達会社に流れ込み、一部は不良債権になっているとも指摘される。 金融システムのリスクの高まりが意識されたことが6月下旬、短期金利が急騰して株価が急落する一因となった。 (asahi = 7-5-13)


中国経済、高まるハードランディングの危機

中国の新指導部は、経済運営で最も難しい操作の 1 つに数えられる任務に取り組んでいる。 すなわち、飛行中の経済を減速させることだ。 最近では中国当局が「シャドーバンキング(影の銀行)」の制御に乗り出すなど、数々の困難が以前よりも明らかになっているが、これはもっと大きな問題の一部にすぎない。 大きな構図とは、減速している経済が墜落するかもしれないリスクだ。 実際、市場メカニズムを頼りにしたいという新指導部の意向は、このリスクを一段と大きくする。

中国は「列車よりジャンボジェット」

ジェローム・レヴィ経済予測センターのデビッド・レヴィ氏は先日発表したリポートで、中国の失速ペースはどれくらいなのかという重要な疑問を提起した。 一般には、中国が向こう 10 年間で経済成長率を 10% から、例えば 6% に引き下げるのは容易なことだと考えられている。 ただ、そこには 1 つの想定が暗黙のうちに織り込まれている。 「急拡大している経済は高速で走っている列車のようなものだ。 制御レバーを緩めれば減速する。 そしてしばらくはそのまま、以前ほどの速度ではないがレールの上を走り続ける。」という想定だ。

だが、レヴィ氏は、中国は列車よりもジャンボジェットに似ているという。 「ここ数年はいくつかのエンジンの調子が悪く、パイロットは、調子のいい残りのエンジンを酷使したくないと思っている。 そのため飛行機の減速を容認しているが、あまりに減速し過ぎると失速ペースをも下回り、飛行機自体が墜落してしまうだろう。」

信用の急拡大、年率で 30% に迫る

中国では 2008 年以降、純輸出が経済のけん引力ではなくなった。 その穴を埋めたのは投資で、2009 年は特にその色彩が強かった。 そのため国内総生産 (GDP) に占める投資支出の割合は、2007 年でも 42% というかなりの高率だったが、2010 年には 48% という驚嘆すべき水準に跳ね上がった。

この投資のエンジンを稼働させたジェット燃料は爆発的な信用の拡大で、2009 年には貸出残高が年率で 30% 近い伸びを記録した。 政策は大成功を収めた。 だが、純輸出の急拡大が過去のものとなった今、中国政府当局は、信用を燃料とする投資への依存度を引き下げたいとも考えている。 従って中国経済には、民間部門と公的部門の消費というエンジンが残るだけとなっている。

実際、成長に対する需要の寄与度の四半期データからは、求められている経済成長の減速が、これまでのところは見事なほどスムーズに進んできた様子がうかがえる。 しかし、年率 6% 成長への移行の前には、まだ大きな壁が立ちはだかっている。

在庫圧縮、投資減少そして収益悪化へ

第 1 に、在庫投資は急減するに違いない。 在庫投資の水準は経済活動の水準ではなく、経済の成長率に左右されるからだ。 考えてみてほしい。 景気が低迷している時には、通常、在庫の積み上げはゼロになる。 また、ほかの条件がすべて同じであれば、成長率が 6% の経済で必要とされる在庫投資は成長率が 10% の経済のそれの 60% にとどまる。

この調整は即座に在庫投資を急減させるだろう。 在庫投資の伸び率は年 6% になる前に、いったん大きく低下することになる。 また、高度成長を何年も続けてきた後だけに、企業は経済の減速を予想できないかもしれない。 その場合、企業は在庫の急増を目の当たりにし、その圧縮を余儀なくされる。 そうなれば、GDP の水準は一段と落ち込むことになる。

第 2 に、固定資本への投資も急減するに違いない。 投資は 40% 減少することになるかもしれない。 ほかの条件がすべて同じであれば、中国で固定資本への投資が 40% 減れば GDP は 20% 減少するだろう。 深刻な(そして予想外の)景気後退が引き起こされることは明らかだ。

投資の決断を下す責任者たちは経済成長率がいずれ 10% に戻ると見込み、迅速な調整をしないかもしれない。 その場合、経済はしばらくの間、下支えされることになるだろうが、過大な生産能力がさらに過大になるという対価を払うことになる。 在庫投資の場合と同様に、固定資本への投資はそこからさらに大きく減少するだろう。

第 3 に、投資減少が引き起こす需要と活動の減退は、企業収益も大きく下振れさせる可能性が高い。 利益の減少は企業の支払い能力を損ない、投資を一段と減少させる。 最後に、経済成長率の低下、特に極めて大きな信用ブームが先行した成長減速は、バランスシートの状況に思いのほか厳しい影響をもたらす可能性がある。

中国の民間部門は既に、比較的大きな債務を抱えている。 経済が年間 10% のペースで成長し続けるのであれば、そうした債務は管理可能だ。 それほどダイナミックな経済では、新規プロジェクトのタイミングは問題にならない。 だが、成長ペースが鈍い経済では、不良債権の急増はとてつもない規模になる可能性がある。

世界銀行の最新の「世界経済見通し」は「リバランスに向けた現在の取り組みは、持続不能なほど高い投資比率の漸進的低下を成し遂げることと並び、今後も優先事項であり続ける」と論じた。 だが、「投資が不採算であることが分かれば、既存のローンの元利払いに問題が生じる恐れがあり、不良債権の急増を引き起こす可能性もある」としている。 たとえ政府が金融セクターを救済したとしても、貸し出しの責任者は間違いなく以前より慎重になるだろう。 当局が最近対応に動いた簿外金融の拡大が、この問題への対処を一層難しくするのは必至と見られる。

低成長経済には異なる所得配分が必要

上記の事実をもって、中国が中長期的に先進国に追いつくキャッチアップ型成長を続けられないと言っているわけではない。 重要なポイントはむしろ、年間 6% のペースで成長する経済の構造は必然的に、10% 成長する経済のそれとはかなり違ったものになるということだ。

こうした調整が成長率の変化に釣り合ったものになると思ってはならない。反対に、新たに出現する経済は、GDPに占める消費の割合が例えば 65% で、投資の割合がたった35%かもしれないのだ。つまり、GDP の伸び率と比べ、消費はかなり早いペースで拡大しなければならず、投資ははるかにゆっくりと拡大する必要がある。

このことは、異なる所得配分を意味する。 GDP に対する家計可処分所得の割合が今よりずっと高まり、企業の利益の割合が低下するということだ。 また、経済生産の構造の変化も必要で、サービス産業が比較的急速に成長し、製造業が比較的ゆっくり成長する形にならなければならない。 中国の新政府は今、事実上、半分のエンジンがうまく機能しない状態で着陸しようとしている時にジャンボジェットを設計し直す任務に取り組んでいる。 市場がそれほど大きな変化を円滑にもたらすことは、まずあり得ない。

筆者の見る限り、中国が望み通りの着陸を果たせると考える唯一の理由は、当局が過去に困難な任務をたくさん扱ってきたことだ。 だが、今回の任務は非常に難しいものになる。 政府は需要を支えるために、新指導部が望んでもいなければ今は予想もしていないこと(例えば、非常に多額の財政赤字を計上するなど)をやらざるを得なくなるかもしれない。 だが少なくとも、事前に警告があれば、事前に準備できる。 (Martin Wolf、Financial Times = 7-4-13)


取り締まり強化で激減の中国債券取引、貧弱な市場の実情露呈

[上海] 中国の債券市場では、1 日の取引高が 4 月に過去最高を記録して以来激減している。 不正取引の取り締まりが進む中、過去数年の流動性が見せかけの取引によって膨張されていた実情が明らかになってきた。 当局は 4 月以降、利益の不正取得をめぐり少なくとも 4 人の債券トレーダーとファンドマネジャーを逮捕している。

債券取引をめぐっては、利益の不正取得やレバレッジ拡大のため常態化していた取引慣行を取り締まる新規則も導入された。 当局の調査は、投資家が第 3 者から借り入れた資金で別の投資家の代わりに債券を購入する取引に焦点を絞っていた。 こうした取引は、違法ではないが悪用されやすい。 買い手と売り手が事実上同じポートフォリオに属している場合、偽取引とみなされる。 双方の口座が同一の個人によって管理されているケースもある。

ある中国の大手証券のアセットマネジャーは、規制当局が大なたをふるった結果、こうした取引の多くが壊滅状態になったと指摘した。 取引高の激減は、3 月に債券市場へのアクセスが認められた海外投資家を遠ざける恐れがあるほか、相場下落で国内企業が起債を見合わせる事態を招いている。 上海のある欧州系銀行の債券トレーダーは、取引高の激減の理由について尋ねられると「新たに導入された規制が主因だ」と指摘した。

また、最近導入された「影の銀行(シャドーバンキング)」対策の新規則では、同一機関が管理する異なった口座間での債券取引が禁止された。 一部の銀行は、「理財商品(ウェルス・マネジメント商品)」の償還支払いのためにこうした取引を行っていた。 投資会社も取引高ランキングを意識して偽取引を行っていた疑いがもたれている。

先月短期金利の急騰を招いた流動性不足も債券取引の激減に拍車をかけたが、以前からこうした傾向は進んでいた。 決済機関のデータによると、1 - 5 月の銀行間債券取引の 1 日あたりの出来高は平均で 2,820 億元で、4 月 17 日には過去最高の 4,330 億元に膨らんだ。 しかしその後 6 月 13 日には 360 億元まで激減。 2011 年 5 月に同機関がトムソンロイターにデータ提供を開始して以来の最低水準となった。 市場関係者は、取引量は徐々に回復する見込みだが、数カ月前の高水準に近づくことはないとみている。

海外投資家にも影響

銀行間債券市場を監督する中国人民銀行は 3 月、適格外国機関投資家 (QFII) による債券取引を認める方針を明らかにした。 ただ流動性の不足は売却機会を制限し、海外投資家が市場参入に二の足を踏む要因となりかねない。 中国指導部は最近、資本規制を撤廃し、海外投資を促す計画の詳細の策定を要請した。

アナリストは、増加した海外との資金の流れの吸収には、奥深く流動性に富んだ債券市場が欠かせないと指摘する。 今年 1 - 5 月の社債発行は前年同期比で 51% 増加したが、6 月になると勢いは止まっている。 6 月 20 日以降市場の動揺を理由に起債を延期した企業は 12 社以上にのぼり、今年後半あるいは来年の第 1・四半期に再開する意向を示している。 (Gabriel Wildau、Reuters = 7-4-13)


中国市場から逃げ出す投資家 - 政府、てこ入れに動かず

中国経済鈍化への不安が高まる一方で、同国政府は景気てこ入れに動こうとせず、投資家は中国市場から逃げ出し始めている。 中国株式市場の国外ファンド資金の流出入状況を見ると、過去 18 週間のうち 16 週間で流出超となった。 6 月 5 日までの 5 日間では 8 億 3,400 万ドル(約 834 億円)の流出超で、データ会社 EPFR によれば、これは金融危機の最中だった 2008 年 1 月以来の大規模なもの。

中国経済への悲観的な見方は、為替市場にも影響を与えている。 元相場は中国人民銀行(中央銀行)が元高維持を図っているものの、投資家の間では先行き元安との見方が強まっている。 その結果、上海証券取引所の上海総合指数は年初から 3 日までで 12.1% の下落となった。 米連邦準備制度理事会 (FRB) が超金融緩和策を終了させていく可能性を示唆したことを受け、このところ新興国市場から資金引き揚げの動きが出ており、アジアでは、経済問題が山積している中国からの資金流出が特に目立っている。

香港証券取引所のハンセン中国企業指数は年初来で 22% 安と、上海総合指数を上回る下げ率を記録している。

多くの投資家は、中国からの資金逃避は 3 月に発足した同国の新指導部が景気減速に対処しようとしていないことが原因だと指摘する。 人民銀が融資の伸び率が過剰になったとして資金供給を絞り、その結果生じた銀行間取引市場が資金ひっ迫に見舞われた際には、人民銀が一部資金供給に踏み切った。 しかし、中国指導部の次の大きなイベントは今秋の共産党中央委員会で、それまでは経済政策の方向性をめぐる不透明感は続きそうだ。

李克強首相は、同国の成長をもっと持続可能なものにするため経済改革を推し進めるとする一方で、景気てこ入れのために金融・財政政策を変更するつもりはないことを示唆している。 BNP パリバ・インベストメント・パートナーズ(香港)のアジア太平洋株式部門の責任者であるアーサー・ウォン氏は、「中国では 1 人が政策を決定するわけではない」と話す。 同氏は、中国経済の先行きが不透明なため、自分が運用している資産に占める中国資産の比率を従来の基準より低下させていることを明らかにした。

中国経済のアナリストにとってもう 1 つの不安の種は、人民銀が元の安定を維持し、景気減速にもかかわらず大幅修正する意向を示していないこと。 一方で、投資家は元売りを続けており、元相場は 6 月に過去最高値を付けた後は上げ止まり状態となっている。 規制のない香港金融市場の元先物相場では、元は 1 年後には 2.8% 下落すると見込まれている。 ソシエテ・ゼネラル(香港)の金利上級ストラテジストのウィー・クーン・チョン氏は、「これは、中国の成長見通しに対する不信任投票だ」と指摘する。

国内投資家も市場から逃げ出す様相が強まっている。 UBS の調査によると、各社株式の 5% 以上を保有している経営幹部など大口の個人株主は、中国成長企業株式指数の構成銘柄を売っている。 売り物全体に占めるこれら個人株主の比率は 5 月には金融危機以降で最大となった。 その結果、上海取引所上場株式全体の株価収益率は 10 倍と、近年の水準を大きく下回っており、株式市場は反転に向かうとみる投資家もいる。

マルコ・ポーロ・ピュア・アセット・マネジメント(香港)のエアロン・ボースキー最高経営責任者 (CEO) は「中国市場は "アルマゲドン(世界の終わり)" を織り込むような状況だ」と話し、「今の時点で株式を売却するのは愚かだ。 投資のあらゆる教義に反することになる。」と強調する。 (Daniel Inman、The Wall Street Journal = 7-4-13)


中国「影の銀行」の高利回り商品、残高 130 兆円に

【上海 = 土居倫之】 中国の銀行業監督管理委員会の尚福林主席は 29 日、高利回りの資産運用商品である理財商品の 2013 年 3 月末の残高が 8 兆 2,000 億元(約 130 兆円)に達したと明らかにした。 理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・インフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっている。 上海市で同日閉幕した金融フォーラムの講演で明らかにした。 理財商品の残高は中国の 12 年の名目国内総生産 (GDP) の約 16%、人民元預金残高(67 兆元)の約 12% に相当する。

理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。 信託会社などが組成し、主に銀行を窓口に販売する。 利回りは約 3% の 1 年物定期預金金利を上回る 5 - 10%。 低金利に不満を持つ預金者の需要を取り込み、数年前から急膨張してきた。 集まった資金の運用先は地方政府傘下の投資会社(融資平台)の貸出債権や債券、短期金融市場など様々な種類がある。

規制のはざまで拡大してきた金融商品で、当局の監視の目が行き届いていない。 デフォルト(債務不履行)時に投資家である個人や企業、販売者である銀行、インフラ開発の実質的な主体である地方政府など、誰が損失を負担するのかも曖昧なままだ。 投資プロジェクトなどが行き詰まれば、幅広い関係者が損失リスクを負担しなければならない可能性がある。 尚氏は講演で「正確な対応措置さえ取れば、リスクは十分管理可能だ」とリスク管理の重要性を訴えたが、米著名投資家のジョージ・ソロス氏は「米サブプライムローン問題に似ている」と警告している。 (nikkei = 6-30-13)


改革求める意見相次ぐ 上海で金融シンポジウム

中国上海市で 28 日、中国の金融当局者や専門家が集まるシンポジウムが開かれた。 中国では「影の銀行(シャドーバンキング)」問題への懸念を背景に、短期金利の急騰や株価の急落で市場が混乱したばかり。 金融制度改革や中央銀行の適切な対応が必要だとの意見が相次いだ。

規制が及びにくい投資ファンドや財テク商品からなる影の銀行について、上海交通大の専門家は「中国の金融システムの不完全さのあらわれ」と指摘。 正規の金融システムに繰り入れる必要があると主張した。 中国では、中国人民銀行(中央銀行)が影の銀行を抑え込むために金融市場への資金供給を絞り込んだ結果、市場が混乱したとの見方がある。 人民銀は今週に入って「市場の安定を維持する」と表明したが、大手投資銀行、中国国際金融の幹部は「遅すぎた」と批判した。 (kyodo = 6-28-13)


中国に金融危機説 シャドーバンキング懸念

【北京 = 新貝憲弘】 景気の減速感が強まる中国で、複数の銀行が資金不足に陥っているとのうわさが相次ぐなど金融危機説が広がっている。 一方で地下金融などシャドーバンキング(影の銀行)によるバブル崩壊の懸念も高まっており、中国政府は経済の健全化と景気の下支えの間で厳しいかじ取りを迫られている。

中国経済は 5 月の輸出額が前年同月比 1% 増でそれまでの 10% 超増から大幅減となり、英金融大手の景気指標も悪化を示すなど減速感が強まっている。 こうした動きを受け、四大国有銀行の中国銀行はじめ複数の銀行では今月に入って資金不足に陥ったとのうわさが流布した。 20 日は銀行間で短期資金を貸し借りする金利指標(上海銀行間取引金利、SHIBOR)の翌日物が過去最高水準の 13% 超と前日の 7% 台から跳ね上がり「高利貸市場と化した。(中国紙)」

ただ通貨供給量 (M2) は 5 月末で前年同期比 15.8% と「だぶつき気味」。 資金不足の背景には、金融機関が正規の方法以外で融資したシャドーバンキング問題がある。 2008 年のリーマン・ショックを受け中国政府が実施した 4 兆元(約 64 兆円)規模の景気刺激策で、だぶついた資金が地方政府の無計画なインフラ整備や不動産投機に流れたとされ、中国政府は健全な金融システムづくりなど経済構造改革に力を入れている。

中国人民銀行(中央銀行)主管の中国紙「金融時報」は「銀行業は自力で融資問題を解決すべきだ」との論評を掲載。 中国政府も 19 日の会議で従来の金融引き締め策を維持する姿勢を確認した。 ただ 13 兆元(約 208 兆円)規模といわれる理財(財テク)商品の高利回りはシャドーバンキングが支えているのが実態で、今月末には大量の満期を迎え、払い戻し用の資金調達が必要。 このため金融緩和など景気刺激策を求める声も強まっており、政府と銀行業界の駆け引きはしばらく続きそうだ。 (東京新聞 = 6-23-13)


中国、水増し統計相次ぐ 貿易統計は 7 兆円過大 地方都市の工業生産額も

中国で経済統計の水増しが相次ぎ発覚、公式発表への信頼性が揺らいでいる。 貿易統計は架空取引により 750 億ドル(約 7 兆円)も水増しされた疑いがあり、地方当局が工業生産を 4 倍近くに過大報告していたことも判明。 政府は対応を迫られている。

中国税関総署によると、1 -4 月の中国から香港への輸出は前年同期比 69.2% 増の 1,451 億ドルに急拡大。 しかし当局が架空取引を取り締まった結果、5 月の輸出は 1 - 4 月より大きく低下。 中国紙、21 世紀経済報道によると、1 - 4 月の貿易統計に計上された架空取引の金額は 750 億ドルに上ったとの指摘がある。

また、国家統計局は 6 月 14 日、広東省中山市横欄鎮が 2012 年の工業生産額を 62 億 9 千万元(約 970 億円)も水増ししていたと明らかにした。 公表額は 85 億 1 千万元だったが、国家統計局が調べると、実際は 22 億 2 千万元しかなかった。 (kyodo = 6-17-13)


中国当局、ホットマネー流入抑制策を発表

貿易取引装った資金流入の監視強化など

[上海/北京] 中国の国家外為管理局 (SAFE) は、外国為替市場における投機取引の抑制に向け規制を強化する。 ホットマネー(投機資金)の流入がこのところの人民元相場上昇の一因となっているとの兆しが出るなか、国家外為管理局は 5 日付の声明で、銀行が自己勘定で保有できる人民元のロングポジション(買い待ち)の制限を厳格化すると同時に、貿易取引を装って資金を流入させている輸出・輸入業者への監視を強化することを明らかにした。

国家外為管理局が新たに設ける人民元ロングポジションの制限は、外貨建て預貸率 (LDR) が参考水準を超えている銀行に適用される。 LDR の参考基準は現在、国内行が 75%、外国行が 100%。 銀行の LDR が高ければ高いほど人民元のロングポジション保有制限が強化される。

新たな規制措置は 6 月末に発効。 3 月末時点の銀行システム全体の外貨建て LDR は 171% だったため、ほとんどの銀行が規制対象になると見られている。 規制強化により、銀行の間で融資に対する外貨預金を積み上げる動きが出ると予想されるため、外貨建て融資のコストが引き上げられる。 また、銀行は一段の預金確保に動くと見られることから、オンショア市場の外貨預金金利が上昇する可能性がある。

HSBC のアジア外為部門責任者のポール・マッケル氏は 6 日、「オンショア市場で、国内勢の間で外貨建ての借り入れを増加させ人民元建ての資産を手元に置いておく動きが出ていたことから、このところの人民元相場の上昇圧力の多くはオンショア市場からのものだった」と指摘。 「こうした動きがホットマネーの流入を加速させていたと見ていた」と述べた。

貿易取引を装って資金を流入させている輸出・輸入業者への監視強化については、製品と資金の流れの整合性が合わなかったり、中国への資金流入量が大きくなったりした企業を対象に、10 日以内に状況説明を求めると表明。 状況を説明できなければ、その企業を「B 類」企業に登録し、監視を強化する。 関連指標が 3 カ月間連続で正常な範囲内にとどまった場合に限り、A 類企業に復帰させるという。

中国の輸出・輸入業者は、貿易取引を名目に資金をしばしば流出入させており、国家外為管理局はこうした慣行を戒めるキャンペーンを進めている。 ここ数カ月における中国の輸出データは外需の漸進的な回復を示しているものの、アナリストの中には、中国企業が輸出を過剰に申告し、規制を潜り抜けて国内に資金を呼び込んでいる可能性があるとの見方が出ていた。 国家外為管理局は B 類企業リストを作成し、今月 10 日よりも前に最初の警告文を該当企業に送付するとしている。

人民元相場 CNY = CFXS は年初からの上昇率は 1.2%。 このうち 0.9% の上昇は 4 月以降のものとなる。 人民元は先週、過去最高値をつけたが、6 日の上海外国為替市場の人民元相場は、国家外為管理局のホットマネー流入抑制策発表を受け、ドルに対して今年最大の下落幅を記録。 人民元の対ドル直物相場 CNY = CFXS は午後の取引で、前営業日(3 日)終値比 0.34% 元安・ドル高の 1 ドル = 6.1768 元まで下落した。 (Reuters = 5-6-13)