中国の鉄鋼都市で高まる倒産危機、地方政府は救済に及び腰

[唐山(中国)] 中国の鉄鋼都市である河北省唐山市で、生産能力過剰問題により企業の倒産危機が高まっている。 中央政府が経済のリバランスを目指す中、これまでと異なって地方政府も救済に及び腰となっている。 鋼管メーカー、河北キン銘制管の工場が今月閉鎖され、400 人超の従業員の給与が支払われていないほか、債務返済も滞っている。 工場の前で賃金の支払いを求めていた従業員のジャン氏は「上司は来月には賃金を支払うという言葉を繰り返していたが、結局行方をくらましてしまった」と話す。 ロイターは同社の付宝中董事長に電話をしてみたが、応答はなかった。

河北キン銘制管の債権者である企業の関係者によると、同社の債務返済計画が変更できるかどうかをめぐり政府と債権者による話し合いが続けられている一方、合意に至らなければ破産手続きが始まる予定だという。 この関係者は匿名を条件に「これはほんの一例に過ぎない。 大半の企業は競合社が倒れたり、市況が改善するまでねばろうとしているが、全ての企業がそんなことできるわけがない。」と指摘した。 唐山市と河北省の両政府はいずれもコメントを拒否した。

細る支援の手

地方政府はこれまで、苦境に陥った鉄鋼メーカーに低利融資を提供したり、優遇税率を適用したりするなど、延命を図ってきた。 しかしこうした結果、中国の鉄鋼業界は巨額の債務に加え、少なくとも 2 億トンの過剰生産能力を抱えることになった。 これは米国の生産量 8,700 万トンだけでなく、欧州連合 (EU) の生産量である 1 億 6,600 万トンも上回る規模だ。 中国の鉄鋼生産能力は 10 億トンを超えるとみられている。

唐山市の年間鉄鋼生産量は 1 億トンで、大半が建材として利用されるローエンドの鉄鋼だ。 1976 年に発生し、少なくとも 25 万人が死亡した唐山地震を受け、市は経済再建に鉄鋼産業を生かしてきたが、中央政府が進める信用主導型成長の抑制を前に姿勢の転換を迫られている。 また、中央政府が掲げる「環境汚染との戦い」も逆風となっているほか、地方政府自身も信用規制や税収の落ち込みから支援の手を差し伸べにくくなっているのが現状だ。 (David Stanway、執筆協力 : Ruby Lian = 上海、Reuters = 7-23-14)


融資枯渇に苦しむ中国の不動産開発、経済全体のリスクに

[香港] 中国のシャドーバンキング(影の銀行)会社はことし上半期に、不動産開発業者向けの融資を大幅に減らし、住宅市場が冷え込む中で極めて重要な資金経路を遮断した。 不動産業界だけでなく経済全体にも支障をきたす可能性がある。 富裕層や企業から資金を集めて高利の融資を行う信託会社は、中国の巨大で不透明なシャドーバンキングの一部を構成しており、銀行からの融資が受けにくい小規模の開発業者を中心に、住宅ブームの期間中は信託会社が即座に融資を受けられる資金源となっていた。

しかし、南京に拠点を置く調査会社の用益信託によると、信託会社の今年上半期の不動産開発業者向けの貸し出しは前半年と比べ 39% 減少した。 同時期に理財商品を通じて実施された 483 億元(77 億 8,000 万ドル)の融資の平均金利は 16 ベーシスポイント(bp)高い 9.67% だった。 米証券ジェフリーズによると、中国のデベロッパーは来年に 6,000 億元(968 億 3,000 万ドル)相当の信託ローンの返済額を迫られる見通しで、現在の状況は悪い兆しだ。

中国の招商証券研究開発センターのエコノミスト、Xie Ya Xuan 氏は「信託会社は住宅価格の上昇に大きく依存しており、デフォルトリスクが高まっている」と指摘する。 信託会社は、シャドーバンキングの急速な拡大を懸念する規制当局の厳しい監視の下、小規模事業者を中心に自力での資金調達が困難になり、市場が冷え込む中で、デベロッパー向けの融資に慎重になっている。

一部のデベロッパーが販売促進のために値下げに踏み切り、業界の多くが今年の販売目標を達成するためにさらなる大幅値下げを予想している。 民間の調査によると、中国の 6 月の新築住宅価格は 3 カ月連続で下落した。 この結果、供給過剰で不動産セクターの見通しに不透明が強い中で今後 1 年から 1 年半に開発業者向けの信託融資は圧縮される可能性がある。

不動産セクターは中国経済の 15% を占め、他の 40 セクターに直接の影響を及ぼすことから、多くのエコノミストは不動産産市場の低迷がことしの 7.5% の経済成長目標を達成する上で一番のリスクだと認識している。

借り換えリスク

融資環境の引き締めによってデベロッパーによる信託融資の借り換えも困難になっている。 国家統計局によると、ことしの不動産開発業者向けの総融資額は 5 月時点で 4 兆 7,000 億元に達し、前年同期に比べて 3.6% 増加した。 昨年の同時期に 32% 増加したのと比べると大幅に減速していることが分かる。 香港上場の不動産開発企業の幹部は「信託融資の借り換えが実施できなければ、企業はトラブルに陥る」と語った。

大手向け融資は増加

信託会社は小規模デベロッパー向け融資を削減する一方で、大手向けの融資は増やしているようにみえる。 用益信託によると、上半期の不動産販売で 3 位のエバーグランデ・リアル・エステート・グループ(恒大地産)は 7 日までに、今年のプロジェクト向けに 33 億元を信託融資を介して調達した。 信託会社は不動産関連の借り換えに一段と選別色を強めており、不動産よりも政府の後ろ盾を受けることが多いインフラ投資を好む傾向があるという。 五鉱国際信託のファンドマネージャーは「省レベルかそれより小さいデベロッパーはやらない」と話した。

しかし、規模の大きさは必ずしも安全性を意味しない。 これらのプロジェクト融資は負債ではなく株式に分類されるため、企業のバランスシートは実際より健全に見えるからだ。 バークレイズは 6 月、すべての資金調達源を負債に計上した場合、恒大地産の自己資本に占める有利子負債比率は 220% になると指摘した。 アルビン・ウォン氏は顧客向けのノートで「同社は特に無期限証券商品を保有しており、過剰レバレッジの状態にある。 販売の減速が続けば大きな痛手を被る可能性がある」と指摘した。

華鼎集団は先月、杭州に拠点を置くデベロッパーの Zhongdou Group 向けの 2 億香港ドルの委託ローンに対する 2 件の利子の受け取りができなかった。 同社は 20 億元の負債を抱えていると報道されている。 また、江蘇省のある造船会社も 4 月、南京のデベロッパー向けの 1 億 500 万元の委託ローンがデフォルト(債務不履行)に陥ったと発表している。 (Clare Jim、Reuters = 7-16-14)


中国の影の銀行、実体経済を支援している = 工商銀会長

[北京] 中国工商銀行の姜建清会長は 24 日、投機を助長しているとして批判のある中国のシャドーバンキング(影の銀行)について、実体経済を支援しているとして擁護した。フォーラムで述べた。 会長は「影の銀行」が生み出す資金は製造業や建設業で生産的に利用されていると強調。 「中国の金融システムの信用や融資は基本的に実体経済に投資される」とし、シャドーバンキングでも同じだと述べた。

会長は「マネーの源が信託であれ、理財商品であれ関係ない。 いずれにせよ、都市建設や不動産、製造業などに投資される。」と指摘した。 国際通貨基金 (IMF) や中国人民銀行など金融規制当局は、成長著しい中国のシャドーバンキングについて、融資基準が緩いため、景気が悪化すれば銀行の不良債権が増えかねないなどとして警戒している。 (Reuters = 6-25-14)

編者注〉 中国で「影の銀行」が生産的に機能しているのは、既に共通認識です。 今、懸念しているのは、「影の銀行」がデフォルトに陥る前に、工商銀行のような大手行が救済の手をさしのべるか、どうかです。 そこへの言及が無ければ、何の意味を持たない発言になります。


中国の地方債自主発行開始、中央政府よりも信用高く?

地方政府の不透明な借金問題が深刻になっている中国で、地方が自らの責任で債券を発行し、自力で資金調達する試みが始まった。 ただ、損失リスクが高いはずの地方債の金利が、中央政府発行の債券の金利より低くなる「逆転現象」も起きている。 市場を使って財政規律を促すことが定着するには、まだ時間がかかりそうだ。

中国政府は今年から、北京や上海など 10 省・市を対象に、発行と返済を自ら行う地方債を解禁した。 地方政府の借金の状況が把握しやすくなり、財政状況に応じて金利が決まるため、財政再建への努力も促すことができるというねらいだ。 (北京 = 斎藤徳彦、6-24-14)


上値追いに慎重ムード、「二兎を追う」中国経済に依然不安

[東京] 日本株やドル/円 JPY = EBS の上値は重く、マーケットは慎重ムードだ。 懸念要因の 1 つとして中国経済が意識されている。 足元の経済指標は悪くないが、政策効果が大きく、経済自体は弱いとの指摘もある。 構造改革と成長継続の「二兎を追う」政策ミックスの成否はまだ見えず、市場の不安感は根強い。

上振れた中国 PMI に反応鈍い市場

マークイット/HSBC が発表する中国の製造業購買担当者景気指数 (PMI) は、同国の国家統計局が発表する PMI よりも中小企業の調査数が相対的に大きいことで知られる。 23 日午前に発表された 6 月の速報値が 50.8 に上昇し、拡大と縮小の節目である 50 を 6 カ月ぶりに上回ったことは、中国経済の改善のすそ野が広がり始めていることを示していると好感されている。

中国政府が今年に入って預金準備率の引き下げなどの金融緩和やインフラ投資を実施し、景気の下支えを図ってきた効果がここにきて表れているもようだ。 李克強首相は 18 日、7.5% 成長を達成するとの見通しを示した。

ただ、マーケットの反応は鈍い。 PMI 発表直後は買いも入ったが、上海総合指数 SSEC や日経平均 N225 はわずかだが、一時マイナス圏に沈んだ。 コマツなど中国関連株は比較的堅調であるものの、市場では「政策効果が目立てば目立つほど、中国経済自体の弱さへの懸念が強まる(国内証券エコノミスト)」と慎重な見方が多い。

SMBC 日興証券・投資情報室中国担当の白岩千幸氏は「中国は不動産市場に依然不安を抱える。 不動産価格が急落すれば、不良債権が増加し、金融にダメージを与える。 金融セクターの比率が大きい上海市場が弱いのは、そうしたためもあるだろう。」と述べている。 中国の不動産市場は、同国の国内総生産 (GDP) の 15% を占める。 住宅建設は今年に入り大きく減速。 5 月の中国主要都市の新築住宅価格は、2 年ぶりに前月比マイナスとなった。 (Reuters = 6-23-14)


中国の 15 年成長率見通しを 7% 程度に下方修正、IMF が改革要請

[北京] 国際通貨基金 (IMF) は 5 日、2015 年の中国の経済成長率予想を 7.3% から 7% 程度に下方修正した。 ただ、当局に対しては追加の刺激策を回避し、金融リスクの抑制に努めるよう求めた。 IMF はまた、中国人民元が「やや過小評価 (moderately undervalued) されている」とも指摘、人民元相場を含む不均衡の是正に向けた改革を約束通り実施する必要があるとの見方を示した。 特に、金利の自由化に向けた次の一手を打つ条件は整っているとした。

IMF のリプトン筆頭副専務理事は北京で記者団に対し、「現時点でわれわれは刺激策を勧めてはいない」と表明。 「それが正当化されるという十分な証拠がない」と述べた。 同氏は不動産市場などの例に触れ、債務や投資に依存した経済成長は中国にとってリスクだと指摘。

このため、今年の国内総生産 (GDP) 伸び率が中国政府が目標とする約 7.5% を大幅に下回らない限り、追加の刺激策は正当化されないとの見解を示した。 「ぜい弱性が増しており、その抑制が優先課題だ」と述べた。 そのうえで、2014 年の政府の成長率目標は達成可能との見方を示した。 IMF による 2015 年の約 7% 成長予想については、広範な金融改革を実施するならば現実的な水準だと語った。

税財政改革、預金保険制度

IMF は中国に必要な措置として、税財政改革や預金保険制度の創設、預金金利をめぐる国の管理の排除などを挙げた。 当局に対しては、企業の債務不履行や破綻を一段と許容し、為替相場への介入を減らすべきだと指摘。 リプトン筆頭副専務理事は「預金金利自由化において次のステップに向けた条件は整っている」と述べた。 (Reuters = 6-5-14)


中国の銀行、資金調達ラッシュで発行コスト上昇に直面へ

[上海/香港] 中国の銀行は、資本基盤強化のため今後 2 年で過去最高の 1,200 億ドルを調達するとみられている。 ただ、投資家の高リターン要求に押され、調達コストが膨らみ利益を圧迫するおそれが指摘されている。 各行は今後、初めて優先株やその他のいわゆるハイブリッド証券の発行による資金調達に乗り出す。

過去 2 週間だけをみても、中国農業銀行と中国銀行が私募形式で約 290 億ドルの優先株を発行する計画を発表した。 景気減速と不良債権増加の中、銀行は国際的な銀行自己資本規制であるバーゼル III の基準を満たすべく、財務基盤の強化を加速化。 政府も金融危機回避のため、基準達成を強く促している。

アナリストは、こうした流れに沿った資本調達の増加は投資家のポートフォリオ分散にとってプラスとみるが、銀行は中国の金融システムの透明性や近年拡大している不良債権に対する懸念から高いコストを余儀なくされる公算が大きい。 アルジェブリス・インベストメンツ(アジア)の首席投資オフィサー、イワン・バチコフ氏は「予定されている発行の規模や中国の銀行システムの透明性に対する懸念から考えて、西側の商品に対してアグレッシブに発行条件を設定することは難しいだろう」と指摘する。

銀行は、最初の数件の案件で投資家がハイブリッド証券に求めるリターン水準を把握する見通しだ。 中信銀行 (CITIC) 系列の中信銀行(国際)は 4 月、オフショア市場での発行で、劣後債よりも約 100 ベーシスポイント (bp) 上乗せした金利水準の設定を余儀なくされた。

貸し出しや利益への影響

一部のアナリストは、ハイブリッド証券発行で銀行に高い利回りを要求すれば、収益性を圧迫するだけでなく、積極的な貸し出し姿勢を脅かすことになりかねないと警告する。 公式統計によると、中国の銀行の不良債権は 2013 年末時点で 2 年ぶり高水準に拡大している。 ただ、国有企業の多くには暗黙の政府保証が存在し、投資家が銀行破綻で資金を失うリスクは小さい。 これは、今年導入予定の預金保証のような役割を果たしている。

中国銀行業監督管理委員会(銀監会、CBRC)によると、中国の銀行全体の総資産は 2013 年末時点で約 24 兆ドル。 国の経済規模の 2 倍以上で、政府がギリシャ型の債務危機発生の阻止に万全を期すという投資家の認識を支えている。 中国の 4 大銀行は格付け会社からシングル A 相当の格付けを得ており、普通債市場では比較的低コストでの資金調達が可能だ。 ただ優先株の投資家は、自己資本比率が基準を下回った場合に普通株に返還されるリスクから、プレミアムを要求する。

シュローダーズ・インベストメント・マネジメントのファンドマネジャー、アンガス・ホイ氏は「最初の発行は、価格を模索する状況になる見通しだ。 より保守的な投資家は、こうした商品に対してより慎重なスタンスをとるだろう。」と指摘した。 アナリストの予想では、中国の銀行は今後 2 年でいわゆるハイブリッド証券の発行で少なくとも 550 億ドルを調達する。

すでに明らかになっている自己資本規制対応での調達予定の 640 億ドルとは別で、これにより今後 2 年間での調達総額は約 1,200 億ドルとかつてない規模になる。 株式市場が低調な中での資金調達も、銀行にとっては逆風だ。 上海株式市場は過去 1 年で約 13% 下落している。 (Gabriel Wildau、Lawrence White、Reuters = 5-21-14)


中国、日本のバブル崩壊に学ぶべき 7 つの教訓

官僚や銀行家、エコノミストが今、日本の失敗から学んだ方がいい国があるとすれば、それは中国だ。 今回が初めてではない。 10 年前、筆者は 1990 年代の日本の銀行危機に関する本を書き、それが中国でベストセラーになった。 当時は大いに驚いた(特に、筆者は中国で誰にも版権を売らなかったからだ)。 だが、今にして思えば、あの出来事は象徴的だった。

自由資本市場への変換に巨大リスク

中国が今、バブル崩壊寸前の 1980 年代の日本とよく似た、信用供与と不動産価格の爆発的な伸びを経験しているという事実はどうでもいい。 1980 年代の日本のように、中国は今、銀行中心で国家統制下にある金融システムを自由資本市場が主体の制度に変えようとしている。 経済が成熟するに従い、この転換は必要になる。 そしてそれは、巨大なリスクを生み出すことにもなる。

それゆえ、一部の中国政府高官が日本の失敗から何を学べるか静かに自問していることは当然だし、さらに、外交関係の冷え込みにもかかわらず、日中両国の中央銀行が内々に規制緩和と不良債権について議論していることも理にかなっている。 では、中国の投資家と政策立案者はどんな教訓を学ぶべきなのか? 少なくとも半ダースの教訓がある。 何なら、これを「6 つの D」と呼ぶといい。

まず、「減速 (deceleration)」だ。 これは害を及ぼし得る。 日本経済が急成長していた 1980 年代当時、銀行融資はうまくいっていた。 だが、1990 年代に経済が減速すると、不良債権が急増した。 それは分かりきったことに思えるかもしれないが、日本の銀行と官僚は不意を突かれた。 中国の成長率が 7% を割り込もうとしていることを考えると、中国の当局者は注意した方がいい。

「デフレ (deflation)」は極めて有害で、特に銀行にとっては命取りだ。 物価が下落する時、債務負担が大きくなる。 通常は不良債権も増加する。 ここでも問題は明白だが、日本の銀行はデフレに対しても準備ができていなかった。 もし中国がデフレに陥るようなことがあれば、警鐘が打ち鳴らされるはずだ。 中国の消費者物価は上昇しているが、生産者物価は 26 カ月連続で下落している。

「否認 (denial)」は悪影響をもたらす。 日本の銀行は不良債権を隠すことで悪名高かった(邦銀は 1992 年に不良債権はたった 8 兆円だと述べていたが、2000 年になると、これを 100 兆円に修正した)。 この事実の否認は危機を遅らせ、やがて訪れるショックをずっと大きいものにした。

不良債権の数字を楽観視

中国の銀行が既に、帳簿をよく見せるために財務上の操作を行っていることを考えると、特に、中国は注意を払うべきだ(ほんの一例を挙げるだけでも、一部の銀行が不良債権を隠すために「信託受益権商品」といった不透明な仕組みを利用している様子を見るといい)。 実際、報告されている不良債権の数字をどうしようもないほど楽観視しているように見える(公式には、中国の銀行の不良債権は資産の 1% 程度だが、オックスフォード・エコノミクスのような独立系の観測筋は 10 - 20% だと話している)。

「ドミノ (domino)」は倒れることがある。 投資家は 1990 年代半ばまで、日本の金融機関は政府、そして緊密に結び付いた複合企業の「系列」を通じて企業パートナーから黙示的に保証されていると考えていた。 このため、小さな金融機関が数社破綻すると、投資家は何を信じていいのか分からなくなり、システム全体への信頼を失った。 中国はこの事実に留意すべきだ。 中国のシステムも、定義が曖昧で黙示的な保証 - - 銀行と影の銀行の双方に対する保証 - - に依存しているからだ。 例えば、信託銀行がいくつか破綻したら、パニックが伝染する可能性もある。

「預金保険 (deposit insurance)」は重要だ。 日銀関係者が最近指摘したように、日本の当局者は 1990 年代に、預金保険なしでパニックを封じるのは難しいということを学んだ。 中国はこれを理解していると主張しており、最近、独自の預金保険制度を導入する計画を発表した。 だが、制度はまだ実施されておらず、中国政府は過去 10 年間にも何度か預金保険制度の導入について口にしたことがある。

「意思決定 (decision-making)」も重要だ。 日本の金融システムを悩ませた問題の 1 つは、政治経済が権力の空白を生んだことだった。 資本市場は意味のある銀行監視を実施するだけの力を持たなかったが、国家官僚はもはや、素早い決定を強要することができなかった。 投資家は今の中国で誰が実際に決断を下しているのかを慎重に見極め、不人気な対策を講じる力が彼らにあるかどうか問う必要がある。 指導者たちは一枚岩ではない。

もちろん、やはりとてつもなく重要で、最初の 6 点を相殺する可能性さえある 7 つ目の D がある。 それは「dollar (ドル)」、つまり、中国が保有する莫大なドル準備(および他の現金の山)である。

結局のところ、日本の過去から得られるもう 1 つの教訓は、十分なお金という武器が国にあれば、バブルが崩壊した場合、銀行の資本を増強し、経済的ショックを和らげることができることだ。 中国は 1999 年に小さな銀行危機が起きた際に、既に一度これをやった。 今のバブルが弾けたら、再びそうするかもしれない。 「中国人の方が(2007 年当時の)米国人よりも(日本からの教訓に)耳を貸す気があるようだ。」 日本のある政策立案者はこう語る。 「それはいいことかもしれない。」

だが、悲しいかな、中国の信用バブルが大きく膨らむほど、その後始末をするのは難しくなる。 データが成長減速を指し示していることを考えると、なおのことだ。 とにかく、中国人が金融の歴史書から正しい教訓を学び続けることを祈った方がいい。 さもなければ、日本の当局者は近く「だから言っただろう」という言葉を翻訳しなければならないかもしれない。 (Gillian Tett、The Financial Times = 5-16-14)


香港大富豪・李嘉誠氏 中国国内の不動産全て売却の情報出る

香港の大富豪で、長江実業集団の総帥である李嘉誠会長や、李氏の二男、李沢楷(リチャード・リー)氏が最近、中国国内の不動産物件をすべて売り抜けたという情報が飛び交っており、「いよいよ中国の不動産バブル崩壊か」との観測が急浮上している。 今年第 1 四半期(1 - 3月)の中国の住宅販売額は昨年同期比 7.7% 減の 1 兆 1,100 億元(約 18 兆円)に落ち込み、新規着工面積も同 25% と大幅減で、中小の不動産会社が倒産したことも、一般投資家の懸念に輪をかけている。

中国国営の新華社電によると、李沢楷氏の率いる香港の不動産会社、盈科大衍地産 (PCPD) はこのほど、北京に保有していた複合施設「北京盈科中心(パシフィック・センチュリー・プレイス)」を香港のファンド、ガウキャピタルに 72 億 1,000 万香港ドル(約 950 億円)で売却することを決めた。 売却は今年 8 月下旬までに完了する見込みで、PCPD の利益は税込みで 26 億 4,600 万香港(約 344 億円)ドルに上るとみられる。

李嘉誠氏も昨年 8 月以来、広州や上海に所有していた少なくとも 4 つの大型物件を次々と手放しており、その合計売却額は約 204 億香港ドル(約 2,650 億円)に達したもようだ。 李氏親子以外に、北京と上海で不動産開発を手掛ける SOHO 中国社も 2 月、8 億 3,700 万ドル(約 850 億円)で上海の商業ビル 2 つを売却した。

李氏らの不動産売却の動きについて、米不動産投資会社 MGI パシフィックの経営幹部のコリン・ボガー氏は米ウォールストリート・ジャーナル紙に「現在のところ、賢明な選択のように思われる」とコメントするなど、市場では「不動産バブルの崩壊も近い」との観測が流れている。

中国の中央銀行、中国人民銀行によると、銀行の不動産関連融資残高は昨年末で 14.6 兆元(約 246 兆円)に達しており、このうち 9.3 兆元(約 157 兆円)がバブル融資になる可能性がある。 このすべてが焦げ付くわけではないが、日本のバブル崩壊の場合、銀行不良債権総額はバブル融資の 9 割の 100 兆円を超えていた。

一方、中国国家統計局によると、不動産関連投資の資金総額は昨年 1 年間で 12.2 兆元(約 206 兆円)。 このうち国内銀行の融資額は全体の 16.1% と 2 兆元弱だが、不明額が全体の 44% の 5.4 兆元(約 103 兆円)に上っている。 銀行融資の 2.5 倍もの資金が不動産関連事業につぎ込まれている計算だ。

この出所不明額はノンバンクなどが高利回りの理財商品として広く預金者や投資家から資金を集めた「シャドー・バンキング(影の銀行)」であるとみられる。 2008 年末からの 5 年間を合計すると、銀行融資のほぼ 2 倍に当たる総額 20.9 兆元に上る。 この 5 年間の銀行融資の 2 倍以上の資金がシャドー・バンキングから不動産関連事業に流れていることになる。

かりに、いま不動産バブルが崩壊すれば、この 20.9 兆元が不良債権化しかねず、さらに銀行などが不動産に投資した資金も回収不能になる可能性もある。 これまで 30 年以上、1 回も会社の業績が赤字に転落したことがないという李嘉誠氏の読みはあたるのだろうか。 (News Post/Seven = 5-16-14)


中国の富裕都市に忍び寄る「デフォルト連鎖」

[上海] 中国・上海から南に約 175 キロに位置する浙江省杭州市。 主要工業地帯の長江デルタにあり、経済の成長エンジンの役割を担ってきた。 しかし今では、同国の不良債権の 3 分の 1 の発生源にもなっている。 中国メディアの報道によれば、杭州市の鉄鋼および繊維メーカーの間では、一部会社の債務不履行によって健全な企業にしわ寄せが及びつつあり、信用危機が起きつつあるという。

中国政府は、杭州市のシュク山区を同国で 7 番目に裕福な地区と位置付けているが、繁栄の原動力の 1 つだった中小企業は、今や同市の足かせとなっている。 企業の借り入れを容易にするための相互の融資保証ネットワークが、新たなデフォルト(債務不履行)危機を引き起こしつつある。 中国紡織工業協会のロバート・ヤン氏は「繊維業界は銀行にとって大きな借り手ではない。 相互保証が悪化し、繊維メーカーが引きずり込まれているというのが現状だ。」と語る。

中国企業の債務拡大は世界的な金融危機発生後から懸念されていたが、当局が市場の役割を拡大させる方向に舵を切ったことで、今年に入ってから一層問題視されるようになった。 中国では、民間企業が国有銀行からの融資に苦労することは珍しくない。 こうした傾向は、経済減速や信用状況の悪化、当局による過剰設備解消への取り組みによって一段と強まっている。

シュク山区の鉄鋼・繊維メーカーは長江デルタの他の民間企業と同様、こうしたハードルを乗り越えるため、銀行から融資を受けるために相互に債務保証を行ってきた。 こうした相互保証により、一部企業の債務不履行が黒字企業をも巻き込む連鎖反応につながる恐れがある。 浙江省の銀行業監督管理委員会は今年 2 月、同省の経済構造調整は危機的な段階にあり、相互保証によって引き起こされるリスクはかなり大きいと警告した。

相互保証

第一財経日報は、非上場のポリエステル糸メーカーの Hangzhou Jianjie Chemical Fiber が最近、同社が債務保証した別の繊維メーカーがデフォルトしたことで破産を余儀なくされたと伝えた。 報道によると、Jianjie の破綻は別の繊維メーカー 5 社に影響を及ぼし、合計で 30 億元(約 490 億円)の融資が危機にさらされているという。

シュク山区の銀行と企業の仲介役を務める団体のディレクター、Zhu Rujiang 氏は同紙に対し、Jianjie が破綻した後、相互保証をしていた企業はさらに債務を引き受けざるを得なくなったと指摘。 「まだ債務に対処でき、会社の存続に影響はないだろうが、銀行が融資を引き上げないことが主な前提条件だ」と述べた。

Zhu 氏はロイターの電話取材に対し、コメントを差し控えた。 また同紙は、鉄鋼メーカーの Hangzhou Zhongxin Steel Structure Manufacture が廃業し、12 億元の銀行融資を他の 4 社が背負う可能性があると伝えている。 Zhongxin のウェブサイトはすでにアクセス不能になっている。 浙江省のもう 1 つの富裕都市である温州で中小企業連合の副会長を務める Zhou Dewen 氏は、「相互保証がもたらす危機は非常に深刻。 良い解決策が見当たらない。」と語った。 (Gabriel Wildau、Reuters = 4-30-14)


中国経済減速 金融改革の痛み恐れるな

中国の 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) は前年同期に比べ、物価上昇を除く実質で 7.4% 増えた。 昨年 10 - 12 月期から四半期ベースで 2 期連続の成長鈍化であり、伸び率は 1 年半ぶりに低い水準となった。 国家統計局は GDP 発表に際し、「中国経済は構造調整の『陣痛期』にあり、(景気減速の)代償を払う必要がある」と説明した。

中国はこれまで、採算を度外視した高速鉄道網の急造など大規模な公共投資で高度成長を力任せに推し進めてきた。 そのツケとして残ったのが、「影の銀行(シャドーバンキング)」や不動産バブルといった副作用である。 そうした歪(ひず)みの是正は待ったなしだ。 中国は経済構造改革の苦しみに耐える必要がある。 GDP 至上主義のあだ花まで世界に輸出するようなことがあってはならない。

世界第 2 の経済大国となった中国が景気減速で政策のかじ取りを間違えて、金融市場が混乱すれば、累は先進国や新興国の市場にも直ちに及び、「中国発の世界金融危機」を招きかねない。 こうした事態を防ぐため、習近平政権は「預金保険制度の整備」と「預金金利の自由化」などを打ち出している。

国有商業銀行の経営を護送船団方式で守るために、中国政府は銀行の預金金利の上限を厳しく規制してきた。 それが自由化されれば、ハイリスク・ハイリターンの金融商品に流れていた資金を、監視可能な正規の金融商品に呼び戻すきっかけとなるだろう。 金融当局の監視が及ばない「影の銀行」に類する灰色の金融商品のうち、約 4 兆元(約 66 兆円)分の償還期限が年内に迫る。 公共事業の拡大や右肩上がりの不動産市況を当てにした金融商品は景気減速の直撃を受けかねない。

中国では、灰色の金融商品であっても「最後は政府が救済してくれるはずだ」と考えて、リスクを無視するモラルハザード(倫理の欠如)が蔓延(まんえん)している。 個人投資家はデフォルト(債務不履行)に対する予備知識もない。 手をこまぬいて負の連鎖が起きる前に、直ちに預金保険制度を導入し、一定の秩序あるデフォルトに備えるべきだ。 市場混乱は最小限に抑えねばならない。 対応を誤れば金融機関への取り付け騒ぎなど社会が混乱することを、中国当局は銘記すべきだ。 (sankei = 4-20-14)


中国経済につきまとう不動産バブルの影

香港 : 中国における不動産バブル崩壊の危機が再び注目を集めつつあるようだ。 中国の国内総生産 (GDP) のうち、不動産セクターが占める割合は約 16% に達することから、世界経済への悪影響も懸念されている。 エコノミストらに対する調査では、中国経済の懸念材料として、不動産バブルの崩壊が 2 番目に多く指摘された。 1 番目は、シャドーバンキング(影の銀行)問題だった。

これ自体は新しい話ではないが、最近になって中国の中小都市の不動産市場がかかえるリスクについてのリポートが相次いで発表されている。 中小の都市では不動産業者が大幅な値引きをして売り急いでいるとされる。 野村インターナショナルによれば、すべての住宅販売のうち中小の都市が占める割合は約 70% に達する。

一部の大都市でも不動産販売が減速しているとの指摘もある。 だが不動産市場のリスクを測るには、中国政府の統計だけでは不十分だ。 不動産価格は大都市のものしか公表されていないし、個人所有の住宅に関する統計もない。 野村インターナショナルのアナリストは「不動産セクターにおける過剰投資はマクロ経済のリスクの筆頭に挙げられる。 不動産セクターは中国経済の要となっており、これが減速すればシステミックリスクが高まるからだ。」と指摘している。

もっとも、リーマン・ショック前の米国と違い、中国では住宅ローンの証券化は進んでいない。 もしバブルが崩壊しても、影響は米国のサブプライムローン危機ほど拡大しない可能性もある。 (CNN = 4-17-14)


中国 : 3 月の新規融資、市場予想を上回る - M2 の伸びは鈍化

中国の 3 月の経済全体のファイナンス規模と新規人民元建て融資は共に市場予想を上回った。 一方、マネーサプライ(通貨供給量)統計では M2 が 2001 年以来の低い伸びにとどまった。 中国人民銀行(中央銀行)が 15 日発表した。 3 月の経済全体のファイナンス規模 は 2 兆 700 億元(約 33 兆 8,800 億円)。 ブルームバーグ・ニュースがまとめた市場関係者 19 人の予想中央値は 1 兆 8,500 億元。 昨年 3 月は 2 兆 5,500 億元だった。 3 月の新規融資は 1 兆 500 億元。 エコノミスト予想中央値は 1 兆元。

3 月の M2 は前年同月比 12.1% 増。 2 月の 13.3% 増から伸びが鈍化し、予想中央値の 13% 増も下回った。 人民銀が同時に発表した 3 月末時点の外貨準備高 は 3 兆 9,500 億ドル(約 402 兆円)。 昨年 12 月末時点の 3 兆 8,200 億ドルから増加した。 中国の外貨準備高は世界最大。 (Bloomberg = 4-15-14)


中国 : 信託会社の監督を強化 - デフォルトリスク拡大に対応

中国の銀行監督当局が国内信託会社 68 社の経営者に対し償還や増資に備えるよう求めた。 高利回りの投資商品をめぐるデフォルト(債務不履行)リスクが高まっていることが背景だ。

中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、損失を被った場合、事業を縮小し純資産を減らすか株主資本を充実させるかするよう信託各社に指示した。 銀監会の 8 日付通達の内容をブルームバーグ・ニュースが確認した。 通達は銀監会の各支部にも伝えられたという。

通達は、信託会社による新規事業開始や新商品発売の認可手続きも今年から「厳格」にすると言明。 一般的に最低 300 万元(約 4,900 万円)からとなる信託商品を個人投資家が借入金で購入することを禁じた。 また、信託会社に対し、販売活動の際にはリスクを完全に説明し、テープかビデオで記録を残すよう求めた。

中国では 1 月、少なくとも 10 年ぶりとなる信託商品デフォルトが近づいていたが、救済を通じこれを回避。 信託業界の規制はそれ以後、強化されている。 海通証券が 1 月に出したリポートによると、償還期限を今年迎える信託商品の総額は 5 兆 3,000 億元と、昨年の 3 兆 5,000 億元から増加する見通し。

チャイナ・セキュリティーズの黄文涛アナリスト(北京在勤)は電話取材に対し、「信託商品の期限到来は 4 - 6 月(第 2 四半期)にピークとなることから、規制強化は非常に時宜を得ている。 中央政府はシステミックな危機に転じることのないようあらゆるリスクの抑制に取り組んでいる」と述べた。 (Bloomberg = 4-14-14)


中国財政次官、IMF が指摘したハードランディングリスクを一蹴

[ワシントン] 中国の朱光耀財政次官は、中国にはハードランディングのリスクがあるとの国際通貨基金 (IMF) の警告を一蹴。 政府は金融リスクに対する対応をとっているとの見解を示した。 同次官は一部の西側記者団に対し、IMF とは緊密に調整しているが全てにおいて同意しているわけではないと指摘。 「IMF は専門的な金融機関だと考えているが、利用している方法や伝統的な考え方には改革が必要」との認識を示した。

その上で「IMF の分析や方法論は、各国の実態を反映する必要がある。 これは世銀にもいえることで、ひとつの方法が全てに適合するわけではない。」と述べた。 国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事は、中国には少ないながら「ハードランディング」のリスクがあるとし、シャドーバンキングや金融セクターの自由化などを進めるよう求めた。

中国は既に対策をとっているとし、「リーマン危機や欧州債務危機時の欧米の対応と比べ、中国の対応はこれまでのところ最も成功していると考えている」と語った。 地方政府の資金調達を行う融資平台問題は、政府債務と保証債務を明確にするための監査が入っていると指摘した。 最近の人民元下落については他の当局者と同様の見解を繰り替えし、「需給の変化により人民元レートも上下するよう望む」と述べた。 (Reuters = 4-14-14)


ボアオフォーラム閉幕 中国経済、期待とリスク 指標、軒並み低迷

【ボアオ = 河崎真澄】 アジアを中心に世界の政財界要人が中国海南省ボアオに集まる「ボアオ(博鰲)アジアフォーラム」が 11 日、予備会議を含む 4 日間の日程を終えて閉幕した。 フォーラムでは日米欧やアジア各国の参加者らが、世界経済の牽引車となった中国との関係拡大に前のめりの姿勢を示した。 一方、会期中に発表された貿易統計など中国の経済指標は低迷。 成長失速リスクも現実味を帯びる中で、海外で先行する中国への期待感と実像の "ギャップ" が一段と広がった。

同フォーラムは福田康夫元首相が理事長。 年次総会は今年で 13 回目だが、今回初めて日中の企業トップらが両国経済関係を討議する分科会が 11 日、非公開で開かれた。 トヨタ自動車の内山田竹志会長や中国パソコン大手、聯想(レノボ)グループ創業者の柳伝志氏ら計 20 人以上が出席した。

分科会に出席した経団連の中村芳夫事務総長は記者団に、「悪化した日中関係を民間企業の努力で乗り越え、協力を強化すべきだとの声が相次いだ」と述べた上で、「政治リスクはどの国にもあり、リスクより利益が大きいとの企業判断もある」と強調してみせた。 昨年年秋に誕生した「上海自由貿易試験区」を討議した同日の分科会でも、欧米の金融機関トップらが、同試験区での規制緩和シナリオに強い興味を示した。

中国側は "宣伝" に余念がない。 中国人民銀行の周小川総裁は同日の別の分科会で、「中国は経済改革の転換期にある」と強調。 金利自由化や人民元の国際化による市場経済路線の強化を "バラ色" に描いた。

だが、中国の経済統計はむしろ "黄信号" をともしている。 同日発表された 3 月の消費者物価指数は依然として低水準。 10 日発表の 3 月の貿易統計では、輸出が 2 カ月連続マイナス。 また李克強首相は 10 日の演説で、今年の経済成長率が政府目標の 7.5% を下回る可能性に言及した。 李氏は経済構造の改革にも意欲もみせるが、既得権益層に阻まれ進展の気配はない。

16 日に発表される今年 1 - 3 月期の国内総生産 (GDP) 成長率は、7.5% を下回るとの見方が市場では支配的だ。 「影の銀行(シャドーバンキング)」のデフォルト(債務不履行)も年内に数千億円の規模で起きるとみる関係者もいる。 中国が主導する同フォーラムが「根拠の薄い中国期待論ばかり目立つ場になった(アナリスト)」とする厳しい指摘も聞かれた。 (sankei = 4-12-14)