1 - 2 - 3 - 4 - 5 - 6 - 7 - 8 - 9 - 10 - 11 - ...
中国経済を楽観できない スミス氏 - ロシア危機前に酷似と指摘 中国の経済開放政策はゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、ジェフリーズ・グループから称賛を浴びている。 3 社はともに先月、中国株に強気の姿勢を示した。 しかし、ドイツ銀行の株式ストラテジスト、ジョンポール・スミス氏はこの熱狂に共感できない。 1998 年のロシア株式相場暴落をその数カ月前に予想した同氏には、当時と同様の金融メルトダウンの兆候の一部が中国に見える。 同国の経済モデルは膨張する企業借り入れが景気拡大をあおる高リスクのモデルであり、中国はこれをロシア同様に市場自由化措置と予算削減で置き換える必要があるという。 同氏によればロシアはそれによって、デフォルト(債務不履行)とその直後のマイセックス指数の月間ベース 44% 暴落という危機を脱出し、経済成長を成し遂げた。 スミス氏は 12 日にロンドンでインタビューに答え、「工業に携わる企業が債務のわなに陥っている可能性があり、これが来年にも経済全体に波及する金融危機の引き金となりかねない」と述べた。 この前日のリポートで、中国の減速が来年の新興市場株の 10% 下落につながると予想した同氏は「私の中国の見方が間違っていれば、私のあらゆる予想が外れることを意味する」と語った。 2013 年に新興市場株が少なくとも 10% 下落するとした同氏の予想には、先見性があった。 MSCI 新興市場指数は年初来で 5.9% 下げ、22% 上昇の MSCI 先進市場指数と対照的。 中国の上海総合指数は 7.9% 下落し、ここ 4 年では 3 回目の年間下落となりそうだ。 「覚悟ができている兆候はない」 中国共産党の第 18 期中央委員会第 3 回総会(3 中総会)で少なくとも 20 年ぶりの大規模な経済自由化の方針が示された 11 月半ば以降、中国株の激しい売りは和らいだ。 モルガン・スタンレーは市場の自由化で消費やテクノロジー、ヘルスケア関連株が買われるとし、ジェフリーズは自動車や保険銘柄が強気相場の中でベストなパフォーマンスを演じると予想。 ゴールドマンも中国株の投資判断をオーバーウエートに引き上げた。 しかし、2010 年のドイツ銀入り以降一貫して中国に弱気のスミス氏は、同国政府が政策変更をどう実施するのか見届けたいと言う。 向こう数年の成長率は毎年 5% 未満にとどまるリスクがあり、 「ロシアが 1999 年から 2003 年秋にかけて行った『厳しい国家主導の自由経済』路線を本当に進むつもりが中国当局にあるのか、非常に興味深い。 これまでのところ、そうした覚悟ができている兆候はない。」と同氏は述べた。 「中国は多くの市場コメンテーターが信じているような安全な投資先ではない」とも話した。 (Bloomberg = 12-24-13) 汚職腐敗で行き詰まった中国の成長モデル 中国共産党は、9 日から 3 日間、北京で第 18 期中央委員会第三回全体会議(三中全会)を開く。 国営通信社の新華社は「広範囲にわたり、大胆で前例がないものになる」と、事前に「経済改革」を喧伝している。 議題の主要項目は金融自由化、国有企業改革、土地所有制度改革など「経済の自由化」で、英エコノミスト誌などは習近平総書記の指導力に大きな期待を寄せているが、政治制度の自由化抜きの経済自由化は党官僚の利権機会を新たに増やすだけとの冷めた見方が外部には多い。 「三中全会」と言えば、1978 年 12 月、復権した●(=登におおざと)小平氏が主導した例がある。 改革開放路線が打ち出された。 経済開発の基本は、党が指令する財政、金融、投資の配分制度で、実行手段としたのは北京の党中央指導部各人が気脈を通じる党幹部を地方に配置し、地方の開発権限、つまり利権を丸投げする「放権譲利」である。 資本や技術の蓄積が貧弱だった中で、農民層を中心とする安価な労働力を活用して外資を引き寄せ、国内資本を蓄積し、国有商業銀行を通じて再配分する。 利権というインセンティブに駆り立てられる地方赴任の党官僚は農民から土地を取り上げ、沿海部を中心に広大な工業開発特区を設置し、外資を積極的に導入してきた。 日本からの円借款を受け、道路、港湾、空港などのインフラを整備してきた。 外資との合弁や技術提携をもとに国有企業も徐々に力をつけ、輸出と固定資産投資により、国内総生産 (GDP) がかさ上げされる。 その成長の基本モデルは現在に至るまで不変と言っていい。 2008 年 9 月の「リーマン・ショック」を受け、当時の胡総書記は党指令型成長モデルをフルに回転させた。 09 年に中国は 9.2% 成長したが、GDP 拡大分の 91% が固定資産投資による。 党中央の指示で国有商業銀行が融資を一挙に 3 倍に増やし、地方政府や国有企業に貸し付ける。 地方の党幹部は工場誘致が困難とみるや、不動産開発の受け皿会社を相次いでつくり、農地を潰して高層ビル群を建設する。 上海など大都市郊外はもちろん、住宅需要の少ない内陸部でも高層住宅建設ラッシュが起きた。 胡錦濤前政権の巨大な負の遺産が、汚職腐敗の広がりである。 党幹部の不正蓄財の横行は中国の経済モデルをコントロール不能にし、習総書記は汚職腐敗一掃を掲げている。 不正蓄財される資金は香港経由などで海外にいったん移されたあと中国本土に還流して不動産などに投資され、その売買益は再び海外に流されたあと、またもや還流するという循環プロセスの中で増殖を続ける。 不正蓄財規模は半端ではない。 不正資金総額のおよその検討は付けられる。 厳しい外国為替管理体制を敷く中国で、海外との間で合法的に出入りできる資金は、(1) 貿易収支の黒字または赤字分、(2) 中国からの対外投資に伴う利子・配当収入から外国企業の対中投資の利子・配当収入を差し引いた所得収支、(3) 対内、対外直接投資の差額 … である。 これら合法資金の増加額合計から外貨準備増加額を差し引いた額を非合法な資本収支としてみなしたのがグラフである。 一目瞭然、熱銭を中心とする資本は 08 年 9 月のリーマン・ショック直後に年間 1,000 億ドル規模で逃避したが、北京当局による融資増で値上がりし始めた不動産に逃げた熱銭が入り、不動産や金融のバブルを引き起こした。 バブル崩壊不安が生じた 11 年後半から熱銭は引き上げ始め、12 年前半からは資本流出に転じた。 国家統計局は 08 年 12 月から四半期ごとの対外直接投資を公表している。 対外直接投資は年々増え、11 年 746 億ドル、12 年には 878 億ドルに上る。 この分をカウントすれば、11 年の熱銭流入額は約 1,800 億ドル、12 年の逃避額は約 900 億ドルとなる。 いずれにしても、巨額の投機資金が中国のバブル経済を支える半面で、その流出はバブル崩壊の引き金になる。 熱銭を国内につなぎ止めるために、当局は金利を高めに据え置き、人民元の値打ちを上げる、つまり元高政策をとっている。 元高は輸出産業に打撃を与え、鉄道貨物輸送量でみる中国の実体経済は昨年末からゼロ % 以下の成長を続けている。 農村からの出稼ぎ労働者を中心に不満が高まり、暴動が頻発するわけである。 巨大な党利権機構が組み込まれた中国の政治経済社会は、付き物の不正蓄財ゆえに崩壊しかねない脆さを内包している。 習総書記の指示で経済の自由化が仮に一部で実行されようとも、党支配による市場経済モデルの破綻を修復できるはずはないだろう。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男、sankei = 11-6-13) 中国、地方債発行の試験プログラム拡大目指す [上海] 中国政府は来月、2011 年に導入した地方政府が直接的に債券を発行することを認める試験プログラムの拡大を決定するかもしれない。 地方政府が抱える膨大な借り入れの大半は実態が見えにくく、中国の金融システムの安定を脅かすとの懸念に対応するためだ。 11 月に長期的な改革に関する政策課題を話し合う共産党中央委員会の第 3 回全体会議(三全中)が開催されるのを前に、国務院発展研究センターが、地方債のより大幅な活用を提案した。 地方政府の債務総額は、一部の非公式推計では 4 兆ドル、つまり中国国内総生産 (GDP) の 42% に上る。 ただ、大半は地方政府傘下の金融会社 (LGFV) を通じて調達され、借り入れの規模や健全性は公開されていない。 こうした不透明性は、情報開示が義務付けられ、幅広い層の投資家に債務不履行(デフォルト)リスクが分散化される地方債を用いることで解消されるだろう。 国務院発展研究センターは最近、党指導部に地方債の活用拡大案を提出し、先週になって人民大学のウェブサイトで内容が公表された。 それによると同センターは、後戻りできないような流れを作った上で、地方政府が独自に債券を発行する余地を広げるべきだと訴えた。 中国の法律では地方政府は原則的に自らが起債することを禁じられているが、LGFV を経由してインフラ整備プロジェクトの資金を調達してきた。 LGFV による地方政府の調達は、中央政府が 4 兆元に上る大規模な景気対策を打ち出した 2008 - 09 年に急増。 世界銀行は今月、「中国地方政府の債務増加は、その調達構造の複雑さや不明瞭さを考えれば懸念材料だ。 透明性の欠如は貸し手や投資家、政策担当者にとって受け入れ可能な水準以上に債務を膨らませてきた。」と警告した。 こうした中で中国国内の改革推進派の多くは、三全中で地方債の試験プログラムの積極的拡大が発表されることに期待を抱いている。 彼らもまた、地方政府が銀行融資に頼っている現状が野放図な支出につながっており、LGFV の利用はその実態隠しを助長しているとみている。 エコノミストは、地方政府に直接起債を幅広く認める上で、情報開示基準を備えた真っ当な地方債市場を創設することが鍵になると指摘。 これが地方政府に厳しい財政規律を課すことに一役買うという。 地方債発行の拡大への備えとしては、国務院発展研究センターと並ぶ有力シンクタンクである中国社会科学院が先月、地方政府の格付けの発表に向けて大手格付け会社と連携する動きも見えた。 <借り入れコストは低下> 中国財政省が 3 月に設定した今年分の地方債発行枠は 3,500 億元で、地方政府の借り入れ所要総額に比べれば引き続きごくわずかな規模といえる。 それでもこれらの地方債に対する投資家の反応は上々で、利回りは 3.8 - 4.5% 程度と、同年限の国債利回りの下限に近い水準で推移している。 対照的に財政基盤が弱く、信託会社やその他の「影の銀行(シャドーバンク)」に頼らざるを得ない自治体の場合、年 10% を超える金利の支払いを余儀なくされている。 つまり地方債を発行できれば、多くの自治体は借り入れコストを引き下げることができるのだ。 より長期の債券を利用すれば、資金回収に何十年もかかるインフラ投資と、その調達のために利用されることが多い借り入れの期間が短いというミスマッチの緩和にもつながる。 かつて人民銀行(中央銀行)に勤めていた Wu Xiaoling 氏は先月、ロイターに対して「高速道路建設計画を例にすれば、投資元本と金利負担の回収には建設から 20 年ないし 30 年はかかるかもしれないが、銀行からの資金借り入れ期間は大抵 3 年から 5 年だ」と説明した。 もっとも既発の小規模な地方債プールが低利回りにとどまっているのは、財政省が財政基盤の強い自治体を選別して試験プログラムの対象としているという投資家の想定が反映されているだけの可能性もある。 上海にある中堅の資産運用会社のある債券アナリストは「もし突然、すべての自治体の発行が許されるようになれば、市場はもはや地方債を特別な存在だとは考えず、ファンダメンタルズに基づいて見極める形に戻るほかはないだろう」と話した。 <当局内には警戒感も> 中国のメディアによると、楼継偉財政相は先月、主に地方債という形に基づく標準化された地方政府の資金調達メカニズムを徐々に形成していく必要性を語ったという。 問題は「徐々に」が意味するところだ。 今月中には地方政府の債務に対する公式の監査報告が公表されるが、その内容次第で地方債発行の試験プログラムが拡大されるか計画倒れになるかが決まる可能性がある。 前回の監査では 2010 年末時点の地方政府の債務額は 10 兆 7,000 億元(1 兆 7,600 億ドル)となった。 これはスタンダード・チャータード銀行などが使っている算定基準よりも定義を絞っており、同行の見積もりでは最大で 4 兆ドルに達している。 もし今回の監査結果で債務が劇的に増加しているようなら、当局はプログラム拡大に二の足を踏むだろう。 一部の政府系メディアは先月、債務額は 2010 年から 12 年までに 2 倍近くに膨らんだとした監査担当者の発言を伝えたが、その後この記事は削除された。 実際、財政省内部では地方債の発行拡大を許容すれば、地方政府の借り入れ意欲を高めて債務問題が悪化するだけになると懸念する声も出ている。 こうした警戒感があるため、大半のアナリストは試験ブログラムは小幅な拡大が承認されるにとどまると予想している。 (Gabriel Wildau、Reuters = 10-21-13) 「影の銀行」中国 GDP の 4 割に膨張 過剰融資でバブル崩壊の懸念も 中国では現在、「影の銀行」と呼ばれるシャドーバンキングの規模が急速に広がっています。 「影の銀行」とは、一般的な銀行とは違って、証券会社やヘッジファンドなどが販売する金融商品を購入して、取引することを指します。 免許制などで金融当局から厳しく監督される通常の銀行と比べて規制が緩いのが特徴。 あまりの膨張っぷりに、日本やアメリカのようなバブル崩壊に繋がる可能性も指摘されています。 中国政府が「影の銀行」の推定規模を公表。 事実なら、日本や米国のバブルを超える水準。 中国政府のシンクタンクである社会科学院は 10 月 9 日、中国経済における「影の銀行(シャドーバンキング)」の規模が 20.5 兆元(約 328 兆円)に達している可能性があることを明らかにした。 この数字は日本のバブル崩壊や米国のリーマンショックにおける過剰融資の水準を上回っており、いつバブルが崩壊してもおかしくないことを示している。 社会科学院による公式データを元にしたシャドーバンキングの規模は 14.6 兆元(約 234 兆円)、市場データからの推定では 20.5 兆元に達するとしている。 もし 20.5 兆元という数字が正しいとすると、これは中国の GDP の約 40%、貸出総額の 16% を占めることになる。 世界経済は、1990 年前後の日本におけるバブル崩壊と 2008 年のリーマンショックという 2 つの巨大バブルの崩壊を経験している。 このため、どの程度の過剰融資がバブル崩壊を引き起こすのかについては、おおよその知見がある。 中国におけるシャドーバンキングの数字について日米と比較してみると、中国の現状は両国よりもさらに悪いことがわかる。 中国の GDP に対する融資総額(シャドーバンキングを含む)の比率は 2.5 倍に達している。 日本はノンバンクの不動産融資が、米国はサブプライムと呼ばれる不動産融資が膨張してバブル崩壊となった。 バブルが崩壊した当時の日本や、リーマンショック当時の米国について、中国と同じ条件で計算すると融資総額は GDP の 1.5 - 1.7 倍程度になる。 中国はすでに 2 倍を超えており、この数字が正しければ、中国はいつバブルが崩壊してもおかしくないことになる。 ただ中国の場合には、経済の状況が自由市場を原則とする日米とは大きく異なっており、同じ条件での比較が難しい。 日米は融資総額が GDP の 1.5 - 1.7 倍になった段階でバブルが崩壊している。 中国がもし自由市場の国であれば、同じ水準になった段階ですでにバブルは崩壊していただろう。 だが中国経済は現在も崩壊せずに何とか状況を維持している。 それは中国経済が国家によって統制されており、私有財産を無視した強権的な市場安定策や不良債権処理が可能となっているからである。 李克強首相はこのところ中国経済の運営に自信を示した発言を繰り返し行っている。 もしかすると、強制的な不良債権の処理にある程度メドがついているのかもしれない。 だが仮にそうなった場合でも、不良債権を完全に処理するまでには、最低でも米国と同じ程度の期間を要する可能性が高い。 振興国としての高度成長が背景にあるとはいえ、当分の間、中国経済は低空飛行が続くことになるだろう。 (ニュースの教科書 = 10-15-13) 中国企業、行き詰まる債務返済 破綻の連鎖も 2012 年末時点の中国企業の債務は、一般に参考にされているロイヤルバンク・オブ・スコットランドのルイス・クイジス氏のデータによると、国内総生産 (GDP) の 113% だった。 2008 年の 86% から悪化している。 JP モルガンは 2012 年の数値を 124%、スペイン系 BBVA は約 130% と見積もっている。 だが実態と比較すると、どの数字も低すぎる。 GDP の数値として過大評価も甚だしい公式統計をもとにしているからだ。 名目 GDP に物価上昇を適切に反映するだけで、2012 年の GDP は 1 兆ドル(約 97 兆円)以上減少する。 そこからさらに明らかな偽りを削れば、中国企業の債務は GDP の 155% といった驚くべき数値になるだろう。 中国の企業債務は、全国的な危機の引き金となるだろうか? UBS のワン・タオ氏は今年 7 月、「債務水準は国が深刻な問題を抱えているか否かの判断基準として適切ではない。 問題は返済が可能か否かで、今のところ中国には債務の返済能力がある。」と語っている。 たしかに今のところ、ワン氏の見方は正しい。 だが簡単な計算をするだけで、中国はまもなく大量のデフォルト(債務不履行)に悩まされることが予想できる。 サウスチャイナ・モーニングポスト紙のトム・ホーランド氏は「中国株式会社のバランスシートは危険信号を発している」と書いている。 具体的にホーランド氏が挙げているのは、中国の売り上げ規模の大きい上場企業 1,500 社の債務は、年間営業キャッシュフローの 7 倍近いという調査会社フォレンジック・アジアのギレム・トゥロック氏の指摘だ。 健全な水準は 3 - 4 倍、6 倍で危険という。 そのうえ中国企業の財務状況は急激に悪化している。 2012 年の企業部門の純債務は純利益の 30 倍と、2011 年の 10 倍から大幅に増えている。 ■ 過剰生産能力を抱える鉄鋼業界 利益が減少し、債務が増加するなか、中国企業の債務返済能力は急激に悪化するだろう。 すでにフリーキャッシュフローは大幅なマイナスだ。 これはアジアでは 1997 年の金融危機直前の数カ月以外には例のない、きわめてまれな事態だ。 「ゴースト・シティ問題」に注目しているアナリストは、中国の債務危機は LGFV と呼ばれる悪名高い地方政府系の金融機関から始まると考えている。 だが足もとでは、巨大な国営企業や小規模な民間企業など、国内企業が危機の引き金になるという懸念が高まっている。 最も深刻な問題を抱えているのは、おそらく鉄鋼業界だろう。 同業界の生産能力は世界の鉄鋼生産の 66% を占めるまでになったが、そのための工場を建設するのに総額 4.900 億ドルの債務を積み上げた。 だが中国政府は明らかにやりすぎた。 中国は現在、3 億トンの余剰生産能力を抱えているが、これは欧州連合 (EU) の生産量の 2 倍に相当する。 過剰生産能力は必然的にデフォルトにつながったが、これまでのところは業界周辺部にとどまっている。 江蘇省などの鉄鋼商社は債務返済に行き詰まり、今年 4 月にはシティック・トラストが元利返済の滞った鉄鋼関連のトラスト(企業合同)の債務を競売にかけた。 一見したところ、大手鉄鋼会社の破綻は起こりそうもないが、それは中国政府が長年鉄鋼産業を支援してきたことが大きい。 改革派の李克強首相は重要性の低い工場を閉鎖したいと考えているが、中国ウオッチャーの間では小さな工場を 1 つか 2 つ閉鎖する程度に終わるという見方が大勢を占める。 李首相の前任者たちも余剰生産能力の解消に努めたが、結局地元の抵抗に遭い、ものの見事に失敗した。 こうした状況を踏まえて、公的機関である中国冶金規画研究院の李新創院長でさえ、資金の借り換え難から、1 年以内に少なくとも 1件はデフォルトが起こると見ている。 ■ 「1 年以内に企業のデフォルトが増加」 大手企業の破綻は、鉄鋼業界でドミノ効果を引き起こすという見方もある。 ありえないような話だが、今年 3 月に太陽光パネル世界最大手であるサンテック・パワーの中核子会社が破産法の適用を申請したことは、今後鉄鋼業界で起こる事態の予兆のようだ。 サンテックの太陽光パネルも鉄鋼業と同じように中央政府の手厚い支援を受け、それが過剰生産能力を生むことになったため、サンテック子会社の破産申請は明らかな警告といえる。 鉄鋼や太陽光パネル業界と同じような問題は、重工業全般に顕著だ。 例えば石炭やアルミ会社は現在、特に脆弱に見える。 このためアナリストは懸念を強めている。 S & P 香港支社のクリストファー・リー氏は今後半年 - 1 年以内に企業のデフォルトが増加すると予想する。 JP モルガンのチュウ・ハイビン氏は企業債務を「最大の懸念材料」と指摘する。 フォレンジック・アジアのトゥロック氏は「不況は避けられない。 中国がシステムを浄化するには景気後退が必要だ。」と語る。 中国のテクノクラートはこれまで、システム浄化のための景気後退を避けることに成功してきた。 国家統計局によると、最後にそれが起きたのは毛沢東が死んだ 1976 年だという。 ただ現実には、中国は 1990 年代末にも不況に陥っており、今回もまだ不況が始まっていないとすれば、まさにその瀬戸際にある。 ■ 流動性供給を続ける人民銀 現在、李首相は景気後退を避けるため、中央銀行である中国人民銀行にあふれんばかりの資金供給を命じている。 人民銀行は 6 月 21 日にひそかに流動性供給を開始し、その後も一部は公然と、また一部は秘密裏に供給を継続している。 公式統計が正確であれば、流動性供給は不必要に思える。 だが中国政府の自慢である大規模企業は金欠状態で、今は支払いに銀行引受手形(実質的には約束手形)のような現金代替物を使っている。 フィナンシャル・タイムズ紙によると、上海のある自動車部品会社では、売掛金のほぼ 3 分の 2 をこうした現金代替物で受け取っている。 このため仕入れ先に支払いをするための現金がない。 同紙は吉林省の自動車会社が発行し、支払いに 2 度使用された額面約100万元(約 1,580 万円)の手形を確認している。 こうした行為は横行している。 発行済み手形の総額は 2008 年には GDP の 3% だったが、昨年には同 11% に増加した。 実効金利が急上昇している現状(2 年前はゼロ % だったが、最近は企業の支払う平均金利は 8% 近い)では、支払いの連鎖のうちたった 1 社がデフォルトするだけで、省や産業の枠を超えた破綻の連鎖が始まりかねない。 (Gordon G. Chang、Forbes = 10-10-13) IMF、ゴールドマンが警告する中国バブル崩壊 地方債務は 340 兆円規模か 中国経済の崩壊懸念が一段と強まっている。 最大の懸念要因である地方の債務は 340 兆円規模に倍増しているとの見方が浮上、国際通貨基金 (IMF) は中国のバブルに警告を発し、米ゴールドマン・サックスも約 300 兆円もの貸し倒れが発生すると試算する。 日本の会計検査院に当たる会計検査署は 8 月から全国各地に人員を派遣し、調査を実施しており、今月中旬にも調査結果を国務院(政府)に報告する見通し。 国営通信、新華社傘下の中国紙、経済参考報は 9 月 27 日、調査に関わった当局者の話として、地方政府の債務規模がこの 2 年間でほぼ 2 倍に膨らんだと伝えた。 11 年 6 月に公表された 10 年末の地方債務は総額 10 兆 7,000 億元(約 170 兆円)。これが倍増なら 340 兆円規模となるが、会計検査署は報道を否定。 同紙は自社と会計検査署のウェブサイトに「事実と反する記事だった」と異例の謝罪文を掲載した。 だが、政府系シンクタンクの研究員らも地方債務は 20 兆元以上との見解を表明している。 IMF は 7 月の報告書で、地方政府が成長を不動産開発に依存しているため住宅が供給過剰となるなど、中国の不動産市場は「ゆがんでおり、バブルの傾向がある」と指摘し、開発のペースを落とすべきだと提言した。 米ゴールドマンも 8 月、バブル崩壊などの危機が起きれば「影の銀行(シャドーバンキング)」を含む金融部門の貸し倒れが最悪で 18 兆 6,000 億元(約 295 兆円)に達するとの試算を発表している。 李克強首相は当初、経済の構造改革路線を打ち出していたが、7 月になって景気重視に軌道修正。 鉄道などインフラ投資に力を入れ、住宅価格の上昇傾向も強まっている。 こうしたバブルを再加熱させる施策によって経済指標も改善してきたが、9 月の製造業の景況感指数は市場の予想を下回るなど息切れの兆しが見えている。 中国経済に詳しい企業文化研究所理事長の勝又壽良氏は「中国経済は輸出も消費もふるわないなか、インフラ投資だけでテコ入れは不可能だ」と話している。 (ZAKZAK = 10-7-13) 中国バブル崩壊の場合、日本への影響は? 中国のバブルが崩壊した場合、日本への影響はどのような形で生じ、どの程度のものとなるだろうか? 不良債権化する可能性が高いのは理財商品だが、日本の個人や金融機関のこれへの投資はほとんどないだろう。 したがって、それが不良債権化しても、直接の影響を受けることはないだろう。 これは、リーマンショックの時と同じ状況だ。 日本の金融機関の、モーゲッジの証券化商品への投資はほとんどなかった。 だから、直接の影響はなかった。 当時の経済財政担当相が「蜂がさした程度」と言ったのもそのためだ。 少なくとも 2008 年の夏頃まで、日本では米国の金融危機が対岸の火事だと思われていた。 しかし、リーマンショックは、経済の屋台骨を揺るがすほどの甚大な影響を日本に与えたのである。 影響は、貿易を通じて生じた。 自動車を中心として日本の対米輸出が急減し、結果的には戦後の日本で最大級の経済危機になったのである。 鉱工業生産指数(10 年 = 100)で見ると、リーマン前のピークである 08 年 2 月には 117.3 に達していたが、09 年 2 月には 76.6 にまで低下した。 その後回復したものの、13 年 7 月の指数は 97.7 だ。 つまり、ピークより 17% ほど低い水準である。 前回述べたように、中国の不良債権の規模は米国金融危機の場合より大きくなる可能性がある。 したがって、バブルが崩壊した場合の日本経済への影響は無視できないだろう。 中国のバブルは、ある意味では米国のバブルの継続だ。 米国でのバブル崩壊に対応して中国が景気刺激策を取り、その結果が今の状態だからだ。 つまり米国住宅価格バブルに端を発した 21 世紀の世界的経済変動は、いまだ収束していないと言える。 ■ 中国景気刺激策終了で対中輸出が減少 中国の場合も、日本への影響は、中国への輸出が減少することを通じて生じるだろう。 実は、これはすでに生じていることだ。 これについて以下に述べよう。 リーマンショック後、米国への輸出が激減した反面で、中国に対する輸出は顕著に増加した。 これは、中国政府が、08 年 11 月に GDP の 16% に相当する 4 兆元(約 57 兆円)という空前規模の景気刺激策を取った結果、公共事業、住宅建設、都市開発事業などが爆発的に増加したからだ。 そして対中輸出の増加が、日本経済がリーマンショックから立ち直るうえで重要な役割を果たした。 ところが、12 年 6 月頃から中国への輸出は停滞し、減少した。 12 年 11 月頃から円安が進行したが、それにもかかわらず輸出数量は減少を続けたのである。 以上の状況を見るには、ドル建て輸出の推移を見るのがよい。 為替レート変動の影響が除かれるからだ。 日本のドル建て輸出総額は、リーマンショック後に大きく落ち込んだが、その後回復し、11 年にはリーマンショック前のピークをやや上回る水準にまでなった。 こうなったのは中国に対する輸出が急増したからだ。 05 年には対中輸出は対米輸出の約 60.0% しかなかったが、リーマンショック後に逆転し、11 年には対米輸出より 28.5% ほど多くなった。 ところが輸出総額は 12 年には減少した。 12 年は、11 年の大震災からの回復の年だった。 また、12 年の 11 月以降は円安が進んだ。 それにもかかわらず輸出総額が減少したのは、対中輸出が対前年比で 10.4% ほど減少したからだ。 対米輸出は増加を続けているので、12 年には対米輸出と対中輸出がほぼ同額になった。 建設用・鉱山用機械について見ると、10 年は 18.3 億ドルだったが、12 年には 7.3 億ドルと、4 割の水準にまで減少した。 大規模景気刺激策が一過性のもので、それが終了したことを示している。 以上で見た状態は、最近にいたるまで続いている。 すなわち、13 年 7 月の対中輸出額は 11.2 兆円であり、前年同月比で 12.0% の減となっている。 円安にもかかわらず、ドル建て輸出額がこのように大きく落ち込んでいることが深刻である。 これが 10 - 11 年頃の水準に戻るのは期待しにくい。 これだけでも日本経済にとっては痛手だ。 将来これがさらに減少するとすれば、日本経済にとってさらに大きな痛手だ。 中国の経済成長率が減速していることから、中国政府が再び大型の景気刺激策を取るだろうとの見方もある。 しかし、前回の刺激策が住宅価格バブルや不良債権問題を引き起こしたことを考えると、再び同規模の刺激策を取るのは難しいのではないだろうか。 ■ 中国現地活動は 2 割程度のウエート 日本経済への影響は、輸出を通じたものだけではない。 もう一つの問題は、中国に進出している日本企業の活動に影響があることだ。 日本企業の中国での活動がどの程度のウエートを持つかは、経済産業省の「海外事業活動基本調査」で見ることができる。 それによると、11 年度において、海外現地法人数は 1 万 9,250 で、売上高は約 182 兆円(うち製造業は 88 兆円)である。 そのうち、中国は現地法人数が 5,878 で売上高が約 35 兆円(うち製造業は 21 兆円)だ。 したがって、海外現地法人中の中国の比重は、現地法人数で 3 割、売上高で 2 割ということになる。 本社企業の売上高は 343 兆円(うち製造業が 187 兆円)であるから、海外進出している企業に限っていえば、売上高で見て中国の比重は本国の 1 割ということになる。 この比率は、もちろん業種によって異なる。 中国での経済活動はどちらかと言えば製造業にウエートがある。 進出の形態はさまざまなので、影響もそれによって異なるだろう。 また、企業によっても異なる。 中国のウエートが比較的高いと言われる日産自動車を見ると、12 年度のグローバル販売台数は 491 万であった。 内訳は、日本国内が 64.7 万、中国が 118 万、米国が 113 万だった。 このように、中国のウエートは米国より高く、国内の 2 倍近くになっている。 中国の経済が混乱すれば、中国での企業活動は直接に影響を受けるだろう。 かなりの影響があることは、12 年 9 月の尖閣諸島国有化による日中関係悪化で日本車離れが進んだ状況を見ると、明らかだ。 売り上げが減るだけでなく、労働争議などもありうるだろう。 日本全体で見ると、国際収支の所得収支が影響を受ける。 ここでの基本的な問題は、「中国に留まるべきか? それとも、中国を捨てて、他の地域(とくに ASEAN に移転するか?」ということである。 この選択は、容易ではない。 製造業の場合、サプライチェーンが整備されているか、現場で指揮をとりうる中堅技術者が存在するか、等々の条件に依存する(拙著『日本式モノづくりの敗戦』、12 年、東洋経済新報社を参照)。 また、「ルイスの転換点に代表される中長期的な中国経済の構造変化は本質的なものなのか?」という問題もある。 そうした判断条件の中で、「不良債権問題は短期的に克服しうる問題なのか」は重要な位置を占める。 (野口 悠紀雄、東洋経済 = 9-30-13) 中国経済に「バブル崩壊」懸念 「影の銀行」は第二のサブプライム? 中国経済のゆくえが懸念されている。 背景にあるのは、「シャドーバンキング(影の銀行)」と呼ばれる、信託会社(ノンバンク)による融資や、「理財商品」という銀行が簿外で提供する小口の資産運用商品を使った仕組みだ。 その実態は中国政府も十分に把握できていないとされ、米格付け大手のムーディーズ・インベスターズによると、2012 年末には 4 兆 7,000 億ドルに膨らみ、中国の国内総生産 (GDP) の 55% に達したという。 「中国発」金融危機を懸念する報道やレポート 「中国シャドーバンキングの闇(ニューズウイーク日本版 2013 年 8 月 6 日付)」や「中国の地方政府、シャドーバンキングで膨らむ債務(ロイター通信 8 月 26 日付)」、「墜ちる中国 世界に伝播する経済危機(週刊エコノミスト 9 月 17 日号)」 - -。 このところ、「中国発」金融危機を懸念する報道やレポートを多く目にする。 シャドーバンキングが拡大する背景には、リーマンショックに伴い実施された 4 兆元の景気刺激策がある。 これにより地方ではインフラ整備や都市開発が加速したものの、投資効率の低下を懸念した中央政府は一転、金融引き締め策に転じた。 その結果、融資基準が厳しくなり、通常の銀行融資を受けられない企業を中心に、ノンバンク経由の「迂回融資」を利用するケースが増えた。 一方、投資家は高利回りの資産運用商品を求めるようになり、「信託商品」や「理財商品」は人気を集めた。 すでに信託会社は、中国の金融セクターの資産規模で最大の商業銀行に次ぐ規模を誇る。 ロイター通信が、信託商品や理財商品などのデータを収集するリサーチ会社、Use‐Trust Studio から入手した、2012 年に行われた総額 2,340 億元(1,166 件)の信託融資を分析したところ、12 年に実施された信託融資の総額 3 兆元の約 8% が「影の銀行」に相当するという。 こうした資金の運用先は、主に地方政府の不動産やインフラ投資。 ところが、新たなプロジェクトや設備投資などの経済活動のために使われたのはわずか半分とされ、残りは過去のプロジェクト資金の借り換えなどに充てられている。 なかには、高い融資金利のため債務の返済が困難になった企業も出てきているようだ。 富士通総研の主任研究員、柯隆氏は週刊エコノミストで、「地方政府の債務が焦げ付けば、銀行のバランスシートも壊れる」と指摘している。 地方の多くのプロジェクトが破たんすれば、銀行や信託会社は大きな不良債権を抱えることになり、日本のバブル崩壊の「二の舞」になる。 「理財商品」はサブプライムに似ている 一方、貸出債権を小口化した「理財商品」について、日本アジア総合研究所は「中国の新たなリスク」と指摘する。 中国・銀行業監督管理委員会によると、理財商品の 2013 年 3 月末の残高は 8 兆 2,000 億円にものぼる。 中国の 12 年の名目 GDP の約 16%、人民元預金の約 12% に相当するところまで膨らんだ。 前出の富士通総研の主任研究員、柯隆氏は、「理財商品は投資家側のリスクによる投資であり、銀行にとってはオフバランスのビジネス。 これまで金融監督当局も見て見ぬふりをしてきた。(週刊エコノミスト)」という。 「信託商品」と同様、「理財商品」に投資していた個人や企業も、運用先のプロジェクトが破たんすれば投資資金は戻らない可能性がある。 貸出債権の一部を証券化して個人に販売するような仕組みは、米サブプライムローンと似ているので、「中国版サブプライム」と揶揄する向きもある。 ニューズウイーク日本版は、「急成長する『影の銀行』は中国経済の潤滑油の役割も果たしているが、このままでは米国のサブプライムと同じ運命をたどりかねない」と指摘する。 (J-cast = 9-22-13) 香港の最大財閥が「中国離れ、欧州シフト」加速 【北京 = 山本勲】 香港の最大財閥、長江実業グループ(李嘉誠会長)が "中国離れ、欧州シフト" の動きを加速している。 中国各紙によると、同社はこの 1 カ月余りの間に傘下の大手スーパーや上海、広州両市の不動産など総額約 410 億香港ドル(約 5,240 億円)相当の資産売却を相次いで決め、並行して英国、オーストリアなどでのエネルギー、インフラ関連事業への投資を急拡大している。 李会長が売却を決めたスーパー、「百佳超市」は香港、マカオ、中国本土に約 300 店を有する。 長江グループの有力部門だったが香港、中国の不動産高騰による出店難や収益率の低下が響いたとみられる。 上海、広州の物件はいずれもオフィスビルで、合計約 80 億香港ドル(約 1,020 億円)の売却収入を予定している。 一方、同グループは、欧州債務危機を受け、2012 年以降に欧州での事業拡大を加速している。 (1) オーストリアでの第 3 世代移動通信システム会社買収、(2) 英国天然ガス供給会社、WWU を買収し、同国ガス市場の 3 割を押さえる - などで、中国圏以外で総額約 1,900 億香港ドル(約 2 兆 4,320 億円)を投じている。 李会長はこの半世紀余り香港不動産市場で、相場の急落時に買い、急騰後に売る "逆張り" 商法で巨利を得てきた。 対中投資でも 1989 年の天安門事件後に投資を急拡大し、大成功している。 その李会長が中国圏離れを加速していることに、中国各界も心穏やかではいられない。 バブル崩壊懸念が高まる中国では、メディアが連日、李会長を巡る話題を報じている。 (sankei = 9-14-13) 中国のシャドーバンキング、再び急増 - 成長回復のリスク大きく 中国の経済全体のファイナンス規模は 8 月に前月比でほぼ倍増した。 金融リスクが高まる犠牲を払っても経済目標を達成するという同国指導部の姿勢が、この統計から示唆される。 中国人民銀行(中央銀行)が 10 日発表した 8 月の経済全体のファイナンス規模 は 1 兆 5,700 億元(約 25 兆 7,300 億円)で、ブルームバーグ・ニュースがまとめた市場関係者 10 人の予想中央値の 9,500 億元を上回った。 このうち銀行による人民元建て新規融資の割合は約 45% と、7 月の 87% から低下。 従来型ではない信用供与が拡大していることが分かる。 8 月の経済全体のファイナンス規模は 5 カ月ぶりに増加し、7 月までの過去最長の減少局面が終了した。 8 月はまた工業生産が 1 年 5 カ月ぶりの大幅増となったほか、輸出の伸びが市場予想を上回り、中国が今年の成長率目標の 7.5% を達成する可能性が高まった。 同時にこうしたデータは、金融システムへのリスクとなるシャドーバンキング(影の銀行)が再び勢いを増していることを示す。 中国では 1 - 3 月(第 1 四半期)に記録的な信用供与の拡大が見られた。 ソシエテ・ジェネラルの中国担当エコノミスト(香港在勤)は「信用供与の持ち直し傾向が続けば、中国の現在の景気回復局面はもう少し長期化するかもしれない」と指摘。 その上で、「しかしそれは後の下押しリスクを高めるだけだ。 既に警戒すべき高水準にある中国の企業と地方政府のレバレッジが上昇し続けることになる」と述べた。 経済全体のファイナンス規模は 7 月には 8,088 億元と、1 年 9 カ月ぶり低水準となっていた。 8 月の新規人民元建て融資は 7,113 億元。 同月のマネーサプライ (M2) は前年同月比 14.7% 増で、3 カ月ぶりの高い伸びとなった。 JP モルガン・チェースの 7 月のリポートによれば、中国の信用供与の対国内総生産 (GDP) 比率は 2012 年に 187% と、2000 年の 105% から上昇。 日本は 1980 年が 127%、90 年が 176% だったという。 USB は私的な貸し借りや銀行のオフバランス部分などを含めた中国のシャドーバンキングの規模について、3 兆 3,500 億ドル(約 336 兆円)との推計を示している。 (Bloomberg = 9-11-13) |