ダイハツ「ロッキー」・トヨタ「ライズ」小型 SUV 投入
ダイハツ工業とトヨタ自動車は、新型の小型スポーツ用多目的車 (SUV) を発売した。 ダイハツが開発・製造し、ダイハツは「ロッキー」、トヨタは「ライズ」の車名で販売する。 SUV 人気が高まるなか、「小型 SUV」のニーズを取り込む。 トヨタは「RAV4」や「C-HR」などを販売してきたが、小型車より価格が高く、荷室が狭いといった「弱点」があった。 ロッキーとライズは、トヨタの完全子会社で小型車づくりが得意なダイハツが開発。 運転のしやすさと室内空間の広さを両立したという。
小型でも室内空間広く
全長 4 メートル弱の「5 ナンバーサイズ」で、C-HR より約 40 センチ小さいが、荷室の容量は C-HR より大きい 369 リットル。排気量 1.0 リットルのターボエンジンを搭載し、消費税込み価格は、ロッキーが 170 万 5 千円から、ライズが 167 万 9 千円から。最低価格で比べると C-HR より、数十万円安い。 月間の目標販売台数は、ロッキーが 2 千台、ライズが 4,100 台としている。
ダイハツによると、国内の乗用車販売に占める SUV の割合はこの 5 年で倍増し、約 2 割に達する。 ただ、小型車種はそれほど多くない。 トヨタは 2016 年にダイハツを完全子会社化。 軽自動車や新興国向け小型車の開発はダイハツに委ねている。 ロッキーとライズは、ダイハツが新たに開発した小型車用車台で製造した車種を、ダイハツとトヨタの両社が販売する初のケースとなる。 (千葉卓朗、竹山栄太郎、asaji = 11-7-19)
トヨタ、3 年連続増収増益 9 月決算で純利益過去最高に
トヨタ自動車が 7 日発表した 2019 年 9 月中間決算(米国会計基準)は、売上高と純利益がそれぞれ、上半期として過去最高となった。 世界での車の販売が好調だった。 売上高は前年同期比 4.2% 増の 15 兆 2,855 億円、純利益は 2.6% 増の 1 兆 2,749 億円だった。 9 月中間での増収増益は 3 年連続。 本業のもうけを示す営業利益は 11.3% 増の 1 兆 4,043 億円だった。 円高ドル安など為替変動の影響で利益を 900 億円分下げたが、原価改善や販売増でおぎなった。 下半期は販売が減速するとみて、通期の売上高、営業利益、純利益の予想を据え置いた。
東京都内で 7 日会見した河合満副社長は「継続的に取り組んできた体質強化の効果が少しはあらわれた」と話した。 ダイハツ工業と日野自動車を含むグループの世界販売台数は、前年同期比 16 万台増の 545 万台。国内、海外ともに増えた。 このうち北米は、値引き販売により利益が出にくかったが、今年に入って RAV4 などの新車が好評で、値崩れせずに利益を確保。 値引きの原資として販売店にくばる「販売奨励金」も約 300 億円減らしたため、北米での営業利益は 853 億円増えた。 環境規制への関心が高まる中国では、ハイブリッド車 (HV) などがよく売れた。
今年 1 - 9 月のグループ世界販売台数は 805 万台を超え、昨年首位の独フォルクスワーゲンを上回る。 ただ、下半期の販売台数の増加ペースは鈍る見通し。 通期の販売台数見通しは、当初の 1,073 万台から 1,070 万台に引き下げた。 力を入れる原価改善の効果は原材料費の変動を除き年間で 2,500 億円との見通しを保ったが、目標の 3 千億円には届いていない。 最新の安全装備を搭載する新型車は原価がかさんで、原価改善が難しいためだ。 近健太執行役員は会見で、「人材育成や原価低減は、道半ばで、できていないことが多い」と話した。 (千葉卓朗、竹山栄太郎、asahi = 11-7-19)
充電 1 回で 100km 走行、トヨタ「超小型 EV」の実力
トヨタ自動車は 17 日、1 回の充電で約 100 キロメートル走行可能な電気自動車 (EV) 「超小型 EV」を 2020 年冬ごろに発売すると発表した。 高齢者の買い物や法人の巡回訪問など、近距離移動向けを想定して開発した。 歩行支援向けのEVも同年から順次発売する。 EV の利用や新たなビジネスモデルを検討する法人や自治体は、現時点で 100 程度に上るという。
超小型 EV は乗車定員が 2 人で、最高速度は時速 60km。 サイズは全長 2,490mm x 全幅 1,290mm x 全高 1,550mm。 充電時間は約 5 時間とした。 歩行領域を支援する EV では座り乗りや立ち乗り、車椅子連結タイプをそろえた。 企業や自治体と連携して EV の普及を加速させ、新たなビジネスモデルの創出につなげる。 トヨタは EV を販売するにあたり、リースを充実させ車両を確実に回収する方針。 使用後の電池の状態を査定した上で中古車として流通させるほか、電池の再利用も検討する。 充電や保険など周辺サービスも整備する。 (NewSwitch = 10-19-19)
トヨタ、1,500W の電力を供給できる新型「ヤリス」は "災害時の備え" としても選ぶ価値あり
新型「ヤリス」は新たに最大 1,500W の AC100V アクセサリーコンセントをオプション設定
トヨタ自動車は 10 月 16 日、新しいコンパクトカー「ヤリス」を公開した。 ヤリスは長年トヨタのコンパクトカーの中心的地位にあった「ヴィッツ」の 4 代目にあたるモデルで、新型モデルから世界統一名称として車名をヤリスに変更。 トヨタが考える新世代のコンパクトカーを具体化したものになっている。 本稿ではヤリスを含め、現在トヨタが力を入れてラインアップを広げている「外部給電システム」について取り上げる。
トヨタではハイブリッドカーや PHV (プラグインハイブリッドカー)、FCV (燃料電池車)に 1500W の外部給電機能を設定している。 ヤリスのラインアップにはリダクション機構付の THS II (M15A 1.5 リッター "ダイナミックフォースエンジン")を搭載したハイブリッドモデルが設定されており、このクルマにも最大 1500W の給電が可能な外部給電機能である「AC100V アクセサリーコンセント」がオプション設定されることになった。
この装備は車内で AC100V 最大消費電力 1,500W 以下の電気製品を使用できるようにするもの。 使用方法はパーキングブレーキを掛けてさらにフットブレーキを踏む。 その状態で「READY インジケーター」が点灯していることを確認し、ダッシュボード右下にある「AC100V」スイッチを押すと作動状態になる。 走行用バッテリーがフル充電の状態では、1500W をフルに使った状態でも 2 - 3 時間は持つということだ。 なお、使用する電気の容量が 1,500W を超えてしまった場合、クルマ側の保護機能が働いて電気をシャットダウンする安全機能も備えている。
外部給電機能には車両の走行機能を停止して "発電機的に使うモード" もあり、この状態ではガソリンが満タンであれば 4 日ほど電源として使用できるということだ。 この数値は電気製品の使用状況や外気温などによっても変化するが、それでも電気がない場所で複数の家電製品を動かせるほどの電気の給電が可能になるということは、アウトドアレジャーだけでなく、災害などの影響で停電が起きた際にとても心強いものとなる。
クルマを購入する理由は移動や運搬の手段としての利用が基本になるだろうが、最近は自然災害による長期停電などのニュースを目にすることが多いだけに、外部給電システムがあるクルマを選ぶといざという時の備えにもなる。 この点が世間に認知されてくると、クルマを所有する理由に「災害時の備え」という項目が追加されるようになるかもしれない。 (深田昌之、CarWsatch = 10-18-19)
訪日観光客も狙って大型高級ワゴン車 トヨタが年内発売
トヨタ自動車は、大型の高級ワゴンの新型車「グランエース」を年内に発売すると発表した。 会社役員や訪日観光客などを乗せる上級送迎車としての需要を見込む。 全長 5.3 メートル、全幅 1.97 メートルで、人気のミニバン「アルファード」や「ヴェルファイア」より大きい。 3 列 6 人乗りと 4 列 8 人乗りがある。 排気量 2.8 リットルのクリーンディーゼルエンジンを搭載。 乗り心地や操縦安定性の良さに加え、室内空間の広さが特長だという。 価格は未定。 開発や製造を担う完全子会社のトヨタ車体(愛知県刈谷市)が、10 月下旬に始まる東京モーターショーで展示する。 (竹山栄太郎、asahi = 10-10-19)
五輪選手村を自動運転で走る 「eパレット」トヨタ公開
トヨタ自動車は 9 日、2020 年の東京五輪・パラリンピックの選手村で巡回運行する自動運転の大型電気自動車「eパレット」を、24 日に開幕する東京モーターショーで展示すると発表した。 トヨタは、eパレットの構想を18 年に発表。 米アマゾンなどと開発を進めており、23 年の実用化を目指しソフトバンクとの新会社も昨年設けた。 移動に関するさまざまなサービスを手がける「モビリティーカンパニー」への変革を掲げるトヨタは、eパレットを新たな移動サービスの象徴と位置づける。
東京五輪では選手村での移動手段として、十数台提供する計画。 選手村内の数キロの巡回コースを、2 - 3 分おきに 24 時間運行する予定だ。 発表に先立ってトヨタが報道陣に公開した eパレットは、全長約 5 メートル、全幅約 2 メートル、全高約 2.7 メートル。 最高時速は 19 キロ。 前後対称の箱形で最大 20 人が乗車できる。 1 回の充電で約 150 キロ走行可能。 車の外側のセンサーで、周囲の人や障害物を認識しながら自動で走行し、横断を待つ歩行者をみつけると停車する。 実際の運行ではオペレーターが 1 人乗車し、安全を確認。 非常時には手動で緊急停車する。 (千葉卓朗、asahi = 10-9-19)
トヨタ、ブラジル工場に約 270 億円投資 中南米強化へ
トヨタ自動車は、ブラジル・サンパウロ州のソロカバ工場に 10 億ブラジルレアル(約 270 億円)を追加投資し、新たに 300 人を雇用すると発表した。 2021 年にブラジルで売り出す新型車の生産に向け、態勢を強化。 「中南米事業の競争力強化をめざす」としている。 ソロカバ工場は 12 年に稼働。 小型車の「エティオス」、「ヤリス」をつくっており、生産能力は年 10.8 万台。 (asahi = 9-24-19)
トヨタの燃料電池車ついえぬ夢、鍵握る東京五輪バス
[東京] 2020 年東京五輪・パラリンピック会場間の移動手段として、バスはやや魅力に欠けるかもしれない。 しかしトヨタ自動車は、電気自動車 (EV) の後塵を拝する水素エネルギー技術を広める上で、このバスが絶好の役割を果たすと期待している。
トヨタは水素エネルギーを用いる燃料電池バス 100 台を、会場まで観客を運ぶ路線バスに投入する計画。 2022 年北京冬季五輪での大規模展開を見据えた布石だ。 プロジェクトに詳しい複数の関係者によると、北京冬季五輪では北汽福田汽車有限公司と組み、バス 1,000 台以上の導入を計画している。 環境汚染物質を排出しない「ゼロ・エミッション」技術を推進する中国政府の取り組みを、最大限に活用する狙いがある。
トヨタは国際オリンピック委員会 (IOC) との間で、24 年まで続く「モビリティ」スポンサーシップ契約を結んでおり、水素エネルギーの促進計画はその一環。 路上には EV が増えており、トヨタ自体も EV 開発を加速させながらも、同社として水素エネルギーを後押ししていく決意を鮮明にした。 ただ、水素エネルギーの広報効果をバスに頼っていることは、トヨタの燃料電池自動車が人気を得られていないことの証左でもある。 日本政府の後ろ盾を得た四半世紀におよぶ開発努力にもかかわらず、燃料電池輸送が今後もニッチ市場から抜け出せないリスクも浮かび上がる。
5 年前、同社が次世代の自動車として鳴物入りで導入した燃料電池自動車 MIRAI (ミライ)の販売台数は 1 万台に届いていない。 価格は政府補助が付いて約 500 万円で、韓国の現代自動車のネクソ、ホンダがリース販売するクラリティと並び、一般消費者が買える燃料電池車 3 種類の 1 つだ。
対照的に、米テスラの完全 EV 自動車「モデル S」は 2012 年の発売から 1 年半で 2 万 5,000 台を売り上げた。 ミライの販売が振るわない背景には、水素ステーションの不足に加え、転売時の価格や水素爆発を巡る不安がある。 韓国では 5 月、水素タンクが爆発して 2 人が死亡、ノルウェーの水素ステーションでも 6 月に爆発が起きた。 トヨタのオリンピック・パラリンピック部の伊藤正章部長はロイターに対し「水素は今なお危険で爆発しかねないというイメージがある。 そうしたイメージを払拭したいので、このオリンピックの機会に水素をしっかりとアピールしたい。」と述べた。
同社は東京五輪で、会場間の大会関係者の輸送にミライ 500 台を提供する。 「なるべく幅広い人にこの技術に触れていただきたい」と伊藤氏は言う。
<政府の構想>
トヨタは燃料電池型の配送トラックと超大型トラックも開発中だが、この技術への投資額を公開していない。 ただ投資には、石油依存を減らす上で水素が鍵を握るとみる日本政府の力添えもあった。 トヨタと政府はともに、住居から鉄道、船舶、果ては月面車に至るまで燃料電池が動かす「水素社会」構想を描いている。 東京都はオリンピック選手村を水素社会の縮図としてお披露目する意向で、東京都交通局として燃料電池バスを購入し、15 台が既に稼働中だ。
一般の自動車と異なり、バスは路線が決まっているため水素ステーションを計画しやすく、黒字化の弾みとなる。 東京都交通局の代表によると、コストの 80% を国と地元自治体が補助することで、価格を 2,300 万円と通常のディーゼルエンジン・バス並みに抑えている。 しかし政府の壮大な目標は未達のままだ。 3 年前、政府は 20 年までに走行する燃料電池自動車を 4 万台に増やし、160 の水素ステーションを稼働させると宣言した。 しかし日本で販売済みの燃料電池自動車は現在 3,400 台で、水素ステーションは 109 カ所にとどまっている。
<中国に期待>
ただ一部のアナリストは、水素エネルギーは広大な自動車市場を抱える中国が推進していると指摘し、トヨタの開発努力を擁護する。 9 月 18 日、トヨタと政府はともに、住居から鉄道、船舶、果ては月面車に至るまで燃料電池が動かす「水素社会」構想を描いている。 マッコーリーのアジア自動車調査責任者、ジャネット・ルイス氏は「中国はずっと速く前進しており、燃料補給インフラの不足という同じ問題を抱えてはいるが、かなり迅速にインフラを整えてみせた実績がある」と話す。
北京冬季五輪で、トヨタは北汽福田汽車有限公司のバスにパワートレイン装置を供給する。 関係筋によると、会期中、バスには「パワード・バイ・トヨタ」の文字を掲げるブランド戦略が採用される見通しだ。 トヨタは、北京五輪で採用される燃料電池バスの数は決まっておらず、ブランド戦略は北汽福田汽車に委ねられるとコメントした。 北汽福田汽車からはコメント要請への返信が得られていない。
水素エネルギー技術は黒字化していないが、トヨタは規模拡大に伴いコストも低下するとしている。 同社は次世代燃料電池スタックと水素タンクの工場を構築中で、燃料電池自動車の生産台数を年 3 万台に増やす計画だ。 (Kevin Buckland、Reuters = 9-22-19)
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トヨタの燃料電池バスが運行へ 愛知・豊田で 3 台を導入
愛知県豊田市で 9 月下旬から、トヨタ自動車の燃料電池バス SORA 3 台がコミュニティーバスや公用車として使われる。 SORA が走るのは中部地方で初めて。 SORA は、水素を燃料として走る。 二酸化炭素を出さないため環境にやさしい。 豊田市によると、トヨタとのリース期間は今月 5 日から 6 年間。 料金は 1 台あたり月約 80 万円。 SORA はこれまでに東京都が 15 台、京浜急行バスが1台導入している。 (asahi = 8-13-19)
トヨタ、比亜迪と EV 共同開発へ 中国市場の攻略狙う
トヨタ自動車は 19 日、大手電気自動車 (EV) メーカー、中国・比亜迪 (BYD) と EV を共同開発することで合意したと発表した。 2020 年代前半にセダンとスポーツ用多目的車 (SUV) の 2 車種を中国で発売する。
トヨタは 6 月、GS ユアサや世界最大手の車載用電池メーカー、中国・寧徳時代新能源科技 (CATL) など新たに 5 社と EV の車載用電池の調達で協力すると発表していた。 BYD もそのうちの 1 社で、EV の企画と開発まで協業範囲を広げることになった。 生産した EV はトヨタブランドとして売り出す。 生産台数や製造拠点は明らかにしていない。 BYD は 1995 年に創業した。 EV を含む新エネルギー車の生産台数は年間 25 万台。 この分野では中国のトップメーカーだ。 広報担当者は朝日新聞の取材に「EV の普及を進め、二酸化炭素の排出を削減するため、競争関係を超えて協力を実現させた」と答えた。
トヨタは 20 年に中国で EV の小型 SUV「C-HR」を発売する。 それを皮切りに 20 年代前半までに世界で 10 車種以上の EV を投入する予定だ。 大型 SUV や中型ミニバンなど 6 タイプについては、いずれも他社と協業する。 スバルとは中型 SUV を開発し、BYD との案件もその一つになる。 トヨタは 25 年までに EV やハイブリッド車 (HV) などの電動車の世界販売台数を 550 万台以上とする計画も掲げている。 (福田直之 = 北京、細見るい)
VW や GM、中国で先行
年間約 2,800 万台の新車が売れる世界最大の自動車市場である中国で、どうやって先行する海外メーカーを追撃するか。 トヨタが BYD と車両開発で手を携える狙いは、そこにある。 トヨタは CATL と車載用電池に関する包括提携を打ち出している。 この電池は中国向けの EV などに搭載される。 その一方、BYD とは電池だけでなく車両の共同開発も進める。 中国の消費者ニーズに合った車を投入するためだ。 現地大手メーカー 2 社と協業することで、中国市場への本格的な足場を築く戦略があるとみられる。
トヨタは 18 年、中国で 147 万台を販売した。 セダンのカムリや高級車レクサスが好調で前年から 14% 増。 過去最高だった。 ただ、400 万台前後を売った独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズ、日系首位の日産自動車(156 万台)には及ばない。 中国政府は環境規制の強化に取り組み、EV の普及に力を入れている。 日産やホンダはすでに EV を中国で発売済み。 先行他社を追い上げる必要があるトヨタとしては、現地有力メーカーの協力が欠かせない。
トヨタは 20 年代前半に、中国での生産を現在の約 2 倍にあたる 200 万台規模に引き上げる方針だ。 ある幹部は「中国では、(自動車生産に関わる)各領域で現地の事業体と協業を模索しなければならない」と話す。 BYD との共同開発も、その一環とみられる。 (竹山栄太郎、asahi = 7-19-19)
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トヨタと CATL、新エネ車用電池の供給・開発で包括提携
[東京] トヨタは 17 日、中国・寧徳時代新能源科技 (CATL) と新エネルギー車 (NEV) 用電池の供給・開発などで、包括的パートナーシップを締結したと発表した。 今回の提携の下で、電池の供給だけでなく、電池システムの新技術の開発、セルの品質の向上、電池のリユースやリサイクルなど、両社は幅広い分野で検討を開始した。 また、電動車の普及に向け、電池の安定的な供給にとどまらず、発展進化が必要であると認識し、体制を整備して具体的な取り組みを進めていくとしている。 CATL は駆動用電池システムで世界トップのサプライヤー。 世界的な車両の電動化進展を受け、中国国内だけでなく海外の自動車メーカーとの取引も拡大している。 (Reuters = 7-17-19)
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トヨタ、中国電池最大手と提携 電動化計画 5 年前倒し
トヨタ自動車は車載用電池で世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技 (CATL) と提携する。 電気自動車 (EV) の中核部品の調達先を広げ、自社の世界販売台数の半分を電動車にする目標時期を 2025 年と従来から 5 年ほど前倒しする。 電動車の生産を義務付ける中国政府の環境車規制などで中国は世界最大の EV 市場となった。 世界の自動車大手がガソリン車から EV への移行を急ぐなかで、中国の電池メーカーの競争力が一段と高まりそうだ。
トヨタは CATL と「戦略的パートナーシップ」の覚書を交わして協業の具体的な検討に入る。 20 年以降に中国などで販売するトヨタブランドの EV へのリチウムイオン電池供給について協議する。 電池の品質向上や、規格の共通化、再利用など幅広い分野で協業の内容を詰めていく。 CATL を巡ってはホンダが EV 用電池を共同開発し、日産自動車も 18 年から販売している EV に同社の電池を採用した。 独 BMW や独フォルクスワーゲン (VW) も電池を調達するなど、世界の自動車メーカーと提携関係にある。
現在、電池は EV の価格全体の 3 割以上を占める。航続距離など EV の性能の向上でも電池の役割は大きい。 トヨタが次世代の全固体電池の実用化を目指すなど開発競争は激しい。 調査会社テクノ・システム・リサーチによると CATL の車載用リチウムイオン電池の世界シェアは 2017 年で約 16% で、パナソニック(約 15%%)を抜いて世界首位だ。 中国政府が現地メーカーの電池を使う EV に優遇策をとってきたこともあり、生産規模を拡大してコスト競争力を高めてきた。
トヨタはハイブリッド車 (HV) や EV 用の電池はパナソニックと共同出資するグループ会社などから調達してきたほか、パナソニックとは 20 年末までに新会社を設立する。 ただ、電動化を進めるうえで電池の調達量拡大が課題だった。 CATL と組んで EV の最大市場の中国を中心に調達先を多様化させたい考えだ。 トヨタは電池分野などで、国内外の数社とも新たに協業する方向だ。 EV の普及に備えて仲間作りを進める。
トヨタは 30 年に世界販売の半数にあたる 550 万台以上を電動車にする目標を掲げてきた。 これを約 5 年前倒しする方針だ。 内訳は HV と家庭で充電できるプラグインハイブリッド車 (PHV) が計約 450 万台で、EV と水素を使って発電する燃料電池車 (FCV) で計 100 万台を目指す。 18 年の電動車の世界販売は約 163 万台で、25 年には 3 倍強に伸ばすことになる。
トヨタが電動化を急ぐ背景には、主要国の環境規制の強化や世界のライバルの急速な EV シフトがある。 VW は 28 年までに 70 車種の EV を発売し、年 300 万台以上の販売を目指す。 EV 比率は 30 年に全体の 40% まで高まる。 独ダイムラーは 30 年までに販売台数の半数を EV か PHV にする方針。 日産自動車は 22 年度の世界販売の 3 割を EV か HV にする。
トヨタは中国で EV など新エネルギー車の生産を本格化するため、合弁相手の広州汽車集団と運営する工場を増強し 22 年に最大で年 40 万台の生産能力を設ける。 欧州や中国勢などと比べて EV の商品化では出遅れていたが、目標を前倒しするため、CATL との協業に踏み切る。 トヨタは HV の特許を公開するほか、マツダなど国内の自動車メーカーと EV の基盤技術を開発する会社「EV シー・エー・スピリット」を設立するなど陣営作りを進めている。 6 日には SUBARU (スバル)と EV の多目的スポーツ車 (SUV) を共同開発すると発表した。 20 年代前半に両社のブランドで販売する。 (nikkei = 6-7-19)
トヨタが狙う建設的破壊 「父の事業に大なた」衝撃走る
「『勝つか負けるか』ではなく、『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いだ。」 トヨタ自動車の社長、豊田章男 (63) が危機感をあらわにした。 2017 年 11 月、役員体制変更を発表した際のコメントだ。 豊田は 09 年に社長に就いた。 リーマン・ショック後の巨額赤字や大規模リコール(回収・無償修理)問題をのりこえ、この 6 月で丸 10 年を迎えた。 かつてないほど業績はよく、19 年 3 月期の売上高は国内の企業で初めて 30 兆円を突破。 だが、豊田は「トヨタは大丈夫というのが一番危険」といましめる。
なぜか。自動車業界のビジネスモデルがそのうち通用しなくなるとみるからだ。 就任丸 10 年を迎えたトヨタ自動車の豊田章男社長が、会社のフルモデルチェンジを宣言している。 変革期を迎えた自動車業界への危機感を燃料にして、トヨタが進める改革とは。
「100 年に 1 度の大変革期。」 トヨタ幹部がよく口にするフレーズだ。 目の前の変化は CASE (ケース)という言葉にまとめられる。 つながる車 (C)、自動運転 (A)、シェアリング (S)、電動化 (E) の頭文字をとった造語。 自動運転ではグーグル系ウェイモ、ライドシェアではウーバー・テクノロジーズなど異業種が勢いづく。 IT にすぐれた新たなライバルたちが、移動サービスの基盤をにぎる「プラットフォーマー」として立ちはだかる。 車メーカーは消費者とのつながりを奪われ、プラットフォーマーの下請けになりかねない。 危機感からトヨタが打ち出したのは、モビリティーカンパニー。 移動に関するあらゆるサービスを提供する会社という意味だ。
車を売って終わりでなく、消費者との接点を増やしたい - -。 原点は、豊田が一社員だった 20 年ほど前にあるとされる。 中古車情報を端末で見られる新画像システムをつくり、音楽配信もできるようにしてコンビニ業界に売り込んだ。 ただ、その奇抜なアイデアに当時の経営陣は難色を示した。
社長に就いて 10 年がたち、ある幹部は「長年の思いをトップダウンで実現する態勢が整った」とみる。 実際に動きは急で、技術や人材を得る提携や出資が相次ぐ。 昨年 8 月、豊田は東京・汐留のソフトバンクグループ本社を訪ねた。 「そろそろ我々が組むときだ。」 同社トップの孫正義と豊田はうなずきあった。 カラーの違う企業どうしの提携はトヨタが持ちかけた。 ソフトバンクが過半出資し、プラットフォーマーをになう新会社をつくった。 将来は自動運転 EV で移動や物販を手がけるという。
1937 年、祖父の喜一郎らが豊田自動織機の自動車部を独立させてトヨタという会社ができた。 そしていま、「モビリティーカンパニーにフルモデルチェンジすることが私の使命だ」と豊田はいう。 創業にもひとしい大仕事が待ち受ける。 = 敬称略(竹山栄太郎)
大胆さ、創業家出身ならでは
トヨタ自動車とパナソニックが、住宅事業統合へ - -。 5 月 9 日の発表に、トヨタグループの間で衝撃が走った。 グループの事業再編を前のめりで進めるトヨタだが、「住宅事業には、しばらく手をつけない(グループ幹部)」とみられていたからだ。 トヨタは 1975 年に住宅事業に参入。 社長の豊田章男の父でもある、名誉会長の章一郎がこのプロジェクトを推し進めた。 自身がトップでいるうちに新事業をひとつはじめるという「一代一事業」の習わしが豊田家には伝わる。 新しい自動織機をつくった祖父の佐吉と、自動車を手がけた父の喜一郎にならい、章一郎は住宅という新しいビジネスに乗り出した。
愛知県春日井市のトヨタホームの工場。 従業員が作業するかたわらに「安全第一 2013・9・26 豊田章一郎」と直筆で書かれた白いヘルメットがケース内に飾ってある。 章一郎は「住宅には車よりも長くかかわったから思い入れがある」と周囲に語っており、よく現場を訪れた。 住宅は、章一郎のこだわりそのものだ。 それに手をつける大胆な再編は「ふつうのサラリーマン社長には絶対にできない(金融関係者)」大なただ。
創業家出身の社長である章男だからこそ実行できたとみるトヨタ関係者は多い。 トヨタホーム幹部は「章一郎氏から(住宅市場で)五本の指に入れといわれてきたが、力不足でできなかった。 住宅事業をやめるわけではないので前向きにとらえたい。」と胸の内をあかす。 父が立ち上げた事業であっても、「聖域」扱いしない。 章男を突き動かすのは、業界の変化への危機感だ。
自動運転や電動化、シェアリングと事業環境変化はめまぐるしい。 これまでの成功モデルを受けつぐだけでは成長できない。 章男は「改革の指針は微調整改善ではなく建設的破壊だ。 行動の指針は前例踏襲ではなく、スピードと前例無視。」と訴える。 建設的破壊と前例無視は、住宅事業の再編のほかにもある。
昨秋は販売改革に着手。 しがらみもあり手がつけられなかった分野だ。 トヨタ店やカローラ店など 4 系列に異なる専売の車をおいてきたが、全系列店で全車種を売る。 当初は「25 年までに実施」としていたが、来年 5 月に前倒しすると今月決めた。 役員数は大幅にスリム化した。 1 月には社長を含む執行役員を 55 人から 23 人まで一気に減らした。 「即断、即決、即実行」が狙いだと章男はいう。 常務役員と常務理事(役員待遇)も廃止、部長級社員らとひとくくりにして、役員が担ってきたポストに「できる若手」をおけるようにした。 創業家出身社長ならではの大胆な改革が矢継ぎ早に打ち出され、トヨタの企業像が大きく変わろうとしている。 = 敬称略(細見るい)
「いつからカネつくる会社に」
「トヨタって、こういう会社だったかなあ?」 豊田章男がトヨタ自動車の社長に就任してから、よく口にするフレーズだ。 章男に身近で接してきた部長級の幹部は、この言葉にこめる現状への違和感こそが、創業家社長の軸なのだと感じた。 「トヨタはいつからカネをつくる会社になったのか」、「いいクルマをつくろう」。 経営理念こそ語るが、章男は自ら販売台数やシェアの数値目標を口にしない。
祖父喜一郎はトヨタ創業者。 父章一郎は社長と会長を務めた。 章男は小学生のころ開発担当主査が運転する初代カローラの助手席に乗せてもらったことを覚えている。 章一郎が運転するさまざまなトヨタ車にも乗った。 「初代から 15 代までの、すべてのクラウンに乗ったのは私ぐらい」と話す。 祖父や父のように大学で機械工学を学んだ技術者ではない自分のことを「いいクルマづくり」のドライバーと位置づける。 車を評価するための運転を本格的に習ったのは副社長のころ。 テストドライバーのトップだった成瀬弘(故人)に「運転のこともわからない人にクルマのことをああだこうだと言われたくない」と言われて、成瀬に弟子入りを申し入れた。
2007 年からは、ドイツのニュルブルクリンク 24 時間耐久レースに成瀬とともに出場した。 欧州の自動車メーカーが新車を開発するために走行する過酷なコースだ。 レクサスの最高級スポーツ車 LFA や、今年 17 年ぶりに復活したスープラもここで開発した。 章男は、何度もテスト走行した。 「マスタードライバーとして私は車の最終決定権者です」と語るとき、売れ行きの責任は自分が持つ覚悟をこめる。 「雪道で私の『センサー』の衰えを鍛え直す」と、北海道の雪上運転訓練は毎年欠かさない。
喜一郎の自動車づくりは、前身の自動織機会社で御曹司の道楽と言われた。 一方、章男の本気のレース参戦を、道楽と感じる従業員や取引先はめっきり減った。 トヨタによるレース活動は 15 年にガズー・レーシング (GR) として再編された。 ルマン 24 時間耐久レースは今年、連覇を達成。 市販車に磨きをかけた GR ブランドは 14 車種を数え、今後も増やしていく。
GR 紹介パンフレットの冒頭を喜一郎のことばが飾る。 「オートレースは唯単なる興味本位のレースではなく、日本の自動車製造事業の発達に必要欠くべからざるものである。」 章男がこの言葉を載せるように担当者に指示した。 喜一郎の絶筆だ。 ニュルブルクリンクの耐久レースで、章男が運転した LFA はトヨタ鞍ケ池記念館(愛知県豊田市)に展示される。 喜一郎の業績を紹介する展示で章男に関するものはこの車だけ。 「これを見てください」と、祖父に語りかけているようだ。 = 敬称略(六郷孝也)
「日本代表」重圧のもとで
3 月 13 日。 春闘の回答にのぞんだトヨタ自動車社長の豊田章男は、唐突にもみえる言葉をひいて、労使の幹部に語りかけた。 「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし。」 豊田の曽祖父で、トヨタグループ創始者・佐吉の遺訓をまとめた豊田綱領。 5 項目の初めがこれだ。 豊田は「自分のため、会社のためということを越えてお国のため、社会のためとなれているか」と問いかけ、こう語った。 「産業報国の精神こそトヨタの原点。 どんなに時代が変わっても変えてはならない。」
トヨタは、日本を代表する企業としてのふるまいを期待されてきた。 豊田も日本の製造業や雇用を意識した発信をかさねる。 「トヨタのものづくりは日本で育ててもらってきた。 石にかじりついてでも国内生産 300 万台を守る。」といったぐあいだ。
春闘は、その存在感の象徴だ。 ベースアップ(ベア)をめぐる労使の対応が各社に影響し、相場役とみられた。 政権が企業に賃上げを求める官製春闘が 2014 年に始まると、「当社の賃金水準はいまも高い」とベアに後ろ向きな姿勢をみせつつも、毎年ベアをおこない結果的に期待に応えた。 政権が 3% の賃上げを促した 18 年春闘。 トヨタ自動車労働組合は、ベア 3 千円を求めた。 定期昇給とあわせた賃上げ率は満額回答でも 2.9% にしかならない。
この年、トヨタは方式を変え、ベア額を公表せず、手当なども含め「3.3% の賃上げ」と答えた。 「ベアに注目していては部品会社などとの賃金の差が縮まらない」が公の見解だが、「政権に気くばりしたのでは(労組関係者)」との見方がくすぶった。 ベア額の非公表は相場役をおりるという意味をもつ。 あるトヨタ幹部は「トヨタのベアは注目されすぎだ」と不満げだ。 社会への影響に気をとられすぎず、自社の課題に向きあいたいという悩みがにじむ。
「日本代表」扱いは春闘だけではない。 「とんでもない! 米国に工場をつくるか、国境で高い税金を払え。」 17 年 1 月、米大統領への就任を控えたトランプがツイッターで、トヨタのメキシコ新工場計画を名指しで責めた。 すぐ後の北米国際自動車ショーで豊田は新型車の発表で登壇する予定だったが、「車発表だけとはいかなくなった。(幹部)」 内容を急いで見直した。
当日、豊田は米経済への貢献を訴えた。 「米国で 30 年以上にわたり、2,500 万台以上の車を生産した」、「今後 5 年で 100 億ドル(約 1.1 兆円)を投資する。」 トランプの攻撃をしたたかにかわした。 豊田は 6 月の株主総会で「ここまで大きくなったトヨタは、もはや社会の公器」と述べた。 激しい競争にさらされながらも、自社のことのみ考えるわけにもいかない。 「日本代表」の重圧は続く。 = 敬称略(竹山栄太郎、asahi = 7-5-19)
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