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中国で工作機械の生産を撤退する豊和工業、国内に集約する背景

不採算部門を縮小、成長分野に経営資源

豊和工業は海外の工作機械の製造・販売体制を再編する。 中国での工作機械生産を止め、生産は日本に集約した。 東南アジアでの販売はインドネシアに集約し、2020 年 3 月にシンガポール販売子会社を清算する。 一方、米国とインドで販売拠点の新設を検討している。 不採算部門を縮小し、成長分野に経営資源を再配分する。 中国子会社は豊和(天津)机床(天津市)。 11 年に稼働し、一部の部品は現地からも調達し、自動車部品用を中心に工作機械を生産していた。

しかし人件費が稼働時の 2 倍に高騰。 加えて中国以外から調達する部品は関税により、日本より調達コストが高い部品もあり採算が悪化した。 そこで同子会社は天津市内で移転し、賃借していた工場を返却した。 今後は外注も活用し、販売・保守と、工作機械のライン化や周辺機器の追加をするエンジニアリングに特化。 現地でのきめ細かい対応は維持する。

シンガポール販売会社はハードディスク駆動装置 (HDD) 部品の加工機などが売り上げの中心だった。 商況が変化し、採算が悪化したためインドネシア販売子会社に機能を集約。 豊和工業が得意な自動車用工作機械を中心に、インドネシアから東南アジア全域の市場を深掘りする。 米国とインドで販売拠点の新設を検討するのも、自動車部品加工の市場開拓が狙いだ。 同社は売上高営業利益率を 19 年 3 月期の 4.6% から 22 年 3 月期に 6.5% に伸ばす方針。 体制の再編により、19 年 3 月期の売上高 223 億円中の半分近くを占める工作機械事業の収益を改善する。 (NewSwitch = 8-21-19)


対中関税第 4 弾、日本企業も身構え 生産移管急ピッチ

米国が 1 日、中国製品のほぼすべてに追加関税を課す第 4 弾の制裁を 9 月 1 日に発動すると表明した。 対象品目はスマートフォンやゲーム機、衣料品など広範囲に及び、中国に生産拠点を持つ日本企業への影響も避けられない。 各社は警戒を強めており、生産移管などの動きが急ピッチで進みそうだ。 追加関税が企業の投資意欲などを冷やし、世界景気の減速感を一段と強めかねないと懸念する声も上がる。

「ベトナム工場と中国工場で生産を入れ替える。」 京セラの谷本秀夫社長は、米国が第 4 弾発動を発表した後の 2 日に開いた決算会見でこう表明した。 移管費用は最大で数十億円程度を見込む。

同社は第 4 弾の対象となるコピー機や複合機について現在は中国で米国向け、ベトナムで欧州向けをそれぞれ生産している。 両工場の出荷先を入れ替え、中国からの出荷分に対する追加関税の発生を抑える。 2019 年 3 月期の複合機関連の売上高は約 3,750 億円で、うち米国向けは 2 割を占める主力市場だ。

米国が発動する追加関税の第 4 弾は、米国が輸入する中国製品の約 3 千億ドル(約 32 兆円)分に 9 月から 10% の関税が上乗せされる。 トランプ米大統領は 1 日、「段階的に引き上げる可能性がある。 25% 以上もあり得る。」と述べた。

6 月末の米中首脳会談で第 4 弾の発動はいったん見送られたものの、閣僚級協議が不調に終わり、トランプ大統領が再び強硬策に打って出た形だ。 第 4 弾の対象はスマホやパソコン、玩具などの消費財も含め、幅広い品目に及ぶ。 6 月末の米中会談でいったんは緊張緩和のムードも広がったが、多くの日本企業は警戒を緩めずにサプライチェーン(供給網)の見直しなどに動いてきた。

リコーは 7 月末、米国向けの複合機の生産を中国・深センからタイに移した。 一方、タイからは日本や欧州向けの生産を中国へ移管する方向で検討している。 シャープも中国からタイへの移管を進めている最中だ。 任天堂は主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の大半を中国で生産しているが、すでにベトナムで一部の生産移管を始めた。 今後は順次、生産量を引き上げる方針だ。

ソニーも家庭用ゲーム機「プレイステーション 4」やカメラなどが影響を受ける可能性がある。 生産地の変更や価格転嫁といった検討は事前に進めており、状況を踏まえて判断するとみられる。 7 月末の決算説明会では第 4 弾が発動されても、「今期の営業利益への影響を 2 ケタ億円に抑えたい(松岡直美執行役員)」と説明している。 中国での生産比率が高いノートパソコン。 シャープは子会社のダイナブック(東京・江東)が中国で全量を生産している。 第 4 弾が発動されれば、台湾にある親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業グループの拠点や、シャープのベトナム新工場への移管を検討するという。 米国向けは全体の 1 割程度のもようだ。

一方、追加関税の影響を直接受けなくても、米中の貿易戦争が景気そのものを冷やしかねないと懸念する声は多い。 例えばスマホ市場だ。 18 年以降、市場の飽和感などで中国のスマホ需要が減速し、日本勢が強みを持つ工作機械の市況が悪化している。 日本工作機械工業会によると、19 年 6 月の単月ベースの受注総額は好不況の目安となる 1 千億円を 32 カ月ぶりに割った。 工作機械業界では次世代通信規格「5G」などでスマホ需要の回復に期待する声が多かったものの、第 4 弾の発動で「市況の回復の遅れや更なる悪化を心配している(牧野フライス製作所)」との声が上がる。

運動靴などが第 4 弾の対象となるアシックス。 広田康人社長は「関税そのものによる影響は軽微だ。 むしろ、米中の経済成長が鈍化することを懸念している。」と話す。 米中摩擦を受け、企業の投資意欲もしぼみつつある。 パナソニックは顧客企業の設備投資の抑制で、生産設備に組み込まれるモーターやセンサーなどの販売が減少。 第 4 弾の発動で投資がさらに冷え込む可能性もあるとみる。 20 年 3 月期の営業利益予想については、現時点で米中摩擦が 100 億円のマイナス要因になると織り込み済みだ。 )nikkei = 8-4-19)


日本電産、中国売上高を 2 倍超に、研究開発を強化

【北京 = 多部田俊輔】 日本電産は 20 日、北京市で中国事業の戦略説明会を開いた。 米中対立が激化し、世界大手のサプライチェーン(供給網)に悪影響が出る懸念も高まるなか、吉本浩之社長は「中国は非常に大事な市場で、投資を続けていく」と強調。 2021 年 3 月期に中国事業の売上高を 19 年 3 月期の 2.3 倍まで増やす計画を明らかにした。 19 年 3 月期の中国事業の売上高は 3,547 億円で、売上高全体に占める比率は 23%%。 吉本社長は「中国市場の成長はこれからも続く」と判断し、21 年 3 月期には 8 千億円まで引き上げて、売上高全体に占める比率を 40% まで高める。

具体的には、次世代通信規格「5G」、自動車の電動化と自動化、ロボットの利用拡大、家電製品の省エネ化、農業用物流の自動化の 5 つの潮流をとらえて事業を伸ばす。 それぞれの分野についての投資額などの詳細は明らかにしなかった。 5G 分野ではスマートフォン向けのカメラ関連部品や設備向けのアンテナなどに力を入れる。 自動車分野では電気自動車 (EV) 向けの駆動システムを中国国有自動車大手、広州汽車集団に納入し始めたと明らかにし、同領域を伸ばす方針を強調した。

中国企業との取引を増やすため、中国での研究開発のスピードを 5 倍に高める。 吉本社長は「スピードでは中国を先生にしていく」と強調した。 現地経営幹部を育成し、中国各地に置いた研究開発拠点の拡充も進める。 具体的には、習近平(シー・ジンピン)最高指導部が力を入れる新都市構想「雄安新区」や陝西省西安ではロボットや広域経済構想「一帯一路」との連携に力を入れる。 広州や重慶などでは自動車分野、広東省深センでは通信分野、江蘇省蘇州、南京ではスマートシティーに力を入れる。

トランプ米政権は中国のハイテク分野の成長に危機感を示しており、5G 分野では中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の排除に動く。 米中対立の激化が長期化すれば、日本電産の強気の中国戦略に影響を与える可能性もありそうだ。 (nikkei = 6-20-19)


シャープ、米国向けノートパソコンも中国から生産移管へ

戴会長兼社長が表明、追加関税なら

シャープの戴正呉会長兼社長が 27 日、日本経済新聞などの取材に応じ、米国の中国に対する制裁関税「第 4 弾」の対象となるノートパソコンについて、中国から東南アジアへ生産移管する考えを明らかにした。 戴氏は「ASEAN (東南アジア諸国連合)にも安く生産できる拠点はたくさんある」と語り、複合機やデジタルサイネージ向けなどの大型ディスプレーも移管を検討する。

米国の対中関税第 4 弾は最大 25% の関税を課す内容で6月末以降に発動される見通しだ。 シャープ子会社のダイナブック(東京・江東)が手がけるノートパソコンは杭州市の自社工場を中心に中国で全量を生産しているが、第 4 弾が発動されれば、台湾やベトナムなどにあるシャープや親会社の鴻海精密工業グループの拠点への移管を検討する。 「全体の 1 割程度が米国向け(戴氏)」という。

第 4 弾が発動されれば、複合機は江蘇省の自社工場で高速印刷できる上・中位機種を生産しているが米国向けについてはタイ工場に移す方針だ。 同様に広告向けなどの大型ディスプレーも今は鴻海の中国工場で生産しているが、同社のメキシコ工場に移管する方針だ。 一方、戴氏はシャープの部品を除く最終製品の売り上げの中で「中国で生産する米国向けは 3.8% しかない」と語り、影響は軽微であることを強調した。 該当する製品の生産移管を迅速に進め、競合に対してコストメリットを発揮してシェア拡大につなげる。

また米国による事実上の中国・華為技術(ファーウェイ)への部品供給禁止規制について、シャープは現在、規制の対象になるかの調査を進めている。 日本国内でもファーウェイ製スマートフォン(スマホ)の発売延期などの動きが生じているが、戴氏はこうした動きを「チャンスにもなる」と述べた。 競合する携帯電話や携帯用ルーターなどでシェア拡大を目指す。

また戴氏は同日、自身の進退についても言及した。 今年 6 月に鴻海精密工業の董事に復帰予定。 「(董事の任期が続くため) 2021 年度まではシャープの会長職を継続する」と語った。 社長職については「適当な人物がいたら引き継ぎたい」とし、20 年度以降の交代を示唆した。 後任は「できれば日本人から選びたい」とし、今後も幅広く社内外から候補者を募る。

また後継者育成の取り組みも強化する。 戴氏と、野村勝明・石田佳久両副社長の 3 人が務めている共同 CEO (最高経営責任者)については、今年 7 月から権限を拡大する方針だ。 これまでは 2 千万円以下だった決裁権限を 1 億円以下まで引き上げる。 他の共同 CEO の担当分野についても戴氏自身は「業績が達成できれば、関与しない」という。 より重要な経営判断を共同 CEO に任せることで、後継者としての適正を見極める。 (nikkei = 5-27-19)

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シャープ、米国向け複合機生産 中国からタイに移管へ

複合機大手が米国向け製品の生産を中国から移管する動きが広がってきた。 シャープは今夏以降、米国向けの複合機生産をタイに移す方針だ。 京セラもベトナムへの移管を検討する。 日本勢が世界シェア上位を占める複合機はトランプ米政権による中国への制裁関税「第 4 弾」の対象となった。 業界首位のリコーも移管を決めており、中国離れの動きが加速しそうだ。

米国の対中関税「第 4 弾」は最大 25% の関税を課す内容で、6 月末以降に発動される見通しだ。 米貿易統計によると、複合機の 52% (輸入額ベース)を中国が占める。 シャープは現在、米国向けの複合機の大半を江蘇省の工場で生産する。 高速の印刷が可能な上中位機種を手がける中核拠点だが、第 4 弾が発動されれば米国向けはタイ中部に段階的に生産を移す方針だ。 対象は同社の世界販売の約 2 割にあたる年 10 万台弱とみられる。 タイへの移管では、現地の人員を増やし新たな設備投資はしないもよう。 同社の複合機関連事業の売上高は 2018 年度に約 3,200 億円と全体の 1 割強を占める。

京セラは米国向けのコピー機や複合機の生産を中国からベトナムに切り替える検討に入った。 現在は中国・広州とベトナム北部の 2 拠点で、米国向けはベトナムに移す方向だ。 同社の複合機関連事業の 18 年度の売上高は約 3,750 億円で米国が約 25% を占める。 移管は半年程度かかるとみられ、米中貿易戦争の影響を見極め判断する。

米 IDC の調査によると、オフィスで使われる A3 レーザー複合機の 18 年の世界シェア(台数ベース)はリコーが約 17% で首位。 京セラが 5 位、シャープも 6 位につける。 米ゼロックス・富士ゼロックス、キヤノン、コニカミノルタを含む日本勢など上位 6 社でシェアの 8 割強を占める。 富士ゼロックスやキヤノンも米国向けを中国から輸出しており、各社はこれまで中国を世界市場に向けた供給拠点としてきた。 首位のリコーは中国で生産する米国向けの製品の全量をタイに移す。 リコーに続き、シャープと京セラが中国から東南アジアに米国向けの生産を移せば、世界的な複合機の輸出基地としての中国の位置づけに陰りが出ることになりそうだ。 (nikkei = 5-23-19)


日本企業、脱・中国一段と 生産や調達で

米国の追加関税引き上げの影響は日本企業にも広がる。 今回の対象は自動車部品や家電、電子部品の一部などだ。 各社の業績への負担も重くなり、生産や調達の面で中国から他国にシフトする動きが一段と進みそうだ。

住友電気工業は中国で自動車用組み電線(ワイヤハーネス)や関連部品を生産し米国に輸出する。 同社は米中貿易戦争を受け、昨年から中国から生産を移してきた。 関税が 25% になると年 25 億円のコスト増で、影響は関税 10% の 2 倍だ。 井上治社長は 10 日の決算記者会見で「中国生産の一部をフィリピンやベトナム、メキシコなどに移す」と、移管する対象を広げる考えを示した。

小糸製作所は自動車ランプの電子基板などが対象製品で、関税が 25% になると年 14 億円のコスト増になりそう。 日本や東南アジアに生産を移すことも検討中だ。 富士フイルムホールディングスはデジタルカメラの付属品の一部が関税引き上げの対象となる。 中国から調達して米国に輸出しており、今回の措置で数億円のコスト増の見通し。 助野健児社長は「(調達地域の変更を)検討している」という。

一方、部品メーカーは価格転嫁を取引先に求め交渉を続けている。 最終製品の値上げにつながれば需要を冷え込ませる恐れもある。 トヨタ自動車の幹部は「米国の対中関税が 25& になれば、米中の自動車市場の冷え込みは避けられない」と不安視する。

中国による米国への報復措置の余波も及ぶ。 丸紅は米穀物子会社で、中国が課した大豆などへの関税の影響で市況が悪化した。 一連の米中貿易戦争の影響で 10 年 3 月期に 200 億 - 300 億円規模の減損処理をした。 パナソニックは米中間の関税引き上げとその余波の受注減のあおりで、「18 年度で 400 億円程度の減益要素があった。(梅田博和常務執行役員)」 19 年度はさらに 100 億円程度の減益を想定する。 (nikkei = 5-11-19)


任天堂「スイッチ」中国へ 初の本格販売、マリオも認可

任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が、中国本土で販売される見通しとなった。 代理店となる中国の IT 大手テンセントの申請を、現地の政府機関が認めた。 任天堂は過去に中国で小規模な販売を行っていたが、久しぶりの再参入となる。

テンセントが本社を置く広東省の文化旅行庁が 18 日、スイッチ本体とスイッチ向け「スーパーマリオ」のソフトの販売を許可したと公表した。 24 日まで意見公募の期間があり、正式に認められる見通しだ。 中国全土で販売できるのかや、発売時期などについては明らかになっていない。 任天堂は「ニンテンドー DS」などのゲーム機を現地法人を通じて販売していた時期があるが、小規模なビジネスにとどまっていた。 中国はゲームの内容などについて規制が厳しい。 現地の大手と組むことで、販売をスムーズに進める狙いがある。 (中村光、asahi = 4-19-19)


吉本興業、上海でエンタメ学校 新喜劇の芸人も講師派遣

吉本興業は 3 月 29 日、エンターテインメント産業の人材を育成する学校を来年 3 月に中国・上海に立ち上げると発表した。 同社が得意とするコメディーや舞台劇に携わる人材を育てる目的で、中国の民営メディア大手、華人文化グループ (CMC) と共同で設立。 吉本新喜劇の芸人や制作スタッフを、講師役として派遣する予定という。 吉本興業は国内にタレント養成所「NSC」を持つが、海外に養成機関をつくるのは初めて。 当初は 50 - 100 人程度の生徒を募集し、役者や音響・照明の技術者などに育てる。 将来は、ダンサーや歌手といったパフォーマー、映画・アニメの技術者などにも対象を広げる方針だ。

CMC は中国本土、香港、台湾などに向けた映画やテレビ番組の制作、映画館の運営などを手広く手がけている。 中国ではエンタメ産業の人気が高まっている一方、「働きたい人はたくさんいるのに、養成する機関が少ない。 自社の劇場や制作現場で実践的な研修をしていきたい。(ホイ・ツー・トーマス最高執行責任者)」という。 卒業生が活躍できるよう、映画館や劇場、放送局などの拠点もアジア地域で整備していく考え。 吉本興業の清水英明・海外戦略本部長は「学校運営だけでなく、お互いの持つメディアを生かしたコンテンツ作りも進めたい」と話す。 (久保田侑暉、asahi = 4-2-19)


ソニー、中国のスマホ工場生産終了 販売減で体制見直し

ソニーは 3 月末に中国のスマートフォン(スマホ)工場の生産を終了する。 生産台数などは明らかにしていない。 スマホ事業は同業との競争激化で販売台数の減少で赤字に陥っている。 スマホの生産拠点をタイの 1 カ所に集中してコストを削減し、同事業の収益改善を図る。

北京にある工場の生産を 3 月末に終了し、税務などの手続きを経て閉鎖する見通し。 1995 年に稼働を始めた北京工場は中国で唯一のスマホ工場。 従業員数は非公表だが 1 千人規模とみられる。 中国国内の人件費の上昇で、製造コストが負担になっている。 現地の販売台数も減少する中、生産終了を決めたもようだ。 「エクスペリア」ブランドを展開するソニーのスマホ事業は中韓勢との競争激化などを受けて販売が低迷する。 直近の世界シェアは 1% にも満たないもよう。 2019 年 3 月期に 950 億円の赤字を見込んでいる。 (nikkei = 3-28-19)


パナソニック、3 年後 1 兆円を目指す中国の事業戦略 「中国で勝てないと将来は無い」

パナソニックは、3 月 14 - 17 日の 4 日間、中国・上海の上海新国際博覧中心 (SNIEC) で開催されたアジア最大規模の家電博「AWE 2019(中国家電及消費電子博覧会)」に出展。 中国市場向けに開発した IoT 家電などを展示した。 会期前日には、上海市内で記者会見を行い、パナソニック アプライアンス社社長の本間哲朗氏が、中国における事業戦略などについて説明した。

中国・北東アジア社を設立、中国での成長がパナソニックを牽引する

本間社長は、4 月 1 日付けで、新設する中国・北東アジア社の社長に、自らが就任することに触れながら、中国語を使って事業戦略を説明してみせた。 中国・北東アジア社は、現地主導の体制とし、同カンパニーの傘下にスマートライフ家電事業部、住建空間事業部、コールドチェーン(中国)事業部、台湾事業部を新設。 アプライアンス社傘下の冷熱空調デバイス事業部を移管。 中国・北東アジアにおいて、家電事業を統合したビジネスを行うことになる。

本間社長は、「新カンパニーの事業領域は、400 億元(約 7,000 億円)強の売上高だが、3 年後には 600 億元(1 兆円)規模の『くらしアップデート企業』になることを目指す。 新カンパニーでは、中国のことは中国で決める、というポリシーをさらに推し進め、お客様のくらし価値・くらし空間に関わる領域を担当する。 社長の津賀(パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏)は、『中国で勝てないとパナソニックの将来は無い』と語っており、中国での事業を大きく成長させ、世界中のパナソニックを牽引する存在になる。 中国国内に対して攻めていき、中国から世界中へと攻めていく。」とした。

現在パナソニックは、家電以外の事業を含めると、中国全土で約 600 億元(1 兆円)、中国からの輸出を含めると、1,250 億元(2 兆円)を超える事業を行っており、製造や販売、開発、デザインも含め、88 の拠点を持ち、6 万人が勤務。 「この規模は、日本を除き最大になる」という。

また、本間社長は、パナソニックが、長年に渡って、中国と強い結びつきがあることを強調。 2018 年は、パナソニックが創業 100 周年を迎えたのと同時に、パナソニックの創業者である松下幸之助氏と、ケ小平氏との直接会談により、同社が中国に進出するとともに、技術指導を行うことを決定してから、40 年目の節目を迎えたことに言及。 「このときの会談で創業者は、『これからはアジアの時代である』と語り、中国における近代化への協力を約束した。 1987 年、日本の大手企業としては、戦後初めて、北京にテレビのブラウン管工場を建設し、パナソニックの中国での事業がスタートした。」と述べた。

中国で先行する IoT 家電、サプライチェーンにも勝機

パナソニックは 2015 年 4 月に、AP 中国を設立し、家電の商品開発からデザイン、マーケティングまでを、中国のワントップの組織体制下で意思決定できる体制を敷いてきた。 その結果、中国市場のニーズに最適化した製品の投入などを実現してきたという。 成果のひとつとしてあげたのが「ナノケアドライヤー」。 2018 年には、中国国内で年間 60 万台を販売。 新製品では、風量を強めた中国独自のモードを搭載したり、独自の赤を本体カラーに採用したりしたという。

また、日本に先駆けて、中国市場で IoT 家電を先行販売。 すでに 4 年を経過していることに触れ、「尿から健康データを測定できるトワレは、スマホと連動し、お客様の健康づくりにお役立ちできるものとして、中国でナンバーワンの支持を得ている。 2019 年 3 月からは、デジタルミラーと連動した新たな展開をスタートする。 今後、バイタルセンシングで得た健康情報を核に、トワレのあるサニタリー・バス空間だけでなく、リビング、キッチン、プライベートという空間においても、そのソリューションを広げていく。」とした。

さらに、すでに日本で展開している家電および住宅設備向け統合プラットフォーム「HOME X」を活用したサービスを中国でも展開する姿勢を明らかにしたほか、健康で、快適な空間をデジタル設計する取り組みとして、DELOS と共同で、北京にラボを設立。 2019 年 7 月から、実証実験をスタートするとした。 ここでは、気流や香り、照明、音、映像など、独自の刺激を通じたアルゴリズム開発を進め、サイバー空間での設計を、リアルな空間に落とし込むという。

「養老・社区」といった分野では、雅達集団が長江デルタ地区で複数展開する CCRC に商材を納入し、養老施設での新しい提案を進め、物件内のショールームでは、エイジフリー関連の商品を体験できるようにしたほか、浙江省杭州市に本社を置く大手デベロッパーの広宇集団とともに、在宅介護関連の商材や高齢者が暮らしやすい空間づくりで協業。 養老住宅や病院などへの展開も視野に入れるという。

昆明都市開発プロジェクトでは、「百年健康都市」をコンセプトに、社区ソリューションなどの取り組みをパートナーとともに開始。 建築業界向けには、中国国内の複数のパートナー企業と共同で、建築現場向けのプレハブハウス事業を展開していることを示した。

さらに、パナソニックでは、サプライチェーンへの取り組みでも、中国市場では成長の余地があるとみている。

本間社長は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、食品を冷やす「冷凍・冷蔵ショーケース」では、中国でナンバー 1 シェアであることを示しながら、「帰宅途中に注文すれば、家に着く頃には食材が届いているという、中国のライフスタイルには驚くが、最先端の EC 社会である中国で、冷やすという価値は、さらに威力を発揮することになるだろう。」

「新鮮な野菜や魚を、産地から新鮮なまま運んで、保管するための倉庫や物流箱、さらにはそれを加工する厨房機器や店頭で販売するショーケース、家に届けるまでの生鮮宅配といったように、産地から食卓までのサプライチェーンのすべての段階において、パナソニックの技術とサービスが貢献できる。 中国の人々にとって、食の安全を支える事業になる。」とした。

2018 年 12 月には、貴州省遵鉄物流と、コールドチェーン物流システムの戦略協業に調印。 貴州省の各物流拠点に冷凍冷蔵倉庫を建設するほか、産地から食卓の一気通貫システムの構築によって、中国西部の農産品を、沿岸部の大都市に安全に届けることができるという。

目指すのは「2020 年に外資系白物家電ブランドナンバーワン」

パナソニックは、AWE 2019 の会場において、前年よりも展示スペースを拡大し、新たな提案や中国向け製品を展示してみせた。 本間社長が会見で示したように、日本に先駆けて、中国で販売を開始した IoT 家電では、前日の眠りの状況や、朝一番にトイレで計った健康データを、自動的に洗面台のミラーに表示。 キッチンでは体調を改善するレシピ提案を行い、自動で冷蔵庫の在庫状況を確認して、ワンボタンで食材が注文できるサービスをデモストレーションしてみせた。

本間社長は「この構想は、家電や空調・空質、住宅設備などの事業を長年進め、ネットワーク、インターフェース、センサーなど、健康・快適にかかわる技術に強みを持つパナソニックしかできないソリューションであり、『健康情報プラットフォーマー』として、くらし空間そのものを、アップデートする役割を果たす」とした。 トワレは、便座についたセンサーで、座っただけで体脂肪率を計測し、専用の器具を使った尿検知で、血糖値など7項目の値を測ることができるという。 また、洗面台に設置するデジタルミラーは、2019 年 3 月から発売するという。

一方で、ナノイー技術も積極的に訴求してみせた。 パナソニックブースでは、空気清浄機やヘアドライヤー、洗濯機、冷蔵庫といったナノイー搭載製品を展示。 さらに「nanoe LAB」の名称で、ナイノーの技術的な優位性についても説明した。

本間社長は、「ナノイーは、理美容家電に搭載されると、髪や肌にうるおいを与えるが、これが空調機器に搭載されると、空気中の菌やウイルスを抑制するほか、PM2.5 に含まれる有害物質を分解、抑制する。 今回、手足口病のウイルスにも効果があるということが明らかになった。 ナノイー、ナノイー X は、今や家庭だけではなく、病院や学校、養老施設など業務用の空調に採用されたり、中国で販売しているジャガーランドローバーやトヨタ車など、全世界で 80 車種以上に搭載されている」などとした。 理美容家電では、中国市場向け専用の上位モデルとして「Panasonic Beauty X シリーズ」を発売。 これもブース内に展示してみせた。

パナニソックでは「新貴層」と呼ばれる世帯年収 32 万元以上の DEWKs 世代をターゲットに事業を展開。 2020 年には、外資系白物家電ブランドとしてナンバーワンを目指している。 また、アリババや京東と連携して、EC プラットフォームを活用したビジネスを強化し、中国におけるオンライン販売比率を 3 割程度にまで高める考えだ。 今回の AWE 2019 の展示や、それにあわせて実施した会見を通じて、中国市場において、付加価値戦略を軸に事業を展開するパナソニックの存在感を、さらに強調したといえる。 (大河原克行、Cnet = 3-18-19)


日本を代表するあの化粧品メーカーが、中国での売り上げを爆発的に伸ばしている = 中国メディア

中国国内における日本の化粧品への信頼と人気は高い。 訪日中国人観光客が家電製品を「爆買い」したのはすでに過去の話だが、化粧品についてはなおも人気の「お土産」であり続けている。 そこで日本の化粧品メーカーも中国本土での販売に力を入れつつあるが、中国でも知名度の高い資生堂にとって昨年は大収穫の年になったようだ。 中国メディア・中国網が 12 日報じた。

記事は、資生堂グループが先日昨年 12 月期の連結決算を発表し、2017 年 12 月期の決算で初めて売上高が 1 兆円の大台を突破したのに続き、18 年 12 月期決算でも売上高、営業利益、純利益が過去最高を記録したと紹介。 売上高は前年同期比 8,9% 増の 1 兆 948 億 2,500 万円で、営業利益も同 34.7% 増の 1,083 億 5,000 万円に達したと伝えた。

そして、中でも日本と並んで同社の販売を支える中国市場の売上高は 1,907 億 9,900 万円となり、日本市場の 4,545 億 5,800 万円に比べるとまだ半分以下の規模であるものの、対前年比では日本市場が 9% 増にとどまったのに対し、中国市場はこれをはるかに上回る 32.3% 増と 3 倍以上の伸び率を見せたことを紹介している。

そのうえで記事は、同社の中国市場戦略について近ごろ頻繁に布石が打たれていると指摘。 今年 1 月 1 日には上海で本社直轄の「中国事情創新投資室」を立ち上げ、中国市場の動向への注視や企イノベーション、新業務の発展の推進を行う拠点としたこと、中国事業の新たなマネジメントチームも始動し、階層別のブランド強化、EC と実体店舗の発展などを目指すことを併せて伝えた。 (今関忠馬、SearChina = 2-13-19)


米中貿易摩擦下も … 機械大手が中国で生産拡大へ

ヤマザキマザックは日本への輸出増加

牧野フライス、放電加工機新工場

牧野フライス製作所は中国・上海近郊の生産拠点(崑山市)内に新工場を建てる。 自動車の金型や部品などを製造する放電加工機の月産能力を 2021 年度に現在比 4 倍の 180 台に増やす。 中国市場は踊り場感が漂うが、同社は得意の精密加工向けの好調が続く。 中長期でも電気自動車 (EV) や航空機、スマートフォン(スマホ)向けの拡大を予想する。 シンガポールからの生産移管を進めながら内需を取り込む。

牧野フライスは中国で中国国内向け放電加工機の一部を生産してきた。 金属線を使って加工するワイヤ放電加工機や、電極の形状を転写する形彫り放電加工機のアジア主力機種を中国の新工場にまとめる。 中国にワイヤ型「U シリーズ」を全面移管し、形彫り型「EDAF シリーズ」を部分移管する。 新工場の投資額は約 40 億円。 延べ床面積は約 2 万 5,000 平方メートルを予定する。 生産体制に加え、営業やアフターサービスを強化する。 顧客の実際の設計データを使って試加工する施設や、IoT (モノのインターネット)サービスを提供する施設も新設する。

機械業界は、米中貿易摩擦の制裁関税を理由に北米向けの生産移管が進む一方、中国の内需拡大を見越した拡大投資が続きそうだ。

ブラザー工業やヤマザキマザック、生産・輸出拡大

工作機械大手が中国で生産能力の増強や輸出の拡大に取り組む。 ブラザー工業は 2019 年 11 月以降に西安市の工場で生産ラインを増強し、生産能力を 4 割高める。 足元の中国での受注は低迷しているが、中長期的には回復すると見込む。 ヤマザキマザックは大連市の工場の日本への輸出量を 19 年にも 2 倍に増やす。 日本市場が好調で、国内生産だけでは需要に供給が追いついていない状態を改善する。 生産拠点、輸出拠点の双方での中国工場の重要性が高まっている。

ブラザーは生産子会社「兄弟機械(西安)」で、現地向けに小型マシニングセンター (MC) の主要 3 機種を生産する。 工場内に分散する倉庫機能を 19 年 11 月完成の倉庫に集約し、空いたスペースを順次生産ラインに転換する。 投資額は非公表。 同社は中国では主要顧客の電子機器製造受託サービス (EMS) 向けが落ち込む。 だが、同じく主要顧客の自動車向けを中心に中長期の需要は伸びると見て、西安工場の生産能力を高める。

ヤマザキマザックは生産子会社「山崎馬扎克机床(遼寧)」で生産する小型数値制御 (NC) 旋盤の日本への輸出量を月 20 台に倍増する。 中小製造業を中心に受注が好調な上、国内での生産増強が難しいため、9 月に輸出を始めた。 供給難を解消し、納期を短縮するため、輸出倍増を決めた。 13 年稼働の遼寧工場は、生産増強で月産能力を 16 年比 5 割増に高めた。

日本工作機械工業会(日工会)によると 9 月の工作機械受注実績(確報値)では、中国が前年同月比 22.0% 減の 189 億円で 7 カ月連続の前年割れ。 日本は同 5.6% 増の 644 億円で、20 カ月連続で前年を上回った。 (NewSwitch = 11-29-18)


伊藤忠、1,400 億円損失 出資先の中国企業が株価低迷

伊藤忠商事は 2 日、出資先の中国企業の株価低迷で減損処理が必要になり、1,433 億円の損失を 2018 年 9 月中間決算(国際会計基準)で計上したと発表した。 伊藤忠は、中国最大の国有複合企業「中国中信集団 (CTIC)」に対して 15 年、約 1.2 兆円をタイの財閥と折半出資。 洋上風力やアパレル関連で具体的な連携も始まっている。

伊藤忠の鉢村剛・最高財務責任者 (CFO) は「国有系のため、政府が 58% の株を保有して市場に流通する株が少ない。 金融系株式に対する市場評価が厳しいのも影響している。」と株価低迷の理由を説明した。 一方、19 年 3 月期では、ユニー・ファミリーマートホールディングスの子会社化による再評価益 1,412 億円などで、過去最高の純利益 5 千億円を予想している。 (鳴澤大、asahi = 11-2-18)

前 報 (8-11-17)


日本食研、中国の調味料工場 12 月稼働

調味料製造の日本食研ホールディングス(愛媛県今治市)は 12 月1 日、焼き肉のタレなど調味料の新工場を中国江蘇省南通市で稼働させる。 延べ床面積は 1 万 4,000 平方メートル、総投資額は約 30 億円。 焼き肉のタレや空揚げ粉などの生産能力は同社の海外工場で最大規模の年 2 万 5,000 トンとする。 約 50 人を雇用する予定。 現地法人の本社事務所や研究・見学施設も併設。 中国の市場に合わせた商品の開発を進め、需要の拡大に対応する。 (nikkei = 10-28-18)


川崎重工が中国でストーカ式ごみ焼却発電施設を 6 件連続受注

川崎重工は 11 日、中国の安徽海螺集団(CONCH グループ)との合弁会社である安徽海螺川崎工程が、中国国内向けストーカ式ごみ焼却発電施設を 6 件連続受注したと発表した。 設置場所は江西省・上高県、安徽省・霍邱県、山東省・泗水県、陜西省・洋県、安徽省・霍山県、重慶市・石柱県。 2019 年 10 月までに順次納入する。

川崎重工が技術供与し、日本国内での実績をもとに、中国のごみ性状に合わせて最適化した。 川崎重工によると、ストーカ式ごみ焼却発電施設は 2016 年 1 月の第 1 号施設以降、今回の連続受注で計 16 件になった。 安徽海螺川崎工程は資本金 1 億元(約 16 億円)で、出資比率は川崎重工が 49%、安徽海螺集団が 51%。 (如月隼人、RecordChina = 10-12-18)


薬の老舗「宇津救命丸」、中国で大人気 アリババも特集

「子育てにもっと笑顔を」の願いは海を越えた。 1597 年創業の宇津救命丸。 栃木に生まれた日本有数の老舗企業がいま、中国で注目されている。 少子化が進む日本で子ども向け医薬品の市場が縮小する中、長年培った信用がアジアで新たな地平を切り開く。

2016 年 11 月。中国ネット通販大手のアリババ集団が自社のオンラインショッピングサイトで、宇津救命丸の乳児用スキンケア商品「ももの葉ローション」を特集した。 通販番組の形式で日本と中国を結び、1 時間の生放送を配信。 日中両国の育児中の女性たちがベビーローションの使用感を語り合い、会社の歴史や高根沢町の工場も紹介された。

生放送は約 4 万人が視聴し、サイトへのコメントは 2 万件以上。 その後、数回にわたって再配信された。 評判は中国で広まり、通販だけでなく、日本のドラッグストアで買い求める中国人観光客も急増。 年 30 万 - 40 万本のヒット商品となった。 (池田拓哉、asahi = 10-11-18)


コメ兵、北京に海外 1 号店 ブランド品需要狙う

中古販売のコメ兵(名古屋市)は、中国・北京に一般客を対象にした海外 1 号店を 9 月末に開いた。 高額なブランド品を買い取り、中古販売する。 北京中心部の路面店で宝石やブランドバッグなど 1 千点を扱う。 売り場面積は 414 平方メートル。 主な客層は、買い取りが 40 代以上の富裕層、販売がブランド品に関心を持つ 20 代以上の女性を想定している。

中国は人口が増え、ブランド品の需要が高いことから出店を決めた。 「日本の高品質の店作りや接客でリユース文化の定着を目指したい(広報)」という。 コメ兵は 2017 年 6 月、北京で現地企業と合弁会社を設立して出店準備を進めてきた。 今年 6 月にはタイの大手財閥と合弁会社をつくり、今後はバンコクへの出店を目指す。 (asahi = 10-2-18)


中国の工作機械「爆買い」にブレーキ、5 カ月連続マイナス

中国による工作機械の「爆買い」に急ブレーキがかかっている。 日本工作機械工業会(東京・港)が 21 日発表した 7 月の受注額(確報値)は中国向けが 5 カ月連続で前年割れ。 全体が 13% 増と好調が続くだけに、外需の 4 分の 1 を占める中国の変調は際立つ。 米中の貿易摩擦への懸念から中国投資に二の足を踏む動きも広がっているようだ。

「これといった理由は思い当たらない。  中の通商摩擦の影響で中国企業のマインドが弱含んでいるのかもしれない。」 同工業会の飯村幸生会長(東芝機械会長)は同日の記者会見で中国の減速要因を問われ、歯切れの悪い答えに終始した。 7 月の工作機械の受注総額は 1,511 億円と前年同月比 13.1% 増え、7 月として過去最高を記録するなど勢いがある。 前年比プラスは 20 カ月連続だ。 内需は 674 億円と 08 年のリーマン・ショック以降 3 番目の高水準で、外需も自動車向けなど生産の自動化や効率化への投資需要が旺盛で堅調に推移している。

唯一変調をきたしているのが中国向けの受注額だ。 国・地域別の受注額で中国は 205 億円と前年同月比 8.5% のマイナスと、5 カ月連続で減少が続いた。 金額ベースでも 17 年 1 月以来 18 カ月ぶりの低水準だ。 不調の原因とされてきたのが電子機器の受託製造サービス (EMS) 向けだ。 スマホの新機種投入時などに大量発注があるため、もともと波が大きい。「ただ今回は一般機械向けも落ち込み、米中摩擦の影響で中国全体が弱含んできている可能性がある(飯村会長)」との指摘も出てきた。

国内の自動車メーカーが相次ぎ中国での増産を決めるなど、工作機械メーカーは中国の製造業の成長が続くとの見方を崩していない。 ただ、中国政府は製造業の高度化を目指す政策「中国製造 2025」の下、工作機械の内製化を進める方針を打ち出している。 貿易摩擦をきっかけに、日本メーカーには逆風となる内向きの流れが加速するのを懸念する声もある。

国内大手、DMG 森精機の森雅彦社長は米中衝突の影響を否定しながらも「リーマン・ショック後に受注が回復するまで 2 年程度かかったこともあり、販売体制の強化を進めていく」と身構えることも忘れない。 景気の先行指標とされる工作機械受注は、目の前の浮き沈みを最も敏感に反映する風見鶏ともいえる。 潮目の変わり目を見極めようと、誰もが躍起になっている。(朝田賢治、角田康祐、nikkei = 8-21-18)