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花王、中国事業が「想定以上の落ち込み」 化粧品の不買運動が響く

花王の長谷部佳宏社長は 7 日の決算会見で、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を受け、「中国市場で想定以上の落ち込みがあった」と述べた。 中国では日本の化粧品の不買を呼びかける動きが続き、同社は店頭での販売促進策などを自粛している。 同社によると、2023 年 1 - 12 月の中国での化粧品や洗剤などの売上高は前年比 23% 減。 ゼロコロナ政策による都市封鎖などがあった前年よりも 9 ポイント下がった。 中国では景気の停滞感も高まるが、長谷部社長は「処理水の問題以上に影響はない」とし、「(処理水の影響は) 24 年の上期まで続くと想定している」と話した。

花王が同日発表した 23 年 12 月期の売上高は前年比 1.2% 減の 1 兆 5,325 億円、本業のもうけを示す営業利益は同 45.5% 減の 600 億円、純利益は同 49% 減の 438 億円だった。 中国での紙おむつの生産停止や化粧品ブランドの統廃合などの構造改革費用 547 億円がかさんだ。 (益田暢子、asahi = 2-7-24)


在中国日本企業の 88% 「中国は重要な市場」 - 中国メディア

中国日本商会はこのほど北京で、「第 2 回会員企業景気・事業環境認識アンケート」の結果を発表した。 それによると、在中国日本企業は中国経済の情勢は小幅な改善をしているとの認識を示した 2024 年以降の中国市場の位置づけについては、88% が引き続き「中国は重要な市場」と考えていることがわかった。 このアンケートは 23 年 11 - 12 月に実施され、計約 1,700 社から有効回答を得た。

対中投資の面では、52% が「23 年の投資額については 22 年と同額または増加させた」とした。 事業環境の満足度については、「非常に満足」および「満足」が前期比 3 ポイント増の 54% だった。 また、78% が「中国国内企業と同等に扱われている、または中国国内企業より優遇されている」との見方を示した。 24 年の中国の景況予測では、6 割を超える企業が「改善」または「横ばい」とした。 24 年以降の中国市場を「重要な市場」と見なす 88% の企業のうち、「一番重要な市場」と「三つの重要な市場の一つ」は 51% に上り、「多くの重要な市場の一つ」は 37% %だった。

同商会の副会長でパナソニックホールディングス副社長の本間哲朗氏は記者会見で、「中国の改革開放 45 年を経て、在中国の日本企業の事業活動はより成熟し、よりしたたかになった。 今回のアンケート調査の結果には、在中国日本企業が複雑な経済環境に直面しながらも中国市場に対する信頼感を抱いていることが表れている。」と述べた。 (中国・人民網/Record China = 1-20-24)


中国進出の日系企業 5 割近くが投資縮小の方針

中国に進出する日系企業の 5 割近くが、投資を縮小する方針であることが日系企業でつくる団体の調査でわかりました。 中国経済の先行きに不透明感が広がる中、企業の間で慎重な姿勢が続いています。 この調査は、中国に進出する日系企業で作る「中国日本商会」が去年 9 月に始めたものです。 今回は、去年 11 月から先月にかけて行い、会員企業 1,700 社余りから回答を得ました。 それによりますと、中国のことしの景気の見通しについて、去年と比べて「改善する」、もしくは「やや改善する」と答えた企業の割合は 25% だった一方、「悪化する」、「やや悪化する」は 39% となり、「悪化」が「改善」を上回りました。

また、中国への投資額を

▽ 「大幅に増加させる」、もしくは「増加させる」と答えた企業は、前回 3 か月前の調査から 1 ポイント減って 15% にとどまりました。
 その一方で、
▽ 「減らす」、もしくは「投資はしない」は 48% と、前回から 1 ポイント増えました。

理由としては中国経済の先行きが不透明なことや、改正「反スパイ法」の施行の状況などを見極める必要があることなどが挙げられ、企業の間で慎重な姿勢が続いています。 事業環境の改善に向けて企業からは、日本人に対する短期のビザの免除措置を再開するよう求める声が相次いでいるということで、中国日本商会は、中国政府への働きかけを強めたいとしています。 (NHK = 1-15-24)


中国はもう人気なし? 日本企業の有望進出先でベトナムに抜かれ 3 位に後退 - 香港メディア

香港メディアの香港 01 は 18 日、日本企業に対して行われたアンケートの結果を「中国はもう人気がないのか?」との見出しで伝えた。 記事は、国際協力銀行 (JBIC) が日本の製造業企業(有効回答数 534 社)を対象に実施した海外事業展開に関するアンケートの結果を紹介。 それによると、有望な進出先とし 1 位だったのは去年に続きインドで、48.6% の企業が挙げた。

去年 2 位の中国は 28.4% で、ベトナム (30.1%) に抜かれて 3 位に後退した。 記事は「中国はかつて日系企業にとって 1、2 を争う有力市場だったが、米中対立や中国経済の減速などから期待値が低下している」との見方が出ていると紹介した。 一方、去年 4 位から 2 位に浮上したベトナムについては「安価な労働力と優秀な人材が評価されており、賃金は年々上昇しているもののコスト増への懸念はまだ少ないと見られている」と伝えた。

なお、4 位は米国、5 位はインドネシア、6 位はタイ、7 位はメキシコ、8 位はフィリピン、9 位はマレーシア、10 位はドイツとなった。 記事は「地縁政治は外資のリスク回避ムードを高め、資金の流出だけでなくサプライチェーンの中国移転をも促し、東南アジア新興国に利益をもたらしている」と伝えている。 (北田、Reocrd China = 12-19-23)


ホンダ、中国の合弁工場で従業員 900 人削減 … EV 化進みエンジン車販売が減少

【北京 = 山下福太郎】 ホンダが中国の合弁会社で従業員約 900 人を削減することがわかった。 エンジン車中心のホンダの販売は急速に進む電気自動車 (EV) 化の流れの中で減少しており、中国で初めて大規模な人員削減に踏み切る。 削減対象はいずれも有期契約の従業員。 合弁会社の従業員数は約 1 万 3,000 人おり、削減数は 7% にあたる。 ホンダの 1 - 10 月の中国での販売台数は前年同期比 18.5% 減と大きく減少していた。 (yomiuri = 12-2-23)


トヨタ、中国・天津工場で一部生産停止

[深セン・中国] トヨタ自動車は 2 日、中国の合弁事業で老朽化した一部生産ラインを停止したが、操業は通常通り続けていると述べた。 販売低迷を背景に生産を一部停止したとの報道を受け、広報担当者が明らかにした。 同担当者は、第一汽車との天津合弁工場での生産停止は計画的なもので、「車種構成の変化」に基づき日々、生産を調整していると説明。

「生産ライン停止の理由は老朽化のほか、ボディーの種類など車種構成の変化を考慮して生産体制を最適化するため」とした。 時事通信は 1 日、トヨタが天津市の完成車工場で大規模な生産調整を行っていると報道。 中国市場で電気自動車 (EV) への移行が急速に進む中、主力とするガソリン車の販売低迷を受けた措置で、四つある主要生産拠点のうち一つの稼働をほぼ停止していると伝えた。 (Reuters = 12-2-23)


中国で事業拡大見込む日本企業 初めて 3 割下回る JETRO 調査

JETRO = 日本貿易振興機構が行った調査で中国での事業の拡大を見込んでいる日本企業が減少し、初めて 3 割を下回ったことがわかりました。 一方で、インドやブラジルなどいわゆるグローバル・サウスで事業の拡大を見込む企業が目立っています。 この調査は、海外に進出している日本企業を対象に JETRO が毎年行っていて、今回のことし 8 月から 9 月に行った調査では 7,632 社が回答しました。 このうち、中国に進出している日本企業 710 社で、今後 1 年から 2 年で中国での事業の拡大を見込んでいると回答した企業は 27.7% にとどまり、初めて 3 割を下回りました。

これまでの調査で回答した企業では、おととしは 40.9%、去年は 33.4% となっていて、この 3 年で急速に減少しています。 背景には、中国経済の先行きに不透明感が広がっていることに加え、EV = 電気自動車の普及で、日本企業のシェアが高いガソリン車の市場が縮小している影響もあるものとみられます。 その一方で、今回の調査では、いわゆるグローバル・サウスで事業の拡大を見込んでいると答えた企業が目立ち、ブラジルやインドで自動車などの需要の拡大を見込んだり、南アフリカなどで周辺の市場開拓の拠点を設けたりする動きが進んでいるということです。

JETRO の石黒憲彦理事長は記者会見で「中国経済はマクロ的に明らかに減速しているが、日本企業にとって中国市場は極めて重要だ。 伸びるという意味で明るい見通しは持てなくても、重要なマーケットを守る意識が強い」と述べました。 (NHK = 11-21-23)


三菱自動車、中国市場からの撤退決定へ 日系メーカー各社が苦戦

三菱自動車工業が中国市場からの撤退を近く決めることがわかりました。 世界最大の自動車市場の中国は、EV = 電気自動車へのシフトが急速に進み、苦戦する日系メーカー各社が戦略の見直しを迫られています。 三菱自動車工業は、中国・湖南省で 2012 年から中国メーカーと合弁で車の現地生産を続けてきました。 関係者によりますと、中国メーカー側との協議を進めた結果、合弁会社の株式を売却し、合弁事業を解消する方針を固めたということです。 在庫がなくなりしだい、新車の販売事業も終了し、中国市場から撤退することになります。

三菱自動車は来週にも取締役会を開いて、この方針を決める見通しです。 世界最大の自動車市場の中国は、EV やプラグインハイブリッド車の普及が急速に進んでいます。 現地の新興メーカーとの販売競争が激しくなるなか、エンジン車が中心の三菱自動車は苦戦を強いられ、ことし 3 月から現地生産を停止していました。 会社としては、業績が好調な東南アジアの市場に経営資源を集中させていくことにしています。 中国市場をめぐっては、ほかの日系メーカー各社も販売の落ち込みが続き、EV 事業を強化するなどの戦略の見直しを迫られています。

日系メーカー各社は戦略の見直しへ

EV = 電気自動車などの普及が急速に進む中国市場では、エンジン車が主体の日系メーカーの販売不振が続いています。 中国の去年 1 年間の新車の販売台数は全体で 2,600 万台余りで、このうち EV やプラグインハイブリッド車、それに燃料電池車をあわせた販売台数は過去最高の 680 万台余りとなっています。 ことしに入ってからもEVなどの販売は増加傾向が続いていて、こうしたなか、エンジン車を主体とする日系メーカーのことし 1 月から 8 月までの中国での販売台数は、

▽ マツダが去年の同じ時期に比べて 37.8% 減少したほか、
▽ 日産自動車も 26.3%、
▽ ホンダは 24%、
▽ トヨタ自動車は 5.1%、それぞれ減少しています。

このため日系メーカー各社は戦略の見直しを迫られています。 トヨタは、中国の実情にあわせた EV の開発を加速させるため現地の研究開発の体制を強化したほか、マツダや日産自動車も現地での新型 EV などの投入を強化する方針を明らかにしています。 ホンダは従来の計画を 5 年前倒しして 2035 年に中国で販売するすべての新車を EV にする方針を明らかにしています。 日系メーカーがこうした戦略の見直しによって、中国市場でどこまでシェアの回復につなげることができるかが各社共通の課題となっています。 (NHK = 10-19-23)


世界一 EV 市場狙い日本の半導体商社が中国と合弁会社設立

急成長する中国の電気自動車市場での事業拡大を狙い、日本の大手半導体商社が中国の自動車メーカーを顧客に持つ大手車両デザイン会社と合弁会社を設立しました。 日本の商社「RYOSAN」と中国の車両デザイン会社「IAT」は 4 日午後、北京で調印式を行いました。 今後、日本から車載用の半導体や電子部品を調達し、中国の電気自動車向けの販売や第 3 国への輸出に取り組むと説明しています。

「新たなビジネスモデルを両社が力を合わせて作っていくことが一番重要。(株式会社 RYOSAN 稲葉和彦社長)」

半導体を巡っては経済安全保障上の懸念も上がるなか、稲葉社長は「規制のなかで進めていくことで両者が合致している」と話しています。 (テレ朝 = 9-4-23)


トヨタ、中国で工場労働者 1,000 人の契約を満了前に終了 - 派遣会社と

トヨタ自動車は 25 日、足元の生産状況を踏まえ中国の自動車メーカー、広州汽車集団との現地合弁会社が約 1,000 人を削減したと明らかにした。  トヨタ広報担当の福田直之氏によると、広州汽車との合弁会社は新たな派遣先探しのサポートなどを前提に労務派遣会社との間の約 1,000 人の契約について満了前に終了した。 契約終了の対象となった労働者には法律で定められた経済補償を行うという。 トヨタの中国事業での人員削減についてはロイターが先に報じていた。 (稲島剛史、Bloomberg = 7-25-23)


大手企業で進む「中国リスク低減策」 パナソニックは、省エネエアコンの生産拠点を国内工場へ

パナソニックは先月、日本国内向けの省エネ性能が高いエアコンの生産拠点を中国から日本国内に移すことを発表した。 生産拠点だった中国・広州にある工場の稼働を停止し、来年度にかけて滋賀県・草津にある工場に生産を一本化するという。 草津工場では、今後雇用を 2 割増やし、生産ラインの自動化を進めるとしている。 また、中国依存脱却となる今回の決定について、パナソニック側は米中対立などの地政学的なリスクを避ける狙いがあったと本音を暴露している。

この決定は、近年の日本を取り巻く地政学リスクを考慮すれば極めて妥当な決断と言えよう。 昨年には経団連会長を務めたキャノンの御手洗氏も、中国や台湾情勢を考慮すればできるだけ早く日本回帰か第 3 国シフトを急がなければならないと言及し、大手自動車メーカーのマツダやホンダも、サプライチェーンで中国とその他の地域をデカップリングさせ、中国依存を減らしていく方針を示している。 日本を代表する大手企業の間では中国依存からの脱却を進める動きが拡大しており、今回のパナソニックの決定もその一環である。

また、パナソニックは過去中国で痛い目にあったことがある。 2012 年 9 月、当時の民主党・野田政権が尖閣諸島の国有化を宣言したことがきっかけとなり、中国国内ではメディアが一斉に対日批判を展開し、中国各地で反日デモが一斉に拡大した。 その際にパナソニックは、プリント基板材料やプリント基板を製造する蘇州にある工場、スイッチなどの電子部品を製造している青島の工場で、それぞれ建屋、設備、備品の一部が破壊された。 また固定電話を製造する珠海にある工場では、勤務する中国人社員 10 人あまりが抗議行動を行ったため、工場の操業が一時停止した。 (治安太郎、まいどなニュース = 7-4-23)


日系企業の中国事業、9 割超が「拡大・維持」を志向、中国のビジネス環境に対する日系企業の現状認識

在中国の日系企業の団体である中国日本商会は 6 月 14 日、中国のビジネス環境に関する日系企業の現状認識をまとめた「中国経済と日本企業 2023 年白書」を発表した。 中国日本商会の会員は、中国に拠点を置く日系企業 8,300 社余り。 2023 年版の白書は、2022 年 8 月から 9 月にかけて実施されたアンケート調査を基に作成された。 注目されるのは(調査期間中には)新型コロナウイルスの厳しい防疫措置の影響があったにもかかわらず、調査に応じた日系企業の 64.9% が「2022 年の損益は黒字を見込んでいる」と回答したことだ。

さらに、今後の中国事業の展開について規模を「拡大」または「現状維持」すると回答した日系企業が、全体の 9 割超に上った。 具体的には事業規模を拡大するとの回答が 33.4%、現状維持が 60.3% だった。 なお、中国事業を「縮小」または「第三国に移転ないし撤退」と回答した日系企業は 6.3% にとどまった。

ビザ免除の復活など要望

中国では 2022 年 12 月以降、新型コロナの防疫対策が大幅に緩和された。 その後のビジネス環境の変化について、白書では「防疫対策が中国事業に与える影響や、日中間の往来に関するほとんどの問題が解決した」と評価した。 そのうえで中国日本商会は、中国観光客の日本への団体ツアー解禁や、中国を訪れる日本人への 15 日以内の短期ビザ免除措置などの早期復活を(中国政府に対して)要望した。

「日系企業としては、中国が引き続き改革に力を入れ、先行きを予見しやすい、より公平で透明度の高いビジネス環境を整備してもらいたい。」

パナソニックホールディングスの副社長(グループ中国・北東アジア総代表)で、2023 年 4 月に中国日本商会の会長に就任した本間哲朗氏は、白書発表の記者会見でそう期待を表明した。 (曾佳 = 財新/東洋経済 = 6-29-23)


ホンダが、マツダが「脱中国」 チャイナリスク回避へ … 日本企業、今こそ行動のとき

米中対立が激化する中、米国のブリンケン国務長官と中国の秦剛外相が 6 月 18 日に北京で会談し、緊張が続く中でも双方が対話を継続することを確認し、秦剛外相が米国を今後訪問することで一致した。 18 日の会談は夕食を含め7時間半に渡ったが、それだけ双方の間で課題が蓄積していることが浮き彫りとなった。 会談では当然のごとく大きな隔たりが見られ、秦剛外相が「台湾は中国の核心的利益の中の核心であり、両国関係の最も突出したリスク」だと指摘したように、台湾問題は自由主義と権威主義の戦いの最前線となっている。

一方、こういった不透明な世界情勢に、日本企業の間で懸念が広がっている。 台湾有事となれば必然的に日本と中国との関係は一気に冷え込むことから、日本企業の間では今のうちからチャイナリスクを回避しようと、これまでの中国依存から脱却する動きが広まっている。 そして、中国では 7 月から反スパイ法の改正案が施行されるが、スパイ行為の定義が国家機密の提供に加え、国家の安全と利益に関連する資料やデータ、文書や物品の提供や窃取もスパイ行為とみなられるようになる。 これによってますます在中邦人が拘束される可能性があり、日本企業の脱中国に拍車がいっそう掛かるかも知れない。

昨年、日本の経済総理とも言われる経団連会長を務めたキャノンの御手洗冨士夫会長兼社長は、こういった懸念に対し、工場など海外の生産拠点を時代に見合った体制に見直す必要があり、主要な工場を日本に回帰させるもしくは安全な第 3 国に移転させる考えを示した。 そして、大手製造業を中心に既に行動に移し出す企業も見られる。

たとえば、大手自動車メーカーのホンダは昨年自社が持つ部品の国際的サプライチェーンを再編し、中国とその他地域を切り離す方針を打ち出し、マツダも新車の製造で使用する部品の中国依存度を下げていく方針を明らかにした。 最近でも、タムラ製作所は中国の工場で生産している芝刈り機などをルーマニアの工場でも生産する計画を明らかにし、日本タングステンも主要製品の原料であるタングステンを価格の安い中国産にほぼ 100% 依存してきたが、今後は北米や欧州からの調達を強化し、LIXIL も米国向け水回り製品の製造拠点を中国からメキシコにシフトさせる方針を発表した。

中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業を中国と切り離すことは日本経済の崩壊を繋がりかねない。 しかし、中国が台湾産のパイナップルや柑橘類などを、オーストライリア産の牛肉やワインなどをそれぞれ突然ストップしたように、今後日中関係の冷え込みによって中国側から経済攻撃が展開される可能性が十分にある。 そうなれば、中国に部品や原材料を依存する日本企業は、ある日突然生産できなくなり、そもそもビジネスができなくなる恐れがある。

中国からの完全撤退は難しいとしても、中国依存度を下げ、その部分を国内回帰したり、第 3 国への依存を深めたりするなど、リスク回避を目指した行動を取っていく必要がある。 まだ何もしていない企業は、今こそ行動のときだ。 (まいどなニュース = 6-19-23)

◆ 治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。 各国の政治や経済、社会事情に詳しい。 各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

〈編者注〉 中国に進出した日本企業といっても、製造コスト低減が目的の企業と中国市場の需要を満たすのが目的の企業に分かれます。 日系企業と一つにくくっての議論など成り立ちません。 中米関係が更に深刻な中でも、「テスラ」の製造工場は上海にあるのです。


「すしブーム」の中国、くら寿司が初出店 「開拓の余地は大きい」

回転ずしチェーン大手のくら寿司が 15 日、中国・上海に中国 1 号店を出店した。 2032 年までに 100 店舗を展開する計画。 日本国内はライバル店との競争が激化しており、すしチェーンは成長のため海外出店を加速させている。 1 号店は日本人も多く住むエリアのショッピングモール内に出店。 ボックス席を中心に 220 席あり、日本の平均的な店舗よりも大型だ。 皿 5 枚でくじが引けるなど日本と同じシステムを採用した。 すし類の価格は多くが 1 皿 12 元(約 237 円)で日本の 2 倍程度。 現地法人の近藤和人総経理は「上海では受け入れられる価格帯だ」と説明した。

中国では 10 年前後から日本の回転ずしが進出し、外食の定番として根付いている。 中国の調査会社によると、中国の消費者の 68% がすしが好きと回答。 日本料理で断トツの 1 位だ。 「ネタが新鮮でおいしい。 すしは種類が多くて健康的なので大好き。」 くら寿司の開店直後に友人と訪れた許泳詩さん (23) は、サーモンのにぎりずしをほおばりながら満足げにこう話した。 上海市内には、はま寿司やがってん寿司などがすでに店舗を構え、週末には 1 時間待ちも珍しくない。 業界 1 位のスシローも広東省を中心に 24 店舗ある。くら寿司は大手では後発になるが、近藤氏は「中国は人口あたりの回転ずし店はまだまだ少ない。 開拓の余地は大きい。」と話す。

日本市場の飽和ですしチェーンは海外に商機を見いだす。 原材料が高騰し、価格競争の厳しい国内よりも料金を高く設定でき、収益を確保しやすいためだ。 くら寿司は 30 年までに海外店舗を今の 4 倍の 400 店に増やして売上高を 1,500 億円とし、海外売上比率を約 4 割に引き上げることを目指す。 とくに中国は重要市場で、進出済みの米国や台湾を上回るペースで出店する。 ただ、日中関係が上向かないなかで過度な集中は経営リスクを高める恐れもある。 (上海 = 井上亮、asahi = 6-15-23)


GS ユアサ、瀋陽の鉛蓄電池企業の事業終了へ 経営改善見込めず

[東京] ジーエス・ユアサ コーポレーションは 28 日、子会社の GS ユアサが 2016 年 10 月に公表していたパナソニックストレージバッテリー瀋陽(中国、PSBS)の持ち分の譲り受けを計画通りに行わないことを決めたと発表した。 広報担当者によると、中国での事業環境が厳しく、経営改善が見込めないため事業を終了する方針だという。 GS ユアサはこれまでに鉛蓄電池事業を手掛ける PSBS の持ち分の一部を取得し、経営支援を行ってきていた。 (Reuters = 3-28-23)


中国、65 歳以上が 2 億人に = 高齢化で日本企業に商機

中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は 10 日、習近平国家主席を 3 選した。 習氏による長期政権が本格始動したが、中国では 65 歳以上の人口が 2 億人を超え、高齢化や人口減といった課題が山積している。 李克強首相は 5 日に開幕した全人代で「養老サービスを充実させる」と表明。 高齢化で中国の先を行く日本には知見を積んだ企業が多く、商機になる可能性がある。

上海から車で 3 時間ほどの江蘇省無錫市で 2 月末、パナソニックホールディングスが現地企業と共同開発した「スマート都市」が街開きし、式典が行われた。 「日本で 20 年以上蓄積した経験を中国に持ち込んだ(本間哲朗副社長)」と胸を張る全 1,170 戸には、高齢者の健康状態を排せつ物からチェックできる同社製トイレなどが設置されている。 販売価格は 1 戸当たり 300 万元(約 5,900 万円)からと高価だが、すでに半数以上が売れたという。

中国側からの注目度は高く、式典会場には地元メディア記者の姿も目立った。 同市の担当者は「(日本から)先進的な理念や技術を学びたい」と話した。 中国では 30 年以上続いた「一人っ子政策」の影響で少子高齢化が急速に進んでいる。 国連の推計では、2034 年には全人口の 21% 超を 65 歳以上が占める「超高齢社会」に突入する見通しだ。 社会保障費の膨張が見込まれる中、半世紀以上据え置かれている定年退職年齢の引き上げを求める声も一部で強まっている。

湖北省武漢市で今年 2 月、医療手当の削減に怒った高齢者らによる大規模デモが発生した。 社会保障費の抑制は待ったなしだが、共産党政権にとっても「痛みを伴う改革は鬼門(エコノミスト)」だ。 共産党機関紙系の環球時報(電子版)は 2 月、日本などが高齢化対策として推進した定年延長を高く評価する記事を掲載した。 中国で今後、高齢化先進国の日本に学ぶ機運が盛り上がりそうだ。 (jiji = 3-10-23)

前 報 (9-10-21)


ダイキン、青山商事、アップル … 「脱中国」企業が急増する数々の理由

生産拠点を中国から他のアジア新興国などに分散する企業が増えている。 JETRO によると、2021 年、中国の製造業作業員の月額基本給は 651 ドル(約 8 万 8,000 円)。 対して、インドネシアは 360 ドル(約 4 万 9,000 円)、インドは 316 ドル(約 4 万 3,000 円)、ベトナムは 265 ドル(約 3 万 6,000 円)。 バングラデシュは 105 ドル(約 1 万 4,000 円)とさらに低い。 企業がコストカットを進めるためには、労働コストが低い ASEAN 地域などでの事業運営体制の強化が、これまで以上に重要となっている。 また、習近平政権の台湾侵攻の可能性など、地政学リスクも無視できないファクターである。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国依存度を下げるため事業運営を見直し

最近、中国に見切りをつけて出て行く企業が増加している。 わが国企業でも、アパレル業界をはじめ複数の業界で生産拠点を東南アジアなどに移す企業が増えている。 世界的に見ても、米国や欧州の企業も中国依存度を下げるため事業運営を見直している。 その背景には、中国経済の成長率の低下や生産コスト増加などの構造変化がある。 中国の生産年齢人口は既に減少局面に入っている。 これまでのように、中国が労働コストの低さを武器にするのは限界を迎えている。

加えて、習近平政権の強引ともいえる台湾に対する姿勢は、一段と緊迫感を高めている。 また、先端分野における米中の対立も激化する可能性が高い。 いずれも短期間で解決されることは考えづらい。 共産党政権の社会、経済政策運営の先行き不透明感により、海外企業を中心に、中国における設備投資が一段と不安定に推移するものと予想される。

リスク分散のため脱中国を急ぐ企業の急増

ここにきて、生産拠点を中国から他のアジア新興国などに分散する企業が増えている。 わが国のアパレル業界では脱中国が一段と鮮明だ。 象徴的な企業に、ビジネススーツなどを手掛ける青山商事がある。 2014 年からインドネシアで生産を開始した同社は、今後も対中依存を低下させる方針だ。 なお、財務省の貿易統計で 2017 年と 2021 年を比較すると、わが国の「スーツの輸入」は、中国からの割合が 47% から 41% に低下している。 一方、ベトナムからは 10% から 11%、インドネシアからは 12% から 15% に増加している。

脱中国の動きは、アパレル以外にも広がる。 空調大手のダイキンは、中国からの原材料調達に頼らずフッ化水素酸を生産する技術を生み出した。 同社は中国製の部品が調達できなくてもエアコンを生産する体制も構築している。 海外企業も生産拠点の脱中国を進めている。 象徴的な企業は、米国のアップルだ。 アップルは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンが河南省鄭州市で運営する工場にて iPhone や iPad を生産してきたが、近年インドやベトナムにシフトしている。 また、米ナイキはスニーカーの生産を中国からベトナムやインドネシアなどに移管している。

このように、つい最近まで「世界の工場」としての地位にあった中国の存在感が、急速に低下している。 1978 年に始まった「改革開放」以降、中国は経済特区を設けて海外企業を誘致し、効率性の高い、あるいは先端分野の生産技術の移転に取り組んだ。 加えて、農村部から沿海部の工業地帯へ、安価かつ豊富な労働力が供給された。 それらが、中国への直接投資の増加を支えていた。

また、共産党政権は国有企業などに低コストで土地を供給し、急速にサプライチェーンも整備した。 こうして世界の企業は最もコストが低い場所でモノを生産し、世界全体の需要動向に応じて迅速に供給する体制を確立できた。 一時は、「世界にデフレを輸出している」といわれたほど、中国の輸出競争力は強かった。

脱中国を加速する重大なファクター

しかし近年、中国の経済構造は急激に変容し始めている。 その一つに、中国の生産年齢人口(15 - 64 歳)は 2013 年にピークに達して以降、減少している。 1979 年から 2014 年まで「一人っ子政策」が実施された影響は大きい。 経済全体で労働投入量が減少すると、賃金には上昇圧力がかかる。 JETRO が公表した「新型コロナ禍 2 年目のアジアの賃金・給与水準動向」によると、21 年、中国の製造業の作業員の月額基本給(平均値)は 651 ドル(1 ドル = 135 円換算で約 8 万 8,000 円)だった。

それに対して、インドネシアは 360 ドル(約 4 万 9,000 円)、インドは 316 ドル(約 4 万 3,000 円)、ベトナムは 265 ドル(約 3 万 6,000 円)。 バングラデシュは 105 ドル(約 1 万 4,000 円)とさらに低い。 世界情勢の影響もあり当面、エネルギー資源は高止まりが予想される。 企業がコストカットを進めるためには、労働コストが低い ASEAN 地域などでの事業運営体制の強化が、これまで以上に重要となっている。 また、地政学リスクも懸念される。 米軍内部では、「想定よりも早い時期に中国が台湾に侵攻する」との見方が高まっている。 経済安全保障の観点から、各国企業にとって台湾リスクへの対応は急務だ。

加えて、半導体などの先端分野における米中の対立も先鋭化している。 米国は中国への最先端の半導体、その製造装置などの禁輸措置を強化している。 人権問題においても、新疆ウイグル自治区やチベット、香港、ゼロコロナに抗議する「白紙運動」への対応をめぐって中国への懸念は高まっている。 米国の対中制裁を順守し、社会の公器としての責任を果たすためにも、脱中国の重要性は増しているといえる。

そうした中で、地域的な包括的経済連携 (RCEP) 協定が発効し、ASEAN とわが国などの連携が強化されたことは大きい。 各国の企業がコスト削減と地政学リスクに対応しつつ収益率を高めるために、RCEP など多国間の経済連携はまさに「渡りに船」の役割を果たしている。 また、海外企業の誘致を進めて雇用・所得環境を強化するために、主要先進国はこれまで以上に産業補助金政策を強化し始めている。

中国への直接投資と株式投資それぞれの展開

今後、海外企業の対中投資は不安定に推移するだろう。 工場建設などの直接投資に関しては、中国から他の国や地域へのシフトが増えることは間違いない。 ただし、共産党政権は「中国製造 2025」を推進するために、海外企業と中国企業の合弁事業をより重視し、「技術の強制移転」のリスクが高まるのではとの見方も増えている。 加えて、ゼロコロナ政策による個人消費の停滞、不動産市況の悪化などによって、販売面でも海外企業への逆風は強まるだろう。

また、中国企業にとっても事業運営コストの引き下げは大きな課題になっている。 ユニクロなどの生産拠点の移管に伴って、中国の縫製大手である晶苑国際集団(クリスタル・インタナショナル)は、ベトナムなどでの生産能力強化に取り組んでいる。 企業戦略としては、デジタル技術などを用いて中国の個人消費を取り込みつつ、いかに生産コストを引き下げるかが問われている。

一方、株式投資の観点で考えると、直接投資とは異なった展開が予想される。 台湾問題の緊迫化や個人消費のさらなる減少懸念が高まった場合には、リスク回避の動きが鮮明化し、中国本土株や香港株は下落するだろう。 その場合、海外投資家は短期目線で押し目の買いを入れやすい。 ポートフォリオ投資は周期的に減少と増加を繰り返す展開が予想される。

いずれにしても、共産党政権の経済・社会政策がどう運営されるかが命運を握る。 現時点では、共産党政権は情報統制のために IT 先端企業への締め付けを一段と強める公算が大きい。 また、台湾に対する圧力への懸念は増すばかりだ。 今後、中国への直接投資は徐々に減少していくと考えられる。 世界経済を下支えするというよりも、下振れ要因として、中国経済の存在感はこれまで以上に無視できなくなっている。 (真壁昭夫、Diamond = 12-20-22)


脱・中国依存、大阪が先行 進出企業は全国で 1,600 社減

中国を巡る地政学リスクの高まりを受け、日本企業の間でサプライチェーン(供給網)の中国依存を抑える動きが出てきた。 現地法人などを通じて進出する企業の割合は 2022 年に 0.87% と、過去最高だった 12 年から 0.14 ポイント低下した。 都道府県別では大阪府の減少幅が最も大きい。 国内回帰を促す好機とみて、自治体は支援に動く。

データで読む地域再生 : 帝国データバンクが 10 - 22 年に 7 回にわたって日本企業の中国進出状況を調べたデータを独自に再集計し、中国に現地法人・駐在所の設置や関係会社への出資を通じて進出する企業数とその割合を都道府県別に算出した。 進出企業は 22 年 6 月時点で 1 万 2,706 社。 12 年(1 万 4,394 社)から 1,600 社以上減った。

都道府県別では大阪府が 0.52 ポイント低下し、1.83% となった。 次いで低下幅の大きい順に、長野県(0.33 ポイント)秋田県(0.23 ポイント)、香川県(0.19 ポイント)となった。 大阪府は戦後、大阪市中央区の船場が繊維問屋街として栄えた経緯などから、関連産業が集積する。 中国で改革開放が進んだ 1980 年代以降、人件費の安い中国への進出が相次ぐなど結びつきは強い。 進出率はピーク時の 12 年に全国 1 位の 2.36% に達した。

府内のあるアパレル企業は 22 年夏までに、中国の縫製工場から撤退した。 米国が少数民族のウイグル族を強制労働させている疑いがあるとして中国産の綿製品の輸入を禁じたためだ。 中国で海外製品の不買運動に発展するなど米中対立が先鋭化し、工場があっても良質で安価な綿素材を仕入れづらくなった。 人件費の安い東南アジアへのシフトが最有力だが、中国の賃金水準上昇と円安進行で「コスト面でみても日本とさして変わらない」と国内回帰も検討する。

キヤノンやアイリスオーヤマなど製造大手の撤退も相次ぐ。 取引先の中小企業は供給先が細り、撤退・継続の判断を迫られるケースが増えている。 東京都内で精密ネジを製造する中小企業は、取引先の重電メーカーの中国工場閉鎖を受けて中国の関係会社から手を引いた。 新型コロナウイルス禍での「ゼロコロナ」政策は、中国ビジネスのリスクを顕在化させた。 経済産業省はサプライチェーンの見直しに伴って国内の生産拠点などを整備する日本企業に補助するため、20 - 22 年度に約5600億円を充てた。 補助採択先は累計 439 社あり、大企業が 173 社で中小企業が 266 社だった。

都道府県別では愛知県が 29 社と最も多く、兵庫県(26 社)、大阪府(20 社)、長野県(19 社)と続く。 ロシアのウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンの見直しも支援対象のため、すべてが中国からの国内回帰というわけではないものの、補助採択先の多い都道府県ほど中国進出率の低下幅は大きい傾向にあった。 国内の自治体は国内回帰を促すチャンスとみて動く。 熊本県は 20 年 6 月、経産省の補助金の要件を満たす県内企業に対し、独自の補助金を補助率2倍で利用できるようにした。

三重県も 20 年秋、経産省の補助金で対応しきれない中小零細にも照準を合わせ上限 3,000 万円の設備投資補助を始めた。 22 年 11 月末までに自動車産業や半導体関連の金属加工業など 51 社に補助。 総額で 20 億 - 30 億円の設備投資を呼び込み、新規雇用も 40 - 50 人分創出したという。 同県の担当者は「補助先の企業は中国からの撤退や事業を縮小する代わりに国内の生産を増やしており、これまで取引がなかった企業からの受注機会も増えている(企業誘致推進課)」と話す。 (桜井佑介、高橋圭介、近藤康介、小山隆司、nikkei = 12-9-22)