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海外の取引先工場 労働環境どう改善 ファストリの場合

グローバル企業に対し、世界各地に散らばる取引先の工場の劣悪な労働環境の責任を問う動きが近年強まっています。 重大な問題が発覚すれば自社のブランド価値が傷つきかねないだけに、企業は対応に追われています。 こうした事態を避けるため、今年創立 100 周年を迎えた国際労働機関 (ILO) による労働環境改善のプログラムに参加する企業が増えていて、ユニクロを展開するファーストリテイリングもその一つです。

「声聞いて」ファストリに訴え

「ユニクロは私たちの労働環境に責任がある。 柳井(正)社長、東京で会ってください。」 昨年 10 月、インドネシアから 2 人の労働者が来日し、東京都内にあるユニクロの店舗前で訴えた。 2 人は、ジャバ・ガーミンド (JG) 社労働組合のテディ・プトラ委員長と同じ職場で働いていたワーニ・ナピツプルさん。 2 人が働いていた JG 社の主力工場はジャカルタの西にあるタンゲラン地区にあり、ファストリから、ユニクロの製品の縫製を受託していた。

2 人の支援者らによると、JG 社は 1992 年に設立された。 2012 年からユニクロの服の生産をしていたが、14 年 10 月、品質や納期に問題があるとして契約を打ち切られた。 大口の注文を失った JG 社は 15 年 4 月に倒産した。 倒産時に 1,000 億ルピア(約 7.9 億円)の未払い賃金や手当、退職金があった。 未払い賃金の約 250 億ルピア(約 2 億円)は、管財人によって支払われたが、インドネシアの労働法で定められた退職金は払われていないという。

ファストリは「インドネシアの法令と JG 社との契約に従って取引を終了した。 倒産に責任はなく、元従業員に金銭を補償する義務はない。」と主張する一方で、JG 社で働いていた労働者に別の働き先を斡旋することを提案。 ただ、労組側が未払い金の支払いを優先する意向を示し、交渉はまとまっていない。 JG 社の元従業員が問題視しているのは、退職金だけではない。 ファストリと取引していた当時の労働環境だ。 JG 社が最低賃金を守っていたかどうか、残業代をきちんと支払っていなかったのではないか、という問題点も指摘されている。 例えば 14 年当時の基本給は 220 万ルピアで地域の最低賃金(月額 240 万ルピア)を下回っていたという。

広がる ILO 主導の監査

グローバル企業が、サプライチェーンの劣悪な労働環境をめぐって責任を追及されるケースが増えている。 13 年 4 月にバングラデシュ・ダッカ近郊の商業ビル「ラナプラザ」で崩落事故があった。 大手アパレル企業から仕事を請け負っていた縫製工場の従業員 1 千人以上が犠牲になり、サプライチェーンの労働問題が注目されるきっかけになった。 このため、グローバル企業にも取引先の工場を自分の負担で監査する動きが広がっている。 欧米では、サプライチェーンの労働条件の監視を義務付ける法制定が相次いでいる。

ファストリも 04 年にサプライチェーン向けの指針を制定。 取引先の労働環境を自前で監査してきたが、JG 社以外でも、サプライチェーンの労働状況について NGO などから指摘を受けた。 そこで、ファストリは 15 年 12 月、インドネシアで「ベターワークプログラム」という仕組みに参加した。 ベターワークは、ILO と国際金融公社 (IFC) が主導し、サプライチェーンの労働環境を共同で監査して改善を促す仕組みで、06 年 8 月に始まった。 現在 8 カ国で行われ、H & M、ナイキ、GAP などの著名企業が参加している。

プログラムの 1 サイクルは 1 年。工場の監査は事前通知なく 280 項目について行う。 ベターワークでは、労使の代表からなる協議体を作り、話し合いを進めながら改善を図る。 監査結果の一部は公開される。 工場でつくった製品を購入する企業がベターワークに参加する場合、独自の監査をやめて、ベターワークに一本化する。 取引先工場が労働条件を改善しようとする限り、取引を打ち切らないことも条件。 サプライチェーンに対する影響力を利用して、良好な労働環境を広げることが目的だからだ。

グローバル企業にとっては、各国に散らばるサプライチェーンを自腹で監査するよりもコストは少なくて済む。 一方、複数のグローバル企業と取引しているサプライチェーンにとってもメリットがある。 「5 つのバイヤーと取引していると 5 回監査を受ける必要がある。 ベターワークに参加すれば 1 回ですむ」と、ベターワークインドネシアのモハマド・アニス運営担当マネジャーは話す。

労使間の対話を促すことも特徴だ。 インドネシアでは労働組合の中央組織が分立しているが、「協議体に複数の労働組合の代表が参加することで、労働側の交渉力が高まるメリットもある」という。 インドネシアの参加工場は 215。 対象労働者は約 40 万人で、その 8 割が女性だという。 昨年 1 年の監査では 8 割の企業に何らかの問題があった。 ファストリがベターワークの対象にしている工場は、インドネシアで直接取引のある 17 の主要工場の半数。 今後、他の工場やインドネシア以外の国での展開を検討する予定だという。 (編集委員・沢路毅彦、asahi = 8-5-19)


ユニクロが 10 月にインド初出店 立て続けに 3 店開業へ

ユニクロは今秋、インド市場に初出店する。 1 号店は 10 月中にオープンさせ、2、3 号店もほぼ同時期に開く計画だ。 いずれもデリー首都圏に位置し、売り場面積は、千平方メートル超(3 号店) - 約 3,300 平方メートル(1 号店)。 3 店舗をほぼ同時に出すことで、先行してインドに進出した ZARA や H & M に対抗し、知名度の浸透と市場開拓を急ぐ。 価格は日本並みを想定しているという。 運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は念願のインド出店について「ユニクロの世界戦略にとって重要な一歩」とコメント。 ユニクロでは、海外売上高(8,963 億円)が国内売上高(8,647 億円)を 2018 年 8 月期に初めて上回った。 (asahi = 7-17-19)


ユニクロ、7% 増益 国内不安かき消す海外成長

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが 11 日発表した 2018 年 9 月 - 19 年 5 月期の連結純利益(国際会計基準)は前年同期比 7% 増の 1,586 億円だった。 国内消費の不透明感という逆風を跳ね返し、海外ユニクロ事業がけん引した。 3 期連続の最高益を見込む 19 年 8 月期の通期予想は据え置いた。

国内は 10 月に消費増税を控える。 軽減税率の導入などで影響は和らぐとの見方もあるが、衣料品は少なからず悪影響を受けそうだ。 第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「食料といった必需品以外は相対的に影響が大きくなる」と指摘する。 国内ユニクロの売上高(14 年 8 月期以降は売上収益)営業利益率は、09 年 8 月期には20% 台を確保していたが、18 年 8 月期は 13% 台にとどまった。 人件費などの増加に加えて「為替変動による調達価格の上昇が響いた(担当アナリスト)」とみられる。 国内衣料品市場が縮小するなかでもユニクロはシェアを伸ばしてきたが、採算の悪化は鮮明だ。

その国内のブレーキを跳ね返せるだけの力が、海外ユニクロ事業にはついてきた。 18 年 9 月 - 19 年 5 月期では海外ユニクロ事業の営業利益は 11% 増の 1,248 億円で、国内ユニクロ事業の 967 億円(約 2 割減)を上回った。 中国本土や香港、台湾で構成する「グレーターチャイナ」が好調だった。 北京や上海といった「1 級都市」に加えて、成長性が高いと見込む杭州や南京など「2 級都市」にも積極出店している効果が出ている。

QUICK・ファクトセットによると「ZARA (ザラ)」を展開するアパレル最大手のインディテックス(スペイン)の 19 年 1 月期の売上高は 3 兆 3,823 億円。 ファストリの 18 年 8 月期実績の約 1.6 倍だが、売上高の伸び率はファストリが 14% とインディテックスの 5% を上回る。 競争の激しい世界のアパレル市場で互角以上の勝負ができている。 ファストリの柳井正会長兼社長は中国市場の攻略の先に、人口大国・インドを見据える。 市場関係者の間では「アジアを中心とした海外市場は成長余地が大きい(JPモルガン証券の村田大郎氏)」と期待は高い。 (鈴木孝太朗、nikkei = 7-11-19)


ファストリ、入社 3 年で年収 3,000 万円も 幹部に登用

ユニクロを運営するファーストリテイリングは優秀な若手の確保に向けて 2020 年春にも人事制度を見直す。 入社後最短 3 年で子会社の幹部などに抜てきする。 年収は 1 千万円を超え、欧米勤務では最大 3 千万円程度とする。 ソニーが人工知能 (AI) に詳しい新入社員を優遇するなど、横並びの給与や昇進体系の見直しが進めば成果主義が浸透し、企業の生産性向上にもつながっていく可能性がある。

ファストリの柳井正会長兼社長が方針を明らかにした。 新たな人事では入社後に店舗や IT (情報技術)などの経験を積ませ、3 - 5 年で国内外の経営幹部として登用する。 時期や地域によって報酬は異なり国内で 1 千万円超、欧米では 2 千万 - 3 千万円を想定する。 有価証券報告書によると、18 年 8 月末時点の平均年収は 877 万円だ。 新入社員は接客や店舗運営を学ぶためほぼ一律に店舗に配属される。 20 年春入社の社員からは一律ではなく、個人の能力に応じて IT やデザインなど専門性が高い部門にすぐに配属する人を増やしていく予定だ。

柳井社長は「優れた人材にはチャンスを与え、それに見合った教育や待遇が必要だ」と説明する。 問題を改善し物事を変えていく力や常に新しい事に挑戦する積極性といった資質を重視する。 新人の段階から専門性や個人の能力に応じたポストを与えて個別に育成していく。 必要とされる能力やスキルを持つ人材に高い給与で報い、若手の高度な能力を身に付け成長しようとする意欲を高める。

同社の場合、数年前に採用サイトで公開した年収早見表(当時)では入社後、一番下の等級は平均で 400 万円弱だった。 裁量の権限が強い「スーパースター店長」では平均 1 千万円を超え、執行役員では 1 億円も少なくないとされる。 日本企業は年功序列が根強く、能力の高い若手の意欲を失わせ、外資などに優秀な人材を奪われることも多い。 能力主義を徹底し優秀な若手を引き寄せ、日本企業や経済の成長を促す。

柳井社長は接客を担うパートやアルバイトからも優秀な人材を引き上げるため、優秀なら時給を高くして地域の正社員並みの給料にする予定だ。 ファストリは 20 年春にユニクロなどの総合職の初任給を 25 万 5 千円に引き上げる方針を示した。 入り口で有望な人材を取りこぼさない策と育成の両輪で人事改革を進める。

ファストリはこれまでも人事制度改革に取り組んできた。 12 年から学年を問わず大学生の通年選考を進め、大学 1 年生にも内々定を出す。 14 年には働く地域を限定した「地域正社員」を本格的に導入。 短い日数や短時間の勤務など柔軟な働き方を認め、優秀な人材を取りこぼさないようにしてきた。 本社勤務への昇格を含めキャリアアップの道筋も示す。 衣料品会社で世界一を目標にする同社は、世界中で優秀な人材が不可欠となる。 優秀な素質のある人材の獲得や育成方法を充実させ、学生らから選ばれる企業を目指す。 (nikkei = 6-23-19)


ユニクロ、日本事業 CEO に初の女性 赤井田真希氏

ファーストリテイリング傘下のユニクロが、日本事業の最高経営責任者 (CEO) に初の女性を起用したことが分かった。 ファストリの赤井田真希グループ執行役員 (40) で、6 月からユニクロの日本事業の CEO に就任した。 店舗運営などを熟知した赤井田氏に難しさを増す国内のユニクロ事業の成長を託す。

赤井田氏は 2001 年、ユニクロに入社した。 新潟県や東京・銀座、中国・上海などの店舗で働き、人事部長も経験した。 直近の吉祥寺店では店長を務め、全国有数の繁盛店を切り盛りする店長として知られていた。 ユニクロの日本 CEO は長年、ファストリの柳井正会長兼社長が務めていたが、18 年秋に桑原尚郎グループ上席執行役員が就任した。 赤井田氏は、少子化の影響などで店舗拡大が難しい国内事業で収益の底上げを目指す。 ファストリは女性の登用を一段と進める。

これまで人事部にあった女性活躍推進室を社長直轄とした。 そのトップに 6 月、笹川平和財団(東京・港)の小木曽麻里ジェンダーイノベーショングループ長が就任。 女性の活躍推進などを担当する。 小木曽氏は旧日本長期信用銀行の出身で ESG 投資などが専門だ。 17 年に運用総額 100 億円規模の「アジア女性インパクトファンド」を設定した。 女性の機会創出やジェンダーの格差是正に取り組んでいる。

ファストリは女性社員の活躍を支援している。 管理職に占める女性割合は 18 年度に 36% と、国が 20 年までに求める 30% (課長職以上)を超えた。 ただ、柳井氏が考える「女性執行役員 50% 以上」にはほど遠い状況だ。 (nikkei = 6-15-19)


GU の 7,480 円スーツがスゴすぎる アパレル関係者も嘆く理由

「あんなの売られちゃ終わりですよ」と何人かのアパレル関係者が嘆いていた GU の超格安スーツです。 何しろ上下で約 7,000 円。 しかも、素材感はペラペラではなく肉感があり、ビジネスでも問題なく使える。 着心地もいいし、リネンやニットなどのバリエーションも豊富。 シルエットは細身で美しく、パンツは裾がキュッと細いテーパード型、ジャケットは着丈がやや短めで街着としても応用できる。

ユニクロは感動スーツシリーズ、GU はこの超格安スーツシリーズが大当たり。 紳士服業界はそのあおりを受けて業績低迷に喘いでいます。 まさかフォーマルシーンまでファストファッションが獲りにくるとは私も思っていませんでした。 恐ろしや …。 社会人であれば誰しもスーツは持っているでしょう。 ベーシックなネイビーの上下や街着で使うブラックのセットアップなどは手持ちがあるかと思います。 しかしながら、今回のアイテムのようにカーキのセットアップはなかなか手が出ないはず。

リネンやニット素材も、よほどおしゃれじゃなければ勇気が出ません。 でも、7,000 円なら「まあいいか」と挑戦してみる気にもなる。 これってすごく意義ある仕事だと思うのです。 基本的に洋服はみんなが選ばないおしゃれな素材感やおしゃれなデザインほど高いもの。 当たり前ですが、「おしゃれな人」は「おしゃれじゃない人」より少ないわけで、こだわればこだわるほど数が売れなくなる道理です。 すると、おしゃれなアイテムは単価で稼ぐ以外なくなり、値段が高くなりがち。 レディースよりメンズのほうが高いのも同じ理由です。 しかし、ファストファッションはこうした仕組みを一つひとつ壊しています。

今回の GU のセットアップもそう。 素材で遊ぶスーツは基本的に高価なものが多いですが、7,000 円なら手を出しやすい。 思い返してみると、街で見かけるスーツは 10 年前より多様になった気がします。 特殊な素材、特殊な色合いなどはおしゃれな人だけが選ぶ「特権」でしたが、誰でも買いやすい価格で誰でも手に取りやすいように提供することで、スーツに多様な可能性を提示してくれました。 ぜひ手に取ってみてください。 (MB、日刊 Spa! = 5-26-19)


ファストリ、貿易摩擦でも中国快走の秘訣

貿易摩擦の激化で中国経済への懸念が強まっているにもかかわらず、ファーストリテイリングの中国事業が成長を続けている。 4 月に発表した 2018 年 9 月 - 19 年 2 月期の連結決算(国際会計基準)では、中国本土や香港など中華圏がけん引し、海外ユニクロ事業の営業利益が日本国内を上期として初めて逆転した。 ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を使ったデジタルマーケティングが奏功し、中国の若者需要を開拓。 独自の成長力に対する期待が高く、株価は上場来高値圏で推移する。

「決して減速することはない。」 4 月に開いた決算説明会でファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は中国のアパレル市場について強調した。 中国本土や香港、台湾で構成する「グレーターチャイナ」は 1 割を超える増収増益。 とくに中国大陸は営業利益が約 20% 増え、景気減速懸念を一蹴した。

「ユニクロ」が中国の消費者から高い支持を得ているのにはいくつかの理由がある。 1 つは SNS を活用したデジタルマーケティングだ。 「新製品の発表会を店頭で開きます - -。」 SNS を使ったイベントや新商品などきめ細かな情報発信を通じて顧客との接点と拡大。 さらに、情報発信力を持つリーダー的な消費者が SNS を通じて魅力を発信し「お客がお客を呼ぶ現象が起きている。(ファストリの藩寧グレーターチャイナ CEO)」 ネット通販の売上高は前年同期に比べ約 3 割増えた。

2 つ目がブランド力の向上。 「NARUTO - ナルト -」など日本の人気キャラクターとの連携や、防寒性・通気性といった機能を打ち出して支持をつかんでいる。 雑誌などのブランドランキングではユニクロが首位に登場する例が相次ぐ。 もう 1 つが出店戦略だ。 北京や上海といった「1 級都市」だけでなく、成長性が高いと見込む杭州や南京など「2 級都市」にも積極出店し、売り上げを伸ばしている。

ファストリ全体の収益構造にも変化が起きている。 18 年 9 月 - 19 年 2 月期の海外ユニクロ事業の営業利益は 884 億円で、国内ユニクロ事業の 677 億円を上回った。 グレーターチャイナの店舗数は 2 月末時点で 750 店を超え、21 年度には 1,000 店規模まで拡大する計画。 「海外事業がけん引して今後も収益拡大が続く(小売業に詳しいフロンティア・マネジメントの山手剛人氏)」とファストリの成長力を評価するアナリストは多い。

米中貿易摩擦の激化がサプライチェーンに与える影響はどうか。 ファストリグループの主要な取引先縫製工場の約 5 割を中国が占める。 米国向け輸出が全面的に制裁関税の対象となれば中国から米国に輸出する商品は値上げなどの対応を迫られそうだ。 岡三証券の小川佳紀氏は「関税対象が衣料品にまで拡大すれば、コスト増につながる」と懸念する。 だが柳井氏はかねて「(生産地の移管などで)対応できる」と強気の構えを貫いている。

市場全体の伸びも不安材料だ。 中国の小売売上高は直近で前年同月比 8% 台の伸びにとどまり、鈍化している。 家計債務も増えており「借金を前提とした消費がいつ低迷してもおかしくない(第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミスト)」との声がある。

大型連休明けは米中貿易摩擦の悪化懸念で相場全体が大幅安となるなかでもファストリ株は上昇基調で推移し、5 月 10 日には 6 万 5,970 円と上場来高値を付けた。 「日銀の上場投資信託 (ETF) 買いで株式が品薄になったためファストリ株は上昇しやすい」との指摘もあるが、収益の柱に育った中華圏の拡大期待が支えになっているのは間違いなさそうだ。 (鈴木孝太朗、nikkei = 5-14-19)


好調ユニクロ牽引する中国事業 ブランド化成功させた立役者のキャリア

ファーストリテイリングが手がける「ユニクロ」の中国事業が今期(2019 年 8 月期)、売上収益 5,000 億円、営業利益 850 億円に達する見通しだ。 2002 年に上海に中国 1 号店を出店してから 17 年間で、ユニクロの中国事業だけで「無印良品」を展開する良品計画の売り上げ(4,096 億円、2019 年 2 月期実績)を超え、2018 年東証 1 部に再上場を果たしたワールド(2,490 億円、2019 年 3 月期見込み)とオンワードホールディングス(2,407 億円、2019 年 2 月期実績)の 2 大アパレルを足しても届かないところまで拡大している。 中国進出当時 3,441 億円だったファーストリテイリングの売り上げは今期、2 兆 3,000 億円に達する見込みで、中国事業が成長ドライバーになっていることは間違いない。

ユニクロの中国事業は、香港、台湾を含めたグレーターチャイナ地域をカバーする。 4 月 11 日に発表された 2019 年 8 月期上期決算では、景気のスローダウンと暖冬の影響を受けて、経済規模が小さい香港、台湾では減収減益となったが、中国大陸は力強く成長し、売上収益、営業利益がともに 2 割伸びている。 店舗数は 2 月末現在、中国大陸で 673 店舗、香港で 28 店舗、台湾で 67 店舗の計 768 店舗。

「購買力、発信力の強い 1 級都市(北京、上海、広州、深セン)を中心に出店し、1 級都市での店舗数は 200 店舗と中国大陸の店舗数の約 3 割だが、2 級都市、3 級都市も成長ポテンシャルが高いので、攻めていきたい。 今後も年間 100 店舗前後の出店を継続し、2021 年度には 1,000 店舗体制を突破する予定だ。」と潘寧ファーストリテイリング上席執行役員・グレーターチャイナ CEO。

EC が台頭し、ZARA を要するインディテックスや H & M、ギャップなど多くのアパレル小売り企業が欧米で店舗網を再編して店舗数を減らしたり、トップショップやニュールックが中国から撤退する中で、ユニクロの中国事業の出店パワーは他を圧倒している。 ユニクロの中国の店舗でも大量の色柄を整然と並べて、選ぶ楽しさと同時に、品質、デザイン、サービスの良さをアピールしている。

好調な要因は 4 つある。 1 つ はブランディングだ。 「2018 中国著名ブランド・デジタルマーケティング・バリューランキング」で 4 年連続 1 位を獲得したり、「キャンペーンマガジン」の「2018 年グレーターチャイナ・ブランド・オブ・ザ・イヤー」や、現地ビジネス誌「第一財経週刊」による「ゴールデンブランド」に 7 年連続選出されたり。 「ショッピングセンターが選ぶ人気服飾ブランド」でも2018年度1位など高評価を受け、各地の商業施設から好立地・大規模の出店依頼が相次ぐ。結果、好条件でスピード出店できているのも高成長・高収益の理由だ。

2 つ 目は、日本以上に EC 事業が発達している中国で、オムニチャネル化をいち早く整備したことだ。 結果、EC 売上高が順調に伸びている(オムニチャネルとは、あらゆるメディアで顧客との接点を作り、購入の経路を意識させない販売戦略)。 EC の市場規模は中国がダントツで世界トップだ。 ユニクロ中国の EC 売上高は前年同期比 3 割増収を達成し、EC 化率は約 20% に向上。 今期末には単純計算で EC 売上高が 1,000 億円に達することになる。

ユニクロでは、店舗とオンラインが融合した新しい小売りのスタイルを確立。 特に国土が広い中国大陸では、店舗が EC の倉庫の役割を担い、注文が入ると店舗在庫から発送し、購入された商品をいち早く届けられる体制も徐々に整備している。 2021 年 8 月期には中国での EC 化率を 3 割超にしたいと計画中だ。

3 つ 目は、SNS によるマーケティング効果だ。 新商品や新しいイベントを SNS 上で積極的に配信して集客している。 中国大陸では WeChat (ウィーチャット)や Weibo (ウェイボー)などの SNS プラットフォーム上のマーケティングによって、若年層の新規顧客が大幅に増加している。 ファッション業界で消費者に対しても大きな影響力を持つ KOL (キー・オピニオン・リーダー = 日本でいうところのインフルエンサー)の獲得にも成功。 KOL が発信した情報を見て商品を購入した客がさらに自身の SNS で新商品のニュースや着こなしなどについて発信している。

とはいえ、中国事業は初めから順風満帆だったわけではない。 2002 年の中国進出時に指揮を執った中国人責任者は、日本のユニクロの、「老若男女、誰もが着られるカジュアルウエア」のコンセプトをそのまま中国に持ち込もうとして失敗した。 増値税(いわゆる関税)が 17% と高く、同じ商品でも日本よりも価格が高くなるため、当時の中国の所得水準などを勘案して、日本に比べて原価が安くて買いやすい中国向け専用商品を生産・販売した。 現地向けに商品を "ダウングレード" したわけだ。 ところが、ローカルブランドから露天で売られる服まで、ユニクロよりも低価格の商品であふれる中国では、価格は競争優位性にならなかった。

ベーシック・高品質・低価格で知られる「日本のユニクロ」の買い物経験がある中国人にとって、「中国のユニクロ」は別物だと評価され、そっぽを向かれてしまった。 中国初のグローバル旗艦店(当時)の開店に際して、縁起の良い数字「8」にちなんだ 88 色のポロシャツや、中国を代表するアーティストも企画に参加した T シャツブランド「UT」、ジーンズなどでアピール。

転機は、現在、グレーターチャイナ CEO を務める潘氏が手がけた香港進出だった。 潘氏は 1968 年、中国・南京生まれ、北京育ち。 1987 年に来日して日本語学校で学んだ後、1989 年に日本大学商学部に入学。 大学院の修士課程を修了後、1995 年、当時売上高 333 億円、従業員数 397 人というファーストリテイリングに入社。 ユニクロの原宿出店(1998 年)や、急成長を遂げたフリースブーム(1999 - 2001 年)よりも前の、山口に本社を置くいわゆる地方のカジュアル専門店だった時代を知る貴重な人材だ。 店員からスタートし、店長、店舗運営部、中国での生産担当、M & A 担当など、たたき上げで幅広いキャリアを積んでいる。

2005 年に香港の総経理に就任。 最初の大きな仕事として、香港の繁華街の一つ、尖沙咀(チムサアチュイ)にあるミラマーショッピングセンターにワンフロアで 350 坪という大型店を 9 月にオープンさせた。 ローカルブランドと差別化するため、日本と同じイメージの内装とし、価格は日本よりも高く設定するなど、「ブランド化」を徹底。 日本流のサービス提供にも力を入れた。 これが大人気となり、当時、日本以上の高い経常利益を生み出すことになった。

その手腕を買われた潘氏は、中国の経営にも参画。 2005 年末に中国大陸の責任者にも着任。 中国事業の見直しに際して、顧客ターゲットを「中産階級以上」に上方修正。 商品や店舗は日本と同じクオリティに引き上げ、価格は香港と同様、日本よりも 10 - 15% 高く設定。 「ユニクロはサービスである」をスローガンに、日本の代名詞ともいえるサービスを付加価値として提供。 この刷新が、一気にブランドとしての地位を確立し、現在では、「性价比(日本語で「質と価格のバランス」という意味)」がとても高いブランドだと広く認知されるきっかけになった。

2006 年 7 月の上海・ガンフィ店、12 月の上海・正大広場店、一度は撤退した北京に 2008 年 3 月に北京に再出店した西単・大悦城(ジョイシティ)店、そして 2010 年の中国初のグローバル旗艦店「上海・南京西路店」、2013 年に准海中路にオープンした世界最大規模のグローバル旗艦店「ユニクロ上海」が「高付加価値」を決定付けた。

成功の 4 つ 目の要因は、経営者である柳井正会長兼社長の意思を継ぎ、潘氏自ら陣頭指揮を執っている「強いチームワーク経営・全員経営」の徹底だ。 競争が厳しい中国市場で生き残るためには、常に緊張感を持つ強いチームワークの経営体制を確立してきた。 経営陣が日常のコミュニケーションを通じて社員一人一人に明確に経営方針を伝え、徹底した従業員教育を実施している。 (本社の)グローバル本部と強い協働体制を組み、成功事例を学び合うこと、チームワークでの経営を実践することによって、グレーターチャイナの商売を成功に導いていく」と潘 CEO。

「1 店舗 1 店舗、丁寧に『個店経営』をし、収益を高めていく」という通り、「ローコスト経営」も徹底。 「赤字店舗ゼロ」を目指し、直近でも投資額が高かったグローバル旗艦店 1 店舗以外は、すべての旗艦店で黒字を達成。 定員 500 人の採用に対して、10 万人が応募するほどの人気企業になった中国のユニクロ。 今後もさらにグローバルでの成長を加速させる。 (松下久美、BusinessInside = 4-16-19)


ユニクロ「神トップス」が長袖で登場 ワッフルのさりげないおしゃれ感が素敵

毎年秋コーデに大活躍する、ユニクロの「ワッフルクルーネック T (7 分袖)」。 愛用者の間で「神トップス」と呼ばれる人気アイテムです。 今年はなんと「長袖」バージョンが登場し、こちらも人気を博しています。

ホワイト・ピンクも「アラフォーでも着やすい色味」

「ワッフルクルーネック T (長袖)」は、凹凸のある柔らかいワッフル素材で、サラリとした着心地の商品です。 SNS の口コミでは「やや大きめ」との声も寄せられ、ゆったり着こなせます。 一方で手首が締まっているため、ゆるすぎる印象を与えません。 値段は税別 1,500 円とかなりお手頃。 カラーバリエーションも豊富で 8 種類。

実際に購入した人からは、
「かわいいです! とにかくシルエットが気に入りました。 ホワイトとグレーを買いました。 フィットしすぎず、大きすぎずで絶妙! 着心地も良いです。」
「白を購入。 インナーにグレーの極暖を着てみたら透けも気になりません。 ワッフル T は半袖、七分袖と購入しましたが、これがいちばん気に入りました。」
「着心地はやはり最高で、ワッフルがさりげないおしゃれ感を醸し出していてこなれて見えます。 ごま塩色になったグレーの登場が残念との声もありますが、私はとても気に入りました。」
「ホワイトはナチュラルな生成といった雰囲気、ピンクは淡いくすみピンクなので、アラフォーでも着やすい色味です。」
「0 才の子を毎日抱っこし、授乳もするのでニットは着れずこちらを購入しました。 とても着やすく、動きやすく、体のラインも出ずとても良いです。」
といった声が寄せられています。 七分袖も大人気でしたが、長袖の登場を持ち望んでいたユーザーも多かったようです。

ベーシックなデザインで着回し力も抜群の「ワッフルクルーネック T(長袖)」。 合わせ方も、(1) フィット感のあるパンツ、(2) ハイウエストのジーンズ、(3) 今春トレンドの花柄スカート、といったように様々なバリエーションが楽しめそうですね。 (Peachy = 3-22-19)


ユニクロ、韓国国内のアパレルシェア No. 1 に ネットでは「不買運動するんじゃなかったの」の声も

2 月 26 日、韓国の経済専門メディア『マネートゥデイ』は、ユニクロが韓国ファッション市場を「占領」していることについて報じた。 報道によると、2005 年、韓国に上陸したユニクロは現時点で、店舗数が 187 に到達し、毎年「新記録」を出している。 2015 年から 4 年連続で韓国ファッションブランド史上初の年間売上高 1 兆ウォン(約 1,000 億円)を達成し、2013 年から 6 年連続で韓国国内のアパレル市場シェア 1 位に輝いた。

特に、ユニクロのフリース、ウルトラライトダウン、ヒートテックは、韓国で「国民アイテム」と言われ流行。 無難なデザインとカラーのアイテムを比較的低価格で発売したことが人気の理由だと、同メディアは報じた。 ユニクロの韓国人気について、同記事内でアパレル専門家は「ユニクロの服はファッションアイテムというより、生活必需品に近い」、「老若男女すべての人に対して、XS から XXXL まですべてのサイズを備えている」ことが理由だと述べた。

さらに、「ユニクロは、ユニークなデザインや奇抜な配色が売りの H & M との差別化戦略が成功した」、「ZARA、H & M などの欧米アパレルブランドは、サイズが韓国人の体型に合わず、デザイン性も高いので、すべての年齢、好みをカバーすることができない」と付け加えた。

この報道に対し、韓国ネットユーザーからは「どうせスポンサーから依頼されたステマ記事だろう」、「ユニクロはダサい陰キャしか着てないイメージだけど」、「ユニクロを倒せる韓国企業が現れなくちゃ」との声が出た。 一方で、日本のネットユーザーからは「あれ? 不買運動するんじゃなかったの?」、「親日罪だな」、「ユニクロは韓国起源と言い出そう」と、日本製品の不買運動を唱える韓国人を揶揄する声も。

「2018 年 10 月末から元徴用工問題、K-POP グループ・BTS (防弾少年団)の『原爆 T シャツ』、韓国海軍レーダー照射問題などの事件をきっかけに、ユニクロが韓国の日本製品不買運動のターゲットとなりました。(韓国に詳しいライター)」 現状多く存在する日韓問題が解決しない限り、日本製品の不買運動が収束することはないだろう。 (リアルライブ = 3-1-19)


GU "服" 売らない? 次世代型店、自分のアバターで試着体験

GU が新しいタイプの店舗をオープンさせます。 衣料品店なのに店頭では「服を売らない。」 一体どういうことなのでしょうか? 「商品を試着するのは私ではなく、このアバターです。(記者)」 30 日、GU が原宿にオープンする新型店舗。 店内のモニターで自分のアバターを作り、商品を自由に着せ替えることができます。

店頭で商品を販売していないため、気に入った商品は、スマートフォンのアプリから注文する仕組みです。 「この店を出すことで、EC (電子商取引)化率は上がっていくと思う。(ジーユー 柚木治社長)」 GU は、インターネットを通じた購入比率を現在の 6% から将来は 30% に引き上げたい考えで、ファッションへの関心が高い若者や外国人観光客が集まる原宿でネット販売をアピールします。 (TBS = 11-29-18)

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GU が「販売しない店舗」、展示や試着に特化

ファーストリテイリング傘下で低価格衣料品を展開するジーユー (GU) は 5 日、商品を直接販売しない新店を 11 月に東京・原宿にオープンすると発表した。 店舗はサンプル品の展示や来店者の試着に特化し、商品の購入はスマートフォンのアプリ経由などに限定する。 実店舗をショールーム化して、スマホでの購入に抵抗がない 10 - 20 代若年層の取り込みを図る。

展示用と試着品以外の在庫を持つ必要がなくなるため、面積が 600 平方メートルと一般的な GU の店舗の半分程度となり、賃料負担が減る。 商品の補充が不要で、スタッフが商品説明に費やせる時間も増える。 商品はアプリで注文して数日後に自宅や最寄りの店舗に届く。 軌道に乗れば、新形態の店を増やすことを検討する。 (yomiuri = 9-5-18)


ユニクロの北欧 1 号店、スウェーデン出店に 1,000 人行列

最高業績引っ張る海外事業

「グローバルブランドを目指すというが、どこにたどり着けば、グローバルブランドとしての位置を確立したと言えるのか?」

10 月 11 日の決算会見に登壇したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、記者からの質問に対し、「発展途上国から先進国まで、同一商品をグローバルで売る体制をつくったブランドはほとんどない。 しかも、われわれの服に対する根本的な考え方、『LifeWear』、『MADE FOR ALL』はどこの国の人でも理解できるもの。 グローバルブランドとして確立できたんじゃないかと思う。」と即答した。

国内の売り上げを海外が上回る

王立公園に面した一等地に建つ「ユニクロ クングストラッドゴーダン店」。 機能建築の父といわれる有名建築家による建物の性質を生かした店になっている。 「ユニクロ (UNIQLO)」を主軸に展開する同社の 2018 年 8 月期(国際会計基準)の売上収益は 2 兆 1,300 億円(前期比 14% 増)、営業利益が 2,362 億円(同 34% 増)となり、2 期連続で過去最高業績を更新。

好調の要因は海外部門だ。 海外ユニクロの売上高はわずか 1 年間で 1,881 億円積み増し、8,963 億円(同 27% 増)に。 国内ユニクロの売上高 8,647 億円(同 7% 増)を逆転している。 成長をけん引するのは人口が多いアジアだ。 グレーターチャイナ(中国・香港・台湾)で売り上げが約 4,400 億円、韓国で約 1,400 億円、東南アジア・オセアニア地域でも約 1,400 億円に到達。 2019 年秋にはインドとベトナムにも進出する。

柳井社長は、「今後はインド抜きでは世界一になれない。 インドのような独自の文化を持つ巨大な国で本気で商売し成長するため、優秀な企業や個人などのパートナーと協力しながら、基礎からすべて自分たちで仕組みを作る。 過去の成功や失敗の経験を総動員して、フルスイングでホームランを狙う」と意気込む。

一方で、ヨーロッパは「一連のグローバル戦略の中で、服の文化の先進地域」とし、今後のグループ戦略の最重要マーケットの一つと位置付ける。 2017 年のスペインのバルセロナに続き、2018 年はスウェーデンのストックホルム、オランダのアムステルダムに出店。 2019 来春はデンマークのコペンハーゲンにもと、積極的に出店を続けている。

H & M のお膝元に 1,000 人もの行列

現地メディアでも「ユニクロ」進出は大きく取り上げられた。 中でも、8 月 24 日にスウェーデンのストックホルムに出店した北欧 1 号店での経験は、企業文化を確立するうえでも大きな影響を受けたと柳井社長は明かす。 「ユニクロ」の世界で 20 番目、ヨーロッパで 7 番目の進出国となるスウェーデンは、日本の約 1.2 倍の面積に対して、人口は 1,012 万人(2017 年 12 月現在、スウェーデン統計庁)。 東京の人口をも下回っている。

スウェーデンといえば、「ZARA」のインディテックス社に続く、世界ナンバー 2 の衣料品専門店、H & M へネス・アンド・マウリッツの拠点でもある。 そんなライバルの足元で、ユニクロは開店当日、1,000 人もの行列を生み、インパクトのある北欧デビューを飾ることに成功した。

店舗はストックホルムの中心にあり、"王の庭" といわれる王立公園に面し、最も歴史ある百貨店に隣接する「ストックホルムで最高の立地(柳井社長)」だという。 建物は、機能主義建築の生みの親として知られるスウェーデンの世界的な建築家、スヴェン・マルケリウス氏が手がけたもの。 地元への敬意を表すとともに、機能性やモダンデザインというユニクロが追求する価値観を店舗でも生かした形だ。

街中のトラムやバス停などで認知

地下鉄(25 駅に 80 カ所)や、街中を走り回るトラム、バス停、ビルボードなどで認知を高めた。 現地での PR & コミュニケーション戦略は、ここ最近の海外進出の "王道"。 4 月下旬に北欧 1 号店進出のリリースを配信するとともに、メディアカンファレンスを催し、"What is UNIQLO?" (ユニクロとは何者か? どんな提供価値を現地の生活者に提供するのか)の理解を深めた。

「H & M」や「ZARA」をはじめ、多くのアパレルブランドがファッションやトレンドを打ち出しているのに対して、「あらゆる人の生活をより豊かにするための服。 美意識のある合理性を持つ、進化し続ける普段着」という意味を込めたコンセプト「LifeWear」や、あらゆる人のための服を追求する「MADE FOR ALL」の理念などを丁寧に伝えた。

集中的に情報発信を開始したのは、開店月の 8 月に入ってから。 地元で活躍するダンサーやテニス選手、女優、作曲家などのアンバサダー 7 人を起用した広告ビジュアルやミニ動画を作成。 ブランドブックは 1 万部を用意。 店の周辺でブランドロゴ入りのミネラルウォーター 2,500 本を配布した。 デジタル施策も注力し、ファッション、ライフスタイル系の現地主要メディアで広告をうち、360 万インプレッションを獲得。 SNS や特設サイトで動画の配信も行った。

「高い付加価値を生み出すワークスタイル」

開店前日には店で昼は記者会見(34 媒体が来場)、夜には有名ブロガーや発信力のあるメディア関係者、地元の名士など 550 人を招いてプレオープニングパーティを開催。 海外パーティで恒例となった、ユニクロの地元・山口の日本酒「獺祭(だっさい)」樽の鏡割りには歓声が挙がったという。

開店当日も和太鼓のパフォーマンスを実施。 ユニクロ草創期に開店やセール時の行列には牛乳とアンパンを配っていたが、ストックホルムでは地元の人気店と協業してコーヒーやアイスクリーム、シナモンロールを配った。 ウチワ(扇子)に加えて、先着 200 人にカシミヤマフラーを配布。 一定額以上の購入者による福引(1 等商品は日本への航空券)も開店ムードを盛り上げた。

「お客さまの服に対する感度の高さ、オープンをお待ちになる方の洗練されたマナー。 お互いに譲り合い、会話しつつ、お買い物を楽しまれる余裕のある態度。 世界トップクラスの先進国の成熟した文化に対して感銘を受けた。 また、現地の従業員は少人数でキビキビと動き、効率の高い働き方をしている。 集中力をもって仕事をし、毎日の生活を楽しんでいる。 これは本来の少ない人口で高い付加価値を生み出すワークスタイルなのだとあらためて目を開かれる思いがした。」と柳井社長。

アジアに比べると商機は小さく見えがちだが、北欧各国は「世界で最も幸せな国ランキング(国連が発表する「世界幸福度報告書」)」では常に上位を獲得。 モノを見る目が培われており、生活の質が高く、シンプルだけれども機能的で本質的に良いものが分かる、成熟したエリアである。 ここでユニクロのコンセプトや理念、働き方、さらには企業そのものが受け入れられ、ブラッシュアップされることは、将来の成長に向けて、数字以上の大きな意味を持つことになりそうだ。 (松下久美、BusinessInsider = 10-17-18)

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