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ウクライナ「平和サミット」、約 90 カ国参加 - 45 カ国は首脳が出席

今週末に開催されるウクライナ「平和サミット」には約 90 カ国・地域が出席する予定だが、スイス当局が 10 日に明らかにしたところによると、新興国を中心とするいわゆる「グローバルサウス」の主要国はまだ出席を表明していない。 スイスのアムヘルト大統領は同日、ベルンで記者団に対し、「参加国のリストは最後まで流動的だ」と指摘。 参加国の約半数は首脳レベルの代表になると、スイスのカシス外相は付け加えた。 参加国の最終リストが公表されるのは 14 日夕になるという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナからのロシア軍完全撤退を含む広範な要求について、特にウクライナの伝統的な同盟国である西側諸国以外から支持を得るため、スイスに会談の開催を要請した。 しかし、スイスのルツェルンで今月 15 - 16 日に開かれる会合では、そのような野望は実現しなさそうだ。

カシス氏によれば、中国はスイスがロシア招待を拒否したことを理由に出席を辞退したほか、ブラジルと南アフリカ共和国はまだ出席を確認していない。 インドは参加するが、モディ首相が出席する可能性は低そうだ。 ロシアのウクライナ侵攻開始直後に両国の最初の協議を仲介したトルコも出席する予定。 カシス氏はこの会議について、最終的にはロシアも参加すべき和平プロセスの第一歩と見なすべきだと語った。 (Bastian Benrath、Bloomberg = 6-11-24)


ロシア軍のハルキウ攻勢「止まった」 米大統領補佐官

米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は 9 日、ウクライナ東部ハルキウ州でロシア軍の進撃が「止まった」との認識を示した。  米政権はウクライナに対し、供与した武器をロシア国内への攻撃に使用することを一部解禁していた。 サリバン氏は CBS テレビに対し、「(ロシア軍の)ハルキウにおける作戦の勢いが止まった」と指摘。 「ハルキウはなお危険な状況にあるが、ロシアはここ数日、同地で有用な進捗を遂げられていない」と語った。

米政権は先に、ロシア国境に接するハルキウ州の防衛に向け、米国が供与した兵器をロシアに向けて使用することを容認した。 これまでは、そうした攻撃は北大西洋条約機構をロシアとの直接戦争に引きずり込む恐れがあるとして認めてこなかった。 サリバン氏は「米大統領からすればこれは当然のことだ」とし、「自分たちを攻撃してくる重火器や砲台に対する国境を越えての攻撃をウクライナに認めないのは筋が通らない」と述べた。 (AFP/時事 = 6-10-24)


ロシア、ウクライナ北部国境の村占拠か チェチェン首長談

ロシア南部チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は 9 日、ロシア軍がウクライナ北東部スームィ州にある国境の村ルジウカを占拠したと述べた。 ロシア国防省による発表はこれまでになく、ウクライナの地元当局者はカディロフ氏の主張を否定している。 ウクライナの北部国境に位置するスームィ州は、2022 年のロシアによる侵攻開始以来、大規模な地上攻撃は受けていない。 カディロフ氏はチェチェンの特殊部隊「アフマト」が、「他のロシア軍部隊から合流した兵士とともに戦術作戦を実施し、新たな集落を敵から解放した」とテレグラムに投稿。 ロシア西部クルスク州と「国境を接するルジウカ村だ」とし、また「大規模な計画的攻撃の結果、ウクライナ側は大きな損害を被り、撤退を余儀なくされた」と付け加えた。

AFP は現時点でカディロフ氏の主張の真偽を確認できていない。 スームィ州の関係者は公共放送に対し、ルジウカ村は占領されておらず、村にロシア軍はいないと否定した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先月、ロシアが北部国境沿いに軍を集結させていると警告。 新たな攻勢に備えている可能性があるとした。 こうした状況を受けて関係当局は、スームィ州のいくつかの国境の町や村から住民の避難を開始した。 (AFP/時事 = 6-10-24)


戦場のチキンレース ロシア軍の BTR-82 とウクライナ軍の M2 が劇的な接近戦

ウクライナ東部で 8 日かその少し前、ロシア軍とウクライナ軍の装甲車両同士による生死紙一重のチキンレースが繰り広げられ、負けた側の死と破壊で終わった。 ドネツク州アウジーウカの西もしくは南西で、歩兵分隊を車上に乗せたロシア軍の BTR-82 装甲兵員輸送車が両軍の陣地線の中間地帯を越え、ウクライナ側の保持する集落に突進してきた。 すると、同じ道路の反対側からウクライナ軍第 47 独立機械化旅団の M2 ブラッドレー歩兵戦闘車が現れ、敵車両に敢然と向かっていった。

ウクライナ軍のドローン(無人機)が上空から監視するなか、装軌車両の BTR-82 は 30mm 機関砲、装輪車両の M2 は 25mm 機関砲でそれぞれ射撃しながら互いに相手の方向に向かって走っていく。 至近距離まで近づいたところで、BTR-82 が右側にそれ、衝突は回避される。 2 両はなお連射を続けつつ、すれ違っている。 エストニアの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)アナリスト、War Translated は「現実の世界で目にするとは誰も想像していなかったような」交戦だったとコメントしている。

勝敗は明らかだった。 M2 は大きな損傷を免れ、定員どおりなら 3 人の乗員も無事だったようだ。 同じく乗員 3 人の BTR は損傷し、煙を上げながら道路脇に停車しようとしている。 途中で、死傷した歩兵が車体からばらばらとこぼれ落ちている。 第 47 旅団は通信アプリ「テレグラム」への投稿で状況を説明している。 ロシア軍の複数個の自動車化狙撃旅団・連隊が現在、アウジーウカの西 40km ほどに位置するポクロウシクに向けて前進を図っている。 「ここで敵はわれわれの領土の奥深くに前進しようとしています。」

「映像の APC (装甲兵員輸送車)は、ある集落に突入してきました。 ブラッドレーの乗員が即座に対応しました。」

結果は予想できた。 ウクライナの 1,000km におよぶ戦線で目下、最も激しい戦闘が繰り広げられている正面のひとつであるアウジーウカ西方面に、ウクライナ軍は、発射速度が高く命中精度も非常に高いブッシュマスター機関砲を備えた重量 30t 強の M2 をはじめ、高性能で重量級の装甲車両を投入している。 対するロシア軍は重量 15t ほどの BTR や同 12t ほどの MT-LB 装甲牽引車など、古く性能の低い車両を使わざるを得なくなっている。

同じくらいの数の装甲車両を配備された両軍の部隊が激突した場合、ロシア軍のほうが大きな損害を被るのが普通だ。 5 月には OSINT アナリストのアンドルー・パーペチュアが確認しただけで、ロシア軍は歩兵戦闘車と装甲兵員輸送車を計 300 両近く撃破されている。 オランダの OSINT 分析サイト「オリックス (Oryx)」によれば、ウクライナ軍が失ったのは 40 両ほどにとどまる。

ただ、ロシアはウクライナ側より大きな人的損害に持ちこたえることができる。 「ロシアは予備の兵力が膨大なので、常軌を逸した損失を出してもすぐに補充し、新たな兵士を次から次に戦闘に投入しています」と第 47 旅団は言及している。 2,000 人規模の同旅団は、対峙しているロシア軍部隊の兵力をざっと 3 倍と見積もっている。 注目すべきは、ロシア軍の損害はウクライナ側の 7 - 8 倍にのぼっていることだ。 つまり、損害はロシア側に著しく偏っている。 今回の映像を含め、アウジーウカとポクロウシクの間の戦場を撮影したいくつかのドローン映像は、この偏った損耗率を示す証拠とみることもできるかもしれない。

たとえば、5 月上旬に撮影されたある映像では、やはりブラッドレーの乗員が、歩兵を乗せた MT-LB が近づいてくるのに気づき、射撃を加えていた。 この MT-LB は歩兵を降ろした直後にブラッドレーから 25mm 弾を浴びせかけられ、破壊されている。 ウクライナ国防省は「M2 ブラッドレーがお手本を見せました」と戦果を誇っている。 1 カ月ほどあとの映像でも似たようなことが起きている。 対ドローンのケージ装甲に身を隠した計 20 - 30 人の歩兵を乗せた 2 両の BTR-82 が、アウジーウカ郊外のウクライナ側の防御線に向けて進んでくる。 ウクライナ軍の M2 は待ち伏せ攻撃に有利な地点に陣取り、BTR-82 が隠れるもののない開けた場所まで来ると射撃を始め、これらの車両と歩兵らを粉砕している。

ロシアがウクライナで拡大して 2 年 4 カ月目に入った戦争が進むにつれて、こうした小競り合いは今後も繰り返されるだろう。 第 47 旅団は「戦闘は一瞬たりともやむことがありません」と戦場の厳しさを伝えている。 そして、同様の結果が繰り返されることになるだろう。 ウクライナ軍は米国から以前に受け取った 200 両かそこらの M2 のうち数十両を失ったが、新たに供与された 100 両あまりでそれを補いつつある。 一方のロシア軍は、装甲車両の損失があまりに多いため補充が追いつかず、一部の突撃部隊にゴルフカートのような全地形対応車やオートバイを配備するほど窮状が深まっている。 防護の薄いこうした民生車両が M2 と直接交戦した場合、MT-LB や BTR 以上にひどい結果が待っていることは言うまでもない。 (David Axe、Forbes = 6-10-24)


米、ウクライナへの 7.8 兆円融資で最終調整 ロシアの凍結資産活用

米当局は、凍結されたロシア資産の利益を使ってウクライナに約 500 億ドル(約 7 兆 8,000 億円)の融資を提供する取り決めの合意を急いでいる。 この合意はバイデン米大統領が今週イタリアで開かれる主要 7 カ国首脳会議(G7 サミット)に出席するにあたっての最優先事項だ。 だが、サミット前の米国の状況に詳しい情報筋によると、7 ヶ国はまだ最終合意に達していない。 バイデン政権は、ウクライナが戦況を好転させるために不可欠だと考えられる計画に署名するよう、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本の G7 の首脳陣を説得するべく動いている。

情報筋によると、最終的な目標は今後数日で最も厄介な資金調達の詳細を解決し、今週の G7 サミットの声明の一部として合意を発表できるようにすることだ。 しかし、この計画の方式に関する問題、とりわけ支払いの正確な形態や返済の保証などについては検討中だという。 米当局者らは、ウクライナの状況を考えるとこの融資の承認は極めて緊急を要すると主張する。 当局らが最大 500  億ドルに達すると期待するこの融資パッケージの詳細は確定していないものの、G7 各国は融資の緊急性と、ウクライナがこれを切望していることについては同意している。

米当局者は、G7 がともにこの計画に賛同することでロシアのプーチン大統領にメッセージを送ることができると語る。 それは、米国とその同盟国によるウクライナへの継続的な支援を前にロシアは存続できないという断固としたメッセージだ。 ウクライナのゼレンスキー大統領は G7 サミットに出席し、改めてさらなる支援を訴える見通し。 (CNN = 6-10-24)


ロシア軍、ハリコフ州を攻撃、1人死亡

【キーウ】 ウクライナ東部ハリコフ州の地元検察などは 8 日、ロシア軍が同日、同州の村を誘導爆弾で攻撃し、男性 1 人が死亡したと明らかにした。 女性 2 人が負傷し、学校や店舗、複数の住居が破壊された。 村は州都ハリコフ市から東に約 40 キロ。 ロシアと接する同州への攻撃は 5 月以降、激しさを増している。 米シンクタンクの戦争研究所は 8 日、ロシア軍が兵を南部ヘルソン州などからハリコフ州方面に移動させているとの分析を発表した。 ハリコフ州と隣接するスムイ州の集落などにも 8 日、砲撃や無人機による攻撃が計 26 回あった。 (kyodo = 6-9-24)


史上初、ロシアの Su-57 戦闘機が撃墜される

この撃墜は、最新のロシアの Su-57 戦闘機が配備されているアフトゥビンスク飛行場で、接触線から 589 キロメートルの地点で発生しました。 この飛行場は、ロシア連邦国防省の第 929 国家飛行試験センターの一部であり、新しい航空システム、航空レーダー、武器がテストされています。 衛星画像は、アフトゥビンスク飛行場で撃墜された Su-57 戦闘機を示しています。 撃墜された航空機が量産型の Su-57 戦闘機ではなく、試験センターが使用している第 3 または第 9 プロトタイプの T-50 である可能性が高いです。 飛行場の年次公開写真によると、「053」および「510」機がそこに配備されており、飛行実験室として使用されています。 このセンターはこれらの航空機を使用して、統合作業、新しいレーダー機器、武器、その他のシステムのテストを行っています。

量産型の Su-57 戦闘機は、ウクライナに対して最近より積極的に使用されている巡航ミサイル Kh-69 のキャリアとして使用されています。 これらのキャリアの 1 つが破壊されると、その使用の全体的な頻度が減少します。 現在、ロシア空軍は 22 機の量産型 Su-57 戦闘機を保有しており、ウクライナに対して積極的に使用されています。 Kh-69 巡航ミサイルは、フランス・英国製のストームシャドウ/SCALP-EG のアナログであり、レーダーでの検出を困難にする効果的な散乱面積が小さいです。 このミサイルの最大射程は 500 キロメートルを超える可能性があります。 以前、Militarnyi は、2023 年 5 月 14 日から 15 日にかけての大規模な複合攻撃で、ロシアの MiG-31 戦闘機 2 機が一時的に占領されたクリミアで破壊されたと報告しました。 (Redacao、Carro e Motos = 8-9-24)


ウクライナ軍、最前線で反撃か 東部 2 都市で露軍後退との分析

ロシアによるウクライナ侵略で、ドイツ紙ビルトの軍事専門家は 7 日、ウクライナ軍が東部ドネツク州の小都市チャソフヤルに隣接する集落カリニナの大部分を奪還したとする分析を X (旧ツイッター)で公表した。 この専門家はまた、ウクライナ軍が東部ハリコフ州の国境地帯の小都市ボフチャンスクでも露軍を後退させているとした。 ウクライナ軍は過去半年間以上、欧米の軍事支援の鈍化により劣勢を強いられてきたが、最近は支援が再び活発化したことなどを背景に、戦線の安定化に成功して一部で反撃しているとされる。

チャソフヤルは高台に位置する要衝で、過去数カ月間にわたって激戦が続いてきた。 露軍はチャソフヤルを制圧し、全域の掌握を目指すドネツク州の中心部方面への進軍ルートを確保する思惑だとみられている。 一方、ボフチャンスクは、5 月上旬に露軍が着手したハリコフ州への越境攻撃で攻防が焦点化。 一時は露軍が市内の約 5 割を制圧したが、最近はウクライナ軍が市内の 8 割近くの支配権を回復したと伝えられている。 (sankei = 6-8-24)


日本、ウクライナ 2 国間の文書内容が判明 G7 で署名予定

来週イタリアで開かれる G7 サミットにあわせて、日本とウクライナが署名する予定の 2 国間の文書の内容が明らかになり、日本は、殺傷性のない装備の提供など憲法の枠内でできる防衛支援や、地雷撤去などの復旧・復興支援を続けていくことが盛り込まれました。 関係者によりますと、来週 13 日からイタリアで開かれる G7 = 主要 7 か国のサミットにあわせて岸田総理大臣は、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、2 国間文書の署名を行う方向で調整が進められていて、その文書の内容が明らかになりました。

それによりますと、ウクライナに対する安全保障や防衛の分野での支援について、日本は殺傷性のない装備や物資の提供、負傷したウクライナの兵士の治療、それにインテリジェンス分野での協力など憲法の枠内で支援を続けるとしています。 また復旧や復興の支援については、地雷の撤去、女性や子どもたちの人道状況の改善や生活再建、農業分野の発展に向けた取り組みなどを行うとしています。 この文書の有効期間は 10 年間で日本がウクライナ支援を継続することを確認するものとなっています。

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対しては、去年 7 月、日本を含む 30 か国以上がウクライナへの支援を明確にするため 2 国間の取り決めを作ることになり、これまでに 15 か国がこうした文書を交わしているということです。 (NHK = 6-8-24)


ミラージュ戦闘機、ウクライナにフランスが供与へ … D デー 80 年式典にゼレンスキー氏出席

【パリ = 梁田真樹子】 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 7 日、フランスの首都パリを訪問し、仏国民議会(下院)で演説した。 「欧州の安全保障の鍵はウクライナにある」と述べ、軍事支援の強化を呼びかけた。 ゼレンスキー氏は 15 - 16 日にスイスで予定される「平和サミット」が「戦争を終結に近づけることになる」と訴え、協力を求めた。 7 日にはパリでマクロン仏大統領と会談する。 マクロン氏は 6 日の仏テレビのインタビューでウクライナに仏軍のミラージュ戦闘機を供与する方針を表明した。

ゼレンスキー氏は 6 日、第 2 次世界大戦で連合軍がナチス・ドイツに勝利する転機となったノルマンディー上陸作戦の D デー(作戦決行日)から 80 年となるのに合わせて仏北西部オマハ・ビーチで開かれた式典に、バイデン米大統領やマクロン氏らと出席した。 (yomiuri = 6-7-24)


ロシア製油所に攻撃、火災 ウクライナの無人機で

【キーウ】 ロシア南部ロストフ州のゴルベフ知事は 6 日未明、ウクライナの無人機攻撃で製油所で火災が起きたと通信アプリで明らかにした。 死傷者はいないとしている。 ロシア国防省は 6 日、前夜から未明に、実効支配するクリミア半島と西部ベルゴロド州で無人機 19 機を、ロストフ州では巡航ミサイル「ネプチューン」を迎撃したと発表した。 一方、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は 5 日、ロシア軍が東部で集中攻撃を仕掛け、ドネツク州の要衝チャソフヤールと東部ハリコフ州北部ボウチャンスクを制圧しようとしていると明らかにした。 別の戦線ではウクライナの兵力分散を狙った動きを見せている。 (kyodo = 6-6-24)


ロシア軍、東部チャシウヤールで消耗の罠にはまる 5 月の人的損害は過去最悪に

ウクライナ東部ドンバス地方のロシア軍は今年 2 月、多大な損害を出した 5 カ月にわたる攻撃の末にアウジーウカを陥落させると、すぐに東部で新たな都市に狙いを定めた。 かつて鉱工業で栄え、ロシアが 2022 年 2 月に戦争を拡大する前には 1 万 2,000 人ほどが暮らしていたチャシウヤール市である。 チャシウヤールは、ロシアがすでに占領しているバフムートの西方の接触線にさらされているうえ、防御の役に立つ地形が市を南北に流れる運河くらいしかない(しかも渡河しやすい地点が 2 カ所ある)ので、攻撃を受けやすい。 そして、市の中心部から運河を隔てて反対側にある最東端の通称「運河地区」は、とりわけ攻撃を受けやすい。

ウクライナに侵攻している 50 万人規模のロシア軍にとって、チャシウヤールを落とすのはそれほど難しくないはずだった。 ところが、ロシア軍はここでもまた消耗の罠にはまっている。 この正面のロシア軍部隊は少しずつ、物差しで測れる程度の前進を遂げてきたものの、その過程で人員を何千人も失っている。 ウクライナ側の人的損耗ははるかに少ない。

ロシア軍がどのようにチャシウヤールを攻略しようとしているのかは明白だ。 第 200 独立親衛自動車化狙撃旅団、第 299 空挺連隊、第 11 独立親衛空挺旅団などの部隊が、集中的な近接航空支援を受けながら運河地区を攻撃し、制圧する。 その後、ここを足場として市中心部を直接攻撃する。 運河地区に対する攻撃と並行して、チャシウヤールへの補給線に圧力をかけるため、市のすぐ北にあるカリニウカ村を攻撃する。

ロシア軍はこうした作戦で数カ月にわたり攻撃を続けてきたが、あまりうまくいっていない。 最近、サーモバリック弾を発射できる TOS-1/TOS-2 連装ロケット砲も使い始めたが、現地の火力バランスを決定的に変えるには至っていない。 4 日現在、ウクライナ軍の第 41 独立機械化旅団、第 241 独立領土防衛旅団、独立大統領旅団(編集注 : 大統領の護衛を主任務とする陸軍隷下の機械化歩兵部隊)がチャシウヤール、運河地区、カリニウカを引き続き保持している。 ロシア軍はここ数日、カリニウカでウクライナ軍を一時押し込んだが、ウクライナ側は第 200 旅団から激しい砲撃を浴びながらも反撃し、押し戻した。

 

ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター (CDS) は、かねて運河地区について悲観していた。 3 日の作戦状況評価でも、運河地区について「(ロシア軍の)前方部隊が側面の陣地を確保したので、近く占領されることになるだろう」と言及している。 だが、「側面の陣地」のひとつはカリニウカにあり、それはウクライナ軍の反撃で排除された。 おそらく CDS がこの評価レポートを作成したあとの出来事だったので、評価には反映されていないのだろう。

ロシア軍の誤算のひとつは、対独戦勝記念日の 5 月 9 日、ウクライナ北東部で新たに始めた攻勢が目論見どおりの結果にならなかったことだ。 ロシア軍はウクライナ第 2 の都市ハルキウ市の北の国境地帯に進撃することで、ウクライナ軍の一部部隊を東部戦線から引き離し、チャシウヤールなどいくつかの正面の防御を手薄にすることを狙っていたとみられる。

だが、米国の新たな軍需品による補給がぎりぎり間に合ったウクライナ軍は、北東部に増援部隊を送って防御をてこ入れしつつ、東部でも防御をそれほど手薄にせずにロシア軍の攻勢を食い止めることに成功した。 一方、装甲車両の不足がますます深刻化し、基礎訓練システムが徐々に崩壊しているロシア軍は、ろくに訓練を受けていない歩兵が徒歩でウクライナ軍の陣地を攻撃せざるを得なくなっている。

その結果、おびただしい数の死傷者を出している。 英国防省は「ロシア軍の(人員の)損害は 2024 年も引き続き高い水準で推移しており、5 月の人的損耗(編集注 : 同省によるとここでは死者と負傷者のみ)は 1 日平均 1,200 人を超え、報告数としては戦争が始まってから最も多かった」と報告している。 さらに「損耗率が上昇しているのは、ロシア軍が広範な前線で続けている消耗戦の反映とみてほぼ間違いないだろう。 ロシア兵の大半は限られた訓練しか受けていないのがほぼ確実であり、複雑な攻撃作戦を遂行できない」と続けている。

ロシア軍の狙いは、ウクライナ軍の戦力を引き伸ばし、薄く広げさせた隙に、チャシウヤールに進撃することだったのだろう。 だが、実際には自分たちのほうが戦力を引き伸ばし、薄く広げるはめになった。 ロシア軍は最終的には、訓練された人員を十分に集中させて運河地区やその側面に対する攻撃を成功させ、チャシウヤール中心部に対する攻撃に乗り出すかもしれない。 だが、もしそうできても、ロシア軍がチャシウヤール全体を占領するには数カ月かかり、人員の損害はさらに数千人増えるだろう。 その代償は果たして、戦争拡大前にウクライナで人口規模が 266 位だった小都市という戦果に見合うものだろうか。 (David Axe、Forbes = 6-6-24)


ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシア軍の装甲車狩りにいそしむ 歩兵ごと粉砕

ロシアがウクライナで拡大して 2 年 4 カ月目に入る戦争で、ロシア軍は兵士を戦場に送り込む 2 つの装甲車両、装甲兵員輸送車 (APC) と歩兵戦闘車 (IFV) も大量に失ってきた。 オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス (Oryx)」が視覚的に確認しているだけで、撃破数は約 4,300 両にのぼる。 毎月 160 両ほど撃破されている計算だ。  ウクライナ軍の APC と IFV 損失ははるかに少なく、撃破された数は合計で 1,200 両ほどにとどまる。

ロシア軍の APC と IFV の損失は 5 月に急増した。 この戦争の装備の損害を独自に集計している OSINT アナリストのアンドルー・パーペチュアによれば、撃破された数は計 288 両に達した。 パーペチュアは「これはあくまで、わたしたちが見て数えたものだけだ」と強調している。 なぜそうなったのかは明らかだ。 ウクライナの 1,000km におよぶ戦線のなかでもとくに激しい戦闘が繰り広げられている東部のアウジーウカ正面で、ウクライナ軍が優れた車両を用いる一方、ロシア軍の車両は劣化しているからだ。 両者が相まみえると、ロシア側の車両は手ひどくやられている。

この 1 カ月あまりの間にソーシャルメディアで共有された 2 つの動画は、両軍の車両のそうした優劣をまざまざと示している。 どちらの場合も、ウクライナ軍の米国製 M2 ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍の装甲兵員輸送車と対決し、破壊している。 ロシア側は 2 つの小競り合いで計数十人が戦死した可能性がある。

ひとつめの動画は、5 月 2 日かその少し前に行われた戦闘の様子を映している。 長期保管施設から引っ張り出され、自爆型のドローン(無人機)対策のケージ装甲を取り付けたロシア軍の老朽化した MT-LB 装甲牽引車の一両が、車上に歩兵 6 人ほどを乗せて、アウジーウカ西方のウクライナ側の陣地に向けて走ってくる。 1990 年代に製造され、米国から 300 両あまり供与されたウクライナ軍の M2 の一両がそれを迎え撃つ。

これは不公平な戦いだった。 重量約 12t の装軌車両である MT-LB は元来、支援車両として設計されているので、装甲は薄く、軽武装だ。 兵士を戦場に直接運び込むという用途は想定されていなかった。 しかし、より重量のある BMP 歩兵戦闘車を数千両失ったロシア軍は、MT-LB を前線で APC として使わざるを得なくなっている。 対して重量約 30t の装軌車両である M-2 は直接戦闘用に設計されており、精確に高速で射撃できる 25mm 機関砲や、乗員や兵員を守るのに役立つ装甲を装備する。

動画では、M2 の乗員が MT-LB を見つけて射撃を始める。 ロシア軍の歩兵が飛び降りたあと、MT-LB の脆い車体に 25mm 弾が何発も撃ち込まれ、MT-LB は爆発・炎上する。 ウクライナ国防省は「M2 ブラッドレーが手本を見せる」と誇っている。 1 カ月後の今月 2 日ごろ、似たようなことが起こった。 今度はロシア軍の BTR-82 装甲兵員輸送車 2 両が、アウジーウカ郊外のウクライナ側の陣地に向けて進んできた。 やはりケージ装甲に覆われた車上に、歩兵が合わせて 20 人かそこら乗っていたようだ。

重量 15t ほどの装輪車両である BTR-82 は MT-LB より新しく、より重武装でもある。 だが、M-2 との直接戦闘ではほとんど無防備に等しい。 ウクライナ軍のドローンが BTR-82 のペアを発見すると、M-2 は待ち伏せ攻撃に有利な場所に陣取る。 2 両が遮蔽物のない開けた平原を進んでくると、M-2 の乗員は射撃し始める。 交戦の様子を捉えた動画では、25mm 弾が BTR-82 の上に乗っている歩兵に直撃し、その身を切り刻んでいる。 1 両でおそらく発煙弾がクックオフ(周囲の熱による発火・爆発)し、遺体が空を舞う。 生き残った歩兵が散開するなか、M2 は BTR-82 や歩兵にさらに弾を浴びせる。 砲撃跡の穴にかがむ兵士の姿も見える。

「現代的なテクノロジーを活用し、米国製の装備を上手に使いさえすれば、戦場で大きな優位性を得られる。 われわれはそれをまたしても証明した。」 第 47 独立機械化旅団は通信アプリ「テレグラム」のチャンネルでそう述べている。 そのとおりだ。 ウクライナ軍は昨年初めから受け取り始めた 300 両あまりの M2 のうち、約 40 両を失っている。 ただ、この車両の扱いに慣れるにつれて、損失数は月平均 2 両ほどで安定するようになっている。

ウクライナ軍で M2 を運用する部隊はこれまで第 47 旅団だけだった。 だが、5 月に米国から新たに 100 両かそこらの M2 が供与されたことで、ウクライナ軍参謀本部は 2 個目の旅団に配備できるようになった可能性もある。 実現すれば、ウクライナ軍が車両面でロシア軍に対して優位に立てる正面が増えるだろう。 米国がウクライナにさらに多くの M2 を送れない理由はない。 ウクライナが使っているモデルの M2 は、米陸軍ではすでに退役している。 このモデルは、カリフォルニア州の施設にある約 500 両を含め、米陸軍でおよそ 1,000 両保管されているはずだ。 (David Axe、Forbes = 6-6-24)


ウクライナ「平和サミット」、ロシアと将来の限定的交渉を視野 − 文書

ウクライナ問題を巡りスイスで開催される「平和サミット」では、原子力の安全と食料安全保障、連れ去られた子供の帰還について合意を確立した後で、将来的にロシア当局者を巻きこんだ交渉に道を開くことを目指している。 案文書で明らかになった。 ブルームバーグ・ニュースが草案文書を確認した。 この文書によると、スイスのルツェルンで今月 15 − 16 日に予定される会合では、限られた数の問題について将来的にロシアと協働するため信頼を構築する方法として、3 つの措置に焦点を絞る。 ウクライナが主導するこの会合からロシアは排除されているが、戦争終結には全ての当事者の関与が必須だと文書は指摘している。

「従ってわれわれは、ロシアの代表者によるさらなる関与を確保しつつ、上記分野の信頼構築措置として機能し得る具体的な動きをとることに合意した」と文書は説明。 文書内容は交渉の中で変わることもあり得る。 ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの交渉を開始する以前に、ウクライナからのロシア軍完全撤退を含む、より広範な要求について新興国を中心とするいわゆる「グローバルサウス」など諸国から同意を取り付けたい考えだった。 だが、数十カ国に及ぶ上級外交官や安全保障担当顧問らが交渉を重ねた末に行われるスイスでの会合では、できるだけ多くの首脳の参加確保を優先。 ウクライナが提唱していた 10 項目から成る和平案から、範囲を狭めた。

ウクライナとその支援国は、この和平案への全面的な支持確保に苦戦していた。 とりわけ中国は今回の会合に出席しない可能性を示唆。 ゼレンスキー氏は先週、中国は中立を装いつつロシアとの緊密な関係を維持し、会合を台無しにしようとしていると不満をあらわにした。

ゼレンスキー氏「アジア首脳は平和サミット参加を」 中国の妨害を非難

インド、ブラジル、南アフリカ共和国、サウジアラビアなど重要視される他の国々がどの程度参加するのかは依然明らかではない。 それでもゼレンスキー氏によると、100 カ国余りが参加する見通しで、75 の国家元首が出席を確認した。 主要 7 カ国 (G7)の首脳も大半が出席するが、米国はバイデン大統領に代わりハリス副大統領がスイスに向かうと、ホワイトハウスが 3 日発表した。 サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も同席する。 (Alberto Nardelli、Bloomberg = 6-5-24)


ウクライナ軍、アメリカから供与の兵器でロシア領内のミサイルシステムを攻撃 NY タイムズ報道

アメリカのバイデン大統領は先月末、これまでの方針を転換し、自国が提供した兵器によるロシア領内への攻撃を一部に限り認めていました。 この後に、ウクライナ当局者がアメリカの兵器でロシア領内への攻撃を認めたのは初めてだと、ニューヨーク・タイムズは伝えています。  チェルネフ副委員長によると、破壊されたのはロシア軍の地対空ミサイルシステム「S300」と「S400」で、数は明らかにされていないということです。

ゼレンスキー大統領は先月 31 日、アメリカなどから提供された兵器でロシア領内を攻撃するのは「時間の問題だ」と発言していました。 アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は今月 1 日か 2 日、ウクライナ軍によってベルゴロドにあるロシアの S300 などが攻撃されたとしています。 (TBS = 6-5-24)


ウクライナ軍、ハリコフ州ボフチャンスクで徐々に戦況改善 市中心部を奪還か

ウクライナ軍参謀本部は 3 日、ロシア軍による東部ハリコフ州への越境攻撃で攻防が焦点化している小都市ボフチャンスク市内で戦闘が続いていると発表した。 これに先立つ 2 日、ウクライナ軍のボロシン報道官は「ウクライナ軍がボフチャンスクの 7 割を確保している」と説明。 1 週間前にはウクライナ軍の確保地域は約 5 割だったとされ、同国軍が徐々に戦況を改善していることを示唆した。

ドイツ紙ビルトの軍事専門家も 2 日、ウクライナ軍がボフチャンスクで露軍を後退させ、市中心部を奪還したもようだと指摘した。 ウクライナ軍がボフチャンスクで露軍を撃退できている要因としては、増援部隊や欧米の供与兵器の到着があるとみられている。 ウクライナ軍参謀本部はまた、越境攻撃が行われているハリコフ州北部とは別の同州東部クピャンスク方面や、南部ザポロジエ州オレホフ方面などで露軍の攻撃を撃退したと発表した。 一方、露国防省は 2 日、ウクライナ東部ドネツク州アブデーフカ西方の集落ウマンスコエを制圧したと主張した。 全体的な戦況としては、戦力や物量でウクライナ軍に勝る露軍がなお優勢だと分析されている。 (sankei = 6-4-24)


伊、ウクライナに新たな防空システム供与へ = 外相

[ローマ] イタリアのタヤーニ外相は 3 日のラジオインタビューで、ウクライナ向けに防空システム「SAMP/T」の 2 セット目を送る方針を明らかにした。 「マンバ」とも呼ばれる SAMP/T は、同時に 10 発の標的を撃ち落とすことができる欧州製で唯一の弾道ミサイル防衛システム。 1 セット目は昨年、イタリアとフランスが共同でウクライナに供与している。

ウクライナ側は、ロシアによる都市やエネルギー関連インフラへのミサイル攻撃が激化する中で、パートナー諸国に迎撃のための追加支援を要請していた。 こうした中でタヤーニ氏は、メディアの報道を認める形で、ウクライナの求めに応じて SAMP/T を提供すると語った。 タヤーニ氏によると、SAMP/T は現在準備中の第 9 次の包括的兵器支援に含まれる。 これに先立ち事情に詳しい関係者はロイターに、イタリアは現在クウェートに配備されている SAMP/T を近く本国に戻し、ウクライナに移送する公算が大きいとの見通しを示した。 (Reuters = 6-4-24)


損失続出のエイブラムス戦車、ケージ装甲取り付け再登場 運用法模索

米国はウクライナに M1A1 エイブラムス戦車を 31 両供与した。 ウクライナ軍では、これらはすべて第 47 独立機械化旅団の 1 個大隊に配備された。 第 47 旅団は現在、ウクライナ東部ドネツク州アウジーウカの西方で防衛戦を戦っている。 第 47 旅団は過去数カ月の熾烈な戦闘で重量 60t 強、乗員 4 人の M1 (編集注 : ウクライナに提供されたのは M1A1 の「SA (状況認識型)」と呼ばれる改良タイプ)を 8 両失った。 大半はロシア軍のドローン(無人機)に撃破されている。 だが、第 47 旅団はようやくこの問題に対処しつつあるようだ。 対策は、突っ込んでくる自爆ドローンを戦車から安全な距離で爆発させるために「ケージ装甲」を追加するというものだ。

5 月下旬にソーシャルメディアで共有された写真によると、少なくとも 1 両の M1 にケージ装甲が施されている(編集注 : この追加装甲はウクライナの鉄鋼メーカー、メティンベストが手がけている。 写真のエイブラムスについては、車体正面などに旧ソ連設計の爆発反応装甲「Kontakt (コンタクト)-1」が装着されていることも指摘されている)。 AP 通信は 4 月下旬、米軍のクリストファー・グレイディ統合参謀本部副議長(海軍大将)らの話として、ウクライナ軍はアウジーウカ周辺で M1 の損失が相次いだために、生き残っている M1 を前線から引き下げざるを得なくなったと報じていた。

だが 2 週間後、第 47 旅団の M1 の乗員はウクライナの軍事テレビ局「アーミー TV」に、それは事実でないと反論した。 「嘘だらけだ」と。 この戦車兵は、第 47 旅団は損傷していない M1 の使い方に注意を払っているだけだと説明している。 「人員、装備、すべてにおいてロシア側のほうが上回っているので、状況は非常に厳しい。 だからわれわれは戦闘を調整しなくてはならないのです。」 同じ戦車兵によると、第 47 旅団が M1 を投入するのは「出撃して敵の車両を撃破する」機会がある場合だけだという。 裏を返せば、M1 は最も外側の壕で防壁などに隠れてロシア軍が攻撃してくるのをただ待っているわけではなく、通常は前線の後ろで待機しつつ、一種の即応戦力として利用されているということだろう。

この戦車兵は一方で、ロシア軍の自爆ドローンに対する防護力がもっと高ければ、M1 は違ったふうに使えるかもしれないとも認めている。 写真が参考になるのだとすれば、この防護力強化がついに実現しつつあるようだ。 M1 対ドローン防護を高める方策は、現地でケージ装甲を装着するという選択肢しかなかったわけではない。 米国に特注品を用意してもらうという手もあった。 ウクライナに供与された M1A1 は、装甲の薄い車体側面を標準の「M-19 エイブラムス・リアクティブ・アーマー・タイル(ARAT)」という爆発反応装甲キットで覆っている。 爆発反応装甲には爆発性の小さなプレートが含まれており、被弾すると外向きに爆発して敵弾による本体へのダメージを軽減する。

だが、砲塔にはこの爆発反応装甲が付いていない。 前出の戦車兵は「(車体の)側面だけでなく砲塔も防護できるように、米国のパートナーに爆発反応装甲を提供してほしいというのが、乗員としても大隊としてもわれわれの願いです」と話している。 米陸軍は M1 の最新型である M1A2 では、砲塔にパッシブ、つまりリアクティブ(爆発反応型)でない追加装甲を付け足すことで問題に対処している。 しかし、この追加装甲にはおそらく、米国が輸出しない方針にしている劣化ウランが含まれている。 米国防総省はウクライナ向けの M1A1 についても、引き渡す前に業者に委託して、砲塔の装甲の劣化ウラン製パーツをタングステン製に交換していた。

エイブラムスの砲塔に ARAT を装着することは不可能でない。 製造元の米エンサイン・ビックフォード・エアロスペース・アンド・ディフェンス (EBAD) は、ARAT を「車体、スカート(キャタピラを覆うパーツ)、もしくは砲塔用の装甲」と紹介している。 ただ、ARAT は、M1 の開発元である米ジェネラル・ダイナミクスが溶接するブラケットに取り付けることになる。 請負業者がウクライナ軍の残りの M1 を改造してブラケットを付けたり、国防総省が ARAT をウクライナに送ったりするのに何が必要になるのかは不明だ。

いずれにせよ、それには時間がかかる。 もしかすると数カ月かかるかもしれない。 第 47 旅団には、それほど長い間この戦車を使わずにとっておく余裕はないだろう。 第 47 旅団は頼むのも待つのもうんざりし、自分たちでケージ装甲を付け足したということのようだ。 (David Axe、Forbes = 6-4-24)

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