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ウクライナ軍が ATACMS でクリミアをまた攻撃 難敵 MiG-31 迎撃戦闘機に被害か 米国が 4 月に地上発射型弾道ミサイル「ATACMS」の新たな供与分をウクライナへ送り始めたとき、ロシア軍の指揮官たちは次に何が起こるかわかっていた。 なぜなら前例があったからだ。 昨年後半、ウクライナが ATACMS を 20 発ほど米国から入手したあと、ロシア側は前線からそれほど離れていない複数の飛行場を ヘリコプターや ATACMS で攻撃され、防空システムを破壊されていた。 発射重量 1,700kg ほどの ATACMS は空中で炸裂し、擲弾(てきだん)サイズの子弾を何百個もばらまく。 今月 1 日かその少し前、米国から新たに供与された ATACMS 100 発あまりの一部を使った最初の攻撃を受けると、ロシア空軍とロシア海軍航空隊は軍用機の多くを前線近くの基地から ATACMS の射程圏外の基地に疎開させ始めた。 精密誘導される ATACMS は、モデルによって 160 - 300km の射程がある。 だが、すべてのロシア軍機が退避したわけではなかった。 14 日夜、ロシア占領下クリミアのセバストポリ近郊のベルベク飛行場に駐機していた MiG-31 迎撃戦闘機や Su-27 戦闘機を、ウクライナ軍の ATACMS が襲った。 ベルベク飛行場は前線から南へ 240km ほどの距離にある。 ロシアのある有名な軍事ブロガーは、ATACMS 10 発がベルベク飛行場に向けて発射されたと書いている。 このブロガーによれば、ロシア側の防空レーダーは攻撃の 2 分前にはミサイルを探知していたという。 いずれにせよ、ATACMS の数千個の子弾が飛行場に降り注いだ。 それによって S-400 地対空ミサイルシステムのレーダー 1 基と発射機 2 基が撃破され、MiG-31 (1 機)と Su-27 (3 機)計 4 機が損傷したほか、ロシア軍の人員 7 人が死亡したと報告されている。 これらの損害に関しては、防空装備の大破は写真で確認できるものの、戦闘機の損傷を示す視覚証拠はない。 したがって、MiG-31 や Su-27 の損傷は暫定的なものと見なす必要がある。 とはいえ、もしこれらの戦闘機が大きな被害を免れたのだとしても、今回の攻撃がロシア側にとって大きな打撃になったのは確かだ。 022 年 2 月にロシアがウクライナに対する戦争を拡大する前、ロシア空軍はクリミアに S-400 を 4 基か 5 基配備していた。 今回の攻撃に先立って、うち少なくとも 1 基が攻撃され、損害が出ていた。 その結果、クリミアの防空網に穴が開き、ウクライナ側による攻撃がしやすくなったと考えられる。 少なくとも、ロシア側がそれに対処するまではそうした状態になっているだろう。 ウクライナ側が、とりわけ MiG-31 の損傷が確認されることを望んでいるのは間違いない。 Su-27 が厳密には中距離の空対空戦闘機なのに対して、より大型の MiG-31 は長距離の空対空任務をこなし、最長350km先の目標に向けレーダーで誘導する強力な R-37 長距離ミサイルをて発射できる。 R-37 で武装した MiG-31 がクリミアに存在するために、ウクライナ軍のパイロットは探知を避ける必要から低空飛行を強いられてきた。 低空飛行すると自機のレーダーで目標を探せる範囲は狭まり、もともと R-37 より射程が短いミサイルで攻撃できる距離もますます短くなる。裏を返せば、ロシア軍が MiG-31 を 1 機失うごとに、ウクライナの空はウクライナ軍のパイロットにとってより安全になるということだ。 オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス (Oryx)」の集計よれば、ロシア軍の MiG-31 はこれまで戦闘では 1 機も失われていない。 一方、ロシア空軍も双発複座の MiG-31 は 100 機程度しか保有していないので、損失を避けるためたいへんな労力を費やしている。 4 月、ウクライナが射程 300km のタイプの ATACMS を入手したことが明らかになると、前線からちょうど 300km ほどのロシア南部クラスノダール地方プリモルスコ・アフタルスクから 4 機の MiG-31 を引き揚げ、同 800km 離れた同じく南部のアストラハン州プリボルジスキーに移した。 いずれにせよ、クリミア全土は長射程版の ATACMS の射程圏内に入る。 ロシア側は、R-37 を搭載した MiG-31 でクリミア上空を常時哨戒させるつもりなら、少なくとも少数の MiG-31 をクリミアに残す以外、良い選択肢はほとんどない。 だが、それはとりもなおさず、これらのミグを ATACMS に狙われる危険にさらすことを意味する。 (David Axe、Forbes = 5-17-24) ロシアの石油・ガス歳入、5 月は 3 分の 1 減少へ = ロイター試算 [モスクワ] ロイターの試算によると、5 月のロシアの石油・ガス歳入は 4 月の 1 兆 2,300 億ルーブル(134 億 7,000 万ドル)から約 3 分の 1 減少し、8,000 億ルーブル(87 億 7,000 万ドル)となる見通しだ。 ただ、前年同月の 5,700 億ルーブルは上回る。 業界筋のデータや国内外市場における石油・ガス生産などに関する公式統計などを基に算出した。 西側諸国による原油価格の上限設定や海上経由での輸出禁止などの制裁措置に加え、欧州にガスを輸送する「ノルドストリーム」パイプラインが 2022 年 9 月の爆発事故で操業を停止したことにより、ロシアのエネルギー歳入は圧迫されている。 (Reuters = 5-17-24) ウクライナ軍、国境沿いの都市から撤退 北東部ハルキウ州 ウクライナ軍参謀本部は 14 日夜、ロシアが新たに地上作戦を展開する北東部ハルキウ州の国境沿いの地域で、州都ハルキウの北東 50 キロに位置するボウチャンスク市など 2 カ所から事実上部隊を撤退させたことを明らかにした。 ロシア軍は今月 10 日に国境を突破し、陣地を広げながら同市などへの攻撃を強めていた。 ボウチャンスクはロシア南西部ベルゴロド州との国境から 5 キロの位置にある。 2022 年の本格侵攻開始前の人口が約 1 万 7 千人とハルキウ州の国境地帯では最大規模だ。 軍参謀本部は発表で、同市と、ハルキウから北約 25 キロにあるルキャンツィの 2 カ所について「兵士の命を守り、部隊を維持するため、より有利な位置に移動した」とした。 同州のシネフボウ知事によると、ロシア軍の地上作戦開始以降、州北部国境地帯から避難した住民は約 7,500 人に上る。 ボウチャンスクからも多くの住民がハルキウなどへ避難した。 ボウチャンスクは 22 年 2 月の本格侵攻開始から同年 9 月まで一時、ロシア軍の占領下に置かれた。 (asahi = 5-15-24) ブリンケン米国務長官がキーウ訪問 兵器供給の遅れ認め、継続支援を約束 ブリンケン米国務長官は 5 月 14 日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)に到着した。 米議会が先月、ウクライナ支援法案を可決して以降、米政府高官がウクライナを訪問するのは初めて。 ブリンケン氏は現地大学での演説で、米国の兵器供給の遅れによりウクライナがロシアの攻撃に対してより脆弱になったことを認めた一方、「ウクライナの安全保障、主権、自らの道を選択する能力が保証されるまで」米国は支援すると述べた。 (Reuters = 5-15-24) ロシア軍、ウクライナ国境の町ヴォヴチャンスクに侵入 北東部への越境攻撃続き数千人が避難 ウクライナ北東部ハルキウ州への越境攻撃をしているロシア軍は 13 日、国境沿いの町ヴォヴチャンスクに入ったと発表した。 同町はウクライナ第 2 の都市ハルキウに近い。 一方のウクライナ軍は、ヴォヴチャンスクの北郊から「敵を押し返し」、いくつかの地域で「戦術的成功」を収めたとしている。 ロシアは 10 日に仕掛けたハルキウ州への越境攻撃で、これまでに少なく 9 つの村や集落を占領し、攻撃を強化している。 この越境攻撃は 2022 年 2 月のウクライナ全面侵攻開始以来、最も重要な地上攻撃の一つ。 攻撃を受け、住民数千人がハルキウ市方面に避難している。 ウクライナ軍の指揮官たちの間では、ロシア軍がハルキウ市を砲撃できる範囲内に到達したら何が起こり得るのかをめぐって懸念が広がっている。 ウクライナ軍は、ロシアが最新の攻撃で「かなりの兵力(最大で 5 大隊)」を投入したとし、ロシア軍がいくらかの「戦術的成功」を収めたことを認めた。 しかし、13 日夕の声明では、ロシア側が同日に 100 人以上の兵士を失い、ウクライナ軍がかつての陣地を取り戻しつつあると説明した。 また、12 地域で戦闘が続いており、ヴォヴチャンスクの西に位置する集落スタリツァにまで広がっているとした。 ウクライナ軍はこの声明に先立ち、防衛強化のために予備部隊がハルキウ州へ移動していると明らかにしていた。 これとは別に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は夕方の演説で、新たな司令官がハルキウ州の部隊を指揮することになったと発表した。 この司令官はミハイロ・ドラパティイ准将で、いつ前任のユーリー・ハルシュキン准将を引き継いだのか、大統領は明かさなかった。 ハルキウ市から 74 キロメートルの位置にあるヴォヴチャンスクはここ数日、激しい砲撃を受けている。 周辺地域の当局者によると、ロシアは現在、滑空爆弾を使って複数の集落を狙っているという。 ヴォヴチャンスクはハルキウ州の重要な町ではあるものの、軍事的に特に重要というわけではない。 それでも、ロシア軍がヴォヴチャンスクを占領すれば、ウクライナ側の士気に打撃を与えるだろう。 ハルキウ州のオレフ・シネグボフ知事は、ロシアは新たな方向に向けて小規模集団による攻撃を行うことで、意図的に前線をのばそうとしていると述べた。 ロイター通信によると、シネグボフ知事は地元テレビ局に対し、ウクライナ軍はロシア軍を食い止めているが、戦闘が新たな集落へと広がる可能性があると警告した。 シネグボフ氏は、ロシア軍が前進を続けており、状況は「かなり複雑」だと、メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。 また、すでに 6,000 人近くが避難し、30集落が迫撃砲や砲弾による攻撃を受けたと付け加えた。 ヴォヴチャンスクには依然、200 - 300 人ほどが残っているという。 ハルキウ市へ逃れる人々 ロシア軍の越境攻撃でハルキウ市が占領される可能性は低いと思われる。 しかし、ウクライナ北東部の新たな前線にロシア軍が徐々に近づいているという現実は、同地域で暮らす人々の不安を増大させる一方だ。 ハルキウ市の援助拠点には、戦闘地域に近い町や村から逃れた人々が数百人単位で到着している。 自宅を離れた人々は食料が与えられ、シェルターの利用登録を行う。 ヴォヴチャンスクの住民、ヴェニアミンさん (87) は 12 日にロシア軍に包囲された町を離れ、安全な場所まで 15 キロの道のりを自転車をこいで移動してきたと、BBC に語った。 移動中は激しい砲撃だけでなく、「双方から機関銃の音が聞こえた」という。 「あの場所にいられるような状況ではなく、走らなければならなかった」とヴェニアミンさんは述べた。 そして、町の電気と水の供給は寸断されていたとも付け加えた。 ヴォヴチャンスクの別の住民、リューダさんは、近くの村に住む家族と一緒に避難した。 「機関銃の音が聞こえて、戦闘が近づいているのがわかったので避難した」と、リューダさんは述べた。 2022 年 2 月にロシア軍が侵攻してきた時には、町に残ったという。 「私たちは生き延びて、(この状況に)慣れていた」 同年後半にウクライナ軍が戻ってくると、生活は改善した。 しかし、今回のロシア軍の攻撃は「すごく怖かった」という。 ナディアさんと夫、母親の 3 人は、ロシア軍が国境を越えて再び侵入してきたリプツィ村の近くから逃れてきた。 3 人は飼い犬2匹と所持品をさびついた車に詰め込み、ハルキウ市に向かった。 夫は、そこから離れれば「自分たちが持っていたすべてが失われてしまうから」地元に残りたがっていたという。 しかし、地元の行政機関から、いま立ち去らなければ足止めされる危険性があると言われたのだという。 「私たちは 2022 年に占領下で暮らしていた。 また占領下に置かれたくはない。」 ヴォヴチャンスクを離れたコスティヤンティン・ティムチェンコさんは、戦闘がどれほど間近に迫っていたのかということにショックを受けたと語った。 「(ヴォヴチャ川の)反対側に(ロシア軍が)、もう一方に我々の軍がいた。」 「戦車は絶えず、近づいてきては撃ち返して、離れていくことを繰り返している。 私は大丈夫だろうと思っていたので、ショックだった。 (こうなることを)事前に知っておきたかった。」 ウクライナ東部やロシア西部でも攻撃が報告 ロシア占領下のウクライナ東部ドネツク市では砲撃で 2 人が死亡したと、ロシアに任命された市長は主張している。 ウクライナ東部のロシア支配地域ルハンスク州・クラスノドン(ウクライナ語でソロキン)の工業地帯への攻撃では、少なくとも 3 人が死亡したと、ロシアの支援を受ける州知事が述べた。 これとは別に、ウクライナの治安当局筋は、ウクライナ軍がロシア西部の石油ターミナルと変電所を攻撃したと話した。 ロシアは、2014 年に一方的に併合したウクライナ南部クリミアのいくつかの地域の上空で、ウクライナのドローン(無人機) 31 機を撃墜したとしている。 アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障担当)は 13 日、議会が承認した数百億ドル規模の対ウクライナ軍事支援の一部が、「今週中」にも戦場に投入されるだろうと記者団に述べた。 そして、アメリカがウクライナに緊急に武器を提供するために「我々自身も、同盟国も、人事を尽くしている」と付け加えた。 (BBC = 5-14-24) 陽動か本格攻勢か ロシア軍の巧妙な作戦、ウクライナを翻弄 ロシア軍によるウクライナ北東部ハルキウ北方面への越境攻撃が本格的な攻勢の始まりなのか、それともウクライナ軍の兵力分散を狙った陽動なのかは、まだはっきりしたことを言える段階でなない。 とはいえ、ハルキウの北東 40km ほどにあり、ロシアとの国境からわずか数 km しか離れていないボウチャンシク市の住民にとっては、どちらであろうとあまり関係ないかもしれない。 故郷が再び戦場になっているのだ。 ロシアの 2022 年 2 月の全面侵攻前におよそ 1 万 7,000 人が住んでいたボウチャンシクは、侵攻開始直後にロシア軍に占領された。 その 7 カ月後、ウクライナ軍の最初の反転攻勢の過程で解放された。 だが今、ロシア軍の 3 個連隊の部隊に再び狙われている。 数千人の住民が避難を余儀なくされており、なかにはこの 2 年あまりで 2 回目の避難になる人もいる。 ボウチャンシクの戦いは、ロシア軍による北方からの新たな作戦で最初の大きな戦いのひとつになる可能性がある。 また、ロシア軍による数日間の偵察行動を経て、この方面の戦いを形づくる力学も徐々に見えてきた。 まず、ボウチャンシク市内やその周辺のウクライナ側の防御は、本来あるべき状態より手薄だったのかもしれない。 ウクライナ軍の将校デニス・ヤロスラウスキーは「要塞と地雷の第 1 線はたんに存在しなかった」と述べ、この不完全な防御は以前ここを守っていた領土防衛隊の部隊に責任の一端があると非難した。 ロシア軍の偵察部隊はボウチャンシク市内やその周辺のウクライナ側の防御線に穴がないか、探りを入れている。 とくに、ロシア側にとって地理的に有利な区域での偵察に注力している。 ボウチャンシク周辺の場合、これは市の北西方面を意味する。 市の西方にはドネツ川が流れており、進撃するロシア軍部隊の右翼(敵方に向かって右側)にとって自然の防護壁になるからだ。 ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター (CDS) は 12 日の作戦状況評価で、川に沿ってボウチャンシクに進めば「敵(ロシア軍)は兵力を温存できる」と指摘している。 ロシア軍は自軍に有利な地形で脆弱な集落などを特定すると、広範な攻撃の前段階として衛星誘導の滑空爆弾を撃ち込む。 キーウ・インディペンデント紙のオーストラリア人従軍記者フランシス・ファレルによると、11 日にはボウチャンシクに滑空爆弾が 20 発投下された。 「わたしたちが目撃した滑空爆弾の大半は無差別に民家を破壊し、人々や動物を殺傷した」とファレルは報告している。 ファレルはこうした爆撃を「破壊のための破壊」と表現しているが、それは違う。 ロシア軍機が最前線の集落などの民間の建物を破壊するのはウクライナ軍部隊の隠れ場所を奪うためであり、ロシア側がいつもやっていることだ。だとすれば、ボウチャンシクに対する滑空爆弾による爆撃はロシア軍が同市への地上攻撃を激化させる兆候なのかもしれない。 ロシア軍による北方からの作戦が陽動だとすれば、目的はおそらく、東部の攻勢の中心地チャシウヤールなどの都市を守っているウクライナ軍の旅団を北へ引き離すことだろう。しかし、この作戦が本格的な攻勢であれば、近日中に複数の連隊全体がボウチャンシクを攻撃するかもしれない。 ウクライナ軍の首脳部にとってのジレンマは、仮に陽動だったとしても、ロシア側は東部の作戦から兵力を回す余力がある限り、それをひそかに攻勢に転じることもできる点だ。 フィンランドの軍事アナリスト、ヨニ・アスコラは「ウクライナ側の人的戦力の制約を考えれば巧妙な方策だ」と解説している。 ウクライナ側は危険を冒さないようにしているようだ。 第 59 独立自動車化歩兵旅団や第 93 独立強襲旅団など数個旅団の部隊がすでにボウチャンシクに入っているか、向かう途上にある。 第 93 旅団は、保有する最高の車両であるスウェーデン製 CV90 歩兵戦闘車も投入している。 ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は「敵の計画は把握しており、敵のあらゆる作戦行動に柔軟に対応できる」と述べ、ロシア側の動きに合わせて部隊を配置する考えを示している。 ただ、シルスキーの楽観的な発言は、ある重要な事実を認めている。 ロシア側がまず動き、ウクライナ側はそれに対応しているということだ。 つまり、ロシア側が主導権を握っているということだ。 (David Axe、Forbes = 5-14-24) ウクライナ、ロシアの越境攻撃で弱点露呈 最も過酷な 1 カ月に ウクライナにとって、5 月は今までで最も過酷な 1 カ月となりつつある。 ロシア占領下から解放されて 18 カ月以上が経過した北部ハルキウ州の町ボルチャンスクは 10 日、激しい砲撃と空襲で朝を迎えた。 ロシアはすでに手薄になっているウクライナの防衛網にさらに追い打ちをかけている。 ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領や政府高官は、ロシアによるボルチャンスクへの進軍の試みは阻止されたと述べたが、その後もロシア軍はボルチャンスクへ続く陸路を断とうとしている。 ロシア軍は 10 日、国境沿い 60km にわたって大隊規模の攻撃を展開し、「グレーゾーン」と呼ばれる前線の複数の村を制圧したと主張している。 今年ロシアは攻撃能力の大半を東部ドネツク州での進軍に注力しており、遅々としながらも大きく前進している。 ボルチャンスク地域では激しい空爆が続き、11 日の時点でロシア軍はウクライナ国境沿いの村をいくつか掌握しているようだ。 今回の越境攻撃は、今年ウクライナ軍が見舞われた不運の一例に過ぎない。 ウクライナの兵力はぎりぎりの状態だ。 大砲の数はロシアよりもはるかに少なく、防空装備はどう見ても不十分で、何より兵士の数が不足している。 さらに乾燥した天候がロシア軍機械化部隊の移動を助け、窮状に輪をかけた。 ウクライナ国防省情報総局のバディム・スキビツキー副局長は先ごろ、英誌エコノミストとの取材でこう語った。 「我々の問題はいたって単純だ。 武器がないのだ。 我々にとって 4 月と 5 月が厳しい時期になることは、相手も最初から分かっていた。」 ウクライナ情報当局によると、全面侵攻以来ロシアは甚大な損害を負っているにもかかわらず、現在ウクライナ国内や国境付近に 50 万人以上の兵士を配備していると見られる。 またスキビツキー氏によれば、中央ロシアに「予備役師団を組織している」という。 北部国境の攻撃前には、「セーベル(ロシア語で『北』の意味)」と呼ばれる新たな集団が編成された。 ワシントンに拠点を置くシンクタンク、戦争研究所のジョージ・バロス氏はシーベルについて、「作戦的に重要な集団」だと CNN に語った。 「ロシアの狙いは 6 万 - 10 万人規模の部隊を編成してハルキウを攻撃することだった。 我々の見積もりでは 5 万人手前だが」とバロス氏は言い、「それでも戦闘能力としては十分だ。」 こうした新兵力の助けを借りて、機甲歩兵部隊は越境を試みた。 入手できる情報が示唆しているのは、作戦には期待が寄せられていたが、大勢の死者を出したようだ。 だが精鋭部隊が追加投入されれば(別の師団からの兵力増強もありうるとの報告がある)ロシアの野望が膨らむ可能性もある。 ウクライナ特殊部隊は先ごろ、CNN の取材で「これは序の口に過ぎない。 ロシア軍はさらなる攻撃に備えて前進拠点を構えている。」と語った。 ブログ「Frontelligenc」で戦争関連の記事を投稿しているウクライナ軍の元将校によれば、「人員不足のために、ウクライナは戦場で使える十分な数の大砲を大規模な部隊にあてがって国境に配備するのを見送らねばならない状況だ」という。 (CNN = 5-13-24) ロシア軍、ウクライナ北東部ハルキウで新たに四つの集落を制圧か … 露南西部では集合住宅が崩壊 ロシア国防省は 12 日、ウクライナ北東部ハルキウ州で新たに四つの集落を制圧したと発表した。 北から国境を越えてウクライナに侵入した露軍の攻勢が続き、ロイター通信はウクライナ側の話として、露軍が国境から約 5km に位置する同州ボウチャンスクの郊外に達したと報じた。 ウクライナ側が防戦を強いられている模様だ。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 12 日のビデオ演説で、ハルキウ州で激しい戦いが続いていると指摘し、露軍が「足場を固めている集落がある」とした。 露軍の狙いは「我が軍の戦力を分散させ、弱体化させることだ」と指摘した。 ハルキウ州内では戦闘の激化に伴い、住民の避難が続いている。 州知事は 12 日、市民 2 人が死亡したほか、2 日間で約 4,000 人が避難したと明らかにした。 ゼレンスキー氏は東部ドネツク州でも複数の地域で激しい戦闘が続いているとの認識を示した。 一方、ロイター通信によれば、ロシア側は、ウクライナと国境を接する露南西部ベルゴロド州の州都ベルゴロドで 12 日、10 階建ての集合住宅が崩壊し、少なくとも 13 人が死亡したと発表した。 ロシア当局者は、ウクライナのミサイル攻撃によるものだと主張している。 (yomiuri = 5-13-24) ウクライナの軽飛行機型ドローン、前線から 1,300km 超離れた巨大石油施設を爆破 ウクライナが軽量スポーツ機を改造した自爆型ドローン(無人機)でロシア領内の目標を攻撃し始めてから 1 カ月後、その 1 機がウクライナの前線から 1,300km 以上離れたロシア西部サラバトの製油所を攻撃した。 9 日にあったこの攻撃は、ウクライナによるこれまでのドローン攻撃のなかでも群を抜いて長距離のものだった。 ウクライナがロシアの製油所や工場、戦略的に重要な軍事施設を狙った遠距離打撃作戦をエスカレートさせていることも意味する。 スポーツ機改造型ドローンによる越境攻撃としては、失敗に終わったとみられるものも含めると少なくとも 4 回目だ。 現地の人が撮影した映像には、左右に真っすぐ伸びた幅広の翼、固定式の車輪、プロペラと、安価なスポーツ機の特徴がはっきり捉えられている。 こうした軽飛行機は中流階級のアマチュアパイロット向けに、自宅で組み立てられるキットなどとして 9 万ドル(約 1,400 万円)程度で市販されている。 ウクライナ国防省情報総局は特殊作戦軍と協力して、国産の 2 種類のスポーツ機をドローンに改造した。 ひとつはアエロプラクト社が手がける A-22、もうひとつはアエロス社がライセンス生産するスカイレンジャー・ニンジャだ。 どちらの DIY ドローンも安価なビデオカメラ、オンボードコンピューター、操縦装置に接続されたサーボ機構(自動制御システム)、映像の送信や制御信号の受信に用いる衛星無線機を搭載しているとみられる。 A-22 型は爆発物を機内に搭載するようだ。 ニンジャ型は 100kg の爆弾を胴体下に装着する。 両機とも時速 160km 前後で巡航し、民間の航空交通に紛れて飛行するので、迎撃するのは難しい。 1,300kmという距離は、スポーツ機で一般的な 76L の燃料タンクを満タンにしてぎりぎり飛べる距離だ。 改造機では重量よりも航続距離を優先して燃料タンクを増設しているのかもしれない。航続距離が伸びるほど攻撃可能な目標は増える。 4 月 2 日には A-22 改造型ドローン少なくとも 1 機が、ウクライナとの国境から約 1,000km 離れたロシア西部エラブガの経済特区内にあるイラン設計のシャヘド自爆型ドローンの工場を攻撃した。 同月 17 日ごろには、やはり A-22 改造型とみられる複数のドローンが、国境から約 500km ロシア西部コビルキノに配備されているロシア軍の OTH (超水平線)レーダーに連続攻撃を行った。 アンテナ塔や管制施設を損傷させた可能性がある。 4 月 27 日かその少し前には、ニンジャ改造型ドローンがロシア領内への攻撃を試み、国境から 1,000km ほど離れた地点に墜落している。 この攻撃は失敗に終わったが、2 週間後に行われたサラバトの製油所に対する攻撃はウクライナ側にとってより実りの多いものになった。 ロシア国営ガス会社のガスプロムが保有するこの製油所はロシア国内で最大級の石油関連施設だ。 こうした遠距離打撃作戦でウクライナが何を達成しようとしているのか、正確なところは不明だ。 一連の攻撃でロシアのガソリン生産はやや落ち込んだものの、おそらくロシア経済にただちに影響を与えるほどではない。 現時点でロシアの長期的な戦争努力に打撃になりそうにもない。 ウクライナのエネルギー専門家であるヘンナディー・リャブツェウは、地元メディアのウクラインシカ・プラウダにこう語っている。 「これらの攻撃は単発的なものです。 (ロシア側に)痛みをもたらし、物流に影響を与えはしても、年間の製油量全体にはたいして影響を与えないでしょう。」 ウクライナ側はこうした攻撃によってロシアの防空網に負荷をかけることを狙っているのかもしれない。ドローンで越境攻撃を続ければ、ロシア側は国内各地に何百とある攻撃目標を守ることを強いられる可能性があるからだ。防空網が引き延ばされれば、個々の基地や工業施設の防御は薄くなる。「どこもかしこもは守れない」とマーク・ハートリング米陸軍退役中将が言っているとおりだ。 もしこれがウクライナ側の真の狙いなら、ロシア領内への遠距離攻撃は、より前線近くへの攻撃、たとえば飛行場や訓練場に対する地上発射型ロケット弾や短距離ドローンによる攻撃と補完関係にあると考えるべきだろう。 つまり、ウクライナ側はスポーツ機改造型ドローンを使って深部をたたくことでロシア側の防空システムを分散させ、それを通じて、もっと直接的で明瞭な効果が期待できる攻撃をやりやすい状況をつくり出そうとしているのかもしれない。 たとえば 5 月 1 日ごろ、ウクライナ東部ルハンシク州で野外に集まっていた大勢のロシア軍部隊に対して行われた攻撃などがそれに当たるかもしれない。 この攻撃では ATACMS 地対地ミサイルの一撃で、ロシア軍の兵士ら 100 人以上が死亡したと伝えられる。 (David Axe、Forbes = 5-11-24) 「ロシアが防衛線突破試み」ウクライナ国防省 ハルキウ州で戦闘激化 ウクライナ国防省は 10日、ロシア軍がウクライナ北東部ハルキウ州にある北部国境付近の前線を突破しようと試みたと、SNS で明らかにした。現時点では撃退できているが、複数の地域で戦闘が続いているという。 同省によると、ロシアは 9 日夜から 10 日の朝にかけて、国境から 10 キロ未満に位置するハルキウ州ボウチャンスクで空からの攻撃を実施。 夜が明けると、砲撃を含めて前線での圧力を強め、10 日午前 5 時ごろにウクライナの防衛線を突破しようとしたという。 ウクライナ側は「これらの攻撃は撃退された」としつつ、防衛強化のため、予備部隊を投入した。 「(ロシア軍の)攻勢を抑え続けている。」としている。 ハルキウ州のシネフボウ知事も 10 日、SNS で、ロシア軍が多連装ロケットシステム「MLRS」などを使って国境を突破しようとしたと報告。 「様々な武器を用いた攻撃が、ここ数日で激化している」と記し、周辺の住民には避難をためらわないよう呼びかけた。 ロシアとの国境から南に 30 キロに位置する同州の州都ハルキウは、全面侵攻開始前の時点で約 140 万人が暮らし、首都キーウに次ぐ第 2 の都市だ。 ゼレンスキー大統領は 4 月、ハルキウの状況を「非常に厳しい」と語り、防空体制を強化する必要性を訴えていた。 だが、5 月に入ってもハルキウでは連日のようにロシア軍による攻撃が伝えられている。 テレホウ市長の 10 日の SNS 投稿によると、この日も地対空ミサイル「S300」を使った攻撃があり、11 歳の子ども 2 人と 72 歳の女性 2 人が負傷したという。 (キーウ・藤原学思、asahi = 5-10-24) 「停戦しても、終わりなき戦争が待つだけ」 ウクライナ大統領最側近 ウクライナのゼレンスキー大統領の最側近の一人、ミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問が 8 日、キーウ市内で朝日新聞の取材に応じた。 全面侵攻を続けるロシアとの現時点での停戦交渉の可能性を否定し、「交渉のテーブルにつくという幻想を抱かないでほしい」と主張した。 停戦交渉の条件についてゼレンスキー氏は、ロシア軍の撤退や正義の回復といった 10 項目の「平和の公式」が軸になるとくり返してきた。 ポドリャク氏は、ロシアがすでに占領したウクライナ領を維持できると考えている以上、仮に停戦しても「終わりなき戦争」が待っているだけだとし、ウクライナ社会もそれを理解していると語った。 スイスでは 6 月、各国首脳級でウクライナ和平の道筋を協議する初めての「平和サミット」が開かれる。 ポドリャク氏は、「中立」とされる国々も含めて可能な限り多く参加することが望ましいとした。 (asahi = 5-9-24) ウクライナの「プラン B」とは どうなる反転攻勢 大統領側近に聞く [キーウ] ウクライナのゼレンスキー大統領の最側近の一人として知られるミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問が 8 日、キーウ市内で朝日新聞の取材に応じた。 ロシアによる全面侵攻が長期化するなか、6 月にスイスで開かれる「平和サミット」への展望や期待、今後の反転攻勢のほか、日本の支援について語った。 (聞き手・藤原学思、asahi = 5-9-24) ウクライナ・シュミハリ首相単独インタビュー 6 月 15 - 16 日、各国首脳級でウクライナ和平の道筋を協議する初めての「平和サミット」が開かれます。 主なポイントはどのようなものですか。
成果物はどのようなものになるのでしょうか。
「公正な平和」をどう定義しますか。
「平和の公式」以外の「プラン B」は腹案としてあるのでしょうか。
その具体的な道筋は見えていますか。
平和サミット、中国の参加にも期待感 参加国について、ゼレンスキー氏は「80 - 100 カ国」と 4 月に語っていました。 実際はどうですか。 中国は「平和サミット」に参加するのでしょうか。
ロシアとの交渉を始める条件は何でしょうか。
ロシアの砲弾数は「ウクライナの 10 - 12 倍」、反転攻勢は? 戦場で主導権を握ることに関して、冬よりも見通しは明るくなっていますか。
新たな反転攻勢について、ゼレンスキー氏は「準備している」と 2 月に米 FOX ニュースに語りました。
日本は「あらゆることをしてくれている」 昨年 12 月のウクライナの世論調査では、いかなる領土譲渡にも反対の国民は 74% でした。 ただ、その割合は減少しています。
日本がウクライナにとって、さらにできることはどのようなものでしょうか。
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