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ハルキウ州でロシアの進撃「阻止」 ウクライナ軍 ウクライナ軍は 24 日、北東部ハルキウ州でロシア軍の進撃を「阻止」し、反撃に移っていると明らかにした。 だが、他の戦線ではロシア軍が攻勢を強めているという。 ロシア軍は今月 10 日、ハルキウ州への新たな地上侵攻を開始。 多くの兵力を投入し、ここ 1 年半で最大となる領土を奪取し、東部戦線ではここ 2 週間で領土を相次いで制圧したと主張している。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 24 日、国境から 5 キロも離れていない町ボウチャンスクでの戦いについて協議するため、州都ハルキウ市を訪れた。 ハルキウ戦線でロシア軍を阻止したとするウクライナ軍の発表によると、「状況は制御下にあり、反撃行動に移っている」という。 ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は、ロシア軍は当初の成功にもかかわらず、「ボウチャンスクでの市街戦で完全に行き詰まり、突撃部隊に多大な損害を出した」、「(ロシアは)他の戦線から予備兵力を動かし、攻勢を支援しようとしたが無駄に終わった」とソーシャルメディアに投稿。 一方で、東部戦線の状況はめまぐるしく変化していると警告した。 (AFP/時事 = 5-25-24) ウクライナ・ハルキウ州、ロシア軍が印刷所攻撃 7 人死亡 ロシアと国境を接するウクライナ東部、ハルキウ州で 23 日、印刷所に攻撃があり 7 人が死亡しました。 ウクライナ国家警察によりますと 23 日、ウクライナ東部のハルキウ州でロシア軍による攻撃がありこれまでに 7 人が死亡し、17 人がケガをしました。 地元知事は攻撃を受けたのは雑誌や新聞などを印刷する印刷所で犠牲者は全員が民間人だったとして攻撃を非難しました。 またゼレンスキー大統領も「ロシアはあらゆる生活圏を破壊しようとしている」と述べています。 ロシア軍は今月に入りロシアとウクライナの国境地帯のウクライナ側に緩衝地帯をつくるためとしてハルキウ州への攻撃を強めています。 一方、ロイター通信によりますと、プーチン大統領は 23 日、アメリカが制裁としてロシアの資産を没収した場合にはロシア国内のアメリカの資産を差し押さえて活用できるとする大統領令に署名しました。 アメリカや EU = ヨーロッパ連合はロシアのウクライナ侵攻に対する制裁として国内にあるロシアの資産を凍結する措置を取っています。 アメリカではさらにこの資産を没収してウクライナへの支援にあてることも検討されていてプーチン大統領としてはこうした動きをけん制する狙いがあるとみられます。 (日テレ = 5-24-24) ウクライナ軍のストライカー装甲車が本領発揮 北東部の都市でロ軍歩兵の撃退続ける 米国は 2023 年初め、米陸軍の退役したストライカー装甲車 200 両近くをウクライナに供与した。 ストライカーは機関銃や擲弾発射器で武装し、乗員 2 人のほかに兵員 9 人が乗り込める重量 20t 弱、8 輪の車両だ。 ウクライナ軍参謀本部はそのほとんどを新編の第 82 独立空中強襲旅団に配備した。 第 82 旅団は、ウクライナ軍の精鋭軍である空中強襲軍(空挺軍)の精鋭旅団だ。 それから 1 年数カ月後、この機敏な戦闘車両はついに、米陸軍と米ゼネラル・ダイナミクス社が 1990 年代に開発した際に想定していた戦闘エリアに投入された。 都市である。 具体的には、ロシアが 2 週間前にウクライナ北東部ハルキウ州で始めた攻勢の現在の中心地、ボウチャンシク市だ。 第 82 旅団については、ロシア軍がウクライナ第 2 の都市、ハルキウ市の北の国境を越えて攻め込んできた直後、ボウチャンシクの守備隊の増援に急派されたという情報が流れていた。 22 日、第 82 旅団はソーシャルメディアに動画を投稿し、ボウチャンシクに展開していることを認めた。 ドローン(無人機)の空撮映像や兵士がヘルメットに装着したカメラの映像を編集した動画には、同旅団の部隊がボウチャンシク中心部の市街地で戦闘を繰り広げる様子が映っている。 兵士がストライカーの上面のハッチから身を乗り出し、対戦車ミサイルを発射する姿も見える。 エストニアの軍事ブロガー、WarTranslated(@wartranslated)が引用し、字幕翻訳を付けている別の動画では、第 82 旅団に所属する軍人が「防御陣地を確保し、敵を撃退するのが任務でした」と説明している。 まさにこれこそ、第 82 旅団にふさわしい任務だ。 米軍のストライカー部隊で初めて戦闘に臨んだのは、陸軍第 2 歩兵師団の第 3 旅団だった。 2003 年 10 月、この部隊は米国を中心とした国々によるイラクに対する戦争で、不穏な情勢だった北部の大都市モスルに派遣された。 米陸軍のウォルター・グレイ 2 世少佐は「(ストライカー)部隊は複数の任務に従事した。 ストライカーは機動力、速度、静粛性からモスル市街地での襲撃や巡回、包囲・捜索作戦に適していたので、兵士の間でたちまち高い評価を得るようになった」と 2017 年の論文に書いている。 意味するところは明らかだ。 ウクライナ軍もまた、ストライカーを運用する旅団は市街戦にこそ投入すべきなのだ。 反対に避けるべきなのは、ロシア軍の機械化旅団や戦車旅団と直接戦わせることである。 ストライカーよりも重い戦車やその他の装軌戦闘車両が、より優れた長射程の火力を発揮できる、開けた地形ではなおさらだ。 ストライカー部隊の「主な役割はロシア軍の車両編成を撃破することではない」とグレイも言及している。 第 82 空中強襲旅団は昨年夏に初めて戦闘に参加したとき、まさにこうした間違った地形で、間違った敵と戦わされた。 ウクライナ南部の開けた土地で、壕に車体を隠したロシア軍の機械化部隊とまみえたのだった。 その結果、オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス (Oryx)」で確認されているだけで、ストライカーを少なくとも 8 両撃破されている。 南部の戦線が安定し、ロシア軍がウクライナの東部と北東部の都市部に兵力を集中させるなかで、第 82 旅団はようやく、みずからの得意とする地形で戦う機会を得た。 第 82 旅団の第一陣がボウチャンシクに送られたとき、この増援に懸かっているものは非常に大きかった。 ロシア軍の新たな軍勢はボウチャンシクを攻略してハルキウに向かうルートを切り開く狙いとも考えられた。 北方に集まってきたこの部隊も、ウクライナのほかの前線で有効だった歩兵先行の突撃戦術を採用していた。 ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター (CDS) は「突撃部隊、通常は小隊規模(40 人程度)の集団が拠点を攻撃し、その後ほかの突撃部隊と合流する」と解説している。 「こうすることで、目標に接近する際に損害を抑えられる半面、前進ペースは遅くなる。」 ロシア軍の複数の小隊がボウチャンシク中心部の中間地帯に散開したため、最前線はあいまいになり、第 82 旅団のストライカー部隊は 360 度全方向の戦いを強いられた。 同 旅団の前出とは別の軍人は「われわれは円形防御を維持した。 彼ら(ロシア軍部隊)はあらゆる方向から向かってきた」と語っている。 ストライカーの集団は円状に陣取って戦うのに適している。 車高が約 2.7m あり、上部にセンサー類や火器を搭載するストライカーは優れた監視・射撃プラットフォームにもなり、ロシア側が忍び寄るのは難しい。 それ以上に重要なのは、ストライカーは1両で 9 人の歩兵分隊を運べることだ。 ストライカーが 4 両あれば、40 人近い歩兵小隊を展開できる。 ウクライナ軍の別の部隊に配備されている米国製の M2 ラッドレー歩兵戦闘車はストライカーよりも重装備だが、兵員スペースは狭く、歩兵小隊を運ぶにはもっと数が必要になる。 グレイがストライカー部隊は「下車戦闘部隊として運用するのが最適」と述べているのももっともだ。/p> 第 82 空中強襲旅団がボウチャンシクでの市街戦にしっかり対応できる状態にあったのは明らかだ。 ロシア軍部隊は北東部攻勢の最初の数日で数 km 前進したものの、ボウチャンシク中心部で第 82 旅団とそのストライカーを含むウクライナ側の強固な防御にぶつかり、ほぼ足止めされることになった。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは先週時点で、この方面のロシア軍について「足場を築こうとさらに南の森林や建物への侵入を続けているようだ」と分析しつつ、「南へ奥深く前進できるのかは疑問だ」としている。 (David Axe、Forbes = 5-24-24) ハルキウで 6 人死亡、20 人以上負傷 ロシア軍が交通インフラ攻撃 ウクライナ北東部ハルキウ州で 23 日、ロシア軍の攻撃を受け、少なくとも 6 人が死亡、20 人以上が負傷した。 地元メディア「キーウ・インディペンデント」などが、現地の知事の話などとして伝えた。 シネフボウ知事らによると、州都ハルキウ市内で約 10 回の爆発音が聞こえたという。 市内の交通インフラや公共サービス会社の建物が攻撃を受け、印刷店では火災が発生した。 また、国営ウクライナ鉄道は 23 日、ハルキウ市や周辺の地域へのロシア軍によるミサイル攻撃で、同社の複数の施設が被害を受け、6 人の従業員が負傷したと発表した。 ハルキウ州では、ロシア軍が新たな地上作戦を進めるなど攻撃を強めている。 ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日のロシア軍による攻撃について、「ロシアはウクライナの防衛システムの欠如を利用している。 この弱点は私たちのものではなく、3 年間、テロリストに対して適切に対処する勇気を持たなかった世界の弱点だ」と自身のテレグラムで述べた。 (村上友里、asahi = 5-23-24) ロシア軍の車両不足がますます深刻化 70年前の軽装甲車両で無謀な突撃 1950 年代に開発され、防護の薄い BTR-50 装甲兵員輸送車は、ロシア軍がウクライナ軍の陣地に対する直接攻撃に用いている車両のなかで、最もひどい代物ではないにしても、おそらく最も古いものだろう。 最もひどくはないと言えるのは、たとえばゴルフカートのような前後左右吹き抜けの中国製の新しい車両よりは、たとえ厚さ 10mm でも装甲のある車両に乗り込んで移動するほうが、ロシア兵にとってまだ安全だろうからだ。 とはいえ、ロシアのウクライナに対する全面戦争が 2 年 4 カ月目に入ろうとするなか、ウクライナ東部の戦場で BTR-50 の出番が増えているというのは、やはりロシア側にとって不吉なことである。 ウクライナの調査分析グループであるフロンテリジェンス・インサイトは「戦車のような相応の戦闘車両を完全に装備する機械化部隊がなければ、防御を迅速かつ決定的に突破することは非常に難しいだろう」と解説している。 そのうえで「ロシア側はこうした制約があるために、前進は遅く限定的なものになり、全体の進捗も妨げられる公算が大きい」と予想している。 BTR-50 はディーゼルエンジンを搭載し、無限軌道を履いた重量 14.5t ほどの装甲車両で、乗員 2 人のほか、兵員最大 20 人が乗り込める。 通常、重機関銃を装備する。 BTR-50 は 1950 年代初めにソ連で開発され、1954 年に就役してから12年にわたってソ連軍の主力戦闘車両だった。 乗員は BTR-50 で歩兵部隊などを戦場に運び、防護しながら下車させ、その後兵士たちを機関銃で支援した。 ただ、BTR-50 は 1960 年代の基準ですら軽武装で軽装甲だった。 そのため、より重く、より重武装の BMP-1 歩兵戦闘車が 1966 年に導入され、数千両の BTR-50 は第二線の部隊に回された。 これらの BTR-50 は砲兵や工兵、対空砲などを運ぶのに使われたが、その役割ものちに MT-LB 装甲牽引車が担うようになった。 今日のロシア軍も、もともとは BTR-5 をほとんど使っていなかった。 だが、2022 年 2 月のウクライナ全面侵攻後 1 年 3 カ月ほどたった頃から、ロシア軍がウクライナで月に失う近代的な装甲車両の数は、新規生産や 1980 年代製以降の比較的新しい保管車両の改修による補充分を上回るようになった。 ロシアはやむを得ず、2023 年初め、屋外で保管していた BTR-50 を再利用し始めた。 ロシア軍の指揮官たちも、さすがに当初は BTR-50 を前線には投入せず、後方の支援任務に振り向けていた。 しかし 2023 年末になると、BTR-50 はウクライナ東部の突撃部隊の間に姿を見せ始めた。 それから半年の間に、ロシア軍は BTR-50 を少なくとも 5 両戦闘で失ったことが、オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス (Oryx)」のアナリストによって確認されている。 うち 1 両は 19 日かその少し前、ドネツク州ノボミハイリウカの西にあるウクライナ側の防御線を攻撃した際、ジャベリン対戦車ミサイルの直撃を受けた。 この方面の防御線を維持する第 79 独立空中強襲旅団の対戦車ミサイル兵は、血に飢えていることで有名だ。 第 79 旅団に対しては、厚さ数百 mm の装甲を備える T-72 戦車を送り込むのでさえ危険だろう。 まして、わずか 10mm という薄い装甲の BTR-50 を送り込むのは自殺も同然だ。 BTR-50 による破滅的な突撃は、ロシア軍の抱えるより広範な問題を浮き彫りにしている。 ウクライナには、米国と欧州から数百億ドル規模の新たな軍事援助の一部が届き始めている。 ロシア側はこうした援助が到着する前に少しでも多くウクライナの領土を奪うつもりだったのか、2 週間ほど前、ウクライナ北東部の国境を越えて南進し、新たな攻勢に乗り出した。 ロシアとの国境から 40km しか離れていないウクライナ第 2 の都市、ハルキウを最終目標に据えている可能性もあるこの攻勢で、ロシア軍は当初、国境沿いでいくつかの村を一気に制圧した。 しかしその後、米国から届いた新たな砲弾を発射するウクライナ軍の機械化旅団の壁に阻まれた。 ロシア軍がウクライナ南部での陣地戦と並行して、東部と北東部で攻勢を継続するのは困難だということが明らかになった。 フロンテリジェンス・インサイトによれば、北東部でロシア軍が大きな前進を遂げるには「大量の車両」が必要になる。だが、ロシアは毎月数万人の新兵を動員しているものの、これらの兵士に十分な近代的な車両をあてがうことはできていない。 BTR-50 は、博物館から直接引っ張り出したようなものを除けば、ロシア軍で最も古い戦闘車両である。 防護も、ゴルフカートのようなデザートクロス 1000-3 全地形対応車に比べれば多少はましという程度だ。 BTR-50 で突撃しているところをウクライナ軍の対戦車ミサイル部隊に見つけられるというのは、老朽化した 70 年物の車両の乗員や兵員にとって非常にまずい事態になるだけではない。 それは、ロシアの戦争努力全体にとってもゆゆしい問題があらわになるということでもある。 (David Axe、Forbes = 5-22-24) ウクライナ、北東部国境の町の 6 割を死守 激しい市街戦続 = 当局 [キーウ] ウクライナ当局は 20 日、ロシアの激しい攻撃が続く北東部ハリコフ州の国境の町ボウチャンスクについて、ウクライナ軍が依然として約 60% を死守していると述べた。 ロシアがボウチャンスクを占領すれば、今月初めにハリコフ州北部に新たな戦線が開かれて以来、ロシア軍に大きな戦果を与えることになる。 ハリコフ州のシネグボフ知事は、ウクライナ軍が市街地の細かい区域ごとに防衛を試みているとし、「この地域の北部を素早く占領するという敵の計画は失敗した」と述べた。 (Reuters = 5-21-24) ようやくロシア戦闘機と戦える …! 間もなく誕生「F-16 ウクライナ仕様」で戦況が激変するワケ 古くなってもアップデートされていれば性能は上 ロシアによるウクライナへの侵略戦争は 2 年以上にも及んでいるものの、いまだ終わりの兆しが見えません。 そのような中、まもなくウクライナが長きにわたり待ち望んでいた F-16 「ファイティングファルコン」戦闘機の配備が始まろうとしています。 ウクライナ空軍は、これまで旧ソ連製の MiG-29 「フルクラム」や Su-27 「フランカー」といった戦闘機も少ないとはいえ保有していましたが、防空の主力は各種地対空ミサイルシステムでした。 しかし F-16 の導入によって今後、ウクライナ空軍は改めて戦闘機による領空防衛が行えるようになるでしょう。 では、従来の MiG-29 や Su-27 といった戦闘機と、アメリカ製の F-16 では何が違うのでしょうか。 MiG-29 や Su-27 が開発された時期はいずれも 1980 年代ころです。 飛行性能こそ現代的な水準にありますが、搭載するレーダーシステムなどは陳腐化しており、新型機と比べると劣勢は否めない状況にあります。 一方、ウクライナ空軍へ引き渡される予定の F-16 は、オランダならびにデンマーク両国の空軍に配備されていた中古機で、年式だけで見ると MiG-29 や Su-27 よりもさらに 10 年古い機種です。 しかし、これらは MLU (中期アップデート)プログラムと呼ばれる寿命延長・近代化改修を受けているため、2024 年現在もアメリカ空軍など世界中で数的主力を担う F-16 ブロック 50 と呼ばれるタイプと同等までに性能が引き上げられており、最新鋭とは言えないものの十分に戦える性能を有しています。 そのため、MiG-29 や Su-27 よりも古いものの性能は格段に上だと言えるでしょう。 搭載可能なミサイルの性能差が圧倒的 MLU プログラムが適用された近代改修型は「F-16AM」と呼ばれます。 この F-16AM は MiG-29 や Su-27 に比べて具体的にどのように強いのか。最も空中戦能力に大きな影響を与えると見られる違いが、AIM-120「アムラーム」中射程空対空ミサイルを搭載できるという点です。 「アムラーム」ミサイルは、タイプによるものの約 100km の射距離を有していると推測されます。 また、ミサイル本体に照準用レーダーが搭載されており、ミサイル自身が敵をレーダーロックオンし、発射後は F-16AM の助けを必ずしも必要としない「撃ちっ放し」と呼ばれる自律誘導が可能です。 こうした誘導方式を「アクティブレーダー誘導」と呼びます。 一方、MiG-29 や Su-27 が搭載する R-27 空対空ミサイルは射距離こそ「アムラーム」に匹敵するものの、ミサイル本体にはレーダーがありません。 そのため R-27 を発射した戦闘機は常に相手を自機のレーダーでロックオンし続け、命中までミサイルを誘導する必要があります。 こうした誘導方式を「セミアクティブレーダー誘導」と呼びます。 現代の戦闘機による空中戦は、ミサイルの性能が戦闘機の機動性をはるかに凌駕するため、「相手の射距離に入る = 撃墜される」という厳しい状況にあります。 F-16 の運用開始でようやくロシア空軍と対等に セミアクティブレーダー誘導の空対空ミサイルを相手に命中させるためには、相手の射距離に入る覚悟を持った上で、命中までミサイルを誘導してやらねばならないという大きなリスクを抱える必要があります。 それに対し、「アムラーム」を含むアクティブレーダー誘導の空対空ミサイルなら、発射後は早期に相手の射程圏外に逃げることが可能なので、こういった撃ちっ放し空対空ミサイルは、現代戦闘機の必需品と言えるまでになっています。 ロシア空軍の主力戦闘機である Su-35S や Su-30SM などは、「アムラーム」とほぼ同等の性能を持つといわれる R-77 「RVV-AE」空対空ミサイルを搭載しているため、R-27 しか持たないウクライナ空軍の MiG-29 や Su-27 では太刀打ちできません。 そのため、F-16AM によってはじめて対等に戦えるようになるといえるでしょう。 「RVV-AE」を搭載した Su-35S と、「アムラーム」を搭載した F-16AM の戦いは、戦闘機やミサイルの性能だけではなく、状況認識を得るためのデータリンク・ネットワークや、パイロットが実行する戦術など、さまざまな要素によって決まることは間違いありません。 それらを鑑みると、ウクライナが F-16 を本格的に前線で使用するようになった場合、航空優勢を確保しようと双方の戦闘機による空中戦が激化すると予想されます。 (関賢太郎、乗りものニュース = 5-21-24) ウクライナ軍、東部チャシウヤールでもロ軍の進撃阻止 潤沢な砲弾で突撃部隊を撃滅 4 月上旬、ウクライナ軍は危機に瀕していた。 米議会ではウクライナの戦争努力を支援する 610 億ドル(約 9 兆 5,000 億円)近くの予算案が依然として滞り、国内では多数の新兵を補充するための喫緊の改正動員法案がたなざらしになっていた。 人員が不足し、米国からの弾薬も枯渇したウクライナ軍は、2022 年 2 月にロシアの全面侵攻が始まってから最も弱体化していた。 それを知ったロシア軍は、ウクライナの 1,000km におよぶ前線の複数の方面で攻勢に出た。 それから 1 カ月後、米国からの軍需物資が再びウクライナに届くようになった。 動員法も成立して発効し、新兵の訓練や新たな旅団の編成が進められている。 ウクライナの命運は好転しつつある。 ウクライナ東部ドネツク州のチャシウヤールほど、それが明らかな場所はない。 ロシアの支配下にあるドネツク市の西にあり、かつて鉱工業で栄えたチャシウヤールは、ロシア軍によるこの方面の攻勢で主目標になっている都市だ。 当初、ロシア軍の機甲部隊はチャシウヤールの北と南から着実に前進し、歩兵部隊は、市の東端を南北に流れる運河の東側にあり、露出した格好になっているため最も脆弱な地区、通称「運河地区」に対する威力偵察を繰り返した。 そのころ、チャシウヤールを守るウクライナ側の防御は、もともと手薄だったものがさらに薄くなっていた。 運河地区を守備していた第 67 独立機械化旅団の司令部に深刻な不手際があったことが監察で確認され、ウクライナ国防省は 4 月中旬、この旅団を引き下げて大部分を解散させたからだ。 第 67 旅団が抜けた穴を埋めるため、第 56 独立機械化旅団や第 41 独立機械化旅団、第 5 独立強襲旅団の部隊が急派されたほか、ドローン(無人機)部隊も増援に送られた。 しかし、その間も現地ではロシア軍のSu-25攻撃機が前線のすぐ上空を飛び回り、防空ミサイルを使い果たしたウクライナ軍部隊に向けてロケット弾などを撃ち込んでいた。地上ではロシア軍の空挺部隊がチャシウヤールの北と南から前進を続け、ウクライナ軍の守備隊は包囲されかねない情勢だった。 ロシア軍がチャシウヤールを奪取するのと、現地のウクライナ軍に米国からの弾薬が届くのと、どちらが早いかの競争だった。 自由なウクライナの味方にとっての朗報は、ウクライナ側がこの競争に勝ったとみられることだ。 チャシウヤールの守備隊はいまでは潤沢な弾薬を手にし、ロシア軍の突撃部隊に大きな損害を与え始めている。 17 日、装甲車両およそ 20 両に乗り込んだロシア軍の 1 個大隊が、ドネツク市からチャシウヤールに向かった。 つい 2、3 週間前までなら、ロシア軍の突撃部隊は 5km ほどのこのルートのほとんどの区間を、ウクライナ側からの攻撃にたいして悩まされずに移動できていただろう。 対戦車ミサイルや砲弾が極度に不足していたウクライナ軍は、これらのロシア軍部隊に対する攻撃を FPV (一人称視点)ドローンに頼らざるを得なくなった。 しかし機体重量 900g かそこらの FPV ドローンは、せいぜい 3km かそこらの範囲しか飛べず、搭載する爆薬もわずか 500g ほどにとどまる。 この程度の量では、ロシア軍の車両に何重にも後づけされている追加装甲を貫くことは難しい。 だが 5月中旬の現在、ウクライナ側の弾薬は格段に充実している。 ロシア軍の縦隊はこの日、チャシウヤールに向けて開けた土地を移動中、ウクライナ側から 45kg の砲弾、23kg のミサイル、1kg のドローンをひっきりなしに浴びた。 運河地区までどうにかたどり着いた少数のロシア兵も、長くはもたなかった。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「ロシア軍はチャシウヤールに対する攻撃の最初の数週間は、運河に到達したり、さらには小部隊で運河を越えることもあったりと、矢継ぎ早に成果を収めたものの、結局、反対側(運河の西側)に足場を築き、さらに前進することはできなかった」と 17 日の戦況評価で説明している。 弾薬の到着で恩恵を受けているウクライナ軍部隊は、チャシウヤールの守備隊に限らない。 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は 16 日、「この戦争中で初めて、砲弾がないという不満がどの旅団からも出なかった」と述べている。 ゼレンスキーが砲弾の豊富さを誇張している可能性もなくはない。 それでも、先週末にロシア軍がチャシウヤールに突撃してきたとき、浴びせる火力がウクライナ側にふんだんにあったことは明らかだ。 (David Axe、Forbes = 5-20-24) ウクライナ大統領、北東部でのロシア攻勢を警告 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が 17 日、首都キーウで AFP の独占インタビューに応じた。 ロシアは今後、北東部で攻勢を強めるとの見方を示す一方で、前線を守るために必要なウクライナの防空システムは必要量の 4 分の 1 にとどまっていると訴えた。 ロシア軍はこれまで数か月にわたってわずかに前進したのみだったが、10 日にハルキウ州で新たな攻撃を開始して以来、過去 1 年半で最大の占領地拡大を達成した。 ゼレンスキー氏は北東部の戦況について、ウクライナ軍が阻止するまでにロシア軍は国境から 5 - 10 キロ侵入してきたと述べた。 その上で、これはより大規模な攻勢の「第一波」に過ぎないかもしれないと警告。 「(ロシアにとって)大きな成果だとは言わないが、冷静になり、彼らがわれわれの領土内で前進しつつあることを理解する必要がある」と語った。 ゼレンスキー氏は、ハルキウの状況は「管理下に置かれている」が、「安定していない」と指摘。 「われわれは必要な防空装備の約 25% しか保有していない」とし、ロシアの航空優勢に対抗するためより多くの防空システムや戦闘機を提供するよう支援国に呼び掛けた。 (AFP/時事 = 5-19-24) ウクライナ東部ハリコフ州で空爆、4 人死亡 【キーウ】 ロシア軍が地上侵攻し激戦が続くウクライナ東部ハリコフ州で 19 日、空爆があり、シネグボフ知事によると 4 人が死亡、少なくとも 8 人が負傷した。 (kyodo = 5-19-24) 東部戦闘、ロシア損失「多大」 大統領、エネルギーも打撃 【キーウ】 ロシア軍が地上侵攻したウクライナ東部ハリコフ州での戦闘について、ゼレンスキー大統領は 18 日の声明で「侵略者は兵や装備を失っている。 多大な損失だ。」と述べた。 ロシアがウクライナによるエネルギー施設などへの最近の攻撃でも打撃を受けているとみられる。 ゼレンスキー氏は、東部ドネツク州の要衝チャソフヤールでもロシア軍の「攻撃を撃退している」と強調した。 米ブルームバーグ通信は 18 日、米国防総省関係者の話として、ウクライナによるロシアのエネルギー関連施設への無人機ドローン攻撃で、ロシアの石油精製能力が今年に入って 14% 低下したと伝えた。 (kyodo = 5-19-24) ロシア軍、クリミアで戦闘機 4 機撃破される大損害 「虎の子」 MiG-31 も初めて失う ウクライナ軍が 14 日から 15 日にかけての夜、地対地弾道ミサイル「ATACMS」でロシア占領下クリミアのセバストポリ近郊のベルベク飛行場に対して行った攻撃(編集注 : 攻撃は次の夜にも行われたという情報がある)で、ロシア空軍と海軍の駐機中の戦闘機少なくとも 4 機が撃破されたことが明らかになった。 ロシア軍が 1 日に被った航空機の損害としては、ロシアがウクライナで拡大して 2 年 3 カ月たつ戦争で最大級のものになった。 これより大きな損害が出た可能性があるのは、2023 年 5 月、ロシア南部で戦闘機やヘリコプター少なくとも 4 機、もしかすると 5 機が、ウクライナ空軍のパトリオット地対空ミサイルシステムで撃墜されたものぐらいだ。 ウクライナ南部の前線から南へおよそ 240km 離れたベルベク飛行場は、ロシア空軍の Su-27 戦闘機や Su-30 戦闘機、ロシア海軍の MiG-31 迎撃戦闘機などの拠点になっている。 海軍の MiG-29K 艦上戦闘機もここに配備されているようだ。 MiG-31 は、ウクライナに対するロシアの戦争で最も危険な軍用機のひとつに数えられる。 MiG-31 は射程 320km を超えるレーザー誘導の R-37 空対空ミサイルで武装し、これまでにウクライナ空軍の戦闘機数機を撃墜したほか、ほかの多くの戦闘機に任務を断念させてきた。 ベルベク飛行場を攻撃から守るために、ロシア空軍は S-400 長距離地対空ミサイルシステムを配備している。 S-400 は飛来してくるウクライナ側のミサイルなどを一部は撃墜しているものの、それと同じくらいの数を迎撃し損ねているようだ。 14 - 15 日の夜、ウクライナ軍は英国やドイツ、イタリアから供与された装軌式の多連装ロケット砲システム (MLRS) か、米国から供与された装輪式の高機動ロケット砲システム (HIMARS) から、精密誘導される ATACMS の射程 305km 型 「M39A1 (ブロック IA)」を一斉発射した。 M39A1 は、射程 160km の「M39 (ブロック I)」の射程を伸ばしたタイプだ。 米国が昨年秋に供与した最初分の ATACMS はすべて M39 だった。 一方、3 月に供与された第 2 弾の ATACMS 100 発あまりには、M39A1 が少なくとも少数は含まれていた(編集注 : 長射程の ATACMS の供与を 3 月に始めていたことは、ジェイク・サリバン大統領補佐官らが 4 月 24 日に認めた。 長射程の ATACMS はウクライナ向け追加支援予算法の成立を受けてバイデン政権が同日と 5 月 10 日に発表した支援パッケージには明記されていないが、サリバンはさらに供与する方針を示しており、これらにも含まれる可能性がある。 予算法には政権側に長射程 ATACMS の「可能な限り早期」の供与を義務づけた条項もある)。 39 からは擲弾(てきだん)サイズの子弾 1,000 発近くがばらまかれる。 M39A1 ではロケットモーターが大型化された分、弾頭は小さくなり、撒布される子弾は 300 個弱となっている。 ロシアのある有名な軍事ブロガーによると、ウクライナ軍は 14 - 15 日の夜にベルベク飛行場に向けて ATACMS を 10 発発射した。 ベルベク飛行場は M39 では届かないが、M39A1 なら届く。 基地にはこの夜、3,000 個近くの子弾が降り注いだ可能性がある。 被害は甚大だった。 S-400 のレーダー 1 基と発射機 2 基が撃破され、燃料貯蔵庫 1 カ所が夜通し燃え続けた。 同じブロガーは MiG-31 が 1 機、Su-27 が 3 機損傷したとも報告していたが、のちに衛星画像から実際の被害はもっと深刻だったことが判明した。 米コロラド州に本社を置くマクサー・テクノロジーズの画像によると、駐機場で MiG-31 が 2 機、Su-27 か Su-30 が 1 機、そして MiG-29K とみられる機体 1 機焼失していた。 ロシア軍がこの戦争で MiG-31 を戦闘によって失ったのは初めてだ。 MiG-29K も同機と確定すれば初の損失になる。 被害の程度が明らかになるにつれて、ロシアの軍事ブロガーらは怒りを募らせている。 あるブロガーは「なぜ防護物が設けられていないのだ」、「(全面侵攻の開始から) 2 年 3カ月たつのに、なぜわが軍の地対空ミサイルシステムはいまだに野ざらし状態なのか」と疑問を呈している。 さらに「われわれは昨年秋から、ウクライナ軍はクリミアに対する攻撃に全力を注ぐだろうと警告してきた」と不満を示し、ロシア軍の指揮官たちは「この脅威を軽んじてきた」と嘆いている。 (David Axe、Forbes = 5-19-24) クリミア、ロシア本土にドローン攻撃 「102 機撃墜」ロシア国防省 ロシア国防省は 17 日、同国が併合・実効支配するウクライナ南部クリミア半島とロシア国内 3 州に対し、ウクライナ軍が同日未明、いっせいにドローン(無人機)や無人艇で大規模攻撃を仕掛けたと発表した。 同省は計 102 機のドローンと 6 隻の無人艇を破壊したとしたが、メディアは石油施設が炎上するなどの被害を伝えている。 同省の発表によると、クリミア半島で 51 機、同半島の対岸に位置するロシア南部クラスノダール州で 44機が撃墜された。 現在、ロシア軍が新たな地上作戦を展開するウクライナ北東部ハルキウ州と国境を接する南西部ベルゴロド州でも 6 機、同州の北に位置するクルスク州では 1 機撃墜されたという。 (asahi = 5-17-24) ロシア軍、ハリコフ突破に兵力不十分 = NATO 欧州軍トップ [ブリュッセル] 北大西洋条約機構 (NATO) のカポリ欧州連合 (EU) 最高司令官は 16 日、ロシア軍が攻勢を強めているウクライナ北東部ハリコフについて、ロシアが戦略的な突破口を開くには兵力は不十分とし、ウクライナが防衛線を維持するという見通しを示した。 カボリ氏は、ロシア軍には前進する能力があり、一部でそれが実現したとしつつも、「戦略的突破口を開くために必要な兵士の数は十分でない」と指摘。 「さらに重要なのは、そのためのスキルや能力、さらに突破口を戦略的な優位性につなげる能力に欠けている」と述べた。 ロシア軍はこれまでに、ハリコフ州への地上侵攻開始以来、12 の集落を制圧したと表明。 ロシア通信 (RIA) はウクライナ駐在のロシア当局者の話として、ロシア軍は現在、ハリコフ市の北約 30 キロメートルに位置するリプツィの制圧に向け準備を進めていると報じている。 (Reuters = 5-17-24) ロシア軍の北東部攻勢が失速 1 日の死傷者は過去最悪の 1,700 人超に ロシアがウクライナ北東部で始めた作戦で何を達成しようとしているにせよ、それはあまりうまくいっていない。 ロシア軍は新たな戦線を開いて本格的な攻勢をかける腹積もりなのかもしれないし、あるいは陽動によって、現在の攻勢の焦点である東部からウクライナ軍の兵力の一部を引き離す狙いなのかもしれない。 しかし、どちらにしてもロシア側にとって望ましい方向には進んでいない。 ロシアの対独戦勝記念日の 5 月 9 日、ロシア軍部隊がハルキウ州に侵入した直後はウクライナ領土防衛隊の軽装備の現地部隊が単独で応戦したが、その後、重装備の部隊が増援した。 ロシア側は歩兵の突撃部隊を戦車で増強しようとしたが、それらの戦車はウクライナ側のドローン(無人機)に狙われ、破壊された。 前線の状況は安定しつつある。 両軍の部隊が個々の建物をめぐって戦い、膠着状態になってきている。 ウクライナの従軍記者ユーリー・ブトゥソウは「ハルキウ州北部でのロシア軍の攻勢は実質的に押しとどめられた」と 16 日に報告している。 次に何が起きるかはロシア側次第だ。 ロシア軍は東部の部隊を北に移して、あらためてウクライナ側の防御線の突破を図り、ウクライナ第 2 の都市ハルキウに向けて進撃しようとするかもしれない。 ハルキウ市はロシアとの国境からわずか 40km しか離れておらず、ウクライナで最も攻撃を受けやすい都市になっている。 ロシア軍はあるいは、ウクライナの村や都市を無傷のまま占領することが不可能になった場合によくやるように、国境付近の交戦中の村や都市を徹底的に爆撃し、廃墟に変えてしまうかもしれない。 ウクライナ側にとって不吉なことに、ロシア軍の首脳部は後者を選ぼうとしている兆候がある。 現在の侵攻作戦で最東端の目標になっている都市ボウチャンシクには、すでにロシア軍のクラスター弾が降り注いでいる。 今回の攻撃は、この戦争を観察してきた人たちの間では予想されていたものだった。 数週間前からロシア軍の連隊や旅団が国境付近に集結してきており、作戦の決行日としては戦勝記念日が最もありそうだと考えられていた。 だがウクライナ軍参謀本部は、ボウチャンシクやリプチ村などハルキウ州北部に対するロシア軍の攻撃が迫っている気配があったにもかかわらず、増援部隊を送るのを見合わせ、初期の防衛は現地に駐留する軽装備の領土防衛隊部隊に任せた。 ウクライナ軍の指揮官たちとしては、より重装備の部隊を北に送る前に、まずロシア側の意図を見極めたかったのかもしれない。 たしかに、ロシア軍は北から攻撃を仕掛けることでウクライナ軍の一部の旅団を東部から引き剥がし、攻勢を続けるこの方面で新たな優位性を確保することを狙っている可能性もあった。 とはいえ、初期の防衛を領土防衛隊に任せるのは危険をともなう手だった。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者「タタリガミ UA」(@Tatarigami_UA)は「敵の主要な前進を阻止する任務は領土防衛隊の部隊に与えるべきものではない」と苦言を呈している。 しかも、この方面を守っていた領土防衛隊部隊は一部の塹壕を、ロシア軍の進撃を阻むのにふさわしくない場所に掘ってしまっていたらしい。 「旅団の能力と即応態勢に対する理解不足から生じた組織的な問題の結果だ」とタタリガミ UA は断じている。 こうした事情から、ロシア軍の小隊規模、つまり数百人でなく数十人程度の部隊が 9 日に国境を越えて進撃してくると、国境近辺の防御の薄いグレーゾーンにあるウクライナの村々はたちまち制圧された。 領土防衛隊の部隊は退却した。 ウクライナ側が重装備の部隊を投入しなければ、さらに多くの村がロシア側の手に落ちるのは明白だった。 そのためリプチ村方面には第 42 独立機械化旅団と第 92 独立機械化旅団、ボウチャンシク市内には第 57 独立機械化旅団と第 71 独立猟兵旅団(空中強襲軍隷下)が増援に送られた。 その結果、「ボウチャンシク方面ではウクライナ側の防御が大幅に強化され、敵(ロシア側)に対する攻撃も効果的になってきている」とブトゥソウは伝えている。 「ロシア側はわれわれの部隊を市内やその周囲の陣地から排除できていない」とも書いている。 状況はリプチも同じだ。 「ウクライナ軍はこの方面で敵に対する攻撃を著しく激化させ、次第に戦術的な主導権を握りつつある。(ブトゥソウ)」 この 1 週間の激しい戦闘を通じて、ウクライナ側はロシア軍の進撃を食い止めた。 一方、ロシア側は 13 日に、ウクライナで拡大して 2 年 3 カ月たつ戦争で 1 日としては最多の人的損害を被っている。 ウクライナ国防省によると、1,000km におよぶ戦線全体でロシア軍の人員の死亡や負傷などによる損耗は 1,700 人あまりにのぼった。 堅固になったウクライナ側の防御を攻めあぐねるロシア軍は、新たな戦術を試みている。 少数の大きな部隊ではなく、多数の小さな部隊で攻撃するというものだ。 ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター (CDS) は 15 日の作戦状況評価で「小隊規模の突撃部隊が(ウクライナ軍の)防御拠点側と交戦し、その後、ほかの突撃部隊と合流する」と説明している。 「こうすることで目標に接近する際の損害を抑えられる半面、前進ペースは遅くなる」という。 いずれにせよ、歩兵戦術を少し変更したくらいでは、北東部の戦線の力学を根本的に変えることはできない。 ロシア側の兵力は十数個の連隊や旅団からなる総勢 3 万人とされ、この規模ではハルキウへの進軍どころか、ボウチャンシクやリプチの攻略すら不可能かもしれない。 ロシア軍がこの方面に追加の部隊を送っていないことは、作戦の真の狙いを示唆しているとも考えられる。 フィンランドの軍事アナリスト、ヨニ・アスコラはこう述べている。 「現在の状況はともかく、北からの攻撃は事前に(ウクライナ側に)感づかせすぎだった印象を受ける。 ロシア軍の不十分な兵力からしても、ウクライナ軍に限られた予備兵力を投入させることを意図した、大掛かりな陽動以外の何物でもないように思える。」 もっとも、ウクライナ側が東部の主戦場であるドネツク州アウジーウカ、チャシウヤール両方面の防御が弱体化するほど、兵力を北部に転用したのかどうかは明らかでない。 アスコラは、ハルキウ州に一部の部隊や装備が移されたのは確かなので、「目的が陽動だったのなら、ある程度は成功したことになる」と説明している。 そのうえで「この成功の度合いは、(ウクライナ側が)追加で移動を余儀なくされる部隊の数にかかっている」とも指摘している。 だがこの数日、新たに北へ向かったウクライナ軍部隊はひとつもないようだ。 とはいえ、北東部の作戦は終わってい ない。 ブトゥソウは「(ロシア軍は)まだ撃退されていない」と強調し、「撃滅に向けた激しい戦いが続いている」と伝えている。 恐ろしいことだが、ロシア側は損害が大きく、期待していたほどウクライナ軍の兵力を分散できそうにもない地上攻撃に見切りをつけ、ボウチャンシクやリプチの占領をめざすのではなく、たんに砲撃や空爆で破壊しようとする可能性もある。 David Axe、Forbes = 5-17-24) |
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