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クリミアのロシア航空部隊、Su-27 戦闘機を立て続けに 2 機失う ロシアがウクライナに侵攻して 2 年 1 カ月あまり、ロシア軍の第 38 戦闘機航空連隊はこれまでかなり幸運だったといえる。 第 38 航空連隊の拠点は、ロシア占領下のクリミア・セバストポリ近郊にあるベルベク空軍基地だ。 セバストポリはウクライナ南部の前線から 240km しか離れておらず、一帯は頻繁にウクライナ側の攻撃にさらされてきた。 にもかかわらず、この基地から発進する同連隊のスホーイ Su-27 戦闘機は大きな被害を免れていた。 それが劇的なかたちで終わりを告げた。 同連隊には 2021 年時点で、1980 - 90 年代に製造された Su-27P と Su-27SM が計 25 機ほど配備されていたが、ここ 1 週間でこれを 2 機失った可能性がある。 うち 1 機の損失は、自軍の過失によるものだったもようだ。 ウクライナ軍が 23 日夜に行った大規模なミサイル攻撃では、ロシア海軍の艦艇 4 隻と通信拠点に加え、ベルベク空軍基地にも被害が出た。 ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター (CDS) によると、ウクライナ軍は英国製のストームシャドー巡航ミサイルと国産のネプチューン巡航ミサイルを計 40 発発射し、一部が第 38 航空連隊の施設に命中した。 その結果、「Su-27 戦闘機1機が破壊され、他 2 機が損傷した」と CDS は報告している。 事実と確認されれば、ロシア軍にとってこの戦争で初めての Su-27 損失となる。 最近まで Su-27 が失われなかったのには理由がある。 ロシア軍は Su-30 戦闘機や Su-34 戦闘爆撃機、Su-35 戦闘機をウクライナ攻撃に送る一方、Su-27 は戦闘から遠ざけてきたからだ。 第 38 航空連隊がこれまで最も大きな注目を浴びたのは、2023 年 3 月、黒海上空の国際空域を哨戒飛行していた米空軍の無人攻撃機 MQ-9 リーパーを迎撃するため Su-27 を出撃させた時だった。 Su-27 はリーパーに燃料を浴びせかけたあと、どうやら誤ってリーパーと衝突したらしい。 リーパーは墜落したが、Su-27 のほうは無事着陸した。 第 38 航空連隊はセバストポリ上空で哨戒飛行任務を続けてきた。 黒海艦隊のクリミア最大の停泊地セバストポリに対して、ウクライナ側が頻繁に行っているミサイル攻撃に備えたものとみられるが、攻撃の阻止には明らかに失敗している。 ウクライナ側は、ミサイルや自爆型の水上ドローン(無人艇)によって、黒海艦隊が当初運用していた艦艇 35 隻ほどのうち 12 隻超を攻撃している。 ウクライナ軍によるミサイル攻撃で、ロシア側の地対空ミサイル部隊が神経質になっているのも明らかだ。 クリミアに配備されている地対空ミサイルシステム自体、ミサイル攻撃の最重要目標になっている。 そのせいか、防空部隊は 28 日かその前日に、ベルベク空軍基地から発進した第 38 航空連隊所属の Su-27 に誤ってミサイルを発射してしまった。 ソーシャルメディアで共有された映像には、Su-27 が炎を上げ、ゆっくりと回転しながら海へ墜落していく様子が克明に捉えられている。 パイロットは脱出し、助かったと伝わる。 それでも、オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス (Oryx) のアナリストであるヤクプ・ヤノフスキーは「ウクライナ国防省はロシア軍の SAM (地対空ミサイル)の運用者にも勲章を与えるようにすべきだ」と皮肉を投稿した。 ロシア側は Su-27 の損失を補うのに苦慮するかもしれない。 ロシアの航空戦力では、より新しい機種である Su-30 や Su-34、Su-35 が主流になっているため、ノーマルの Su-27 は 40 機ほどしか残っていない。 そして、保管されている古い Su-27 はどれも、かなり腐食が進んでいると報じられている。 (David Axe、Forbes = 3-31-24) ウクライナに装甲車「数百両」新たに供与へ 仏国防相 フランスのセバスチャン・ルコルニュ国防相は 30 日夕発行の同国紙トリビューンに掲載されたインタビュー記事の中で、同国はロシアの侵攻を受けるウクライナへの新たな軍事支援パッケージの一環として、装甲兵員輸送車「数百両」と対空ミサイルを供与する方針だと述べた。 ルコルニュ氏は、「ウクライナ軍が長く延びた前線を保持するには、例えばわが国の兵員輸送車(VAB 装甲車)が必要となる。 部隊に機動力を持たせるため極めて重要だ」と語った。 フランス軍は現在、一部は製造から 40 年以上経過した既存の兵員輸送車と、新型装甲車「グリフォン」の入れ替えを進めている。 ルコルニュ氏はただ、旧式の兵員輸送車も「なお運用可能だ」とし、「2024 年中と 2025 年の早い時期に数百台(供与すること)を検討している」と述べた。 フランスはまた、防空システム「SAMP/T」用の対空ミサイル「アスター 30」の供与も増やす方針。 さらにルコルニュ氏は、「遠隔操作可能な武器弾薬の開発が近いうちに終わり、今夏からウクライナへの供与を始める予定だ」と話した。 (AFP/時事 = 3-31-24) ウクライナ軍総司令官 "ロシア軍の砲弾は 6 倍" ゼレンスキー大統領は「このままだと後退」と危機感 ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、ロシア軍がウクライナの 6 倍の量の砲弾を保有しているとして、西側諸国による支援の必要性を訴えました。 ウクライナの国営通信社ウクルインフォルムによりますと、シルスキー総司令官は前線の戦況について防衛だけでなく、前進もしているとしながらも「厳しい状況」だと認めました。 ロシア軍が兵士の数で優位に立っているうえ、ウクライナの 6 倍の砲弾を保有しているとしていて、また防空システムと十分な砲弾があれば先月、東部の要衝アウディーイウカから撤退することもなかったとの考えを示したということです。 ただ、最大の支援国であるアメリカでは追加支援のための予算案が承認されておらず、ワシントン・ポストの取材にゼレンスキー大統領は、支援を受けられなければ「少しずつ後退することになる」として、支援継続の重要性を訴えています。 (TBS = 3-30-24) HIMARS がザポリージャでロシアの Strela-10 防空システム ウクライナ軍事センターによると、ウクライナ軍の砲兵はザポリージャ地域でロシアの防空システム Strela-10 を破壊したとのことです。 ロシアの防空システムは、アメリカの M142 HIMARS MLRS からの高精度ロケットによって撃たれました。 これは、第 65 機械化旅団の対応するビデオによって示されており、その戦闘員が目標に向けて防衛軍の砲兵を指示したことを示しています。 OSINT アナリストは、一時的に占領された領域内の敵の防空システムの位置を特定しました。 防空システム Strela-10 は、座標 47.353327、35.710837 の位置にありました。 これは、敵の防空システムがザポリージャ地方の Myrne 村の近郊で撃たれたことを示しています。 公開されたビデオによると、ロシアの防空システムは偵察ドローンの助けを借りて発見されました。 ロシア人は、ウクライナの無人航空機 (UAV) がこの位置を見つけ出すとは思っていませんでした。 そのため、ランチャーは偽装さえされていませんでした。 敵を発見した後、ウクライナのドローンオペレーターは、ウクライナ軍のミサイル及び砲兵部隊の一つにロシアの防空システムの位置情報を伝えました。 爆発の特徴から判断すると、損害は M142 HIMARS またはM270 MLRS の GMLRS ミサイルによって引き起こされました。 ロシアの防空システムは、アメリカの高精度ミサイル M30A1 の弾頭に含まれる 18 万個のタングステンボールによって撃たれました。 公開された画像は、Strela-10 コンプレックスが少なくとも重大な損傷を受けたことを示しており、これが破壊につながった可能性があります。 防空システム Strela-10 は、目視可能な範囲で低高度および短距離の航空目標を破壊するように設計されています。 このシステムは、軍事的およびその他の目的のための地上部隊と地上設備に直接的な保護を提供します。 システムの基盤は、軽装甲車両 MT-LB のシャーシに基づいた戦闘車両 9A34 です。 (Redacao、Carro e motos = 3-30-24) ロシア軍、ウクライナのエネルギー関連施設にまた大規模攻撃 ウクライナ空軍は 29 日、ロシア軍のミサイル 39 機とドローン(無人機) 60 機による大規模攻撃を受けたと発表した。 大半を迎撃したとしているが、各地の発電所などに被害が出ている。 ロイター通信などが報じた。 報道によると、ウクライナのシュミハリ首相は、この攻撃により東部ドニプロペトロフスク州や西部リビウ州など 6 州のエネルギー関連施設に被害が出たと通信アプリで明らかにした。 一部地域では緊急停電が実施されたという。 大手電力会社 DTEK は同社の三つの火力発電所が攻撃を受け、深刻な被害が出たと発表。 ウクライナのゼレンスキー大統領は X (ツイッター)に、二つの水力発電所が標的になったと投稿した。 ロシア軍は 22 日にも、ウクライナ各地の発電施設などを標的とした大規模攻撃を行っていた。 (ベルリン・念佛明奈、Mainichi = 3-30-24) ロシア軍、5 月末から 6 月にかけ「大規模な攻勢」か … ゼレンスキー氏「今こそ助けが必要」訴え 【ワシントン = 田島大志】 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 28 日に放送された米 CBS とのインタビューで、5 月末から 6 月にかけてロシア軍がウクライナで大規模な攻勢に出るとの見方を示した。 「今こそ助けが必要だ」と述べ、米国による軍事支援の強化を訴えた。 ゼレンスキー氏は、露軍の攻勢に備え「準備を進める必要がある。 さらに大きな力が必要だ。」とも語り、防空システムや砲弾の追加供与を呼びかけた。 戦況については、弾薬不足が特に深刻だった数か月前に比べ安定してきているとの認識も示した。 一方、ゼレンスキー氏は 28 日、米共和党のマイク・ジョンソン下院議長と電話で会談したことも自身の SNS で明らかにした。 会談では、露軍による無人機やミサイルを使った攻撃が増加している現状などを説明し、ウクライナ支援予算案の迅速な可決を要請した。 (yomiuri = 3-29-24) クリミアのセバストポリで Su-27 が墜落する 本日撮影された映像は、ロシアによって占領されたクリミア、セバストポリ近郊でロシア空軍の Su-27 「フランカー」戦闘機が墜落する劇的なシーンを明らかにしました。 この事故は、パイロットが安全に脱出し、軽傷で生還したことで終わりました。 ソーシャルメディアで共有されている情報によると、この航空機はロシアの防空システムによって誤って撃墜された可能性があり、国内軍内での「フレンドリーファイア」の別のケースを示しています。 スホーイ Su-27 は、NATO コードネーム「フランカー」で知られるロシア空軍の最も進んだ強力な戦闘機の一つで、1980 年代の導入以来、世界中の様々な空軍の中心的な要素となっています。 主に空中優勢戦闘機として設計された Su-27 は、F-15 イーグルなどの先進的なアメリカの戦闘機と直接競合するために開発されました。 Su-27 のコストは、特定のモデル、アビオニクスパッケージ、含まれる武装、適用されるアップグレードなど、様々な要因によって大きく異なる可能性があります。 しかし、推定では、新しい、よく装備されたモデルの Su-27 の価格は、およそ 3,000 万ドルから 4,000 万ドルの範囲で変動するとされています。 (Redacao、Carro e motos = 3-29-24)ウクライナ「ロシア黒海艦隊の軍艦、3 分の 1 を破壊・無力化」 ウクライナが 26 日(現地時間)、これまでにロシア黒海艦隊に所属する軍艦の 3 分の 1 を破壊もしくは無力化したと主張した。 ウクライナ海軍のドミトリー・プレテンチュク報道官はこの日、AP 通信のインタビューでこのように明かし、ロシアの軍事能力に打撃を与えたと語った。 プレテンチュク報道官は、今月 23 日の夜にクリミア半島のセバストポリ港に停泊していたロシアの揚陸艦「コンスタンチン・オルシャンスキー」を攻撃したことを明らかにした。 同艦は、ロシアが 2014 年にクリミア半島を強制併合した際に拿捕されるまではウクライナ海軍の所有だった。 プレテンチュク報道官は先に、同日の攻撃でロシアの揚陸艦「アゾフ」と「ヤマル」、情報艦「イワン・フルス」を損傷させたと発表していた。 (韓国・朝鮮日報 = 3-28-24) ロシア軍はもう「クリミア大橋を使っていない」 - - ウクライナ高官
ロシア軍はもうクリミア大橋を使っていないと述べている - - ウクライナ政府はそう述べる。 全長約 19 キロメートルのクリミア大橋はこれまで、ロシア軍がクリミア半島やウクライナ南部の部隊に兵器や弾薬を供給するための主な補給路として利用されてきた。 クライナ保安庁のバシーリ・マリュク長官はインタファクス・ウクライナ通信に対して、ウクライナ軍の攻撃により、ロシア軍の物資補給は途絶えていると説明。 だが橋の構造上の安全性が確認されれば、軍事物資の補給が再開される可能性が高いとも述べた。 ケルチ大橋とも呼ばれるクリミア大橋は、ロシア南部のクラスノダール地方と、ロシアが 2014 年に併合したクリミア半島を結ぶ戦略的に重要な橋だ。 ロシアとウクライナの間で 2 年以上にわたって続く戦争の中で、クリミア大橋は何度もウクライナ軍の標的にされ、ロシア当局によって一時閉鎖されていた。 マリュクがインタファクス・ウクライナに語ったところでは、ウクライナ軍が攻撃する前は毎日、兵器や弾薬を積んだ列車 46 本がクリミア大橋を渡っていた。 だが現在では、一日に橋を渡る列車の数は 5 本のみで、そのうち 4 本が乗客を運び、残る 1 本は一般消費財を運んでいるという。 繰り返し標的に 「敵は現在、兵器や破壊手段の供給にクリミア大橋をまったく使っていない」とマリュクは述べ、だが橋の復旧が終われば「おそらく彼らは橋を使った弾薬の補給を再開するだろう」とつけ加えた。 本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。 ロシアは 2023 年 8 月、ウクライナ軍がクリミア大橋を複数のミサイルで攻撃したと発表。 その前月には、爆発物を積んだウクライナ産の水上ドローン(無人艇)がクリミア大橋を攻撃していた。 2022 年 10 月には、爆発物を積んだトラックがクリミア大橋を走行中に爆発。 インターネット上で拡散された動画には、爆発によって破損した道路橋と鉄道橋が映っていた。 クリミア大橋では 2023 年 7 月にも爆発があり、ウクライナが後に攻撃を行ったことを認めている。 マリュクは 2023 年 11 月、「クリミア大橋は崩壊する運命にある」と述べていた。 クリミア大橋は、ロシアがクリミア半島を一方的に併合した後直ちに建設された。 2018 年の開通時にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が自らトラックを運転して橋を通行。 これによってクリミア大橋はロシアにとってのプロパガンダツールとなり、ウクライナにとっては軍事標的となった。 2 月後半には、ウクライナ国防省情報総局のキーロ・ブダノフ局長がウクライナの一般市民に対して、クリミア大橋を使わないようにと遠回しに警告を発していた。 ウクライナはNATO 加盟国でウクライナを支援しているドイツに対して、長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を求めている。 この「タウルス」について複数の専門家は本誌に対し、フランスとイギリスが既にウクライナに供与した「ストームシャドウ/SCALP」ミサイルと類似の機能を持つが、弾頭の設計がやや異なるためクリミア大橋の攻撃により適していると指摘していた。 (エリー・クック、NewsWeek = 3-28-24) チェコ、150 万発の砲弾供与も ウクライナに、外相が見通し 【キーウ】 チェコのリパフスキー外相は砲弾不足に苦しむウクライナに対し、150 万発の供与の可能性も視野に入れていると述べた。 米ブルームバーグ通信が 27 日までに、リパフスキー氏のインタビューを報じた。 チェコ政府は砲弾確保計画を主導し、80 万発の調達先が見つかったと明らかにしていたが、リパフスキー氏は当初の想定よりも多数を供与できそうだとの考えを示した。 チェコは各国の資金協力を得て、欧州連合 (EU) 域外から砲弾を調達する計画だ。 ウクライナ軍は 27 日、夜間にロシア軍の無人機 13 機による攻撃があり、うち 10 機を撃墜したと発表した。 (kyodo = 3-27-24) ウクライナのドローン、前線から 800km 離れた製油所を攻撃 ロシアは防空に苦慮 ウクライナのドローン(無人機)が 23 日未明、ロシア西部サマラ州の製油所を攻撃した。 火災が発生し、同日朝まで続いた。 ウクライナはロシア国内の石油関連施設に対する攻撃をエスカレートさせており、その最新の事例である今回の攻撃はこれまでで最も遠距離のものだった。 サマラ州はウクライナ東部の前線から 800km 以上も離れている。 ウクライナ国防省情報総局は、ロシア西部の製油所や石油貯蔵施設を過去 1 年で十数カ所攻撃した。 今月中旬に行った 3 施設への攻撃では、ロシアの石油精製能力を一時 12% 低下させたと報じられている。 影響はロシア国内の燃料価格に及び、ガソリン価格は今月、半年ぶりの高値に急騰した。 夏の旅行シーズンが近づくなか、政府は国内供給を維持するため、ガソリンの輸出禁止措置を今月から復活させた。 ロシアは昨年 9 月にも同様の措置を導入し、その後解除していた。 ウクライナ側はロシア国内の石油関連施設を攻撃することで、ロシア政府の財政を圧迫し、ロシア軍の兵站を複雑にし、一般のロシア人の不満を高めることを狙っている。 とはいえ、この作戦が決定的なものになるとは思わないほうがいいだろう。 ウクライナのエネルギー専門家であるヘンナディー・リャブツェウは、地元メディアのウクラインシカ・プラウダにこう語っている。 「これらの攻撃は単発的なものです。 (ロシアにとって)痛みをともなうもので物流は影響を受けますが、年間の(石油)精製量全体への大きな打撃にはならないでしょう。」 ウクライナ軍にとってより重要なのは、こうしたドローン攻撃によって、ロシア側が貴重な防空システムをウクライナの前線から引き揚げ、国内の石油関連施設に配置し直すことを余儀なくされる可能性がある点だろう。 非在来型の海戦などに詳しい防衛アナリストの H・I・サットンによれば、ウクライナがロシア国内への越境攻撃に用いている国産の長距離攻撃ドローンは少なくとも 15 種類ある。 ロシアは防空の強化に必死になっているらしく、今年予定していたインドへの S-400 地対空ミサイルシステムの輸出も最近、2026 年に延期している。 また、英国防省によれば、ロシアはエネルギー関連施設にパーンツィリ地対空ミサイルシステムを配備する計画を進めているもようだ。 ロシアは、製油所周辺の防護を強化するため、航空基地や港湾、指揮拠点などの軍事施設の防護を減らすことを容認するかもしれない。 そうなれば、これらの施設は現状より攻撃しやすくなる。 シンクタンクの戦争研究所 (ISW) は「ロシア国内の目標に対するウクライナのドローン攻撃は、ロシアの利用可能な防空アセットへの圧力を高める公算が大きい」と解説している。 ウクライナ軍は 23 日、ロシアが支配するウクライナ南部クリミア半島セバストポリにある黒海艦隊の停泊地に大規模なミサイル攻撃を加えた。 これは、ロシア側が最良の防空システムを広く薄く広げて配置することになった場合、どういう結果になるかを暗示するものと見ることもできる。 ウクライナ空軍のスホーイ Su-24 戦闘爆撃機から発射するストームシャドー巡航ミサイルか、そのフランス版の SCALP(スカルプ)-EG が使われたとみられるこの攻撃では、黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ヤマル」と「アゾフ」に損害を与えた可能性がある。 もし 2 隻が撃破されたとすれば(編集注 : 情報総局は 2 隻のうちヤマルについて、損害は「深刻」だと報告している)、黒海艦隊の揚陸艦隊は全滅にさらに近づいたことになる。 ロシア側は製油所を守るか、前線の部隊を守るか、早急に決断を下すことを迫られるかもしれない。 米退役軍人のマーク・ハートリングは「どこもかしこも防御するというのは不可能だ」と指摘している。 (David Axe、Forbes = 3-27-24) ウクライナの電力施設、ロシア軍が攻撃続ける 火災や供給停止広がる ウクライナ全土でロシア軍による電力施設を標的にした攻撃が続いている。 ゼレンスキー大統領は 24 日夜、過去 1 週間にロシア軍がミサイル約 190 発とドローン(無人航空機) 140 機、約 700 の誘導空中弾を発射したと公表。 各地で復旧作業が続くものの、第 2 の都市ハルキウと周辺で 20 万世帯への電力供給が断続的に止まっていると明かした。 ウクライナ当局によると、ロシア軍は 22 日の日中、中南部ザポリージャにある同国最大のドニプロ水力発電所を 8 回にわたって攻撃。 同発電所の発電が止まった。 23 日から 25 日未明にかけてもミサイル、ドローンで攻撃を続け、各地で電力施設の火災が相次いだ。 未明に西部リビウ州が攻撃された 24 日には、同州都と国境を接する隣国ポーランドの軍が SNS で「ロシアの巡航ミサイルによるポーランドの領空侵犯があった」と公表した。 25 日未明には、ドローンが南部オデーサ州やミコライウ州の電力施設を攻撃。 オデーサ州のキペル知事は州都オデーサの電力供給が止まったとSNSに投稿した。 国営企業「ウクルエネルゴ」のクドリツキー CEO は 24 日、ウクライナメディアに一連の攻撃で同社の高圧送電網だけでも 9 千万ユーロ(約 147 億円)から 1 億ユーロの被害を受けたとし、最大の民間電力企業「DTEK」幹部も同社が持つ発電能力の 50% が失われたと述べた。 (喜田尚、asahi = 3-25-24) ウクライナ軍、ロシアの揚陸艦をさらに 2 隻破壊か 補給への打撃は見込めず ウクライナ軍は 24 日、ロシアの占領下にあるクリミア半島セバストポリに停泊していたロシア海軍の大型揚陸艦 2 隻を前日夜に攻撃し、成功したと発表した。 攻撃には、スホーイ Su-24 戦闘爆撃機から発射する英国製のストームシャドー巡航ミサイルか、そのフランス版である SCALP(スカルプ)-EG が使われたとみられる。 ウクライナ側の発表によれば、攻撃を受けたのは全長およそ 112m のロプーチャ級揚陸艦「ヤマル」と「アゾフ」攻撃で 2 隻が破壊されたのだとすれば、黒海艦隊は 12 隻前後あった揚陸艦をさらに 15% 失ったことになる。 とはいえ、仮にウクライナ側がロシア海軍の艦艇を新たに 2 隻沈めたのだとしても、ウクライナ南部の戦線のパワーバランスを変えるには遅きに失した。 ロシアが 2022 年 2 月にウクライナに対する全面侵攻を始める前に、黒海艦隊には揚陸艦が 9 隻配備されていた。 内訳はロプーチャ級揚陸艦 6 隻とタピール級揚陸艦 3 隻である。 侵攻前後に、バルチック艦隊と北方艦隊からさらに数隻の揚陸艦が黒海艦隊に増援で送られた。 ウクライナ軍は 2 年にわたる激しい戦いの間に、ミサイルや、爆薬を積んだ水上ドローン(無人艇)によって、黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦を 3 隻撃沈するか大破させ(編集注 : 3 隻は「ミンスク」、「ノボチェルカスク」、「ツェーザリ・クニコフ」ほかに「オレネゴルスキー・ゴルニャク」を損傷させている)、タピール級揚陸艦を 1 隻撃沈した。 黒海艦隊に 35 隻ほどあった大型艦はこのほか、巡洋艦 1 隻、潜水艦 1 隻、補給艦 11隻、哨戒艇数隻、ミサイルコルベット 2 隻もウクライナ側の攻撃で破壊されている。 これらの攻撃によって黒海艦隊の戦闘力は著しく低下し、黒海の大半の水域は大型艦の進入が難しくなった。 その結果、ウクライナは黒海経由の海上輸送を再開できるようになり、経済面で大きな恩恵を得た。 だが、南部に展開しているロシアの野戦軍の補給を細らせるというもう 1 つの目的を果たすには、今回の攻撃はもう手遅れだった。 つい数週間前まで、ロシア軍はウクライナ南部に配置している連隊や旅団への補給で、ロシア本土とクリミアを結ぶ鉄道・道路橋に加え、黒海艦隊の揚陸艦も頼りにしていた。 その頃までは、ウクライナ側がこの橋を破壊し、黒海艦隊の揚陸艦の撃沈を重ねていけば、南部のロシア軍部隊への補給を事実上遮断できたかもしれない。 実際、ウクライナ軍はクリミアの橋や黒海艦隊の揚陸艦を狙った攻撃を繰り返し、橋を損傷させたり揚陸艦を沈めたりしてきた。 だが現在は、クリミアの橋や揚陸艦を破壊してもロシア側の補給を絶つことはできない。 ロシア軍の工兵らの超人的な努力によって、ロシア南部のロストフナドヌーと、ウクライナ東部ドネツク州のロシア側支配下の都市、さらにウクライナ南部のロシア側支配下のベルジャンシクやマリウポリを接続する新たな鉄道が開通したからだ。 この新路線によって、ロシア南部からウクライナ南部への貨車での輸送に要する時間は数日短縮されることになった。 ロシア軍はもはや、南部の戦線で戦う自軍部隊への補給を揚陸艦にあまり頼らずに済むようになったということだ。 ロシア海軍のロプーチャ級揚陸艦が燃え上がる様子は、自由なウクライナの友人にとって喜ばしものだろうが、それは次第に無意味な光景にもなりつつある。 (David Axe、Forbes = 3-25-24) ◇ ◇ ◇ ロシアの大型揚陸艦 2 隻を攻撃 クリミア、ウクライナが主張 【キーウ】 ウクライナ軍は 24 日、ロシアが支配するウクライナ南部クリミア半島セバストポリで、ロシア黒海艦隊の大型揚陸艦「ヤマル」、「アゾフ」の 2 隻と通信センターなどを攻撃したと発表した。 ロシア側の当局者は 23 日、セバストポリにミサイル攻撃があり、上空で 10 発以上を迎撃したと通信アプリに投稿していた。 タス通信などによると、ロシア国防省は 23 日、ウクライナ東部ドネツク州バフムトの西方にある集落を新たに掌握したと主張した。 ロシア軍は 2 月に同州の要衝アブデーフカを制圧後、徐々に攻勢を強めており、この集落の近くにある町チャソフヤールが攻略目標だとみられている。 (kyodo = 3-22-24) ロシア軍の兵器庫は無尽蔵? 破壊し尽くせない物量の恐怖
2 年にわたるウクライナへの本格侵攻で数々の失態を演じ、驚異的な損害を被ったにもかかわらず、ロシア軍がいまだに作戦を継続する能力を維持していることは明らかだ。 厳しい冬と消耗戦の末、戦況は再びロシア優位に傾いている。 ウクライナちは思うような兵力増強ができず、西側諸国、特にアメリカからの軍事援助の減少に直面している。 今年はウクライナにとって、生き残りを懸けた過酷な年になりそうだ。 ロシア軍は兵士や装備の犠牲を問わず、ルハンスク州とドネツク州で構成される東部ドンバス地方全域の制圧を主目的とする攻撃を続けるとみられる。 ウクライナもロシアも詳細な死傷者数を定期的に公表することはしていない。 ロイター通信が昨年 12 月に明らかにした機密解除された米情報機関の報告書によれば、2022 年 2 月以降のロシア軍の死傷者数は推定 31 万 5,000 人で、侵攻前の兵員の約 90% にも相当する。 ウクライナは、約 43 万 5,000 人のロシア軍兵士を「排除」したと主張している。 現役は約 110 万人 一方、ウクライナ軍の死傷者総数は、8 月にリークされた米軍のアセスメントを引用したニューヨーク・タイムズによれば約 12 万 4,500 人から 13 万 1,000人で、戦死者は 1 万 7,500 人に上る。 またウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今年 2 月、2 年間の戦闘で 3 万 1,000 人が死亡したと述べた。 ロシアは、囚人まで動員して兵を増やしてきた。 2022 年 8 月、プーチンは現役兵士の数を 13% 増員(約 13 万 7,000 人)し、総兵力を 115 万人に引き上げるよう命じ、予備役 30 万人の「部分動員」も行われた。 国際戦略研究所 (IISS) の「2024 年軍事バランス」データベースによると、ロシア軍の現役兵力は全軍で約 110 万人、うち 50 万人が陸軍に所属している。 さらに全軍で 150 万人の予備役がいる。 ロシアの機甲部隊はウクライナ軍の戦線を崩壊させる前衛の役割を担っているが、これまでの戦いは過酷だった。 ロイターは、匿名のアメリカ政府関係者の話を引用し、ロシア軍は 3,100 両の戦車で戦争を開始し、2,200 両を失ったと報じている。 こうした損失を埋めているのは、旧ソ連で 1970 年代に生産された戦車 T-62 のような古い車両だ。 IISS によれば、ロシアでは現在、約 1,300 両の戦車が使用されているという。 古い戦車の一部は、静止型射撃台に改造されるほか、爆薬を詰め込んで車両搭載型即席爆発装置 (VBIED) として使用されることもある。 失われた戦車の中には、ロシアで最も先進的で戦闘実績も高い T-90 主力戦車数十両も含まれている。 大々的に宣伝されていた次世代装甲戦闘車両「アルマータ」シリーズの T-14 主力戦車の導入は長らく延期されていたが、開発にあたっていた国営の防衛コングロマリット、ロステックはコストの増大を理由に、今年初めに開発を断念した。 IISS の『軍事バランス 2024』報告書によれば、ロシアには 200 両以上の T-90 を含むさまざまなタイプの戦車が 1,750 両ほど残っており、最大で 4,000両が保管されているという。 歴史的にロシアが「戦争の神」として重視している砲兵火力は、今も戦場で重要な役割を果たしている。 ウクライナはこれまでの戦闘で 1 万 70 門以上を破壊したと主張しているが、IISS によれば、ロシアはさまざまなタイプの砲を 4,397 門保有している。 ロシア空軍の活躍 空中戦では、ロシアは戦争の初期段階で数的優位を行使することができなかった。 ウクライナ空軍は現在も定期的に出撃している。 対空兵器の支援を受けて増強し、国土の大半でロシア軍機の進入を防いでいる。 ウクライナは 2022 年 2 月以来、あらゆるタイプのロシア軍機 347 機を撃墜したと主張してする。 オープンソースの情報サイト「オリックス」は、97 機の撃墜と 8 機の損壊を確認したという。 それでも、ロシア空軍は東部戦線で極めて重要な戦果をあげており、航空機から投射する滑空爆弾を使ってアウディーイウカのような激戦地でウクライナの陣地を攻撃、破壊している。 ロシアは、ウクライナの都市やインフラ目標に向けて長距離ミサイルを発射するために、今もさまざまな航空機を使っている。 開戦前に保有していた 2,300 発の戦略ミサイルも、まだ約 900 発残っている。 ISS の報告によると、ロシア空軍は爆撃機 129 機、戦闘機 188 機、戦闘機/対地攻撃機 433 機、対地攻撃専用機 257 機を含む固定翼機約 1,169 機を保有しており、さらに 208 機が海軍航空部隊に配属されている。 また、空軍は約 340 機の攻撃ヘリコプターを保有している、と軍事バランス報告書は述べている。 ウクライナ軍が近代的な非対称的海上攻撃戦略に磨きをかけたため、ロシア軍の最も衝撃的な敗北のいくつかは海上で起きた。 ロシアはいまだアメリカ、中国に次ぐ世界第 3 位の海軍力を誇っており、その黒海艦隊はバルト海艦隊、太平洋艦隊、北洋艦隊と並ぶ 4 大艦隊のひとつでもあるが、ここ 2 年は大敗を喫している。 黒海艦隊は約 80 隻で侵攻を開始した。 ウクライナはそのうち 27 隻を破壊し、少なくとも 15 隻を修理が必要な状態にしたと主張している。 とくに黒海艦隊の旗艦だった誘導ミサイル駆逐艦モスクワ、攻撃型潜水艦ロストフ・ナ・ドヌー、コルベット艦イワノベッツ、大型揚陸艦ツェーザリ・クニコフなどの損失は衝撃をもって受け止められたが、まだ軍艦の半数は残っている計算になる。 (デービッド・ブレナン、NewsWeek = 3-25-24) 防御を破壊し尽くす誘導滑空爆弾、ウクライナは F-16 戦闘機で対抗するしかない 展開する翼と衛星誘導装置を取り付けた粗製の滑空爆弾は、ロシアがウクライナで拡大して 25 カ月たつ戦争の決定的な兵器になっていると言っていいだろう。 ロシア軍がここへきて多用している滑空爆弾はもしかすると、爆薬を積んだ FPV(1 人称視点)ドローン(無人機)よりも決定的な兵器かもしれない。 さらに言えば、伝統的に戦闘で最も重要とされてきた大砲よりも決定的かもしれない。 現時点で、ウクライナ側には対抗できる手段がほとんどない。 ウクライナ軍の最良の防空ミサイルやその発射機は絶望的なまでに不足している。 ウクライナ軍の旧ソ連製の戦闘機は、ロシア軍の爆撃機を迎え撃つにはミサイルなどの射程が短すぎる。 交戦できる可能性があるのは欧州諸国から供与される F-16 戦闘機だが、まだウクライナに届いていない。 ロシア空軍のスホーイは、最大で 65km ほど離れたところから誘導滑空爆弾(編集注 : :汎用の大型爆弾である FAB-1500 などに UMPK と呼ばれる衛星誘導キットを装着したもの。 ウクライナ側では「KAB」と呼ばれている。 ロシア軍が以前から保有し、もともと翼や衛星誘導装置が付いた精密誘導爆弾の KAB とは別物。)を 1 日に 100 発かそこら投下し、ウクライナ側の防御を組織的に破壊している。 これによって、ロシア側の地上の突撃部隊は、依然として大きな損害を出しながらではあるものの前進がしやすくなっている。 ウクライナ東部の都市アウジーウカを防御してきたウクライナ軍の守備隊が 2 月、4 カ月を超える激戦の果てに撤退に追い込まれたのも、ロシア側の誘導滑空爆弾を用いた攻撃によるところが大きかった。 いうまでもなく、もう 1 つの大きな原因は、米議会のロシアに好都合な共和党議員らが昨年 10 月、ウクライナへの援助を遮断し、ウクライナ軍にとって死活的に重要な弾薬を枯渇させたことだ。 アウジーウカをめぐる戦闘が最も激しかった 2 月中旬、ロシア空軍はわずか 2 日で 250 発もの誘導滑空爆弾を落とした。 守備隊の撤退を支援するために投入されたウクライナ軍第 3 独立強襲旅団の軍人、イーホル・スハルは「これらの爆弾はどんな陣地も完全に破壊してしまう」と述べている。 米シンクタンクの戦争研究所 (ISW) は、アウジーウカ方面の滑空爆弾作戦を先例として「ほかの方面でもロシア軍の作戦が変化する」ことに期待を示したロシア側の発言を伝えていた。 そのとおりになった。 ロシア軍は現在、ウクライナで占領しようとする村に対して、まず空軍が滑空爆弾による集中的な爆撃を加えるのが標準的なやり方になっている。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「ロシア側は(歩兵部隊の)突撃に先立って、KAB (誘導空中投下爆弾)をウクライナ側の陣地に対して用い、続いて砲兵による準備砲撃を実施する」と説明している。 その後の突撃は「規模は比較的小さいものの、繰り返し、頻繁に行われている」という。 これらの突撃は滑空爆弾による爆撃、大砲の砲撃、ドローンの展開と組み合わされると、弾薬不足のウクライナ側にとって「非常に大きな消耗」を強いるものになっているとフロンテリジェンス・インサイトは指摘している。 誘導滑空爆弾を駆使したこうした攻撃によって、ロシア軍はアウジーウカの守備隊を駆逐し、続く数週間に同市のすぐ西にある村々も制圧した。 ロシア軍がさらに、アウジーウカの北 90km ほどに位置するビロホリウカ村の掌握を狙っているのは明らかだ。 この村に対しても誘導滑空爆弾による爆撃が増えている。 ウクライナ空軍はアウジーウカの陥落後しばらくの間、滑空爆弾を投下してくるロシア軍機に反撃していた。 射程が 145km ほどある米国製パトリオット地対空ミサイルシステムを用いていたとみられ、ロシア空軍の Su-34 戦闘爆撃機と Su-35 戦闘機を2週間で計14機撃墜した。 だが 3 月 9 日ごろ、ロシア軍の熟練した、あるいは少なくとも幸運なドローン操縦士は、前線から30kmほど離れた地点で、移動中のパトリオット部隊がとどまっているのを発見した。 合図を受けてイスカンデル弾道ミサイルが撃ち込まれ、パトリオットの発射機 2 機が撃破された。 その要員も死亡したとみられる。 ウクライナ空軍が失った発射機を補充するのは容易ではない。 これもいうまでもなく、米国からウクライナへの援助が一部の共和党議員によって阻まれているせいだ。 ウクライナ空軍は発射機 2 機を失ったあと、前線からパトリオットを遠ざけたとみられるが、手元の発射機が二十数基しかないのを考えれば当然の対応だ。 一方、ロシアの技術者たちは誘導滑空爆弾に手を加え、射程を以前の約 40km から約 65km に伸ばした。 にわかに力関係が変わり、ウクライナ側は防空兵器によって、滑空爆弾を搭載したロシア軍の爆撃機に対抗することができなくなった。 前線で手薄になった防空を埋め合わせるのに、ウクライナ空軍のミグやスホーイを当てにすることはできない。 ウクライナ空軍はミコヤン MiG-29 戦闘機とスホーイ Su-27 戦闘機を計数十機運用するが、両機種に搭載されている N019 や N001、N010 系統のレーダーによる空中目標の探知距離は 80 - 95km 程度、R-27 空対空ミサイルの射程はその半分ほどにとどまる。 したがって、これらのミグやスホーイが滑空爆弾を抱えたロシア軍機と交戦するには前線上空を越えていく必要があるが、通常はそうした任務は行っていない。 それにはもっともな理由がある。 これらの戦闘機にはジャマー(電波妨害装置)が付いていないのだ。 ロシア側の防御線付近やその内側を飛行している間、ウクライナ空軍の戦闘機はロシア軍の防空兵器に対してきわめて脆弱な状態に置かれることになる。 ウクライナがデンマーク、オランダ、ノルウェーから受け取ることになっている合計で 50 - 60 機の F-16 戦闘機は、ウクライナ軍の指揮官たちに新たな選択肢を与えるかもしれない。 米ジェネラル・ダイナミクスが開発し、現在は米ロッキード・マーティンが手がける F-16 は、AN/ALQ-213 電子戦システムを装備しているため、より前線に近い、あるいは前線を越えた空域を安全に飛行できる可能性がある。 AN/ALQ-213 はセンサーやジャマー、あるいはチャフ(レーダー電波を散乱させる金属片など)やフレア(赤外線誘導ミサイルを追尾させるおとりの熱源)などの撹乱物と組み合わせて、自機を守るシステムだ。 F-16 が搭載する AN/APG-66(V)2 レーダーの探知距離は 110km あり、発射する AIM-120 空対空ミサイルの射程も 105km(編集注 : AIM-120C 型の数字)ほどあるとされるので、ロシア側が支配する空域にそれほど深く進入しなくても、ロシア空軍の爆撃機を攻撃できると考えられる。 AIM-120 に関して最も重要なのは、いわゆる「撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)」能力をもつ点かもしれない。 AIM-120 はそれ自体に小さなレーダーを搭載するため、発射母機は発射後に誘導する必要がなく、すぐにその場を離脱できる。 これに対して、ウクライナ空軍が現在用いている R-27ER 空対空ミサイルはセミアクティブ・レーダー誘導型となっている。 発射母機はミサイルが飛翔している間、みずからのレーダーで目標を照射し続けなくてはならないので、敵機の応射にさらされやすい。 もっとも、AIM-120 を発射する F-16 について「超強力な兵器」だとか、敵のミサイルに無敵だとかいう人はいないだろう。 ウクライナ空軍は数週間後ないし数カ月後にF-16 を実戦配備したあと、複数の機体やパイロットを失うことになるだろう。 もしかすると多数の F-16 やパイロットを失うかもしれない。 大きな問題は、そうした犠牲を代償にしてウクライナ側が何を得るかということだ。 ウクライナ軍の指揮官たちは、ロシア軍の誘導滑空爆弾がウクライナ軍の地上部隊にもたらしている危険を本当に理解しているのであれば、F-16 を積極的に運用し、大きな損害をもたらす誘導爆弾を投下しにくるロシア軍のスホーイを攻撃させなくてはならない。 フロンテリジェンス・インサイトは「KAB (編集注:誘導滑空爆弾のこと)の広範な使用がもたらす難題は今後も続く可能性が高い」との見方を示し「解決策はパイロット防空システムの追加調達・配備や、高度な空対空ミサイルを装備した F-16 を通じてしか得られないかもしれない」と続けている。 (David Axe、Forbes = 3-24-24) |
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