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オデーサのドローン攻撃、死者 10 人に 「生後 8 カ月の乳児と母親」も

ウクライナ南部オデーサにおけるロシア軍の自爆型ドローン(無人機)による攻撃で、ウクライナの非常事態庁は 3 日午前、死者が 10 人になったと SNS に投稿した。 2 日夜までに 8 人の死亡が確認されていたが、捜索活動が続いており、新たに 2 人増えた。 投稿によると、生後 8 カ月の乳児と母親が「固く抱き合った状態」で見つかった。 「さらに 2 人の命がテロリストによって奪われた。 なんと痛ましいことか。」としている。 (asahi = 3-3-24)


ウクライナの砲弾不足問題に光明、欧州経由で 100 万発出荷か

ウクライナを支援する欧州の国々は気まずく思い出したかのように、ようやくウクライナが必要とする砲弾を供給するための資金と産業資源をかき集めつつある。 欧州連合 (EU) の武器取引、チェコ主導の弾薬の大量購入、ウクライナと同盟国との二国間取引など、並行で進められているいくつかの取り組みにより、今後数カ月で少なくとも 70 万発の砲弾がウクライナに出荷されるはずだ。

ウクライナは今春、欧州経由で 100 万発を超える砲弾を入手するかもしれない。 また、ウクライナへの追加支援を阻んできたロシア寄りの米国議会の共和党議員が最終的に来月あたり譲歩すれば、春から夏にかけてウクライナ軍は 100 万発以上の砲弾を思いがけず手にする可能性がある。 これは、ロシアが国内の工場や、さらに重要なことに北朝鮮から確保する弾薬の量には及ばない。 だが、少なくともウクライナ軍が自軍よりも規模で勝るロシア軍を相手に戦線を維持するには十分な量だ。 そしておそらく、新たな攻勢の計画を立て始めることができる。

ロシアがウクライナに対して仕かけた戦争が 3 年目に突入した今、どちらの国がより多くの、そして質のいい砲弾を保有しているかが戦争の行方を左右するかもしれない。 ウクライナ軍が昨夏、攻勢をかけることができたのは、米国が韓国製の砲弾を 100 万発購入したおかげで砲弾の数でロシア軍と対等だったからだ。 そしてこの冬にウクライナ軍が戦場の勢いをロシア軍に奪われる状況になったのは、米国の支援が突然打ち切りとなり、その後おそらく 10 万発の砲弾が提供されなかったためだ。

一方、今年に入ってからのロシア軍の攻勢は、ロシアが昨年 9 月から 4 カ月連続で北朝鮮から毎月約 40 万発の砲弾を購入したことによって支えられている。 注目に値するのは、ウクライナの諜報当局者がいう、ロシア軍の砲弾の半分は不発弾だという点だ。 だが不発率が高いにもかかわらず、ロシア軍は約 965km におよぶ戦線で 1 日に約 1 万発の砲弾を発射している。 これに対してウクライナ軍が 1 日に発射する砲弾はわずか 2,000 発だ。

ウクライナ軍はここ数カ月、自爆型の 1 人称視点 (FPV) ドローン(無人機)を月に 5 万機投入して砲弾不足をいくらか補っているが、FPV ドローンは 155mm 砲弾に完全に取って代わることはできない。 ドローンは約 450g の爆薬を搭載して 3km ほど飛行するかもしれない。 一方、砲弾は約 11kg の爆薬を少なくとも約 24km 先に飛ばす。 ウクライナ軍の砲撃を恐れなくなっているロシア軍は、ウクライナ軍の要塞を吹き飛ばすほどの集中砲火を行うために砲台を大っぴらに集結させている。 もっと砲弾があれば、ウクライナ軍の砲兵はロシア軍の砲兵を追い散らすことができる。

EU が 2023 年にウクライナに砲弾 100 万発を供給するという約束を守っていれば、米共和党による突然の弾薬供給の阻止は、ウクライナの戦争計画にそれほど壊滅的な影響を与えるものになっていなかったかもしれない。 多額の資金や政治的資本を投じることなく砲弾の生産量を拡大するのに苦慮した EU 諸国が昨年ウクライナに提供できた砲弾は結局、わずか 50 万発にとどまった。 これは恥ずかしい裏切り行為で、EU は今、3 月までに 17 万発の砲弾を出荷することで取り繕おうとしている。 (David Axe、Forbes = 3-3-24)


アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込 んだロシア装甲車 2 台 … 同時に地雷を踏んだ瞬間をウクライナが公開

陥落したウクライナ東部ドネツク州アウディーイウカ近郊の村で、ロシアの装甲兵員輸送車 (APC) 2 台が地雷を踏んで同時に爆発

ウクライナ東部ドネツク州で、ロシアの装甲兵員輸送車 (APC) 2 台が、地雷を踏んで同時に爆発する瞬間を捉えた動画が公開された。 この周辺はロシアの猛攻によって今年 2 月に陥落し、ウクライナ軍が撤退を余儀なくされた地域だった。 ロシア軍の車両が踏んでしまったのは、ウクライナが残した置き土産だったのか。 この動画は、オープンソース・インテリジェンス (OSINT) のアカウント「OSINT テクニカル」が X (旧ツイッター)に投稿したもので、ドネツク州のステポベ村でロシアの APC 「BTR-80」 2 台が同時に地雷を踏んだという説明が添えられている。 「ステポベにて。 ロシアの BTR-80 が前進中、2 台同時にウクライナの地雷を踏む。」

ステポベは、ウクライナ軍が 2024 年 2 月中旬に撤退した要塞都市アウディーイウカの北西約 11 キロにある集落だ。 ウクライナ軍タウリア戦略部隊の広報担当ドミトロ・リホウィは 2 月 27 日、ウクライナのテレビ番組で、ステポベ村とシェベルネ村からも撤退したことを明らかにしている。 ウクライナとロシアはこの戦争で、多くの兵士と装備を犠牲にしている。 特に、ロシアが 2023 年 10 月から重視してきたアウディーイウカ周辺の戦闘は、「肉ひき機」というレッテルを貼られている。 戦闘が長期にわたり、多くの死傷者を出し、多大な資源が投じられているためだ。

ロシアが失った APC は 1 万 2,508 台とウクライナ報告

今回公開されたのは、ドローンによる空撮動画だ。 2 台の APC が前後に連なって不毛の地を前進している最中に、同時に地雷を踏み、爆発して煙を上げる様子が映し出されている。 本誌は、この動画がいつ撮影されたかについて、独自に検証することはできなかった。

ウクライナ軍は 2 月 28 日付の最新報告で、ロシア軍は 2022 年 2 月の開戦以来、1 万 2,508 台の APC を失ったと述べている。 ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍の兵士と装備の損失について毎日発表しており、APC の損失もその一部。 2 月 28 日付の報告によれば、ロシア軍は過去 24 時間で 1,060 人の兵士を失い、死傷者の合計が 41 万 2,610 人となった。 最新報告ではさらに、ロシア軍は開戦以来、1 万 29 基の自走榴弾砲、6,570 両の戦車、3,426 機の軍用ジェット機を失ったとしている。 本誌はこれらの数字について、独自に検証することはできなかった。

ウクライナもロシアも自軍の被害発表には消極的

死傷者数の見積もりは、情報源によって異なる。 ウクライナが発表する数字は通常、西側同盟諸国が発表する数字を上回っている。 ロシアは、自国の死傷者数に関する情報をほとんど公表していない。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は 2022 年 9 月、開戦以来、5,937 人の兵士が命を落としたと発表した。 ウクライナもロシアと同様、自国の死傷者数に関する情報を提供していない。 2023 年 4 月にリークした米国防情報局 (DIA) の評価によれば、ウクライナは 12 万 4,500 - 13 万 1,000 人の死傷者を出しており、そのうち 1 万 5,500 - 1 万 7,500 人が死亡したとされている。 (イザベル・ファン・ブリューゲン、NewsWeek = 3-2-24)


ウクライナ軍が Su-34 爆撃機をさらに 3 機撃墜 ロシア空軍「崩壊」の瀬戸際に

ウクライナ空軍の発表によると、ロシア空軍は 2 月 29 日、Su-34 戦闘爆撃機をさらに 3 機撃墜で失った。 撃墜が確認されれば、ウクライナの防空部門による未曾有の連続撃墜がさらに続いたことになる。 ウクライナ国防省は「12 日間で 13 機のロシア軍機を破壊した」としている。 内訳は Su-34 が 10 機、Su-35 戦闘機 2 機、ベリエフ A-50 早期警戒管制機 1 機だ。

10 日かそこらで十数機の損失というのは、疲弊してきているロシア空軍にとって想像以上に深刻な事態だ。 理屈としてはロシア空軍にはまだ多くの航空機があるということになる。 だが実際は、ロシア空軍は危険なまでに崩壊に近づいている。 ウクライナ側がこれほど多くのロシア軍機をどのように撃墜してきたのかははっきりしないが、米国製のパトリオット地対空ミサイルシステムや冷戦期の古い S-200 地対空ミサイルシステムなど複数の防空兵器を使っているらしい。 また、ロシア側が前線付近への航空機の出撃回数を増やしていることも関係しているとみられる。

いずれにせよ、ウクライナ側による最近の大量撃墜がロシア側にもたらす結果は重大だ。 ロシア空軍は耐えられる水準をはるかに上回るスピードで軍用機を失っている。 ロシアの航空宇宙産業は国際的な制裁の影響で、新しい軍用機を年に 25 - 35 機かそこらしか生産できていない。 現有機の損失の急激な拡大に新造機の生産停滞が重なり、ロシア空軍で生き残っている機体や搭乗員に対するストレスが高まっているのはほぼ確実だ。 ロシア空軍は組織の崩壊に至る「死のスパイラル」にはまだ陥っていないものの、それに近づいている。

数字で見てみよう。 文書上では、ロシア空軍には双発複座の超音速機である Su-34 が 140 機配備されているとされる。 今年の未確認分も含めれば、ロシア空軍はうち三十数機をこれまでに失っている。 ということは、ロシア空軍には差し引き 100 機あまりというかなりの数の Su-34 がまだ残っているのではないか? 米国のシンクタンク、ランド研究所のエンジニアであるマイケル・ボーナートによれば、そうではない。

ボーナートは昨年 8 月の論考で、撃墜や墜落による損失はロシア軍機の「損失全体のごく一部」にすぎないと解説している。 「戦争が長引くなかで、ロシア軍機には酷使による損失も出ている」からだ。 「一方の軍隊が他方の軍隊を消耗させようとする持久戦では、軍隊の総合的な耐久性が重要になる。 ロシア空軍がいま置かれているのもそうした状況だ。」とボーナートは指摘する。

ボーナートによれば、2022 年 2 月のロシアによるウクライナ全面侵攻前に、ロシア空軍は戦術航空機(戦闘機や攻撃機、戦闘爆撃機)を 900 機ほど保有していた。 その後、この論考発表までの 1 年半ほどの間にウクライナ側との戦いで 84 - 130 機を失った。 これらの損失自体もロシア空軍には問題だが、関連して別の問題も生じている。 戦闘などでの損失で機体数が減っているにもかかわらず、出撃要請は減っていないのだ。

ロシア空軍は以前は 900 機で担当していた任務を残存の 800 機前後でこなすために、これらの航空機をより頻繁に飛行させざるを得なくなった。 だが、そうすると機体の消耗は激しくなり、保守点検の必要が高まり、入手困難になってきている部品もますます求められるようになる。 その結果、前線で使用することが事実上、不可能になる機体が出てくる。

「ロシア空軍は 2022 年 2 月以来、保有機に追加の使用時間を強いたために、実質的に 27 - 57 機をさらに失ったと推定される」とボーナートは書いている。 しかも、これは今年、ウクライナ東部アウジーウカの攻防戦が最終局面を迎えるなかでロシア軍機の出撃回数が急増したり、昨年 12 月以来ロシア軍機の損失が急増したりする前の話だ。

消耗で使えなくなったロシア軍機は、現在はもっと増えている可能性が高い。 この分と最近の撃墜を含めると、ロシア空軍の飛行可能な戦闘機や攻撃機、戦闘爆撃機の数は 700 機程度まで減っている可能性がある。 これは 2 年前より 200 機も少ない。 撃墜が続くなか、機体の消耗による事実上の損失がさらに膨らむのを避けるために、ロシア空軍は近く難しい選択を迫られるだろう。 航空機の飛行回数を減らすか、それとも、現状と同じように飛ばし続け、即応態勢が急激に崩れていく危険を冒すか。

ボーナートの見立てが正しければ、ロシア軍によるウクライナでの航空作戦は持続不可能ということになる。 ウクライナ側がロシア軍機を撃墜するたびに、それはますます持続不可能になっていくだろう。 (David Axe、Forbes = 3-1-24)


ウクライナ軍、ドニプロ川左岸でじわじわと前進 国旗の掲揚合戦も

ウクライナ軍の東部の防御拠点だったドネツク州アウジーウカ市を 2 週間前に攻略したロシア軍は、市の西方にある複数の集落へと前進を続けている。 ロシア軍はすでに占領していたドネツク市のすぐ北西にあるアウジーウカを落とすために、数万人にのぼる死者や負傷者を出し、数百両の車両を失った。 こうした大きな犠牲を払いながらも、弾薬の枯渇した守備隊をついに撤退に追い込み、ウクライナの 30 平方km 超の国土を奪った。 ロシア軍にとってここ数カ月で最大の戦果になった。

その一方で、ある方面ではウクライナ軍が、ほんの少しずつではあるものの前進を続けている。 半年前、ウクライナ海兵隊の部隊は南部ヘルソン州で広大なドニプロ川をボートで渡り、左岸(東岸)のクリンキ村に橋頭堡を築いた。 第 35 独立海兵旅団を中心とする部隊は現在、クリンキ周辺以外はロシア側の支配下にある左岸でなおこの村を保持しているばかりか、西に 1.5km ほど離れたコザチラヘリ村へ向けて徐々に進軍している。

戦闘は通りや建物単位で繰り広げられている。 ある区画をどちら側が支配できるかは、その上空に飛ばせるドローン(無人機)の数で決まることが多い。 ウクライナ側がクリンキ一帯で、ロシア側のドローン操縦士を殺害した直後にとくに大きな前進を遂げているのは、理由のないことではない。 クリンキ方面作戦でのドローンの重要性はいくら強調してもしすぎることはない。 X (旧ツイッター)で「Kriegsforscher」と名乗るウクライナ海兵隊のドローン操縦士は 2 月 5 日「私たちの中隊の爆撃ドローンは夜間に爆撃しているだけでなく【略】、弾薬、食糧・水、医療物資などの補給も担っている。 むしろこちらが主な任務だ。」と説明している。

作戦の実施では電子戦が重要な役割を果たしている。 ウクライナ軍の電子戦部隊は昨年秋、海兵隊が渡河を始めるのに先立って強力なジャマー(電波妨害装置)でクリンキの戦場の下準備をした。 ロシア側のすべてのドローンとまではいかないまでも、海兵たちが渡河して橋頭堡を築くのに十分な数のドローンを飛べなくした。 クリンキ一帯ではロシア側のジャマーはほとんど機能しておらず、ウクライナ側のドローン部隊のほうがより自由に動ける状態になっている。

ウクライナ側の監視ドローンは 24 時間体制で稼働し、クリンキの南方に配置されているロシア軍部隊(1 個自動車化師団、1 個空挺師団、2 個海軍歩兵旅団、1 個機械化旅団)が橋頭堡に対する攻撃のために部隊や車両を集結させるのを見張っている。 夜間には「バーバ・ヤハ」と呼ばれる比較的大型のドローンがロシア軍の集結地点を爆撃したり、道路に地雷を撒いたりしている。 昼間は FPV (1 人称視点)ドローンがクリンキに向かってくるロシア軍部隊に襲いかかる。

昨年 12 月から今年 2 月 23 日までに、ロシア側がクリンキを奪い返そうとして失った車両などの装備は 222 点にのぼる。 それには、ロシアがこれまでウクライナで失った戦車およそ 2,600 両を補うために、長期保管していた倉庫から引っ張り出した 60 年前の古い T-62 戦車なども含まれる。

ウクライナ、ロシア軍機を 10 日で 10 機撃墜 持ちこたえられない甚大な損失に

ウクライナ側の発表によると、ウクライナ空軍は 10 日間で 10 機のロシア軍機を撃墜した。 内訳はロシア空軍で最高の機種であるスホーイ Su-34 戦闘爆撃機と Su-35 戦闘機計 9 機、そして貴重なベリエフ A-50 早期警戒管制機 1 機だ。 これはロシア側が耐えられる水準をはるかに上回る損失ペースだ。 国際的な制裁の影響で、ロシアの航空宇宙産業は新たな軍用機を年に 25 - 35 機程度しか生産できていない。

ロシアは補充できるペースの十数倍の速さで軍用機を失っているという計算になる。 ウクライナ国防省は 27 日、今月 9 機目と 10 機目のロシア軍機撃墜を発表した。 いずれも Su-34 だった。 「おっと、またやってしまった!」ソーシャルメディアで 10 機目の撃墜を発表した際にはそう軽妙に書き込み「これで 10 日で 10 機のロシア軍機を破壊したことになる」と戦果を誇った。 ウクライナ側がどうやってこれほどの数のロシア軍機を撃ち落としているのかはよくわからない。 ウクライナ空軍は米国製パトリオット地対空ミサイルシステムの一部を機動防空グループに配備しているのかもしれない。

このグループは前線のかなり近くまですばやく移動し、射程 140km 超の PAC-2 ミサイルでロシア軍機を待ち伏せ攻撃したあと、すぐにその場を離れ、反撃を回避しているのかもしれない。 23 日にあった A-50 の撃墜では、より射程の長い兵器が使われたと考えられる。 当時、A-50 は前線から 200km 近く離れた辺りを飛行しており、PAC-2 では届かないからだ。 この攻撃で使用されたのは、冷戦時代に開発され、長期にわたって保管されていたあと、再び就役した S-200 地対空ミサイルシステムだった可能性がある。

ウクライナ空軍は、射程 40km の NASAMS 地対空ミサイルシステム二十数基の一部も前線に展開させているもようだ。 これは、うち 1 基が 26 日かそれ以前に南部ザポリージャ市近郊でロシア軍に発見され、ミサイルで撃破されたことで裏づけられた。 ウクライナ軍の NASAMS 発射機の損失は初めてだった。

ウクライナの防空部隊による連日の戦果は、これらの兵器やほかの防空兵器をこぞって投入し、しかも積極的に運用している結果というのが実情なのかもしれない。 このやり方にリスクあるとすれば、パトリオットや NASAMS 用のミサイルが米国製だという点だ。 米国からウクライナへの弾薬やミサイルの供与は、米議会下院のロシア寄りの共和党議員らの妨害で昨年末に完全に途絶えている。

ウクライナ側の最高の防空ミサイルはいずれ枯渇する。 その日は近いかもしれない。 一方、ロシア側の行動(あるいは必要な行動がとれないこと)も航空機の損失拡大につながっている可能性がある。 ロシア軍は 2 週間ほど前、人員と装備に途方もない損害を出した末に、弾薬不足に苦しんでいたウクライナ東部アウジーウカの守備隊をついに敗北させた。 以後、やはり米下院共和党のせいで弾薬が枯渇している各地のウクライナ軍守備隊を押し込んでいる。

好機とみたロシア空軍は前線近くへの出撃を増やし、滑空爆弾を発射してウクライナ軍部隊を抑え込み、ロシア軍の地上部隊の前進を支援している。 ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター (CDS) は「敵は戦場の真上で航空機を使うことへの恐れを克服した。 これは航空機の損失をもたらしている半面、地上部隊は火力面で大きな優位性を得ている」と解説している。 (David Axe、Forbes = 2-29-24)


AGC、ロシアから撤退 ウクライナ侵攻長期化のため事業を譲渡

ガラス大手の AGC は 28 日、ロシアでのガラス製造販売事業を売却したと発表した。 約 1 年前から売却を検討していたが、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、先行きの不透明感が増しているため、ロシア事業から完全に撤退する。

AGC はロシアに欧州法人の子会社として二つの工場を持ち、主に建築用ガラスなどを手がける。 2023 年 12 月期の売上高は 2 工場で計 341 億円。 売却額などは非公表だが、ロシアで建築用ガラスの加工メーカーを経営する実業家へ譲渡したという。 為替の影響を受けて資産が目減りした損失が 2 億 2 千万ユーロ(約 350 億円)発生する見込みで、24 年 12 月期の業績見通しにはすでにおり込んでいるとした。 (宮崎健、asahi = 2-28-24)


ウクライナへの派兵案、マクロン大統領発言が NATO 加盟国に波紋

ウクライナへの地上部隊の派遣の可能性を示唆したマクロン仏大統領の発言が、波紋を呼んでいる。 ウクライナを支援する西側諸国の首脳らは派兵の可能性を相次いで否定。 ロシア側は、西側諸国による地上部隊の派遣が戦争をさらにエスカレートさせるとして警告した。 マクロン氏は 26 日、欧米約 30 カ国の首脳らをパリに招いて、ウクライナ支援の連携強化を話し合う会議を開いた。 会議後の記者会見で、欧米諸国によるウクライナへの地上部隊の派遣の可能性を問われ、「正式な形での派兵についての合意はなかった。 しかし、何ごとも排除されるべきではない。」と発言。

「フランスが(派兵に)賛成でないとは言っていない。 会議で(派兵は)選択肢として議論された。」と述べた。 これに対して、会議に出席したドイツのショルツ首相は 27 日の声明で、「欧州や北大西洋条約機構 (NATO) からウクライナに地上軍や兵士が派遣されることはない」と否定。 現地メディアによると、NATO 加盟が決まったスウェーデンのクリステション首相も「現時点ではまったく関係ない」と述べた。 ウクライナを率先して支援してきた英国やポーランドも派兵を否定した。 (asahi = 2-28-24)


ウクライナ軍、M1 戦車を早くも 1両失う ドローンの「トップアタック」か

ウクライナ軍は、米国製の M1 エイブラムス戦車を初めて失った。 26 日にネット上に出回った、ロシア軍のドローン(無人機)が撮影した映像には、重量 69 トン・4 人乗りの M1 がウクライナ東部ドネツク州アウジーウカ西方でこのドローンに追跡されている様子が映っている。 この M1 は、ウクライナ軍第 47 独立機械化旅団に配備された 31 両のうちの一両だ。

こうした事態が起こるのは避けられないことだった。 ロシアがウクライナに侵攻して 2 年余り、拡大する戦場で、爆薬を搭載したドローンは双方の装甲車両にとって最大の脅威の一つとなっているからだ。 徘徊する飛行機型や FPV (一人称視点)クワッドコプター(回転翼を 4 つ備えたヘリコプター型)などのドローンは、最も装甲の薄い車体上部を攻撃できる。

米国がウクライナの戦争努力のために供与を表明していた 31 両の M1 は、昨年秋にウクライナに到着した。 ウクライナ国防省は今月 23 日、M1 がアウジーウカ北郊の集落ステポベ付近の道路を移動したり、夜間とみられる時間帯にロシア軍部隊を砲撃したりする動画を公開していた。 ウクライナに提供された M1 は、きわめて硬い金属であるタングステン製の装甲、側面に取り付けられた M19 爆発反応装甲、120mm 滑腔砲、高精細で昼夜対応の光学機器などを備えた 2000 年代の M1A1/SA (状況認識型)戦車だ。 ウクライナ軍が保有する最高の戦車と言っていいだろう。

2 週間前、10 倍の規模のロシア軍と 4 カ月以上にわたって激戦を繰り広げてきたアウジーウカ守備隊が、危機的な弾薬の枯渇に見舞われてついに撤退し始めるなか、第 47 旅団の M1 戦車大隊はアウジーウカ周辺で戦闘を開始していた。 そして今回、1 両を失ったことが初めて確認された。 ロシア軍のドローン映像から推測すると、かねてウォッチャーらが恐れていたことが起こってしまったようだ。 M1 は装甲の薄い上部をドローンで攻撃され、内部で火災が発生し、それによっておそらく破壊された。 乗員が脱出できたのかは不明だ。

この損失を嘆く人もいるかもしれないが、長く悲嘆する必要はない。 第 47 旅団にはまだ 30 両の M1 が残っている。 ウクライナ軍全体では、2 年間で 700 両に上る戦車を失ったにもかかわらず、なお 2,000 両ほどの戦車がある。 つまりウクライナは、2022 年 2 月にロシアの全面侵攻を受ける前とほぼ同数の戦車を現在保有しているということだ。 西側の支援諸国から供与された数百両と、ロシア軍から鹵獲した数百両が、2 年にわたる激戦での損失分を補って余るかたちになっている。

M1 の初損失を祝うロシア側のプロパガンダは無視していい。 不死身の戦車などない。 ほとんどの戦車は上面を攻撃する「トップアタック」にとりわけ弱い。 唯一例外があるとすれば、スウェーデン製のストリッツヴァグン (Strv) 122 戦車だろう。 この戦車は砲塔のルーフ(屋根)に追加装甲が施されている。 その Strv122 ですら攻撃に対して無敵というわけではない。 ウクライナはスウェーデンから入手した 10 両の Strv122 のうち 1 両を撃破され、数両を遺棄している。 後者はウクライナ軍の工兵によって回収された可能性はある。

M1 の損失によって、ウクライナ軍は保有する西側製ないし西側と旧ソ連のハイブリッド型の戦車のほとんどで、少なくとも 1 両を失ったことになる。 オランダの OSINT (オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「Oryx (オリックス)」の集計によれば、M1 や Strv122 以外では、旧ソ連の T-55 戦車を改修したスロベニア製 M-55S 戦車 28 両のうち 1 両、ドイツ製レオパルト 2A4 戦車 40 両(追加で 14 両が供与される予定)のうち 8 両、同レオパルト 2A6 戦車 21 両のうち 5 両などが失われている。(編集注 : このほか英国製チャレンジャー 2 戦車 14 両のうち 1 両も撃破されている。)

ウクライナのおよそ 1,000km におよぶ前線で、これまでに撃破や遺棄が確認されていない西側製戦車は、ウクライナが計 200 両近くを受け取る予定のドイツ製レオパルト 1A5 戦車だけだ。 レオパルト 1A5 がドローンに仕留められるのも時間の問題だろう。 双方が毎月何万機ものドローンを飛ばし、防空やジャミング(電波妨害)が追いついていない現状では、安全な戦車というものは存在しないのだ。 (David Axe、Forbes = 2-28-24)


ウクライナ空軍、1 日で 2 機のロシア Su-34 戦闘爆撃機を撃墜

本日、ウクライナ空軍はロシアの Su-34 戦闘爆撃機 2 機を迎撃し、撃墜したと発表しました。 最初の事件は午前 10 時に発生し、2 回目の成功した迎撃は 14 時に行われました。 この日は、地域の航空作戦において注目すべき瞬間をマークし、ウクライナの防空戦略の有効性を強調しました。

この月は、ウクライナで活動するロシア空軍にとって最も困難な月となり、航空機の損失で約 10 億ドルと推定されます。 Su-34 の撃墜は、地域のロシアの航空作戦にとって重大な打撃を表すだけでなく、ウクライナが敵対的な侵入に対してその領空を守る能力を高めていることを示しています。 Su-34 戦闘爆撃機は、ロシア空軍の中心的な部分であり、精密ミサイルを含むさまざまな武装で地上および海上目標を攻撃するよう設計されています。 これらの航空機の損失は、重大な財政的負担を課すだけでなく、紛争に関与するロシア軍の士気と戦略にも影響を与える可能性があります。 (Redacao、Carro e Motos = 2-28-24)


もう取り返しはつかない? ロシアがウクライナ侵攻で犯した 5 つの失策

開戦から 2 年、ロシアはアウディーイウカを掌握したが、本当にウクライナは戦争に負けているのか? 最初から失策だらけのロシアはもう勝てる見込みはないと言う専門家もいる

ロシアによる本格的なウクライナ侵攻の 3 年目は、約 1,500 キロに及ぶ前線の膠着で始まった。 ロシア軍とウクライナ軍は交互に、要塞化された防衛ラインの突破を試みているが、成功は限定的なものに留まっている。 ロシアにとって、戦場の状況は国のシステム不全の証しだ。

ロシアの軍事アナリストでフレッチャー法律外交大学院客員研究員パベル・ルジンは、ロシア政府の作戦には最初から致命的な欠陥があった、と本誌に語った。 「最大の過ちは、この戦争を始めたことだ。」 「ロシアがこの戦争に勝つことはありえない」と、彼は続けた。 「チャンスはない。 修正もできない。 ロシアの戦略、ロシアのイデオロギー、意思決定プロセス、教育システムなど、すべてが間違っている。」 この 2 年間のロシアにとっての戦争遂行は、より犠牲が大きく、より野蛮なものになり、同時に当初ほどの野心はなくなった。 ロシア政府の破壊のドクトリンは依然として前線地域を荒廃させているが、2022 年春に首都キーウ攻略に失敗したことで、完全勝利という目標は失われた。

ロシアの戦争は大惨事

「ゆっくりと成果は上がっているが、それは信じられないような代償を払ってのことだ。」 イラクとアフガニスタン戦争で連合軍を率いたデービッド・ペトレイアス元 CIA 長官は、先日のミュンヘン安全保障会議の傍らで行われたヴィクトル・ピンチュク財団主催のイベントで本誌に語った。 「ロシア軍はいずれにせよ勝つことができなかった」と、ルジンは言う。 「2022 年 2 月以来のロシアの戦略は大惨事に陥っている。」

  1. キーウ電撃作戦の大失敗

    ロシアによるウクライナの首都キーウへの「雷撃作戦」は、キーウ郊外のホストメル空港を占拠し、進攻の足がかりにしようとしていた。 空港をめぐる戦いはこの戦争で最も重大な意味をもっていたが、結果的には失敗に終わった。 ベラルーシからキーウに向かう長さ約 65 キロの輸送車の車列は、ロシア軍によるキーウ占領を支える支柱だったが、物流の負担が大きすぎた。 蛇行する隊列はウクライナの攻撃によって徐々に侵食され、ロシアの戦術的傲慢さの象徴となった。

    AP 通信は、キーウ占領の失敗を「歴史的な敗北」と呼んだ。 首都キーウ周辺に配備されたロシア軍は、ベラルーシから陸路と空路でやってきた。 主力部隊はブチャやイルピンといった郊外に陣取り、市民を残虐に扱った。 偵察チームや破壊工作チームもキーウに侵入した。 しかし、補給がなければ、キーウを占領することは不可能だ。 「ロシア軍はキーウ周辺に集結していた部隊に対し、意味のある補給をしなかったし、助けになることもしなかった」と、当時、国防総省報道官だったジョン・カービーは、渋滞で立ち往生した補給部隊について語った。 「ウクラ イナ軍は非常に機敏に、橋を破壊し、先導車両を攻撃して動けなくすることで、ロシア軍輸送隊を足止めした。」

    「ロシア軍に能力があったとしても、厳しい状況だった」と元陸軍大佐でオハイオ州立大学のピーター・マンスール教授(戦史)は AP 通信に語った。 「近代的な機甲戦を遂行することは完全に不可能であることが証明された。」

  2. 黒海で味わった屈辱

    ロシアの陸・空・海軍は 2 年間の戦争で屈辱的な損害を被った。 地上戦は泥沼化し、空軍はウクライナの制空権を掌握できなかった。 そして、ロシアが誇る黒海艦隊は、ウクライナには対抗する海軍が存在しないというのに、その攻撃で突如、ひどい損害を被った。 黒海の港湾都市オデーサ周辺の南部海岸線にロシアの陸海空軍が一斉に攻め込むという当初の話は無に帰した。 4 月には、黒海艦隊の旗艦である誘導ミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナの対艦ミサイルによって撃沈されるという衝撃的な事件があり、黒海艦艇はウクライナ沿岸から撤退した。

    巡洋艦モスクワの沈没

    乗組員 510 人の巡洋艦モスクワの沈没は、第二次世界大戦以降の海戦における最も大きな損失となった。 これを皮切りに次々と軍艦が攻撃された。 2022 年の侵攻以前には、ロシアの艦隊は約 80 隻あったと考えられている。 ウクライナは現在、大小合わせて少なくとも 25 隻のロシア艦を撃沈し、さらに 15 隻が損傷のため修理に回されたと主張している。 ロシア海軍は黒海で終始劣勢を強いられており、ウクライナの港湾封鎖を維持することができず、占領下のクリミア半島にある本拠地を守ることさえできていない。 対艦ミサイル、ウクライナ製の海軍ドローン、西側諸国から供与された巡航ミサイル、コマンド部隊はいずれもロシアの防衛網を突破できることが証明されている。

    モスクワの沈没は今でもロシアにとって最も手痛い損失だが、複数のロプーチャ級揚陸艦、ロストフ・ナ・ドヌー潜水艦、タランタル級ミサイル艦イヴァノヴェツも失った。 クリミアの軍港都市セバストポリでは重要な乾ドックのインフラが破壊され、クリミアとロシアを結ぶケルチ海峡大橋は海軍の無人偵察機の攻撃で損傷を受けた。 セバストポリにある黒海艦隊司令部の建物でさえ、ストーム・シャドウ巡航ミサイルの攻撃で破壊された。 「どれもモスクワと同じ運命をたどるか、黒海東部に逃げてそこにとどまるまで、われわれはロシア艦船を攻撃する」と、ウクライナの元国防相で、現在は国防省顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュクは昨年 9 月本誌に語った。

  3. 善意のしるし

    最前線で停滞している現在の戦況は、流動的で機械化された戦闘が数週間にわたって繰り広げられ、領土が大きく変動した 2022 年の戦闘とは大違いだ。 4 月にロシアがキーウから撤退した後、両陣営は戦闘を再開し、ウクライナが東部ハルキウ地方と南部ヘルソン地方で大きな勝利を収めた。 ウクライナが南部からヘルソンに攻め込み、最終的にはドニプロ川の川岸まで攻勢をかけることは、以前から予告されていた。その漸進的な攻勢は8月に始まった。 北東部ではウクライナがハルキウの東で奇襲攻撃を仕掛け、比較的薄いロシアの防衛線を突破し 650 平方キロ以上の領土を解放した。 ウクライナの攻撃隊は、その進撃の速さゆえに、自軍の補給線を追い越すことさえあった。

    これは南部での成功につながり、ウクライナ軍は 11 月にヘルソンに到達し、市をロシアの支配から解放した。 ロシア政府によれば、4 月のキーウ、9 月のハルキウ、11 月のヘルソンと、ロシア軍の敗北と撤退はすべてロシア側の「善意のしるし」だった。 6 月の黒海の要衝ズメイヌイ島(スネーク島)の放棄もそのひとつだったという。

  4. 善意のしるし「プーチンの料理人」

    ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア政府内のパワーバランスをも動かし、権力を振るう新たなルートをプーチンの側近たちにもたらした(それを使いこなすだけの冷酷さとリソースがあればの話だが)。 この 2 年間のモスクワにおける泥沼の心理戦から生まれた物語の中でも最も衝撃的だったのが、エフゲニー・プリゴジンの台頭だった。 彼はケータリング業で財をなしたオリガルヒ(新興財閥)で、「プーチンの料理長」というあだ名で呼ばれていた。

    民間軍事会社ワグネルを率いていたプリゴジンは、軍閥の長といった存在になるとともに、戦況に大きな影響力を及ぼす立場となった。 ワグネルは 2022 - 2023 年にかけて東部ドネツク州での激しい戦闘を主導し、2023 年 5 月にはソレダールやバフムトを攻め落とし勝者となった。 セルゲイ・ショイグ国防相やバレリー・ゲラシモフ参謀総長との激しい権力闘争を経て、プリゴジンは現実主義者で民衆の味方というイメージを作り上げることができた。 そして、主戦論者ナショナリストや、世論調査によれば、多くのロシア人の支持を得るに至った。

    だが結果として、権力闘争はプリゴジンを破滅に導いた。 昨年 6 月、ワグネルはウクライナ国境に近いロシア南西部の基地で反乱を起こした。 そしてモスクワに向けて進軍したが、手前で止まった。 プリゴジンが政府と一時的に合意を結び、反乱を取りやめたのだ。 だがこの合意は、プリゴジンの破滅を少し遅らせただけだった。 8 月に彼を乗せたプライベートジェットはモスクワの北で墜落。 アメリカの情報当局はこれが暗殺である可能性を指摘した。

    プリゴジンとワグネルにクーデターを許したことと、治安当局が未然にそれを防げなかったことにより、プーチンの正統性は打撃を受けたと、海外では受け止められた。 「プーチンの弱さとプリゴジンの大胆な批判により、クレムリンは過去数十年間で最も弱体化している」と、アメリカのシンクタンク、アトランティック・カウンシルは 7 月、指摘した。 ゼレンスキーも同じ意見だった。「彼(プーチン)がプリゴジンを殺したという事実は、彼の理性がいかほどのものかを、そして彼がいかに弱体化しているという事実を物語っている」とゼレンスキーは 9 月に述べた。

  5. 穴だらけの防空システム

    2022 年の開戦当初、ロシアはやりたい放題だった。 さまざなな巡航ミサイルを地上からも海上からも空からも発射し、好きなように爆撃を行った。 激しい爆撃によって、ウクライナの電力網はズタズタになった。 本格的な戦争が始まって最初の冬はウクライナにとって非常に厳しいものとなった。 だが戦いが続く中、ウクライナは長距離攻撃能力の向上に努めた。 その中で、先進的なはずのロシアの防空システムに「穴」があることも明らかになっていった。

    ウクライナはドローン開発プログラムにかなりのリソースを投入してきた。 UJ-26 ビーバーや UJ-22 エアボーンといった航続距離の長い自国製ドローンはウクライナ政府の自慢だ。 ウクライナはまた、UJ-25 スカイラインといった先進的なジェットエンジンを積んだドローンの開発・製造にも取り組んでいる。 ロシアの防空システムが機能しないことがあまりに多かったために、ロシアのインターネットでは「防空システムはは何をしている?」というフレーズがはやり言葉に。 ソーシャルメディアでロシアの都市や主要インフラや軍事関連施設がドローンやミサイルの攻撃を受けて話題となるたび、この言葉は広まった。 ドローンがクレムリンの敷地内に到達して爆発したこともあった。

    穴だらけなのは地上の国境防衛も同じらしい。 昨年夏には西部ベルゴロド州への親ウクライナ派のロシア人戦闘員による攻撃が繰り返され、ロシア政府と地元当局の面目は丸つぶれとなった。 アメリカのシンクタンク、戦争研究所は、「(親ウクライナ派の)攻撃はロシアのコメンテーターたちにとって驚きだった」と指摘した。 政治アナリストで、かつてプーチンのスピーチライターを務めたこともあるアバス・ガリャモフは、テレグラムにこう投稿した。 「(ベルゴロドへの攻撃は)プーチンの軍隊は無敵だという神話を完全に破壊した。」 彼はこうも付け加えた。 「(プーチンの軍隊は)前進する方法が分かっていないばかりか、防衛も同じくらい下手だ。」 (デービッド・ブレナン、NewsWeek = 2-27-24)


有能な CV90 歩兵戦闘車、北欧 2 カ国がウクライナ向けに最新型生産へ

スウェーデンとデンマークはウクライナ向けに CV90 歩兵戦闘車の改修型を 35 両共同で生産する見込みだ。 デンマークが資金を拠出し、スウェーデンが製造する。 生産されるCV9035NL 就役中近代化 (MLU) 型は、オランダに納入されているものと同じタイプになる。 CV90 は重量 37t、乗員 3 人のほか兵員最大 8 人が乗り込める装軌式の歩兵戦闘車だ。 価格はおよそ 900 万ドル(約 13 億 6,000 万円)とされる。 CV9035NL MLU はウクライナ軍の歩兵戦闘車で唯一、車長用の安定化サーマルビジョン(熱赤外線可視化)システムを搭載した車両になるとみられる。 これは重要な点である。 とはいえ、この CV90 のハイテク機能はそれだけではない。

CV9035NL MLU の車長用照準装置は第 3 世代のサーマルビジョンシステムとレーザー測距儀を備え、測距儀は最長約 9.7km まで計測できる.。 さらに、砲手用にもレーザー測距儀付きの第 3 世代サーマルビジョンシステムがある。 つまり、車長と砲手はそれぞれ独立して、昼夜を問わず、高解像度で目標を探すことができるのだ。 CV9035NL MLU には、敵車両から距離の計測やミサイル誘導のためにレーザー波を照射されると乗員に警告を発する警戒システムも搭載されている。 乗員はそのおかげで、発煙弾の発射や制圧射撃などで対応できる。

オランダ向けの CV90 では防御力を高めるために、イスラエルで開発されたアクティブ防護システム「アイアンフィスト」がスウェーデンの車両メーカー、BAE システムズ・ヘグルンドによって追加されている。 アイアンフィストは敵のミサイルや通常弾を探知し、小さな飛翔体を発射して迎撃するシステムだ。 ただ、これがウクライナ向けの CV90 にも搭載されるのかは不明だ。 地雷攻撃による衝撃から乗員と兵員を守るために、CV90 の座席は上部と側面に固定されている。 内部は金属片で負傷しにくくなるようにスポールライナー(飛散防止の内張り)も施されている。 新型 CV90 は砲塔の複合装甲も新しくなっているが、素材や組み合わせなどの詳細は公表されていない。

ウクライナはすでにスウェーデンから旧型の CV9040 を少なくとも 50 両受け取っている。 CV9040 の主砲はボフォース 40mm 機関砲だが、CV9035NL MLU ではブッシュマスター III35mm 機関砲に変更されている。 ブッシュマスターは徹甲弾、破片弾、サボ弾(装弾筒[サボ]を付けて貫通力を高めた砲弾)を発射できる。 いずれにせよ、砲弾がより小型なため装填数を増やせる点が最大のメリットだ。

CV9035NL MLU は砲塔の右側に、射程約 4.8km のイスラエル製スパイク LR 対戦車ミサイル 2 発の発射機も装備する。 スパイク LR は防護の弱い戦車上部をたたくトップアタック攻撃ができるほか、発射後にミサイル自体が目標を追尾するため、砲手らによる誘導が不要な「撃ちっ放し」能力も持つ。 ウクライナ軍の米国製 M2 ブラッドレー歩兵戦闘車に搭載されている TOW 対戦車ミサイルにはこの能力がない。 そのため、TOWを発射したあとM2はその場にとどまり、乗員がミサイルの飛翔中、誘導を続ける必要がある。 対して CV90 は、停車してスパイク LR を発射後、即座にその場を離れることができる。

ウクライナ軍の現有の旧型 CV90 でスパイク LR が使われたことはなく、ウクライナへ新たに供与される新型にこのミサイルが搭載されるのかも不明だ。 ともあれ、高性能な照準装置や装甲を備え、重武装の CV9035NL MLU は、ロシアがウクライナで拡大した戦争で使われる歩兵戦闘車としては最先端のものになりそうだ。 ウクライナ軍で来年にも就役する可能性がある。 (David Axe、Forbes = 2-27-24)

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