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ウクライナ軍、南部ザポリージャでロシア軍を撃退と発表

ウクライナ軍は 20 日、南部ザポリージャ州で 19 日夜から同日朝にかけ、ロシア軍の攻撃を受けたが撃退したと発表した。 軍参謀本部の発表によると、同州マリノフカとロボティネ付近で 11 件の攻撃を退けた。 軍の作戦司令部は 20 日、SNS 「テレグラム」に「厳しい夜だったが、すべての攻撃を退けた。 ロシア軍部隊を壊滅させ、事態は沈静化した。」と投稿した。

またウクライナ空軍は 20 日、各地で一晩に対空誘導ミサイルや、攻撃型ドローン(無人機) 23 機による攻撃を受けたと発表した。 北東部ハルキウ、中部のポルタバ、キロボフラードとドニプロペトロウスク、南部ヘルソン、ミコライウとザポリージャの各州で、すべてのドローンを撃墜したという。 ウクライナ軍は 19 日にも、ザポリージャ州でロシア軍の新たな攻撃を阻止し、敵の攻撃要員は装備を破壊されて逃走していると主張した。 ロシア軍部隊がウクライナ側の陣地を繰り返し襲撃しようと試みたが、失敗に終わったとも述べていた。 (CNN = 2-20-24)


ロシアの戦闘機 2 機、東部で撃墜 ウクライナ空軍発表

ウクライナ空軍は 19 日、東部でロシアの戦闘機 2 機を撃墜したと発表した。 ウクライナ空軍によると、撃墜された 2 機は Su34 と Su35。 これ以外の詳細は公表されていない。 ウクライナ東部では 17 日にも、Su34 戦闘機 2 機と Su35 戦闘機 1 機の計 3 機が撃墜されていたという。 (CNN = 2-20-24)


ウクライナ軍は圧倒的戦力差に苦境
… ドニプロ川の渡河作戦 「兵力 100 倍のロシア軍と後方の川、少しも引き下がれない自殺任務」

ロシアがウクライナに侵略してから 24 日で 2 年となる。 ウクライナ軍の兵士が激しい戦闘の様子などを読売新聞の取材に証言した。

「最も過酷」戦場の実態

ウクライナ軍は、ロシア軍との圧倒的な戦力差で、苦境が続いている。 「背水の陣」。 南部ヘルソン州ドニプロ川の渡河作戦は、まさにそんな戦いだ。 「前方は兵力 100 倍の露軍、横は地雷原、後方は川。 少しも引き下がれない自殺任務だ。」 昨年 12 月末までドニプロ川東岸沿いの村クリンキで戦ったイーホル (44) は「最も過酷」とも言われる戦場の実態を語った。 前線で負ったトラウマ(心の傷)からか、証言している途中も腹部はけいれんしていた。

クリンキは、ウクライナ軍にとって露軍が占領している地域奪還に向けた橋頭堡(きょうとうほ)だ。  ウクライナ軍はクリミア半島に通じる露軍の補給路断絶を狙っている。 昨年 6 月からの大規模な反転攻勢では南部ザポリージャ州からの突破に失敗しており、新たな突破口として期待されている。

今は防衛戦、ひたすら攻撃に耐えるだけ

昨年 9 月、最初の部隊がクリンキ付近に到達した際には、「最大の戦果になる」との高揚感があった。 だが、状況は変わった。 「今は防衛戦。 ひたすら露軍の攻撃に耐えるだけだ。」 イーホルが初めて渡河に臨んだのは昨年 12 月中旬だった。 すでに多数の死傷者が出ていた。 「家庭に事情がある者は行かなくていい。」 司令官は離脱の機会を与えたが、全員が「苦楽を共にした部隊は家族と同じだ」などと固い決意だった。

東岸には約 1 万人の露軍兵士が待ち構える。 深夜、6 人乗りの小型ボートで 1 時間かけて渡るが、半分ほど渡ったところで露軍に気づかれ無人機攻撃や砲撃が始まるのが通例だ。 川岸には大量の地雷も敷設され、3 隻に 1 隻は到達できない。 イーホルの耳には、70 メートル先にいる露軍兵士の笑い声や音楽も聞こえてきた。 だが、気は抜けない。 露軍の突撃部隊「ストーム Z」の兵士が「ゾンビのように次々と襲ってくる」かもしれないためだ。 両軍部隊がにらみ合う境界線一帯には、露兵の遺体が積み重なったまま放置されているという。

10 倍もの砲弾に多様な無人機攻撃

攻撃は地上だけではない。 露軍が放つ砲弾や銃弾の数はウクライナ軍の約 10 倍に上る。 無人機の運用パターンも多様化させている。 ウクライナ側の陣地に無人機を着陸させて、搭載しているカメラで監視し、兵士が近づくと爆発させる手法が一例だ。 クリンキに 1 か所しかない水飲み場の上空では、常に無人機が目を光らせる。

最もつらいのは、本来助けられたはずの仲間も救えないことだ。 負傷者の搬送手段もボートのみ。 負傷者が複数いれば優先順位を決めざるを得ない。 昨年 12 月に迫撃砲で負傷した同僚も、手当てが遅れボートの上で死亡した。 「死を覚悟し何度も人生に別れを告げた。 神に祈ることしかできない。」 イーホルは今、後方の基地で再度の出撃命令に備えている。 (倉茂由美子、yomiuri = 2-20-24)


破壊した街に新しい病院や住宅 プーチン政権、「復興」を猛アピール

ウクライナ侵攻開始から 2 年。 ロシアのプーチン政権は一方的に併合宣言したウクライナ東部・南部 4 州の支配地域での実効支配を進め、自らが破壊した街の復興をアピールしている。 ただ、侵攻終結の見通しは示せず、戦闘の死者も増え続けている。 ロシア国防省は 12 日、ロシアが実効支配するウクライナ南東部マリウポリに完成した医療センターの映像を公開した。

最新の医療設備を備えたセンターは、第1段階が完了。 100 人以上の医者が働き、1 日 400 人の診察が可能だ。 ベッドは 100 床で、さらに増やす計画もある。 ヘリでの救急搬送にも対応している。 「こんなセンターがマリウポリにできるとは想像しなかった。 もちろんロシアのおかげだ。」という住民の喜びの声も紹介した。 (asahi = 2-20-24)


ロシア軍が見つけた勝ち方「滑空爆弾による猛爆」、防げる兵器は 1 つだけ

ロシアがウクライナで戦争を拡大して 2 年近くの間、ロシア空軍は不十分な訓練や粗雑な兵器、中央統制の文化がネックとなり、地上部隊を支援するのに苦慮してきた。 だが最近、ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカ方面で変化がみられた。 ウクライナ軍の守備拠点だったアウジーイウカに対し、ロシア空軍のパイロットはここ数週間、40km ほど離れた場所から衛星誘導の滑空爆弾を大量に投下してきた。 こうした航空支援を受けてロシア軍の地上部隊は、多大な損害を出した 4 カ月以上にわたる攻撃の末に、ウクライナ軍の第 110 独立機械化旅団を撤退させた。

ロシア軍は空から地上部隊を効果的に支援する方法をついに見いだした。 今後、ウクライナのおよそ 1,000km にわたる前線のほかの戦域でも同じ戦術を用いるだろう。 米シンクタンクの戦争研究所 (ISW) は、アウジーイウカでの滑空爆弾作戦は「前線のあらゆる場所でロシア側の作戦が変化する先駆け」と位置づけている。 ロシア空軍は前線用の戦闘爆撃機を 1,000 機ほど運用する。 ウクライナ空軍のざっと 10 倍だ。 だが、ロシア側はウクライナ側よりも圧倒的に大きな航空戦力を持ちながら、2022 年 2 月の戦争拡大後、航空優勢を完全に握ることはできなかった。

英王立防衛安全保障研究所 (RUSI) の専門家、ジャスティン・ブロンクとニック・レイノルズ、ジャック・ワトリングは 2022 年 11 月のレポートにこう記している。 「(2022 年) 3 月上旬以降、ロシア空軍はウクライナ側が支配する空域では非常に低い高度を除いて作戦行動をできなくなった。 有効性を高め、巧みに分散され、機動的なウクライナ側の地対空ミサイルシステムを確実に抑制もしくは破壊できないためだ。」 戦争を拡大して最初の 1 年間、ロシア空軍のパイロットは前線近くを飛行する危険を冒せなかった。 さらに言えば、ロシア側は安全な距離から地上部隊を支援できる長距離精密爆弾も不足していた。 ウクライナ側の防空はロシア側の航空戦力の優位性を事実上、無効化していた。

しかし、こうした状況は長く続かなかった。 ロシア側は重量 250kg か 500kg、あるいは 1,500kg の KAB 滑空爆弾や FAB 滑空爆弾に翼と衛星誘導装置を取り付け、粗製の滑空爆撃能力を開発した。 ロシア空軍のスホーイ戦闘爆撃機は高高度を高速で飛行して、40km 離れた目標に向けて KAB を 2 発以上投下できるようになった。 前線から 40km というのは、ウクライナ側の地対空ミサイルによって迎撃されるリスクを完全には排除できないものの、軽減するには十分な距離だ。

KAB はすぐに、ロシア軍の最も恐るべき兵器の 1 つになった。 ウクライナ軍の兵士は、前触れもなく飛来して爆発し、建物を倒壊させたり掩蔽壕を粉砕したりするほどの威力を持つ、この静かな巨大爆弾の独特の恐怖について語っている。 ロシア軍が戦闘力の大半を集中させたアウジーイウカで、KAB は効果的に使用された。 守備隊の主力だった第 110 旅団は市内に多数ある高層の建物の廃墟を高所観測所や射撃陣地として活用していた。 (David Axe、Forbes = 2-20-24)


ウクライナ避難者、日本への定住希望が急増 「できるだけ長く」 4 割

ウクライナから日本に避難している人のうち、日本での定住を望む人が、この 1 年で 24.7% から 39.0% に急増したことが、日本財団が定期的に実施しているアンケートからわかった。 反転攻勢がうまくいかずに戦争が長期化するのを目の当たりにし、「状況が落ち着くまでは、しばらく日本に滞在したい」と答えていた人の多くが帰国を諦めたとみられる。

ウクライナ避難者「日本に住み続けたい」 終戦見えず、定住希望急増

日本に住むウクライナからの避難者は 2 月 14 日現在で約 2,100 人。 日本財団はこれまで、延べ約2千人に年100万円の生活費を支援。18歳以上を対象に、生活状況や意識を計5回アンケートしてきた。

朝日新聞は、日本財団と契約を結び、日本財団からアンケート結果のデータ提供を受けて内容を分析した。

ウクライナからの避難者の帰国の意思 : 第 5 回アンケート(1022 人回答、昨年 11 - 12 月実施)で、「できるだけ長く日本に滞在したい」と答えた人が急増し、その 1 年前の第 2 回アンケートで 24.7% だったのが、39.0% と 1.6 倍になった。 これまで 40% 前後で最も多かった「状況が落ち着くまで」様子を見ようという人を初めて上回った。

「日本で人生の新しいチャプター始める」

首都キーウで美容サロンを営んでいたポジダイエバ・アンナさん (50) は 2022 年秋、10 代の娘2人と来日した。 「ミサイルが自宅近くに落ちるのを経験した娘は日本に慣れ、もう戻りたくないと言った。 目が不自由な夫も呼び寄せ、日本で人生の新しいチャプター(章)を始めると決めました。」 ただ、定住への課題は大きい。 アンケートでは、働いていない人は 52.8% と半数を超え、働いている人でも 4 分の 3 はパートタイムだった。 就労には、日本語が欠かせない場合が多いが、ほとんど話せない人が 3 割、簡単な日本語のみという人が 4 割だった。

専門家「経済的な自立策を話し合える場が必要」

財団による生活費支援は原則として最長3年間で、来年には期限という人が出始める。 日本政府は昨年12月、紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度を始めた。 対象者は定住資格が与えられ、日本語の習得や生活支援が新年度から始まる。 明治学院大教養教育センターの可部州彦(くにひこ)研究員(難民の就労支援)は「戦争が長びくなか、日本での生活を設計する人が増えている。 子どもが教育を受けるには資金がどれくらい必要で、就労するにはどんな技能や資格がいるのか。 それぞれのライフステージに合わせた経済的な自立策を具体的に話し合える場が必要だ」と話した。 (中山美里、篠健一郎、asahi = 2-19-24)

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ウクライナ侵攻 2 年 都営住宅に約 460 人、避難長期化で需要増

ロシアのウクライナ侵攻開始から間もなく 2 年になる。 国内に滞在する 2,098 人(7 日時点)のウクライナ避難民のうち、2 割に当たる約 460 人が暮らすのが都から無償で提供されている都営住宅だ。 避難が長期化する中、国内の地方都市からの流入などで増加傾向が続く。

出入国在留管理庁のまとめでは、7 日時点で日本国内にいるウクライナ避難民のうち、約 3 割に当たる 599 人が都内に滞在している。 都によると、避難民の都営住宅への入居が始まったのは 2022 年 3 月末。 入居者は今年 1 月末時点で約 300 世帯約 460 人に達し、都内に滞在する人のうち約 8 割が都営住宅で暮らしていることになる。 既に退去した人も含めると、9 日時点で累計 310 世帯 489 人が利用したという。

都営住宅に住むウクライナ避難民の数

支援関係者や避難民によると、支援機関の多さや就業などを考えて地方都市から流入したり、当初受けていた民間企業や教育機関の支援などが終了したりして、転居先として都営住宅を選択するケースがある。 当初は自分で住居費用を負担していたものの、避難が長期化する中で都の支援につながった人もいる。

「この部屋にたどり着いて、やっと新しい人に会ったり、日本語を学び始めたりできた。」 キーウから避難しているオリガさん (40) は 23 年 4 月に来日し、6 月から都営住宅で暮らしている。 新型コロナウイルス流行前に休暇で訪れたことがあり、身元保証人がいたため東京に避難した。 だが、当初は公的支援があることを知らず、蓄えを切り崩して民間のアパートを借りていたという。 「避難生活で毎月のアパートの家賃を負担するのは大変だった」と振り返る。 保証人から都の支援を知らされ、申し込んだ。

暮らしは少し落ち着き、現在の課題は日本語の習得と就業だ。 都営住宅に住み始めてから、夫のウォロディミルさん (40) と一緒に、自治体が開く教室などで日本語を学び始めた。 夫はウクライナの会社にリモート勤務をしており、日本時間の夕方から未明にかけて働かなくてはならない生活が続く。 オリガさんはウクライナで IT 関連会社の COO (最高執行責任者)を務めていたことがあり、日本でも自身の経験を生かした職に就きたいと考えているが、まだ見つかっていない。 2 人は「戦争が終わり、安全な状態になれば帰国したいが、いつになるか分からない。 今は自分たちの日本語のレベルを上げ、日本で仕事を探したい。」と話す。

若い世代の来日ケース増

都は 24 年度も都営住宅の支援を継続する予定だ。 担当者は「住宅は生活の基盤になる。 都営住宅に暮らしながら、就労を目指して日本語を学ぶなど自立に向けて歩んでいってもらえれば」と話す。 都は、元々暮らしていた住民と避難民の交流をはかるため、各地の住宅でサロンも開催している。

避難民を戸別訪問して利用できる支援制度を伝えるなどのサポートを続ける公益財団法人「日本 YMCA 同盟」の横山由利亜さんによると、ロシアの侵攻開始直後は母子や 60 代以上が多かったが、その後、10 代、20 代といった若い世代が知人などを頼って来日するケースも増えている。 日本語を学んで友人との会話など日常生活には支障がない程度になっても、IT や教育、財務など日本企業でそれぞれの専門性を生かした仕事に就こうとすると、言葉のハードルは格段に高くなる。

さらに避難が長期化する中、さまざまな課題を抱えている人たちがいるといい、横山さんは「支援を受ける人たちが自ら情報を収集して個々の窓口に問い合わせたり、申請したりしなくてはいけない『縦割り』をなくし、一人一人の事情に合わせて必要な情報を提供して支援につなげる仕組みが必要だ」と指摘する。 (福島祥、mainichi = 2-14-24)

都つながり創生財団が開設しているワンストップ相談窓口 (03・6258・1227) は、月 - 金曜の午前 10 時 - 午後 4 時、▽ 易しい日本語、▽ 英語、▽ ウクライナ語、▽ ロシア語 - - などで対応している。


露軍がザポロジエ州でも前進か ウクライナ軍の防衛線を突破と報道、南部でも優勢示唆

ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナの大手軍事メディア「ディープステート」は 18 日、露軍が南部ザポロジエ州の集落ロボティネの南側まで進軍し、集落への進入を試みていると報告した。 また、ロボティネ東方の集落ベルボベの南西方向でも露軍がウクライナ軍の防衛線を突破したと指摘。 ウクライナ軍が撃退のための戦闘を続けていると伝えた。 ウクライナ軍は今月 17 日、弾薬不足などを背景に東部ドネツク州の激戦地アブデーフカの放棄を決定。 ロボティネ方面での露軍の前進は、露軍が東部だけでなく南部でも優勢になりつつあることを示唆した。

ロボティネはウクライナ軍が昨年 6 月に着手した反攻で奪還。 ウクライナ軍はその後も南進を試みたが、露軍の防衛線に直面して停滞し、ロボティネの南方が最前線となってきた。 ディープステートは「(ウクライナ軍が)予備部隊を投入しなければ状況は悪化するだろう」と指摘し、ロボティネが再占領される恐れがあるとの見方を示した。

一方、デンマークのフレデリクセン首相はミュンヘン安全保障会議の関連会合で、同国が保有する全ての大砲をウクライナに引き渡すと表明。 他の欧州諸国にもウクライナの武器不足解消に協力するよう求めた。 フランスのルコルニュ国防相は仏メディアに、新開発の仏製自爆ドローン(無人機)を数週間以内にウクライナに供与するとした。 いずれもウクライナメディアが 18 日までに伝えた。 (sankei = 2-19-24)


ウクライナがロシアに勝つ方法「2 年間、年 4,500 両の装甲車両破壊を継続」

戦時経済体制に入り、長年使われていなかった工場が稼働し始めたことで、ロシアは現在、ウクライナに展開する 47 万人の兵力のための装甲車両を年 4,500 両ほど生産している。 これは英王立防衛安全保障研究所 (RUSI) の新たな研究で指摘されていることの 1 つだ。 独立系オープンソースインテリジェンス (OSINT) サイトの Oryx のアナリストらによると、ロシアが 2022 年 2 月にウクライナに全面侵攻してからの 2 年間で失った 1 万両ほどの戦車や戦闘車両、装甲兵員輸送車の穴を埋めるには、年 4,500 両の生産では到底足りない。

だが、4,500 両というのはいい線を行っている。 「ロシア大統領府は現在の消耗ペースで 2025 年まで持ち堪えられると考えている」と RUSI のアナリスト、ジャック・ワトリングとニック・レイノルズは書いている。 ワトリングとレイノルズによると、留意したいのはロシアが毎年生産するそうした 4,500 両の 80% は新たに生産されたものではない、「倉庫にしまわれていた予備を改修し、近代化したもの」だということだ。 かつては冷戦時代の余りものであふれんばかりだったそうした在庫にも限りがある。 「保管されている車両数からして、ロシアは今年一貫した生産量を維持することができる一方で、2025 年には車両がより大がかりな改修を必要とすることに気づき始める」と RUSI のアナリストらは書いている。

「2026 年までに利用可能な在庫の大半を使い果たすだろう」とも指摘している。 RUSI の結論は、エストニア国防省が最近公表した報告書の結論と一致する。 ロシアでは「新しい装備の生産は、長期保管されていた装備の改修に概ね移行している」と同省は指摘した。 在庫は「あと数年」はもつ可能性があると同省は結論づけている。 衛星画像を徹底的に分析し、稼働している車両や破壊されたもの、そして保管されている車両の数を追跡しているオープンソースのアナリストらは、ロシアの予備車両が 2025 年か 2026 年に底をつくことを示す傾向を指摘している。

もちろん、ロシアはゼロからの車両生産により多くのリソースをシフトさせることができる。 だが、車両の改修に必要なのはたいていの場合、ちょっとした金属加工やエンジンの点検、無線の交換、そして光学機器や装甲のささやかなアップグレード程度(この車両に乗り込むことになる乗員は運がいい)であるのに対し、ゼロからの生産ははるかに労力を要し、リソースを大量に消費する。

エストニア国防省は、ロシアが「各国から制裁を受けている状況で生産品質を大幅に向上させることは、中期的には非現実的だろう」と説明。 制裁によって「ロシアの軍産複合体は高品質の部品、特に工作機械や生産ライン、工場設備の入手が制限されている」とも指摘した。 もちろんロシアは中国からの機械の輸入を増やすことができるが、中国の工作機械はドイツの最高品質のものほど優れていないかもしれず、入手すらできないかもしれない。 同省は「短期的には、軍産複合体はまったく新しい装甲車両の生産を大幅に増やすことはできないだろう」との見方を示した。

「これは必然的に、軍に納入される車両の大幅な減少を意味する」とワトリングとレイノルズは書いた。 だが、古い在庫が底をつくまではそうならない。 2、3 年後になるかもしれない。

ロシア 侵攻で失った戦車は 3,000 両超 侵攻以前に保有していた総数に相当 英研究所

ロシアが大規模な機械化部隊を先頭にこれまでのような戦い方をするつもりなら、産業面でよほど大きなサプライズがない限り、既存の戦闘力を使い果たし、損失を埋め合わせられなくなる日が刻々と迫ることになる。 ウクライナはロシアより長く持ち堪えることを目指すかもしれない。 だがウクライナの産業はロシアよりはるかに制約が多いため、ウクライナはロシア以上に同盟国に依存している。

つまり、ウクライナは過酷な消耗戦に勝つことは可能だが、それは支援があればの話だ。 「ウクライナの同盟国が 2024 年にロシアの攻撃を鈍らせるのに十分な弾薬と訓練を(ウクライナ軍に)提供し続ければ、ロシアが 2025 年に大きく前進する可能性は低い」と RUSI の 2 人は書いている。 そして「ロシアが攻撃作戦のために戦力の質を向上させることができず、2025 年に前進できる見込みがないのであれば、2026 年までにウクライナを降伏させるのに苦労することになる」とも指摘している。

その上で「2026 年以降は車両の消耗によってロシア軍の戦闘力は著しく低下し始め、一方でその時点でロシアの産業は崩壊状態に陥る可能性があり、ロシアの展望は時間とともに厳しくなる」と見通している。 当然のことながら、ウクライナにとって問題なのは、最大の同盟国である米国がここ 2 カ月近く、追加の支援を行っていないことだ。 米議会のロシア寄りの共和党議員たちは追加支援案の採決を拒否しており、態度を軟化させる兆しもない。 そのためウクライナ軍は、米国より予算が少ない欧州の同盟国だけを頼りにあと 2 年間持ち堪えてロシア軍を消耗させなければならない。 (David Axe、Forbes = 2-19-24)


アウジーイウカ撤退のウクライナ軍が最後の一撃、ロシア軍 3 機を撃墜か

ウクライナ軍の第 110 独立機械化旅団は 2 月 16 日、ドローン(無人機)や特殊部隊、同軍屈指の第 3 強襲旅団の援護を受けながら東部ドネツク州の防御拠点アウジーイウカから撤退し、4 カ月にわたる激戦に終止符を打った。 第 110 旅団のアウジーイウカ防衛は、同旅団の戦前の兵力約 2,000 人の大半を犠牲にしたかもしれない。 だが、ロシア軍はそれよりはるかに多くの犠牲を払った。

ロシアが占領するウクライナ東部ドネツクの北西約 8km に位置する工業都市アウジーイウカへの攻撃には、ロシア軍の第 2、第 41 両諸兵科連合軍から 12 個以上の旅団が参加した。 これらの旅団の大半は、兵士のほとんどを失ったようだ。 アウジーイウカとその周辺でのロシア軍の死傷者は計 3 万人を超えるかもしれない。 米当局者によると、16 週間にわたる戦闘の最初の 6 週間だけで、ロシア兵 1 万 3,000 人がアウジーイウカ周辺で死傷した。 そして撤退するウクライナ軍は、第 110 旅団と隣接部隊を標的に空爆しようとしていたらしいロシア空軍の戦闘爆撃機 3 機を狙って、アウジーイウカでの戦闘を締めくくるミサイルを発射したようだ。

第 110 旅団の生き残った兵士が 17 日早朝、アウジーイウカの外れで援護部隊を追い越して西へと急いで退散する中、ウクライナ空軍のミサイルがアウジーイウカの約 96km 東でロシア空軍のスホーイ戦闘爆撃機を少なくとも 1 機、もしかすると数機撃墜した。 そのうちの 1 機のみの墜落映像がある。 東部ルハンスク州ディアコベ近くに墜落する様子が映っている。 だが、ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官は、自身が率いる部隊が 3 機撃墜したと主張した。 乗員 1 人が乗り込む Su-35 が 1 機、そして乗員 2 人の Su-34 が 2 機だ。

撃墜したことを証明するためにオレシチュクは、おそらく損傷した機体から脱出したと思われる乗員 4 人の緊急位置表示の無線ビーコンを表示したデジタル地図のスクリーンショットを SNS に投稿。 「ご覧の通り、システムは機能している!」 と、オレシチュクは書き込んだ。 アウジーイウカでの戦闘を生き延びたウクライナ兵にとって、この撃墜は思うところがあるものだった。ロシア空軍のスホーイは何週間も第110旅団を執拗に爆撃した。スホーイは東からアウジーイウカに向かって急上昇し、約 40km 離れたところから衛星誘導の滑空弾 KAB を投下した。 中には重さが 1,360kg ある滑空弾もあった。

「さまざまな推定からして、今週、1 日で 37 - 42 発の KAB がアウジーイウカに投下された」とウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは 2 月 15 日に報告した。 「これらの破壊力の大きな爆弾は精度が低いにもかかわらず、詰め込まれている弾薬が多いため甚大な被害を引き起こし、近隣の建物を損傷させるか破壊した」と指摘した。 「アウジーイウカは KAB だ」と第 3 強襲旅団の兵士エゴール・シュガーは X (旧ツイッター)に書き込んだ。「人類が生まれてこの方、このような狭い範囲に投下された航空爆弾としては最多ではないか。」

ウクライナ空軍はスホーイからの防御に苦戦した。 同空軍が保有する長距離防空ミサイルシステムはわずかで、巡航ミサイルやドローンによる大規模な攻撃から民間人を守るために、そのほとんどをウクライナの大都市周辺に配備している。 だがこれらのシステムのうち、特に米国製の地対空ミサイルシステムのパトリオットはかなり機動性が高い。 そしてウクライナ軍の兵士らは、複雑なパトリオットを巧みに操作してこれまでに何度か待ち伏せ攻撃している。 最も注目すべきは、昨年 12 月にウクライナ南部でウクライナの海兵隊に滑空誘導爆弾を落とそうとした Su-34 を 3 機撃墜したことだろう。 (Divid Axe、Forbes = 2-19-24)


ウクライナ支援「代案なし」 = ハリス米副大統領、ゼレンスキー氏と会談

【ミュンヘン】 ハリス米副大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は 17 日、ドイツ南部ミュンヘンで会談し、ロシアの侵攻が続くウクライナへの支援を巡り協議した。 ハリス氏は会談後の共同記者会見で、米議会で暗礁に乗り上げている支援法案について「支援する以外に代案はない」と述べ、議会に早期可決を求めた。 ゼレンスキー氏も「この法案は極めて重要だ」と指摘。 「ウクライナとその全ての戦士たちは(支援を)待ち望んでいる」と訴えた。 (jiji = 2-18-24)


英米、ウクライナにAI搭載無人機の供与目指す - 関係者

英国は米国など各国と協力し、ロシアの軍事侵攻開始から間もなく 2 年を迎えるウクライナに人工知能 (AI) 搭載の新たな無人機数千機を供与する方向で取り組んでいる。 事情に詳しい関係者が明らかにした。 無人機は標的に同時に群がることができるという。 この技術を開発している西側の軍事プランナーは、ウクライナがこの無人機でロシア軍の支配地域を一部制圧できると考えているという。 センシティブな情報だとして匿名を条件に述べた関係者によれば、無人機は数カ月以内にウクライナに送られる可能性があるが、遅れもあり得る。

AI 搭載の無人機は大規模に展開され、互いに通信することで、人間が操縦することなく敵地を狙うことができると関係者の1人は説明した。 北大西洋条約機構 (NATO) のロブ・バウアー軍事委員長はブルームバーグに対し、ウクライナが無人機を「AI と組み合わせて」使えば、「ロシア軍に対する砲撃よりも成功する可能性がある」と指摘。 「比較的単純なドローンや比較的単純なカメラあるいはビデオシステムを、ソフトウエアとの接続性を高めるよう改良するため、各国が一斉に AI に注目している」と明らかにし、最先端テクノロジーの開発でロシアとの「終わりのない競争」があるとも語った。 (Alex Wickham、Ellen Milligan、Alberto Nardelli、Bloomberg = 2-18-24)


ロシアが「戦争に適応」 ゼレンスキー氏、危機感鮮明

【ミュンヘン、キーウ】 ウクライナのゼレンスキー大統領は 17 日、ドイツ南部ミュンヘンで開催中の「ミュンヘン安全保障会議」で演説した。 ウクライナが砲弾と長射程兵器の不足に直面する一方「プーチン(ロシア大統領)は戦争に適応している」と述べ、危機感を鮮明にした。 反転攻勢が失速し、ロシアが東部で攻勢を強める中、欧米に武器支援を強く求めた。 ゼレンスキー氏は 16 日にドイツとフランスを訪れ、両国と安全保障協力に関する 2 国間協定を結んだ。 独仏両国は長期的な安全保障を約束するとともに、追加軍事支援を新たに表明した。

17 日の会議では、ドイツのショルツ首相も演説し「私たち欧州人は自分たちの安全にもっと注意を払わなければならない」と述べた。 ウクライナへの軍事支援は自国の安全保障に資するものだと強調し、欧州各国に支援拡大を呼びかけた。 ゼレンスキー氏は昨年のミュンヘン安保会議ではオンラインで演説した。 今年はハリス米副大統領や欧州の首脳ら他の出席者とミュンヘンで会談し、支援の継続を直接訴える。 (kyodo = 2-17-24)


ロシア、激戦地の補給路遮断=「ウクライナ軍撤退」報道も

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍は、包囲する東部ドネツク州の激戦地アウディイウカで、ウクライナ軍の主要な補給路を遮断したもようだ。 占領地区にロシア国旗が掲げられたことがドローンの映像で確認できたと、双方の軍事ジャーナリストらが 15 日、SNS で指摘した。 事実であれば、同地での攻防は重大局面を迎えた可能性がある。 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は 15 日、ウクライナ軍の兵員の一部がアウディイウカから撤退を開始したと報じた。 同国軍当局者は「(陥落は)時間の問題」と認めているという。

現場のタルナフスキー司令官は 16 日、SNS で「あり得るシナリオを考慮して新たな陣地を築き、強力な防御を固める。 領土は大事だが、最優先なのはウクライナ兵の命だ」と強調した。 「新たな陣地」は後方への撤退を示唆する用語で、注目を集めている。 ロシア軍は、アウディイウカにある燃料精製工場の確保を狙っているとみられる。 ポスト紙は、アウディイウカ制圧の場合、ウクライナ軍が昨年 6 月に反転攻勢を開始した後、ロシア軍にとって「最大の勝利となる」と指摘。 ウクライナ軍が兵員や兵器の不足を訴える中、ロシア軍が戦闘の主導権を奪還することになると警告した。 (jiji = 2-16-24)


ウクライナ軍、待望の新型ロケット弾 GLSDB を使い始める 米供与の新兵器

ウクライナ軍の米国製新型ロケット弾「GLSDB (地上発射型滑空弾)」が戦闘で使われ始めたようだ。 ロシアが 2 年前に拡大した戦争で、ウクライナ側が危機的な局面を迎えるなかでのことである。 皮肉なことだが、同じく米国のロシアに同調する共和党議員らのせいで、ウクライナ軍は深刻な砲弾不足にあえいでいる。 重量約 270kg、射程約 50kmm の GLSDB は、ウクライナ軍の 155mm 榴弾の不足を補う一助にはなるかもしれない。 ただし、文字どおりほんの少しの助けだ。 長距離攻撃用のロケット弾である GLSDB は砲弾ではない。 砲弾のように使うのは本来は浪費と呼ぶべきだろう。

GLSDB がウクライナ軍による攻撃で使われたらしい最初の証拠は、14 日にネット上に現れた。 箱に入れられたロケット弾の残骸の動画をロシア軍側が投稿し、そこに GLSDB の特徴的な尾翼の一部とみられるものも含まれていた。 ロシア側はこの残骸について、ウクライナ東部ルハンスク州クレミンナ周辺で 13 日にあった攻撃で使われたものだと主張している。 この攻撃の目標は、クレミンナ近郊の集落ジトリウカのすぐ東にあったロシア軍のロケット発射機 2 基だった可能性がある。 ウクライナ軍のドローン(無人機)は、これらの発射機が爆発し、巨大な火の玉が広がる様子を上空から観察していた。

実際にジトリウカでの攻撃に GLSDB が使われたのだとすれば、使用兵器の選択としては奇妙に思われる点もある。 ジトリウカはクレミンナ方面の前線からわずか数kmしか離れておらず、なぜこれほど近い距離の攻撃に射程が 150km ほどもある長距離攻撃用の弾薬を浪費したのかという疑問が浮かぶからだ。 斟酌すべき事情があったのかもしれない。 たとえば、ロシア側のロケット発射機群を攻撃するのに、たまたま適切なタイミングで適切な場所に GLSDB の発射機があったので、急に発射したのかもしれない。 あるいは、GLSDB を不釣り合いな距離で使わざるを得ないほど、ウクライナ側の付近の野砲は砲弾が不足していたのかもしれない。

米議会共和党がウクライナへの支援を妨害しているために、ウクライナ軍の砲兵が 1 日に発射する砲弾数はわずか 2,000 発程度と、おそらくロシア側の 5 分の 1 の水準に落ち込んでいる。 GLSDB に関してウクライナにとって幸運だったのは、米国のジョー・バイデン政権が 1 年前、つまり下院共和党がごくわずかな差で多数派を占めるのを利用して支援を妨げ始める前に、ウクライナ向けに GLSDB を開発するための資金を米ボーイングとパートナーのスウェーデンのサーブに支出していたことだ。

契約額は 3,300 万ドル(約 49 億円)だった。 有翼の滑空爆弾である GBU-39 小直径爆弾 (SDB) と、余剰になった M26 ロケットモーターを組み合わせた GLSDB は、1 発 4 万ドル(約 600 万円)と安上がりだ。 3,300 万ドルの大半が開発費に費やされていなければ、ウクライナは GLSDB を数百発取得できるかもしれない。 GLSDB は、どのようなトラックでも牽引できる特殊なコンテナから発射されるようだ。 サーブによれば、装軌の M270 多連装ロケットシステム (MLRS) や装輪の高機動ロケット砲システム (HIMERS) からも発射できる。 ウクライナ軍は M270 と HIMARS をそれぞれ十数基保有している。

とはいえ、GLSDB がたとえ 500 - 600 発あっても、155mm 砲弾の代えにはならない。 単純に数量でいっても、支援国から十分な供給があればウクライナ軍が発射する砲弾数は 1 日でその 10 倍にのぼるからだ。 ほとんどの 155mm 砲弾は無誘導で、射程もせいぜい 25km ほどしかなく、搭載されている炸薬も 11kg 程度だ。 それに対して GLSDB は GPS (全地球測位システム)で誘導され、射程は 6倍、炸薬量は8 倍ある。

野砲などから撃ち出される砲弾は、敵部隊が攻撃の数時間前、前線から数 km 後方の開けた場所に集結し、接触線の方向に移動を開始する際に最も威力を発揮する。 数十発の砲弾の弾幕は数千平方 m の範囲で車両を破壊したり、歩兵を殺害したりできる。 対照的に、GLSDB が最も威力を発揮するのは、前線からかなり離れた場所の「点目標」を攻撃する場合だ。 具体的に言えば、補給基地や弾薬庫、司令壕、防空レーダーなどである。 これらの拠点はあまり目立たないながら、ロシアの戦争努力全体にとっては重要なものだ。

つまり、砲弾は前線近くの広範なエリアで敵の戦闘部隊を日々つぶすのに用いられ、GLSDB のような長距離攻撃用の弾薬は補給や指揮のネットワークなど、機械戦の基盤インフラをピンポイントでたたくのに使われるものだということだ。 ウクライナ軍は今回、前線からわずか数 km の距離にあったロシア側のロケット発射機に対して GLSDB を発射したのかもしれないが、いずれにせよ GLSDB による短距離攻撃が多く行われるとは考えないほうがよい。 GLSDB はそうした攻撃用の兵器ではないのだ。 GLSDB がウクライナの戦場に到着したからといって、ウクライナ軍で深刻化する砲弾不足問題の解決にはたいして役に立たないのが実情だ。 (David Axe、Forbes = 2-16-24)


ウクライナ、ロシア黒海艦隊の大型揚陸艦をまたも撃沈 月に 1 隻ペース

ウクライナ軍が 2022 年 3 月 24 日にロシア占領下の南部ベルジャンシク港を攻撃した際、ロシア黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」は同港から辛うじて脱出した。 全長 112.5m のクニコフは、近くにいたタピール級揚陸艦「サラトフ」が爆発して飛び散った残骸で損傷し、艦長は死亡した。 それから 23 カ月が経ち、ウクライナ軍はクニコフを狙うために戻ってきた。 2 月 14 日にネット上に出回った映像には、ロシア占領下にあるクリミア南端のアルプカ沖でクニコフが燃えて沈むところとされる様子が映っている。

ウクライナ軍はなぜクニコフを狙ったのか。 そして、なぜクニコフは爆薬を搭載した水上ドローン(無人艇)を使用したとされている攻撃を受けた後に爆発したのか。 それは、ロシア軍がウクライナ南部に展開する自軍の守備隊に弾薬を運ぶために揚陸艦を使用しているからに他ならない。 ロシアが 2022 年にウクライナに全面侵攻を開始した際、黒海艦隊はロプーチャ級 6 隻とタピール級 3 隻の計 9 隻の揚陸艦を保有していた。 2 年にわたる激戦で、ウクライナ軍はロプーチャ級 3 隻とタピール級のサラトフを爆破または撃沈した。

ウクライナ軍はまた、黒海艦隊の巡洋艦 1 隻、潜水艦 1 隻、補給艦 1 隻、数隻の哨戒艇および小型揚陸艇、そしてミサイル搭載コルベット艦「イワノベツ」を爆破・撃沈している。 これらの損失は、侵攻前に黒海艦隊が保有していた艦艇の 5 分の 1 を超える。 ウクライナ軍のロケット弾や巡航ミサイル、水上ドローンによる攻撃で、ロシア海軍は排水量計約 1 万 5,000 トンの艦艇を失い、昨年新造された艦艇の計 1 万 8,000 トンはほぼ相殺された。 このため、ロシア海軍は総トン数が伸び悩んでいる、数少ない主要な海軍のひとつとなっている。 総トン数トップ 10 の海軍の大半は多くの小型戦艦を、数は少ないもののはるかに大型の新造艦と入れ替えることで着実に増強している。

ロシアが占領しているウクライナ東部ドネツクの北西に位置し、ウクライナ軍が拠点を置いている廃墟と化したアウジーイウカでは、ロシア軍が多大な犠牲を払いながらゆっくりと前進しているかもしれない。 だが、約 500km 離れたクリミア沖では、ロシア軍は大敗を喫している。 黒海艦隊はこのところ、おおよそ月に 1 隻のペースで艦船を失っており、攻撃に最も脆弱なクリミアの港から、そしてロシア南部ノボロシースクからも、ほとんどの艦船を引き揚げる以外に手はない。

だが、侵攻前に保有していた 9 隻のうちどうやら 4 隻が残っているロプーチャ級とタピール級の艦船は、ウクライナ軍の射程圏内を航行せざるを得ない。 ウクライナ南部への弾薬運搬という主要任務のためにはクリミアに停泊する必要がある。 そうすると攻撃を受けやすい。 戦争が 3 年目に突入しようとしており、アウジーイウカ以外のあらゆるところで戦況がこう着状態に陥っている中、ウクライナの海軍と空軍は艦船への攻撃をさらに強化することが予想される。 特に揚陸艦を標的にした作戦を展開するだろう。

ロシア、ウクライナ両軍とも大きく前進しておらず、戦力の温存と立て直しに専念していることから、今年は陣地争いの年となりそうだ。 ウクライナ軍が残り 4 隻のロプーチャ級とタピール級を沈めることができれば、ウクライナ南部への主要な海上補給線を断ち切ることができ、クリミアとヘルソン州南部にいるロシア軍の連隊と旅団を追い詰めることができるはずだ。 艦船に加えて、ロシアとクリミアを結ぶケルチ橋を破壊できれば、そうした連隊や旅団の兵士らを飢えさせ、2025 年に南部でウクライナ軍が前進するための条件を整えることができるだろう。 (David Axe、Forbes = 2-15-24)

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