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ウクライナ軍の「期待の星」 F-16 で何が変わる? 現有の MiG-29・Su-27 と徹底比較

ウクライナが念願の F-16 戦闘機をついに手にしつつある。 現在は米ロッキード・マーティンが手がける F-16 の供与を、ウクライナ空軍はなぜ強く求めたのか。 それを理解するにはまず、欧州諸国の余剰分から提供されるこの戦闘機が、ウクライナ空軍で補強、さらには代替することになる航空機をみておく必要がある。 旧ソ連のミコヤン・グレーヴィチ設計局が開発した MiG-29 戦闘機と、同スホーイ設計局が開発した Su-27 戦闘機である。 ウクライナ空軍は双発の超音速機である両戦闘機のいくつかのモデルを運用しているが、いずれも電子機器の貧弱さという大きな弱点を抱えている。

MiG-29 : ロシアがウクライナに全面侵攻した 2022 年 2 月末時点で、ウクライナ空軍は MiG-29 を 50 機ほど保有していた。 その後の戦闘でうち 22 機を失ったが、西側の支援国から代わりの MiG-29 を 27 機受け取っている。 ウクライナ空軍で就役中の MiG-29 の型式には次のようなものがある。

  • MiG-29S : 1980 年代に開発された MiG-29A の改良型。 機動性を高め、機体構造を強化したほか、最大離陸重量も 22tに増えている。
  • MiG-29G : 旧東ドイツが保有していた MiG-29 の統一ドイツによる近代化改修型。 北大西洋条約機構 (NATO) の規格に合わせ、新しい航法装置や通信機器を搭載した。 ドイツは 2003 年にポーランドに売却し、ポーランドが昨年春、ウクライナにうち 14 機を譲渡した。
  • MiG-29AS : スロバキアによる NATO 規格改修型。 トランスポンダーやコックピットを刷新し、航法装置や通信機器も強化した。 ポーランドによる譲渡と同じころ、スロバキアがウクライナに 13 機を引き渡した。
  • MiG-29MU1、MiG-29MU2 : MiG-29Sのウクライナによる改修型。 数は少ない。 NATO 規格の新たな無線機、GPS (全地球測位システム)航法装置を搭載したほか、レーダーの性能もやや向上し、戦闘機サイズの敵機の探知距離は以前の約 70km から約 100km に伸びた。

さまざまな改良が施されているウクライナ空軍の MiG-29 だ が、共通する短所はレーダーだ。 各モデルに搭載されている N019 系レーダーは探知距離が短いうえ、敵のジャミング(電波妨害)を受けやすいことで評判が悪い。 ウクライナ空軍は外国の協力で、無誘導弾を GPS などで誘導可能にする装置 JDAM (統合直接攻撃弾)を装着した滑空爆弾や、AGM-88 対レーダーミサイルなど、西側製のスマート弾を発射できるように MiG-29 を改修している。 とはいえ、その統合は粗雑で、パイロットはこれらのスマート弾を最適なモードでは使用できていないのが実情だ。

Su-27 : ロシアの全面侵攻を受ける前の時点で、ウクライナ空軍は すでに Su-27 を 20 - 30 機余りしか保有していなかった。 その後の戦闘で、重量 36t のこの戦闘機をさらに少なくとも 13 機失った。 一方で、ウクライナの整備士たちは退役していた Su-27 を修理し、数十機を復帰させた可能性がある。 ウクライナ空軍が保有する Su-27 の型式には次のようなものがある。

  • Su-27S : AL-31F エンジンを積み、1980 年代半ばに生産された初期型。 ロシアの全面侵攻を受ける前、ウクライナでは約 40 機が現役または保管されていた。
  • Su-27P : 対地兵器の非搭載型。 ロシアによる全面侵攻前、ウクライナでは 12 機前後が現役か保管されていた。
  • Su-27UB : パイロット訓練用の複座型。 ウクライナで現在使われているものは数機しかない。
  • Su-27PU : Su-27P の複座・戦闘能力付加型。 Su-27UB と同じくらい数は少ない。
  • Su-27S1M、Su-27P1M、Su-27UBM1、Su-27PU1M : 寿命を延ばすための構造を改修したウクライナ独自型。やはり数は少ない。

MiG-29 と同様、Su-27 もレーダーに制約がある。 Su-27 の N001 系や N010 系レーダーの探知距離は 80 - 100km 程度にとどまり、ジャミングにも弱い。 ウクライナが西側諸国に F-16 の供与を強く求めたのも、MiG-29 や Su-27 のレーダーの性能不足が一因だ。 ウクライナは昨年 8 月、デンマーク、オランダ、ノルウェーから F-16 供与の確約を取り付けた。 3 カ国は、1980 年代に導入した古い F-16 をロッキード・マーティン製の新しいステルス戦闘機に置き換えている。

F-16 : ウクライナは F-16 をオランダから 42 機、デンマークから 19 機取得することになっており、ノルウェーからもの取得数も十数機になる可能性がある。 ウクライナ空軍のパイロットは米国やルーマニアで訓練を受けており、最初分の F-16 は近々ウクライナに到着する見込みだ。 3 カ国から供与される F-16 はすべて同じモデルとなっている。

  • F-16AM/BM Mid-Life Update : 1980年代製の機体を1990年代から2000年初めにかけて大幅に改修した就役中近代化(MLU)型。

F-16 は、敵の防空の制圧や破壊をはじめ、最も危険な任務でウクライナ空軍の遂行能力を高めるはずだ。 AN/ASQ-213 センサーポッドを備え、AGM-88 で武装した単発の超音速機である F-16 は、約 130km 離れた敵の防空施設の位置を特定し、攻撃目標にできる。 敵の対空兵器を攻撃するのが危険すぎる場合、ADM-160 デコイ(おとり)ミサイルを発射して惑わせることも可能だ。

航空優勢の確保任務では、AIM-120 空対空ミサイルが F-16 の最高の武器になる。AIM-120 の最大射程は 105km(編集注 : AIM-120C 型の数字)とされ、ウクライナ空軍が現在用いている R-27ER 空対空ミサイルの最大射程よりもやや長い。 AIM-120 に関してさらに重要なのは、ミサイル自体に小さなレーダーを搭載するいわゆる「撃ち放し(ファイア・アンド・フォーゲット)」ミサイルだという点だ。 戦闘機はAIM-120 を射撃後、即離脱できる。 一方の R-27ER はセミアクティブレーダー誘導ミサイルで、戦闘機はこのミサイルが飛翔している間、みずからのレーダーで目標を照射し続けなくてはならない。そのため、敵機からの応射にさらされやすい。

F-16 の AN/APG-66(V)2 レーダーは探知距離が 110km ほどあり、MiG-29 の N019 や Su-27 の N001、N010を上回る。 F-16 はAN/ALQ-213 電子戦システムも装備し、センサー、ジャミング装置、チャフ(レーダー電波を散乱させる金属片など)やフレア(赤外線誘導ミサイルを追尾させるおとりの熱源)などの撹乱物を組み合わせて、ミサイルから自機を守る。 MiG-29 と Su-27 にはこうした電子戦システムもない。

F-16 はこのほか、リンク 16 戦術データリンクにも対応している。 これは F-16 と、パトリオット地対空ミサイルシステムや NATO の早期警戒管制機などほかのユニットをつなぐ、安全性の高い無線データ接続網だ。 F-16 のパイロットは、リンク 16 で結ばれているほかのユニットに見えているものを見ることができる。 F-16 がウクライナの空戦能力を高めることは間違いない。 どれくらい高めるかは、ウクライナが最終的にそれを何機取得できるかで変わってくる。 デンマーク、オランダ、ノルウェーには、これまでに約束した分以上、譲渡できる F-16 はもうない。

ほかの NATO 諸国、なかでも米国は古い F-16 を多数保有している。 だが、米国は先月、ウクライナ向け予算がほぼ底をつき、ウクライナへの兵器供与を停止した。 米議会のロシア寄りの共和党議員らは、新たなウクライナ向け予算の承認を拒んでいる。 (David Axe、Forbes = 1-29-24)


前線でロシア軍の攻勢続く ウクライナ軍報道官らが報告

キーウ : ウクライナ軍報道官らによると、同国各地の前線で最近、ロシア軍が攻勢をさらに強めている。 特に、ウクライナ東部ハルキウ州とルハンスク州の境界沿いで激しい戦闘が続いている。 ウクライナ軍は先日、ハルキウ州クロフマルネから防衛部隊を撤収させ、より有利な高台に移したと発表した。

ウクライナの陸軍参謀本部はフェイスブックへの投稿を通し、クロフマルネの北西と南方の集落でロシア軍から 13 回の攻撃を受け、対戦したと報告した。 この地区の戦闘について、陸上部隊司令部の報道官は国内テレビに「敵軍は大量の砲撃に集中して前進を図っている」と述べた。 集落は南北に走るオスキル川の近くに位置する。 6 カ月間に及ぶロシア軍の占領を経て、2022 年夏にウクライナ軍が解放していた。

また、ちょうど 1 年前にロシア軍による冬季攻撃の舞台となった東部ドネツク州バフムート周辺でも、ウクライナ軍部隊が攻撃にさらされている。 同市の南西には、ウクライナ軍が反攻作戦で昨年 9 月に奪還した二つの集落がある。 その周辺の状況について、現地の軍曹は「敵軍が部隊を集結させている。連日攻撃を仕掛けてくる」と述べた。 ロシア軍が持つドローン(無人機)には暗視装置搭載型も含まれ、ウクライナ側よりはるかに数が多いという。

ウクライナ軍は昨夏、南部ザポリージャ州でも反攻作戦を実行し、ロシアとクリミア半島を結ぶ陸路の寸断を目指してオリキウから南へ進軍したものの、わずか 20 キロで断念していた。 軍報道官によると、ロシア軍は同州でも現在、領土の奪還を図っている。 同報道官は、ロシア軍が 2 日連続で 1 日に 50 件の戦闘を仕掛けるなど、全方角で攻勢を強めていると報告した。 (CNN = 1-28-24)


石油・ガスをドローンで「起爆」 ウクライナ、ロシア国内施設を次々攻撃

ロシア南部クラスノダール地方トゥアプセにあるロシア石油大手ロスネフチの製油所で 1 月 24 日深夜から 25 日未明にかけ、火災が発生した。 携帯電話で撮影された映像には夜空高くまで上がる炎が映っている。 通信アプリ「テレグラム」のニュースチャンネルによると、火災が発生する直前にドローンが製油所を直撃したのが目撃されたという。 ロシアではこのほかにも、石油・ガス施設に対する組織的な攻撃とみられるものが相次いでいる。

起爆装置の投入

1 月 19 日にはロシア西部ブリャンスク州クリンツィにあるロスネフチの大型石油貯蔵施設の貯蔵タンク 4 個が炎上した。 クリンツィはウクライナとの国境に近い町だ。 「国防省が電波を妨害して飛行機型のドローン(無人機)を撃墜した。 飛行中の標的が破壊されると、積まれていた弾薬がクリンツィの石油貯蔵施設の敷地に落下した」と同州のアレクサンドル・ボゴマズ知事はテレグラムに投稿した。

その 2 日後の 21 日には、同じくロシア西部サンクトペテルブルクの西に位置するウスチルガのガス基地で爆発を伴う大規模な火災が発生した。 施設運営者は、火災が「外部要因」で引き起こされたと説明している。 親ロシア派のテレグラムチャンネルによると、ロシア軍は火災の発生前、約 3kg の爆薬を積んだドローンを撃墜。 ドローンは、翼幅約 6m のピストンエンジンの航空機だったという。

これらの攻撃は、元米海兵隊員で米国防大学国家戦略研究所の上級研究員である「TX」ことトーマス・ハメスが 2016 年のドローン戦争に関する論文で「起爆装置の投入」と記した原理に基づいている。 小型で安価のドローンは、従来の攻撃機のように多くの爆薬を搭載していないが、うまく照準を合わせれば、弾薬や燃料の備蓄を攻撃することができる。 「このような標的に対しては、100g 未満の爆薬を直接投下するだけでも、標的を破壊する二次爆発を誘発することができる」とハメスは書いた。

イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、小型のドローンがその大きさ以上の効果をもたらし得ることを示してきた。 2019 年にはサウジアラビア東部アブカイクにある国営石油会社サウジアラムコの石油施設を炎上させ、2021 年には同国のラスタヌラ、ラービグ、ヤンブー、ジザンにあるサウジアラムコの施設を同時攻撃。 2022 年には自動車レースのフォーミュラワン (F1) の開催を控えていたサウジアラビア西部ジッダにあるサウジアラムコの施設を攻撃し、世界中のメディアが見守る中、大きな火災を起こした。

ウクライナのドローン生産事情

ロシアがイラン製ドローンのシャヘドでウクライナを爆撃し始めたとき、人々はウクライナ国産のドローンでの反撃について口にするようになった。 単純な作りのシャヘドの最も高度な要素は中国や欧州、米国で生産された市販の電子部品で、価格は 2 万 - 4 万ドル(約 300 万 - 600 万円)程度だ。 ウクライナのドローン業界は大きく、数カ月のうちに長距離攻撃ドローンを設計・製造・テストし、生産・運用を始めた。

ウクライナは現在、多くの長距離攻撃ドローンを保有する。 軍事アナリストの HI サットンは、主要なタイプ(通常 45kg の弾頭を約 1000km 運ぶ)を分かりやすくまとめたガイドを作成した。 ウクライナのオレクサンドル・カミシン戦略産業相は昨年 11 月、同国はシャヘド型のドローンを月に「数十機」製造していると発言。 翌月には、さらに大規模な生産計画を発表した。 「われわれはすでに中距離(数百 km)を飛行できる無人戦闘航空機を 1 万機以上生産する能力があり、来年には航続 1,000km 以上のドローンを 1,000 機超生産できる」とカミシンはウクライナのメディアに語った。

特に、ウクライナ企業ターミナル・オートノミーの新型 AQ-400 Scythe のようなドローンは、容易に大量生産できるように設計されている。 Scythe の機体は、普段は家具を手がけている企業によるプレカット加工の合板で作られており、熟練者でなくとも基本的な工具があれば組み立てることができる。 ターミナル・オートノミーは今年第 1 四半期に月 500 機の Scythe 生産を目指している。 これだけの量のドローンがあれば、戦略的目標を達成するのに十分かもしれない。 ロシアは昨年の冬、ミサイルと並行してシャヘドを使ってウクライナのエネルギーインフラを標的にし、ウクライナを寒さで参らせようと変圧器や変電所を破壊した。 この冬もこのアプローチを繰り返しているが、効果は限定的だ。

だが、ロシアの武器がいわば「氷」だとすれば、ウクライナのドローン戦争での武器は「火」であり、ロシアの重要な石油・ガス施設を燃やしている。 ((Tendar)) というハンドルネームの X (旧ツイッター)ユーザーは、ロシアには海港を終点とする主要な戦略的パイプラインが 5 本しかないと指摘する。 バルト海に 3 本、黒海に 2本だ。 他のパイプラインはウクライナや北大西洋条約機構 (NATO) の加盟国を経由しており、いずれも制裁対象となっている。 これまでに、5 つの海港のうち 2 つが攻撃を受けた。 ウスチルガの施設の操業は数週間停止する見込みで、その間にさらなる攻撃があるかもしれない。

石油とガスの輸出はロシア経済を支える重要な柱だ。 ロシア産を求める顧客は、ドローン攻撃を継続的に受けている港にタンカーを送りたがらないかもしれない。 紅海と同様、脅威はリスクのレベルよりも重要かもしれない。 一方、ロシアの人々は暖房の停止と停電の急増に苦慮している。 ロシア紙モスクワ・タイムズによると、43 の地域で緊急事態が発生しており、何十万もの人々が暖房や電気を使えない状態だという。 これはインフラの老朽化と維持費不足が原因だ。 今年、住宅と公益事業への支出が 43% 削減されるため、こうした状況は改善されることはないだろう。 石油やガスの供給停止はさらなる問題となる。

ロシアは戦争経済に移行したが、その脆弱さは増しているようだ。 巨額の軍事費が経済を支えているが、これがいつまで続くかは誰にもわからない。 膨大な数の石油・ガス施設はいま、ウクライナ軍が狙える範囲内にある。 これらの施設すべてを攻撃から守ることは、たとえ防空システムを前線から移動させたとしても不可能だろう。 いずれにせよ、ロシアが現在運用する防空システムは小型のドローンに対しては有効ではない。 ロシアのプーチン大統領に今できることは、石油・ガス施設が炎上するのを何もせず見守ること、そしてこのダメージが経済破綻やクーデター、大規模な暴動を引き起こさないことを祈ることくらいのようだ。 (Daivd Hambling、Forbes = 1-28-24)


ロシア主力戦車を「一瞬で灰燼に帰す」ウクライナ軍ドローン攻撃の瞬間 ... T-72B3 が跡形もなくバラバラに

ウクライナの FPV ドローンによる攻撃で、ロシア主力戦車 T-72B3 が大爆発。 「一瞬で灰燼に帰した」映像を公開。

ウクライナ南部と東部の約 965 キロにわたる戦線での戦闘で、損失が拡大しているロシア。 1 月 23 日には、東部ドネツク地方での激しい戦闘で、ロシア軍の主力戦車 T-72B3 が破壊される様子を捉えた動画が、ウクライナの第 10 軍団によって撮影された。 ドローン攻撃によってロシア軍戦車が大爆発を起こし、一瞬で粉々に砕け散る瞬間の動画は、SNS を通じて拡散されている。

ウクライナ第 10 軍団が「朝の挨拶」と称したこの攻撃は、FPV (一人称視点)ドローンを使って行われた。 オープンソース・インテリジェンス(公開情報を分析して諜報活動を行うこと)の専門サイト「オシント・テニクカル」は X (旧Twitter)で、この攻撃により「壊滅的な弾薬の爆発」を引き起こしたと説明した。 ウクライナ国防省も X でこの映像を公開し、ロシアの戦車が「FPV ドローンの攻撃を受け、一瞬にして灰じんに帰した」と述べた。

オシント・テニクカルによれば、この映像はドネツク州で撮影されたものだ。 同州は 2014 年以降、ロシアとウクライナとの紛争の中心地となっており、2022 年 2 月にロシアによる本格的な侵攻が始まってからは激しい戦闘が繰り広げられている。 第 10 軍団が現在活動している正確な位置は明らかにされていない。 しかし、ウクライナ中部ポルタバに本部を置くこの部隊は、同国が昨夏に実施し、失敗に終わった南東部での反転攻勢に参加し、ザポリージャ州とドネツク州で戦ったことが知られている。

ウクライナ軍は春に向けて挽回の準備を進める

ウクライナ軍は、昨夏の作戦の失敗を受けて、「積極的防衛」に転じている。 弾薬が不足し、欧米諸国からの支援は停滞し、ロシア軍が疲弊している兆候もない中、冬から春先にかけて挽回する準備をしている。 対するロシア軍は、冬に入ってからも新たな領土を目指して前進している。 ドネツク州の要衝アウディーイウカ(旧アフディフカ)を孤立させ、占領しようとしている一方、破壊されたバフムト周辺では漸進的な前進を続けている。 ロシア軍の死傷者は多数に上っているとみられる。 英国防省は先月、高い消耗率が続いていることは、「2022 年 9 月の予備役の『部分動員』以来、ロシア軍が劣化し、質より量の大衆軍に移行していることを示唆している」と指摘した。

ロシア軍の死傷者はすでに 37 万人超か

ウクライナは 1 月 24 日、新たにロシア軍兵士 840 人を「排除」したと X で発表。 2022 年 2 月以降のロシア軍の死傷者は、37 万 8,660 人に達したとしている。 また、新たに破壊した戦車が 13 両(ロシアによる侵攻以来、計 6,227 両)、装甲戦闘車両が 31 両(同 1 万 1,579 両)、大砲が 61 門(同 9,008 門)だと明らかにした。 ロシア政治アナリストでフレッチャー法外交大学院の客員研究員パベル・ルジンは、ロシア軍は戦場で粘り強さを見せているが、「2022 年 2 月以降、致命的な戦略的惨事に陥っている」と本誌に語り、その結果、「何十年にもわたって弱体化するだろう」と指摘している。 (デービッド・ブレナン、NewsWeek = 1-27-24)


ロシアとの戦場への出撃はいつ? ウクライナが、ジェットエンジン搭載「新型」カミカゼドローンを公開

ドローンが主役となっているウクライナでの戦争。 ジェットエンジン搭載型の試験飛行の様子と見られる映像が公開された。

ロシアとウクライナが互いにドローン開発でしのぎを削るなか、ウクライナがジェットエンジンを搭載した自爆型ドローンの試験を行っている様子だという動画が浮上した。 動画には、前方に短い翼が付いた独特の形状をした無人の航空機が、自在に空を飛び回っている様子が映っており、かなりのスピードが出ているように見える。 ウクライナのメディアが投稿した短い動画は、ジェットエンジンを搭載したウクライナの「新型」自爆型ドローンの「試験が順調に進んでいる」らしいことを示している。

本誌はこの動画の信ぴょう性について独自に確認することはできず、ウクライナ当局にコメントを求めたが現在までに返答はない。 イギリス在住のドローンの専門家、スティーブ・ライトは本誌に対して、「このドローンは、昨年モスクワを攻撃したウクライナの国産ドローン『ビーバー』とよく似た先尾翼(前方に小さな翼がある)機で打ち上げシステムも同じだが、大きな進化を遂げている」と述べた。 長距離自爆型ドローンの「ビーバー」は、2023 年にモスクワに対する攻撃で使われたドローンだ。 「ビーバー」はガソリンエンジンを搭載した先尾翼機とされている。

ライトは、ガソリンエンジンだとドローンの最高速度は時速 210 キロ程度が限界だと指摘。 これを安価なジェットエンジンに替えることで最高時速 320 キロ程度を達成することが可能で、また「(ビーバーよりも)やや湾曲した翼からも、新型ドローンがそれぐらいの速度で飛行することを想定した設計であることが伺える」と主張した。 ウクライナのメディアは今月はじめ、ウクライナ人の軍事ブロガーの記事を引用し、ウクライナ軍が初めて、ロシア軍が多用している自爆型ドローン「シャヘド 131」、「シャヘド 136」のアップグレード版でジェットエンジンを搭載した「シャヘド 238」を迎撃したと報じた。

ウクライナ空軍はこれを確認していないが、ロシアは 2023 年末に、近いうちにジェットエンジン搭載型のシャヘドを使用するとほのめかしていた。 シャヘド 238 がウクライナの戦場に出現した事実は確認されていないものの、軍事・兵器専門家のデービッド・ハンブリングは 1 月 9 日に本誌に対して、「十分にあり得ることだ」と述べた。

ウクライナでの戦争はドローンが主役

開戦からまもなく 2 年を迎えるウクライナの戦争では、ドローンが大きな役割を果たしている。 ウクライナのドローンの第一人者であるミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル改革担当相は、2023 年 12 月に本誌に対して、「これは不眠不休の戦争だ」と語っていた。 そして戦争が始まってすぐに、ウクライナの「ビーバー」やロシア軍が使用しているイラン製の「シャヘド」など、さまざまな種類の自爆型ドローンが使われるようになった。

シャヘド(ロシア名はゲラン)は低い震動音が特徴的で、標的に到達すると搭載された弾頭が粉砕または爆発する。 ウクライナ軍にとって、見つければ比較的簡単に撃墜が可能だが、多くの場合は検知するのが最も難しい部分だ。 こうしたなか、ウクライナ軍の当局者らは 2023 年 11 月、ロシア軍がシャヘドの改良版をウクライナ領内に送り込むようになっていると述べた。 改良版は機体の色がより黒っぽく、カーボンファイバー製で、ウクライナの防空システムで検知するのがさらに難しくなっているという。 イランは 11 月に、ジェットエンジン搭載のドローン「シャヘド 238」を発表した。 (エリー・クック、NewsWeek = 1-26-24)


ロシア輸送機墜落で非難合戦 「テロ行為」「国際調査実施を」

ウクライナ国境に接するロシア西部ベルゴロド州で 24 日に起きた露軍大型輸送機の墜落を巡って、両国が互いを非難する展開となっている。 ウクライナ軍のミサイル攻撃で撃墜されたと主張する露側に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、国際調査の実施を訴えた。 露国防省によると、輸送機には捕虜交換のため移送中のウクライナ兵 65 人と乗組員ら計 74 人がおり、全員死亡したという。

ゼレンスキー氏は、捕虜全員の消息を調べていると述べ、「露側が捕虜の命や親族の気持ちをもてあそんでいるのは明白だ」と非難した。 攻撃の有無などには言及しなかった。 一方、ラブロフ露外相は 24 日、米ニューヨークの国連本部で記者会見し、ウクライナが意図的に輸送機を撃墜したと主張し、「野蛮なテロ行為」だと非難。 国連安全保障理事会の緊急会合を開くよう求めると述べた。 ウクライナメディア「キーウ・インディペンデント」によると、ウクライナ国防省情報総局は 24 日、同日にロシアとの捕虜交換の予定があったことを認めた上で「輸送機に誰が何人搭乗していたか、確かな情報はない」と説明。 情報総局はさらに、露側は同州周辺の空域で安全を確保する必要性について事前通知せず、当該輸送機の飛行は捕虜の命を危険にさらす意図的な行為だった可能性があるとも主張した。 (山衛守剛、ニューヨーク・八田浩輔、mainichi = 1-25-24)

◇ ◇ ◇

ロシア軍の大型輸送機が墜落 ウクライナ人捕虜ら 74 人搭乗か

ロシア国防省は 24 日、ウクライナ国境のロシア西部ベルゴロド州内で、ロシア軍の大型輸送機「イリューシン 76」が墜落したと明らかにした。 タス通信が伝えた。 ウクライナ人捕虜 65 人を交換のため運んでいたという。 6 人の乗組員なども合わせて、輸送機には合計 74 人が乗っていたとみられるが、安否は分かっていない。 地元当局が原因を調べている。

一方、ロイター通信によると、ロシア軍は 23 日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)と北東部ハリコフなどに大規模なミサイル攻撃を実行した。 ウクライナのゼレンスキー大統領はビデオ声明で、一連の攻撃によって 18 人が死亡、130 人以上が負傷し、家屋やインフラにも被害が出たと述べた。 高層の集合住宅で死亡した人が特に多いという。 (岡大介、山衛守剛、ベルリン・念佛明奈、mainichi = 1-24-24)


ウクライナ、東部アウジーイウカの防衛で危機的局面 重要陣地あわや喪失

ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカ方面の前線では過去 10 年、この都市のすぐ南にある旧ソ連空軍の古い掩蔽壕などからなる施設群が、ロシア軍に対するウクライナ側の防御の要となってきた。 「ゼニト」と呼ばれるこの陣地がもし陥落すれば、10 年にわたりしぶとく抵抗を続けてきたアウジーイウカの守備隊は、ついに撤退を強いられるおそれがある。 ロシア軍部隊は 22 日、コンクリートの迷路のようなこの防御拠点の遮断に、かつてなく近づいた。 今回は最終的に失敗したが、次は成功するかもしれない。 なぜなら、ゼニトを守るウクライナ軍部隊は弾薬が枯渇しつつあるからだ。

理由は周知の通りだ。 米国のジョー・バイデン大統領が今年、ウクライナ向けの兵器に費やそうとしている 610 億ドル(約 9 兆円)の予算の承認を、米議会下院のロシア寄りの共和党議員が何カ月も拒んでいるからだ。 米国の資金が充当されないため米国製の砲弾が不足しているウクライナ側の大砲は、鳴りをひそめつつある。 他方、イランと北朝鮮から新たな補給を得たロシア軍の大砲は、砲声をとどろかせ続けている。 ソ連空軍がゼニトを建設したのは、近くにあった航空基地を守る防空部隊を収容するためだった。 ソ連は核戦争も想定し、ゼニトはそれに耐えられるようにつくられた。 それほど強固な施設なのだ。

ウクライナ軍部隊がゼニトに陣取ったのは、2014 年にロシアがウクライナ東部に軍事侵攻した直後にさかのぼる。 以来、ウクライナの兵士らはここにとどまり、地下トンネルの中で寝泊まりしている。 ゼニトと、1.5km ほど北のアウジーイウカ市は T0505 道路で結ばれている。 丘の上にあるゼニトは「(アウジーイウカ)市の防衛と市への道路を確保するために決定的に重要だ。」 OSINT (オープンソース・インテリジェンス)アナリストのアンドルー・パーペチュアはそう指摘している。 「ゼニトなしでどうやって防衛できるのか、わたしにはわからない。」

ロシア側はゼニトの重要性を十分理解している。 22 日の激しい戦闘ではゼニト自体は制圧できなかったものの、孤立化させる寸前までいった。 ロシア軍部隊はゼニトを東に迂回し、アウジーイウカの南郊で 800m ほど前進したとされる。 ロシア側の進撃によって、ゼニトへの唯一の補給線が断ち切られかねない事態になった。 今回は、市中心部に配置された第 110 独立機械化旅団を主力とするウクライナ側の守備隊が押し返し、伝えられるところではゼニトへの圧力を和らげたという。

とはいえ、ゼニトは依然として脆弱な状態にある。 アウジーイウカの北面では第 47 独立機械化旅団の M2 ブラッドレー歩兵戦闘車などがここ数カ月、ロシア軍の第 2、第 41 各親衛諸兵科連合軍の部隊による波状攻撃を次々に撃退してきたが、南面の防備はそれほど堅固ではない。 ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは「アウジーイウカの北側は AKHZ (アウジーイウカ・コーク・ケミカル・プラント)の工場の堅牢な産業構造物によって守られているが、南側は主に、砲撃に弱い 1 階または 2 階建ての家屋で構成されている」と解説している。

「これはロシア側にとって、既知のやり方で接近するのにふさわしい条件が整っているということになる。 あるエリアを制圧できない場合、そこを砲撃して瓦礫にする。 そのあとで軽歩兵を送り込んで占拠する、というやり方だ」とフロンテリジェンス・インサイトは続けている。 こうしたやり方で、ロシア軍は次はゼニトの遮断に成功するかもしれない。 もしかすると、すぐにでも。

ゼニトを落とされれば、アウジーイウカの南翼全体が崩れかねない。 もしそうなれば、ウクライナ軍の指揮官は、すでに廃墟化しているこの市の防衛戦をこれ以上続けるのは危険すぎると判断するかもしれない。 市の西方に用意した陣地への撤退を部隊に命じ、3 月にいかさまの大統領選を控えるロシアの政権に、プロパガンダの面で大きな勝利を与えてしまうかもしれない。 ロシア軍がアウジーイウカの南側で火力第一の戦術をとれるのは、砲弾の数でウクライナ側の 10 倍という圧倒的優位に立っているからだ。

「このギャップは、欧州からの供給が不十分なこと、そして内政上の問題で米国からの支援にも支障が出ていることから生じている。 ロシアはそれを突いている。」とフロンテリジェンス・インサイトは述べている。 ロシア側のこの優位性は必然的なものではなかった。 それは事実上、米国の共和党が政治的な選択によってもたらしたものだ。 下院共和党がバイデンの予算案を昨年 10 月の提起時点で通過させていれば、ウクライナ軍が今ごろ弾薬不足に落っていることはなかっただろう。 そして、ゼニトが陥落の危機に瀕することもなかったかもしれない。 (David Axe、Forbes = 1-24-24)


ウクライナ軍のレオパルト 2 戦車が「絶滅」の危機 部品不足で修理進まず

ウクライナ軍は西側諸国からドイツ製レオパルト 2 戦車の最初の供与分として 71 両を受け取った。 ロシアとウクライナの戦争で使われている兵器の損失を調べている団体 Oryx (オリックス)によると、その後 1 年にわたる激しい戦闘でうち少なくとも 12 両を撃破されて失った。 もっとも、ウクライナ軍が現在、戦闘可能なレオパルト 2 を用意するのに苦慮しているのは、撃破による損失が主な理由ではない。 ウクライナ軍のレオパルト 2 の損耗では、撃破、つまり二度と戦闘で使えないほど完全に破壊されたものよりも、損傷にとどまるものが多い。 ウクライナ軍は、これら損傷した戦車を修理して前線に復帰させるうえで問題を抱えているのだ。

レオパルト 2 は攻撃を受ければすぐ終わりになるような戦車ではない。 乗員 4 人、重量 70 トンのこの頑丈な戦車は、被弾しても修理を施せば前線に戻ることができる。 「被弾 → 修理 → 前線復帰 → 被弾 …」というサイクルで繰り返し使用できる戦車なのだ。 つまり、レオパルト 2 は再生可能なリソースだ。 ただ、整備士がこのリソースをどれだけ早く再生できるかは、もっぱら部品の入手しやすさにかかっている。 そして、ウクライナ軍のレオパルト 2 では部品の入手が難しい状態が続いているのだ。

ウクライナ軍は昨年夏に反転攻勢を始めた時点で、レオパルト 2A4 を 50 両、装甲を強化したスウェーデン版レオパルト 2A5 の Strv (ストリッツヴァグン) 122 を 10 両、追加装甲や、より砲身の長い 120mm 滑空砲を装備したレオパルト 2A6 を 18 両保有していた。 レオパルト 2A4 は南部方面の第 33 独立機械化旅団、Strv122 は東部方面の第 21 独立機械化旅団、レオパルト 2A6 は南部方面の第 47 独立機械化旅団にそれぞれ配備された。 第 47 旅団はのちに、北東部の激戦地アウジーイウカ方面への増援に送られている。

3 旅団は反攻を進めるなかで、ロシア軍の地雷やドローン(無人機)、砲撃、ミサイルによって戦車を失った。 レオパルト 2A4 は少なくとも 7 両、レオパルト 2A6 は 4 両、Strv122 は 1 両が撃破された。 差し引きするとウクライナ軍には 59 両のレオパルト 2 が残っていることになるが、実際はそのうち数十両が修理できずに使えない状態になっている可能性がある。 今月、ドイツのテレビ放送局 n-tv のクルーがウクライナ軍のレオパルト 2A6 の小隊を現地で取材した時、この小隊が運用する戦車 4 両のうち戦闘可能なものは 1 両だけだった。

ドイツの政党「同盟 90・緑の党」のゼバスティアン・シェーファー議員は状況を把握するため、レオパルト 2 の製造元のドイツ企業、ラインメタルとクラウス・マッファイヴェークマンがリトアニアに設けている整備工場を訪ねた。 ここではレオパルト 2A6 と Strv122 の修理が行われている。 レオパルト 2A4 のほうはポーランドで修理されている。 シェーファーはシュピーゲル誌に、供与されたレオパルト 2A6 のうち「ウクライナがまだ使用できているのはごくわずかだろう」と語っている。

レオパルト 2 の部品は、前線だけでなくこれらの修理拠点でも不足している。 ただ、これは 1991 年のソ連崩壊以降、ドイツの軍事力が衰退したのをつぶさに観察してきた人にとっては、驚くようなことではないだろう。 (David Axe、Forbes = 1-24-24)


ウクライナ軍、ロシア 4 州に無人機攻撃 … エネルギー関連施設や兵器工場に打撃与える狙いか

ロシアの侵略を受けるウクライナのニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」などによると、ウクライナ軍は 21 日、ロシア第 2 の都市サンクトペテルブルクがあるレニングラード州など 4 州に無人機攻撃を行った。 露軍の侵略を支えるエネルギー関連施設や兵器工場に打撃を与える狙いがあるとみられる。 レニングラード州ウストルガの港にある露ガス大手ノバテクの燃料生産施設では大規模な火災が発生したという。 施設は露軍の燃料供給拠点とみられている。 ロシア通信によると、けが人はいないが、操業を停止した。 同社は「外部要因」で火災が起きたとしている。

ウクライナのウニアン通信は、同施設への攻撃を受け、露軍が前線に配備していた防空システムを後方地域に移転し始めたと報じている。 ウクライナ側による露国内の施設に対する攻撃が続いているためとみられ、18 日にはサンクトペテルブルクの石油貯蔵施設に対する無人機攻撃があった。 このほか、ウクライナ軍は 21 日、防空システムや巡航ミサイルの生産施設があるモスクワ近郊トゥーラ、スモレンスク両州と西部オリョール州にも無人機攻撃を実施。 露国防省は 21 日夜、この 3 州で複数の無人機を撃墜し、ウクライナの攻撃を防いだと発表した。

一方、ロシアのタス通信によると、ロシアが一方的に併合したウクライナ東部ドネツクの親露派幹部は 21 日、ウクライナ軍による砲撃で民間人ら 28 人が死亡したと SNS で主張した。 (yomiuri = 1-23-24)


ウクライナ支援は「両党の優先事項」 米財務副長官 削減求める声も

訪日中のウォーリー・アデエモ米財務副長官が 22 日、東京都内で取材に応じ、ロシアによる侵攻が長期化しているウクライナへの支援について、米国の継続支援は「(民主、共和の)両党にまたがる優先事項だ」と述べ、11 月に予定される米大統領選の結果に左右されないとの見解を示した。 米国のウクライナ支援をめぐっては、大統領選への出馬意向を示しているトランプ前大統領が、大統領に返り咲いた場合は中止することを示唆。 一部議員などからも支援額を削るべきだとの声が上がっている。

アデエモ氏は「財務副長官の立場でもあり、今度の選挙にコメントするつもりはない」とした上で、「民主党も共和党もウクライナを支持している。 ウクライナ支持は超党派だ。」と述べ、今後も支援が継続するとの見方を示した。 また、欧米などがロシアに科している経済制裁に関し、ロシアが中国など第三国を経由して制裁を「迂回」しているとの懸念があることについては、バイデン米大統領が昨年 12 月に署名した、ロシアの軍需産業と取引のある世界の金融機関に制裁を科すとした大統領令を挙げ、主要 7 カ国 (G7) を中心に対策を強化する必要があるとの認識を示した。

米国などの経済制裁で凍結したロシア関連の資産については、ウクライナのゼレンスキー大統領が、没収した上でウクライナへの損害補償に充てるべきだとの考えを示しているが、資産の没収・転用は違法との声も上がる。 アデエモ氏は凍結資産についての具体的な言及は避けつつ、「ロシアがウクライナの損害を賠償する必要があるとの考えを持っている」と述べた。 欧州の当局者らと打ち合わせを進めており、日本政府関係者とも議論したいとしている。 一方、昨年 12 月に日本政府が武器輸出を制限する「防衛装備移転三原則」の運用指針を見直し、地対空ミサイル「パトリオット」の米国への輸出を決めたことについては、「感謝している」と述べた。 (河野光汰、asahi = 1-22-24)


黒海艦隊の哨戒艇撃沈が新たに判明 ウクライナ海軍、年末に無人艇で攻撃

ウクライナ海軍が昨年 12 月下旬、ロシア黒海艦隊のステンカ級哨戒艇を撃沈していたことが明らかになった。 伝えられるところでは、ロシアの占領下にあるウクライナ南部クリミア半島セバストポリのフラフスカヤ(グラフスカヤ)湾で、爆薬を積んだ 1 艇または複数の水上ドローン(無人艇)が排水量 200 トン級の「タラントゥル」を攻撃し、破壊したとのことだ。 撃沈は襲撃から数週間たってウクライナのパルチザンによって確認され、衛星画像でも裏づけられた。 冷戦時代にさかのぼる古い哨戒艇であるタラントゥルは、ウクライナ軍が運用不能にした黒海艦隊艦艇の長いリストに新たに追加された。

ロシアがウクライナで拡大して 23 カ月になる戦争の激しい戦闘で、黒海艦隊はウクライナ軍の無人艇やドローン(無人機)、地上発射ロケット、空中発射ミサイルによって、巡洋艦 1 隻、大型揚陸艦 4 隻、潜水艦 1 隻、補給艦 1 隻、コルベット艦や哨戒艇、揚陸艇数隻などを失っている。 損失は、戦争拡大前に黒海艦隊が保有していた艦艇のおよそ 5 分の 1 に及ぶ。 しかも、沈没した大型艦は補充できない。 黒海への唯一の入り口であるボスポラス海峡はトルコが管理し、慣例として戦時中は外国の軍艦通過を認めないからだ。

いずれにせよ、黒海艦隊が補強しようとする場合は、ロシア海軍のほかの地域艦隊から艦艇を回してもらう必要があるだろう。 ロシアの艦艇建造産業はソ連崩壊後の 1990 年代に凋落し、今日にいたるまで回復していない。 世界の主要な海軍の大半は、保有する艦艇の総トン数という重要な指標に基づくと着実に拡大しているが、世界 3 位の規模をもつロシア海軍は縮小を免れるのがやっとの状態だ。

ロシア海軍が保有する艦艇の 2023 年末時点の総トン数は 215 万 2,000 トン(米海軍のおよそ 3 分の 1)で、前年比の増加は 6,300 トンにとどまった。 フリゲート艦やコルベット艦、掃海艇、潜水艦艇の新造によって 1 万 7,700 トン増やすはずだったが、ウクライナ側の攻撃によって黒海艦隊の艦艇を 1 万 1,400 トン失った結果だ。 タラントゥル分を含めれば、失ったトン数はさらに 200 トンほど膨らむ。

黒海艦隊にとってとりわけ屈辱的なのは、戦争拡大前の時点で大型艦がたった 1 隻しかなかったウクライナ海軍との海戦に負けていることだ。 ウクライナ海軍はこの大型艦(フリゲート艦「ヘチマン・サハイダチニー」)も、2022 年 2 月にロシアの全面侵攻が始まった直後に自沈させている。 こうしてウクライナ海軍は、空軍や地上軍(陸軍)の大きな支援を受けつつドローンやミサイルで戦う新しいタイプの海軍になった。

ドローンやミサイルは有効でもある。 ウクライナ側は昨年後半、黒海艦隊に対する攻撃を強化し、たいていは空中発射ミサイルによって揚陸艦 2 隻、潜水艦 1 隻、コルベット艦 1 隻、退役した掃海艇 1 隻を破壊した。 タラントゥルに対する無人艇攻撃は、3 カ月にわたる激しい対艦作戦のハイライトだった。 この作戦はロシア側の後退で終わった。 黒海艦隊はクリミアからだけでなく、ロシア南部のノボロシスクからも大半の艦艇を引き揚げた。

ウクライナ側は黒海艦隊の 2 割を破壊し、残りをさらに東へと追いやることで、黒海西部の支配権を取り戻し、そこを南北に通るきわめて重要な穀物輸送回廊を確保した。 とはいえ、それで終わらせるつもりはない。 ウクライナ海軍のオレクシー・ネイジュパパ司令官(海軍中将)は執務室の壁に、黒海艦隊の全艦艇の一覧を掲示している。 ウクライナ軍が艦艇を沈めるたびに、ネイジュパパはその艦艇の絵柄を赤く塗りつぶす。 「いずれ、ここにあるすべてが赤く染まることでしょう」と地元メディアのウクラインスカ・プラウダに最近語っている。 (David Axe、Forbes = 1-22-24)

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