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ウクライナが見つけた勝ち方「電子戦でドローン優勢確保」 東部激戦地でも奏功 ウクライナ東部ドンバス地方のウクライナ軍の重要な守備拠点、アウジーイウカに対するロシア軍の猛攻が失速しつつあるのは、理由のないことではない。 ウクライナ軍はこの方面でも、新たに編み出したドローン(無人機)および対ドローン戦法を採用した兆候がある。 ウクライナ側のドローンを飛べなくするためにロシア側が用いている電波妨害(ジャミング)装置を破壊するとともに、ロシア側のドローンを飛べなくするためにウクライナ側の電波妨害装置を設置するという方策だ。 「ウクライナ側はこの戦域でも電子戦で優位に立ちつつあるようだ。」 軍事アナリストのドナルド・ヒルは、現代戦に詳しい作家のトム・クーパーのニュースレターにそう書いている。 「ウクライナ側のドローン攻撃の回数は増えている。 それも大幅に。 一方、ロシア側のドローン攻撃の回数は大幅に減っている。」 冬が深まり、ロシア軍がウクライナの 1000km 近くにおよぶ前線のいくつかの戦域で恒例の冬季攻勢に乗り出すなか、自由なウクライナを擁護する人たちに希望を抱かせる動きだ。 ロシア軍による冬季攻勢の主目標になっているのがアウジーイウカである。 すでに廃墟と化しているこの町を、ロシア軍はまず車両の攻撃で攻略しようとして頓挫した。 次に徒歩兵の攻撃に切り替えたが、こちらもうまくいかなかった。 これらの過程で、ロシア軍は 1 万 7,000 人もの死傷者を出した。 ロシア軍は次に空からの攻撃に重点を移し、爆薬を詰め込んだ FPV (1 人称視点)ドローン、一部は夜間飛行に対応したものを送り込むようになっている。 ウクライナ側の補給線をつぶし、守備隊を孤立化させて撤退に追い込む狙いだろう。 ウクライナ側はこれらロシア側のドローンを飛べないようにして攻撃を未然に防ぎつつ、ロシア側がウクライナ側のドローンを飛べないようにするのも阻んでいる。 これは、ウクライナ軍の補給線が引き続き確保される可能性がある一方、ロシア軍の補給線は支障をきたしかねないということだ。 「ウクライナがこの優位をどのくらいの間保てるかはわからないが、現在はそれによってウクライナ人の命が救われている」とヒルは記している。 ロシアがウクライナで拡大して 22 カ月になる戦争で、爆薬を積んだ小型ドローンは最も危険な兵器の 1 つになっている。 そのため、そうした自爆ドローンや、こちらも双方が使用している偵察ドローンに対する電子防御が不可欠になっている。 電波妨害で優位に立つ側は、その戦場の上空を支配可能になり、ウクライナ軍はこうした優位性を広げてきている。 アウジーイウカの近辺でウクライナ軍部隊がロシア側の電波妨害装置を攻撃する映像や、アウジーイウカの上空からロシア側のドローンがふらふらと落下する映像も最近投稿されている。 ウクライナ軍が電波妨害で優勢になりつつあるとみられるのは、けっして偶然ではない。 ウクライナは最近、従来ロシア軍が得意としてきた電子戦を優先させることを決めた。 ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官(大将)は先月、エコノミスト誌のインタビューで、ウクライナ軍が最も緊急に必要としているものとして、指揮、対地雷、対砲兵、防空の各システムと並んで電子戦システムを挙げている。 ウクライナのミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル移行相も「あらゆる装備を電子戦によって保護していかなくはならない」と 10 月に表明している。 わが軍の兵士がいるすべての塹壕、すべての地点を、敵のドローンの飛行に使われている周波数帯を解析する電子戦によって保護していく必要がある。 これは非常に大きな組織的な取り組みであり、現代技術戦の新たなドクトリンでもある。」 作戦に際してまず電波妨害を行うというウクライナ軍のやり方が奏功しているらしいことが初めてわかったのは、この夏の終わりごろだった。 ウクライナの海兵隊によるドニプロ川左岸(東岸)への渡河作戦に向けて、ウクライナ軍部隊はロシア側の支配下にある左岸で電波妨害による準備を整えた。 ウクライナ軍の電子戦部隊と砲兵部隊、ドローン運用部隊は、ロシア軍の電波妨害装置を破壊し、ロシア側のドローンを運用不能にした。 その後、海兵部隊が小型ボートで渡河し、左岸沿いの集落クリンキを攻撃することに成功した。 数カ月後の現在も、ウクライナ側はクリンキ上空を支配し、海兵部隊はそのおかげで、この集落に築いた細い橋頭堡を保持できている。 クリンキとアウジーイウカでのウクライナの成果には、重大な含意がある。 それは、ウクライナ軍が新たな勝ち方を見いだしたということだ。 ウクライナ軍が今後、この勝ち方を続け、ほかの場所にも広げていけるかどうかは、外国の援助によるところが大きいだろう。 ウクライナ軍が使用している電波妨害装置の多くは米国から供与されており、直近では 9 月に提供された 6 億ドル(約 850 億円)の支援パッケージに含まれていた。 だが、米国からの支援はいまや風前の灯火だ。 ジョー・バイデン米大統領は 610 億ドル(約 8 兆 6,000 億円)の新たな対ウクライナ支援を提案しているが、米議会のロシア寄りの共和党員らは難民が米国で保護を申請する権利の実質的な廃止を条件にし、成立のめどは立っていない。 (David Axe、Forbes = 12-16-23) ウクライナ空軍、ドローン 14 機撃墜 ウクライナ空軍は、15 日未明までにロシアのドローン(無人航空機) 14 機を撃墜したと、SNS 「テレグラム」に投稿した。 ウクライナメディア「キーウ・インディペンデント」が同日、報じた。 ドローンはロシア南部クラスノダール地方から発射されたという。 14 機は南部ミコライウ州、同ヘルソン州、中部ポルタワ州などで迎撃された。 13 日から 14 日にかけては、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島などから飛来したドローン「シャヘド」 42 機中、41 機を撃墜していた。 ウクライナ当局は、冬の間、ロシアがウクライナのエネルギーインフラを破壊するために、空からの攻撃が激化する恐れがあると警告している。 (asahi = 12-15-23) ロシア軍がウクライナ首都にミサイル、防空システムで撃墜 … 厳冬期前にインフラ攻撃激化 ウクライナ侵略を続けるロシア軍は 13 日未明、ウクライナの首都キーウへのミサイル攻撃を行った。 防空システムで 10 発すべてが撃墜されたが、キーウ市のビタリ・クリチコ市長によると、落下した破片があたるなどして子どもを含む市民 53 人が負傷した。 露軍は 7 日からキーウへのミサイル攻撃を繰り返しており、暖房に使うエネルギーの需要が増える厳冬期に向け、重要インフラ(社会基盤)への攻撃を激化させているとみられる。 クリチコ氏は SNS で被害について、「20 人が病院に搬送され、子ども 6 人を含む 33 人は現場で治療を受けた」と説明した。 ロイター通信によると、被害があったのはキーウの 4 地区で、攻撃に使われたのは短距離ミサイルの「イスカンデル M」だった。 ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は 13 日の攻撃を受け、SNS で露軍が重要インフラを標的にしているとの認識を示した。 (yomiuri = 12-14-23) 橋頭堡のウクライナ海兵、ロケット砲で T-62 戦車撃破 「敗戦論」吹き飛ばす奮戦 ウクライナの海兵隊部隊が南部ヘルソン州のドニプロ側左岸(東岸)の集落、クリンキに築いた橋頭堡に対して、ロシアの陸軍や空挺軍の部隊はあらん限りの車両や兵士を投入している。 だがウクライナ側はこれまで、地雷やドローン(無人機)、砲撃によってロシア側の突撃をことごとく封じ込めてきた。 ウクライナ側が最近行った攻撃は、とくに目覚ましいものだったようだ。 運が良かったのか、はたまた腕が良かったのか、BM-21 グラート自走多連装ロケット砲の乗員が、掩体壕に入ったロシア側の T-62 戦車にロケット弾を直撃させ、41t・4 人乗りのこの戦車を粉砕したとのことだ。 クリンキをめぐる 2 カ月の戦いは、ロシアがウクライナで拡大して 22 カ月目になる戦争で、ウクライナがにわかに「敗北」しつつあるという、ここへきて主流メディアが流し始めた話に異議を突きつけるものだ。 たしかに、ウクライナ軍は今年、主に南部で行った反転攻勢で、複数の軸において 15km かそこらしか前進できなかった。 ウクライナ軍指導部が当初期待していた 60 - 80km の前進には遠くおよばなかった。 ロシア側が設けた地雷原は想定よりもはるかに稠密だった。 地雷原に阻まれ、砲撃やドローン攻撃にさらされたウクライナ軍部隊の前進は、遅々として進まなかった。 ウクライナ軍の指揮官たちは結局、車両での突撃ではなく、下車した歩兵による攻撃を中心とした戦術に切り替えざるを得なくなった。 また、ロシア軍が東部ドネツク州のウクライナ軍の防御拠点であるアウジーイウカ方面で、1.5km かそこらだとはいえ、じわじわと前進してきたのも確かだ。 とはいえ、ロシア軍によるアウジーイウカ攻撃も行き詰まっている。 それは、ウクライナ軍の反攻が行き詰まったのと同じ理由からだ。 地雷や大砲、ドローンは、攻撃側で使われた場合以上に、防御側で使われた場合のほうがより効果的なのだ。 ロシアの指揮官たちは、地上攻撃よりも損害を抑えられる方策として、空からの攻撃でアウジーイウカ守備隊の補給線を遮断しようとし始めている。 だが、クリンキの戦況は流動的だ。 ウクライナ側はさらに多くの海兵を渡河させており、ロシアの海軍歩兵から複数の島を奪還している。 ウクライナ軍の司令部で、クリンキ軸での大規模な攻勢を真剣に提案している者はいない。 当面、それは起こりそうにない。 それでも、クリンキの橋頭堡はウクライナ軍にとって、今後どこかの時点で、ヘルソン州南部をさらに深く攻撃していく機会を用意しているのは確かだ。 つまり、クリンキは重要な場所なのだ。 ウクライナ軍はそれを知っている。 そして、ロシア軍も知っている。 だからこそ、ロシア軍はドニプロ軍集団の新たな司令官にロシア空挺軍のミハイル・テプリンスキー司令官(大将)を任命し、新編の第 104 親衛空挺師団をドニプロ側左岸に配置したのだ。 ドニプロ側左岸でのロシア軍部隊の増強について、独立調査グループのコンフリクト・インテリジェン・スチーム (CIT) は「どのような犠牲を払ってでも、ウクライナの橋頭堡を排除する狙いかもしれない」と推測している。 ただ、テプリンスキーの軍集団は上意下達がうまくいってないようだ。 第 104 師団のある兵士はソーシャルメディアで広く共有された手紙で「下っ端の者たちと上層部の間に相互理解がない」と訴えている。 ロシア軍部隊がクリンキに向けて手探り状態で進まざるを得ないなかで、ウクライナ側はそれをつぶし続けている。 高速の FPV (一人称視点)ドローンや、夜中に動き出す「バーバ・ヤハ」爆撃ドローンが、クリンキにつながる道路などでロシア兵をつけ回す。りゅう弾砲やロケットランチャーは、ヘルソン州のもっと南にいるロシア軍部隊を狙っている。 ウクライナ軍部隊は BM-21 で、ドニプロ川の 8km ほど南にいるロシア軍部隊を攻撃してきた。 今回撃破した T-62 はその戦果のひとつだ。 運用している米国製の高機動ロケット砲システム (HIMARS) はさらに射程が長く、川から 16km ほど南の目標に撃ち込んだことも確認されている。 クリンキでの戦闘はまだまだ続くだろう。 もちろん、ウクライナ軍が弾薬の調達に苦慮しているのは周知のとおりだ。 米議会ではロシア寄りの共和党員らがウクライナに対する 610 億ドル(約 8 兆 9,000 億円)規模の支援の提供を遅らせている。 欧州ではハンガリーの親ロシアのオルバン・ビクトル首相が、欧州連合 (EU) によるウクライナ支援に拒否権をちらつかせている。 ドニプロ川左岸のロシア軍部隊は今のところ、ウクライナの海兵隊部隊をクリンキから押し出せていない。 ただ、もし海兵らの弾薬が枯渇してしまえば、ロシア側は強く押し込む必要すらなくなるかもしれない。 (David Axe、Forbes = 12-4-23) アウジーイウカ攻防戦で新局面 露軍、夜間のドローン攻撃で補給線遮断に動く ロシア軍がこの 2 カ月、ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ軍の重要な防御拠点、アウジーイウカに対して続けてきた猛攻は、峠を越したようだ。 だが、それはロシア側がアウジーイウカの攻略を断念したということではない。 ロシア軍は、ウクライナの南部・東部各地での反撃にリソースを移しつつ、アウジーイウカを直接攻撃せずに包囲することを狙っているとみられる。 この戦略で鍵を握るのが、夜間飛行可能な新型の攻撃ドローン(無人機)だ。 こうしたドローンによってロシア側がアウジーイウカへの補給線の遮断に成功すれば、戦車や歩兵による攻撃に持ちこたえてきたウクライナ軍の守備隊は、退却に追い込まれるおそれがある。 ただし、ウクライナ側が、南部の部隊がしているように電波妨害(ジャミング)でドローンの飛行を不可能にすれば、アウジーイウカを引き続き保持できるかもしれない。 「(アウジーイウカの)ウクライナ軍部隊の全般的な状況は安定している。 ロシア軍の攻勢はピークに達したようだ。」と分析グループのフロンテリジェンス・インサイトは 12 日の戦況分析で述べている。 「ロシア軍部隊は積極的に攻撃する意欲を失っており、作戦装備の数も著しく減っている。」 「一方で、アウジーイウカのウクライナ軍部隊の兵站状況はさらに悪化している」とフロンテリジェンス・インサイトは続けている。 「ドローンの攻撃を避けるため夜間に補給が行われてきたが、現地からの報告によると、ロシア軍部隊はサーマル暗視カメラを備えた FPV (1 人称視点)ドローンを使い出したようだ。 このため夜間も補給が難しくなっている。」 FPV ドローンは航続距離の短い小型ドローンで、操縦士が無線通信で操縦する。 操縦は VR ヘッドセットを装着して行うことも多い。 500g 程度の爆薬を詰め込んだ重量1kg ほどの FPV ドローンは、人間が誘導する精密誘導弾のように機能する。 費用は 500 ドル(約 7 万 1,000 円)くらいだろうか。ロシアがウクライナで拡大して 22 カ月目に入っている戦争で、ウクライナ軍もロシア軍も、1000km 近くにおよぶ前線に大量のドローンを配備している。 ドローンはいたるところで飛んでいるが、必ずしもいつも飛んでいるわけではない。 大半のドローンは赤外線カメラを搭載していないため、操縦士が目標を捕捉しにくい夜間はあまり役に立たないのだ。 したがって、夜の闇はドローン攻撃からの隠れ蓑になる。 ウクライナ軍の補給部隊もそれに紛れて、弾薬やその他の物資、補充兵を幹線道路 00542 号線や、より細い未舗装路を通ってアウジーイウカに運び込んできた。 ロシア軍部隊は、ここの幹線道路から1.5km くらいしか離れていない場所に展開している。 ウクライナ軍が 2 カ月にわたるロシア軍の波状攻撃からアウジーイウカを死守できたのも、これらの重要な補給線が確保されてきたからだ。 10 月、ロシア軍の連隊や旅団はアウジーイウカを南北から側面攻撃するために、戦車をはじめとする戦闘車両を集結させた。 しかし、これらの車両がウクライナ軍の陣地に対する攻撃の開始地点に入るためには、ウクライナ側の火砲やドローンが狙いをつけているキルゾーンを抜けなくてはいけなかった。 ロシア軍は突撃を続けた結果、車両を数百両、人員を数千人失った。 しかも、大きな前進は遂げられなかった。 11 月に入り、ロシア軍の指揮官は戦術を切り替えた。 各連隊は車両での攻撃に代えて、歩兵部隊を徒歩で送り込むようになった。 これらの歩兵部隊には、最近徴兵され、訓練の不十分な動員兵(モビク)を中心とした「ストーム Z」部隊も含まれていた。 下車戦闘するロシア軍の歩兵は、ウクライナ軍が夏の反転攻勢の失速後、南部から配置転換した旅団の戦車にまみえることになった。 ロシア軍はさらに数百人ないし数千人の死者を出した。 それでも、アウジーイウカの北で 1.5km 程度、南では町の郊外まで前進することに成功した。 国民が「黙認」しているために、ロシアの政権は、自由社会の政府ならとてももたないほどの大きな損害を戦争で出しても、ものともしない。 とはいえ、ロシア人も死ねる数には限りがある。 2 カ月で何千人もの死者を出したあと、アウジーイウカを直接攻略しようとするロシア軍の試みは終わりつつあるようだ。 だが、間接的に攻略する試みが始まりつつある。 「ロシア軍の攻撃は継続するだろうが、当初の計画どおりにこの町に対する強襲や全周攻撃を追求するのではなく、防御側の(補給を断つ)包囲にアプローチが変化する可能性がある」とフロンテリジェンス・インサイトはみている。 その場合、赤外線カメラを搭載した使い捨ての FPV ドローンが決定的に重要な役割を果たすことになる。 FPV ドローンに暗視機能を追加するとコストが倍増する可能性があるため、ウクライナ軍では「バーバ・ヤハ」と呼ばれる、繰り返し使える比較的大型のドローンに赤外線カメラを搭載することを優先している。 ロシア軍は、たとえ FPV ドローンの 1 機あたりのコストが 2 倍に跳ね上がっても、24 時間運用可能になることでウクライナ軍の補給路を塞げるのなら、追加コストは見合うものと判断するかもしれない。 激戦の末に陥落した東部ドネツク州の港湾都市マリウポリを例外として、ウクライナ軍は普通、最後の一兵になるまで戦い抜くということはしない。 むしろ、ロシア軍が前進するごとに人員や装備に損害を与えながら、将来のために場所を放棄することが多い。 言い換えると、ウクライナ軍の守備隊は、孤立化する危険が迫れば撤退する。 東部ルハンスク州のリシチャンスクやセベロドネツク、あるいはドネツク州バフムートでもそうした。 ロシア軍の夜間飛行ドローンによって補給が不可能になれば、アウジーイウカでも撤収を選ぶだろう。 ロシア側が夜間のドローン攻撃に重点を移しつつあるらしいことに関して、もし朗報があるとすれば、それはウクライナ側がドローンに対抗する方法を知っているということだ。電子戦、具体的には、電波妨害装置によってドローンと操縦士の通信を遮断するというものだ。 ウクライナの海兵隊が 10 月、南部でドニプロ川の渡河作戦に成功できた裏にも、 こうした電波妨害作戦による入念な準備があった。 もっとも、高価な電子戦器材は不足している。 また、電波妨害装置は敵のドローンだけでなく味方のドローンも飛べなくしてしまいやすいので、ウクライナ側が防御のために電波妨害作戦を実施する場合、攻撃能力に支障が出かねない点も考慮する必要があるだろう。 空とりわけ夜の空に警戒しなくてはならない。 アウジーイウカの守備隊にとって、対車両、対徒歩兵に続く第 3 の戦いはそこで繰り広げられるかもしれない。 それは、アウジーイウカ攻防戦の勝敗を決する戦いになる可能性がある。 (David Axe、Forbes = 12-14-23) 戦費で追い込まれたウクライナ、支援約束守られない場合の選択肢検討 ウクライナ政府当局者らは、西側諸国などが約束した支援が実現しない場合に戦費をどう賄うか頭を悩ませている。 選択肢はいずれもリスクをはらむ。 財政的な措置として考えられるのは増税などだが、荒廃した経済に厳しい要求を突きつけるのは明らかだ。 支出を削減するにも市民は既に困窮している。 金融政策の選択肢では通貨フリブナの切り下げや中銀資金の活用再開が挙がるが、マルチェンコ財務相はブルームバーグに対し、これらの措置は「悪影響」を伴うだろうと述べた。 ゼレンスキー大統領はワシントン入りし、バイデン米大統領が提案した 600 億ドル(約 8 兆 7,400 億円)余りの支援を足止めさせている共和党議員に緊急の呼び掛けを行った。 しかし議員らは民主党が移民・国境政策で「大転換」を受け入れるまでウクライナ追加支援はないとの姿勢を崩さなかった。 欧州連合 (EU) も 500 億ユーロ(約 7 兆 8,600 億円)規模の支援パッケージを用意しているが、EU 予算全体を問題視するハンガリーのオルバン首相の妨害に遭っている。 反転攻勢が望んだ成果を得られず、ロシア侵攻から 2 度目の冬を迎える中で、ウクライナは資金という新たな困難に直面している。 米当局者と先週会談したゼレンスキー氏側近は、資金支援が止まればロシアのプーチン大統領を勝利させ、欧州の地図を塗り替える確率が高まると警告した。 マルチェンコ氏は先週ブルームバーグに対し、「EU と米国からの支援は死活的に重要だ」と発言。 「ウクライナは米欧の担当者らと活発な意思疎通を維持しており、来年度にわれわれが必要としている支援について伝えている」と述べた。 ウクライナは国内総生産 (GDP) のおよそ 2 割に相当する来年の財政赤字を、主に外部から 400 億ドル余りを調達することで埋める計画。 ただ、マルチェンコ氏が先月語ったところによると、このうち 3 分の 2 余りはまだ確定していない。 (Volodymyr Verbianyi、Bloomberg = 12-13-23) ロシア軍の死傷者 31.5 万人、ウクライナ紛争で = 関係筋 [ワシントン] ウクライナ紛争で、ロシア軍の死傷者がこれまでに 31 万 5,000 人に達した。 機密解除された米情報機関の報告書の情報を関係筋が明らかにした。ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った2022年2月時点のロシア軍事要員は36万人規模で、そのほぼ87%に相当するとみられる。 関係筋によると、報告書はまた、ロシア軍は兵士のほか、多くの装甲車両を失っており、ロシア軍の近代化が18年間後退したと評価しているという。 (Reuters = 12-13-23) ロシア軍の自走砲が突然爆発、北朝鮮製砲弾が暴発か…ロシア砲兵「射程もばらばら」 ウクライナ戦争で、弾薬不足に苦しむロシアが北朝鮮から武器の提供を受けていると伝えられる中、北朝鮮製の砲弾や弾薬の品質が悪く、ロシア軍が悩んでいると各外信が報じた。 装薬(砲弾を発射するために使う火薬)の不良などで、撃つ前に爆発したり射程が一定にならないなどの事故が相次いでいるのだ。 12 日(現地時間)にウクライナの軍事メディア「ディフェンス・エクスプレス」やポーランドのメディア「エッサニュース」などが明らかにしたところによると、最近ロシア軍が運用中の戦車が爆発する事故が発生した。 最前線に投入され始めた北朝鮮製の低品質な弾薬が、砲身内で爆発したものと推定される、と同メディアは伝えた。 エッサニュースは「ロシア軍は、北朝鮮が送った弾薬を使用し始めるとともに予想外の問題に直面した。 北朝鮮製の弾薬は品質が悪く、軍事専門家らが予想した通り、砲弾の早発により自走砲などが破壊されたり損傷したりする事故が増加した。」と伝えた。 北朝鮮がロシアに提供した武器が不良品だという報道は、今回が初めてではない。 ディフェンス・エクスプレスは今月 9 日、「北朝鮮がロシアに提供した弾薬(曲射砲)の中から無作為に選びだした 5 発を点検した結果、砲弾の推進剤の含量がばらばらで、装薬の材質が違っていたり内部にあるべき銅線が抜けているものもあったりした」と伝えた。 こうした理由で、北朝鮮製の砲弾は射程が一定ではなく、「体系的に分散されている」というロシア最前方砲兵部隊の報告も相次いでいるという。 ディフェンス・エクスプレスは「一貫していない砲弾の飛行距離は射撃の精度の低下につながり、任務遂行に支障を招いている」と伝えた。 国防安保フォーラムのシン・ジョンウ事務局長は「砲弾の推進剤の量がスタンダードでないと、希望する射程まで飛んでいかないケースが生じる」と語った。 ウクライナとの戦争で底を突いたロシアの砲弾や弾道ミサイルなどを埋め合わせてやる代価として、北朝鮮がロシアから衛星ロケット関連の技術を得ている状況は、このところ相次いで報じられている。 ホワイトハウスは今年 10 月、北朝鮮が前月の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長訪露に合わせて、長さ 6 メートルのコンテナ 1,000 個以上もの分量になるウクライナ攻撃用兵器をロシアに送った、と明かした。 ただしホワイトハウスは、どのような武器が入っているのかは具体的に明かさず「弾薬や軍事装備」とだけ明かした。 (キム・ミョンジン、韓国・朝鮮日報 = 12-13-23) ウクライナ軍、レオパルト 1A5 戦車の装甲を強化中 ウクライナ軍はようやくドイツ製のレオパルト 1A5 戦車に爆発反応装甲 (ERA) を追加している。 ちょうどいいタイミングだ。 同軍は新たに 5 つの機械化旅団を編成中で、これらの旅団はおそらく戦車が必要となる。 重量 40 トン、乗員 4 人のレオパルト 1A5 は、1960 年代に生産が始まったレオパルト 1 を 1980 年代に改良したものだ。 これまでにドイツ、オランダ、デンマークの 3 カ国は共同で、200 両近くのレオパルト 1A5 をウクライナに供与することを約束している。 ウクライナ軍が運用する西側製の戦車の中で、レオパルト 1A5 は最多のものになる見込みだ。 悪い戦車ではない。 乗員らはレオパルト 1A5 の優れた機動性と、精度の高い 105mm 主砲の高速な射撃管制を称賛している。 だが、レオパルト 1A5 には 1 つ大きな欠点がある。装甲が薄く、最も厚いところでもわずか 70mm しかないのだ。 比較的新しいレオパルト 2A4 は、レオパルト 1A5 と同じ射撃管制が搭載されているが、重量は数十トン重く、より大型の主砲を備え、レオパルト 1 の数倍の装甲を誇る。 それでもロシア軍の対戦車兵器に対しては脆弱だ。 レオパルト 1A5 に追加の防御が必要であることをウクライナ軍がそれまでに認識していなかったとしても、レオパルト 1A5 を初投入した戦闘はその必要性を強く思わせるものだった。 最初に供与された数十両のレオパルト 1A5 は、すでにウクライナ東部に配備され、第 44 機械化旅団の大隊に装備されている。 同旅団は 11 月末、一両のレオパルト 1A5 を危うく失うところだった。 この戦車はどうやら地雷を踏んで動けなくなったところを、ロシア軍の砲撃にさらされた。 ウクライナ軍は修理のために損傷したその戦車を回収したと伝えられている。 ウクライナ軍は現在、レオパルト 1A5 の装甲を強化している。ウクライナのテレビ局 ICTV は「装甲強化の問題は、ウクライナのエンジニアによってすでに解決されつつある」と報じた。 解決とは、ERA の追加を意味するようだ。 ある戦車兵は「私が知る限り、強力な動的保護を加える計画がある」と ICTV に語った。 ブロック状の ERA の内部には爆薬の層があり、攻撃を受けると外側に向けて爆発し、弾丸の爆発による内側への衝撃を相殺する。 ERA は装甲を貫く徹甲弾に対しては有効ではないが、火薬が炸裂するタイプの強力な弾丸に対しては戦車の防御力をおよそ倍に高めることができる。 ERA という強力な防御の層を加えることで、レオパルト 1A5 の装甲は 70mm ほどから 140mm 相当に強化される。 それでもロシア軍の T-72 戦車の防御力には及ばないが、少なくとも自爆型ドローンや対戦車ミサイルが飛び交う戦場を進む乗員にとっては心強い。 ウクライナ軍のある戦車兵はレオパルト 1A5 に乗り込んだ感想を聞かれ、「素晴らしい」と答えた。 だが「自宅の方がいい」とつぶやいた。 なるべく早い ERA の追加が待たれる。 ウクライナ軍は、擁する約 100 個の地上戦闘旅団を増強すべく、新たに 5 個の機械化旅団を編成している。 新設の第 150、151、152、153、154 機械化旅団にはすでに兵士が配属されている。 これらの旅団にないのはおそらく戦車などの重火器だ。 200 両のレオパルト 1A5 があれば、第 44 旅団と新設の 5 個の旅団が各 1 個の大隊に装備するのに十分だろう。 レオパルト 1A5 の装甲が増強されれば、6 個の旅団は重要な防護火力を獲得することになる。 (David Axe、Forbes = 12-13-23) 反転攻勢「希望かなわず」 = ロシア軍、各地で猛攻 - ウクライナ ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は 11 日付の英 BBC 放送とのインタビューで、ロシアの占領地奪還に向けたウクライナ軍の反転攻勢について「希望はあったが、かなわなかった」と述べた。 半年余り続けた作戦が、ロシア軍が築いた強固な防御網に阻まれ、想定より戦果が挙がらなかったことを認めた。 ダニロフ氏はその上で、「それは勝利がわれわれの側にないことを意味しない」と強調。 領土奪還に向けた意欲を改めて示した。 一方、ロシアは各地で猛攻を仕掛けている。 ウクライナ軍参謀本部は 12 日、ロシア軍に包囲されている東部ドネツク州アウディイウカ周辺で過去 1 日に計 42 回の攻撃を受けたと報告。 交戦回数は他の地域と比べて突出していた。 英国防省も 11 日、先週を通じてアウディイウカが「前線における最も激戦の地」となり、日によっては戦闘全体の 4 割近くがこの付近に集中していたと分析した。 ロシア軍の 1 日平均の死傷者数は 11 月時点で過去最多の 931 人と推定されたが、攻撃の手が緩む気配はない。 (jiji = 12-12-23) ロシア軍、ウクライナ南部で「大きく前進」 ロシア側当局者 ウクライナ南部ザポリージャ州でロシア軍が「大きく前進した」と、ロシア側当局者が 12 日、主張した。 ロシア政府がザポリージャ州の占領地域に設置した行政当局のトップ、エフゲニー・バリツキー氏はテレグラムに、 「われわれの部隊は、ノボポクロフカの北東に向かって大きく前進した」と投稿した。 ノボポクロフカは、ウクライナ軍が夏に奪還したロボティネから東に約 20 キロ離れた場所に位置する。 ザポリージャ州をめぐり、ウクライナ軍は 12 日の日次報告で、ノボポクロフカの西などで「防衛軍が敵の攻撃を 3 度撃退した」と発表していた。 ロシア軍は侵攻初期から同州の大部分を占領しているが、州都ザポリージャ市はウクライナの支配下にある。 (AFP/時事 = 12-12-23) ブラッドレー歩兵戦闘車 (IFV) の真骨頂 25 ミリ砲連写でロシア軍標的を端から撃破
ウクライナ国防省は、米軍のブラッドレー歩兵戦闘車 (IFV) がロシア軍を攻撃する劇的な動画を公開した。 秋にウクライナ東部のアウディーイウカ近郊で、ブラッドレー IFV がかなりの遠距離からロシア軍陣地に発砲する模様を捉えた 22 秒の映像だ。 「これはアメリカ製のブラッドレー IFV で、25 ミリ砲を装備している」と、コメントにはある。 ブラッドレー IFV はロシア軍の標的に 25 ミリ砲を連射し、その破壊の痕跡である爆発と炎が、霧に覆われた平原に線を描く。 「ウクライナの土地に占領者の居場所はない」と、ウクライナ国防総省はコメントする。 「ブラッドレー IFV の攻撃で、敵は一瞬でそれを理解することになる。」 米軍に関するニュースや詳細情報を提供するウェブサイト『military.com』によると、M2 および M3 ブラッドレー戦闘車は軽装甲輸送車両で、「クロスカントリーの機動性をもち、火力を搭載し、砲撃や小火器に対する防御を備える。」 M2 バージョンは「ほとんどの装甲ターゲット」を破壊する 25 ミリ砲を装備している。 TOW 対戦車ミサイルを装備すれば、最大 2.3 マイル(約 3.7 キロ)先の軽装甲標的に壊滅的な打撃を与えることができる。 (NewsWeek = 12-11-23) バイデンはなぜウクライナの「血みどろの膠着」を放置しているのか 北大西洋条約機構 (NATO) 諸国はウクライナでの戦争で膠着状態が続くのをなぜ許容しているのだろうか。 米国はウクライナに対して、ロシアを打ち負かすのに十分な兵器を供与しようとしない。 供与のペースも遅すぎる。 米国やドイツがこうした「点滴」のような小出しの支援を続けてきたために、ウクライナの前線は第 1 次大戦時のような膠着した塹壕戦の様相を呈し、消耗戦が数年続く公算が大きくなっている。 「肉挽き機」などとも呼ばれるが、こうした戦い方では双方が甚大な損害を出すのは避けられない。 ロシアは犠牲をいとわないように見える。 ロシアはかなりの人口があるし、政権にとって好ましくない人を「始末」するために、戦場をいわば社会工学的な手段として利用しようともするだろう。 だが、戦線の膠着が続き、犠牲ばかり膨らんでいくという状況は、ウクライナにとっては恐ろしい悲劇だ。 とくに西側の支援国の無責任さを見れば、ウクライナは苦悩のあまりファウストのようにプーチンと契約を交わしてしまい、和平交渉に入るのではないかと思う人がいてもおかしくはない。 ウクライナがそうしないのにはいくつか理由がある。 ロシアがウクライナの子どもたちを連れ去り始めた時点で、ウクライナにとってこの戦争は最後まで戦い抜くものになった。 また、多くの人が言っているように、ロシアと取り決めを結ぶことはできない。 結んだところで、ロシアはそれを守らないからだ。 和平交渉に応じようとすればロシアに弱さを見せることになり、付け入る隙を与えるだろう。 思い出してほしいが、ウクライナは何十年にもわたってロシアの背信行為を間近で見てきた。 まずチェチェン。 最初の戦争でロシアは事実上、チェチェン人に独立を与えたが、その後、プーチンのもとで準備を整えて戦争を再開し、グロズヌイを徹底的に爆撃して焼け野原にした。 10 万人が死亡した。 次にジョージア。 2008 年の戦争の停戦協定後、ロシアは粛々とジョージアの国土を奪い取っていった。 その次が、ウクライナのクリミアとドンバスだった。 20 年あまりにわたって、チェチェンで、ジョージアで、そしてウクライナで、外国の首脳たちは常に、被害者の側に和平を促してきた。 プーチンは話のわかる男で、戦闘を止めたがっているなどと請け合って。 ジョージアでの戦争では、欧州評議会がトビリシにハイレベルの調停チームを送り込んだ(筆者は当時、トビリシに滞在していた)。 調停チームはサーカシュビリ大統領に矛を収めるよう説得した。 まるで彼が問題を引き起こしたかのように。 彼らはサーカシュビリに文字通りこう言った。 プーチンにチャンスを与え続けましょう、そう頑なではいけません、と。 彼らは間違っていた。 プーチンの「魂に触れた」と思ったブッシュも間違っていた。 ロシアとの関係の「リセット」ボタンを押し続けたオバマも間違っていた。 バイデン政権も同じパターンを繰り返している。 それは必ずしもバイデンが選んでしたことではない。 彼は国内でトランプの脅威を食い止める必要があり、対外的な冒険主義にかまけるわけにはいかないのだ。 だが、彼は気づくと世界各地で危機に直面していた。 もちろん、これはプーチンが仕掛けたゲームである。 そちらが手を引かなければ、こちらはどこにでも火をつけてやる。 ウクライナ、アルメニア、イスラエル、イラン、バルカン半島、モルドバ、フーシ派、イスラム世界、あるいは米国でも - - と。 米国ではその火で国内のコンセンサスが引き裂かれている。 その結果、どうなったか。 米国の戦略は過剰に拡張し、予算は破綻をきたした。 政治は不安定になり、社会の分断も進んだ。 そしてトランプが出現した。 プーチンの脅しはたんに外国の「発火点」をたきつけることだけを狙ったものではない。 それは自由世界の根幹を揺さぶることを意図している。 彼は自由主義諸国の指導者、ひいてはその国民にこんなメッセージを突きつけている。 あなたたちは民主主義のほうが、安定し、公平で、持続的な体制だと思っているのか? 自分たちの社会で起きている激しい分断に目を向けるがいい。 われわれ全体主義の体制はこのような分断には直面していない - -。 プーチンの脅威とはそういうものだ。 この脅威が存在するのは、開かれた社会は他国での戦争などに影響されるのを免れないからだ。 ロシアはそのうえ、サイバー戦争やオンラインの偽情報によって積極的にかく乱してもいる。 バイデン政権がこの脅威を深刻にとらえているのは確かだ。 とはいえ、バイデンは主戦論者ではなく、グローバルパワーの追求者でもない点も思い起こす必要がある。 彼はベトナム戦争世代だ。 アフガニスタンでの戦争は唐突に終わらせた。 混乱した、ひどい終わらせ方だった。 冷戦後のほとんどの米国大統領と同様に、バイデンも自国の「平和の配当」を考慮した。 残念ながらロシアはそうではなかった。 もちろん、米国が一?引き、内政を優先し、プーチンにロシア帝国を再興させても問題ないという考え方もあるだろう。 米国内の孤立主義派はまさにそうした立場から、南部の国境に壁を建設したり、国を安定にしたりするのが先決だと訴え、ウクライナなどの問題は後回しにしている。 こうした政治的に押し込まれやすい面があるため、米国は案の定、これまでウクライナに全面的に関与するのを慎重に避けてきた。 プーチンがイスラエルによるガザでの戦争をゲームの舞台に加えた現在は、なおさら慎重になっている。 米国はウクライナのために、大量の武器やお金を携えてどかどかと出てきて、レッドラインを引き、「やつらを通すな!」と叫ぼうとはしないだろう。 これは膠着状態を終わらせるひとつの方法だが、起こりそうにない。 最後に、こういうこともある。 米国や欧州は、ロシアがウクライナの泥まみれの戦場で徐々に、だが確実に弱体化することで利益を得ている。 ロシアだけでなく、その同盟国であるイランや北朝鮮も、ウクライナに資源を費やすことで疲弊している。 プーチンに理解を示すすべての全体主義国家も同じ運命をたどるだろう。 ウクライナでの戦争による消耗が何年も続けば、悪の帝国は世界で力を失っていく。 その間に西側諸国は、自国の利益へのダメージを最小限に抑えられるような結果に向けて計画を練ることができる。 その結果には、ロシアの影響圏からの中央アジアの解放、イラクやシリア、レバノンに対するイランの影響力の縮小、ロシア連邦の緩やかな解体、シベリア、タタールスタン、ヤクーチア(サハ)などの独立の可能性なども含まれるかもしれない。 もしプーチンが一気に完全に打倒されれば、大きな災害、大量の難民、ウランの拡散、はては核兵器の使用のような自暴自棄な反応を引き起こすおそれもある。 一方、冷戦のような漸進主義的アプローチをとれば、西側諸国は時間はかかるが主導権を握れるだろう。 ソ連はつまるところ、アフガンでの戦争によって時間をかけて破壊されたのだ。 漸進主義はよく知られたアプローチではあるが、こちらもそれなりに高いリスクがある。 なぜなら、たとえばイランはガザでやったようなことをするからだ。 欧州ではヘルト・ウィルダースのような人物が権力を握ろうとしている。 中国はいつ思い切った行動を起こし、バランスを変えようとしてもおかしくない。 ウクライナはその間、終わりの見えない地獄、終わりのない苦悩を、何カ月、何年と体験することになるだろう。 神よ、ウクライナを助けたまえ。 そして、ウクライナを見殺しにしている西側にご加護を。 (Melik Kaylan、Forbes = 12-11-23) |
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