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ロシアの最新対砲兵レーダー、配備直後にウクライナ砲兵が破壊

クライナ軍はこれまでに、ロシア軍の GPS ジャマー(電波妨害装置)を GPS 誘導爆弾で破壊し、ロシア軍の対ドローンジャマーをドローンで爆破した。 また、巡航ミサイル撃墜を任務とするロシアの防空拠点を巡航ミサイルで攻撃してもいる。 ロシアが仕掛けたウクライナとの 1 年 11 カ月に及ぶ戦争では、まるでブラックジョークのような皮肉な結末を迎えた衝突が数多く起きてきた。 その最新の事例となる今回の出来事は、話の始まりからオチまでが最速のものの一つとなった。

ロシアのメディアは 2 日朝、ロシア軍の最新対砲兵レーダー「ヤストレブ- AV」がウクライナに配備されたと報じた。 だが数時間後、このレーダーはウクライナ軍の砲兵が同国南部で行った攻撃により爆破された。 皮肉はさらに続く。 ヤストレブ- AV は、ウクライナ軍が運用する米製の高機動ロケット砲システム (HIMARS) からロシア軍の部隊を守るのに役立つはずだった。だが、初投入されたそのヤストレブAVレーダーを破壊するためにウクライナ軍が使ったとみられる兵器はというと … そう、HIMARSだ。 ただし、りゅう弾砲から発射された誘導弾による攻撃だった可能性もある。

ヤストレブ- AV の損失は単なる笑い話ではなく、重要な意味を持つ。 ウクライナでは、戦いが消耗戦となるにつれ、対砲兵レーダーを狙う大砲の重要性が日ごとに高まっている。 勝機は、大砲とドローン(無人機)の動きがいい側にある。 対砲兵レーダーは、飛んでいる敵の砲弾を発見してその砲弾の発射地点を特定し、自軍の大砲が敵に打撃を加えられるようにすることで、優位に立てるのだ。 ウクライナ軍がこの希少なヤストレブ- AV を爆破する数時間前、ロシアは「ミサイル兵と砲兵による戦闘任務の効果的な遂行は、砲撃の効率と戦場での生存性を高める無人航空機の使用とともに、近代的な砲兵偵察装置の使用によっても確保されている」とうそぶいていた。

だが、対砲兵レーダーは極めて高い威力を持つことから、真っ先に標的ともなる。 ヤストレブ- AV の配備から 1 日以内に、ウクライナ軍のドローンがその位置を特定し、HIMARS が射程約 92km の GPS 誘導ロケット弾 M30/31 で攻撃したとみられる。 トラックに搭載された位相配列のレーダーが特徴的な信号を発していたため、ウクライナ軍はヤストレブ- AV の居場所を知っていたというのはあり得る。 この信号についてはウクライナの情報機関がマークしていた可能性がある。

元米国防契約管理局 (DCMA) 品質監査官で、電子戦に詳しいトレント・テレンコは「電子戦の基本として、独特、あるいは低密度で価値の高い電波を発するものは、優先的に標的となる」と X (旧ツイッター)で指摘した。 (David Axe、Forbes = 1-4-24)


ウクライナ、捕虜200人超交換 ロシアの侵攻開始後「最大規模」

【キーウ】 ウクライナ政府は 3 日、ロシアとの戦争捕虜の交換によって、ウクライナ軍兵士ら 230 人が帰国したと明らかにした。 ロシア国防省は、248 人の捕虜がロシアに帰国したと発表した。 ウクライナ側によると、捕虜交換は 2023 年 8 月以来となり、22 年 2 月の侵攻開始以降で最大規模となった。 アラブ首長国連邦 (UAE) が捕虜交換を仲介した。 ウクライナメディアが伝えた当局者の話によると、23 年 12 月時点でウクライナ人捕虜は少なくとも 3,500 人いた。 帰還者の中には、南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所での抗戦に参加した兵士も含まれている。 6 人は違法に連行された民間人だという。 (kyodo = 1-4-23)


「キンジャル」 10 発全て撃墜、パトリオットで ウクライナ軍

ウクライナ政府当局者は 4 日までに、首都キーウがあるキーウ州などにロシア軍によるミサイルやドローン(無人機)による大規模攻撃が 2 日朝にあり、少なくとも 5 人が死亡、112 人が負傷したと発表した。 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、同国空軍はロシア軍が発射した極超音速ミサイル「キンジャル」 10 発の全てを撃墜したと報告。 米国が供与した地対空ミサイル「パトリオット」を投入して迎撃したとし、「(キンジャル 10 発を)撃ち落としたのは新たな記録」とも誇示した。 CNN は同司令官の発表内容の真偽を独自には立証できていない。 ただ、米政府当局者はパトリオットがキンジャルの迎撃にこれまで成功していると明かしている。

ザルジニー総司令官は、キンジャルが標的に命中した場合、その破壊力は壊滅的な被害を及ぼすと指摘。 同ミサイルは戦場から遠く離れた場所からの発射が可能で、飛行速度は音速の約 10 倍、搭載の弾頭の重さは約 500 キロ、射程距離は約 2,000 キロに達する。 総司令官はロシア軍のキンジャル使用が今回をもって止まると考える理由はないとし、より多くの防空システムなどが必要となるとも訴えた。 ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍の攻撃について先月 31 日以降、ドローン(無人機)の「シャヘド」約 170 機や多数の様々なミサイルを用いていると指摘。 SNS 上で、標的の大半は民間施設などになっていると述べた。

一方、ウクライナと国境を接するロシア南西部ベルゴロド州のグラドコフ知事は 2 日、同州にウクライナ軍の攻撃が再度あったと主張。 ロシア国防省によると、州上空でミサイル 17 発が迎撃され、午後の早い時間帯に個別の攻撃が 3 度あったと報告した。 (CNN = 1-4-24)

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欧米に防空支援継続訴え キンジャル迎撃「記録的」

【キーウ】 ウクライナのザルジニー軍総司令官は 2 日のロシアによる大規模攻撃に関し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」でロシアの極超音速ミサイル「キンジャル」 10 発全てを迎撃したとして「記録的だ」と X (旧ツイッター)で述べた。 欧米の防空支援に謝意を示し、攻撃激化に備え、さらなる供与が必要だと訴えた。 ウクライナ軍は 99 発のミサイルのうち、72 発を迎撃したとしている。 非常事態庁によると、首都キーウ(キエフ)などで計 5 人が死亡、127 人が負傷した。 ウクライナは欧米からの支援のつなぎ留めを目指している。 (kyodo = 1-3-24)


キーウやハルキウに大規模攻撃、多数の死傷者 民間人犠牲急増

ウクライナの首都キーウと第 2の都市、北東部ハルキウなどで 2 日午前、再びロシア軍による大規模な攻撃があり、少なくとも 5 人が死亡し、約 100 人がけがを負った。 昨年 12 月 29 日以来、民間人が犠牲となる攻撃が激しくなっている。 両都市の市長らによると、キーウ市内では 2 人が死亡し、43 人が病院に搬送された。 キーウ州では他に 2 人が死亡し、7 人が負傷。 ハルキウでは 1 人が死亡し、6 - 13 歳の子どもを含む 47 人がけがを負った。

ゼレンスキー大統領によると、ロシア軍はこの 3 日間で、約 170 機の自爆型ドローン「シャヘド」と数十発のミサイルを発射。 「大半が民間人の命を狙ったものだ」として、「ロシアの行動に対する責任を追及する」としている。 12 月 29 日のウクライナへの攻撃は全面侵攻開始以来最大規模で、キーウで 28 人が死亡するなど、各地で計 50 人以上の犠牲者が出た。 一方、ロシア南西部ベルゴロドでも翌 30 日に攻撃があり、25 人が亡くなった。 (星井麻紀、ロンドン = 藤原学思、asahi = 1-2-24)


ウクライナ大統領、「ロシアは戦闘で大きな損失」と主張

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナとの戦争で勝利しているという考えは「感覚」にすぎず、ロシアは依然として戦場で大きな損失を被っているとの見解を示した。 英経済誌エコノミストに 1 日掲載されたインタビュー記事で述べた。 ロシアの損失に関する主張について具体的な証拠は示さなかった。 ゼレンスキー氏は 2024 年の優先事項として、クリミアのロシア軍をたたきウクライナ国内への攻撃回数を減らすことや東部戦線の主要都市を守ることなどを挙げた。  ロシア当局者らはゼレンスキー氏の発言に関するコメント要請に応じていない。

ゼレンスキー氏は「(昨年は)世界が望んでいたような成功を収められなかったかもしれない」と認めた上で、ロシア軍が勝利しているという考えは単なる「感覚」だと指摘。 先週訪問した東部アブデーフカでのロシアの大きな損失に言及した。 一方で、ウクライナ軍がロシアの黒海封鎖を突破し、南海岸沿いの新ルートによる穀物輸出を可能にしたとし「大きな成果」を称えた。 (Reuters = 1-2-24)


ロシアとウクライナ、新年も攻撃の応酬続く ドネツクやオデッサで多数の死傷者

ロシアによるウクライナ侵略で、ロシアが一方的に併合を宣言した東部ドネツク州の親露派武装勢力トップ、プシリン首長は 1 月 1 日、州都ドネツク中心部のホテルなどがウクライナ軍の砲撃を受け、4 人が死亡、13 人が負傷したと主張した。 一方、露軍は 1 日にかけた夜間にウクライナ南部オデッサなどを 60 機以上のドローン(無人機)で攻撃。 住宅などが損傷し、15 歳の少年が死亡、8 人が重軽傷を負った。 地元当局の発表をウクライナメディアが伝えた。

露軍は昨年 12 月 29 日、ウクライナ各地に過去最大規模のミサイル攻撃を実施。 首都キーウ(キエフ)などで 39 人が死亡した。 ウクライナは報復として露西部ベルゴロド州を長距離攻撃し、ロシア側によると 24 人が死亡した。 その後も双方の攻撃の応酬が続いている。 (sankei = 1-1-24)


ロシア領内、侵攻後最大の被害か ウクライナ軍砲撃、100 人超死傷

ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州で 29 日夜から 30 日にかけて、ウクライナ軍による大規模な砲撃があり、同州のグラトコフ知事によると、少なくとも 24 人が死亡し、100 人以上が負傷した。 ロシア領内の人的被害としては 2022 年 2 月に「特別軍事作戦」が始まって以降、最大とみられる。

これまでウクライナは、ロシアによる核使用などのエスカレーションを懸念する欧米に配慮し、ロシア領内へはインフラなどへの攻撃に限定してきた。 ただし 29 日にはロシア軍により国内各地に軍事作戦開始後で最大規模となる空爆を仕掛けられたことから、ゼレンスキー大統領も報復する意向を示していた。 欧米による軍事支援が先細る中、ウクライナによるベルゴロド州への攻撃は「一線を越える」形となっている。

自国領内で 20 人を超す犠牲者が出たことを受け、ロシア軍は 30 日にもウクライナの首都キーウ(キエフ)などへの空爆に及んでおり、報復合戦の様相が濃くなっている。 ウクライナと隣接するベルゴロド州は特別軍事作戦の開始後、散発的にウクライナ軍による砲撃や無人機(ドローン)攻撃を受けてきた。 23 年 6 月の時点で、数千人の住民がすでに国内の別の地域に避難していると伝えられていた。

今回のベルゴロド州への砲撃について、ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は 30 日、通信アプリに投稿した動画で、クラスター弾や多連装ロケットシステムが使用されたが、その大半はロシアの防空システムで迎撃したと説明。 その上で、「ウクライナは無差別に攻撃し、前線での敗北から注意をそらそうとしている」と批判した。 タス通信によると、一連の攻撃で、集合住宅や民家などが被害を受け、10 カ所で火災が発生した。

ロシアはこの日、国連安全保障理事会の緊急会合の開催を要請。 会合ではネベンジャ国連大使が、ベルゴロド州へのウクライナ軍の攻撃について「意図的なテロ行為だ」と指弾し、欧米諸国などに今後のウクライナ支援の見通しについて説明するよう迫った。 ウクライナ治安当局者は攻撃の標的は軍事施設に限定しており、被害の拡大は「ロシア空軍の未熟な働きの結果だ」と主張。 オンラインメディアの「ウクラインスカ・プラウダ」が 30 日報じた。

ウクライナ軍が 6 月に始めた反転攻勢が停滞する中、ロシアがウクライナ東部で攻勢に出ていた。 そのさなかにウクライナ空軍は 26 日、南部クリミア半島南東部フェオドシヤでロシア軍の大型揚陸艦ノボチェルカスクを破壊したと発表。 ロシア独立系メディア「アストラ」も船員 33 人が行方不明になっていると報じるなど大きな被害を出した。 直後の 29 日にロシア軍がキーウや西部リビウなどに実施した空爆では、死者が 41 人に拡大。 ウクライナメディア「キーウ・インディペンデント」が報じた。 ロシア軍が 30 日にも敢行した空爆では、東部ハリコフで少なくとも 26 人の負傷者を出したという。 (山衛守剛、mainichi = 12-31-23)

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ロシア南部攻撃の死者は 21 人に 知事発表

ロシア南西部ベルゴロド州の州都ベルゴロドへの攻撃で、同州知事は 31 日、死者数が 21 人に増え、うち 3 人が子どもだと発表した。 また、負傷者は 110 人で、子ども 17 人が含まれるという。 知事によると、ベルゴロド中心部が攻撃され、集合住宅 30 棟のほか、学校や幼稚園なども損傷を受けたという。 (asahi = 12-31-23)


キーウで捜索続く 大規模攻撃の死者は 17 人に

キーウに 29 日にあった大規模攻撃で、市当局は 30 日夜、新たに 1 人の犠牲者が発見され、死者は 17 人になったとテレグラムに投稿した。 キーウではロシア軍の攻撃によって市内の倉庫が倒壊し、がれきを撤去しての捜索活動が続けられている。 ロシアによる全面侵攻開始以来、「最悪の犠牲者数(クリチコ市長)」となったころから、市では 1 月 1 日を喪に服す日にすることを決めている。 (asahi = 12-31-23)


ロシア軍がウクライナに最大規模の空襲 … 全土に無人機やミサイル攻撃

ロシア軍は 29 日、ウクライナの首都キーウなどのウクライナ全土に無人機やミサイルによる大規模な攻撃を行った。 ウクライナメディアによると、病院や住宅などの民間施設が被害を受け、少なくとも 23 人が死亡し、132 人が負傷した。 ウクライナ側は、昨年 2 月のロシアによる侵略開始後、最大規模の空襲だとしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は SNS で露軍の 29 日朝までの攻撃について、キーウやポーランド国境に近い西部リビウ、東部ドニプロやハルキウ、南部ザポリージャやオデーサなどの広範囲に及んだと明らかにした。 軍事施設やインフラ施設のほか、教育機関やショッピングセンターなどが被害を受けた。

ゼレンスキー氏は、露軍が攻撃で無人機や巡航ミサイル、長距離地対空ミサイル「S300」などの兵器を使ったと主張した。 ウクライナ空軍は、露軍による無人機やミサイルの攻撃総数は 158 に上り、そのうち無人機 27 機と巡航ミサイル 87 発を撃墜したと強調した。 東部ドニプロでは産科病院や商店、住宅が被害を受け、少なくとも 5 人が死亡した。 (yomiuri = 12-30-23)


T90M 戦車への自爆攻撃を FPV ドローンが 3 方向から捉えた - - 戦車の迷走と乗員の脱走まで

ウクライナ軍の FPV ドローンがロシア軍の最新型戦車 T90M に突っ込んでいく様子を捉えた

ロシア軍の主力戦車 T90M が、ウクライナ軍のドローン(無人航空機)攻撃を受けて迷走し、乗員が戦車を置き去りにして逃げる様子を捉えた新たな動画が注目を集めている。 インターネット上で拡散されているこの動画は、ウクライナ軍の地上部隊が 12 月 26 日に投稿したもので、ウクライナ軍の FPV ドローンがロシア軍の最新型戦車 T90M に突っ込んでいく様子を捉えたもののようだ。

左右に分かれた画面のうち、左の画面の左上隅には T90M に突っ込んでいく攻撃用ドローンのカメラから撮影した映像が出る。 左の画面全体には同じ光景を横から映した映像が出る。 右の画面は、別のドローンが被弾した T90M を上空から撮影した映像だ。 攻撃したのは、ウクライナ軍第 47 独立機械化旅団とされている。 第 47 独立機械化旅団は、欧米から供与された主力戦車「レオパルト 2A6」などの兵器を運用する精鋭部隊として知られており、ウクライナ東部ドネツク州の要衝アウディーイウカに投入されている。 以前はウクライナ南部ザポリージャ州周辺に配備され、ロシア軍と激しい戦闘を展開してきた。

同旅団のドミトロ・ラズトキン報道官は 12 月に入って本誌に対し、第 47 独立機械化旅団がアウディーイウカ北部周辺に配備されたと述べ、ウクライナ軍にはもっと多くの FPV ドローンや弾薬が必要だとも主張した。 ウクライナ軍は安価な自爆型 FPV ドローンをきわめて効果的に使用している。 ウクライナのドローンの第一人者であるミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル改革担当相は、オペレーターがドローンと同じ視界を共有し、デジタル端末で容易に操作できる FPV ドローンはウクライナ国内の戦場において急速に「ゲームチェンジャー」となっており、ロシア軍の数多くの武器を破壊していると述べた。

フェドロフは 12 月前半に本誌の取材に対し、「FPV ドローンは時に迫撃砲よりも有効だ」と述べ、さらにこうつけ加えていた。 「使われている技術自体はとても簡単なものだが、FPV ドローンはまさに技術革命そのものであり、非常に有能だ。」 (エリー・クック、NewsWeek = 12-30-23)


F16 は既にウクライナに到着している!? - - 最近の相次ぐロシア軍用機撃墜も F16 だった可能性がある

西側は、新兵器の引き渡しをいちいち公表して敵に知らせない知恵を学んだのかもしれない。 もし本当に到着したのなら、F16 は膠着状態の戦況に大きな波乱をもたらしそうだ

西側が供与する F16 戦闘機の一部は、既にウクライナに到着している可能性があることが本誌の取材で分かった。 実際、このところウクライナ空軍はロシア軍の戦闘機や爆撃機を相次いで撃墜、ロシア軍が支配してきたクリミア半島の軍港にも空爆を加えるなど、にわかに存在感を増している。 西側諸国はウクライナ側の熱心な働きかけに応じ、自国が保有するアメリカ製の最新鋭の戦闘機 F16 の供与を何カ月も前から約束してきたが、はっきりした引き渡しの日程は今も発表されていない。

ロシアに圧倒的な航空優勢を取られた今の状況を逆転させ、ロシア側の主要なターゲットを狙い撃ちにするには F16 の供与が必要だと、ウクライナ政府は西側に必死に訴えてきた。 ウクライナ軍はこれまでソ連時代の旧式な戦闘機で NATO 標準のミサイルや爆弾を投下してきたが、現代的な航空電子工学システムとレーダーを備えた F16 を使えば、空からの攻撃の精度が格段に上がる。

メッセージアプリのテレグラムで戦況分析を流しているロシアの軍事アナリストらは、ウクライナ空軍は既に数機の F16 を飛ばしているようだと盛んに警告しているが、それが事実かどうかは確認できていない。 アメリカの情報筋が 12 月 27 日、ウクライナに供与される F16 の第 1 波は既に到着した可能性があると、本誌に語った。 これについて本誌はウクライナ軍にメールで確認中だ。

ロシアはこの 3 週間に 8 機の戦闘機を失ったと伝えられている。 事実であれば、ロシア空軍にとっては大打撃だ。 ウクライナ軍は 12 月 5 日、ルーマニアに隣接する自国の南部の沿岸から 50 キロほど沖合にある黒海の前哨基地、ズミイヌイ島(英名スネーク島)の上空でロシア軍機 1 機を撃墜したと発表した。 その 12 日後、ウクライナ軍がロシアの空軍基地を攻撃し、戦闘爆撃機スホーイ Su34 を 1 機破壊したと、ウクライナのメディアが伝えた。 それとは別にウクライナ空軍は同日、ロシア軍の攻撃により、自軍の戦術爆撃機 Su25 が 1 機、破壊されたと発表した。

さらに 12 月 22 日、ウクライナ軍は新たに 3 機、ロシア軍の Su34 を撃墜したと発表。 クリスマスイブにも、ロシア軍の Su30 と 34 をそれぞれ 1 機撃墜したと述べた。 (エリー・クック、NewsWeek = 12-30-23)


ウクライナ侵攻 欧米政府の焦点は「完全勝利から戦争終結交渉に」 米報道

アメリカメディアは、長期化するロシアによるウクライナ侵攻について、欧米政府がウクライナの「完全勝利」から戦争終結交渉に焦点を移しつつあると伝えました。 アメリカの政治メディア「ポリティコ」は、バイデン政権高官と欧州外交官の話として、ウクライナが目標とするロシアから全ての領土を奪還する「完全勝利」への支援について、欧米政府が見直しを検討していると報じました。

欧米政府は、戦争終結に向けた交渉でウクライナを優位に立たせることに焦点を移しつつあると伝え、「これはウクライナが領土の一部を明け渡すことを意味する」としています。 また、反転攻勢で苦戦するウクライナ軍を東部に再配置し、ロシア軍への防御態勢をより強化することも議論しているということです。 一方、ロシアのラブロフ外相は 28 日、「西側諸国はロシアに戦略的敗北をもたらすことに完全に失敗し、戦略を変えつつある」と言及しています。 (日テレ = 12-29-23)


ウクライナ複数都市で爆発音

ウクライナ各地の都市部で 29 日未明から朝にかけ、ロシア軍によるミサイル、ドローン(無人航空機)による攻撃が相次いだ。 それぞれの行政当局者の SNS などによると、攻撃は北東部ハルキウ、中北部の首都キーウ、中部チェルカーシ、ドニプロ、西部リビウなど広範囲に広がった模様で、爆発音の報告が相次いだ。 各地で防空システムが作動したとみられる。

ニュースメディア「ウクライナ・プラウダ」によると、ウクライナ軍はロシア北極圏ムルマンスク州の空港から戦略爆撃機「Tu95」 9 機が離陸するのを確認したという。 一方、ウクライナのウニアン通信によると、28 日深夜から29日未明にかけては南部へのドローン(無人航空機)攻撃が相次ぎ、港湾都市オデーサでは撃墜されたドローンの残骸が集合住宅に落下し、火災が起きた。 (asahi = 12-29-23)


貨物輸出 1,200 万トン超、ゼレンスキー大統領が声明

ウクライナのゼレンスキー大統領は 28 日、黒海における新たなウクライナ産穀物の「輸出回廊」が機能しており、今夏から輸出した貨物が 1,200 万トンを超えたことを声明で明らかにした。 ウクライナ大統領府の公式サイトで公表した。 12 月は特にいい結果を残したとし、その効果は国内経済にも表れているという。 ウクライナは国連とトルコが仲介した食料輸出協定に基づき、黒海を通じた穀物の輸出を行ってきたが、ロシアが今年 7 月に合意への参加を停止。 ウクライナは従来通りの輸出を行えばロシアから船舶が攻撃される恐れがあるため、国連や欧州連合 (EU) などと新たな輸出ルートなどを話し合っている。 (asahi = 12-29-23)


ウクライナの GDP、「ほぼ 5% の成長率」 経済相

ウクライナのスビリデンコ第 1 副首相兼経済相は 28 日、2023 年のウクライナの国内総生産 (GDP) について、「(前年比で)ほぼ 5% の成長率だ」とフェイスブックに投稿した。 「楽観主義者でさえ予測していなかったペースで成長した」としている。 スビリデンコ氏は投稿で「軍への(物資の)供給と国防を維持することができた」と主張。 「主な立役者は、仕事を再開し、破壊されたものをたて直し、新たなビジネスを始めた者たちだ」とたたえた。 ウクライナ国家統計局によると、2 月にロシアによる全面侵攻が始まった 22 年の GDP 成長率は、1991 年の独立以降最低となるマイナス 29.1% だった。 (asahi = 12-28-23)


米、ウクライナに 355 億円の追加軍事支援 … 今回で財源は枯渇か

【ワシントン = 田島大志】 米政府は 27 日、ウクライナに 2 億 5,000 万ドル(約 355 億円)の追加軍事支援を行うと発表した。 今回で米国のウクライナ支援に向けた財源は枯渇する可能性がある。 610 億ドルのウクライナ支援予算を含む追加予算措置は、野党・共和党内の慎重論などから承認の見通しが立っていない。 米国防総省は声明で「ウクライナが自国を守るため、(米国の)議会が新年にできるだけ早く行動を起こすことが極めて重要だ」と強調した。 今回は米軍の在庫から、携行型の地対空ミサイル「スティンガー」や 1,500 万発超の弾薬などを提供する。 (yomiuri = 12-28-23)


ウクライナ軍総司令官、初の記者会見で東部防衛拠点から撤退を認める … 露軍に主導権移ったか

ロシアの侵略を受けるウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官は 26 日、首都キーウで記者会見し、ウクライナ東部ドネツク州の防衛拠点マリンカから自国部隊を郊外に撤退させたことを明らかにし、露軍による制圧を認めた。 マリンカを巡っては露軍が昨年 2 月の侵略開始後、繰り返し攻略を試み、ウクライナ軍が抵抗する構図が続いてきた。 露軍が東部を中心に戦闘の主導権を握りつつある現状を印象づけた。

露軍の主要な「戦果」としては 5 月の東部ドネツク州のバフムト制圧以来となる。 ザルジニー氏は露軍が攻勢を強めるアウディーイウカの戦況に関しても「現状では 2、3 か月以内に露軍に占領される恐れがある」として、厳しい戦いを強いられていることを認めた。 今年のウクライナ軍の大規模な反転攻勢が失敗したことを念頭に、来年については「2023 年と違う年になると断言できる。 そのために我々はあらゆることをする。」と巻き返しに意欲を示した。 米欧からの支援継続にも期待感を表明した。

ザルジニー氏が記者会見を開いたのはロシアの侵略開始後、初めてだ。 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領との不協和音が取りざたされていることが影響した可能性がある。 (yomiuri = 12-27-23)

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ロシア軍、ウクライナ防衛拠点マリンカの大部分を制圧か… 露国防相「完全に解放した」

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相 25 日、ウクライナ東部ドネツク州にあるウクライナ軍の防衛拠点マリンカを「完全に解放した」とプーチン大統領に報告した。 露大統領府が発表し、国営テレビで両氏のやりとりが放送された。 来年 3 月の大統領選で 5 選を目指すプーチン氏の「戦果」として、露国民にアピールする狙いがあるとみられる。

露軍がウクライナ軍の主要な拠点を陥落させたのは、今年 5 月に制圧した同州の要衝バフムト以来になるとみられる。 ウクライナ軍報道官は 25 日、「戦闘は続いている。 我が軍はマリンカにいる。」と国営テレビで否定したが、大部分は露軍が制圧した模様だ。 一方、ウクライナ空軍の司令官は 26 日、ロシアが一方的に併合した南部クリミアのフェオドシアを巡航ミサイルで攻撃し、露黒海艦隊の大型揚陸艦を破壊したと SNS で発表した。

英 BBC ロシア語版によると、ウクライナ政府は 25 日、軍の動員対象とする年齢の下限を 27 歳から 25 歳に引き下げる法案をウクライナ最高会議(議会)に提出した。 兵役や動員逃れに対する罰則も強化する方針だ。 露軍との戦闘の長期化で消耗した兵力を補う狙いがある。 ウクライナ軍は最大 50 万人の追加動員を政府に提案している。 (yomiuri = 12-26-23)


ウクライナ、黒海で 7 隻目の大型軍艦爆破 「ロシア艦隊は小さくなる一方」

ウクライナ空軍は 25 日夜または 26 日未明、同国南部クリミア半島の南東部にあるフェオドシヤ港に空爆を行い、停泊していたロシア黒海艦隊の大型揚陸艦「ノボチェルカスク」を破壊したようだ。 ロシアが 2022 年 2 月にウクライナに侵攻して以来、ウクライナ軍が破壊したロシアの大型軍艦はこれで 7 隻目だ。 大型の軍艦を持たないウクライナとの 1 年 10 カ月に及ぶ激戦で、黒海艦隊は少なくとも巡洋艦 1 隻、水陸両用艦 4 隻、潜水艦 1 隻、補給艦 1 隻を損失。 その他にも、哨戒艇や上陸用舟艇を数隻失っている。

ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官は 26 日朝、フェオドシヤで夜間に起きた爆発の映像をソーシャルメディアで公開。 「ロシア軍の艦隊は小さくなる一方だ」と書き込んだ。 ウクライナは2022 年 4 月にも海軍が巡洋艦モスクワをミサイルで撃沈させている。 オレシチュクは今回のノボチェルカスク攻撃について「空軍のパイロットと関係者全員の細やかな働きに感謝する!」と労った。

ウクライナ空軍が持つ主要な対艦兵器は巡航ミサイルを搭載するスホーイ Su-24 爆撃機のみであることから、何が起こったかは明白だ。 ウクライナ西部から発進して南東に向かった超音速機のスホーイから、巡航ミサイルが発射された。 使われたミサイルは、英国製のストームシャドーかフランス製のスカルプ EG だ。 重量約 1.3 トン、低高度で最長約 250km 飛ぶこれらの巡航ミサイルは、ロシア軍のほころびつつあるクリミアの防空網の中を GPS で誘導され、ノボチェルカスクめがけて進んだ。

どちらのミサイルも二重貫通弾頭(タンデム弾頭)を搭載しており、1 つ目の弾頭は標的に穴を開け、2 つ目は内部から爆破する。 オレシチュクが公開した映像に映る巨大な二次爆発は、ミサイル着弾で全長約 110m のノボチェルカスクに搭載されていた弾薬が爆発したことを強く示唆している。 オスロ大学で兵器の拡散を研究しているファビアン・ホフマンによると、「表面が硬い物を標的とするとき、ストームシャドーは非常に効果的な兵器」だという。 スカルプも同様だ。

ウクライナ空軍は 11 月 4 日にも、縮小するばかりの黒海艦隊を攻撃し、クリミア東部ケルチの桟橋に停泊していたミサイル搭載可能なコルベット艦アスコルドを撃沈させた。 ウクライナ空軍は、スカルプの写真を添えたソーシャルメディアへの投稿で「週末はいかがでしたか?」と皮肉を飛ばした。 その 3 週間前の 9 月 13 日には、ウクライナ軍の Su-24 がストームシャドーまたはスカルプを発射し、クリミア西部セバストポリの乾ドックに入っていた潜水艦と揚陸艦の 2 隻を爆破した。

ウクライナ軍の爆撃機、地上発射の対艦ミサイルやロケット弾、自爆型水上ドローン(無人艇)により、黒海艦隊はおそらく前線に投入できる全戦力の 5 分の 1 を失っている。 ロシアがウクライナに対して仕掛けたこの戦争が終結し、トルコが黒海と地中海を結ぶボスポラス海峡の軍艦の通過を再び認めるまで、ロシア海軍はこの損失を埋めることはできない。

つまり、黒海艦隊は月を追うごとに縮小している。 残っているフリゲート艦やコルベット艦、対潜哨戒艇など 10 隻あまりの艦艇は、ウクライナ軍のミサイルやドローン(無人機)が支配する黒海西部では安全に航行できない。 だが、停泊中も安全ではない。 英国とフランスが巡航ミサイルの供与を続け、ウクライナ空軍がミサイルを発射する Su-24 を保有する限り、ウクライナ軍は少しずつロシア軍の艦船を沈めることができる。 それは黒海艦隊が全滅するまで続く。 (David Axe、Forbes = 12-27-23)


ウクライナ、クリミアの港を空爆 露軍の強襲揚陸艦爆破 = 軍当局者

ウクライナ空軍のミコラ・オレシュチュク司令官は 26 日、ロシアが一方的に併合した南部クリミア半島の港町フェオドシヤを空爆し、ロシア軍の大型強襲揚陸艦ノボチェルカスクを爆破したと通信アプリ「テレグラム」で明らかにした。 「ロシアの艦隊はどんどん小さくなっている。 空軍パイロットや関係者全員のおかげだ。」と投稿した。 爆破の証拠は示していない。 ロイターはこの戦況報告を独自に検証できていない。

これより先にロシアが任命したクリミアのセルゲイ・アクショーノフ首長は、ウクライナ軍の攻撃によりフェオドシヤの港湾区域で火災が発生したがすぐに鎮火したと述べていた。 ロシアの複数の報道機関がテレグラムに投稿したニュース映像では、港湾区域で強力な爆発と火災が発生している。 (Reuters = 12-26-23)


ウクライナ、ロシア軍の Su-34 爆撃機をさらに 1 機撃墜か 橋頭堡への爆撃中断

ウクライナは24日、ロシア空軍で最高の戦闘爆撃機であるSu-34を新たに1機撃墜したと主張した。ウクライナ空軍は2日前、ウクライナ南部ヘルソン州の南方面で3機のSu-34をミサイルによる待ち伏せ攻撃で撃墜したばかりだった。 新たに撃墜した場所はロシアの支配下にある南東部の都市マリウポリの上空だとしている。 3 日で 4 機の Su-34 損失というのは、ロシアがウクライナで拡大して 1 年 10 カ月になる戦争で、ロシア空軍の 1 週間あたりの損耗率としては最悪の部類に入る。

ロシア側にとってさらに不都合なことに、ウクライナ空軍は折しも、オランダから引き渡されつつある米ロッキード・マーティン製(編集注 : 開発元は合併前の米ジェネラル・ダイナミクス) F-16 戦闘機によって大幅に増強されようとしている。

ウクライナ空軍は 22 日正午ごろ、ヘルソン州のドニプロ川のすぐ南で 3 機の Su-34 を撃墜した。 3 機は当時、ドニプロ川左岸(東岸)沿いの集落クリンキにあるウクライナ軍の橋頭堡に衛星誘導の滑空爆弾を投下するため、高高度を飛行していたもようだ。 ドニプロ川の左岸はクリンキ一帯以外はロシア軍が占領している。 ウクライナ側が 3 機をどのように撃墜したのかははっきりしない。 搭乗していた飛行士の大半は死亡したと伝えられる。 注目されるのは、ウクライナが最近、3 基目となるパトリオット地対空ミサイルシステムをドイツから受け取っていたことだ。

パトリオットの PAC-2 型の最大射程は160km に達し、ウクライナ軍が保有する防空ミサイルとしては最も長い。 ロシア軍機はドニプロ川沿いの目標を滑空爆弾で攻撃するには目標から 40km 程度まで近づく必要があるので、パトリオットはヘルソン州の前線からかなり離れた場所からでも容易に迎撃できる。 ロシア軍はウクライナに全面侵攻する前に Su-34 を 150 機弱保有していたとみられる。 確認されている 22 日の 3 機撃墜によって、ウクライナでの損失数は計 25 機になった。 24 日の撃墜が事実だとすれば計 26 機になる。

双発・双座席の Su-34 はロシア空軍にとって、センサーやアビオニクス(航空電子)機器、スマート兵器の組み合わせによって、不意に現れた目標を即座に探知・攻撃する能力をもつ唯一の戦闘爆撃機でもある。 英王立防衛安全保障研究所 (RUSI) のジャスティン・ブロンク、ニック・レイノルズ、ジャック・ワトリングは 2022 年 11 月のリポートで、ロシア空軍が「高価で複雑なこの航空機 (Su-34) のさらなる損失を最小限に抑えようと努めるのはまず間違いない」と指摘していた。

当時、ロシア空軍は 1 機 5,000 万ドル(約 71 億円)する Su-34 をすでに 17 機失っていた。 損失数は今では 25 - 26 機と全体の 5 分の 1 近くに膨らんでいる。 ロシア側の懸念がますます高まっているのは疑いない。 3 機の Su-34 が撃墜されたあと、ロシア空軍がクリンキの橋頭堡に対する滑空爆弾攻撃を少なくとも一時的には停止したらしいのは、理由のないことではないのだ。

シベリアのノボシビルスクにあるチカロフ航空工場は、Su-34 を年に数機しか製造できない。 つまり、ロシアは Su-34 の現在のような損耗率には耐えることができない。 ウクライナ空軍の F-16 が実戦投入され、Su-34 の損耗率がさらに上がれば、それに耐えられないのはいうまでもない。 (David Axe、Forbes = 12-26-23)


ウクライナ軍、南部で Su-34 爆撃機 3 機を連続撃墜 ロシア空軍に最悪級の損害

ウクライナ空軍は 22 日、南部のヘルソン州で、ミサイルによる待ち伏せ攻撃でロシア空軍のスホーイ Su-34 戦闘爆撃機 3 機を撃墜した。 ロシアがウクライナで拡大して 22 カ月目になる戦争で、ロシア空軍にとって 1 日では最悪の部類に入る損害だ。 「ロシア軍の爆撃機、マイナス 3 --。」 ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官はフェイスブックで戦果を軽妙に報告した。

今回の待ち伏せ攻撃は、ウクライナ南部における空戦の転機になる可能性がある。 ヘルソン州では 10 月上旬、ウクライナの海兵隊部隊が広大なドニプロ川をボートで渡る渡河作戦を敢行し、左岸(東岸)沿いの集落クリンキに橋頭堡を築いた。 ヘルソン州のドニプロ川左岸は、クリンキ一帯以外はロシアの支配下にある。 ウクライナ側は効果的な電子戦によって、クリンキ上空で局所的な航空優勢を少なくとも短期間は確保し、ロシア側のドローンを飛べなくした。 しかし、地域全体では依然としてロシア軍が制空権を握ってきた。 ロシア空軍の Su-34 は連日出撃し、クリンキの橋頭堡へ向けて 40km ほど離れた地点から衛星誘導の滑空誘導爆弾を投下してきた。

重いものでは 1t を超える滑空誘導爆弾は予告なしに殺害する。 「命中すれば(即死して)何も感じないとわかっているので、いちばん怖くない。」 オレクサンドルというウクライナ兵は地元メディアのキーウ・インディペンデントにそう語っている。 3 機の撃墜に関して、ウクライナ国家安全保障国防会議のオレクシー・ダニロウ書記は地元ラジオの取材に、滑空爆弾を搭載するスホーイを仕留めるため「長い時間」をかけて準備してきたと明かしている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 11 月 25 日、ヘルソン州の西に位置するオデーサ州に「非常に強力な防空」システムを配備する準備を進めていると述べていた。

その 2 週間後、黒海西部の上空でロシア軍のスホーイ Su-24 戦闘爆撃機が撃墜された。 この Su-24 は港湾都市のオデーサか、ドナウ・デルタのウクライナ側の河川港を攻撃しようとしていたとされる。 撃墜に使われたミサイルは特定されていないが、S-300PS 地対空ミサイルシステムから発射されたものだった可能性がある。 同じころ、クリンキを滑空爆弾で攻撃しようとしていたロシア軍の Su-34 が、ヘルソン州のウクライナ側の防空システムによって撃墜されたという噂もあった。 その真偽はともかく、ロシア側に対するより大きな打撃は 1 カ月後にもたらされることになった。

ウクライナ軍のミサイルによって Su-34 が立て続けに 3 機撃墜され、計 6 人の搭乗員のうち何人かは死亡した。 ロシア軍のミル Mi-8 ヘリコプターが墜落現場に向かい、生存者もしくは遺体の回収にあたった。 「暗黒の日だ - -。」 ロシアのある軍事ブロガーはそう嘆いている。 エンジンを 2 基搭載した超音速戦闘爆撃機である Su-34 は、ロシア軍の装備としては最も新しい部類に入る。 3 年目に入ろうとするウクライナでの戦争では、ますます危険にさらされるようになっている。 ロシア空軍はこれまでに、保有していた 150 機程度の Su-34 のうち少なくとも 25 機を失っている。

ウクライナ側が今回、クリンキ近辺とみられる場所で Su-34 の飛行中隊を撃墜するのに使ったミサイルが何だったのかは、明らかになっていない。 ただ、ウクライナ空軍が今月中旬、3 基目の米国製パトリオット地対空ミサイルシステムをドイツから受け取ったばかりだったのは注目に値する。 今年 5 月 13 日、ウクライナ北部のパトリオットは、ウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスク州でロシア軍の戦闘爆撃機やヘリコプターなど計 5 機を数分のうちに相次いで撃墜している。 搭乗員計 11 人も死亡した。 22 日の待ち伏せ攻撃もパトリオットによるものだったことは十分あり得る。 いずれにせよ、ロシア軍とっては 5 月の連続撃墜に迫る大きな損害になった。

ウクライナの戦争努力にとって最も望ましい結果は、ロシア空軍がクリンキを目標とした滑空爆弾攻撃の作戦規模を縮小せざるを得なくなることだ。 ロシア軍の戦術の変更ひとつでも、橋頭堡に張りついているウクライナの海兵にとっては恩恵になり得る。 滑空爆弾は高高度から放つのが最も効果的だ。 半面、高高度を飛行すると、ロシア軍の爆撃機はウクライナ軍の長射程の地対空ミサイル、つまりパトリオットや S-300 にさらされる。

探知を避けるためにロシア軍機が低高度を飛行するようになれば、滑空爆弾の射程は短くなる。 そのため、操縦士はクリンキにもっと近づいてから、上昇して滑空爆弾を投下せざるを得なくなるかもしれない。 だが接近してきた爆撃機は、ウクライナ軍のより短い射程の防空システムにさらされることになる。 ロシア側は、対応したいのなら急いでやる必要があるだろう。 ウクライナには間もなく、オランダから F-16 戦闘機の第 1 陣 18 機が届くことになっており、クリンキ一帯のウクライナ側の防衛はさらに強固になると見込まれる。 (David Axe、Forbes = 12-25-23)

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