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ウクライナ、ロシア軍がビーチリゾートに隠した秘密ヘリ基地を攻撃 ウクライナ軍が昨年後半にウクライナ南部でロシア軍の防衛線を突破し、ドニプロ川に向かって突進したとき、ロシア軍は慌てて貴重な攻撃ヘリコプターを移転させた。 ロシア空軍の主要なヘリ基地はドニプロ川の南 40km に位置するヘルソン州チャプリンカにあり、間もなくウクライナ軍のドローン(無人機)やロケット発射機の射程内に入りそうだった。 ヘリを守るため、ロシア軍は前線からさらに遠くにある、複数の小さな秘密基地に分散させた。 ウクライナ軍は今、それらの秘密基地を見つけて攻撃している。 だが、長距離兵器の不足により急襲の回数が減る可能性がある。 狙いをしっかり定めた少数のミサイルが壊れやすいヘリに与えるダメージは驚くべきものだ。 ウクライナ軍は秋に米軍の古い M39「ATACMS」弾道ミサイル約 20 発を受け取った。 その直後、南部ザポリージャ州ベルジャンシクと東部ルハンスク州にあるロシア軍のヘリ基地に向けて、重量 2 トン、射程約 160km の M39 を数発発射し、20 機ほどのヘリを破壊したり、ひどく損傷させたりした。 M39 は手りゅう弾サイズの子弾を 1,000 個近くばら撒き、そのうちの1つでも着弾すると精密なヘリを使い物にならなくすることができる。 南部でこうしたリスクを軽減するため、ロシア空軍はチャプリンカを拠点とするヘリの一部を、ドニプロの前線から約 160km 離れたクリミア近くのアラバト砂州にあるリゾート地ストリルコフに移した。 ウクライナの調査グループ「フロンテリジェンス・インサイト」が衛星画像を分析し、ビーチリゾート内のフェンスで囲まれた発着場からおそらく 20 機のヘリが飛んでいる証拠を見つけた。 同グループは「チャプリンカ空軍基地からの退避と移転は、狙われるかもしれないという懸念から、ロシア軍が新たな秘密の基地を設ける必要に迫られていることを示している」と指摘した。 だが、ウクライナ軍は独立系アナリストが入手したものと同じ画像にアクセスでき、さらには北大西洋条約機構 (NATO) が提供するより信頼できる軍事画像や、無線傍受などの他の情報指標にもアクセスできる。 ウクライナ軍はもちろん、ストリルコフの基地を発見した。 伝えられたところによると、ウクライナ空軍のスホーイ Su-24M 爆撃機は 11 月初め、ストリルコフの司令部に向けて巡航ミサイルのストームシャドーを発射。 その 1 カ月後の 12 月 5 日には、ウクライナの情報機関が自爆型ドローンを基地に向けて飛ばし、P-18 レーダーや防空ミサイルシステム、ヘリパッドを攻撃したと報じられた。 ロシアの防空は明らかにこうした急襲を防げなかった。 これは驚くことではない。 ウクライナ軍は秋に、クリミアとその周辺のレーダーや防空システムを標的とした集中作戦を展開。 まず米国製のデコイでロシア軍を混乱させた後、ドローンや空対地・地対地の巡航ミサイルで攻撃した。 これらの攻撃で、ロシア軍がウクライナに設置していた 5 基の長距離地対空ミサイルシステム S-400 のうち 2 基が破壊され、ロシア軍の防空網に穴が開いた。 ウクライナ軍はいま、クリミアや近隣の州にある最も価値ある標的を狙うためにその防空網の綻びを利用することができる。 価値のある標的とは、ストリルコフのヘリ基地などだ。 「ウクライナ軍の兵器の射程が伸びていることを考えると、このパターンは今後も続くだろう」とフロンテリジェンス・インサイトは指摘する。 だが、射程が問題なのではない。 問題なのは供給だ。 ウクライナ軍が深部攻撃に用いる兵器のおそらく半分は同盟国から提供されたものだ。 英国はストームシャドーを、フランスはそれと同じスカルプ EG ミサイルを供与。 米国も M39 と地上発射型小口径爆弾 (GLSDB) を供与することを約束した。 深部攻撃のペースが遅いことから、これらすべてのミサイルが不足していることは明らかだ。 ウクライナ側はこの 6 週間、M39 を発射していないようだが、これはおそらく供与初回分のミサイルをすべて使い果たしたことを示している。 2 回目の供与は予定されていない。 ウクライナ国産の深部攻撃兵器であるドローンに加え、地上発射弾道ミサイルのS-200 やトーチカ弾道ミサイル、ネプチューン巡航ミサイルは効果的だが、供与された兵器に比べると在庫は少ない。 ウクライナ軍が最近、深部攻撃ができるトーチカを新たに入手したのは大きなニュースだった。 ずれ込んでいた供与初回分の GLSDB の到着が間近に迫っており、ウクライナ軍の深部攻撃兵器は増えるだろう。 だが、それはおそらく束の間のことだ。 そして、米国からの追加の大量供与はすぐには見込めない。 いや、もしかすると今後もないかもしれない。 米議会のロシア寄りの共和党議員はこのほど、来年ウクライナに 600 億ドル(約 8.7 兆円)の兵器を支援するという政府の法案を否決した。 (David Axe、Forbes = 12-11-23) ロシアが新設の精鋭部隊、十分な訓練受けず危険地帯に送られる ロシアが昨年 2 月にウクライナに侵攻する前、ロシア軍の精鋭部隊である空挺部隊は 4 個の師団といくつかの独立旅団から成り、計約 4 万人の隊員を擁していた。 だが、あまりに多くの隊員がウクライナで死傷したため、ロシアは 8 月に既存の旅団を拡大・再武装して第 104 空挺師団を新たに編成すると発表した。 ロシアの空挺隊員は本来、通常の陸軍兵士より多くの訓練を受ける。 だが、第 104 師団は早急に編成されたため、十分な訓練を受けられなかった。 そして現在、ドニプロ川左岸(東岸)の戦線で苦戦を強いられている。 この地域では 2 カ月前、ウクライナの海兵隊がドニプロ川をモーターボートで渡り、大砲やドローン(無人機)、徹底的な無線妨害の支援を受けながら、ロシア軍が支配する左岸の集落クリンキに橋頭堡を確保した。 ウクライナ側はこの新たな前線から突破口を開き、同国南部からロシア軍を排除したいと考えている。 現地に展開するロシアの海軍歩兵部隊は陸軍の自動車狙撃連隊の加勢を得たが、ウクライナの海兵隊を追い払うことはできなかった。 そのため、9 - 10 月に大急ぎの訓練を受けた新設の第 104 師団がウクライナ南部に配備され、戦闘を主導した。 「主な期待は、われわれと海軍歩兵部隊にかけられることになる」と、第 104 師団のある隊員はソーシャルメディア上に出回った手紙に書いている。 ただ、大きな期待はかけられない。 第 104 師団、あるいは近くにいる空中強襲部隊による最初の攻撃は、ウクライナ軍がロシア側の BMD 戦闘車を数両を破壊したため失敗に終わったようだ。 ウクライナ軍がクリンキとその周辺に最強のドローンや大砲、防空、その他の支援部隊を集中させていることは今となっては明らかだ。 ただ、こうした部隊の集中投入により、東部のアウジーイウカやバフムートなど他の方面にいる部隊が陣地を守る作戦で受ける支援は減る。 「最初に目に飛び込んでくるのは砲撃戦で、客観的に見れば、ナチスの方にはるかに分がある」と前述の隊員は書いた。 ロシアのプロパガンダではウクライナ人は「ナチス」と呼ばれる。 実際には、ウクライナは民主主義国家、ロシアは権威主義国家で、ロシア軍は占領地で市民に対し戦争犯罪を犯しているのだが。 隊員の手紙によると、クリンキ周辺では、ウクライナ軍がロシア軍よりも頻繁かつ正確に砲撃を行っている。 「砲弾は不足していないのだろう。」 ウクライナ軍のクラスター弾は特に危険で、「われわれの部隊がたまに歩くところ」に降り注ぐのだという。 ウクライナ軍の自爆型ドローンは四六時中、いたるところを飛行している。 「カミカゼドローンは巨大な破壊区域を作り出す」と隊員。 ドローンの大群が飛ぶ中で戦うことはできるが、負傷者を救出するのは戦うよりずっと難しい。 隊員は、負傷したロシア兵が 2 日間戦場に横たわって救出を待っていたことに言及した。 ウクライナ側が大砲やドローンという点で有利であることだけが問題ではない、と隊員は主張した。 また、クリンキ周辺のロシア軍の指導力と協調性の欠如について不満を言った。 「上級の司令官は一部の部隊と意思疎通を図ることができない。 かなり不思議だ。」 だが、不思議ではない。 どの師団もわずか数カ月の訓練で、経験豊富な敵との大規模な戦闘に完全に対応できるようになるとは思っていないはずだ。 それでもクリンキの戦いはロシアの 5 個目の空挺師団に有利に傾くかもしれない。 米連邦議会の親ロシアの共和党議員がウクライナへの軍事支援の予算を拒否し続けており、ウクライナへの援助は急減する可能性がある。 だが、ロシア軍がクリンキで勝利するとしたら、それは準備が周到だったことが理由にはならないだろう。 (David Axe、Forbes = 12-10-23) ゼレンスキー氏「冬でも敵に主導権握らせない」 ウクライナのゼレンスキー大統領は 8 日夜のビデオ演説で、ロシア軍との冬季の戦闘に触れて「冬の今でも、たとえそれがどれほど困難であっても、我々の国の任務は、強さを示し、敵に主導権を握らせず、敵を強化させないことだ」と述べた。 ゼレンスキー氏は演説で、同日のウクライナ軍司令官を集めた会議で、ウクライナ北東部ハルキウ州のクピャンスクや東部ドネツク州、南部の戦況について報告を受けたとし、「すべての兵士と指揮官の回復力と勇気に感謝する」とねぎらった。 (asahi = 12-9-23) ロシアが 19 発の巡航ミサイル、ウクライナは 14 発を撃墜 ウクライナ空軍のイフナト報道官は 8 日、ロシア軍による同日朝のミサイル攻撃について、戦略爆撃機 Tu95 から 19 発の巡航ミサイルが発射され、ウクライナ軍はうち 14 発を撃墜したと地元テレビで語った。 ウクライナのニュースメディア「ウクライナ・プラウダ」が伝えた。 戦略爆撃機は計 7 機で、ロシア南部サラトフ州上空から何回かに分けてミサイルを発射したという。 ミサイルは当初中部ドニプロペトロウスク方面へ発射され、後に一部は首都キーウに向けて発射された。 キーウ州当局は首都を狙ったミサイルはすべて同州上空で撃墜されたとしている。 ただ、破壊されたミサイルの残骸が同州内の数カ所で住宅に落下したとの情報があり、被害を確認中という。 (asahi = 12-8-23) ウクライナ中部にミサイル攻撃 1 人死亡 ウクライナ中部ドニプロペトロウスク州のリサク知事によると、州都ドニプロの東約 60 キロのパブロフラド市が 8 日朝、ロシア軍のミサイル攻撃を受け、住民 1 人が死亡した。 負傷者 4 人が病院に運ばれ、うち 2 人が重体という。 同州南部では、ドニプロ川沿いのニコポリ周辺が同日朝、対岸のロシア軍占領地から砲撃を受けた。 リサク知事は死傷者はいなかったとしている。 ウクライナ空軍によると、ロシア軍は同日、自国領土からウクライナ北東部と中部へ自爆型攻撃ドローン(無人航空機)や地対空ミサイル「S300」を発射。 戦略爆撃機 Tu95 からは巡航ミサイルも発射した模様だ。 北東部ハルキウの地元当局によると、「S300」とみられるミサイルが市内の民間施設を直撃し、36 歳の女性と 25 歳の男性が負傷した。 (asahi = 12-8-23) 激戦地アウジーイウカで戦車同士が一騎打ち ウクライナ軍は最高の戦車旅団投入か ロシアがウクライナで拡大して 22 カ月目に入っている戦争でも、戦車同士が戦うというのはまれだ。 だが、まったくないというわけではない。 最近、ウクライナ東部ドネツク州アウジーイウカのすぐ北と見受けられる戦場で、戦車対戦車の対決があった。 ウクライナ軍のドローン(無人機)が上空から見守るなか、ウクライナ軍の T-64 戦車とロシア軍の T-72B3 戦車が互いに相手のほうにじりじりと近づいていく。 いずれも旧ソ連で設計された古い 2 両の戦車は、樹林帯の間から、こちらもほぼ同じものと言っていい主砲の 125mm 滑空砲を数発応酬する。 だが互いに外し、最終的にロシア軍の T-72B3 は煙幕を張って後退する。 すると、狙いすましていたらしいウクライナ軍の自爆ドローンが T-72B3 に突っ込む。 T-72B3 は砲塔に傷を負いながらも、どうにか生き延びたようだ。 今回の戦車対決が注目に値するのは、ひとつにはやはり珍しいからだ。 ウクライナの戦場では、戦車は通常、敵の塹壕(ざんごう)に対する歩兵の攻撃を先導するか、ある程度離れた距離から敵の陣地に向けて射撃を行うという運用をされている。 とくに後者のような使い方が多い。 注目すべき理由はもうひとつある。 それは、ウクライナ側の T-64 は第 1 独立戦車旅団の所属かもしれないという点だ。 第 1 戦車旅団はウクライナ軍に 5 個ある戦車旅団のなかで最も実戦経験が豊富で、ロシアによる全面侵攻の初期にウクライナ北部の都市チェルニヒウを防衛したことでも有名だ。 この防衛戦では、首都キーウの北 100km ほどに位置するチェルニヒウの周辺の森に潜んだ第 1 戦車旅団の T-64BV (T-64 の改良版)が、付近を通過するロシア軍の縦隊を近距離から攻撃した。 「ウクライナ軍の戦車乗員は(ロシア側よりも)よく訓練されていたうえ、自軍の装備でも対抗できる近距離の交戦で、T-64 の自動装填装置が高速だったこともあり、不意をつかれたロシア軍部隊に多大な損害を与えることができた。」 英国王立防衛安全保障研究所 (RUSI) の研究で、著者のミハイロ・ザブロツキー、ジャック・ワトリング、オレクサンドル・ダニリョク、ニック・レイノルズはそう解説している。 6 週間にわたるチェルニヒウ防衛戦は成功したものの、第 1 戦車旅団も大きな損害を被った。 同旅団の兵士 2,000 人のうち、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が戦功をたたえて表彰したのは 1,000 人にのぼる。 ウクライナ軍の反撃で 2022 年 3 - 4 月にロシア侵略軍がウクライナ北部から撤退したあと、第 1 戦車旅団は引き揚げて長期の休養と補充に入った。 2022 年夏、第 1 戦車旅団はウクライナ東部ドネツク州で戦闘に復帰する。 以後およそ 1 年半、隷下の大隊を展開・転進させて敵の攻撃を頓挫させ、味方の反転攻勢を支援してきた。 この秋、南部でのウクライナ軍による反攻が鈍ると、ロシア軍は初冬の恒例になりつつある東部での攻勢のために兵力を集中させた。 ロシア軍の数個旅団が、ドネツク市のすぐ北西に位置し、ウクライナ軍の防御拠点であるアウジーイウカに対する攻撃を始めた。 2 カ月におよぶアウジーイウカの戦いで、ロシア軍は大きな犠牲を出している。 これまでに数百両の車両を失い、人員も数千人以上失った可能性がある。 一方、ウクライナ軍の守備隊の損耗ははるかに小さい。 だが、ロシア側が何千人もの命を犠牲にするのをいとわず、ウクライナ側はそうするわけにはいかない限り、ロシア軍の「人海戦術」は功を奏することになる。 昨年、東部ルハンスク州セベロドネツクで、あるいは今春、ドネツク州バフムートでしたように、ウクライナ軍の指揮官はどこかの時点で、廃墟と化しているアウジーイウカを保持するに値しないと判断するかもしれない。 いまはその時点ではない。 アウジーイウカはもともと第 110 独立機械化旅団などが守ってきたが、ウクライナ軍は第 1 戦車旅団や、西側製のハイテク装備を運用する第 47 独立機械化旅団など、数個旅団の大隊を増援に送り込んだ。 アウジーイウカの北とみられる場所で T-72B3 と対決した T-64 は、第 1 戦車旅団の戦車だった可能性がある。 もしそうだったとすれば、ウクライナが西側製戦車(ドイツ製のレオパルト 1 やレオパルト 2、英国製のチャレンジャー 2、米国製の M1 エイブラムスなど)を何百両と受け取っているにもかかわらず、ウクライナ軍最高の戦車旅団はいまだに古い戦車を使用していることが確認されたことになる。 ロシアが戦争を拡大した 2022 年 2 月時点で、第 1 戦車旅団は、現代的な光学機器や衛星ナビゲーション、新型の無線装置などを備えた T-64BV Obr. 2017 型を中心に、T-64 を 100 両かそこら保有していた。 ウクライナのハルキウ戦車工場はその後、チェコのパートナー企業と緊密に連携して、ウクライナ軍の T-64BV を、光学機器や無線装置をさらに改良したより新しい Obr. 2022 型に更新してきた。 その数は数百両に達する可能性もある。 第 1 戦車旅団は、改良された光学機器やデジタルシステムがない、2017 型以前のオリジナル型数両を含め、いくつかのモデルの T-64BV を組み合わせて使っているもようだ。 ウクライナ軍の領土防衛旅団がロシア軍からの鹵獲品の T-62 戦車を使い続ける限り、重量 42t、乗員 3 人の T-64 をウクライナ軍で最低の戦車と呼ぶわけにはいかない。 もちろん、ウクライナ軍で最高の戦車というわけでもない。 とはいえ、第 1 戦車旅団にとって T-64 はよく知った戦車であり、戦術を編み出したり兵站を整えたりしてきた相棒だ。 そして T-64 は、少なくとも、より新しい T-72B3 との一騎打ちでは、互角に渡り合えることを示してみせた。 (David Axe、Forbes = 12-8-23) 兵士の数も武器の数もロシア軍に劣る … 「地獄」の前線、ウクライナ兵が BBC に証言 ウクライナ軍は兵士の数でも、武器の数でもロシア軍に劣っている。 前線に立つウクライナ兵の 1 人は、脈々と流れるドニプロ川の東岸に築いた拠点に必死にしがみつこうとする自軍の厳しい状況について BBC に語った。 6 カ月前に始まったウクライナの反転攻勢の一環で、数百人のウクライナ兵がこの地域に入った。 ロシア軍の容赦ない砲火を浴びながら、ウクライナ兵はロシア軍が占領してきたこの場所で数週間を過ごした。 ドニプロ川東岸のクリンキ村周辺で橋頭堡(きょうとうほ、橋のたもとに設ける陣地)を築こうとしていたからだ。 BBC は今回証言したウクライナ兵の身元を保護するため、名前を伏せている。 私たちは、メッセージングアプリを介して彼から証言を得た。 そこには、部隊のボートが川から吹き飛ばされたことや、経験の浅い援軍のこと、そしてウクライナ軍の司令官たちから見捨てられたと感じたことがつづられていた。 また、ウクライナ軍がロシアの侵略に対抗し始めてから 2 度目の年末が近づく中、緊張が高まっていることも浮き彫りにした。 ウクライナ軍は安全上の理由から、同地域の状況についてはコメントしないと、BBC に伝えた。
それでも、数百人のウクライナ海兵隊員は、ドニプロ川西岸の高台から発射されたウクライナ軍の砲撃にも助けられ、足場を固めることができた。 ドニプロ川はウクライナ南部ヘルソン州のロシア占領地域と、ウクライナ支配地域を隔てている。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この反転攻勢はさらに大きな何かの始まりだと、盛んに強調してきた。 ウクライナ軍参謀本部は 12 月 3 日、自軍がドニプロ川東岸の陣地を維持し、「敵の後方部隊に砲火を浴びせ、損害」を与えていると、日々の報告の一環として述べた。 しかし、この兵士の証言は、戦況をめぐりウクライナ政府と将官たちが分裂していると露呈する。 ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は 11 月 1 日付の英誌エコノミストに対して、「第 1 次世界大戦と同じように、我々はこう着状態に陥るような技術水準に達している」と語った。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はザルジニー氏の発言を即座に非難し、戦場で手詰まり状態にはなっていないとした。
ウクライナ軍がドニプロ川の東岸に到達したことで、ロシア軍が部隊の一部を前線の他地域から移転せざるを得なくなったことは間違いない。 例えば、ロシア軍が厳重に守りを固めているザポリッジャ州の陣地などからだ。 ウクライナ政府は同州で、もっと早くに突破口が開くことを望んでいた。 BBC ロシア語は最近、この地域の川岸を守るロシア部隊の数人に話を聞いた。 ロシア兵たちは、あの場所へ向かうのは「自殺行為」だと語った。 戦闘ですでに多くの兵士を失っており、ウクライナ軍を拠点から動かすのは無理だと。 一方でウクライナ軍は、ロシア軍の補給路を標的にし、民間人を砲撃から守れるようになるまで、ロシア軍をドニプロ河岸から後退させたいとしている。 つまり、ロシア兵もウクライナ兵も、多くの砲火を浴びているということだ。
前線のあらゆる地点と同様に、ここでの作戦も消耗戦と化している。 ロシアが徴集兵や、恩赦と引き換えに受刑者を従軍させることで軍勢を保つ一方で、ウクライナは必要な人員の確保に苦慮している。 BBC の最近の調査では、ロシアによる全面侵攻が始まって以降、徴兵を回避するために 2 万人近い男性がウクライナを出国していることが明らかになった。
クリンキ村はがれきと化している。 1 年前に、ヘルソン市やハルキウ州の複数地域が解放された時のような、はっきりとした安堵感はいまのところ、再現されていない。 それどころか、ウクライナの勝利は、荒廃し放棄された土地の小さな区画にとどまっている。 この状況のため、西側諸国に長期的支援を求めるゼレンスキー大統領が、その訴えを政治的に売り込むのは難しくなっている。 しかしそれでも、BBC に匿名で証言した兵士の戦いはこれからも続く。
「ロシアの第 2 防衛線突破した」 ウクライナ国防相、反攻を強調 【キーウ】 ウクライナのウメロフ国防相は、反転攻勢を進めるウクライナ軍が 3 層から成るロシアの防衛線のうち第 2 防衛線を突破したとの認識を示した。 「われわれは第 2、第 3 防衛線の間にいる」と説明し、領土奪還を続けていると強調した。 ウクライナのメディアが 6 日伝えた。 ウメロフ氏は「われわれには 2024 年に向けた計画がある」と述べ、反攻継続を表明。 ロシアが 14 年に併合したウクライナ南部クリミア半島を含む全土を取り戻すことが目標だとした。 (kyodo = 12-7-23) ゼレンスキー氏、G7 会合で各国首脳の名を挙げ謝意 … 「欧州の命運を握っている」と支援疲れに危機感 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 6 日、先進 7 か国 (G7) 首脳のテレビ会議で演説し、自由主義陣営の団結とウクライナへの支援継続を訴えた。 ゼレンスキー氏は、ロシアの侵略について「ウクライナだけでなく欧州の命運を握っている」と強調し、米欧で広がる「支援疲れ」に危機感を示した。 「ロシアは自由主義社会の統合が崩壊することだけを望んでいる」と訴え、ウクライナへの支援を維持するよう各国に要請した。 プーチン露大統領については、来年 3 月に予定される大統領選で再選を目指すため「戦果を巡って高まる市民の不満を抑えようと前線で攻勢を強めている」との見方を示した。 「我々の戦士は耐えている。 プーチンは今年いかなる作戦にも勝利していない。」と自軍の成果もアピールした。 演説の冒頭で、各国首脳の名前を挙げて謝意を示し、「G7 の枠組みが効果的である限り人命は失われない」と G7 との連携の重要性を強調した。 (yomiuri - 12-7-23) ロシアの大規模ドローン攻撃からウクライナの空を守る「マートレット」ミサイルとは
ロシア軍の大規模なドローン攻撃が続くなか、ウクライナ軍はイギリスから供与を受けたレーザー誘導式ミサイル「マートレット」を使って撃墜しているようだ。 12 月 2 日付の英タイムズ紙によれば、ウクライナ軍は 11 月下旬に首都キーウを狙って飛来したロシア軍の自爆型ドローン「シャヘド」の大群に、マートレットで対抗したという。 キーウ地域を担当するウクライナ軍の司令官は同紙に対し、マートレットでロシア軍のドローン計 213 機(自爆型ドローン「ランセット」や偵察ドローン「オルラン」も含む)を破壊したと語った。 ロシアによるウクライナへの本格侵攻が始まって 21 カ月。 ロシア軍はウクライナのエネルギー関連施設や物流拠点を狙ったミサイル攻撃やドローン攻撃を繰り返しており、冬を迎えたウクライナにとっては防空能力の強化が最優先だ。 イギリスがウクライナに対して密かにマートレットを供与していたらしいことが明らかになったのは 2022 年 4 月半ば。 ウクライナ軍の第 95 独立空中強襲旅団防空部隊がこれを使い、ロシア軍の偵察ドローン 1 機を破壊したと報じられたのだ。 ある防衛関係者はタイムズに対して、マートレットは当時、防空支援の一環としてウクライナに供与されたと明かした。 姉妹ミサイルの「スターストリーク」と共に供与され、2022 年 3 月末からウクライナ軍が運用を開始した。 ■ 地・海・空のどこからでも発射可能 英国防省は 2022 年 10 月の声明で、ウクライナの防空体制を充実させておくことが「これまでもこれからも、イギリスの軍事支援における優先事項」だと述べた。 「我々はこれまでも、携帯式防空ミサイルシステムのスターストリークを搭載した装甲車や数百発にのぼる地対空ミサイルなどさまざな防空システムを提供してきた。」 また前述の防衛関係者は、「マートレットはイギリスが供与した発射台と互換性があるし、マートレットのような軽量多目的のミサイルは無人機を攻撃するのに適している」と述べた。 マートレットは軽量の精密打撃ミサイルで、空、海と地上のどこからでも発射できる多目的型。 製造元によれば、装甲車両や無人機をはじめ、無数の脅威を排除する能力がある。 軍事専門家のデービッド・ハンブリングによれば、マートレットは元々、海上で船舶を破壊するための兵器として開発されたが、地上の標的を攻撃するのにも効果を発揮した。 また製造元のタレス社は、マートレットは「都市環境向け」に設計されているため「巻き添え被害が少ない」としている。 ■ 値段は FPV ドローンの 50 倍 ハンブリングは、「マートレットはウクライナにとって便利な追加能力であり、数多く入手できればできるほどいい」と指摘。 だがウクライナが既に数多く保有し、マートレットと同じような役割を果たすことができる FPV ドローンに比べると 50 倍もの値段になる。 「マートレットの方が間違いなく効果的で、ウクライナとしては是非とも入手したいだろう。 少数のままではその効果も限定的だ。」 11 月下旬、ロシアが同国内の 2 カ所からウクライナに向けて計 75 機という侵攻開始後で最大規模のドローンを発射。 ドローンはキーウを含む少なくとも 6 つの地域に飛来したが、ウクライナ軍はそのほとんどを撃墜した。 ウクライナの当局者や西側の専門家は厳しい秋と冬の訪れを前に、ロシアが 2022 年と同様に今年の冬も、激しいミサイル攻撃やドローン攻撃を繰り返すと予想する。 ウクライナ空軍のユリイ・イフナト報道官は 10 月、昨年よりもさらに大規模なドローン攻撃を予想していると述べ、また 2023 年は 9 月だけで 500 機のシャヘドが飛来したと明らかにした。 (エリー・クック、NewsWeek = 12-7-23) ウクライナ、オデーサ狙った Su-24 戦闘爆撃機を撃墜 パトリオット使用か ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11月 25 日、首都キーウで開かれた食料安全保障に関する国際サミット後の記者会見で、ウクライナで最も重要な穀物輸出港を擁する南部オデーサ州で「非常に強力な防空」システムの配備を進めていると表明していた。 それははったりではなかった。 2 週間後、ウクライナ軍は黒海北西部のズミイヌイ(スネーク)島付近の上空で、オデーサを攻撃しようとしていたとされるロシア軍の Su-24 戦闘爆撃機をミサイルで撃墜した。 乗員 2 名・エンジン 2 基のこの超音速機を撃ち落とすのに使われたミサイルは、現時点で特定されていない。 Su-24 が積んでいた弾薬が何だったのかも、よくわからない。 この可変後退翼機を撃墜した防空システムが何だったのかについては、推測はできるものの、やはりはっきりとはわからない。 いずれにせよ、ウクライナ軍は南部の防空を増強することで、ロシア軍に対して優位性を確保した可能性は十分ある。 端的に言えば、ウクライナ軍が現在オデーサに配備している防空システムの射程は、ロシア黒海艦隊がこれまでオデーサに向けて撃ち込んできた対地ミサイルの射程よりも、長くなっている可能性があるということだ。 ウクライナ軍は撃墜の事実をソーシャルメディアで認めた。 「ズミイヌイ島のエリアでロシア軍の Su-24M 爆撃機を破壊したことをお知らせする。 この爆撃機は Su-30SM 戦闘機の掩護を受けながら、オデーサ(州)南部にミサイル攻撃を仕掛けようとしていた」とウクライナ空軍は通信アプリのテレグラムに投稿している。 投稿では、この Su-24 は海底で黒海艦隊の巡洋艦モスクワと合流したとも皮肉った。 黒海艦隊の旗艦だったモスクワは 2022 年 4 月、ウクライナ軍の対艦ミサイルを食らって沈没した。 「巡洋艦モスクワは近々、航空母艦になりそうだ!」とも揶揄した。 この秋より前は、ウクライナ空軍は旧ソ連製の S-300 地対空ミサイルシステムでオデーサを守っていた。 S-300 の射程は標準仕様で 80km ほどだ。 ズミイヌイ島はオデーサの南 145km ほどに位置する。 したがって黒海艦隊の Su-24 はこれまで、ズミイヌイ島のあたりまで出てくれば、Kh-59MK2 巡航ミサイルなどを使うことでオデーサ州各地の目標を攻撃できた。 だが、それはもはや不可能だ。 オデーサから発射されるウクライナ軍のミサイルは、ズミイヌイ島あたりのロシア軍機も脅かせるようになった。 今回の撃墜は、オデーサに新たに配備された防空システムが、ウクライナ軍にとって貴重な米国製パトリオット地対空ミサイルシステムであることを強く示唆する。 パトリオットの PAC-2 弾は射程が 160km ある。 (David Axe、Forbes = 12-7-23) ウクライナ軍のおばけドローン「バーバ・ヤハ」は夜中にやって来る ウクライナ南部ヘルソン州のドニプロ川左岸(東岸)沿いにある集落クリンキの上空では日中、ウクライナ軍の自爆型 FPV (一人称視点)ドローン(無人機)が何機も飛び回っている。 夜中、これらの FPV ドローンはどこかへ消えていく。 そして、「バーバ・ヤハ」が隠れ家を抜け出してうろつき始める。 バーバ・ヤハはウクライナ軍の大型のヘキサコプター(回転翼が 6 つの航空機)ドローンだ。 赤外線カメラを備え、最大 15kg のロケット弾頭を搭載できる。 名前はスラブ民話に登場する魔女にちなむ。 クリンキでは 6 週間前、ドニプロ川を渡ったウクライナの海兵部隊が橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。 ロシア軍の連隊や旅団はウクライナの海兵たちを排除しようと試みてきたものの、これまで失敗している。 バーバ・ヤハは夜間、そうしたロシア軍部隊に取り憑き、野営地の上空に飛んでいっては樹冠の間から爆弾を落としている。 ウクライナ軍によるクリンキでの作戦では、電子戦部隊と連携したドローン運用部隊が、決定的に重要な戦力になっていると言っていいだろう。 この作戦は外国の観察者やロシア側も驚かせ、ウクライナ軍が夏に開始した反転攻勢をこの方面で継続させる格好にもなっている。 反攻はほかの方面では数週間前に終わっている。 第 36 独立海兵旅団の海兵たちがドニプロ川をモーターボートで渡り、一連の激しい歩兵行動によってクリンキからロシア兵を駆逐し出すのに先立って、ドローン部隊と電子戦部隊は戦場の準備に懸命に取り組んだ。 両部隊は無線妨害装置を設置してロシア側のドローンを飛行できなくするとともに、ロシア軍の無線妨害装置を破壊してウクライナ側のドローンを常時運用できるようにした。 ドローン操縦士、情報分析官、砲兵が緊密に連携する迅速なキルチェーン(目標の探知から破壊にいたる一連の措置)も構築。 ドローンによる襲撃を重ね、クリンキ上空で局所的な航空優勢を確保した。 たしかに、ロシア空軍は射程 40km の滑空弾を使ってクリンキをたたくことはできる。 だが、クリンキのすぐ上の空域はウクライナ側が支配している。 「彼ら(ウクライナ側)は近づくことも立ち去ることも許さない」とロシア側のある観察者は記している。 「FPV (ドローン)がたちまち飛んでくるか、ウクライナ軍の迫撃砲が稼働する。 わが軍の迫撃砲がどこかで射撃すれば、そこにウクライナ側からあれやこれやのものが飛んでいく。」 「彼らの『鳥』は回転木馬のように入れ替わり立ち替わり飛来し、ブーンという音が森全体に鳴り響いている」と同じ人物は書いている。 「彼らは道路を支配し、人を観察し、車両には FPV がすぐに突っ込んでくる。」 ただ、クリンキ周辺のロシア兵も、夜間はドローンの絶え間ない攻撃からある程度解放されているだろう。 ウクライナ軍もロシア軍もこれまで、小型の赤外線カメラを搭載した夜間用の FPV ドローンを試しているが、現状ではまだ珍しい。 主にカメラが高価なのが理由だ。 FPV ドローンは目標に突っ込んで爆発するので、いわば使い捨てになる。 500 ドル(約 7 万 4,000 円)の FPV ドローンに 300 ドル(4 万 4,000 円)の赤外線カメラを追加するのは、ウクライナの 1000km 近くにわたる前線で両軍とも 1 日に何百機もの FPV ドローンを消費している以上、財政的にも兵站上も大きな課題になる。 しかし、繰り返し使用するドローンなら、小型赤外線カメラのコストは見合うものになる。 ウクライナ軍が、1 機 1 万 2,000 ドル(約 180 万円)する「カジャン(コウモリ)」のような重量級のヘキサコプタードローンに赤外線カメラを搭載するのは、理にかなっているということだ。 日が沈み、FPV ドローンが基地に戻ってくるころ、バーバ・ヤハは飛び立っていく。 あるロシア兵は、最近あったバーバ・ヤハの襲撃の結果を撮影した動画を投稿している。 その中でこの兵士は、大破した 2 台の車両のそばを歩きながら、地面にある RPG (ロケット推進式擲弾)の不発弾頭を映し出している。 「これが俺たちに落とされているものだ。」 バーバ・ヤハは全知全能ではない。 彼女は深い木々の奥までは見通せないので、弾頭をやみくもにばらばら落とすこともある。 ウクライナのドローン指揮官であるロベルト・ブロブディは、動画を投稿したロシア兵に皮肉たっぷりに感謝している。 「樹冠に遮られるので、(ドローンの)操縦士が結果を知るのはなかなか難しい。」 バーバ・ヤハはうるさいとも伝えられる。 彼女がやって来るときにはロシア兵たちも気づくのかもしれない。 もっとも、バーバ・ヤハの音が聞こえるのと、バーバ・ヤハを飛べなくするのは別のことだ。 「問題はわが軍の電子戦機器が存在しないか、彼ら(ウクライナ側)がまったく問題にしていないことだ」と前出のロシア側観察者は述べている。 「(無線妨害用の)スーツケースはあり、かなり優れたものだということだ」とこの人物は伝えている。 もしクリンキのすべての家屋、ロシア側が支配する樹林帯に電波妨害装置が設けられ、ウクライナ側のドローンを妨害するがロシア側のドローンは妨害しないように、タイミングよくオン・オフを切り替えられるなら「おとぎ話のように(うまく)いくのだが」とも続けている。 おとぎ話は現実ではない。 しかし、ウクライナ軍のバーバ・ヤハのほうはありありと存在し、活動している。 (David Axe、Forbes = 12-7-23) |
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