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ウクライナ北部にミサイル攻撃 子ども含む 7 人死亡 148 人けが

ウクライナ北部で 19 日、ロシア軍のミサイル攻撃があり、ウクライナ当局によりますと、子どもを含む 7 人が死亡、148 人がけがをしました。 ウクライナ内務省は 19 日、北部チェルニヒウの中心部にある劇場にロシア軍のミサイル攻撃があったと発表しました。 この攻撃で 7 人の死亡が確認され、このうち 1 人は 6 歳の女の子だということです。 また、子どもを含む 148 人がけがをしているということです。

攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は 19 日、SNS に声明を投稿し、「普通の土曜日だったが、ロシアが苦痛と喪失の日に変えてしまった」と厳しく非難しました。 その上で「世界全体でロシアのテロに対抗するためにもっと努力しなければならない。 私たちの生活を守るためにも努力が必要だ。」として、国民に団結を呼びかけています。 一方、ロシア国防省は 19 日、ロシア北西部ノブゴロド州の軍用飛行場で無人機による攻撃があり、駐機場で火災が発生し航空機 1 機が損傷したほか、首都モスクワ近郊やウクライナとの国境付近でも無人機攻撃が仕掛けられたと発表しました。 モスクワやその周辺ではこのところ無人機の飛来が相次ぎ、ロシア側は警戒を強めています。 (NHK = 8-20-23)


ゼレンスキー大統領、スウェーデン訪問 戦闘機供与を協議

ゼレンスキー大統領は 19 日、スウェーデンの首都ストックホルムを訪問して、クリステション首相と首脳会談を行いました。 会談のあとの共同記者会見でゼレンスキー大統領は、スウェーデン製の戦闘機グリペンがウクライナに供与される可能性について、「今後のステップについて詳細に意見を交わした」と述べ、スウェーデン側との協議が始まったことを明らかにしました。 また、ゼレンスキー大統領は「グリペンがあれば、われわれの自由はより確実に守られると確信している」と述べて、今後実際に供与されることへの期待を示しました。 ウクライナ政府は欧米各国に対して戦闘機の供与を求めていて、アメリカの 16 戦闘機の供与へ向けて、デンマークとオランダの主導でウクライナ兵への訓練が行われています。 (NHK = 8-20-23)


ウクライナ、F16 戦闘機の訓練開始 終了には時間 = 国防相

[キーウ] ウクライナのレズニコフ国防相は 19 日、米国製戦闘機「F16」の訓練が始まったと述べた上で、終了までには少なくとも 6 カ月かかるという見通しを示した。 それ以上の時間を要する可能性もあるとした。 米高官は 17 日、ウクライナへの F16 供与について、導入に向けた訓練が終了した時点でデンマークとオランダから供与することを米国が承認したと明らかにした。 レズニコフ氏はテレビのインタビューで、操縦士の訓練は最低 6 カ月と考えられるが、エンジニアや整備士の訓練にどれだけの時間がかかるかはまだ分からないと指摘。 妥当な見通しは最低 6 カ月だが、それ以上かかっても失望するべきではないと語った。 訓練がいつどこで行われているのかについて詳細は明かさないと述べた。 (Reuters = 8-20-23)


モスクワ近郊など 4 か所、ミサイルや無人機攻撃を受ける ロシア国防省が発表、ウクライナのテロと非難

ロシア国防省は 19 日、首都モスクワ近郊やクリミア半島など 4 か所が、ミサイルや無人機による攻撃を受けたと発表しました。 ロシア国防省は 19 日、クリミア半島がミサイル攻撃を受けたと発表しました。 その後、北西部ノブゴロド州で軍用飛行場が無人機の攻撃に遭い、火災が発生して航空機1機が損傷したと明らかにしました。 また、ウクライナ国境のベルゴロド州とモスクワ市北西のモスクワ州に無人機が飛来し、墜落させたと発表しました。 いずれもケガ人はないとした上で、ウクライナによるテロ攻撃だと非難しました。 無人機などによる攻撃についてのこの日のロシア側の発表は 4 回に上っていて、ウクライナ側が無人機を使った攻勢をさらに強めている可能性があります。 (日テレ = 8-20-23)


ウクライナ反攻、目標達成できず 米情報機関分析、支援巡り不和も

【ワシントン】 米紙ワシントン・ポストは 17 日、ロシアに侵攻されたウクライナの反転攻勢について、同国南東部の重要拠点メリトポリを奪還する目標は達成できないと米情報機関が分析していると報じた。 関係者の話として伝えた。 ロシア軍の地雷原突破に苦戦しており、多額の軍事支援を続ける欧米とウクライナの間で不協和音を生みそうだとしている。 メリトポリは南部ザポロジエ州にあり、ロシアが実効支配するクリミア半島と侵攻後に占領した地域を結ぶ、幹線道路と鉄道が走る。 ウクライナ軍は同市から 80 キロ以上離れた州内のロボティネを起点に奪還を目指すが、数キロ手前までしか到達できないと米情報機関は分析しているという。 (kyodo = 8-19-23)


ウクライナ軍の M-55S 戦車、想定外の激戦で奮闘 露軍の進撃阻む

ウクライナ軍はロシアの占領軍に対する反転攻勢の準備を進めていた時期に、西側の支援国から寄付された重装備の大半を、新たに編制した旅団に配備した。 なかでも、陸軍の第 47機械化旅団は多数の戦闘車両を与えられた。 米国製 M2 歩兵戦闘車 (IFV) 90 両のほか、フィンランドから供与されたレオパルト 2R 重地雷処理車全 6 両、スロベニアから供与された M-55S 戦車全 28 両などである。 第 47 機械化旅団はこの春、これら新しい車両の訓練に多くの時間を費やしていた。

だが不可解なことに、ウクライナ軍が待望の反攻を 6 月上旬に始める少し前、第 47 機械化旅団が南部のザポリージャ州に展開したときには、M-55S は同伴していなかった。 ただ今では、M-55S の配備先ははっきりしている。 それは、ロシア軍の占領下にある東部ルハンスク州西部の都市クレミンナのすぐ西側。運用しているのは、ウクライナ陸軍の別の新たな旅団、第 67 機械化旅団だ。 M-55S はこの旅団に属する比較的規模の小さい大隊に配備され、同じ旅団の通常規模の戦車大隊に配備されている T-72 戦車とともに戦っている。

証拠は徐々に積み上がっていた。 7 月 12 日、第 67 機械化旅団の医療要員として従軍しているアリーナ・ミハイロワは、クレミンナの西にある樹林帯の中に停められた M-55S の写真を撮っている。数日後、M-55S 1 両がロシア軍の砲弾を食らい、イスラエル製の光学機器を破壊されている。クレミンナ郊外の所在地を監視で特定されたうえでの攻撃だった。 さらに 7 月 22 日ごろ、やはりクレミンナ郊外で別の M-55 にロシア軍の砲弾が直撃し、大破している。 第 47 機械化旅団が、保有する唯一の戦車だった M-55S を第 67 機械化旅団に譲った理由はよくわからない。 M-55S は旧ソ連の T-55 戦車を大幅に改修し、英国製 105mm 砲などを搭載したものだが、ウクライナ軍参謀本部は、第 47 機械化旅団が南部トクマクの攻勢軸で持ちこたえてきたような戦闘に投入するには脆弱すぎると懸念したのかもしれない。

重量 36 トン、乗員 4 名の M-55S は、たしかに爆発反応装甲 (EEA) を何重にも備えてはいる。 しかし、その下の鋼鉄は最も厚いところでもせいぜい数百 mm しかない。 現在の水準から見れば非常に心もとない防護だ。 ある意味、ウクライナ軍指導部の判断は正しかった。 第 47 機械化旅団は南部の戦線で、ポルトガルとドイツから供与されたレオパルト 2A6 戦車 21 両をすべて運用する第33機械化旅団と組んでいる。 重量 69 トンのレオパルト 2A6 は、場所によってはなんと 1,400mm の鋼鉄に匹敵する防御力を持つ。 にもかかわらず、運用する大隊はすでにレオパルト 2A6 を少なくとも 2 両失っており、さらに9両が損傷を受けている。

もっとも、軍指導部が M-55S を最も激しい戦闘にはさらしたくないと考えたのだとすれば、結果として大きな誤算になった。 というのも、ロシア軍がウクライナ軍の反攻に対する反攻のために、使用できる最良の戦力を集中させることにしたのは、ほかならぬクレミンナの西方だったからだ。 ロシア軍がここでの反・反攻によって、ウクライナ軍がはるか南で進める反攻作戦を頓挫させようという目論見なのは明らかだ。

ロシア軍はこれまでに、クレミンナの西へ数km前進している。それでも、M-55S を擁する第 67 機械化旅団やスウェーデン製の最新鋭車両を装備する第 21 機械化旅団はロシア軍の大きな前進を食い止めている。反攻頓挫の試みを頓挫させているのだ。 ウクライナ軍は、M-55S の戦車大隊がロシア軍の最良の部隊と直接衝突するのを避けようとしたのかもしれない。 もしそうだったとすれば皮肉だが、結果としてこの大隊はロシア軍の最良の部隊と相まみえることになった。 (David Axe、Forbes = 8-19-23)


ロシア国防省 "ウクライナがモスクワに新たな無人機攻撃" と主張

ロシアのモスクワ中心部に 18 日、無人機が落下し、ロシア国防省はウクライナが新たな無人機攻撃を開始したと主張しました。 (日テレ = 8-19-23)


米、ウクライナへの F16 供与承認 デンマークなどから

[ワシントン] 米国はウクライナへの米製戦闘機 F16 供与について、導入に向けた訓練が終了した時点でデンマークとオランダから供与することを承認した。 米高官が 17 日に明らかにした。 ウクライナは制空権の確保につなげようと F16 の供与を米欧に求めてきた。 米政府はデンマークとオランダに対し、ウクライナへの F16 の第三者譲渡要請を迅速に承認し、パイロットの訓練が完了した時点でウクライナが F16 を入手できるようにすることを保証した。

導入に向けた訓練を主導するデンマークとオランダは米国からのこうした確約を求めていたが、ブリンケン国務長官は両国に書簡を送り、この要請が承認されることを確約したという。 バイデン米大統領は 5 月にウクライナのパイロット向けの F16 訓練を承認したが、機体の供与時期は現時点で明らかになっていない。 (Reuters = 8-18-23)


ウクライナ「アゾフ連隊」が東部で戦闘任務開始、去年 南東部マリウポリで製鉄所を拠点に抗戦

去年、ウクライナ南東部マリウポリでロシア軍に対し抗戦を続けたことで知られる軍事組織「アゾフ連隊」が、東部の前線で戦闘任務につきました。 ウクライナメディアによりますと、ウクライナの国家警備隊は 17 日、「アゾフ連隊」が東部ルハンシク州の前線で戦闘任務を始めたと明らかにしました。 「アゾフ連隊」は SNS に「ザポリージャ方面で活動している」とのコメントとともに、ロシア軍のものとみられる車両を破壊する動画を投稿しています。

「アゾフ連隊」の部隊は去年 3 月からおよそ 2 か月間、ロシア軍が包囲するマリウポリで製鉄所を拠点に抗戦を続けました。 マリウポリは 5 月にロシア軍に制圧され、「アゾフ連隊」の部隊は投降後、一時ロシアの捕虜となっていました。 また、ウクライナ軍参謀本部は軍の部隊が東部ドネツク州の集落ウロジャイネの南方に進軍し、塹壕を築いて敵を攻撃していると発表しました。 ウロジャイネをめぐっては、ウクライナ軍が 16 日、「奪還した」として戦闘の映像を公開していました。

一方、アメリカ CNN テレビは、ウロジャイネでの作戦についてウクライナ軍が殺傷力の高いクラスター弾を使用した可能性があると報道。 専門家の話として、敗走するロシア軍の部隊に撃ち込んだとみられると伝えていて、アメリカが供与したクラスター弾かどうかは確認できないということです。 こうしたなか、ウクライナメディアはゼレンスキー大統領が全土で発令している戒厳令と総動員令を 11 月 15 日まで 90 日間延長する法律に署名したと報道。 戒厳令と総動員令は、去年 2 月のロシアによる侵攻開始を受け発令され、繰り返し延長されています。 (TBS = 8-18-23)


モスクワ中心部に無人機攻撃

モスクワのソビャニン市長は 18 日、市中心部に無人機(ドローン)攻撃があったと明らかにした。 撃墜され、建物への被害や死傷者はないとしている。 (kyodo = 8-18-23)


集落奪還はゼレンスキーが待ちに待ったブレイクスルー、ウクライナは内部崩壊寸前だった

<小さな集落に過ぎないとはいえ、ロシアの防御線を突破しアゾフ海に達する足場になる上、何より遅々として進まない反転攻勢に国内の不満も抑えきれなくなっていた。>

ウクライナ政府はロシア軍が占領していた東部の村ウロジャイノエを奪還したと発表した。 反転攻勢の開始から 2 カ月余り。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にとって、これは喉から手が出るほど欲していたブレイクスルーだ。 ウクライナ東部ドネツク州のこの村は、ウクライナ軍がロシア軍の占領下から解放すべく、6 月 4 日前後に大規模な攻撃を開始した同州西部の複数の村の 1 つ。 反転攻勢が期待通りに進んでいないことは、ウクライナ政府も認めていた。 ウロジャイノエ村の奪還は、7 月 27 日に発表された近隣のスタロマイオルスケ村の解放に続く 2 つ目の成果だ。

「ウロジャイノエが解放された」と、ウクライナのハンナ・マリャル国防次官はメッセージアプリ・テレグラムで伝えた。 「村の周囲でわが軍が防護を固めている。」 本誌のメールでの問い合わせメールに対してロシア国防省は、村を失ったことを認めていない。 だがテレグラムでは、ロシア軍はウロジャイノエ地域で引き続きウクライナ軍に砲撃と空爆を加えていると発表した。 ウロジャイノエ村はロシアの防御線の北側、ロシア軍が占領するアゾフ海北岸の都市マリウポリに向かうルート上に位置する。 ロシア軍が何層にも築いた防御陣地の攻略に手間取ってきたウクライナ軍と、その苦戦ぶりを見守ってきたウクライナの人々にとって、この村の奪還は胸のすく成果だろう。

戦い続ける新たな理由に

「ブレイクスルーといっても、あくまで相対的にだ」と、ロシア軍の戦略に詳しいイタリア・ボローニャ大学の研究員ニコロ・ファソラは本誌に語った。 彼によれば、ウクライナ戦争が始まる前のこの村の人口は 1,000 人前後にすぎなかった。 だがたとえ寒村であってもその奪還は「ウクライナのプロパガンダと情報戦にとって大いに意義がある」という。 「西側に目に見える成果を示し、『われわれは善戦している。 引き続き支援してほしい』と言えるからだ。」

ゼレンスキーは奪還の知らせに救われたはずだと、ファソラはみる。 先週には、国外に逃れた徴兵対象者から賄賂を受け取った疑いでウクライナ各地の徴兵センターの責任者が解任されたニュースが報じられたが、ファソラによれば、この突然の解任劇も、反転攻勢の遅れに不満が広がるなかで、世論の目をそらす苦肉の策と解釈できるからだ。 こうした状況下で、「ウロジャイノエ奪還は、戦い続ける新たな理由として、国民を鼓舞する有効な材料となる」と、ファソラは言う。 「そういう意味でブレイクスルーなのだ。」 ウロジャイノエ村は、ロシア軍のウクライナ侵攻の総司令官だったセルゲイ・スロビキン(ワグネルの乱に加担した疑いで、現在は自宅軟禁中)が 2022 年暮れに命じて建設させた防御線、いわゆる「スロビキン・ライン」から北へ 8 キロ余り離れている。

黒海沿岸の拠点確保の可能性も

とはいえ、ウロジャイノエ村はこの地域のロシア軍の補給網で重要な位置を占めていたため、「ここを失うことで、ロシア軍はより広い範囲で防御に支障をきたすだろう」と、ゼレンスキーの元報道官ユリヤ・メンデルは、複数の軍事ブロガーを引用して、X(旧ツイッター)で述べている。 ニューヨーク・タイムズが先週伝えた予測によれば、ロシア軍はこの地域から撤退すれば、さらに南の第 2 防御線に当たるスタロムリニフカ村近辺に移動を余儀なくされる。 そうなれば、ウクライナ軍はアゾフ海沿岸の都市ベルジャンシクとマリウポリまで約 80 キロまで迫ることになり、さらに南のアゾフ海に達することも可能になる。

その場合、ウロジャイノエ村の奪還は「ロシア軍の防御線を次々に打ち破る突破口となる」と、ファソラは言う。 「ロシアの最前線と防御陣地の弱点を探るウクライナ軍の地ならし作戦が成功し、本格的に攻勢をかけるべき地点が分かった、ということだ。」

「ウクライナ軍はロシア軍の防御の弱点を突いて、さらに南のマリウポリへと進み、ロシア軍がこの 1年間に占領したウクライナ南東部を真っ二つに分断しようとするだろう。」

マリウポリを奪還できれば、さらに南の内海である黒海に臨む拠点確保の可能性もみえてくる。 だがたとえマリウポリに到達できないとしても、ウロジャイノエ奪還により、ウクライナ軍が西側の供与した弾薬と兵器で「ロシア軍の陣地のより奥深くまで攻撃できるようになることは確かだ」と、ファソラは言う。 (ブレンダン・コール、NewsWeek = 8-17-23)


ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べで暴露した「大損失」

行方不明になっていた少佐がウクライナ侵攻について「自分は間違っていた」と語る動画がテレグラム上で共有された

ウクライナ軍に拘束されたと報じられていたロシア軍司令官の動画が 8 月 13 日にインターネット上に投稿され、注目を集めている。 この人物は取り調べを撮影した動画の中で、指揮下にある大隊が被った大きな損失について語っている。 動画の中の人物は、ロシア軍第 1822 大隊の司令官を務めるユーリ・トモフ少佐と名乗っており、ウクライナ軍が先週実施した攻撃作戦の際に、ロシア軍の支配下にあるウクライナ南部のドニプロ川東岸地域で行方が分からなくなったと報じられていた。 この地域は 2022 年 2 月にロシア軍がウクライナに本格侵攻を開始した当初から、ロシア軍が占領している。

14 分間に及ぶこの取り調べ動画は、ウクライナの「ニコラエフスキー・バニョク」というテレグラムのチャンネル(購読者数は 120 万人)が公開したものだ。 同チャンネルは投稿の中で、トモフがロシア軍の受けた損失や、ロシア軍による戦争の見通し、兵士たちの訓練不足などについて語ったと述べている。 本誌は動画の信ぴょう性について独自に検証できておらず、14 日にロシア国防省にメールでコメントを求めたが返答はなかった。 拘束された戦争捕虜たちが偽のビデオメッセージ収録に利用されている可能性を懸念する声もある。

「うつ状態に陥り任務の実行を拒む」兵士たち

動画の中でトモフは自分について、2022 年 9 月にロシアのウラジーミル・プーチンが発令した部分動員令に基づいて徴兵され、同年 10 月 15 日からウクライナに配備されていると語った。 司令官に任命される前は、第 1822 大隊の参謀長を務めていたとつけ加えた。 またトモフは、自分が指揮する部隊がこれまでに失った兵士は、全体の約 30% にのぼる可能性が高いと述べた。 彼によれば、ロシア軍の兵士たちは短期間でうつ状態に陥り、自らに割り当てられた任務の実行を拒んだという。 「そのような要員ばかりでは、戦闘活動の実行は不可能だ」とトモフは述べた。

さらに彼は、ウクライナ軍に身柄を拘束される前は、ウクライナ軍について「ナチス」で「ファシスト的な考え方」を支持している者たちだと考えていたと述べ、プーチンやロシア政府のプロパガンダによって押しつけられたこの論調を自身の部隊にも伝えていたと語った。 だがその後、自分の考えが間違いだったこと、全てが自分の想像とは違っていたことに気づいたと明かし、「ウクライナで拘束された後にこの結論に至った。 私は実際にウクライナの人々に会い、彼らと話をした。」と述べた。

プーチンが始めた戦争は「侵略だ」

トモフはまた、プーチンが始めた戦争は侵略であり残酷な戦争で、平和を好む人々、ロシアとウクライナ両国の国民の生活と健康を救うものではないことに気づいたともつけ加えた。 ロシア軍が一般市民を殺害している理由については説明できず、それはとても難しい質問だとも述べた。 「人々の考え方がどうやって劇的に変化して、ウラジーミル・プーチンの狂った考え方を進んで受け入れるようになったのかは分からない。 平和に暮らしたいと思っていた人々がなぜ、ほかの人々を殺し始めたのか分からない。 プーチン大統領の理想は、現実とはかけ離れている。」とトモフは語った。

取調官がトモフに対して、ウクライナの領土で死ぬことよりもロシアの指導部の方を恐れているのだろうと言うと、トモフはロシア軍の高官や仲間の兵士たちに次のように訴えかけた。 「戦闘に参加している全ての将校、全ての戦友たちに、ウクライナの領土でのこの無意味な戦争をやめるよう呼びかけたい。 我々はこの戦争に負けるだろう。 そしてこの戦争は我々の祖国に、何ら良い結果をもたらすことはないだろう。」と彼は述べ、さらにこう続けた。 「ロシア領内の自らの部隊に戻り、国内の秩序を回復させる必要がある。」

ほかにも複数のロシア兵と将校が行方不明

これに先立ち、ロシアの戦争支持派の複数のチャンネルが、トモフはウクライナ南部ヘルソンでの作戦中にウクライナ軍に拘束されたと報道。 その後、トモフが地図に何かを書き込んでいる様子を撮影したとみられる未確認の短い動画が浮上していた。

トモフについて報じたロシアの軍事ブログの一つが「Trinadtsatyi」というチャンネルだ。 ここの複数の投稿によれば、ウクライナによる攻撃作戦の中でロシア軍の兵士 16 人と将校 2 人が行方不明となり、その中に「トモフ少佐」も含まれていた。 トモフはヘルソンの拠点の様子を確認するために、下士官たちに同行して現地を訪れていたという。 「トモフが連絡してきたら彼に謝罪し、彼の健康を祈りたい。 いいコニャックを贈ろう。」とある投稿は述べ、さらにこう続けていた。 「だが彼の大隊は規制点に到達しなかった。 現在は 16 人全員との通信が途絶えている状態だ。」 (イザベル・ファン・ブリューゲン、NewsWeek = 8-17-23)


ウクライナ、南東部で集落奪還 北東部の戦況厳しさ増す

[キーウ/クピャンスク] ウクライナのマリャル国防次官は 16 日、東部ドネツク州の集落ウロジャイネをロシア軍から奪還したと発表した。 ただその後、シルスキー陸軍司令官は北東部の前線では状況が悪化していると警告した。 マリャル次官はメッセージアプリ「テレグラム」への投稿で「ウロジャイネは解放された」とし、ウクライナ軍はウロジャイネ近郊に展開していると明らかにした。 ロイターはこの情報を独自に確認できていない。 ロシア国防省はテレグラムに投稿した声明で、ウロジャイネ周辺でロシア軍機が攻撃を行っていると表明したものの、ウロジャイネがウクライナ軍に奪還されたかについては言及していない。

ウロジャイネは、ウクライナが 6 月初め以降、ロシア側から奪還している集落が集まっている地域にある。 ただ、反転攻勢は容易ではないようで、集落奪還の発表は 7 月 27 日以来となる。 ウロジャイネは、アゾフ海から約 90 キロメートルの場所にある。 ウクライナ軍はアゾフ海に向け南進し、ロシア軍部隊の二分を狙っているとみられる。 ロシア側のコメントは今のところないが、ロシアの軍事ブロガーは、ウロジャイネ周辺で激しい戦闘が起きたとしている。

北東部クピャンスクの前線は厳しい状況

マリャル国防次官がウロジャイネの奪還を発表した数時間後、シルスキー陸軍司令官は東部ハリコフ州クピャンスクの戦線の状況は厳しさを増していると表明。 ウクライナ軍のメディアセンターによると、シルスキー司令官は「ロシア軍はクピャンスクを封鎖した上で占領するため、主に囚人からなる突撃部隊を投入し、連日さまざまな方向からウクライナ軍の防衛網を突破しようとしている」とし、「クピャンスク方面の情勢が複雑化しているため、一日の大半をクピャンスク市街に入る道の防衛を指揮する部隊と行動を共にした」と述べた。

クピャンスクは 2022 年 2 月の全面侵攻開始直後にロシア軍に占領されたが、同年 9 月の反転攻勢でウクライナ軍が奪還した。 地域当局は今月初め、連日のロシア軍の砲撃を受け、クピャンスクの前線付近からの市民の強制避難を発表。 今回の反転攻勢作戦で大きな成果を挙げられない中でクピャンスクが再度失われれば、ウクライナ軍にとって打撃となる。 ロイターは戦況について独自に確認できていない。 (Reuters = 8-17-23)


スウェーデン、ウクライナに 460 億円の追加支援

スウェーデン国防省は 15 日、ウクライナに約 3 億 1,500 万ドル(約 460 億円)の追加支援を行うと発表した。 同省は声明で「ウクライナから、すでに同国に供与した戦闘車両の CV90 と CV122 の部品の要望があった」と明らかにした。 その要望に応えるべく、最大 1 億 0,200 万ドル相当の部品や緊急物資を一定期間提供するという。 第 13 弾となる今回の支援パッケージには、2 億ドル弱相当の輸送車両や緊急用物資、地雷除去機の供与も含まれるという。 (CNN = 8-16-23)


ついに最後のカードを切ったロシア軍、空軍を対地支援に本格投入

今、ウクライナの戦場はどうなっているのか、 本論に入る前に米戦争研究所 (ISW = Institute for the Study of War) などの報告書をまとめる。 東部戦線の地上戦闘では、ロシア地上軍が局地的に攻勢を仕掛けている。 ザポリージャ正面などの南部戦線では、ウクライナ地上軍がロシア軍の防御線を突き破ろうとして、少しずつではあるが、戦場の要点を奪回しつつある。 南部戦線のへルソン正面では、ウクライナ軍特殊部隊など少人数がボートに乗船し、ドニエプル川を渡河し、ロシア側陣地に潜入した。 そして、今後の渡河作戦のために、小さな橋頭保を 3 か所作りつつある。

これらの作戦に連携して、後方連絡線となるクリミア半島とロシア本土を繋ぐクリミア大橋、クリミア半島とザポリージャ州を繋ぐ2つの橋梁を部分的に破壊している。 また、弾薬や兵員の後方補給点となるロシアが占拠している地域内の弾薬・燃料施設、訓練施設、武器保管施設などを長射程巡航ミサイルで破壊している。 ウクライナ軍としては、この戦況は期待通りではない。 戦場の第一線地上部隊の反撃が、ロシア地上軍の防御線における抵抗を受け、戦場の要点の奪回に時間がかかり、損害も出ている。 その理由に、ロシア軍の防御準備のほかに、ロシア空軍の戦い方で一つ大きく変化したことが挙げられる。

ロシア空軍戦闘機と攻撃ヘリが、都市攻撃から近接航空支援(対地攻撃支援 : 戦場の地上軍を目標に攻撃すること)に、重点を移したことである。 具体的には、ロシア軍戦闘機や攻撃ヘリコプターが、ウクライナ軍防空網の外から対地攻撃支援を行っているのである。 これによる、ウクライナ軍の被害状況は詳細に報告されてはいない。 しかし、戦闘機等によるミサイルと爆弾による被害がかなり出ているとみてよいだろう。 しかも、ロシア軍戦闘機に手出しができていないのが現状である。 そこで、ロシア空軍の戦い方が変化したことによってウクライナ軍に出た影響、さらに、ウクライナ軍の期待について、考察する。

  1. やっと対地攻撃支援を始めたロシア軍機

    『ミリタリーバランス 2021』によれば、ロシア空軍が保有する戦闘機・攻撃機(戦闘機等)は、864 機であった。 ウクライナでの戦争では、これまでの 17 か月間に 315 機を失った。 保有機数に対する損耗率は 36% で、残存しているのは 64%、まだ約 550 機ある。 ウクライナ軍が当初に保有していた戦闘機等は 116 機で、これまでに多くが撃墜された。 残存機数は不明だ。 ウクライナ軍機の半数が撃墜され、50 - 60 機あるとしても、その相対戦力数は、ロシア軍が約 10 倍である。

    ロシア戦闘機等は、侵攻の 3 - 4 か月目以降は損失が急激に減少しているのが分かる。 侵攻当初 2 か月は、ウクライナ領土内を飛行して撃墜され、多くの損失を出したのだ。 しかし、その後、撃墜されるのを恐れてロシア領土内、ウクライナ防空兵器の外からミサイル攻撃を行い、都市部の攻撃を重点としていた。 ウクライナ軍が 2023 年の 6 月頃に反攻を開始した頃から、戦場の戦闘支援を重視するようになった。

  2. 火砲が不足、戦闘機が対地攻撃支援に

    両軍地上軍部隊は、現在の接触線で防御ラインを突き抜けるか、くい止めるかの瀬戸際にある。 ウクライナ軍が突き抜けようとしている正面もある。 ここで、ロシア地上軍と空軍が連携して、ウクライナ軍の反撃を止めようとしている。 ロシア空軍戦闘機が、ウクライナ地上軍の攻撃に対してミサイルや爆弾を投射して、地上部隊の戦闘を支援している。

    ロシア軍の火砲が多く破壊されてきているので、これを補うように航空攻撃をしているのだ。 航空攻撃は、爆弾の威力が大きい。 そのため、ウクライナ軍にとっては砲撃よりもダメージが大きい。 特に、ウクライナ軍が地雷などの障害を処理し、その後、障害を通過ために戦闘車両が蝟集(狭い地域に密集すること)した時、航空攻撃を受ければ、その被害は大きくなる。 ウクライナ地上軍は、ロシア軍戦闘機からの攻撃には、やられっぱなしの状態だ。

  3. ロシア軍「戦闘機」の対地攻撃支援

    ウクライナは、基本的に都市防空のためにパトリオットミサイルなどの長距離防空ミサイルを、戦場(接触線付近)では、短距離防空ミサイルや高射機関砲を配置している。 パトリオットミサイルなどを第一線部隊付近に配置すれば、戦闘部隊がロシア軍戦闘機からの攻撃を受けることはないが、反面、航空攻撃を受け、破壊されやすくなる。 戦場で運用して破壊されてしまったら、キーウなどの防空ができなくなり、その影響は大きい。 そのため、戦場にはパトリオットミサイルなどを配置しない。 その代わり、射程は短いが発見されにくく移動が容易な自走のミサイルや機関砲を配置するのだ。

    では、このような戦場での防空環境において、ロシア軍戦闘機はどのような対地攻撃支援を行うようになったのか。 ロシア軍の「Su (スホイ)」戦闘機は現在、接触線の戦場でウクライナ軍の短距離防空ミサイルの射程外(接触線から概ね 10 キロ)の安全な空域から、射程 40 キロ以内の空対地ミサイルを発射している。 つまり、ウクライナ軍第一線部隊から、40 キロ以内まで接近してからの攻撃である。 しかし、この対地攻撃に対して、ウクライナ軍の防空ミサイルでは撃墜できず、阻止できていない。

    ウクライナ軍は、自軍防空兵器射程外からのロシア軍機ミサイル発射そのものを止めたい。 止められるのは、長射程ミサイルを使った空対空の戦闘だ。 ロシアの「Su-30・34・35」戦闘機が保有する空対空ミサイル「R-77 (アムラームスキー)」の射程は 120 - 190 キロである。 ウクライナ軍「MiG-29」戦闘機のミサイルの射程は約75キロだ。 これだと、ウクライナ軍機は、ロシア軍機に接近する前に撃墜されることになる。

    ウクライナ軍に F-16 が供与されれば、F-16 に搭載される空対空ミサイルには、「AIM-120 AMRAAM (アムラーム)」の D (160 - 180キロ)タイプを搭載し、160km 離隔した空中目標に対して攻撃することができる。 単機の戦いでは、F-16 と Su 機とはほぼ互角の空中戦闘ができると予想される。 現在、F-16 戦闘機が供与されていないため、少数の MiG 機を改良し、米欧のミサイルや爆弾を搭載し対応するしかない。 だが、数的にロシア空軍が圧倒的に有利なので、ロシア軍戦闘機を撃墜できず、ロシア軍戦闘機からのミサイル発射自体を止めることはできないのだ。

    ウクライナにとって、ロシア軍機のミサイル攻撃を制限できるのは、今のところ欧米日が、ミサイル部品の供給を確実に禁止することだけだ。 ロシア軍戦闘機を撃墜し、地上戦闘に協力させないために、F-16 を早急に供与すべきだ。 F-16 戦闘機が供与されれば、同機が搭載する空対空ミサイルに撃墜されないように、ロシアの戦闘機は飛行しなければならなくなり、対地攻撃支援はできなくなる。

  4. ロシア軍「攻撃ヘリ」の対地攻撃支援

    攻撃ヘリは、侵攻当初 1 か月間はウクライナ領土内まで侵入し、地上作戦を支援していた。 だが、その期間に損失が多くなり、その後、活動が低調になった。 ウクライナ軍防空兵器から攻撃され、撃墜されるのを恐れたからだ。 そのため、地上作戦をほとんど支援しなくなった。 これまでの戦いでは、攻撃ヘリの「戦車キラー」としての活躍はなかったのだ。 ロシア軍は、攻撃ヘリを約 400 機保有していた。 侵攻からこれまで、40% 近くが撃墜されたが、まだ大量に残っている。 詳細なデータはないが、260 機ほどは残っているだろう。

    ロシア軍の攻撃ヘリは、どのような対地攻撃(対戦車戦闘)を行うようになったのか。 現在は、防空ミサイルの射程外から、長射程対戦車ミサイルを発射している。 今後、米欧の戦車等とロシア軍の攻撃ヘリの戦いは、どのようになるのかについては次の通りである。

    ウクライナ軍の防空網が充実してきたため、ロシア軍攻撃ヘリは、ウクライナ軍の作戦範囲に侵入して攻撃ができなくなった。 ウクライナ軍の防空網は、ウクライナ軍防空兵器の射程などから、接触線から最大 10 キロ以内だ。 そのため、接触線から約 10 キロ離れた安全な位置から攻撃している。 そのため、ロシア軍攻撃ヘリの撃墜は少ない。 1 か月にたった 1 機だけの時もある。 稀に、ウクライナ軍陣地に侵入して、撃墜されているだけだ。 これに対して、ウクライナ軍の攻撃ヘリ保有数は 35 機であり、侵攻開始から、多くの攻撃ヘリが撃墜されている。 ロシア軍攻撃ヘリのアウトレンジからの攻撃には、現在のウクライナ軍としては、対策がない。 このことをもってしても、空対空戦闘ができる F-16 が喫緊に必要な状況である。

  5. 反攻を妨害する最後のカードか

    米欧から供与された防空兵器によって、ウクライナ軍の防空網が出来上がっている。 その防空網には、都市防空網と戦場防空網がある。 都市防空の実情は、日々報告されている通り、ミサイル攻撃や自爆型無人機の攻撃を一部撃ち漏らしてはいるものの、かなり対応できるようになった。 戦場の防空はどうなのか。 ロシア軍機は、戦場の上空を飛行してはいない。 上空を飛行すれば、ウクライナ軍の短距離と近距離の防空ミサイル等に撃墜されるからだ。 ロシア軍機はウクライナの戦場の防空網の外から、ミサイル等を発射し、反撃するウクライナ軍を攻撃している。 これは、航空優勢を取れないロシア軍機の最後のカードといってよい。

    一方で、前線で戦っているウクライナ軍地上部からすれば、ロシア軍機がこの防空網の中に入ってこなければ、撃墜することはできない。 このアウトレンジからの攻撃は阻止することはできず、壕の中に逃げるしかない。 ウクライナ軍としては、ロシア軍機が対地攻撃を行うために、ウクライナ防空網の外で、対地攻撃用のミサイルなどを発射する位置に来た時、それが射程に入る長距離の空対空ミサイルで撃破が可能になる。  これらのことができる戦闘機はウクライナ軍にあるのか。

    米欧の空対空の長射程ミサイルが発射できる戦闘機は、MiG-29 を改良したものが数機あるが少ない。 改良機では、敵機の情報との共有や機搭載のレーダーで敵機を捜索できるかというと、かなり難しいだろう。 これらの能力を有するのは、供与される予定の F-16 だ。 ウクライナ軍としては、反撃を妨害するアウトレンジからの対地攻撃を止めたい。 すなわち、それを実施するロシア軍機を撃墜したいと、強く期待していると思う。 ロシア軍機のアウトレンジからの攻撃は、ウクライナ軍の反攻を妨害する最後のカードだ。 F-16 戦闘機は、ウクライナ軍がそのロシア軍最後のカードにとどめを刺すことになる。 ウクライナとしては、できれば 1 機でも早く受領し、逐次投入でいいから戦場防空にあてたいところだ。 (西村金一、JB Press = 8-16-23)


ウクライナ南部で非常に珍しい車両出現 高速で塹壕掘る「BTM-3」

ウクライナの戦場には奇妙な車両や珍しい車両がひしめいているが、そのなかでも BTM-3 ほどの変わり種はそうそうないだろう。 BTM-3 は戦車でもなければ歩兵戦闘車でもない。 戦場で専門性の高い工兵任務に従事する装甲工兵車ですらない。 BTM-3 は、塹壕掘削車(トレンチャー)だ。 名前のとおり、もっぱら塹壕(トレンチ)を掘るためだけの車両である。 ディーゼルエンジン駆動のAT-T 砲兵牽引車の車台(これも元々は T-54 戦車の車台がベース)に、チェーンソー式掘削機を取り付けてつくられている。 重量 37 トン、乗員 2 名の BTM-3 は、深さ約 1.5m、幅約 90cm の塹壕を最高で毎時約 730m 掘り進めることができる。 掘削スピードとしては高速だ。

ロシア側に関しては、旧ソ連時代の古い BTM-3 を引っ張り出して使っていてもそこまで驚きではないかもしれない。 なにしろ、ウクライナの大半のエリアで攻撃から防御に転じたロシア軍は昨冬から今春にかけて、数百kmないし 1,000km 超の塹壕線を築いていたからだ。 だが、BTM-3 は実はウクライナ側でも投入されていたことが、このほど映像で確認された。 先週ネット上に出回った動画には、ウクライナ南部ザポリージャ州の未舗装路を、ウクライナ軍の旧ソ連製 BTM-3 が走行している様子が映っている。 ザポリージャ州はウクライナ軍が反転攻勢を進めている場所の一つだ。 ウクライナ軍は長く待ち望まれていた反攻を 6 月 4 日に始めて以降、複数の攻勢軸で数 km 前進している。

塹壕はこれまで、両軍の戦いを文字通り形づくるものになってきた。 ロシア側はウクライナ軍の前進を阻むために塹壕を掘った。 今度はウクライナ側が、前進したエリアで陣地を固めるために塹壕を掘っているというわけだ。 BTM-3 は、ロシア側では BTM-4、ウクライナ側では PZM-3 といったほかの軍用塹壕掘削車や、民間の掘削車とともに、塹壕づくりで主導的な役割を担ってきたとみられる。 塹壕掘削車の数は西側諸国よりも旧ソ連のほうが圧倒的に多かった。 理由は土壌や気候から説明できる。 「ソ連の工兵や作戦立案者は明らかに、凍土を削って塹壕を掘ることに大きな重要性を認めていた。」 米陸軍工兵隊は 1980 年の報告書でそう指摘している。 「対照的に、北米の凍土での塹壕掘りはあまり行われてこなかった。」

ウクライナに対するロシアの 1 年半におよぶ戦争の現在の局面で、塹壕が形勢を決めるものになることは十分予想できた。 塹壕はロシア軍の教義で一貫して重視されており、ウクライナ軍もこの教義におおむね従っているからだ。 ロシアの旅団もウクライナの旅団も、一時的であっても防御態勢をとる場合は塹壕を掘る。 「塹壕掘削機やブルドーザーの作業は昔ながらのシャベルで補完される。 こうして兵員や装備の防護が整備される。」 レスター・グラウとチャールズ・バートルズは、ロシア戦争様式論の決定版と呼ぶべき著作『The Russian Way of War (ロシアの戦争術、未邦訳)』でこう説明している。

塹壕づくりでは民間の請負業者も多くの仕事をするが、民間人を雇って軍人の仕事を代行させるのはコストが高いうえ、乗員の危険もともなう。 実際、ロシアの請負業者は 2022 年末から 2023 年初めにかけて、ウクライナのドローン攻撃によって掘削機や操縦士を多数失っている。 そのためロシア軍は即席の防空車両を前線に送り、作業中の民間業者の護衛にあたらせていた。 可能なかぎり、ロシア軍は民間でなく軍の塹壕掘削車両を用いてきたのだろう。 ただ、前線で使用されている姿をとらえた映像は乏しい。 昨年末には、東部ルハンスク州で BTM-3 が塹壕を掘るところを撮影した動画がネット上に出回った。 ザポリージャ州でも、この見慣れない車両はせわしく動き回ってきたに違いない。 それもロシア軍とウクライナ軍の双方で。 (David Axe、Forbes = 8-16-23)


ウクライナ西部リビウにミサイル攻撃、「侵攻後最大規模」と現地報道

ウクライナ西部のリビウが 15 日、ロシアの大規模なミサイル攻撃を受け、地元当局者によると建物が損壊し負傷者が出ている。 ザドビー市長は、多くのミサイルを撃墜したものの、一部が撃ち込まれたとメッセージアプリで述べた。 少なくとも集合住宅 1 棟で火災が起き、避難指示が出ているという。 攻撃の規模や被害の全容は不明だが、ウクライナのメディアは、暫定的な情報として、当地への攻撃としては 2022 年 2 月の侵攻開始以来、最大規模と報じた。 (Reuters = 8-15-23)


ゼレンスキー氏、東部の前線部隊訪問

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 14 日、東部ドネツク州の前線部隊を訪問した。 ウクライナ軍は同州の激戦地となっていたバフムート周辺地域の奪還作戦を進めている。 ゼレンスキー氏はソーシャルメディアで第 22 独立機械化旅団の部隊と面会したことを明らかにし、「われわれはきょう、ドネツク州で活動している。 旅団長と、同部隊が直面している問題や解決に向けた提案について話し合った。」と述べた。 (AFP/時事 = 8-15-23)

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