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チェルノブイリを掘り返したロシア軍 現地企業トップが見る撤退理由

ウクライナの原子力企業「エネルゴアトム」のトップ、ペトロ・コティン総裁代理が 1 日、オンラインで朝日新聞の取材に応じ、ロシア軍が原発を次々と占拠したのは、ウクライナの経済的利益の搾取が目的との見方を示した。 旧ソ連のチェルノブイリ原発からの撤退については「自分たちにとって、何の利益にもならないのがわかったということだ」と語った。

チェルノブイリ原発の管理、ロシア軍からウクライナへ IAEA 把握

ロシア軍は、侵攻初日の 2 月 24 日にチェルノブイリ原発を、3 月 4 日には中南部にある欧州最大級のザポリージャ原発を占拠し、管理下に置いた。 ロシア軍がウクライナ各地の原発や核施設を攻撃し、制圧した理由について、コティン氏は「ウクライナの重要なインフラ、工場などを破壊したり、我が物にしたりすることが目的で、原発もその一環だろう」と述べた。 コティン氏によると、ロシア軍は 3 月 31 日朝、チェルノブイリ原発から撤退を開始。 同原発の従業員らが住むスラブティッチからも引き揚げ始めたという。

コティン氏は閉鎖中のチェルノブイリ原発について「放射性物質以外に何もない。 これらを持ち出して世界中にまき散らす『汚い爆弾』に使う以外に、彼らには何の利益もない」と話した。 占拠された当初から、この点を主張していたにもかわらず、ロシア側には受け入れてもらえなかったという。 同原発周辺の地下には、1986 年の事故当時のがれきや資材などが埋められている。 ロシア軍は地下の内容物や放射線レベルを調べないまま、何らかの設備をつくろうとし、土を掘り返したという。 コティン氏は「確証はない」としながらも、「兵士が高いレベルの放射線を浴びた可能性がある。 この結果を受け入れられなかったことも、彼らが離れた理由かもしれない。」と述べた。

原発を管理下に置くロシア軍、その実態は

同原発はロシア軍の占拠後、放射性廃棄物の管理などに携わる従業員が 1 カ月近く、交代なしでの勤務を強いられていた。 ロシア軍が撤退したことで、今後、地雷の有無などを確認したうえで、3 日からは完全にウクライナ側の管理で従業員の交代勤務ができるようになるとした。 一方、ロシア軍はいまもザポリージャ原発を管理下に置いており、原発の従業員は各種の作業に際し、ロシア軍の同意が必要という。 コティン氏は「ロシア軍は技術的なことを何も理解せず、形式的に同意しているだけだ。 この意味では、原発は安全に運転されている。」と述べた。

だが、ロシア軍によってすでに施設の一部が損傷しているうえ、ロシア軍は「(核施設の運営を誤れば)自分自身や環境に被害を与えることを理解していない」と指摘。 「本来はいるはずのない人たちがいるため、完全に安全であるかは保証できない」とした。 ウクライナには 4 カ所 15 基の原発があり、点検などを除いて現在、8 基が稼働している。 ザポリージャ原発は占拠されたが、南ウクライナ原発はウクライナ軍の激しい抵抗で支配を免れている。 他の原発も警備、警戒を固めており、「他の原発がロシアの管理下に置かれる可能性は現状では低い」との見方だ。

ただ、ロシア軍はミサイルによる各種施設への攻撃を続けている。 コティン氏は「究極的には、空を閉じるしかない」とし、各国の協力も得て防空能力を高めるしか、ミサイルから原発を守るすべはないとの考えを示した。 「誰も核関連施設が侵略者に砲撃されるとは思っていなかったし、なぜ彼らがそうするのかも理解 していなかった」とコティン氏。 日本も念頭に、「ロシアのような隣国があるのなら、あらゆる手段で核関連施設を防衛する必要があるということが今回の経験から言える」と話した。 (リビウ = 野島淳、asahi = 4-2-22)


米政府、ロシアとベラルーシの 120 団体に事実上の禁輸措置

米政府は 1 日、ロシアとベラルーシの企業など 120 の団体を、事実上の禁輸措置の対象にすると発表した。 ウクライナ侵攻を進めるロシアや、軍事作戦の支援をするベラルーシが、米国の技術や製品などを軍事的に使うのを防ぐ狙いがある。

安全保障上の懸念を理由に米国からの輸出を規制する「エンティティー・リスト」に、米商務省が両国の 120 団体を追加する。 これにより、米国の企業などから技術や製品を移転・輸入するには米商務省の許可が必要になり、事実上の禁輸措置となる。 120 団体は防衛、航空宇宙、海事などの分野の企業などで、ロシアやベラルーシの軍事産業に連なる団体も多いという。 ウクライナ侵攻に関わる両国の軍事作戦に、米国の技術や製品が転用されるのを防ぐ。 レモンド米商務長官は声明で、「今回の取り組みは、米国のウクライナを支援するという決意の表れだ」と述べた。 (asahi = 4-2-22)


ゼレンスキー氏「マリウポリから 3,000人救助」

ウクライナのゼレンスキー大統領は 2 日未明、SNS にビデオ演説を投稿し、ロシア軍が包囲する南東部マリウポリから、住民を避難させるための「人道回廊」により、3.071 人が救助されたと発表した。 ゼレンスキー大統領によると、マリウポリがあるドネツク州を含む東部 3 州で 1 日、人道回廊が機能し、計 6,266 人が避難したという。 ゼレンスキー大統領はマリウポリについて、「世界はこの人道的な大惨事に対して、反応しないといけない」と訴えた。 (asahi = 4-2-22)


日本で寄付 50 億円、ウクライナ駐日大使が会見

ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が 1 日、日本記者クラブで記者会見し、在日ウクライナ大使館に寄せられた寄付金が 50 億円に上ることを明らかにした。 同大使は「最も効果的な形で使われないといけない。 使い道も正直に公表していきたい。」と述べ、人道支援に生かしていく方針を示した。 同大使によると、日本で約 20 万人から寄付があったといい、謝意を示した。 寄付金はスロバキアやポーランド、トルコなどウクライナから逃れた人々が多くいる国々での医薬品や食料品の購入に充てているほか、ウクライナ国内にも送った。 日本に避難してきたウクライナ人の支援にも使う予定だという。 (asahi = 4-1-22)


「軍需産業にミサイル攻撃の可能性」 ウクライナ軍が公表

ウクライナ軍参謀本部は 31 日、ロシア軍がウクライナの軍需産業や物流インフラをミサイルで攻撃する可能性について SNS で明らかにした。 巡航ミサイル「カリブル」を搭載したロシア軍艦船が黒海で確認されているほか、ロシアが併合している南部クリミア半島の基地でも、フリゲート艦に巡航ミサイルを補給する動きがあったとしている。

参謀本部によると、ロシア軍は降下部隊をウクライナからベラルーシに移動させたとみられる一方、新たな部隊のウクライナ国内への移動も続いているという。 北東部、第 2 の都市ハリコフへの包囲や砲撃が依然続き、北部チェルニヒウでは、ロシア軍が包囲網を維持するため、ウクライナ部隊への攻撃を強めるおそれがあるという。 ウクライナ東部では、ロシア軍はこれまでに制圧した都市を引き続き掌握するとともに、マリウポリを攻略することに主眼を置いているという。 東部ではこのほか、工業都市クラマトルスクなどへの攻撃も予想されているという。 (asahi = 3-31-22)


ロシア軍、チェルノブイリ原発から撤収はじめる

米国防総省高官は 30 日、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所を占拠していたロシア軍の一部が撤収し始めたとの見方を示した。 AFP 通信などが報じた。 首都キエフから北西約 100 キロに位置する同発電所は、ロシアがウクライナに侵攻した直後の 2 月下旬、ロシア軍に占拠された。 報道によると、今回の撤収はキエフ周辺のロシア軍の再配備の一環とみられるという。 (asahi = 3-31-22)


キエフ周辺を離れたロシア軍部隊は全体の「20% 以下」

ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、米国防総省のカービー報道官は 30 日の記者会見で、首都キエフ周辺を離れたロシア軍部隊の一部が隣国のベラルーシ国内に向かったことを確認したことを明らかにした。 ただし、キエフ周辺を離れた部隊は全体の「20% 以下」に過ぎないと指摘。 さらにキエフ周辺を離れたロシア軍部隊は自国の駐屯地に戻らず、ベラルーシ国内で再配置されていることから、「撤退ではなく、部隊の再配置だ」との見方を改めて強調。 キエフでは現在もロシア軍の激しい空爆が続いていると指摘した。 (asahi = 3-31-22)


ロシア軍、首都制圧「失敗」 = 撤退ではなく再配置 - 米国防総省

【ワシントン】 米国防総省のカービー報道官は 29 日、同省で記者会見し、ロシア軍がウクライナの首都キエフの制圧に失敗したと断定した。 一方、ロシア軍部隊の一部がキエフから後退しつつあるが、「本当の撤退ではなく(部隊の)再配置だ」と強調。 東部ドンバスなど他の地方での作戦に戦力を集中するための動きだとの見方を示した。

カービー氏は「ロシアはキエフ制圧に失敗し、ウクライナを支配下に置くという目標も達成できなかった」と断言した。 その上で、キエフ包囲を目指して進軍していたロシア軍部隊の一部が戦線を離れ、北に移動しているとする分析結果を明らかにした。 ただ、後退を始めた部隊は小規模にすぎず、「キエフに対する脅威が終わったわけではない」と強調。 「ロシアが突然、キエフに対する作戦を縮小し全面撤退すると宣言しても、うのみにすべきではない」と警戒を緩めない姿勢を示した。 (jiji = 3-30-22)


プーチン政権に不満渦巻く = くすぶるクーデター説 - ロシア高官辞任、国防相は雲隠れ

ロシアのウクライナ侵攻から 1 カ月が過ぎ、プーチン政権内部で異変が起きているのではないかという観測が持ち上がっている。 今月 23 日には大物の高官が辞任し、抗議の意図があったと報じられた。 作戦の責任者、ショイグ国防相は公の場から一時姿を消した。 英メディアは内部告発を根拠に、プーチン大統領の古巣の連邦保安局 (FSB) によるクーデター説まで伝えている。

首都キエフを短期で攻略する計画は失敗。 逆に強力な制裁でロシア経済危機の長期化は必至だ。 ロシア軍は東部に作戦をシフトさせる方針だが、以前からおおむね支配していた地域で、戦果とアピールできるかは疑わしい。 こうした中、チュバイス大統領特別代表が辞任した。 プーチン氏とは一定の距離があった大物だが、侵攻後で最高位の離反と言われる。 政権が国民による世論誘導の頼みの綱とする政府系テレビでも、不協和音が生じている。 今月中旬、ニュース番組の生放送中に女性編集スタッフが「戦争反対」のメッセージを掲示。 著名特派員も侵攻に抗議して辞職した。

プーチン氏が在籍した旧ソ連国家保安委員会 (KGB) の後継機関、FSB でも内部告発が相次いでいるとされる。 英紙タイムズ(電子版)は 23 日、リーク情報に詳しい在外活動家の話として「ウクライナを電撃制圧する計画が失敗した後、ロシア情報機関で不満と混乱が渦巻いている」と内幕を報じた。 この活動家は「過去 20 年間、プーチン氏は安定をもたらしたが、今や過去の話。 FSB 将校は戦争が経済に破滅をもたらすことを知っており、ソ連に戻りたいわけではない。」と指摘。 その上で「毎週、毎月と戦争が続けば続くほど、情報機関がクーデターを起こすリスクは高まっていく」と警鐘を鳴らした。

特に注目されるのはショイグ氏の消息だ。 今月 11 日の安全保障会議から約 2 週間、雲隠れした。 24 日のオンライン形式の安保会議で報告を行ったが、過去の映像とささやかれている。 その後も国防省会議を主宰したものの、公開されたのは同省提供の映像で、病気説などを払拭するには至っていない。  国防相が重要なのは「核のボタン」の管理に関係するからだ。 英調査報道機関のジャーナリストは「政府専用機が防空壕があるとされる中部ウファに行き来しており、ショイグ氏はそこにいる可能性がある」と分析した。 事実なら、プーチン政権は核戦争のシナリオを排除していないとも言えそうだ。 (jiji = 3-30-22)


ロシア、キエフへの攻撃「劇的に減らす」 停戦協議が進展か

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる両国の 5 回目の停戦協議が 29 日、トルコのイスタンブールで開かれた。 ロシア代表団は協議後、同国が求めるウクライナの軍事的中立化をめぐって進展があったとし、ウクライナの首都キエフと北部チェルニヒウへの攻撃を「劇的に減らす」と述べた。 ロシアの代表団を率いるメジンスキー大統領補佐官は「ウクライナ側から(中立化についての)合意に向けた提案を受けた。 この提案を大統領に報告し、我々の回答を示す。」と話した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は今回の停戦協議に向けて中立化について話し合う用意があると表明。 その際、ウクライナの安全が保証されることが条件になるとして、第三国が保証国となることを求めていた。 メジンスキー氏はウクライナの中立化と同国に対する安全の保証で両国が合意に達した場合、文書の調印式と同時にゼレンスキー氏とロシアのプーチン大統領の首脳会談が行われる可能性にも言及した。

タス通信によると、この日の協議でロシア側はウクライナ側から中立、非同盟化や非核保有国としての地位の維持への意思表明と、すべての種類の大量破壊兵器の生産・配備を拒否すること、領土内に外国軍を駐留させない考えを記した書面を受け取ったという。 協議は 29 日午前 10 時(日本時間午後 4 時)ごろ、ボスポラス海峡に面するトルコ大統領府の関連施設で始まった。 会場の前には 100 人以上の報道陣が集まった。 ウクライナ側は、レズニコフ国防相ら、ロシア側はメジンスキー氏らが出席し、対面での話し合いが行われた。

今回の協議を仲介したトルコのエルドアン大統領は事前に双方の代表団と会談し、「長引く戦いは、誰の利益にもならない」、「悲劇を止められるのかは双方にかかっている」と述べ、停戦への期待を示した。 黒海を挟んでロシア、ウクライナと向かい合うトルコは今月 10 日、南部アンタルヤで両国の外相会談を実現するなど、積極的な仲介を続けている。 トルコには、仲介に効果的な役割を果たせば、国際社会での存在感が高まり、人権問題などをめぐってぎくしゃくする欧米との関係改善にも有利に働くとの思惑もあるとみられる。

ロシア軍は、ミサイルなどによる攻撃の手を緩めていない。 ロシア国防省は 29 日、ウクライナ北西部リブネ近郊の燃料基地を巡航ミサイルで破壊した、などと発表した。 ウクライナ各地で被害の報告が相次ぐ。 国営通信ウクルインフォルムは 29 日、南部ミコライウの市庁舎が砲撃で大破したと報じた。 現地からの画像では、市庁舎の中央に大きな穴が開いているのが確認できる。 同通信が市当局の話として伝えたところでは、50 - 100 人が現場から脱出したものの民間人 8 人、軍人 3 人を捜索中という。

中部の工業都市ドニプロ周辺でも、地元当局が 29 日、複数のミサイル攻撃があり、1 人がけがをしたと SNS に投稿した。 国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) の 28 日の発表によると、民間人の死者は少なくとも 1,151 人、けが人は 1,824 人にのぼっているという。 実際には、さらに多い可能性があるとしている。 一方、地上戦ではウクライナ側が反転攻勢を強めている。 激戦が続いていた首都キエフ近郊のイルピンでは 28 日、地元当局が奪還に成功したと発表。 米国防総省高官は 28 日、ウクライナ軍が北東部スムイ南方の街を奪い返したほか、南部ヘルソンも取り戻す動きがあるとの分析を示した。 (イスタンブール = 高野裕介、パリ = 西村宏治、asahi = 3-29-22)


プーチン大統領、戦争終結へ妥協の用意ないもよう = 米高官

[ワシントン] 米国務省高官は 28 日、ロシアのプーチン大統領が現時点でウクライナでの戦争終結に向け「妥協する用意はないもよう」で、ウクライナのゼレンスキー大統領がどのような決断をしなければならないかは不明という認識を示した。 ロシアとウクライナは、初の対面形式での停戦交渉を行う準備を進めている。 トルコのエルドアン大統領は 27 日、プーチン大統領と電話会談し、ロシアとウクライナの次回の協議をイスタンブールで開催することで合意。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は、停戦交渉がトルコで 29 日から始まる可能性があるとし、対面で交渉するのは重要と指摘した。 ゼレンスキー大統領は 27 日、ロシアとの和平合意の一環として、ウクライナの中立化と東部ドンバス地方を巡る譲歩を協議する用意があると述べた。 ゼレンスキー大統領はまた、停戦とロシア軍の撤退なしに和平合意の実現は可能ではないと言明した。 (Reuters = 3-29-22) 3/29(火) 0:52

停戦交渉、トルコで再開へ ロシアが国家分断画策か ウクライナ「朝鮮半島化」警戒

【イスタンブール】 ロシアのプーチン大統領は 27 日、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、ウクライナ側との停戦交渉について、次回協議をイスタンブールで行うことで合意した。 トルコ大統領府のカルン報道官は日程に関し「今週」と述べるにとどめた。 ロシアとウクライナの深まる相互不信を背景に、なお調整が続いているもようだ。 エルドアン氏は電話会談で「ロシアとウクライナの停戦、和平をできるだけ早く確立する必要がある」と強調。 トルコは実現に向け貢献を続けると訴えた。

ウクライナの交渉担当者で最高会議(国会)議員のアラハミア氏はこれより先、ロシアとの協議について「トルコで 28 日から 30 日まで行われる」と表明した。 ただ、ロシアのメディアによれば、同国の代表団を率いるメジンスキー大統領補佐官は「29 日に始まる」と述べており、情報が錯そうしている。 一方、ウクライナ国防省の情報部門は 27 日、声明を出し、ロシアのプーチン大統領がウクライナの南部と東部のロシア側支配地域を連結させて本国から切り離し、国家が南北に分かれる朝鮮半島のような分断を画策していると強い警戒心を示した。

情報部門の責任者は、ロシア軍が首都キエフ周辺で十分な戦果を上げられず、中央政府の転覆に失敗したことを受けて「プーチン氏は主要な作戦目標を南部と東部に変更した」と分析。 ロシアが 2014 年に一方的に併合したクリミア半島がある南部と、親ロシア派武装勢力が占拠する東部 2 州を一体化させようとしていると主張した。 (jiji = 3-28-22)


ウクライナ軍首都近郊で攻勢 ロシア東部戦線に兵力集中か

シトニャキ、ウクライナ - ウクライナ軍は首都キーウ(ロシア語・キエフ)の西約 60 キロに位置するマカリウ周辺で反撃に転じ、首都の包囲、陥落を目論んだロシア軍を押し戻した。 マカリウ郊外のシトニャキには、ウクライナ軍の攻撃で破壊され、焼け焦げたロシア軍の戦車や多連装ロケット砲、装甲兵員輸送車両などが乗り捨てられており、戦闘の激しさを物語っている。

北部戦線でウクライナ軍の攻勢を受けたロシア軍は、首都陥落という侵攻初期の作戦から、親ロシア派武装勢力が実効支配する工業地帯、ドンバス地域を含む東部戦線に兵力を集中してウクライナ軍を消耗させて、キーウに同国の東西分割を迫る作戦に変更したとみられる。 しかしウクライナも、2014 年のロシアによるクリミア半島併合以降、東部に兵力を集中しているおり、ウクライナ戦争は長期戦の様相を呈し始めている。 (AP通信 = 3-28-22)


ゼレンスキー氏「拉致された市長、数人の遺体発見」

英エコノミスト誌は 27 日、ウクライナのゼレンスキー大統領の話として、ロシア軍に拉致されたとみられるウクライナの複数の市長のうち、すでに数人が殺害されたとの見方を伝えた。 ウクライナの地元メディアも 28 日、同誌の報道を引用しながら伝えた。 同誌によると、ゼレンスキー氏はインタビューで、「ロシア軍は我々の都市の市長らを拉致し、そのうちの何人かを殺害した。 数人を遺体で発見した。」と述べたという。 ウクライナ政府は 25 日、ロシア軍の侵攻後、これまでに国内各地の市長ら 14 人が拘束され、人質にとられていると発表していた。 (asahi = 3-28-22)


ハイネケン、ロシア事業から撤退

オランダのビール大手「ハイネケン」は 28 日、ロシアでの事業から撤退すると発表した。 同社は以前からロシアでの新規投資などを停止する方針を示していた。 ロイター通信が伝えた。 報道によると、同社は声明で「現在の状況では、ロシアでの事業を続けることはできないという結論に達した」とした。 (asahi = 3-28-22)


失敗を美化? 通信傍受で苦戦? ロシア軍「東部に集中」の狙いは

ロシア軍の幹部が 25 日、侵攻開始から 1 カ月の戦いを総括し、「今後は(ウクライナ東部の)ドンバス地方に集中する」との方針を打ち出した。 首都キエフ攻略が狙いとみられていたが、断念したのか。 あるいは苦戦を隠すための国内向けのポーズづくりか。 戦況を踏まえて、今後のロシア軍の出方を探る。

「ウクライナ軍の戦力は大幅に低下した。 これで我々は主要目標の達成に集中できる。 ドンバスの解放だ。」 ロシア軍参謀本部のセルゲイ・ルツコイ作戦本部長は 25 日、こう強調した。 作戦の目的は最初から、親ロシア派の多いドンバス地方にある「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の支援だったと説明。 そのために序盤戦でウクライナ軍に全土で大損害を与え、妨害できないようにした - - という理屈だ。 この 1 カ月でウクライナ軍に与えた打撃を列挙。 作戦の「第 1 段階」を終え、今後はドンバス地方に集中する方針を示した。

この発言は米国でも波紋を呼んだ。 事実上、首都キエフ攻略を断念する意味合いではないかとの観測が生まれたためだ。 米政府内では、今回の発言は苦戦を受けて目標を下方修正する事実上の方針転換だとの見方が出ている。 米国防総省の高官は 25 日の記者会見で「ロシア軍は自らの能力を過信し、ウクライナの抵抗を過小評価していた」と指摘した。 ロシア軍はキエフ攻略などが低調な半面、数日前からドンバス地方での戦闘を激化させていたという。 米高官は「彼らが戦略目標をいま変えようとしているのかは、断言するのは難しい。 ただドンバスを優先するというのは、今日彼ら自身も認めたのだ。」とした。

専門家からも、今後ロシア軍はドンバス地方の占領により「勝利宣言」をすることで、一定の落としどころにする可能性があるとの指摘が出ている。 一方、ロシア軍が本当にウクライナ各地での戦闘行為を止めるかは不透明だ。 米戦争研究所 (ISW) は 25 日、ルツコイ氏の発言について「ロシア軍の失敗を国内向けに美化し、現時点で前進している唯一の地域に目を向けさせる狙いだ」と分析。

ロシア軍の本来の狙いはキエフをはじめとする主要都市の制圧であり、ルツコイ氏の発言は苦戦を正当化するための「偽り」だと指摘した。 「ロシアがドネツクとルガンスクの支配だけで満足すると考えるのは正確ではないだろう」として、ほかの地域での攻撃も止まっておらず、今後も主要都市への攻撃が続くことを警告した。

将官 7 人死亡、暗号化しない通信傍受され?

ルトスコイ氏は、1 カ月間の戦いを振り返り戦果を強調した。 「最初の 2 日で制空権を確保。 多方面から作戦を進め、キエフやハリコフなど主要都市を封鎖した。」と誇った。 だが実際の戦況は、大きく異なる。 ロシアの思惑通りには進んでいないのは明らかだ。 特にキエフを包囲するように集まった地上部隊は、ウクライナ軍の激しい抵抗に遭って郊外で足踏みが続く。 ここ数日はウクライナ軍も反撃を強め、一部の町を奪還したり、ロシア軍を後退させたりする動きが出ている。

米国防総省は、キエフ周辺のロシア軍は「防御態勢に入った。 前進を試みる意思はない。」と分析。 塹壕を掘り、その場にとどまる動きを見せ始めているという。 苦戦はほかの主要都市でも同様だ。 第 2 の都市、北東部ハリコフでも膠着状態が続く。 一度は制圧した南部ヘルソンでも、25 日になってウクライナ軍が奪還に向けて反転攻勢に出た。 24 日には、南東部ベルジャンスクの港に停泊中だった揚陸艦がウクライナ軍の攻撃を受け、大破したことも確認された。 ドンバス地方にある南東部マリウポリでは、ロシア軍が包囲を狭め、住宅地や学校などへの砲爆撃によって降伏を迫る動きを強めている。

今後、ロシア軍が短期的に戦況を好転させる可能性は低い。 前線部隊への補給に問題を抱え、燃料や食料不足に苦しむ場面が続く。 制空権も確保できず、部隊同士の連携の悪さや、兵士の士気の低さも指摘されている。 犠牲の大きさも深刻だとみられる。 ロシア側はロシア兵の死者が 1,351 人と発表。 だが、北大西洋条約機構 (NATO) の推計では、ロシア兵の死者は 7 千 - 1 万 5 千人で、負傷者や捕虜も合わせると最大 4 万人にのぼるとしている。 侵攻開始前に集結したロシア軍は最大 19 万人規模だったことを踏まえると損失は大きいとみられる。

また AFP 通信は西側諸国の当局情報として、これまでにロシア軍将官 7 人が死亡したと報じた。 現場で暗号化されていない通信手段を使い、ウクライナ側に傍受されて狙われたことが一因だとみられている。 増援の計画も思うように進んでいないようだ。 ジョージアに展開するロシア兵をウクライナに送る動きがあるが、外国人部隊も含め、大規模な増援は実現していないと米当局はみる。

今後、ロシア軍が実際にドンバス地方に攻撃を集中させても、占領は容易ではない。 ゼレンスキー大統領は「独立国家として妥協できない」として領土は譲り渡さない意向を示している。 ロシア軍はドンバス地方を包囲し、東部のウクライナ軍を孤立させる動きをみせる。 すでに親ロシア派が一部を占領して足場がある地域でもあり、空爆やミサイル攻撃を強めている。 ウクライナ側も抵抗の構えで、激戦が予想される。 (ワルシャワ = 高野遼、asahi = 3-26-22)


ロシア国防省「東部住民の解放に集中」 首都キエフの制圧作戦は停滞

ロシア国防省幹部は 25 日、ウクライナへの軍事侵攻に関して「作戦の第 1 段階の主な課題は達成された。 特別軍事作戦の主な目的であるドンバス(ウクライナ東部)住民の解放に集中する」などと述べた。 首都キエフの制圧作戦の停滞を受け、ロシア軍は東部の支配確立に作戦の焦点を移していく可能性がある。 同省のコナシェンコフ報道官は 25 日の記者会見で、ロシア軍の侵攻開始後、親ロシア派勢力の支配地はウクライナ東部ルガンスク州の 93%、ドネツク州の 53%に広がったと説明。同報道官は東部地域での戦果を強調し、「特別軍事作戦は当初承認された計画どおりに進んでいる」と述べた。

ロシア国防省によると、これまでに 1,351 人のロシア軍兵士が死亡した。 今月 2 日時点での戦死者 498 人と比べ、約 2.7 倍に増えた。 ウクライナ側はロシア軍の死者数を 1 万 6 千人以上と見ている。 これに対し、米国防総省高官は 25 日、ロシア軍がキエフへの地上部隊の進軍を停止し、親ロシア派支配地域を足がかりに東部地域での戦闘に集中していく可能性がある、との見方を示した。 高官はロシア軍の動きについて「キエフの北側でも、北西側でも進展は見られない」と指摘。 その上で、「ロシア軍は防御態勢に入っている。

キエフへの地上の進軍は停止したように見えるが、空爆や砲撃は続いている。」と述べた。 ウクライナ軍によるキエフ西方の街マカリウの奪還作戦も成功したとの認識を示した。 ロシア国防省が東部地域を優先すると表明したことについては「実質的に確保するだけでなく、将来的な交渉のための戦略として、東部からウクライナ軍を切り離そうとしていると考えている」と話した。 ウクライナメディアによると、キエフ周辺では近郊のブチャ、ホストメリ、イルピン、北方のスラブティッチ、22 日にウクライナ軍が奪還した西方のマカリウなどで戦闘が続いている。 主にかくらんを狙うロシア軍の工作部隊とウクライナ軍との銃撃戦が起きているという。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 3-26-22)


ウクライナ軍、奪い返した村も

ウクライナのニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」は 25 日、南部の都市ヘルソン近郊でロシア軍が塹壕を掘り、そこから発砲していると地元のウクライナ軍当局の情報をもとに報じた。 戦いの長期化も視野に入れているとみられる。 ウクライナ・プラウダがまとめた各地の軍当局の情報によると、首都キエフ周辺でウクライナ軍は頑強に抵抗しているものの、ロシア軍の砲撃や迫撃砲による被害が絶えない。 北東部の第 2 の都市ハリコフを含む多くの地域では、激しい砲撃やミサイル攻撃を受けている。 一方、南部ザポリージャ州ではいくつかの地域でロシア軍を後退させ、奪い返した村もあるという。 (asahi = 3-25-22)


マリウポリ、飢餓で死者が 支援要望

ウクライナ南東部のマリウポリ市議会は 25 日、SNS 「テレグラム」への投稿で、市民が飢餓で亡くなり始めているとして助けを求めた。 同国メディアの「キエフ・インディペンデント」が報じた。 市議会によると、ロシア軍が停戦協定を破っているため、「人道回廊」を通じた支援ができず、多くの人が食料がないまま放置されているという。 ロイター通信によると、ウクライナ高官は 24 日夜、ロシア軍が過去 3 日間、マリウポリに人道援助が入るのを妨害していると発表した。 (asahi = 3-25-22)


バイデン大統領「今日ほど結束したことはない」 NATO 一丸をアピール

バイデン米大統領は 24 日、ベルギーの首都ブリュッセルで北大西洋条約機構 (NATO) の首脳会議などに出席した後、記者会見した。 バイデン氏は「NATO は今日ほど結束したことはない」と述べ、ロシアのウクライナ侵攻に対して NATO が一丸となっていることをアピールした。 バイデン氏は「プーチン(ロシア大統領)は NATO が分裂することに賭けていた」と強調。 昨年 12 月にあったプーチン氏との電話協議を振り返り、「彼は我々がこの結束を維持できると思っていないことは明らかだった」と指摘した。 さらにバイデン氏は「プーチンはウクライナに侵攻し、彼が意図した結果とはまったく反対の結果になっている」とも語った。

また、ロシアを主要 20 カ国・地域 (G20) のメンバーから除外すべきか問われたバイデン氏は「私の答えはイエスだ。 G20 (の判断)にもよるが、インドネシアなどの国が同意しない場合、ウクライナも同様に参加できるようにしなければならない」と語った。 ロシアが化学兵器を使用した場合に軍事的な対応をするかについては、「我々は対応するだろう。 どんな対応をするかは、どんな使用をするかによって異なる。」と答えた。 (asahi = 3-25-22)


ウクライナの子ども、半数超の 430 万人が避難生活 ユニセフ発表

国連児童基金(ユニセフ)は 24 日、ロシアが 2 月 24 日にウクライナ侵攻を開始して以降、ウクライナの子どもたちの半数以上が故郷を追われていると発表した。 AFP 通信が報じた。 ユニセフは声明で、「この 1 カ月のウクライナでの戦争で、430 万人の子どもたちが避難を余儀なくされている。 これは推計約 750 万人という同国の子どもたちの半分以上にあたる」とした。 うち 180 万人が国外へ難民として逃れ、250 万人が国内で避難しているという。 (asahi = 3-24-22)


ロシア兵最大 4 万人死傷・捕虜 = NATO 推計、侵攻 1 カ月で - 米報道

【ワシントン】 複数の米メディアは 23 日、ウクライナへの侵攻 1 カ月間で、最大 4 万人のロシア兵が死傷または捕虜、行方不明になったとする北大西洋条約機構 (NATO) の推計を報じた。 このうち 7,000 - 1 万 5,000 人が戦死したとみられている。 (jiji = 3-24-22)


ウクライナ、露揚陸艦「オルスク」撃沈と報告

ウクライナ海軍は 24 日、アゾフ海に面した南部の港湾都市ベルジャンシク周辺で、ロシアの戦車揚陸艦「オルスク」を撃沈したとする動画と写真を公表した。 動画には攻撃された艦艇で爆発が起きる様子が映されているが、オルスクかどうかは不明。 (sankei = 3-24-22)


ロシアは物価高騰とルーブル安の悪循環に

ロシア連邦統計局によると、3 月 12 日から 18 日までのロシア国内の消費者物価は、前週比 1.9% 上昇した。 前週は同 2.1%、前々週は同 2.2% であり、3 週連続で 2% 程度の高い上昇率が続いている。 日本銀行が目標とする年間 2% の物価上昇率が、現在のロシアではわずか 1 週間で達成されているのである。 1週間で 2% ずつ物価が上昇すれば、1 年間で物価は 2.8 倍になる計算だ。 このように、ロシアはハイパーインフレの状況にある。

ロシア連邦統計局が毎週水曜日に公表するこの消費者物価週次統計は、ロシアのウクライナ侵攻後のロシアの経済状況を確認できる、数少ない経済指標の一つであり貴重である。 3 月 12 日から 18 日までの 1 週間で前週から 10% 以上価格が上昇したのは、グラニュー糖の前週比 13.8% と、玉葱の同 13.7% の 2 つである。 グラニュー糖は前週も同 12.8% と高騰していた。 輸入品でルーブル安の影響を受けていることと、買い急ぎによる品薄が背景にあるのではないか。 この 2 つの品目に続いて高い物価上昇となったのは、トルコへの休暇旅行の前週比 9.7%、トマトの同 8.2%、国産乗用車(新車)の同 7.4% である。

歯止めがかからないルーブル安と物価上昇は相乗的に進みやすい

さらに、2 月から最新週までの価格上昇率で上位を占めるのは、トルコへの休暇旅行の 62.7%、グラニュー糖の 30.8%、トマトの 26.7%、テレビの 25.2%、バナナの 24.9% 、輸入乗用車(新車)の 19.6%、国産乗用車(新車)の 18.0% となっている。 総じて食料品、自動車、電気製品の価格上昇が目立っている。 生鮮食品については、2014 年のクリミア併合後の海外からの制裁措置を受けて、国内生産を増やしてきたが、それでも、トマト、バナナ、玉葱、キャベツ、人参等の価格上昇は目立っている。 国内での生産・供給に支障が生じていることの影響や、買い急ぎ、買い溜めの影響が出ているのかもしれない。

足元でのロシアの価格高騰は、ルーブル安による輸入品、輸入原材料価格の上昇の影響と、消費者の買い急ぎによる品不足によるところが大きいだろう。 ウクライナ侵攻後のルーブル安には歯止めがかかっていない状況であり、現状は 1 ドル 120 ルーブル程度と、ウクライナ侵攻前の 75 ルーブル程度から 6 割下落した状況にある。 外貨準備を凍結されたため、ロシア中央銀行はルーブル買い支えの為替介入ができない。 為替防衛の目的でロシア中央銀行は政策金利を 20% まで引き上げたが、これ以上の引き上げは国内景気にかなりの影響を及ぼすため慎重である。

23 日にプーチン大統領は、ロシアからの天然ガス輸出の代金をルーブルで支払うように先進各国に要求した。 それによって海外でのルーブルの調達を促し、ルーブル買い為替介入と同等の効果を得ようとしていると見られる。 しかし、それは、重要な外貨獲得の機会を逸することにもなり、自分で自分の首を絞める措置のようにも見える。 ロシア国内で物価高騰が進めば、その分、ルーブルの対外的な価値は低下し、それがさらなるルーブル安を招きやすい。 こうした物価高騰とルーブル安は相乗的に進みやすいのである。

急激なスタグフレーションに向かうロシア経済

一方、海外との貿易の縮小、金利上昇、物価高による消費悪化等を受けて、ロシア国内の経済が急速に悪化するのは、まさにこれからである。 その結果、多くの企業が破綻することの影響が、海外企業のロシア事業撤退・一時停止の影響とともに、国内製品・サービスの供給を減少させるだろう。 そうなれば、ルーブル安と買い急ぎによる物価高騰から、物不足による物価高騰へと局面が変わっていく。 こうしてロシアは、物価高騰と経済の縮小が同時に進む、急激なスタグフレーションに陥るのである。 (NRI = 3-24-22)


"独裁崩壊" プーチン大統領の後継者浮上 中毒、急病、事故 … 国内の反勢力が画策か

諜報機関の得意技「ソ連時代にも指導者排除の過去」識者

ロシアによるウクライナ侵攻は 24 日で 1 カ月となった。 ロシア軍は投入戦力の 1 割以上を失い、将官 5 人が死亡したとみられるが、首都キエフや第 2 の都市ハリコフなどを制圧できていない。 目算が狂ったプーチン大統領が生物・化学兵器や核兵器を使う可能性も否定できないが、ロシア国内の「反プーチン」勢力が「中毒や急病、事故」によるプーチン氏排除を画策しているという情報が浮上する。

米国防総省高官は 23 日、ウクライナ軍が首都キエフ東方のロシア軍部隊を、キエフの中心部から約 55 キロの地点まで数十キロ後退させたとの分析を明らかにした。 キエフ近郊自治体の情報では、近郊 3 自治体をウクライナ軍が再掌握し、反撃の動きを強めた。

露軍戦力 9 割、将官 5 人死亡

同省はウクライナ国内で展開するロシアの戦闘部隊が、当初の投入兵力の 9 割を下回ったと試算した。 侵攻前、約 15 万人を集結させたとされる。 食料や燃料、武器弾薬も減少しているという。 また、ロシア軍の侵攻開始後、中将を含む将官 5 人が死亡したと欧米メディアが報じた。 約 20 人の将官をウクライナに投入したとされる。 米紙ウォールストリート・ジャーナルは、ロシア軍の将官やパイロット、砲兵指揮官を狙う特殊作戦部隊がウクライナ軍内に組織され、無線通信の傍受などで居場所を特定し、狙撃や砲撃を試みていると伝えた。

ロシアの軍事・安全保障政策に詳しい東大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏は「ロシア軍はキエフもハリコフも落とせず、ウクライナを屈服させることができなかった。 ロシア軍が順調に勝っている証拠はない。」と話す。 ウクライナ側の被害も甚大だ。 ゼレンスキー大統領は 12 日時点でウクライナ兵約 1,300 人が死亡したと発表した。 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、南東部マリウポリで民間人 3,000 人以上が死亡したという。

戦況は一進一退だが、「ロシアは経済制裁で国内の反発が強まる厳しい状況で、立て直しができなくなっていると考えられる」と小泉氏はみる。 ロシア国内でプーチン氏自身も窮地に立たされている可能性がある。 ウクライナ国防省情報総局は 20 日、公式フェイスブックに「中毒、急病、事故 - ロシアのエリートがプーチンを排除する可能性を検討」と投稿した。

情報戦の中で真偽のほどは不明だが、ロシア側からの情報として、「ビジネスや政治のエリートの中に、プーチンに反対する影響力のあるグループが形成されている」と指摘、連邦保安局 (FSB) のアレクサンドル・ボルトニコフ長官を「プーチンの後継者と考えている」と発信した。 FSB はプーチン氏の出身母体でもあるソ連国家保安委員会 (KGB) の流れをくむ諜報機関で、敵を「中毒」や「急病」に追い込むのは得意中の得意だ。 野党指導者のナワリヌイ氏は 2020 年、神経剤「ノビチョク」を盛られ、重体に陥ったが、FSB 工作員の関与が疑われている。

前出の小泉氏は「ソ連時代にも周囲が示し合わせて指導者を排除した過去もあり、『プーチン排除』の可能性はゼロではない。 プーチン氏はメンツを保つためにどんな無理な手を使ってでも勝とうとすると想像がつく」と話す。

生物兵器向け防護服の準備

懸念されるのは生物・化学兵器や核兵器の使用だ。 ロシア軍がウクライナに生物兵器向け防護服の持ち込みを始めたと米メディアが報じた。 「生物化学兵器などの大量破壊兵器を使用する可能性は高い。 都市の維持を不可能にして占拠するなど戦局を変える狙いのほか、ウクライナ国民の厭戦ムードを高めたり、『ウクライナ側が使用した』といって核使用の口実に使ったりする可能性もある。(小泉氏)」

最悪の事態が懸念される事態でも北大西洋条約機構 (NATO) は介入しないのか。 小泉氏は「ロシアが核を使用することを恐れて介入しないか、核抑止のために介入するかは計り知れない。 西側の世論に依存する部分が大きいだろう。」と分析した。 (ZakZak = 3-24-22)

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