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ウクライナの EU 加盟「27 年 1 月までに」 調整中の和平案に明記か

ウクライナの和平案をめぐり、英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) は 12 日、米国とウクライナが調整している最新の修正案に、ウクライナを 2027 年 1 月 1 日までに欧州連合 (EU) へ加盟させる内容が盛り込まれた、と報じた。 期日内の実現は難しいとみられるが、加盟手続きが前進する可能性がある。 FT によると、修正案は米国がクリスマスまでに調整を終えることを目指している。 ウクライナは 24 年 6 月に正式な加盟交渉を開始し、28 年末までの交渉完了を目標にしている。 27 年 1 月までに加盟を実現するには、EU 側の加盟手続きの見直しなど、さらなる例外的な対応が必要でハードルは高い。

ウクライナの EU 加盟交渉完了には、加盟 27 カ国すべての支持が必要だが、これまでハンガリーが慎重な姿勢を示している。 EU は 11 日、ウクライナ西部のリビウで非公式の閣僚級会合を開き、ウクライナの EU 加盟の見通しについて話し合った。 会合後、EU とウクライナは共同声明を発表。 「ウクライナの EU 加盟は大陸全体の安全保障を強化する」とし、加盟に向けてウクライナの汚職対策を強化していく方針などを示した。

ゼレンスキー氏、北東部の要衝を視察

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は 12 日、北東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを視察した、と SNS で発表した。 ロシア軍の司令部は 11 月、クピャンスクを制圧したとプーチン大統領に報告していた。 ゼレンスキー氏は同市内で撮影したとみられる動画や写真を投稿し、「ロシアはうそをついている。 ウクライナは守り抜いている。」と記した。 ゼレンスキー氏は 15 日にドイツ・ベルリンを訪問し、メルツ独首相と会談する予定。 ドイツ政府報道官によると、和平案などについて協議するという。 (パリ・坂本進、asahi = 12-13-25)


ウクライナ、領土問題で譲歩か … 米に提出の修正和平案巡り独首相が言及

AFP 通信によると、ロシアの侵略を受けるウクライナは 10 日、米国が主導する和平案について、当初の 28 項目から 20 項目に絞った修正版を米国に提出した。 ドイツのメルツ首相は 11 日、修正版ではウクライナ側が領土問題で譲歩する可能性が盛り込まれていると明らかにした。 和平案を巡り、今後数日間にわたり活発な議論が行われる見通しだ。

メルツ氏は 11 日、ベルリンで北大西洋条約機構 (NATO) のマルク・ルッテ事務総長と共同で記者会見し、「重要な問題は領土についてウクライナがどこまで譲歩できるかだ」と語った。 これに先立ち、メルツ氏は 10 日、英仏の首脳と共に米国のトランプ大統領と電話会談し、修正版について説明した。 今週末にウクライナを交えた協議を開くことも提案したという。

一方、トランプ氏は 10 日、米ホワイトハウスで記者団に対し、欧州首脳との電話会談について「かなり強い言葉」で議論を交わし、「ささいな意見の違い」があったと述べた。 具体的な進展が見込める場合のみ、米代表団を協議に参加させる考えも示した。 ウクライナ側は、和平案の修正と並行して、ロシアの再侵略を防ぐために米国が提供する「安全の保証」と経済復興に関する二つの別文書の策定も進めている。 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 10 日、ベッセント米財務長官らと復興や経済再建策について意見交換し、主要事項で認識を共有したという。 (yomiuri = 12-12-25)


NATO 事務総長、中国を批判「ロシアの生命線」ウクライナ侵攻で

北大西洋条約機構のマルク・ルッテ事務総長は 11 日、訪問先の独ベルリンで、ロシアによるウクライナ侵攻において、中国が「ロシアの生命線(物資補給路)」になっていると批判した。 ルッテ氏は安全保障会議での演説で、「中国は同盟国(ロシア)がウクライナで敗北するのを阻止しようとしている」、「中国の支援なしで、ロシアがこの戦争を継続することはできないだろう」と述べた。 ロシアの主要貿易相手国の一つである中国は、ウクライナ紛争について「中立」を標榜しているが、ロシアによる侵攻に対する批判を避けている。 (AFP/時事 = 12/12/25)


「ロシア軍需の心臓部が停止!」 ウクライナ、ロシア重要データ "165TB" を破壊、物流システムに壊滅的打撃

ウクライナのサイバー部隊は、ロシアの軍需品会社に大規模なサイバー攻撃を行い、165 テラバイト (TB) に達する重要なデータを削除したと「キーウ・インディペンデント」などが 6 日(現地時間)報じた。 「Newsis」の報道によると、ウクライナの軍事情報局 (HUR) と協力するハッキンググループ BO チームは、ロシアの企業 5,000 社以上が利用する物流・運送会社 Elttrans Plus グループをターゲットにハッキング攻撃を行った。

同社はロシア国内の上位 10 社に入る通関・物流企業の一つであり、全国 5,000 社以上の企業に海上・航空・道路運送経路を通じて国内外の貨物を管理し、倉庫保管および統合運送サービスを提供している。 HUR は「この会社は制裁品目と中国製電子部品をロシアに運送する会社で、これらの電子部品はロシアの軍需産業に活用されている」と説明した。

今回の攻撃により、700 台以上のコンピュータとサーバーがダウンし、1,000 人以上のユーザーアカウントが削除され、165 テラバイトの重要データが破壊または暗号化されたという。 Elttrans Plus のウェブサイトには、ウクライナ国軍の日(12 月 6 日)を祝うメッセージが表示されたと伝えられている。 監視カメラ映像や貨物申告書も削除されたとされる。 「キーウ・ポスト」は出入管理および映像監視システムが麻痺し、データ保存所とバックアップが削除され、データセンターの核心機器とネットワーク機器の動作が中断されたと報じた。 関係者は「これは単なる混乱ではなく、デジタルインフラが完全に麻痺したことだ」と述べた。

これに先立ち、HUR は 10 月にシベリア最大のインターネットサービスプロバイダーの一つである Orion Telecom をサイバー攻撃し、6,600 万ルーブル(約 1 億 3 千万円)の被害を与えたとされている。 (織田昌大、江南タイムズ = 12-9-25)


米ウクライナがロシアとの和平案協議 米特使とプーチン氏の会談受け

米国務省は 5 日、ウクライナとロシアの和平案を巡り、仲介を試みてきたトランプ米政権のウィトコフ特使らが、訪米したウクライナのウメロウ国家安全保障防衛会議書記らと協議したと発表した。 具体的な内容には触れず、「安全保障上の調整事項の枠組みについて合意し、永続的な平和を保つのに必要な抑止力について議論した」とした。

協議は 4 - 5 日にあり、米側は、ロシア寄りの内容が際立つ当初の案を主導したウィトコフ氏に加え、トランプ大統領の長女の夫クシュナー氏が参加した。 この 2 人が 2 日にモスクワでロシアのプーチン大統領と会談した内容をウクライナ側に説明し、停戦への道筋について議論したという。 ウクライナ側からはフナトウ軍参謀総長も出席した。

2 日の米ロの交渉では、当初の案を土台に米国がウクライナとまとめた「修正案」を軸に議論したが、ロシアとの立場の隔たりは依然として大きい。 米国務省によると、今回の米ウ協議では「どのような(和平案の)合意であれ、進展があるかどうかは、ロシアが長期的な平和に向けて真剣な意欲を示すかにかかっている」との認識で双方が一致した。 6 日も協議を続ける。 AP 通信によると、協議はウィトコフ氏の関連企業が経営する米フロリダ州の保養施設で進められた。

欧州首脳は 8 日にゼレンスキー氏と協議

一方、フランスのマクロン大統領は 6 日、米国が仲介する和平交渉の進展を協議するため、8 日に英ロンドンで、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談すると自身の SNS で明らかにした。 会談には、スターマー英首相とメルツ独首相も同席するという。 マクロン氏は X (旧ツイッター)で、「有志連合は米国と協力し、ウクライナへの安全保障の保証の提供に向けた取り組みを続けている。 これをなくして強固で持続的な平和は実現せず、ウクライナに懸かっているのは欧州全体の安全保障でもある。」と強調した。 (ワシントン・青山直篤、asahi = 12-7-25)


ウィトコフ米特使、プーチン氏との会談「良好」 ウクライナ側に報告

ウクライナのシビハ外相は 3 日、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談したウィトコフ米特使から、協議結果の報告がウクライナ側にあったことを明かした。 ロイター通信が報じた。 「彼らの見解として良好な会談だったとの報告を受けた」という。 シビハ氏は訪問先のブリュッセルで記者団に説明した。 米ウによる協議を近く米国で開催することを提案されたとしている。 ゼレンスキー大統領も 3 日、ビデオ演説で米側と近く協議する用意があると説明した。

約 5 時間に及んだ 2 日のプーチン氏とウィトコフ氏の会談では、米国がウクライナと策定した和平の「修正案」を軸に議論した。 しかし、米ロの主張の隔たりは埋まらず、会談に同席したロシアのウシャコフ大統領補佐官は「妥協案は見つかっていない」と説明した。 協議の継続で合意したとしている。 ブリュッセルでは 3 日、英独仏などの安全保障担当の高官による協議が実施され、ウクライナのウメロウ国家安全保障防衛会議書記が参加した。 ウメロウ氏は「外交プロセスの次の段階について、仲間に詳細を伝えた。」と SNS に投稿した。 (パリ・坂本進、asahi = 12-4-25)


ロシア国防省、ウクライナ東部の要衝ポクロウシク制圧と発表 映像を公開

ロシア国防省は、ウクライナ東部ドネツク州の要衝ポクロウシクを制圧したと発表した。 ロシア軍兵士が同市中心部に入った際に撮影されたものとされる映像を 1 日、公開した。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長らが 11 月 30 日、ウクライナ東部ドネツク州の要衝ポクロウシクや北東部ハルキウ州のボウチャンスクを制圧したとプーチン大統領に報告したと明らかにした。 (Reuters = 12-2-25)


ロシアがキーウへ 600 機ドローンと 36 発ミサイルを発射 … "最悪の夜" で死傷者続出、首都が炎に包まれる

ロシアが 1 か月ぶりに最大規模のドローン(無人機)とミサイル攻撃をウクライナの首都キーウ周辺を狙って敢行し、少なくとも 3 人が死亡、数十人が負傷したと AP 通信と CNN、BBC などが 29 日に報じた。 Newsis の報道によると、各メディアによれば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、28 日の夜から 29 日の未明にかけてロシアがミサイル約 36 発とドローン 600 機をキーウ地域に発射したと明らかにしたという。

ゼレンスキー大統領は「ロシアの攻撃の主な標的はエネルギーインフラと民間施設で、住宅建物に広範な被害と火災が発生した。 現時点で数十人の負傷者と 3 人の死者が出ている」と伝えた。 メディアは、ロシアの今回の攻撃が米国主導の和平交渉が進行する中、ウクライナ交渉代表団の訪米を控えた時に起こったと指摘した。

ウクライナ空軍は、この日の朝までに飛来した発射体の大半を迎撃したとし、ほとんどがイラン製シャヘド・ドローンとロシアの長距離ゲルベラ・ドローンだったと発表した。 ウクライナのドミトロ・クレーバ外相もテレグラムを通じて、ロシアのドローンとミサイルが住宅地と国家電力網、重要インフラを攻撃したとし、「特にキーウが非常に厳しい夜を過ごした」と明らかにした。

現地当局は、キーウで 42 歳の男性を含む 2 人が死亡し、15 人が負傷したと確認した。 またキーウ地域では 74 歳の女性が死亡したことが判明した。 CNN は、キーウで 10 時間以上空襲警報が鳴り響き、空からドローンと爆発音が聞こえたと伝えた。 ウクライナのエネルギー省は、ロシアの空爆により 60 万人以上が停電の被害を受けたと説明した。 一方、ポーランドはロシアの空襲に対応して戦闘機と防空システムを緊急稼働させたと国防当局が発表した。 国防当局は「対応措置は予防的な観点から取った」と付け加えた。 (織田昌大、江南タイムズ = 12-1-25)


ルビオ米国務長官「生産的だが、まだ作業が必要」 ウクライナと協議

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、米国とウクライナの代表団が 11 月 30 日、米フロリダ州で高官協議を実施した。 米国側の代表を務めたルビオ国務長官は「生産的だった」と述べつつ、「戦闘終了の条件さえ決めればいいというものではない。 ウクライナの長期的繁栄に向けたものでなければならない。 まだ作業が必要だ」と説明した。 両国は 11 月 23 日のジュネーブ協議に続き、終戦の具体的な道筋を記した「和平案」について、4 時間以上にわたって調整を重ねた。

ウクライナ側は、汚職事件で家宅捜索を受けて解任されたイエルマーク大統領府長官に代わり、ウメロウ国家安全保障防衛会議書記が代表を務めた。 ウメロウ氏から報告を受けたというゼレンスキー大統領は「すべての問題で、ウクライナの主権と国益を確実なものにすることに焦点が当たった」と強調した。 ルビオ氏によると、ウィトコフ米特使が今週、モスクワを訪れ、ロシア側と協議する。 ロシア国営タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は 1 日、プーチン大統領とウィトコフ氏の会談は 2 日午後に予定されていると話した。

ウィトコフ氏は、極端にロシア寄りだった草案の作成を担った。 ただ、和平案はその後修正された上、プーチン氏はウクライナに事実上の降伏を求める姿勢を崩しておらず、終戦に向けた議論の進展は見込めない。

米紙ウォールストリート・ジャーナル (WSJ) は米高官の話として、30 日はウクライナにおける選挙や、ロシアとウクライナの「領土交換」が議論されたと報じた。 ルビオ氏は協議後に「我々はウクライナが永遠に平和であるよう助けたい。 二度と侵略に直面することがあってはならない」とも語ったが、WSJ によると、米欧による「安全の保証」の提供やロシア占領地の承認といった課題については「未解決」だという。 (ワシントン・青山直篤、asahi = 12-1-25)

◇ ◇ ◇

ウクライナ代表団渡米 30 日に米国と高官協議、和平案具体化目指す

ウクライナのゼレンスキー大統領は 29 日、米国とウクライナの高官協議に出席するため、代表団が渡米したと自身の SNS で明らかにした。 協議は 30 日に米マイアミで開催される見通しで、汚職事件で解任されたイエルマーク大統領府長官に代わり、ウメロウ国家安全保障防衛会議書記が代表団を率いるという。 ゼレンスキー氏は X (旧ツイッター)に、「(代表団の)任務は明確だ。 戦争終結に必要なステップを迅速かつ実質的に策定することだ」と投稿。 「ウクライナは引き続き、米国と可能な限り建設的な方法で協力していく」と強調した。

米ブルームバーグによると、協議には米国側からウィトコフ特使のほか、トランプ米大統領の長女の夫、クシュナー元大統領上級顧問が出席する見通しだ。 マイアミでの協議では、米国が提示した和平案を修正した 19 項目の最新版をもとに、議論される。 当初の 28 項目の草案は極端にロシア寄りの内容だったが、トランプ氏はウクライナに 27 日までに受け入れるよう要求。 その後、期限を撤回し、再び米国が間に入って、双方と文言調整を続けることになった。

許容できぬ三つのライン、和平案難航か

トランプ氏は「相違は数点だけだ」と楽観的な見方を示しているが、英紙フィナンシャル・タイムズによると、領土問題と、ロシアの再侵略を防ぐためのウクライナの「安全の保証」という二つの最重要論点は先送りされ、最終的には首脳同士の議論で決定されることになったという。 ただ、ウクライナが許容できない「レッドライン」とするのは、自国領を「ロシア領」とする法的承認や、軍の規模制限、将来の同盟選択への干渉の 3 点で、これらを和平案に反映させた上でロシア側が応じるかは極めて難しい状況だ。

ゼレンスキー氏は 29 日の投稿で、23 日にスイス・ジュネーブで行われた前回の米ウクライナ高官協議に触れ、「前回の協議の成果が、米国で具体化されることを期待している」と述べた。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 11-30-25)


ゼレンスキー氏「最側近」の大統領府長官解任 汚職事件で捜索受ける

ウクライナのゼレンスキー大統領は 28 日、自らの最側近で、政権の事実上のナンバー 2 だったアンドリー・イエルマーク大統領府長官 (54) を解任した。 国営原子力企業を舞台にした汚職事件にからみ、イエルマーク氏の自宅が 28 日朝に家宅捜索を受け、これ以上は擁護しきれないと判断した。 ゼレンスキー氏はこの日に辞表を受け取り、即日大統領令を出した。 演説では「ウクライナを守ること以外に、気を散らす理由があってはならない」と強調。 イエルマーク氏が「常に愛国的」だったとしつつ、「あらゆるうわさや臆測を排除したい」と述べた。 29 日に大統領府の刷新について協議するという。

イエルマーク氏は 20 年 2 月に大統領府長官に任命され、内政や外交で影響力を維持してきた。 22 年 2 月にロシアによる侵攻が始まった後は多くの国との交渉の窓口を務め、今月 23 日には「和平案」をめぐる米国との高官協議で、ウクライナの代表団を率いていた。 国家反汚職局 (NABU) と反汚職専門検察 (SAP) による捜査では、容疑者として名指しされているわけではない。 ただ、28 日に捜索の事実を認め、「全面的に協力する」と SNS に投稿していた。

NABU と SAP の捜査は 1 年 3 カ月以上にわたって続いており、大規模な組織を率いた首謀者はゼレンスキー氏の元盟友とされる。 複数のウクライナ メディアによると、今年 7 月に NABU と SAP の独立性を制限しようとした動きは、イエルマーク氏が主導したという。 大統領の周辺に捜査の手が伸びていることを知っていた可能性がある。 国民の反発を受けて両機関の独立性は回復されたが、捜査が潰されていたおそれもあった。 また、野党議員は、捜査員が入手した記録に、イエルマーク氏の音声もあると主張している。

与党「国民のしもべ」の議員、ミキータ・ポトゥライエウ氏は朝日新聞の取材に「大統領は唯一の正しい選択をした。 もしイエルマーク氏が居座り続けていれば、間違いなく国内外で良からぬ影響が出ていた。」と語った。 多くの与党議員も解任を歓迎しているという。 ポトゥライエウ氏はこの事件の発覚後、政府の大幅な刷新の必要性を公に訴えてきた。 米国との交渉トップを外すことは「リスク」としつつ、「残留のリスクの方がはるかに大きいものだった」と主張した。

米メディア・アクシオスや英紙フィナンシャル・タイムズによると、イエルマーク氏は近く、米南部マイアミで、ウィトコフ特使ら米国の代表団と和平案について議論する予定だった。 ウクライナ側の代表団は今後、フナトウ軍参謀総長やウメロウ国家安全保障防衛会議書記で構成される。

イエルマーク氏は、ゼレンスキー氏とは大統領就任前から付き合いがあり、19 年の大統領選では選挙運動に従事した。 一方、選挙を経ていないイエルマーク氏が多大な権限を有していることに、不満の声も強かった。 ウクライナの調査機関「ラズムコウセンター」が 2 - 3 月に実施した世論調査では、イエルマーク氏に対する「信頼」は 17.5% にとどまり、「不信」が 67.2% に上っていた。 (ロンドン・藤原学思、asahi = 11-29-25)

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ウクライナ揺るがす汚職事件 誰が関与、どうなる?

ロシアの全面侵攻を受けるウクライナが、汚職事件をめぐって大きく揺れています。 米国主導で「和平案」の策定が進むなかの出来事で、ゼレンスキー大統領は 11 月 28 日、最側近のイエルマーク大統領府長官を解任しました。 事件の概要や今後の見通しについて、解説します。

最側近解任の詳報 擁護しきれないと判断

今回の汚職事件はどのようなもの?

国家反汚職局 (NABU) と反汚職専門検察 (SAP) によると、事件の舞台は国営原子力企業「エネルゴアトム」だ。 同社の発表によると、2023 年の総収入は 1,538 億フリヴニャ(約 5,700 億円)。 ウクライナ国内の全企業のうち 3 位で、「マンモス企業」と言える。 NABU と SAP によると、同社の取引先に、契約額の 10 - 15% をキックバックさせる組織的な仕組みがあった。 取引先にとってこのキックバックは、エネルゴアトムから支払いを受けたり、契約を続けたりするための「条件」のようになっていたという。

不正はどれぐらいの規模だったの?

キックバックとして受け取ったお金は「裏帳簿」で厳格に管理された。 そのお金を正当なものに見せかけるための「洗浄」は、キーウ中心部のオフィスで行われていた。 洗浄額は、捜査対象期間だけで約 1 億ドル(約 155 億円)に上るという。 ウクライナ史上最大規模の汚職事件だ。 また、このオフィスは、ロシアの国会議員デルカチ氏(ウクライナの元国会議員)の家族が所有する物件だった。 そのため、ロシア側にお金が流れていた可能性もある。

誰が関与していたの?

全容はまだわかっていない。 ただ、11 月 11 日の最初の発表時点で 5 人の身柄が拘束され、他に 7 人に「容疑の通知」がなされた。 容疑の通知とは、ウクライナの刑事訴訟法上の手続きで、「十分な証拠」がある場合、容疑者にその内容が提示される。 NABU や SAP によると、上記 12 人の容疑者には、エネルギー省の元顧問やエネルゴアトムの幹部が含まれていた。 また、同日中に、別の事件で訴追済みのチェルニショウ前副首相にも「容疑の通知」がなされた。 チェルニショウ氏は資金の洗浄拠点となっていたオフィスを訪れており、本人や側近が、日本円換算で 2 億円近い送金を受けていたという。

誰が首謀者なの?

発表では「犯罪組織の首謀者」は「あるビジネスマン」とされた。 複数のウクライナメディアは、この人物が、ティムール・ミンディッチ氏だと報道。 ミンディッチ氏は、ゼレンスキー氏が立ち上げたテレビ制作会社「第 95 街区」を共同で所有していた旧友かつ元ビジネスパートナーだ。 事件の中心人物と言えるミンディッチ氏は、家宅捜索の数時間前に国外に逃亡した。

ゼレンスキー氏や政権にとっては、大きなダメージだね。

間違いない。 最初の発表直後に、前エネルギー相の司法相と、エネルギー相という現職閣僚 2 人が辞任を余儀なくされた。 2 人は正式には容疑者ではなく、事件への関与度合いも不明だが、ゼレンスキー氏が辞任を求めた。 また、ミンディッチ氏に対しては 13 日、国家安全保障防衛会議での決定を経て、制裁を科す大統領令が出された。 ゼレンスキー政権がそれほど、この汚職事件を重く見たと言える。

辞表を出し、解任されたイエルマーク氏は、事件にどう関わっていたの?

はっきりしたことはわからないが、NABU と SAP は 28 日朝にイエルマーク氏の自宅を家宅捜索した。 NABU は「詳細は今後伝える」としている。 イエルマーク氏のほかに、一連の捜査ではウメロウ国家安全保障防衛会議書記の名も取りざたされている。 NABU と SAP はこれまで 15 カ月以上にわたって捜査した結果、計数千時間に及ぶ通話記録を入手したと主張しており、どこまで捜査が広がるかは見通せない。

NABU と SAP は夏にもウクライナ国内で議論の中心になっていたよね。

その通り。 最高会議(国会)やゼレンスキー氏が 7 月、NABU と SAP の独立性を実質的に失わせるような法案を成立させた。 国民はこれに対して大規模デモで不満を表明し、成立からわずか 9 日後に独立性は回復された。 ある捜査関係者は「もしあのまま独立性が失われていたら、今回の事件は確実に潰されていた」と取材に語った。 イエルマーク氏は、当時、エネルゴアトムを舞台にした汚職捜査が進んでいることを把握していたのではないかと指摘されている。 野党議員やメディアから、両機関の独立性を失わせる動きを主導していたと批判されている。

事態は収束するのか。

ゼレンスキー氏は大統領府の刷新を誓っている。 かねて国民の不信感が強かったイエルマーク氏の解任によって、世論は一定の落ち着きを見せるとみられる。 ただ、ロシアは一連の汚職事件を、自国に都合の良いような文脈ですでに使っており、今後もそれは続くとみられる。 米国主導の「和平案」の策定に影響が出るおそれもあるし、欧州の主要国や欧州連合 (EU) は「汚職対策」を非常に重視している。 そういった意味でも、今回の事件は尾を引くはずだ。

イエルマーク氏がゼレンスキー氏の右腕として、和平案をめぐる対米交渉など、重要な局面で交渉役を任されてきたことも事実だ。 ゼレンスキー氏の考えをしっかりと把握し、米国や欧州と交渉できるような人材はそれほど多くない。 ゼレンスキー氏としては、まず、NABU や SAP の捜査に全面的に協力し続ける姿勢を示すことが重要になる。 その上で、汚職とは一切関係なく、自らの「お友達」でもない、フレッシュな人材を登用して国民の信頼を回復、維持することが必要になる。 (ロンドン・藤原学思、asahi = 11-29-25)

前 報 (11-13-25)


米主導のウクライナ和平案、難航必至 最重要論点は先送り、遠い終戦

ロシアによるウクライナへの全面侵攻をめぐり、米国が中心となって和平案作りが進められている。 トランプ米大統領がウクライナ側に迫った「27 日」の受け入れ期限は撤回されたが、三者の思惑はかみ合わず、終戦はなお遠い。 当初 28 項目の和平案の存在は 18 日、米メディア・アクシオスが特報。 ロイター通信によると、ロシア側が 10 月、終戦条件の概要をまとめた非公式文書を手渡し、それが元になったという。

そのため、極端にロシア寄りの内容だったが、トランプ氏はウクライナに受け入れを要求。 ウクライナのゼレンスキー大統領が 21 日、「尊厳を失うか、重要なパートナー(米国)を失うリスクをとるか」と国民に問いかける事態になった。 トランプ氏は 25 日になって期限を撤回。 今後は再び米国が間に入り、双方と文言調整を続けることになった。 トランプ氏は「相違は数点だけだ」と楽観している。

だが、英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) によると、領土問題と、ロシアの再侵略を防ぐためのウクライナの「安全の保証」という二つの最重要論点は先送りされ、首脳同士の議論で決定されることになったという。 トランプ氏は「ピースメーカー(平和の使者)」を自称し、パレスチナ自治区ガザでの停戦合意に続く「成果」を急ぐ。 2 - 10 月にはゼレンスキー氏と計 6 回、8 月にはロシアのプーチン大統領との首脳会談を実施したが、和平に近づけるような結果は残せていない。

ウクライナや英独仏といった欧州の主要国は領土問題について、現在の前線を議論の出発点にするべきだとの立場を維持する。 また、停戦後に米国を含めて強固な「安全の保証」をウクライナに提供する構想を持つが、ともにロシアが受け入れる可能性は極めて低い。 欧州連合 (EU) のカラス外交安全保障上級代表は 26 日の会見で、将来の和平協定について「ロシアから具体的な譲歩を引き出し、侵略を永久的に停止させ、武力による国境変更を認めないことに重点を置くべきだ」と主張。 ただ、こうした原則論だけでは、ロシアを動かす実効力は伴わない。

ウクライナにとって許容できない「レッドライン」は、ゼレンスキー氏の盟友であるステファンチュク最高会議(国会)議長が 24 日、スウェーデンでの演説で明かしている。 ▽ 自国領を「ロシア領」とする法的承認、▽ 軍の規模制限、▽将来の同盟選択に対する反対、の三つだ。 このうち軍の規模については、米ウクライナが「80 万人」で合意したと FT が報じた。 ゼレンスキー氏によると、1 月時点の兵力は「88 万人」。 平時で 80 万人であれば欧州最大となり、絶対に妥協できない数字でもない。

ゼレンスキー氏は 26 日、毎晩恒例のビデオ演説で「和平に向けた圧力をかけられるべきは、ウクライナではなく、戦争が長期化している唯一の理由であるロシアだ」と訴えた。 この日は、防空システムの国内生産拡大と、兵力の配置見直しにも言及し、今後も戦争が続くと認識していることをうかがわせた。 ウクライナが戦い続けるためには米国の機密情報や兵器が欠かせず、トランプ氏の機嫌を損なわないことが前提条件という状態からは逃れられない。 今後も、ロシアの進軍を食い止めつつ、レッドラインを死守しながら、多くの国民が納得できる形での終戦を模索するとみられる。

「譲歩はしない」 ロシア強硬、協議の引き延ばしも

一方、ウクライナ侵攻の和平をめぐる米国などの修正案についてロシアは反発を強めている。 トランプ氏との 8 月の合意を理由に修正案は適切でないと主張。 軍事的な圧力によりウクライナに実質的な降伏を迫る姿勢は変わっておらず、米国との修正案の協議を引き延ばす可能性もある。 「トランプ政権の努力は歓迎するが、特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)を含め、我々が譲歩することはない。」 ロシアのリャプコフ外務次官は 26 日、和平の実現に意欲を示すトランプ氏に配慮しつつ、「これは我々が長年取り組んできた危機の根本原因に関わるものだ」と、従来の主張からの譲歩を拒否した。

米国とウクライナによる修正案が明らかになって以降、ロシア側が強調するのが、8 月の米ロ首脳会談での合意だ。 「即時停戦」でなくウクライナの領土割譲などを定めた「包括的な和平合意」を最初から目指す、ロシアの主張を反映したものとみられる。 ラブロフ外相は 25 日、合意から離れれば、「状況は根本的に変わる」と警告した。 一方、ウシャコフ大統領補佐官は、非公式ルートで修正案を受け取ったが、「まだ誰とも協議はしていない。 専門家による具体的な議論が必要だ」と 26 日に述べた。

ロシア側は修正案の拒否を表明せず、専門家による協議を口実に交渉を引き延ばす懸念がある。 トランプ氏に和平に前向きな姿勢を示しつつ、ウクライナへの攻撃を続けて占領地を拡大して譲歩を引き出すためだ。

ウクライナ拒否すれば「好都合」

そもそもトランプ氏がウクライナに突きつけた 28 項目の和平案はロシア寄りの内容だったが、それでもプーチン大統領は 21 日、「最終的な合意の基盤となる可能性があるが、まだ具体的な議論はしていない」と述べ、さらなる譲歩を求める考えを示唆。 和平案をウクライナが拒否すれば、「武力で目的を達成できるので好都合だ」とも話した。

米欧メディアによると、28 項目の和平案は米ロが水面下の交渉でまとめたもので、両政権が親密な関係にあることを世界に示した。 ロシアは今後もトランプ氏を取り込み、自国に有利な決着を目指す考えとみられる。 当面の焦点は、トランプ政権が 10 月に表明したロシア石油大手 2 社への追加制裁の効果だ。 ロシアの資源輸出が大きく減少すれば、継戦能力にも響くことになる。 (ロンドン・藤原学思、ブリュッセル・牛尾梓、パリ・坂本進、asahi = 11-27-25)


ウクライナ首都で 7 人死亡、ゼレンスキー氏「戦争まだ終わっていない」

ロシアとウクライナの戦争の終結に向けて米国が提案した和平案の協議が進行する中、ウクライナのゼレンスキー大統領は 25 日、戦争はまだ終わっていないと述べ、提携国に支援の継続を呼びかけた。 ウクライナ当局によると、24 日夜から 25 日にかけて各地に攻撃があり、首都キーウでは 7 人が死亡、子どもを含む 13 人が負傷した。 ゼレンスキー氏によると、ロシアはミサイル 22 発とドローン(無人機) 260 機で攻撃したという。

ゼレンスキー氏はロシアが毎日ウクライナを攻撃していると指摘した上で、外交努力は続ける一方で、ウクライナは防衛や安全保障の面で提携国からの支援をまだ必要としていると X (旧ツイッター)に投稿した。 モルドバ当局によると、ロシアがウクライナを攻撃している最中に 6 機のドローンがモルドバの領空を侵犯した。 また、ロシアのドローンはルーマニアの領空も侵犯し、北大西洋条約機構 (NATO) は戦闘機を緊急発進させた。

こうした事態を受け、欧州連合 (EU) のフォンデアライエン欧州委員長は、ロシアが和平に真摯に取り組むまで同国に圧力をかけ続ける姿勢を示した。 25 日にはウクライナ支援の有志連合による戦争終結に向けた会合が開かれた。 フランスのマクロン大統領は会合後、ロシアは和平を望んでいるふりをしながら、ウクライナの市民やエネルギーインフラを攻撃していると指摘した。 (CNN = 11-26-25)


トランプ氏、ウクライナ和平案は「最終提案」ではないと発言

アメリカのドナルド・トランプ大統領は 22 日、ロシアとウクライナの戦争終結に向けたアメリカの提案は、ウクライナ政府への「最終提案」ではないと記者団に話した。 これに先立ち、ウクライナを支援する複数の国が同日、提案内容に懸念を表明していた。 23 日には、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、ウクライナの安全保障当局者がスイス・ジュネーヴで会合を開く予定。 トランプ氏はホワイトハウスで、アメリカの和平案がウクライナへの最終提案なのかどうか記者団に質問されると、「いや、私の最終提案ではない」と答えた。 「いずれにしても、(この戦争を)終わらせなくてはならない。 我々はそのために取り組んでいる。」とも述べた。

トランプ氏の発言の前には欧州、カナダ、日本などの政府首脳たちが、アメリカの提案には「公正で永続的な平和に不可欠な要素」が含まれているものの、「さらに調整が必要」だと共同声明で述べていた。 各国は、国境変更やウクライナ軍の規模制限について懸念を示した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は 21 日、ロシア寄りと見られるアメリカ案について受け入れ圧力がかかる中、国民に向けて演説し、ウクライナが「非常に難しい選択に直面するかもしれない。 尊厳を失うか、重要なパートナーを失うかという選択だ」として、「今日は私たちの歴史の中で最も困難な瞬間の一つだ」と述べていた。

アメリカは、ウクライナに対し 28 項目の計画を 11 月 27 日までに受け入れるよう求めている。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、この計画が合意の「基盤」になり得ると述べている。 23 日にジュネーブで予定される協議には、マルコ・ルビオ米国務長官とスティーヴ・ウィトコフ米特使が参加する。 イギリスからはジョナサン・パウエル国家安全保障顧問が出席する。 南アフリカで開催された主要 20 カ国首脳会議(G20 サミット)で 22 日に発表された共同声明は、カナダ、フィンランド、フランス、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、スペイン、イギリス、ドイツ、ノルウェー、欧州連合 (EU) の首脳らが署名した。

各国はその中で、「我々は、この草案が基盤であって、さらに調整が必要だと考える。 我々は、将来の平和が持続可能であることを確実にするため、関与する用意がある。 我々は、国境が武力によって変更されてはならないという原則を明確にしている。」と述べた。 各国は、「我々はまた、ウクライナ軍について提案された制限を懸念している。 これではウクライナが将来の攻撃に対して弱い立場になってしまう。」とも指摘した。 さらに、「EU および NATO (北大西洋条約機構)に関連する要素の実施には、それぞれの加盟国の同意が必要になる」と述べた。

G20 サミットに出席しているキア・スターマー英首相は、22 日にゼレンスキー氏と電話で話した後、トランプ氏とも電話で話した。 英首相官邸の報道官によると、スターマー首相はトランプ大統領に、「G20 サミットに出席しているウクライナの同盟諸国の間で行われている協議の内容を伝えた」という。 報道官はさらに、「ジュネーヴで翌日(23 日)、アメリカによる 28 項目の和平案について両国の代表団が協力し合うと、両首脳は合意した。 翌日もまた話をすると、2 人は合意した。」と明らかにした。

スターマー氏はこれに先立ち、アメリカ案に含まれるウクライナ軍の規模制限について懸念を示し、「停戦するならば、ウクライナが自衛できることが不可欠だ」と述べた。 広く流出している草案には、ウクライナ軍が現在統治している東部ドネツク州の一部から撤退し、ドネツクと隣接するルハンスク州、さらに 2014 年にロシアが併合した南部クリミア半島でのロシア支配を認めることなどが、条件として含まれる。 和平案にはさらに、ウクライナ南部のヘルソン州とザポリッジャ州の国境を現在の戦線に沿って凍結することも含まれる。 両地域は部分的にロシアに占領されている。

アメリカ案はこのほか、ウクライナ軍の人員を 60 万人に制限し、欧州の戦闘機を隣国ポーランドに配備することを定めている。 ウクライナ政府には「信頼できる安全保障の保証」が与えられるとあるものの、詳細は示されていない。 文書には、ロシアは近隣諸国に侵攻せず、NATO もこれ以上拡大しない「ものとされる」と書かれている。 和平案はさらに、制裁解除や主要国グループへの再加盟を通じてロシアが再び「世界経済に再統合」されると示す。 この場合、現在の G7 は G8 に戻ることを意味する。

トランプ氏は 21 日には、ゼレンスキー氏がアメリカの提案を「気に入る必要がある」と述べ、そうでなければウクライナとロシアは戦い続けることになると話していた。

ゼレンスキー氏は同日、ウクライナの「尊厳と自由の日」を記念した演説で国民に向けて、「私たちは冷静に、アメリカやすべてのパートナーと協力していく。 主要パートナーと、解決策を建設的に探して行く。 (中略)私は主張し、説得し、代案を提示していく。」と発言。 また、「ひとつ確かなことがある。 私たちは敵が『ウクライナは平和を望んでいない、ウクライナは交渉を妨害している、外交の用意ができていないのはウクライナの方だ』などという口実を与えない。 そんなことは起きない。」と強調した。

また、和平合意に関する交渉チームは今後、アンドリー・イェルマーク大統領府長官が率いると発表。 これにはロシアが関与する可能性のある交渉も含まれると述べた。 「我々の代表たちは、ウクライナの国益をどうやって守るか知っている。 ロシアが第 3 の侵攻をしないよう、ウクライナをまたしても攻撃しないようにするにはどうするべきか、はっきり承知している。」と、大統領はソーシャルメディアに投稿した動画声明で述べた。 ウクライナがロシアの空爆を迎撃するには、アメリカ製の先進兵器や防空システムのほか、アメリカ政府が提供する情報が欠かせない。

ロシアのプーチン大統領は 21 日の安全保障閣僚会議で、ロシアはアメリカの提案を受け取ったものの、その詳細はクレムリン(ロシア大統領府)として協議したものではないと話した。 また、ロシアには「柔軟性を示す」用意がある一方、戦闘を続ける準備もできていると述べた。 プーチン氏は 2022 年 2 月、ウクライナへの全面侵攻を開始した。 ウクライナの戦場では、ロシア兵が多数、死傷していると言われている。 ロシアは現在、ウクライナ領土の約 20% を支配している。 ロシア軍は、甚大な損失が報告されているにもかかわらず、長大な前線に沿ってゆっくりと前進を続けている。

ウクライナは、ロシアの致命的な空爆を撃退するための米国製の先進兵器や防空システム、ワシントンから提供される情報に依存している。 プーチン氏は金曜日、モスクワが米国案を受け取ったことを確認したが、詳細はクレムリンと協議されていないと述べた。 彼はモスクワが「柔軟性を示す」用意があるが、戦闘を続ける準備もできていると付け加えた。 最近数か月、ロシア軍は甚大な戦闘損失が報告されているにもかかわらず、ウクライナ南東部で緩やかな前進を続けている。 (BBC = 11-23-25)


欧州、日本などの首脳が声明「ウクライナ脆弱化も」 和平案に懸念

主要 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)が開かれている南アフリカで 22 日、米国が主導するウクライナとロシアの和平案に関して欧州主要国や欧州連合 (EU)、日本、カナダなど 13 カ国・地域の首脳が共同声明を発表した。 ウクライナに不利になりかねない内容に懸念を示している。 声明は「ウクライナに平和をもたらすための米国の継続的な努力を歓迎する」とした上で、「草案は(今後の議論の)基礎となり、さらなる作業が必要だ」との認識を示した。

欧米メディアによると、和平案は 28 項目からなり、ウクライナが約 25% を保持する東部ドネツク州などを「事実上のロシア領」として米国が承認することや、ウクライナ軍の兵力削減などが含まれるとされる。 これについて声明は、「国境は武力によって変更されてはならない」と強調。 「ウクライナの軍事力に制限を設ける案には懸念があり、将来の攻撃に対してウクライナを脆弱にしかねない」と指摘した。

また、ウクライナの北大西洋条約機構 (NATO) 加盟断念も盛り込まれているとされる点について、声明は「EU および NATO に関する要素の実施には、それぞれの加盟国の同意が不可欠だ」と釘を刺した。 声明は、G20 サミットの合間に EU が主催した会合で合意された。 会合に出席し、声明に署名した高市早苗首相は「ウクライナの将来は、ウクライナ自身の意思を最大限尊重し、支えていくべきだ」と述べた。

ドイツのメルツ首相によると、23 日にはスイス・ジュネーブで米国とウクライナの高官協議が予定されており、協議に参加する英仏独や EU の高官らが現地入りしているという。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi ~= 11-23-25)


安青錦優勝、ウクライナでも祝福 「前へ進んでくれ」、「夢のようだ」

大相撲九州場所の千秋楽で 23 日、ウクライナ出身の関脇・安青錦が初優勝を果たした。 同国出身力士として初の快挙に、現地の相撲ファンも沸いている。 安青錦の本名はヤブグシシン・ダニーロで、出身は首都キーウから南西に約 200 キロ離れた中部ビンニツァ。 2021 年 7 月にはポーランドで開かれた 18 歳以下対象の欧州相撲選手権で、100 キロ級、無差別級、団体戦の 3 冠を達成したと地元紙に報じられている。

だが、22 年 2 月の全面侵攻開始後にウクライナを離れ、日本へ。 23 年 9 月に初土俵を踏み、それから 2 年余りでの初優勝となった。 ウクライナの複数のスポーツメディアは 1 時間もたたないうちに優勝を伝え、「大関昇進も 100% 保証されるだろう」とたたえた。

「窓の外ではドローン(無人機)が飛来し、防空システムが作動している。 安青錦よ、前へ進んでくれ! おれちは君を祝福している!」

ウクライナの相撲ファンが集う SNS チャンネル「カチコシ」には、そんなお祝いコメントがあふれた。 管理人のアルテム・シャバンさん (32) は取材に「彼を本当に誇りに思う。 ウクライナ人がトップに上り詰めるなんて夢のようだ。」と興奮気味に語った。 シャバンさんによると、ウクライナにおける相撲の人気はそれほど高くないが、幕内には南部メリトポリ出身の獅司もいる。 「早ければ数秒で勝負が決まる。 スポーツのだいご味が詰まっている。」 ファンの熱も、この 1 年で高くなっていると感じるという。

「彼のおかげで、世界の相撲ファンがウクライナに目を向けてくれる」とシャバンさん。 「大関になっても、さらなる高みをめざしてほしい。」 今後も、安青錦のすべての取り組みを見て応援を続けるという。

「ダニーロ、あなたは希望だ!」

同じく相撲ファンのオレクサンドル・カシヤネンコさん (41) は、「幸せという言葉では言い尽くせない。 文字どおりうれし涙を流している」と語った。 もともと日本が好きで相撲に興味を持つようになったという。 カシヤネンコさんは「特に戦争中においては『大きな勝利』の意義は評価してもしきれない。 安青錦が私たちに笑顔と喜びを与えてくれた」とも話した。 安青錦にはこんなメッセージを伝えたい。 「ダニーロ、私たちはあなたが大好きで、心から応援している。 あなたは私たちの誇りであり、希望です。」 (キーウ・藤原学思、asahi = 11-23-25)

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