... - 97 - 98 - 99 - 100 - 101 - 102 - 103 - 104 - 105 - 106 - 107
米ロ首脳「ウクライナ兵救済」で関係改善を演出 停戦道筋なお見えず トランプ米大統領が 14 日、ロシア南西部クルスク州を越境攻撃しているウクライナ軍兵士の「救済」を、ロシアのプーチン大統領に SNS で要請した。 プーチン氏はすぐに「応じる」姿勢を示し、米ロの関係改善を演出した。 ただ、ウクライナの停戦に向けてロシアは、米国とウクライナが合意した現状の停戦案に否定的で、停戦への道筋は見えないままだ。 プーチン氏は 13 日、ウィトコフ米中東担当特使とモスクワで会談した。 これをうけトランプ氏は 14 日、「プーチン大統領と非常に生産的な話し合いをした。 この恐ろしい流血の戦いをついに終わらせられる可能性が非常に高まった」と SNS に投稿し、会談結果を評価した。 その上で、クルスク州を念頭に「数千人のウクライナ軍兵士がロシア軍に完全に包囲されている。 プーチン大統領に、彼らの命を助けるよう強く要請した。」と書き込んだ。 ウクライナ兵が「非常に悪い状況で弱い立場に置かれている」とも主張。 「これは第 2 次世界大戦以来見られなかったような、恐ろしい大虐殺になるかもしれない。 彼ら全員に神のご加護を!」と述べた。 トランプ氏に「恩売る」狙いか プーチン氏は素早く反応し、同日、国家安全保障会議を開いて「トランプ大統領の人道的配慮を理解する」と前向きな姿勢を示し、「彼らが武器を捨てて投降すれば、国際法とロシアの法律に基づき、命と正当な待遇が保証される」と語った。 ロシア軍はクルスク州で攻勢を強めており、ウクライナ軍に占領された土地の 86% 以上を奪還したと発表。 ロシアメディアは、ウクライナ軍を包囲し、掃討作戦を進めていると伝えている。 メドベージェフ前大統領は 14 日、「武器を捨てなければ全滅だ。 ウクライナのクズ政権には、自国民を救うチャンスがまだある。」と SNS に投稿し、ウクライナに圧力をかけた。 プーチン氏は捕虜を正当に待遇するための条件に、ウクライナ政府がクルスクでの戦いについて「無条件降伏」し、兵士に投降を命じることを挙げる。 さらに、捕虜を「市民へのテロ行為」で罪に問う考えも示しており、ウクライナにとっては厳しい条件だ。 そもそも捕虜の人道的な扱いはジュネーブ条約で定められている。 また、ウクライナ側は「包囲は偽情報だ」と否定している。 それでも、プーチン氏としては、トランプ氏の「要請」に応じる構えを見せることで、「恩を売る」狙いとみられる。 一方で、プーチン氏は、米国がウクライナと合意した「30 日間の即時停戦」案については、「根本原因を取り除く必要がある」などとして同意できない考えを表明。 ウクライナに対し、ロシアが占領している領土の放棄などを求める強硬姿勢は変わっていない。 米ロは近く、電話による首脳協議を開くとみられている。 譲歩の気配を見せないプーチン氏にトランプ氏がどう対応するのかが注目される。 (シャルルボワ・下司佳代子、asahi = 3-15-25) プーチン氏、ウクライナでの停戦に条件を提示 アメリカ案を受け ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は 13 日、アメリカが出しているウクライナでの停戦案について、停戦のアイデアは支持すると述べた。 だが、停戦の性質について「疑問」が残るとし、いくつかの厳しい条件を提示した。 プーチン氏はモスクワでの記者会見で、ウクライナが 11 日にアメリカとの協議で合意した 30 日間の停戦案について、「アイデアは正しい。 私たちはそれを支持する。 だが、議論が必要な疑問がある。」と述べた。 プーチン氏はまた、停戦は「持続的な平和をもたらし、この危機の根本原因を取り除く」ものであるべきだと主張。 「私たちはアメリカの同僚やパートナーらと交渉する必要がある」、「私がドナルド・トランプ(米大統領)と電話で話すかもしれない」とした。 さらに、「ウクライナ側が 30 日間の停戦を実施するのはいいことだ」、「私たちはそれを支持するが、微妙な部分がある」と述べた。 このプーチン氏の発言に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はプーチン氏が事態を「操ろうと」していると批判。 ロシアへの追加制裁を呼びかけた。 こうしたなか、アメリカはロシアの石油、ガス、銀行部門に対し追加制裁を科した。 プーチン氏、疑問点を列挙 プーチン氏は記者会見で、ウクライナが昨年 8 月に奇襲してその一部を占領したロシア・クルスク州が、論点の一つになると述べた。 クルスク州についてプーチン氏は、ロシアが完全に奪還したと主張。 同州にいるウクライナ軍は「孤立している」とし、こう続けた。 「相手は撤退しようとしており、私たちが支配している。 相手は装備を放棄している。」、「クルスクにいるウクライナ人には二つの選択肢がある。 降伏か死だ。」 プーチン氏はまた、停戦がどう機能するかについて、「その 30 日間はどう使われるのか? ウクライナによる動員のためか? 再武装のためか? 人の訓練のためか? そうしたことは一切ないのか? そして疑問なのは、それがどうコントロールされるのかだ。」と疑問点を挙げた。 さらに、「誰が戦闘を終わらせる命令を出すのか? どれだけの代償で出すのか? 停戦になったとして、2,000km 以上に渡る地帯で停戦が破られたかどうかを誰が判断するのか? こうした疑問はすべて、双方による綿密な作業が必要だ。 誰がそれを取り仕切るのか?」と述べた。 ゼレンスキー氏、プーチン氏を批判 一方、ゼレンスキー氏は、恒例の夜のビデオ演説で、「(プーチン氏は)直接的にノーとは言わない」が、「実際には拒否の準備をしている」と主張。 「プーチンは、自分がこの戦争を続けたい、ウクライナ人を殺したいのだと、トランプ大統領に直接伝えたくないのだ」と述べた。 そして、プーチン氏があまりに多くの条件を設定したため、「何もまったくうまくいかない」とした。 この日のプーチン氏の発言とゼレンスキー氏の反応によって、両氏の立場の隔たりが明確になった。 ウクライナは、2 段階のプロセスを望んでいる。 迅速な停戦と、その後の長期的な解決に向けた協議だ。 一方、ロシアは、それら二つのプロセスは不可分で、一つの合意ですべての問題を判断すべきだと考えている。 双方とも、そうした違いについて議論することに満足していると思われる。 ウクライナは、ロシアが和平に後ろ向きで、時間稼ぎをしているとの印象を広めることで、ロシアに圧力をかけられると考えている。 ロシアは、北大西洋条約機構 (NATO) の拡大やウクライナの主権という、根本的な懸念を提起する機会を手にしていると考えている。 こうした状況は、トランプ氏にとって問題となる。 彼は迅速な結果を望んでおり、数日内に戦闘を終わらせたいと明言している。 だがプーチン氏は今、協力するつもりはない様子だ。 トランプ氏、最終合意の詳細を議論と トランプ氏は、プーチン氏の発言を受け、同氏と「喜んで」会うと、ホワイトハウスで述べた。 また、ロシアが「正しいことをして」、30 日間の停戦案に合意することを期待していると発言。 「ロシアからの停戦を望んでいる」とした。 これに先立ちトランプ氏は、NATO のマルク・ルッテ事務総長と大統領執務室で会談した際、ウクライナとはすでに具体的な協議をしたと記者団に説明した。 「私たちはウクライナと、保持される土地や失われる土地、その他すべての、最終合意の要素について話し合ってきた」、「最終合意の多くの詳細について、実際にすでに議論された」とトランプ氏は述べた。 ウクライナの NATO 加盟については、「誰もがその答えを知っている」とトランプ氏は話した。 ロシアに新たな制裁 ロシアに対してはこの日、石油とガスに関する新たな制裁が発動された。 トランプ政権は、ロシアによる米決済システムの利用をさらに制限。 ロシアの石油を他国が購入するのを難しくした。 そうしたなか、プーチン氏は、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使とモスクワで非公開で会談した。 これに先立ち、クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ外交政策顧問は、アメリカが提案した停戦案を拒む考えを示した。 クレムリンは 12 日、プーチン氏がロシア・クルスク州を訪問した際のビデオ映像を公開した。 プーチン氏は象徴的に軍服姿だった。 ロシアはその後、同州の要衝の町スジャを奪還したと発表した。 ロシアは 2022 年 2 月にウクライナに対する全面侵攻を開始。 現在、ウクライナ領土の約 2 割を掌握している。 ロシア軍の戦死者は 9 万 5,000 人以上に上っている。 ウクライナは戦争の犠牲者について、昨年 12 月に最後の情報更新をした。 ゼレンスキー氏はその際、兵士と将校の戦死者が計 4 万 3,000 人だと認めた。 西側の専門家らは、この人数は少な過ぎるとみている。 (ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員、キーウ・ガブリエラ ポメロイ、BBC = 3-14-25) 米ウクライナ、「30 日停戦」合意 ロシアの同意条件 支援は再開へ ロシアによるウクライナへの全面侵攻をめぐり、外相ら代表団による協議を行った米国とウクライナは 11 日夜、共同声明を発表した。 ウクライナは「即時かつ暫定的な 30 日の停戦」という米国の提案に同意し、米国は軍事支援と機密情報の共有を再開するとしている。 米国とウクライナはこの日、サウジアラビア西部ジッダで高官協議を実施。 共同声明によると、停戦はロシアが受け入れ、順守することが条件。 米国はロシアに対し、和平実現のために停戦に応じるよう促すという。 停戦は「合意があれば延長可能」としているが、戦場で優位に立つロシア側にとってただちに停戦に応じるメリットは少なく、実際に戦闘がやむかは見通せない。 (asahi = 3-12-25) ロシア各地に 300 機以上のドローン攻撃 モスクワは「過去最大」 ロシア国防省は 11 日、ロシア各地がウクライナ軍のドローン(無人機)で攻撃され、337 機を撃墜したと発表した。 モスクワ州では、少なくとも 91 機が飛来しており、モスクワのソビャニン市長は「モスクワへの過去最大の攻撃」と SNS に投稿した。 攻撃があったのは、モスクワやウクライナに隣接する南西部クルスク州(撃墜数 126 機)、ブリャンスク州(同 38 機)など 10 地域。 タス通信は、ロシア各地への攻撃としては「今年最大」と伝えた。 ロシアメディアによると、モスクワ周辺では、物流センターの警備員ら 2 人が死亡し、子どもを含む 10 人以上が負傷。 一部の空港や鉄道が一時、営業を休止した。 (asahi = 3-12-25) 対ロ大規模制裁、トランプ氏が検討 関税引き上げも「和解合意まで」 トランプ米大統領は 7 日、ウクライナに侵攻するロシアに対して「大規模な金融制裁、制裁、関税を課すことを真剣に検討している」と自身の SNS に投稿した。 トランプ氏は、停戦と和平に向けた協議をウクライナと進めようとしており、もう一方の当事者のロシアにも交渉に向けて圧力をかけ始めたようだ。 トランプ氏は投稿で、「ロシアが今まさに戦場で、ウクライナを『圧倒』している」と指摘。 「停戦と平和に関する最終的な和解合意が成立するまで」の間、対ロシア制裁や関税の引き上げを続けると警告した。 「ロシアとウクライナよ、手遅れになる前に、今すぐ(交渉の)テーブルに着け」とも呼びかけた。 米メディアによると、ベッセント米財務長官も 6 日、ウクライナでの停戦につながるのであれば、ロシア産エネルギーに追加制裁をかけることも辞さないと述べた。 (asahi = 3-8-25) ウクライナ東部で 11 人死亡 ロシア軍が「ダブルタップ」攻撃 ウクライナ東部ドネツク州ドブロピルリャの住宅密集地に 7 日夜、ロシア軍による攻撃があった。 検察によると、8 日午後 2 時(日本時間午後 9 時)までに、11 人の死亡と、子ども 6 人を含む 40 人の負傷が確認されている。 非常事態庁や検察によると、被害は 5 階建ての建物 8 棟や行政庁舎、車両 30 台に及び、消防車も損傷した。 攻撃に使われたのは弾道ミサイル 2 発や多連装ロケットシステム、ドローン(無人機)。 最初の攻撃の後、救助隊が到着した後に再び攻撃して被害の拡大を狙う「ダブルタップ戦術」だったという。 ゼレンスキー大統領も SNS でこの攻撃について言及。 「ロシアの目的が変わっていないことを示している。 命を守り、防空態勢を強化し、ロシアに対する制裁を強めることが決定的に重要だ。」と訴えた。 ドブロピルリャは、全面侵攻開始前の人口が約 2 万 8 千人。 ロシア軍があと数キロまで迫るドネツク州の要衝ポクロウスクから、約 20 キロ北に位置する。 (ロンドン・藤原学思、asahi = 3-8-25) ゼレンスキー氏の支持率、10 ポイント上昇 トランプ氏による攻撃で国民結束 ウクライナのキーウ国際社会学研究所が 7 日公表した世論調査の結果によると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の支持率は、ドナルド・トランプ米大統領に「独裁者」と呼ばれて以降、10 イント上昇した。 回答者の 67% がゼレンスキー氏を信頼すると回答、29% が信頼しないと答えた。 1 か月前に公表された前回調査では信頼するが 57% 、信頼しないが 37% だった。 調査は 2 月 14 日 - 3 月 4 日に実施された。 これはゼレンスキー氏とトランプ氏との一触即発の口論が、2 月 28 日の米ホワイトハウスでの劇的な衝突にまで発展した激動の時期だ。 今回の世論調査の結果からは、米政権によるウクライナ政権への攻撃が、ゼレンスキー氏への支持固めにつながったと考えられる。 KIIS のアントン・グルシェツキー所長は分析メモで、「少なくとも現時点でわれわれの目の前で起きているのは、ウクライナが直面する新たな困難を背景に社会が結束している過程だ」と指摘。 ウクライナ国民はトランプ政権の主張を、ゼレンスキー氏に対する個人攻撃にとどまらず、「ウクライナとその国民全体への攻撃」と認識しているとの見解を示した。 KIIS によれば、調査結果は全国的に「かなり似通った」ものとなったが、東部での支持率は若干低い 60% だった。 トランプ氏は 2 月 18 日、ゼレンスキー氏の「支持率は 4%」しかないと不正確な主張をして、戒厳令下で禁止されている大統領選の実施を求めた。 KIIS は米国が対ウクライナ軍事支援を一時停止したことについて、調査終了間際に発表されたため調査結果に十分反映されていないが、「国民感情に確実に影響する」と指摘している。 (AFP/時事 = 3-8-25) ウクライナ議論わずか 15 分 EU、合意形成よりスピード優先に 欧州連合 (EU) は 6 日、臨時の特別首脳会議を開いた。 トランプ米政権との亀裂が深まり、ウクライナ支援で欧州の団結をアピールしたかったものの、ハンガリーが反対。 合意形成を重視する EU だが、自前の防衛力強化に向けて待ったなしの状況でスピード優先の異例の対応が目立った。 会議では、総額8 千億ユーロ(約 125 兆円)の防衛費の増額を見込む「欧州再軍備計画」の推進が合意された。 計画では、財政規律の緩和や最大 1,500 億ユーロ(約 24 兆円)の融資などで防衛費を捻出する。 一方、ウクライナ支援では、ハンガリーが「戦争の継続ではなく、米国とともに平和を目指すべきだ」と主張し反対。 年内に総額 306 億ユーロ(約 4.9 兆円)の財政支援などを盛り込み、採択されたが、全 27 カ国ではなく「26 カ国による支持」と明記された。 午前 5 時まで議論、でも結論出せず 首脳会議では過去にも、ウクライナ支援をめぐってハンガリーが反対し、午前 5 時まで議論しても結論が出せなかったことがあった。 ただこの日、ウクライナ支援の議論に費やしたのは、わずか 15 分。 これまで合意形成を重視してきた EU だが、米欧関係の待ったなしの状況に、会議前から「ハンガリー抜き」で議論が進められていた。 EU には、ウクライナへの断固とした支持と、米国に依存した安全保障体制からの「自立」の道筋を、早急に示したい焦りがある。 トランプ大統領は 3 日、ウクライナへの軍事支援の一時停止を指示。 これを受けて、フォンデアライエン欧州委員長は翌日、急きょ「再軍備計画」を発表した。 元々検討されていたものだったが、すぐに合意できるよう「緊急事態条項」を発動。 本来通すべき欧州議会での審議を飛ばした。 議会軽視との批判も上がるが、「緊急性とスピードが大事な局面で、数カ月を数週間に短縮できた」と強調した。 「倹約国」が異例の方針転換で圧力 フォンデアライエン氏を突き動かしたのは、防衛費を迅速に増やしたいという加盟国からの「大きな圧力」だったという。 フランスのマクロン大統領は会議後の記者会見で、「再軍備計画」を歓迎する一方、EU の共同債や独自の財源などさらなる増強が必要で、「満足のいく解決策ではないと思う」とさらに発破をかけた。 ドイツは 4 日、防衛費の増額に向けて、財政赤字を国内総生産 (GDP) の 0.35% に制限する債務ブレーキを改革し、GDP の 1% を超える分の防衛費を制限から除外する方針を表明。 財政規律を重んじる「倹約国」の異例の方針転換だが、ショルツ首相は会議後、「ドイツの債務ブレーキ改革が、EU レベルでも行われれば良い解決策になる可能性がある」と述べ、推し進める姿勢を見せた。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 3-7-25) 米、ウクライナと本格協議再開へ 首脳会談決裂から修復探る動き ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)は 5 日、ホワイトハウスで記者団に、ウクライナとの本格的な協議再開に向けて準備を進めていることを明らかにした。 両国関係は 2 月 28 日の首脳会談の決裂でかつてない溝ができていたが修復を探る動きが出ている。 ゼレンスキー大統領、米国に苦渋の歩み寄り 欧州、国内にも気配り ウォルツ氏はこの日、ウクライナ側と電話で協議したと言及した上で、「次の交渉の場所や代表団、内容について、良い話し合いができている」と語った。 トランプ政権は 3 月 3 日に、ウクライナへの軍事支援を一時的に停止したが、ウォルツ氏は「非常に短期間で動きが見られるだろう」と述べ、早期に支援を再開する可能性を示唆した。 両首脳、決裂の一因は 両首脳の決裂の一因は、ロシアの侵攻を受けるウクライナが、戦闘の停止を急ぎたい米国に対して自国の「安全の保証」を強く要求したことだった。 ウォルツ氏は、欧州各国が平和維持部隊をウクライナに派遣する場合に、米国は北大西洋条約機構 (NATO) の規定に基づく集団防衛の義務を負わないという立場を示した上で、「だからといって、支援努力をしないとか、その交渉をする必要がないということではない」と述べ、「安全の保証」は欧州が主体的に担うべきだが、米国が何らかの後方支援をすることまでは否定しない考えをにじませた。 「我々がゼレンスキー大統領に申し上げたいのは、(ロシアとウクライナの)双方が(交渉の)テーブルに着くかどうかさえわからないうちから、詳細をすべて交渉するわけではないということだ」とも語り、ウクライナ側に事前に条件をつけずに停戦交渉に加わるよう求めた。 一方、米中央情報局 (CIA) のラトクリフ長官は 5 日、米 FOCX 系のインタビューで、ウクライナに対しては武器だけでなく機密情報の提供も停止していることを明らかにした。 ただ、ゼレンスキー氏が 4 日に、和平交渉や希少資源をめぐる協定署名の準備ができていると訴える書簡をトランプ大統領に送ったことを受けて、「軍事面と情報面での一時停止はなくなると思う」と語った。 「ウクライナと協力して(ロシアの)侵略行為を押し返さなければならない」とも述べた。 (ワシントン・下司佳代子、asahi = 3-6-25) ウクライナ軍事支援停止、「パトリオット」の弾薬枯渇か 民間人が弾道ミサイルにさらされる可能性 ウクライナがロシアの強力な弾道ミサイルから自衛する方法はただ一つ、米国製の「パトリオット」防空システムしかない。 米国がウクライナ政府への軍事供与を停止した今、パトリオットの弾薬が近く底をつく可能性が出ている。 トランプ米大統領は先週ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と激しい応酬を繰り広げた後、今月 3 日にウクライナへの軍事供与を停止した。 これを受け、ウクライナ政府や支援国は対応策の検討に追われている。 米国の措置はウクライナに甚大な影響を及ぼす可能性がある。 ただ、ウクライナ軍が戦場で使用する米国製装備品の多くは他国から調達でき、国内生産や代替品による置き換えも可能だ。 もっとも、ウクライナの支援国が米国に匹敵する規模の支援を行えるかどうかには、大きな疑問符が付く。 ウクライナにとって最大の難題は、現在代替不可能な米国製のパトリオットを失う可能性だ。 ウクライナ軍の兵士たちは CNN に対し、差し当たり最も心配しているのは前線への影響ではなく、国内各地の都市で家族や愛する人々を守るパトリオットのミサイルが不足することだと漏らした。 「パトリオットのライセンスやミサイルの製造は米国が押さえており、欧州諸国がこれを再現するのは非常に難しい。」 米戦争研究所のロシア専門家、カテリーナ・ステパネンコ氏はそう指摘する。 パトリオットは米国からウクライナに提供されている装備品の中でも最高峰で、ウクライナの防空体制の要を担う。 このため、パトリオットを失うリスクにウクライナ当局は危機感を募らせているのだ。 ウクライナのシュミハリ首相は 4 日、「ロシアの弾道ミサイルに対処できるシステムはこれだけだ。 修理、整備、弾薬、どの点でもウクライナを弾道ミサイルから守るパトリオットの提供にリスクがある」と指摘した。 「他のロシアのテロ攻撃手段についてはいずれも、ウクライナにある国内生産の装備やパートナー国からの供与品で破壊できる」という。 ロシアはウクライナに向けて定期的に弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射しており、毎週のように都市部やエネルギーインフラ、民間施設を攻撃している。 昨年夏には、首都キーウにある小児病院への攻撃に巡航ミサイルを使用した。 弾道ミサイルは放物線軌道を描き、大気圏外に上昇後、大気圏に再突入して目標へ落下する。 極めて高速で飛行するため、迎撃は非常に困難となる。 一方、巡航ミサイルは航空機のようにジェットエンジンで推進する無人飛行体であり、地上や空中、海上から発射が可能。 弾道ミサイルより小型で低空飛行するため探知しにくく、高速飛行できるタイプもある。 ウクライナが持つミサイルの在庫数や、追加物資がすでに米国から輸送中だったのかどうかは不明だ。 ウクライナ当局者は 4 日、CNN に対し、政府が保有するパトリオットのミサイルは数週間で底をつく可能性があると明らかにした。 前線にいるウクライナ兵も、パトリオットは失ってはならない重要装備だとすぐさま指摘した。 ドローン攻撃小隊のイエゴール・フィルソフ氏は、「我々の弱点は防空ミサイルにある。 つまりパトリオットだ。」 「われわれ軍人ですら、前線で任務に従事する間、家族や後方をできる限りしっかり守ってほしいという思いはある。」と話している。 防衛効果は高いが費用も膨大 パトリオットは運用開始から 40 年近くが経つが、今なお世界最高レベルの防空システムとの見方が多い。 巡航ミサイルや極超音速ミサイル、短距離弾道ミサイル、航空機の迎撃が可能だ。 その高い有効性ゆえに、パトリオットはロシアの重要攻撃目標となっており、ロシア軍は何度もパトリオットのシステムを狙ってきた。 ゼレンスキー氏は以前、ウクライナ領空の効果的な防衛には約 25 基のパトリオット・システムが必要だと述べたことがある。 ウクライナの保有数は現在およそ 6 基だが、正確な数や場所は厳重に秘匿されている。 米国は当初、パトリオットの供与に慎重だったが、ロシアが数カ月にわたって連日ウクライナの民間目標を空爆し続けたことから、ようやく提供に応じた。 初回供与分のパトリオットがウクライナに到着したのは、2022 年 2 月の全面侵攻開始から約 14 カ月後。 以来、ウクライナの防空体制の不可欠な部分を担っている。 専門家によれば、ウクライナ軍はパトリオットを極めて効果的に運用しており、ロシアが「迎撃不可能」と主張していたキンジャル弾道ミサイルなどを撃ち落としてきた。 しかし、その費用は高くつく。 パトリオットの推定費用は 1 システムあたり約 11 億ドル(約 1,640 億円)に上り、支援国からウクライナに送られた装備品の中で群を抜いて高い。 米戦略国際問題研究所(CSIS) によれば、パトリオットのミサイル 1 発あたりの価格は約 400 万ドル(約 5 億 9,600 万円)と、非常に高額だ。 「NASAMS (ネイサムス)」や「IRIS-T (アイリスティー)」など、巡航ミサイルやドローン(無人機)に対する有効性が確認されている代替システムもいくつか存在するが、高度な極超音速ミサイルや弾道ミサイルに対する防衛能力では、パトリオットに及ばない。 パトリオットの代替となり得る兵器としては、欧州のメーカー、ユーロサム社が製造する防空システム「SAMP/T」がある。 ただ、パトリオット並みの効果を発揮するには多数の SAMP/T が必要で、現状では供給面で大きな問題が残る。 (CNN = 3-6-25) 欧州、募る危機感「ロシアの力強める」 米のウクライナ軍事支援停止 トランプ米大統領がウクライナへの軍事支援の一時停止を決めたことを受け、欧州では危機感が広がっている。 支援をめぐって欧州はさらなる政策転換を迫られることになる。 フランスのアダッド欧州担当相は 4 日の仏公共放送で「平和をさらに遠ざけ、侵略者であるロシアの力を強めるだけだ。 この戦争を終わらせたいのであれば、ウクライナではなく侵略者に圧力をかけなければならない」と批判。 「欧州が自らの運命を自分で決める時だ。 欧州の防衛力を強化し、できる限り有利な力関係を保てるようにウクライナの支援を続ける」と述べた。 仏紙パリジャンによると、マクロン仏大統領は「欧州の防衛強化」を議論するためにバイル首相やバロ外相らを仏大統領府に招集した。 欧州各国は 2 日にロンドンでの首脳級会合で結束と支援強化を協議したばかりだ。 英政府はトランプ氏の決定を受け、「英国は間違いなく、ウクライナにおける永続的な平和を確実なものにするための尽力を続けていく」とする声明を英メディアに発表した。 英国はフランスやウクライナとともに、米国に提示するための「停戦案」の策定作業を進めている。 声明では米国の名指しを避けつつ、「重要な複数の同盟国」と、ウクライナの平和に向けた努力を続けていくと強調。 「そうすることが正しいことであり、我々の国益でもある」と訴えた。 「頼る時代終わった」 ウクライナの隣国ポーランドのトゥスク首相は SNS で「ロシアの侵略から自国を防衛できる主権国家で親西欧派のウクライナは、より強力で安全なポーランドを意味する」と指摘。 「この明白な事実に疑問を呈する者は誰でも、プーチン(ロシア大統領)の勝利に貢献することになる」とし、米国の動きに危機感を示した。 米国に次いでウクライナへの 2 国間の軍事支援額が大きいドイツでは、ベアボック外相が SNS で「今、力による平和のためには二つのことが不可欠だ。 それは、私たちの自由を守るウクライナに対する軍事そして財政面での追加支援。 そして欧州連合 (EU) の防衛を強化するための(予算などの)飛躍的な増加だ。」と呼びかけた。 また、ウクライナに砲弾を供給する計画を主導してきたチェコのフィアラ首相は SNS に「現在の欧州の政策転換が緊急に必要であることが如実に示された」とし、「根本的な国際問題に対処するのに、誰かに頼る時代は終わった」とつづった。 EU のフォンデアライエン欧州委員長は 4 日、加盟国に防衛費を増額させるための「欧州再軍備計画」を発表。 総額 8 千億ユーロ(約 125 兆円)の増額を見込む。 財政規律の一時的な緩和や、新型コロナで発行した共同債を防衛費に用途変更するなどの 5 項目を提案しており、6 日の臨時の首脳会議で議論する。 (パリ・宋光祐、ロンドン・藤原学思、ストックホルム・寺西和男、ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 3-4-25) トランプ氏、ウクライナへの軍事支援停止−ゼレンスキー氏と口論後
トランプ米大統領は、ウクライナに対する全ての軍事支援の一時停止を命じた。 ウクライナのゼレンスキー大統領との米大統領執務室での会談が口論に発展し、米国からの支援の先行きが不透明となっていた。 国防総省の高官によると、ウクライナ首脳らが和平への誠実なコミットメントを示しているとトランプ大統領が判断するまで、米国は現行のウクライナへの軍事支援を停止する。 同高官が非公開情報だとして匿名を条件に明らかにした。 この高官によれば、航空機や船舶で輸送中、あるいはポーランドの中継地で待機中の武器を含め、現在ウクライナ国内にない米軍装備品は全て停止対象となる方向。 トランプ大統領はヘグセス米国防長官に一時停止の実行を命じたという。 ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争を終結させるため、トランプ大統領は早期の合意を探っている。 だが、ゼレンスキー氏は 2 月 28 日に開かれたトランプ氏との首脳会談で、ロシアがいかなる合意にも違反しないよう安全の保証を求め、トランプ大統領は和平の準備ができたら戻ってくるよう応じていた。 これを受け、欧州の同盟国はウクライナに武器を供給し続け、停戦後の平和維持部隊の派遣に向けた計画の策定を急いでいる。 しかし、欧州には米国が現在提供している武器やその他の能力などの多くが欠けており、当局者は武器の供給は夏までしか続かない公算が大きいと話している。 トランプ大統領の命令によってどれだけの支援が影響を受けるかは、すぐには明らかにならなかった。 (Anthony Capaccio、Bloomberg = 3-4-25) トランプ氏が締め出し図るゼレンスキー氏、ウクライナ国民の支持厚く トランプ米政権は、ウクライナのゼレンスキー大統領が同国への支援の障害になっているとの認識を明確に示した。 問題は、ウクライナ国民がこれに同意するかどうかだ。 テレビカメラの前で異例の応酬となった 2 月 28 日の首脳会談後も、ゼレンスキー氏に対する米国側の圧力はエスカレートしている。 トランプ、バンス正副大統領は会談の場で、ゼレンスキー氏の態度は失礼だと断じ、侵略したロシアではなく、妥協を拒むゼレンスキー氏の強硬姿勢こそが、米国が仲介を目指す停戦合意への妨げとなっているとの考えを強くにじませた。 ゼレンスキー氏の側近によると、同氏は大統領を辞任する意向はない。 ゼレンスキー氏の政治的な将来はウクライナ国民が決めるものであって、他国には関係のない問題だと側近は語った。 ゼレンスキー大統領の支持率は 2022 年初頭のピークからは低下しているが、なお高い支持率を維持している。 だが、3 年に及ぶロシアの全面侵攻を耐え抜いてきた国民は疲れ果てており、新たな視点を望むとの声は強い。 戦時下のウクライナでは選挙が無期限に延期されている。 レーティング・グループが米・ウクライナ首脳会談前の 2 月 20 日 - 21 日に実施した調査によると、ゼレンスキー大統領を信頼していると答えた回答者の割合は、1 月の 57% から 65% に上昇した。 ゼレンスキー氏を超えて支持率トップに立ったのは現在駐英大使を務めるザルジニー前軍総司令官で、76% だった。 ザルジニー氏はゼレンスキー氏との対立候補として選挙に出馬することを明確に否定していない。 米国のジレンマ 米・ウクライナ首脳会談以降、「MAGA (米国を再び偉大に)」派の攻撃は強まっている。 ロシアのプーチン大統領をインタビューした元 FOX ニュースの司会者、タッカー・カールソン氏は一連の陰謀論や誤情報をソーシャルメディア、X (旧ツイッター)に投稿。 その中には、ゼレンスキー政権が「深刻な犯罪を多数犯している」といった内容も含まれる。 ただ、トランプ、バンス両氏にとってジレンマとなるのは、ゼレンスキー氏を追い詰めるほど、ウクライナ国民の多くはむしろゼレンスキー氏支持で団結するとみられることだ。 公開の場で言い争いに発展した異例の首脳会談後、ウクライナの首都キーウではゼレンスキー氏を擁護する声が目立った。 写真家のウラディスラフ・ムシエンコさん (52) は、トランプ氏は「われわれ全員を辱めようとした」とし、「私はゼレンスキー氏に投票しなかったが、今回の騒ぎでむしろ大統領への支持が高まった」と述べた。 ウクライナ陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は X への投稿で軍は「最高司令官と共にある」と述べ、ゼレンスキー氏への支持を表明した。 安保確約望む声 またウクライナの世論調査の結果からは、たとえトップが交代しても、トランプ氏が急ぐロシアとの停戦合意の計画に好意的な新大統領が誕生するとは限らないことがうかがわれる。 レーティング・グループが実施した調査では、ウクライナ国民の 83% が、安全保障の確約が提供されるという条件がなければ停戦に同意しないと回答。 条件で停戦に同意するとの回答はわずか 2% だった。 ゼレンスキー氏が譲らず、異例の首脳会談決裂となった背景にはこうした事情がある。 そのため、ゼレンスキー氏とトランプ氏の個人的な関係悪化に関わらず、事態のエスカレートは避けられないだろう。 こう話すのはインターナショナル・ルネサンス財団の責任者、オレクサンドル・スシコ氏だ。 同財団はジョージ・ソロス氏のオープン・ソサエティー財団がキーウに本部を置く慈善団体。 「いずれにしても起こっていただろう。 今でなくでも、1 - 2 カ月後にあり得た」と、スシコ氏はフェイスブックに投稿。 トランプ氏が早期の和平合意を優先すれば、プーチン氏に優位な条件となるとし、「たとえ米国の支援を失うとの圧力にさらされても、そのような合意に署名するウクライナの指導者は誰もいない」と述べた。 (Daryna Krasnolutska、Olesia Safronova、Volodymyr Verbianyi、Bloomberg = 3-3-25) 英仏とウクライナで停戦案、米に提示へ 英首相表明「4 首脳で合意」 英国のスターマー首相は 2 日、英公共放送 BBC に対し、英国とフランス、ウクライナで停戦案を作り、それを米国に提示すると述べた。 トランプ米大統領やウクライナのゼレンスキー大統領を含め、4 カ国の首脳間ですでに合意したという。 ロンドンでは 2 日、欧州やカナダなど 16 カ国と北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合 (EU) が集まり、首脳級会合が開かれる。 ここでも停戦案が話し合われる見通しだ。 米国のウクライナ離れが進むなか、欧州がウクライナの「安全の保証」にどう関与するか、議論を加速させる。 ゼレンスキー氏は 2 月 28 日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と面会したが、口論になり会談は決裂に終わっていた。 一方、3 月 1 日に「トランプ氏の支援を得ることは極めて重要だ」と SNS に投稿。 ウクライナの資源をめぐる米国との協定についても「署名の準備はできている」とし、今後の関係修復に意欲を見せた。 欧州の首脳らは米ウクライナ首脳会談後、ウクライナへの連帯を続々と表明。 ただ、米国がウクライナ支援停止に踏み切れば、欧州にかかる負担は重くなり、ウクライナの前線への影響も避けられない。 そのため、スターマー英首相らはゼレンスキー氏に対し、トランプ氏との関係を絶たないよう促しているとみられる。 NATO のルッテ事務総長も、ゼレンスキー氏に「関係を修復する方法を見つけなければならない」と伝えたと、英公共放送 BBC に 1 日に語っていた。 ゼレンスキー氏は 1 日、英首相官邸でスターマー氏と会談。 スターマー氏から、英国中が支持しており、時間がかかろうとも揺るぎない支援を続けると伝えられ、涙ぐむ姿も見られた。 英国は停戦時のウクライナへの派兵検討をいち早く表明しており、1 日には 22 億 6 千万ポンド(4,280 億円)の軍事融資も発表した。 返済は、ロシアの凍結資産からうまれる利益を充てる。 ゼレンスキー氏は 2 日、チャールズ国王とも面会する。 BBC によると、ウクライナ側からの要請という。 スターマー氏は 2 月 27 日にトランプ氏と会談した際、国王からの親書を手渡し、2 度目の国賓招待をする「サプライズ演出」を見せていた。 (クラクフ・藤原学思、asahi = 3-2-25) |
... - 97 - 98 - 99 - 100 - 101 - 102 - 103 - 104 - 105 - 106 - 107