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電車動かず会社で仮眠 … 開かなかった待機施設、帰れない人の対策課題

地震の発生直後、首都圏の主要駅は運転を見合わせた電車の運転再開やタクシーを待つ人たちであふれ、帰宅困難者対策に課題を残した。 東京都港区の会社に勤務する男性 (38) は 7 日夜、勤め先の社内で地震にあった。 仕事を切り上げて最寄りの JR 品川駅に着くと、人があふれかえっていた。 自宅は埼玉県川口市だが電車は動かず、タクシー乗り場には長蛇の列。 「次の日も仕事がある中で、運行再開を待ち続けるのは現実的ではない」と、帰宅をあきらめて品川区の友人宅に徒歩で向かい、一晩泊めてもらったという。

台東区の会社に勤務する男性 (52) も帰宅をあきらめた一人だ。 JR 錦糸町駅から、渋谷駅を経由して神奈川県内の自宅へと帰るのが普段のルート。 だが、JR は動かず、別ルートの地下鉄も復旧のめどが立たなかった。 タクシーよりは安価なホテルを探したが空きはなく、あきらめて会社に戻って仮眠したという。 東京駅も帰宅できない人が、タクシー乗り場に列をなした。 JR 東日本や東海は新幹線の車両計 4 本を一時滞在施設として開放。 始発前までに計約 350 人が利用したという。

滞在施設、大半は開かず

2011 年の東日本大震災では、東京、神奈川など首都圏で、その日のうちに帰宅できなかった帰宅困難者が約 515 万人出たとされる。 国は震災を教訓に、今後予想される首都直下地震や南海トラフ地震などを想定した帰宅困難者対策のガイドライン作りを進めた。 退社・帰宅時間の分散とともに力を入れたのが駅近くでの一時滞在施設の確保だ。 公共施設のほか、民間企業などと協定を結び、災害時に場所を提供してもらう。

東京都渋谷区は、大規模ビルを建設する場合、帰宅困難者の滞在施設を造ることを義務化。 東京・丸の内に本社を構える三菱地所は千代田区と協定を結び、保有ビルが滞在施設として認定されている。 東京都は 7 月時点で 1,137 カ所、横浜市でも現在 232 カ所が確保されているという。 ただ、内閣府によると今回は、自治体が開設した滞在施設は、東京、神奈川、千葉の 1 都 2 県で 6 施設にとどまったという。

東京都足立区は 8 日未明、小学校の体育館を一時避難所として開放。 JR 常磐線の北千住駅で帰宅できなくなった 47 人が利用したという。 区の担当者によると、「駅周辺で途方に暮れたり、座り込んだりしている人に声をかけて歩いて移動してもらった」という。

千葉県流山市も 8 日未明、南流山駅近くの市の施設を開放した。 地震後、JR 武蔵野線とつくばエクスプレスが交差する同駅に大勢の人が滞留したためだ。 帰宅できずにいた人たちが配布された毛布を使って仮眠。 延べ 36 人が利用したという。 市によると、東日本大震災の時にも市内の別の施設を帰宅困難者用に開放したといい、市の担当者は「以前の経験からスムーズに対応できた」と話す。

一方、市の施設 2 カ所を開設した横浜市は今回、民間への協力要請は見送った。 担当者は「民間との協定では、開設基準は『公共交通機関が止まって人流が滞留した場合』とざっくりしている。 今回は順次鉄道が動き出していたから」とする。 受け入れに意欲的な三菱地所も施設の開放を検討したが、ビル周辺では混雑が確認できず、見送ったという。

東日本大震災では、都心の震度は 5 弱。今回は多くが震度 4 にとどまった。 渋谷区の担当者は「震度 5 弱が一つの制度設計の基準となってきた。 ただ、今回の規模でもあれだけの帰宅困難者が出たことは課題だと捉えている、」 今後、帰宅困難者の対策協議会で民間企業と滞在施設の開設基準の緩和などを議論したいという。 (山本孝興、asahi = 10-8-21)


3 連休最終日、首都圏の高速道で 44 キロの渋滞 江ノ島の人出は倍増

シルバーウィークの 3 連休最終日となった 20 日、首都圏の高速道路では、行楽地などから U ターンする車が長い列をなした。 日本道路交通情報センターによると、高速道は都心に向かう上り線を中心に混雑。 東名高速では午後 8 時時点で、綾瀬スマートインターチェンジ(神奈川県綾瀬市)を先頭に約 44 キロの渋滞が生じた。 中央道では小仏トンネル(東京都八王子市、相模原市)付近から約 31 キロの渋滞が起きた。

東京など 19 都道府県に緊急事態宣言が出るなか、人出も各地で増えた。NTT ドコモの携帯電話の位置情報から推計したデータによると、3 連休の中日となる 19 日正午ごろ、都心の繁華街の渋谷、新宿、銀座の人出の平均は前週と比べて 12% 増だった。 行楽地では神奈川県の江の島で 105% 増と倍増し、箱根湯本駅前でも 12% 増。長野県軽井沢町の旧軽井沢では 24% 増え、人出が郊外に向かった様子がうかがえた。 (asahi = 9-20-21)


タワマン建設、税金が支える 東京都内の再開発事業で依存率 68% も

再開発事業によって建てられる東京都内のタワーマンションを税金が支えている。 都内 46 地区の再開発事業の資金計画を分析したところ、そんな傾向が浮かび上がった。 22 地区で総事業費の 20% 以上を税金でまかない、最大の上板橋駅南口駅前東地区(板橋区)では 68% になる。 都が 6 月時点で事業中の 46 地区の再開発事業の資金計画について情報公開制度を使って入手し分析した。 46 地区のほとんどは、地権者が再開発事業組合を作り、超高層のタワマンを建てて新たに生み出される床(保留床)を開発業者に売って、建設工事や既存家屋の除却、住民補償、調査設計などの事業費をまかなう仕組みをとっている。

46 地区中 44 地区に交付金

しかし、保留床の売却で事業費をまかなえる再開発事業は 2 地区で、他の 44 地区には事業費を補助する交付金などが投入されている。 46 地区を平均すると事業費全体の 12% を税金に依存している。 「税金依存率」が高い地区は、@ 上板橋駅南口 68%、A JR 小岩駅北口(江戸川区) 58%、B 十条駅西口(北区) 47%、C 大山町クロスポイント周辺(板橋区) 44% となっている。

投入される税金のうち大きな割合を占めるのが、国土交通省が 2010 年度に設けた社会資本整備総合交付金だ。 住宅や道路などに細分化していた補助金を一括して自治体に交付する。 国交省は「個別に補助するのではなくパッケージ化して渡す。 自治体にとっては自由度が高く創意工夫できるものにした。」という。 自治体側は計画や事業費を盛り込んだ「社会資本総合整備計画」を作って同省に提出し、それを元にした交付金を受け取っている。

下町や周辺区でめだつ「税金依存」

都心に比べて開発の遅れた下町や周辺区が、駅前の整備や木造密集地の解消、道路拡幅などとともに再開発を進めるケースが多いため、交付金の要求は都心部よりも周辺区の方が多いとみられる。 言い換えれば、交付金なしでは再開発事業を進められない「税金依存」の状態がうかがえる。 記事後半では、再開発事業を支えている国や自治体の交付金制度の仕組み、その使われ方、専門家の見方を詳しく伝えます。

同交付金によって、再開発事業の調査設計、土地整備、共同施設整備、防災機能強化にかかる経費は国と自治体が 3 分の 2 を出す。 十条駅西口の場合、日鉄興和不動産と東急不動産が参加する組合が、131 億円の交付金を得て 146 メートルのタワマン(578 戸)を建てる。 使途は、調査設計 6 億円、土地整備(大半が補償費) 29 億円、共同施設整備費 95 億円となっている。 「廊下など皆さんが使うところを補助している」と北区の担当者は言う。

大山町クロスポイントでも交付金 69 億円のうち 46 億円が共同施設整備費に振り向けられる。 JR 小岩駅北口も同様で、江戸川区の担当者は「共用廊下や駐車場、駐輪場、エレベーターなどに充てる」という。 再開発でタワマンを建てる際、既存住宅の撤去や住民補償、設計、さらに建物の共用部分にも交付金が投入されるので、事業者の負担はそのぶん軽くなる。 再開発組合が道路など公共施設を造る際に、国や都、区が工事代を負担する公共施設管理者負担金(公管金)という制度もある。

上板橋駅南口の場合は、川越街道と同駅を結ぶ放射 8 号線などに 192 億円が投じられる。 「道路を造るのは再開発組合ですが、道路は公共施設なので区が費用を出します」と区の担当者。 住友不動産が加わる再開発組合は、公費で造られるこの道路沿いの駅前の一等地に 81 億円の交付金を得てタワマン(約 440 戸)などを建設する。 三井不動産レジデンシャルと日鉄興和が加わる小岩駅北口も、幅 18 メートルの区画街路の拡幅などに公管金 226 億円が投じられるうえ、公費から 142 億円を得てタワマン(730 戸)を建てる。

「交付金前提に収支が計画」

これらに加えて、タワマンの中で「売りにくい」といわれる低層の保留床を自治体が庁舎など公共施設として買い取る計画も進む。 この代金を加えると、「税金依存度」はさらに跳ね上がる。 立石駅北口(葛飾区)は、区が庁舎に使う保留床取得代金も含めると、税金依存度は 41% から 69% になる。 まだ事業前だが、石神井公園駅南口西地区でも練馬区が低層フロアを支庁舎として 30 億円で買い取る計画が進む。 再開発と補助金の関係に詳しい埼玉大の岩見良太郎名誉教授(都市工学)は「交付金によって不動産ディベロッパーのコストが軽減されているのではないか。 あらかじめ交付金を前提に再開発の収支が計画されている。」と話している。 (大鹿靖明、asahi = 9-12-21)


鉄道遺構「高輪築堤」国史跡へ 異例のスピード指定

1872 (明治 5)年に日本初の鉄道が新橋 - 横浜間で開通した際、海上に線路を敷くために造られた「高輪築堤(東京都港区)」の遺構が史跡に指定される見通しになった。 文化審議会が 23 日、同じ鉄道開業時の史跡である「旧新橋停車場跡(同区)」に追加指定し、名称を「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」にするよう文部科学相に答申した。 遺構は、JR 東日本が再開発を進める一帯で見つかった。 文化審議会の分科会は 3 月、文科相に諮問される前の段階ながら、「(一部は)国の史跡として指定するに値する」として現地保存を求める異例の意見表明を行った。 JR 東は 4 月、一部を現地保存し、ほかは移築や記録にとどめて撤去する結論を出した。

文化庁によると、埋蔵文化財の場合、保存の方針が決まってから史跡の指定まで数年かかるケースが多いが、今回は緊急に取り組む必要があるとして 4 カ月でのスピード答申となった。 高輪築堤は海の浅瀬に盛り土をして石垣で固めた堤。 現在の JR 田町駅付近から品川駅付近まで約 2.7 キロにわたって築かれた。 2019 年に品川駅改良工事の際に石垣の一部が見つかったのをきっかけに、計約 800 メートルの遺構が確認された。 史跡に指定されるのは現地保存される部分で、当時の漁師らの舟が堤をくぐり抜けて沖に出られるように設けられた橋梁部分などを含む計約 120 メートル。

当時の遺構が良好に残り、交通の近代化や土木技術の歴史を知る上で重要とされる。 築堤は英国人技師の指導の下、日本の伝統的な技法が使われた。 英国と日本の両方の技術によって造られている点でも、明治日本の文明開化を象徴していると評価された。 JR 東が高輪築堤の調査や保存について議論するために設けた有識者委員会の委員長を務める谷川章雄・早稲田大教授(日本考古学)によると、当時海上を走らせた鉄道は世界でも珍しい。 谷川教授は「非常に早く史跡指定が決まることで、整備や活用の方針を立てるきっかけになる。 高輪築堤の指定を機に、明治以降の近代の遺跡に関心が高まり、重要性が理解されるようになることを期待する。」と話した。 (神宮桃子、asahi = 8-23-21)


4 連休、18 万人が首都圏脱出 意外な施設で人出増

東京五輪が開幕した 22 - 25 日の 4 連休。 東京都の小池百合子都知事は「不要不急の外出、都県境を越える移動は控えて」と呼びかけていたものの、都外に「脱出」する動きが目立った。 NTT ドコモの携帯電話の位置情報から推定したデータをもとに、東京都内に住む人たちが連休の初日の 22 日、どこへ移動したかを調べた。 同日正午時点のデータを前日 21 日の同時刻と比べた結果、首都圏の 1 都 3 県(東京、神奈川、千葉、埼玉)以外の道府県に約 18 万人が移動していた。 先週土曜日の 17 日と比較しても、約 12 万人以上が首都圏外に出ていた。

21 日と比較して特に多かったのが静岡県で、約 2 万 3,200 人増え、1.98 倍。 京都府が約 6,200 人増で 1.96 倍。 北海道が約 6 千人増で 1.36 倍だった。 この日は羽田発の航空便が混雑し、日本航空が 80% ほど、全日空は午前中だけでも約 95% の予約率だったが、沖縄は台風 6 号の影響で大幅に欠航し、夏休みに人気の観光地だがほぼ東京からの人の動きは見られなかった。

人出の増加率、高かったのは …

都内で人出の増加率が最も高かったのは、五輪とは無関係と思われるある施設の周辺だ。 4 連休だった 22 - 25 日と前週の土日とを比較し、1 千人以上増えた地点に限ると、最も増加したのは板橋区の戸田競艇場周辺の地点で 2.61 倍。 八王子市の帝京大がある地点で 1.97 倍、羽村市の自動車工場がある地点で 1.50 倍と続いた。 五輪の開会式があった国立競技場周辺の増加率は 1.20 倍にとどまった。

一方で、自宅観戦した人も多かったようだ。 視聴率調査会社ビデオリサーチの推計で、生中継を全国で視聴した人の数は 7,061 万 7 千人。 およそ 2 人に 1 人が見ていた計算になる。 関東と関西の協力する 1,100 世帯からテレビを見ている人の動態データを取得し、「ながら見」を排除した視聴率を調査する「ティービジョン・インサイツ(東京)」が、開会式のテレビ中継の見られ方を分析。 開会式で最も視聴者の「視線」を集めたのは、開始約 20 分後に行われた俳優でダンサーの森山未來さんのダンスだったという。 フードデリバリーの利用も増え、宅配サービスの「出前館」では、五輪の競技が始まった先週 1 週間の注文数が前年と比べて 2 倍以上になったという。 (山崎啓介、篠健一郎、牛尾梓、asahi = 7-27-21)


五輪対策の首都高値上げ開始 ほかの高速は 18 キロ渋滞

東京オリンピック・パラリンピック大会の渋滞対策として、首都高の都内の料金を昼間から夜間は 1 千円値上げする「ロードプライシング」が 19 日に始まった。 首都高には目立った渋滞はなかったが、ほかの高速道路は混雑した。 首都高の値上げに加え、五輪対策の交通規制が影響したとみられ、SNS などでは戸惑いの声が上がった。 首都高のロードプライシングは 19 日 - 8 月 9 日、8 月 24 日 - 9 月 5 日のいずれも午前 6 時 - 午後 10 時で、普通車や二輪車は 1 千円が上乗せされる。 逆に午前 0 - 同 4 時に首都高に入った場合は 50% 割引される。

日本道路交通情報センターによると、午後 1 時半までに、首都高では目立った渋滞はなかったが、そのほかの高速では大規模な渋滞が発生。 東京外環道の内回りでは、戸田東インターチェンジ(埼玉県戸田市)を先頭に約 18 キロの渋滞に。 首都高を回避した車の流入に加え、五輪対策で実施された追い越し車線の規制が影響したとみられる。 常磐道や東名高速などでも 10 キロ近い渋滞が起きた。 SNS などでは「下道含め、(渋滞で)どこにも逃げられない」、「千円払うしかないのか」など声が上がった。

ロードプライシングは、交通量 3 割削減を目標に、大会組織委員会の要請を受けた取り組みだ。 4 回目の緊急事態宣言や無観客開催で、通行量は当初の想定より減る可能性もある。 だが、赤羽一嘉・国交相は 17 日の会見で、方針変更の有無などを問われ、「そもそも観客の輸送は公共交通機関の利用が原則。 無観客開催の決定でも、首都高の交通量が減少することは見込んでいない。」と述べた。 国交省は、こうした料金変動制について、将来的な渋滞緩和策として本格導入を検討している。 国交省の検討会では、一部の委員から「オリパラのロードプライシングは機動的料金のきっかけになる」との意見も上がっていた。 (山本孝興、asahi = 7-19-21)


ビルから見下ろす巨大な「三毛猫」 新宿駅前に現れる

東京・新宿駅前のビルの上に巨大な「三毛猫」が現れ、話題となっている。 猫は大型の街頭ビジョンに立体的に映し出された映像。ビル上部に設置された約120平方メートルの画面は湾曲しており、平面の画面よりも立体的な3D映像が放映できるという。ビル屋上から街中を見回しているように見え、思わず足を止めて見入る人もいる。

朝、ビジョンの放映開始とともに三毛猫は目を覚ます。日中は、通常流れるPR映像などの合間に駅前の東口広場の人たちに話しかけるようなしぐさを見せ、夜になるとあくびをして、眠ってしまう。 現在は事前放映中で、12日から本格的な運用が始まるという。 (嶋田達也、asahi = 7-11-21)


茶室にお城に巨大なボウル 東京の街に個性派パビリオン

国立競技場の前には小さな茶室、青山通りには段ボールのお城が登場 - -。 建築家と美術家による、仮設の建物やオブジェを街角、公園などに設置する企画「パビリオン・トウキョウ 2021」が 7 月 1 日、青山周辺など東京都内の 10 カ所で始まる。 29 日には関係者向けの内覧会があり、その全体像が明らかになった。 東京都などの主催で、東京五輪・パラリンピックを文化で盛り上げるプログラムの一つだ。

公募でワタリウム美術館(東京都渋谷区)による企画が選ばれ、建築家 6 人のほか、美術家の 2 人と 1 組が参加している。 建築史家・建築家の藤森照信さんは、巨大な国立競技場の向かいに、あえて小さな茶室を設計した。 灯籠(とうろう)のような外観で、1 階部分は芝に覆われ、2 階部分が焼き杉という、古代建築のような趣で、2 階の茶室からは競技場がよく見える。

代々木公園などに、雲を模した白い球体を集めた立体を作ったのは、建築家の藤本壮介さん。 「世界の大屋根」をイメージしたもので、その姿は公園の緑にくっきりと映える。 建築家の平田晃久さんも地球を意識。 国際連合大前の広場に、巨大な木製のボウルを置いた。 穴だらけのボウル、というより、複雑な木の部材がメビウスの輪のような不思議な幾何学模様を描き出している。 そして、神宮外苑のいちょう並木入り口。 美術家の会田誠さんは、元々あった二つの石塁の上に、段ボールとブルーシートのお城を築いた。高さはそれぞれ 10 メートルと 4 メートル。 地震や水害などの度に使われる素材によるお城だ。

建築家の藤原徹平さんは階段状の木製の構造物に植物を配し、同じく建築家の妹島和世さんは浜離宮恩賜庭園の芝の上に人工的な水の流れを生みだした。 美術家の草間彌生さんは、家具が配された白い部屋に来場者が水玉のシールを貼ってゆく企画。 「真鍋大度 + ライゾマティクス」はワタリウム美術館向かいでメディアアート的な展示を見せる。 建築家の石上純也さんは焼き杉を使った木漏れ日のような構造物を制作中だ。 公開は 9 月 5 日まで。 一部、鑑賞に予約が必要なものもある。 詳しくは「パビリオン・トウキョウ 2021」のホームページで。 (編集委員・大西若人、asahi = 9-30-21)


御茶ノ水駅員、考案の消毒液の貼り紙に「センス高い」

JR 御茶ノ水駅(東京都千代田区)にある消毒液の貼り紙が、SNS などで話題を呼んでいる。 駅名標そっくりにもじった「消毒駅」。 細部にわたりこだわった貼り紙に込めた思いを駅員たちに聞いた。 貼り紙があるのは、聖橋(ひじりばし)口の改札のそば。消毒液が入った噴霧器を置く台に貼られている。 JR 東日本の駅名標のデザインを模した「消毒駅」。 色合いも本物そっくりだ。 路線をアルファベット、駅名を番号で外国人向けに表示する「駅ナンバリング」は、「JC03」。 中央線快速の御茶ノ水駅を指す。

「センスが高い」と紹介したツイッターの投稿には、約 10 万件の「いいね」がついた。 消毒液が駅に置かれたのは今年 1 月。 感染拡大を防ごうと近くの商店街が提供してくれた。 だが、目立たなかったのか、使ってくれる利用客はまばらだった。 どうしたら気づいてもらえるか - -。 御茶ノ水駅営業係の川崎直樹さん (24) ら入社 2 年目の同期 3 人は考えた。

「明るい話題も少ないご時世。 クスッと笑えるものにしようと思った。」 そんな具合で、駅名標のパロディーを思いついた。 制作にあたり、川崎さんの頭にあったのはコロナと戦う医療従事者だった。 駅の周辺には東京医科歯科大付属病院や日本大学病院といった大学病院をはじめ、医療機関が多い。 利用客にも医療従事者は多い。 改札で窓口業務にあたった際、知り合いの医師から「コロナ禍になってから大変」と聞いたこともあった。

貼り紙の「消毒駅」の前の駅は「対策」、次の駅は「習慣」と書いた。 「手の除菌を習慣にしてほしいと呼びかけた」と川崎さん。 医療従事者の負担を減らしたいという思いだった。 駅員一丸でディテールにこだわり、中国語と韓国語の表記は駅長の指摘で加えた。 利用客の評判も上々。 貼り紙の写真を撮影していた千葉県習志野市の横田美恵子さん (61) は「ユーモアがあっていい。 電車は不特定多数の人が乗るし、駅で消毒液を使えるのはうれしい。」

東京都練馬区の西本康さん (75) は「貼り紙があると目立つ。 使ってみようという気持ちになる。」と話した。 「小さなことだが、駅の利用客の方々に安心して電車に乗ってもらう一助になり、医療関係者の人たちに感謝を伝えられたらうれしい」と川崎さん。 「早くコロナ禍を乗り切れることを願っています。」 御茶ノ水駅では昨年 11 月から、駅舎につけたロープ状の青色の LED 照明を夜間にともしている。 医療従事者への感謝を示すものだ。 青い光は、駅周辺の医療施設へ向けられている。 (吉沢英将、asahi = 4-23-21)


横浜に「国内初の都市型」ロープウェー 22 日に開業

横浜・みなとみらい 21 地区で 22 日、「国内初の都市型ロープウェー」をうたう「ヨコハマ・エア・キャビン」が開業する。 コロナ禍で客数を絞ってのスタートになるが、港町の新たな観光スポットになりそうだ。 17 日に内覧会が開催され、参加者らが往復約 10 分の「空中散歩」を体験。 そろりと動き出したゴンドラからは横浜港や高層ビル群を見渡すことができる。 横浜ランドマークタワーに近い JR 桜木町駅前広場と、横浜赤レンガ倉庫がある新港地区の運河パーク間の約 630 メートルを結ぶ。 8 人乗りのゴンドラ 36 基が循環し、所要時間は片道 5 分ほど。 最も高い所では約 40 メートルの空中から港の風景が見渡せる。

片道で最大 1 時間 2,400 人の輸送力があるが、感染症対策のため、当面はグループごとに乗る形にし、客数を半分ほどに抑えるという。 夜は駅舎やゴンドラをライトアップし、にぎわい創出にもつなげる。 近くで遊園地「よこはまコスモワールド」を運営する泉陽興業(大阪市)が建設、運営を担う。 横浜市は公費を出さず、駅舎を建てる公有地の占用許可や、海上に支柱を設置する際の手続きなどで協力した。

横浜市などによると、都市部の平地に常設されるロープウェーは国内初。 都市型ロープウェーをめぐっては、東京都江東区が 2014 年、東京五輪に向けて整備する構想を打ち出したが、費用面などから具体化していない。 福岡市でも博多駅と博多港を結ぶ計画を検討したが、市議会の反対で予算が組めず、19 年に計画を撤回している。 今回のルートは比較的短く、大半を海上が占めることが実現を後押しした。 ただ、景観への影響を心配する声があり、横浜市と事業者が協議。 ゴンドラは銀や黒、駅舎などはグレーや白系を基調とし、街に溶け込むデザインに落ち着いた。

市は開業に合わせ、運河パークの駅舎から隣の商業施設に 2 階部分でつながる歩行者デッキを整備した。 赤レンガ倉庫や新港ふ頭客船ターミナルへの回遊性を高める。 市幹部は「横浜の新たなシンボルとして、都心臨海部全体への波及効果を期待している」と話す。 営業時間は午前 10 時 - 午後 10 時。 料金は片道で大人 1 千円、子ども(3 歳 - 小学 6 年生) 500 円。 (松沢奈々子、武井宏之、asahi = 4-17-21)


川口駅の「中距離電車」 JR が 400 億円要求し協議中断

JR 川口駅に中距離電車の宇都宮・高崎線を停車させる問題で、JR 東日本側が工事費全額の約 400 億円の拠出を埼玉県川口市に求めていたことが関係者の話でわかった。 市側は難色を示し、協議は中断。 昨年 11 月の話し合いにより、市と JR、民間でつくる勉強会を今年度設け、負担のあり方も議論することになった。 JR 側が示した建設費については非公表で、市は市議会でも答弁を避けていた。 関係者によると、400 億円は一昨年 11 月の奥ノ木信夫市長らと JR 側の当時の代表取締役副社長西野史尚氏の会談で示された。 その後明らかになった内訳は、中距離電車停車用のホーム新設に 115 億円、駅舎の全面建て替えに 245 億円、関連工事やシステム改修に 40 億円。

市側は、駅舎をそのまま使い、ホーム新設分は JR 側への陳情案件でもあることから全額負担するつもりでいた。 しかし、JR 側は中距離電車停車により、京浜東北線との乗り換えが生じ、ラッシュ時は今の駅舎では問題があると指摘。 さらに停車による中距離電車の時間ロスと混雑で私鉄へ利用客が流れ、減収になるとして駅舎分も全額負担を求めてきた。 市側は「400 億円は市の一般会計予算の 5 分の 1。 JR の資産にもなり、そこまでの市税の投入は理解を得られない」とした。 ラッシュ時は通過させる案や中距離電車専用の改札口設置など、現在の駅舎を活用する案を提案したが、実質的に協議は中断した。

JR 側が市に負担を求めるのは、請願による駅舎建て替えは地元自治体が拠出するのが通例だからだ。 川口駅の場合、駅舎建て替えは停車に必要として、ホーム新設と合わせて請願案件と考えているとみられる。 一方、1968 年改築の駅舎は老朽化が目立つ。 駅ビルもない。 市側は 1 日平均利用客が約 16 万 8 千人(2019 年度)の川口駅に新しい駅舎・駅ビルを建てて「駅ナカ」などの商業施設ができれば、JR 側の収益につながるとして、建設費は JR 側の負担と考えていて手詰まり状態になっていた。

そんな中、昨年 11 月、双方が駅周辺の土地利用、駅整備への民間資金の活用などを探るため、民間を加えた約 20 人による勉強会を設置することで一致。 早ければ夏前に初会合を開く。 市都市交通対策室は「勉強会ではまず駅周辺の街づくりの全体構想を模索して、その先で中距離電車停車、その費用分担を話し合いたい」としている。 (堤恭太、asahi = 4-7-21)

川口駅の中距離電車停車問題〉 JR 川口駅は京浜東北線しか停車せず、改札口も 1 カ所のためラッシュ時は人であふれかえる。 市は長年、中距離電車停車を要望し、ホーム新設用地も用意している。 2018 年 12 月に JR 側から前向きの回答を得て論議が前進した。 ただ、満員の中距離電車に、川口駅でさらに人が乗ることができるのかといった費用面以外の課題も多い。


コロナ影響で運用伸びず 相次ぐ苦情、経路変更も模索 - 羽田新ルート 1 年

東京都心を低空飛行する羽田空港の新ルート運用が始まり、29 日で 1 年。 新型コロナウイルスの影響で航空需要は落ち込み、当初想定に比べ運用は伸び悩んでいる。 一方、騒音などの苦情は 6,000 件近く寄せられ、国はルート変更も含めた騒音軽減対策を検討している。 「ゴオオオ。」 3 月下旬の夕方、JR 大井町駅(品川区)周辺では、航空機がごう音を立てながら住宅街や商業施設の真上を通過していった。 300 メートルほど上空を飛び、車輪や主翼の機体記号が肉眼でも見えるほどだ。

ルート真下に住む女性 (68) は「低く飛ぶので圧迫感があり、うるさい。 テレビの音も聞こえない。」と苦言を呈する。 取材中もたびたび飛来し、至近距離の会話がかき消されるほどだった。 新ルートは国際便の受け入れ体制強化のため、昨年 3 月に運用が始まった。 南風が吹く午後 3 - 7 時の間の約 3 時間、羽田空港を離着陸する航空機が品川区や渋谷区、川崎市などの上空を低高度で飛ぶ。 国土交通省によると当初、この時間帯は 1 日当たり約 130 便の着陸、約 60 便の離陸が想定されていた。

しかし、新型コロナの影響による航空各社の減便のため、昨年 12 月の運用状況は着陸が想定の約 6 割、離陸が約 8 割で、大半が国内線だった。 同省の担当者は「国際競争力の強化と騒音負担を首都圏全体で共有する必要があり、引き続き運用していく」と話している。

ルート下の住民の騒音や落下物への懸念は強く、国交省には計 5,947 件(昨年 12 月時点)の苦情が寄せられた。 都内や川崎市の住民計 29 人は昨年 6 月、運用取り消しを求めて東京地裁に提訴。 原告団の須永知男さん (73) は「部品が落ちただけでも甚大な被害が予想される。 一刻も早く運用をやめるべきだ。と訴える。 川崎市東部では、パチンコ店内を超える最大 94 デシベルが記録されたこともある。 国交省は騒音軽減に向けた有識者会議を立ち上げ、都心上空を飛ぶ距離の短縮などが技術面で可能か、議論を進めている。 (jiji = 3-29-21)

前 報 (11-16-194)


東京ディズニー、開園時間延長へ 入園者数は 2 万人に

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの開園時間が、4 月 1 日から延長される。 現在はいずれも午前 10 時から午後 7 時までの短縮営業をしているが、ランドは午前 9 時から午後 8 時、シーは午前 9 時から午後 9 時になる。 運営するオリエンタルランドが 22 日、発表した。

入園者数の上限も、4 月 1 日から緩和する。 現在は、緊急事態宣言の解除にあわせて宣言中の 5 千人から 1 万人に緩和したが、4 月 1 日からは 2 万人にさらに緩和する。 また公共交通機関の混雑を避けるため、両パークの普通乗用車の駐車料金を 4 月 18 日まで値下げする。 通常は平日 2,500 円・土日祝日は 3 千円だが、4 月 1 日からは毎日 1 千円(いずれも税込み)とする。 開園時間や駐車料金などは 4 月 18 日までの対応。 4 月 19 日以降については改めて検討するとしている。 (中島嘉克、asahi = 3-22-21)


東京で桜開花、昨年と並ぶ史上最速 1 週間ほどで満開に

東京管区気象台は 14 日、東京都心の桜の開花を発表した。 気象台職員が午後 2 時、靖国神社(千代田区)のソメイヨシノの標本木で、5 輪咲いているのを目視で確認した。 53 年の統計開始以降、昨年に並ぶ史上最速の開花となった。 1 週間ほどで満開となる見込みだ。 平年と比べると 12 日早い。今年は広島市と福岡市でいずれも史上最速の開花が発表されている。

日本気象協会によると、昨夏にできた花芽が一度休眠し、冬の寒さで目覚める「休眠打破」と呼ばれる現象が、昨年末以降の寒波で順調に進行。 さらに冬の後半は暖かい日が多く、記録的な早さの開花となっているという。 同協会は 13 日発表した開花予想で、大阪市は 19 日、名古屋市で 17 日としている。 (asahi = 3-14-21)

◇ ◇ ◇

上野公園で立ち入り制限始まる 小池知事「花見無しで」

花見で宴会はできません - -。 桜の名所で知られる東京都台東区の都立上野恩賜公園で 6 日、園内の一部エリアの立ち入り制限が始まった。 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言が再延長されたことに伴う措置で、通常であればブルーシートを広げて宴会が開かれる桜の木の周辺をネットで囲った。 都によると、井の頭恩賜、代々木の都立公園でも同様の制限を行う。 上野では園内の大通りを片側一方通行に規制しているが、歩いて花を見ることはできる。 小池百合子知事は 5 日の臨時記者会見で「(飲食を伴う)花見や立ち飲みは、申し訳ありませんが無しでお願いします」と呼びかけた。 日本気象協会によると、都内での桜の開花は 15 日ごろ、満開は 22 日ごろを予想しているという。 (軽部理人、asahi = 3-6-21)


京浜東北線などワンマン運転検討 安全確保へ懸念の声も

JR 東日本が京浜東北線などの首都圏の路線で、長編成の列車のワンマン運転を検討していることが、関係者への取材で分かった。 2024 年度以降、必要な機能を車両に導入していく方向で、具体的な開始時期は今後詰める。 人手不足への対応などが理由で、安全の確保が課題となる。 JR 東関係者によると、24 年度以降、ワンマン運転に対応する機能を付けた車両を、京浜東北線(10 両編成)と横浜線(8 両編成)に導入する方向性を社内に周知した。

さらに、首都圏以外でも、宮城県内を走る仙石線をはじめ、長野県松本市や甲府市、群馬県高崎市のそれぞれ周辺などでも、3 - 6 両編成のワンマン運転に必要な機能を車両に備える考えを伝えた。 具体的には、運転席からモニターで乗降客を確認できるシステムや、列車の発車から停車までを自動制御する「自動列車運転装置 (ATO)」の配備を進める方針。 新型コロナウイルスの感染拡大で乗客減が長引いている影響もあり、車両の導入時期などは変わる可能性がある。

JR 東によると、同社管内のワンマン運転は、国鉄時代末期の 1986 年ごろから広まった。 宮城県の仙台空港アクセス線(最大 6 両編成)を除き、1 - 2 両編成の地方ローカル線への導入が進められてきたが、20 年 3 月のダイヤ改定で、5 両編成でのワンマン運転が東北線黒磯 - 新白河間で始まった。 現在は在来線 66 路線中、東北や北陸を中心に 36 路線でワンマンが導入されている。 21 年 3 月には茨城県などを走る水戸線でも 5 両編成でワンマンが始まる予定だ。

ワンマン運転を拡大している理由として、JR 東は人口減少を背景とした現場の人員の減少や、ワンマンを可能にする情報処理技術の発達を挙げている。 同社の資料によると、55 歳以上が全社員の 2 割以上を占め、社員数も年々減少している。 2012 年からの 6 年間だけを見ても、運転士と車掌の人数は約 5% 減っている。

安全面や負担増で懸念の声

JR 東のワンマン運転が従来、1 - 2 両編成中心だったのは、運転席付近から目視とミラーで安全確認ができる範囲が限られるからだ。 昨年からワンマン運転を始めた東北線の一部区間は 5 両編成。JR 東は各車両の側面にカメラを設置し、運転席のモニターから乗客の乗り降りが確認できるようにした。 JR 東の担当者は「夜間や雨天時は(車掌が目視で確認していたより)よく見えるようになったとの声もあり、安全レベルはむしろ向上した」と胸を張る。

ただ、首都圏を走る 7 両以上の長編成へのワンマン導入には、鉄道関係者らから懸念の声もある。 列車運行の経験が豊富な私鉄関係者は「カメラがあったとしても、運転士が一人で、たくさんあるドアから乗り降りするたくさんの乗客を確認しきれるのかを考えると、正直怖い」と指摘。 「踏切などで事故が起きた場合、安全確認などの初動は一人で対応しなければならない。 運転士の負担は重くなる。」と話す。

災害対応も課題だ。 JR 東社員の中には「東日本大震災などの大地震の際、大勢の乗客の避難誘導に対応できるのか」との見方がある。 JR 西日本の長谷川一明社長は昨年 8 月の記者会見で、「在来線にはいろんな形で外部的な障害要素が出てくる。 緊急事態に備えることも含めると、ハードルは高いと思う。」と述べ、自社の長編成ワンマンの導入には否定的な見解を示した。

日本大学の綱島均教授(鉄道工学)は「運転士が減っていくのは事実で、ワンマン運転の拡大はやむを得ない。 どこまで自動化し、どこを運転士に任せるかなど、安全性の面で考えるべき課題はたくさんある」と指摘する。 JR 東の担当者は「運転士の負担は若干重くなるが、多くの部分はシステムでカバーされる。 異常時は周辺の駅の社員も対応する」と説明。負担軽減のため、指令室が運転士の代わりに乗客と会話できるシステムの導入も検討するといい、「安全性の確保が第一と思っている」と話す。

広がるワンマン運転、トラブル増えた?

ワンマン運転は JR 東以外の路線にも広がっている。 首都圏では東京メトロが南北、副都心、丸ノ内の全線と有楽町線和光市 - 小竹向原間、千代田線綾瀬 - 北綾瀬間で、3 - 10 両編成のワンマン運転を実施。 副都心線と有楽町線の編成は、最大で京浜東北線と同じ 10 両だが、同社の広報担当者は「ワンマン以外の路線と比べてトラブルの件数に大きな差はない」と話す。

同社のワンマン運転区間では、全駅にホームドアが設置され、踏切はない。 線路への侵入がしづらく、外部要因による事故や輸送障害は比較的起きにくい。運転席から乗降客の様子をモニターで確認できるシステムのほか、ATO も導入済みだ。 都営地下鉄三田線(6 両編成)、大江戸線(8 両編成)、つくばエクスプレス(6 両編成)も同様の環境が整備されている。 これに対し、京浜東北線と横浜線には踏切が多数存在する。 JR 東は、全エリアで踏切の数を減らそうとしているが、踏切の廃止には多額の工費や長い工期、自治体や周辺住民との合意形成などが必要となり、一筋縄ではいかない。

首都圏の路線ではホームドアの工事も進むが、主要な駅への設置は 32 年度末までかかるスケジュール。 ATO は、3 月に常磐線で導入が始まるという段階だ。 都市部で長編成のワンマン運転を実施する際、事故を減らすためのホームドアや ATO は前提条件とするのか。 JR 東の担当者は「正式には決まっていないが、ホームドアは付けたいとは思っている」と説明。 ATO は必ずしも前提条件とはならないというが、ホームドアのある路線には運転士のブレーキ操作をサポートする「定位置停止装置 (TASC 〈タスク〉)」という機能は備えるという。

東急電鉄でワンマン運転が導入されている池上、多摩川、目黒の 3 路線などには、ATO が導入されておらず、踏切もある。 ただ、池上、多摩川両線は 3 両編成。 目黒線は 6 両編成だが、営業路線は約 12 キロ。京浜東北の約 81 キロ、横浜線約の 43 キロより短く、踏切も 6 つだけだ。 (asahi = 2-20-21)

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