プログラミング教育、スタートに黄色信号 準備順調 7 県のみ

今年 4 月から小学校で必修化されるプログラミング教育で、都道府県で準備状況にばらつきがあることが判明した。 文部科学省が 9 日に発表した教育委員会対象の調査によると、埼玉県などは管内の市区町村教委の全ての小学校で教員が研修や模擬授業などを実施。 一方、福島県などでは管内の 2 割以上の教委が「最低限必要な指導体制の基礎が整っていない(文科省)」とされ、1 学期からのスタートに向け、黄色信号が点滅している。

「もともとプログラミング教育に精通した職員がいない中で、4 月からは英語や道徳の教科化が始まる。 とても手が回らない。」 福島県会津美里町教委の担当者がこう打ち明ける。 福島県では同町のほか、1 割以上の教委が管内のすべての学校で模擬授業などを「実施していない、(今年 3 月末までに実施する)予定もない」と回答。 一部の学校しか実施しない教委も合わせると、2 割以上が準備不足の状況だ。

このほか文科省の調査では神奈川、富山、島根の 3 県でも、管内の 2 割以上の教委が「最低限必要な指導体制の基礎が整っていない」水準であることが分かった。 一方、すべての学校で教員 1 人以上が研修などを実施済みの都道府県は、茨城、埼玉、福井、和歌山などの 7 県にとどまった。 (sankei = 1-9-20)


世界一忙しい教員の残業、正当な評価は? 国は「対価」改善見送り

公立学校の教員の働き方改革を進める「改正教職員給与特別措置法(改正給特法)」が今月、国会で成立した。 現行法は残業代を支払う規定がなく「働かせ放題」と批判されてきたが、今回はこの点には踏み込まず、代わりに勤務時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を導入して負担軽減を図る形になった。 見直しの背景と課題をまとめた。

「中学校は 1 週間で 56.0 時間、小学校は同 54.4 時間。」 経済協力開発機構 (OECD) の 2018 年の調査によると、日本の教員の勤務時間は世界で最も長かった。 世界一忙しい現状が示された。

「定額で働かせ放題」と批判

一方で公立学校の教員は残業代に関して労働基準法が適用されず、一切支払われないのが原則。 その根拠になっているのが給特法だ。 法は 1971 年に制定され、公立学校の教員に原則、時間外勤務を命じないとする。 課すことができるのは、(1) 生徒の実習、(2) 学校行事、(3) 職員会議、(4) 災害などの非常時 - の 4 項目のみ。 残業代が出ない代わりに「教職調整額」として、月給の 4% を一律に支給する。 これが長く、「定額で働かせ放題」と批判されている。

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この運用にしている理由に、国は教員の業務の特殊性を挙げる。 授業や実習を充実させる準備、いじめ防止の面接などは、教員の自主性によるもので、上司に命令されて行う性質のものではないという考え方。 夏休みのような長期休業もあり、残業代支給はなじまないとする。 しかし、現状は法制定時と異なる。 教職調整額の 4% は、残業時間が 1 カ月平均で 8 時間だった 70 年代を基に算定された。 今は、残業がこの 10 倍以上の教員が中学校で 6 割、小学校で 3 割を占める。 内容も部活動の指導や書類作成など 4 項目以外がほとんどだ。

自主的な扱いになっている残業を時間外労働と認めて労働環境を改善し、賃金の手当てもすべきだ。 現場の声は強かったが、国は財政事情などから「中長期的な課題」と見送った。 代わって始めるのが、勤務を繁忙期は延ばし、閑散期は短くする変形労働時間制。 残業の在り方には踏み込まず、勤務体系を変えて対応する形にとどまった。

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時間外の多くが自主的な行為とみなされていることで、学校の労務管理の意識が低下し、長時間労働を招いているとの指摘もある。 福岡県内の公立中学校の女性教諭 (24) は毎日、自分で出退勤時刻と残業内容を記録し、月末に管理職に届けている。 職場では出勤簿に押印するだけで、タイムカードがないためだ。

テストの作成や丸付け、教材研究、書類作成はほぼ時間外にずれ込む。 上司は「残業はあなたが好きでやっている」、「あなたの勉強のため」と取り合ってくれない。 教諭は「午後 10 時まで仕事をすることもあるが、ほとんど残業と認められない。 こんな状況なら、先生になりたいという人はいなくなると思う。」と話す。 教育研究家の妹尾昌俊さんは「残業代を支払うようにすれば、長時間労働が抑制されるかと言えば、必ずしもそうとは言えない」とした上で、「給特法が残業を労働として認めず、対価も支払わない点は、教員業務の『特殊性』という理屈では説明できず、今回の改正で積み残された課題だ」と話している。 (本田彩子)

過労死教員の遺族「さらに犠牲者増える」

今回の給特法改正は、教員を過労などで失った家族も反対の声を上げている。 改正の柱である変形労働時間制は、年度初めなどの忙しい時期に勤務時間を延ばし、夏休みにまとめて休みを取りやすくする目的がある。 高校教諭だった夫を 2017 年に亡くした安徳晴美さん (53) = 北九州市 = は「先生には夏休みも含め、閑散期などない。 業務の見直しもないまま導入すれば長時間労働が助長され、過労死が増える。」と訴える。

見直しでは、時間外勤務の上限を「月 45 時間、年 360 時間」とする文部科学省の指針も法に格上げされた。 しかし、業務量を減らさずに退勤だけを強要する「時短ハラスメント」の問題も指摘されている。 12 年前に中学教諭の夫を失った工藤祥子さん (53) = 東京都 = は「実際の運用は国ではなく、自治体に丸投げされた状態。 月 45 時間の時間外の上限は実態とかけ離れており、業務をどう減らしていくのか、見えない点が多い。」と話した。 (西日本新聞 = 12-27-19)

改正給特法】 変形労働時間制の導入と、時間外勤務の上限設定が明記された。 変形労働時間制は自治体が条例を定めれば 2021 年 4 月から導入できる。 行事などが集中する 4、6、10、11 月に週 3 時間ほど勤務時間を増やし、8 月に休日を 5 日ほど取得する形が想定され、具体的な運用は自治体や学校に委ねられる。 時間外勤務の上限設定は来年 4 月から適用され、罰則規定はない。


「春の疲れ、夏癒やせるか」 教員の休み振り替えに懸念

忙しい時期に労働時間を延ばす代わりに、夏休みに休日をまとめ取りする - -。 そんな「変形労働時間制」を盛り込んだ教職員給与特措法(給特法)改正案の国会審議が 7 日、始まった。 政府は教員の働き方改革につながると強調するが、現場からは疑問の声が出ている。 「寝だめができないのと一緒。 弊害ある仕組みだ。」 変形労働時間制について、岩手県内の公立中学校に勤める男性教諭 (30) はそう話す。

年単位で働く時間を調整する仕組みは、忙しい時期、余裕がある時期がはっきりと分かれる工場などで使われてきた。 文部科学省は、学校行事などで忙しい 4、6、10、11 月に勤務時間を週 3 時間増やし、その分を 8 月に 5 日程度の休みに振りかえる、といった活用方法を考える。 文科省幹部は「教員の働き方改革に特効薬はない。 あの手この手の総力戦で臨まなければならず、この休みのまとめ取り制度も選択肢の一つ。 なり手不足が深刻化している教員の仕事の魅力も高められる。」と法改正の狙いを説明する。

だが、教員を増やしたり、仕事量を減らしたりしなければ残業は減らず、根本的な解決にならないとの指摘もある。 男性教諭によると、1 年で最も忙しいのは 4 月。 スマホに記録している時間外勤務は、今年 4 月に 110 時間を超えた。 5 月も 100 時間近く。 春は新しいクラスの対応のほか、顧問をつとめる部活動の大会もあり、土日はほとんどつぶれる。 「この時期の疲れを 8 月で癒やせということなのか。 そんな風に人間の体はできているのか? 変形労働時間制の前に、仕事量を減らす議論をしてほしい。」

子育てや介護を担う教員からも不安の声があがる。 京都府内の公立小学校に勤める女性教諭 (41) は小学 1 年と 3 歳の娘がいる。 今は午後 5 時が終業だが、忙しい時期には午後 7 時まで延びることも。 「保育園や学童保育の迎えに間に合わない。 育児や介護中の教員には配慮するそうだが、配慮があっても、忙しい時期に周囲よりも勤務時間が短く設定されると、申し訳なくてやりづらい。 働く時間に制約がある人間が使いにくい制度は、誰にとっても良い制度ではない。」と言う。

もっと忙しくなる人出る恐れも

東京都の公立中学校の校長が心配するのは部活動だ。 今でも顧問を決めるのは、ひと苦労。 変形労働時間制が入ると、「長時間働ける教員に部活動の顧問が集中してしまうのでは」と案じる。 福岡県内の公立中学校長は「季節によって仕事量の凸凹があるのは事実。 うまく休みが取れればいい制度になる。」と言う。 だが、「現実的には難しい」とも。 夏休み中にも研修や部活動などがある。 「仕事量を減らすなど、根本的な問題を解決しなければ、8 月でも休みは取れない」と指摘する。

石川県教育委員会が月ごとの時間外勤務の平均を調べたところ、小中学校では 4 月の時間外勤務が最も多く、昨年度は小学校で 58.2 時間、中学校で 81.5 時間だった。 全日制高校は 5 月に 54.7 時間だった。 小中高いずれの学校も 8 月が最も少なかったが、それでも小学校 7.7 時間、中学校 24.1 時間、全日制高校 28.2 時間だった。 8 月に月 80 時間を超える時間外勤務をした先生の割合は、小学校はゼロだったが、中学校で 2.1%、全日制高校で 3.6% いた。

更なる多忙化を懸念する声もある。 都内の公立中高一貫校の校長は「勤務管理の事務作業を複雑にすれば副校長がオーバーワークになるかもしれない。」 教頭・副校長は今でさえ、文科省の調査で 1 日の勤務が 12 時間 6 分と最も長い。 危機感を持つ現役の教員らは 10 月 28 日、変形労働時間制の導入撤回を求める約 3 万 3 千人の署名を萩生田光一文部科学相あてに提出した。 同席した労働問題に詳しい嶋ア量弁護士は「残業代不払いをごまかす脱法でよく使われる。 労働者側からすれば非常に評判の悪い制度。 労働時間をちょっと少なく見せかけるなど、悪用されるだろう。」と話す。 (宮坂麻子、山下知子、編集委員・氏岡真弓)

野党「小手先の働き方改革」

7 日に衆院本会議で提案された給特法改正案は、与党の賛成多数で成立する可能性が高い。 一方、野党は「小手先の働き方改革で、根本的な解決につながらない」などと修正を求めていく方針だ。 今国会で成立すれば、自治体の判断で 2021 年度に導入が始まる。 文科省の 16 年度調査では、小学校教員の約 3 割、中学校教員の約 6 割が「過労死ライン」とされる月 80 時間以上の残業をしていた。 今回の改正案では、教員の残業の上限を「月 45 時間、年 360 時間」以内とする文科省のガイドラインを法律に格上げし、順守を求めやすくする。 学校現場がこの上限を守ることを条件にして、変形労働時間制の導入を認める方針だ。

一方、給特法には「残業代を出さない代わりに、給料月額の 4% を一律に支給する」という独特の仕組みが続いてきた。 勤務時間を意識しにくく、長時間の時間外勤務につながっているとの指摘がある。 抜本的に見直そうとすると、残業代を払うために年間 9 千億円以上の予算が必要とされることなどから、改正案では踏み込まなかった。 (矢島大輔、三島あずさ、asahi = 11-8-19)

教員の働き方をめぐる主な出来事
1971 年教員の働き方の特殊性を考慮し、残業代を出さない代わりに給料月額の 4% を「教職調整額」として出す教職員給与特措法(給特法)が成立
2006 年文科省が 40 年ぶりに教員の勤務実態調査 月平均の残業時間は 34 時間で、40 年前の約 4 倍に
14 年経済協力開発機構 (OECD) の 13 年の調査で、日本の中学教員の週あたりの仕事時間は参加国で最長の週 53.9 時間
16 年文科省が 10 年ぶりに教員の勤務実態調査 残業が月 80 時間以上の「過労死ライン」に達する教員が小学校で 3 割、中学校で 6 割に達する実態が明らかに
17 年教員に代わり顧問の役割を担える「部活動指導員」を制度化
19 年1 月教員の働き方改革について検討してきた中央教育審議会が、長時間労働の解消などに向けた対策を盛り込んだ答申の中で変形労働時間制を提案
6 月OECD の 18 年の調査で、日本の教員の週あたりの仕事時間は小学校(54.4 時間)、中学校(56.0 時間)で、ともに参加国で最長


教員間暴力、加害 4 教諭の給与停止 審査会は「不相当」

神戸市立東須磨小学校での教員間暴力・暴言問題で、市教育委員会は 31 日、臨時会議を開き、加害側 4 教諭を分限休職処分にし、給与の支払いを停止した。 外部有識者らの審査会は、4 教諭の行為が市条例の改正で処分要件に追加された「起訴されるおそれ」を満たすか見通せず、悪質性にも軽重があるとして処分を「不相当」と判断したが、市教委は処分を強行した。

処分が決まったのは 30 - 40 代の男女教諭で、同僚の男性教員 (25) ら 4 人に暴力や暴言、嫌がらせを繰り返したとされる。 大学教授や弁護士らで構成される教育委員全員が分限休職と給与停止に賛成した。 処分の根拠となったのは 29 日に市議会で成立したばかりの改正市条例。 地方公務員法上、刑事事件で起訴された場合や心身の病気などに限られていた分限休職の対象を「重大な非違行為で起訴されるおそれがあり、職務続行が公務遂行に大きな支障を及ぼす可能性がある場合」にも広げた。

市教委は、処分前に必ず分限懲戒審査会へ諮問するよう求めた市議会の付帯決議を踏まえ、審査会に意見を照会した。 市教委によると、審査会では「一人ひとりの行為の悪質さに差がある」、「起訴されるかどうか見通せない」などの声が続出。 4 教諭の処分は妥当ではないとされた。 一方、市教委は「警察が捜査しており、暴行や強要などの罪で起訴されるおそれがある」、「児童が心の傷を負い、学校運営に支障をきたしている」と判断。 審査会の意見を「参考」にとどめ、全員一律の処分に踏み切った。 決定後、会見した担当者は「(処分は)苦渋の判断」、「例外的なこと」と繰り返した。

関係者によると、加害教諭の中には、処分の要件を満たさないと主張する弁明書を審査会に出した教諭もいるという。 処分に不服がある場合、市人事委員会に申し立てができる。 また、市教委はこの日の臨時会議で、東須磨小での給食の献立から一時外していたカレーの提供を復活させると明らかにした。 被害教員が無理やり激辛カレーを食べさせられる動画が広く報じられ、児童の心理状態に配慮したとしていたが「ずれた対応だ」との声が保護者から出ていた。 (asahi = 10-31-19)


生徒は 66 万超 元塾講師、いきついた先はユーチューブ

学校でもない。 塾でもない。 勉強を教わることができる「第三の場所」を作ろうとしている YouTuber (ユーチューバー)がいる。 群馬県在住の葉一(はいち、34)だ。 2012 年に数学の授業の動画をネットで公開し始め、今では 66 万超の「生徒」がいる。 日本の教育格差に、風穴を開けられるのか。

「はい。よろしくお願いしマス」

動画投稿サイト YouTube (ユーチューブ)での葉一の授業は、いたって普通のあいさつで始まる。 教えるのは主に算数と数学だ。 三角形の面積を計算したり、さいころで同じ目が出る確率を求めたりといった問題を、小学生、中学生、高校生向けにそれぞれ言葉遣いを変えながら、解説していく。 ホワイトボードに黒赤青の 3 色で描き出される「美しい板書」が身上だ。 「とある男が授業してみた」という名で 3,100 本もの動画を投稿してきた。 国語や社会のほか、勉強法を解説する動画もある。 累計再生回数は 2 億 1 千万回に上り、お気に入り登録数は 66 万を超えた。

学校も塾も要らない時代に?

葉一は話す。 「学校や塾にとってかわる存在になるつもりは全くないんです。 予習や復習で活用するサポートツールになればいいと思っています。」 ネットの通信講座は多々あるが、葉一は YouTube での配信にこだわっている。 特別な登録手続きがいらず、アクセスできれば誰でも無料で授業を受けられるからだ。

原点には塾講師時代の体験がある。 埼玉県内で複数の教室を持っていたが、生活費を切り詰めて通ったり、夏季講習だけ通えなかったりする生徒を何人も見てきた。 「親の所得格差で、塾を選べる子と選べない子がいることを肌で感じてきた。 仕方ないことだが、違和感があったんです。」 自分ができることは何か。 たどりついたのが YouTube だった。 12 年 6 月に動画を投稿し始めてから 7 年が経った。 今でも忘れられない「生徒」が、3 年ほど前に不登校から復帰した女子中学生だ。 彼女は不登校から再び学校に通い始めるときに、葉一の動画を活用したそうだ。 母親からも感謝のメールがきたという。

「僕自身がいじめられていた経験もあるので、フリースクールのような存在でもありたいと思っている。 対面の授業を恋しいと思うこともありますが、ネットでしか相談できないことも、たくさんあるはずなので。」 今では動画の広告収入で、2 児を含む一家 4 人が生活していくのに困らなくなった。 9 月には、最近注目が集まっている教育や学びを題材にした YouTuber のシンポジウムに登壇し、自身の体験を語る予定だ。 「子どもたちの間で、『どこの塾に行っている?』という会話をするように、『誰の授業を見ている?』という会話が普通になるように。ネット動画で学ぶ文化が広がるといい。」 (真野啓太、asahi = 9-5-19)


ひたすら勉強もう古い? AI で苦手克服、塾アプリ盛況

AI (人工知能)が一人ひとりの「苦手」を瞬時に判断し、分からないポイントに応じて学習のカリキュラムを組み立てる - -。 そんな学習塾向けのアプリが広がりつつある。 平日の夜、千葉県柏市の学習塾・城南予備校 DUO 柏校の一室。 高校 3 年生 10 人が小さく仕切られたブースで机に向かっていた。 全員がイヤホンをつけ、タブレット端末を見ながら手を動かしている。 物理の問題を解いている子もいれば、英語の講義動画を見ている子も。 数学の問題を解き終えた生徒は、講師から「あっていた問題も解説を確認してみてね」と声をかけられ、再び画面に向かった。

生徒たちが使っているのは、学習塾向けに開発された「atama+ (アタマプラス)」というアプリだ。 AI が生徒の理解度をはかり、一人ひとりに応じたカリキュラムを設計する。 例えば、高校生の数学 I で「正弦定理」を学ぶ場合。 まず、その子が、関連する単元をどれくらい理解できているかを探る。 数学 I の「三角比の定義」、数学 A の「三角形の外心」、さらに中学校の数学の「三平方の定理」などから出題。 各単元の習熟度が数字で示され、できていない単元は、思い出したり、学び直したりするプログラムをつくる。 生徒がそれらをきちんとマスターした上で正弦定理に、という流れだ。

生徒の管理画面では、自分が習得できた単元と未習の単元が色分けして示され、ゲーム感覚で取り組めるのが特徴という。 千葉県松戸市の高校 3 年生三浦雅彦さんは、今年 1 月ごろからこのアプリで勉強している。 「英文法に苦手意識があったけど、具体的にどこが抜けているのかが自分では分からなかった。 AI が弱点を見つけてくれるので、確実にクリアできる。」と語る。 完全な自習ではなく、必ず講師が見守って時々声をかける。 講師のタブレットには、生徒たちの学習状況が表示されており、一つの単元をマスターできた時や、逆に問題を解くのに手間取っている時には、そっと声をかける。 ただ、答えは教えない。 問題を解くのにかかる時間や、解けないこと自体も AI の基礎データになるからだ。

塾、最初は抵抗感「椅子奪われる」

アプリを開発したのは、2017 年設立の「atama plus (アタマプラス)」。 「ひたすら問題を解き続けるという根性論ではなく、基礎的な勉強をもっと効率的にさせたいと思った。」 代表取締役の稲田大輔さん (37) は、こう話す。 もともと大手商社に勤め、ブラジルでの勤務も経験した。 自由な発想やコミュニケーション力が求められるグローバル社会で、受験勉強ができるだけでは勝負できない、と痛感。 勉強を効率化したうえで、残りの時間を「社会で生きる力を育むことに使ってほしい」という思いがある。

創業から 2 年で、高校生の数学、物理、化学、英文法、中学生の数学と徐々に科目を増やし、7 月には中学生の英文法もリリースした。 Z 会、駿台グループなどが次々に採用。 大手塾の 2 割に広がり、教室の景色を変えつつある。 「はじめは、『AI などに椅子を奪われるわけにはいかない』と抵抗がありました。」 駿台教育センターの阿見寺(あみじ)英俊さんは明かす。 中高生に数学を教えて 15 年以上。 指導には自信を持っていた。 だが、アプリを使い始めた生徒たちが、苦手なところを埋めながら何時間ものめり込む姿を目の当たりにして考えを改めた。 「教える人間の感情が入らないよさもある。 AI と人の役割を分けることで、子どもたちの学力をもっと伸ばせるのでは。」

今、中学 1、2 年生の数学は、atama+ の演習 20 分と講義形式の授業 100 分を組み合わせ、2 年生までで 3 年間の範囲を終える。 基礎を AI に任せ、プロの先生は応用・発展問題に力を注ぐ。 教え子の中に、宇宙開発に興味を持つ高校 1 年生がいる。 勉強にかける時間を短縮し、空いた時間を関連施設の見学などに充てているという。 部活や学校外の活動と両立するなど、子どもの可能性を広げると感じている。

個別指導主流、人材確保競争が激化

かつては集団の授業が多かった学習塾は近年、個別指導が主流になってきている。 必要な講師数が増え、人材確保の競争は激化。 こうした現状も、AI アプリの普及を後押しする。 学習塾を運営する「Z 会エデュース」の高畠尚弘社長は「人材不足を補うという以上に、人間の先生が経験と勘に頼っていた部分を AI が体系立てて組み立ててくれるのが魅力」と話す。 ただ、記述問題の指導や進路相談など「人にしかできない役割は今後も残る」とみる。

atama+ のプログラムには、子どもたちの学習状況が刻々と反映される。 「一度つくると簡単に変えられない紙のテキストと違って、デジタルコンテンツは、常にアップデートされるのも大きな利点だ」と高畠さんは話す。 人間の講師が不要になることは、稲田さんらも、塾側も考えていない。 AI を有効に活用するためには、子どもたちに寄り添い、やる気を引き出す講師の励ましが欠かせないからだ。 atama plus の担当者は「講師の役割をどう高めていくかは今後の課題。 全国の現場で試行錯誤しています。」と言う。

AI を活用したタブレット教材はほかにもあり、学習塾のほか、一部の小学校 - 高校も導入し始めている。 東京都西東京市の武蔵野大学中学校では今年度、経済産業省「未来の教室」の実証事業として、1 年生の数学の授業に Z 会が加わり、AI アプリを用いた授業に取り組むという。 (栗田優美、asahi = 9-3-19)


教員競争率、小学校は 2.8 倍に低下 質への影響懸念も

公立小中学校教員の志願者が減っている。 文部科学省のまとめによると、2018 年度から雇用された教員向けの採用試験の受験者は計約 10 万 5 千人で、12 年度の約 12 万 2 千人から約 1 万 7 千人減った。 朝日新聞が各地の教育委員会に調査したところ、19 年度は約 9 万 8 千人で、さらに落ち込んだ。 同時に採用者は増えているため、採用試験の競争率(倍率)は下がっており、19 年度は小学校が約 2.8 倍、中学校が約 5.5 倍だったことになる。 教委側は「教員の質に影響が出かねない」と懸念している。

朝日新聞は 19 年度の採用試験について、47 都道府県と 20 政令指定都市、大阪府から教員人事権を委譲された豊能地区の教育委員会を対象にアンケートを実施し、受験者数や採用者数などを聞いた。 それによると、19 年度の受験者は小中が計 9 万 7,680 人で、18 年度より 7,783 人減った。 一方、19 年度の小中の採用者は計 2 万 6,433 人で、18 年度より 2,511 人増えた。

採用試験の競争率の近年のピークは小学校が約 12.5 倍、中学校が約 17.9 倍だった 00 年度。 その後は採用者増などが影響して下降傾向となったが、この数年は受験者の減少で下がり方が加速している。 文科省によると、18 年度は小学校が約 3.2 倍、中学校が約 6.8 倍だった。 アンケートで、「望ましい人材を確保するうえで十分な倍率か」と聞いた質問には 62 教委が回答。 「やや不十分」は 36 教委 (58.1%)、「不十分」は 7 教委 (11.3%) で、計約 7 割を占めた。

受験者の減少は、民間の就職状況が好調なうえ、教員の長時間労働が問題になっていることなどが影響しているとみられる。 一方、採用者が増えている主な理由は、第 2 次ベビーブームへの対応で大量採用された世代が定年を迎え、新たな教員が必要なためだ。 倍率低下の理由を複数選ぶ設問には 65 教委が回答。 多かったのは、▽ 「民間企業など他業種の志望者が増え、受験者数が減った(50 教委)」、▽ 「定年退職者が増え、採用予定者数が増えた(41 教委)」、▽ 「多忙であるなど教職へのイメージが低下し、受験者数が減った(36 教委)」だった。

倍率は地域差もある。 19 年度に最も低かったのは、小学校が新潟県(1.2 倍)、中学校が北海道(2.4 倍)。 最も高かったのは、小学校が兵庫県(6.1 倍)、中学校が福岡市(14.1 倍、中高枠の受験者含む)だった。 (三島あずさ、asahi = 8-31-19)


「また教員になりたい」が少ない日本 OECD 調査

「教職は高く評価されている」と感じつつ、「再び教員になりたい」と思う割合は低い - -。 経済協力開発機構 OECD) による国際教員指導環境調査 (TALIS) の結果からは、こうした日本の教員像が見えてくる。 校長を務める女性が少ないことや、多様性についての教育が他国と比べて遅れているなどの課題も表れた。

調査の主眼の一つは、教員たちの仕事に対する意識や満足感を探ることだ。 日本の中学教員で「全体としてみれば、この仕事に満足している」という質問に対して「非常に良くあてはまる」、「あてはまる」と答えたのは計 81.8% だった。 参加国・地域の平均 (90.2%) を下回ったものの、高いレベルだった。 「教職は社会的に高く評価されていると思う」と答えた教員は 34.4% で、参加国・地域平均の 32.4% より高かった。

また、「教員になったことを後悔している」は 8.2%、「他の職業を選んでいた方が良かったかもしれないと思う」は 30.5% で、いずれも平均 (10.3%、35.4%) より低かった。 ただ、「もう一度仕事を選べるとしたら、また教員になりたい」と考えている日本の教員は 54.9% で、平均 (75.8%) を 20 ポイント以上下回った。 文部科学省は「結果をしっかり受けとめなければいけない。 魅力や、やりがいのある職場にする必要がある。」と話す。

教員を志望した動機も調査した。 日本の中学教員で最も支持が集まったのは「教職に就けば、子供や若者の成長に影響を与えられる」という理由で、「非常に重要」、「ある程度重要」と答えたのは計 89.0% だった。 この理由は他の国でも支持が集まり、参加国・地域の平均は 93.2% だった。 日本は次いで「安定した職業である (85.6%)」、「確実な収入が得られる (84.8%)」が多く、平均 (74.3%、70.5%) より高かった。 一方、「教職に就けば、社会的弱者の手助けができる」は 66.3%、「社会に貢献できる」は 81.6% で、平均 (78.2%、90.4%) より低かった。

中学校長、女性少なく年齢高め

調査では、教員や校長の性別と年齢も調べた。 日本の中学校長は女性が際立って少ない一方、平均年齢が高い傾向が浮かんだ。 調査によると、日本の中学教員の 42.2%、中学校長の 7.0% が女性だった。 参加国・地域の平均は教員 69.2%、校長 48.9% で、日本は教員、校長ともに最も低い割合だった。 女性校長が最も多かったのはラトビアの 83.8% で、ブラジル 76.5%、ブルガリア 72.9% が続いた。 日本と並んで低いのは、7.2% のトルコだった。 小学校では日本の教員の 61.4%、校長の 23.1% が女性だった。 教員の女性の割合は参加国・地域で最も低く、校長はトルコの 8.2% に続いて低かった。

一方、日本の中学教員の平均年齢は 42.0 歳で、参加国・地域平均の 43.4 歳より若かった。 30 歳未満の割合は 21.0% で、平均 (11.5%) の 2 倍近かった。 日本の小学教員も 41.7 歳で、30 歳未満が 22.4% と 2 番目に多い。 日本の学校でベテラン教員の大量退職に伴い、若い教員が増えていることが影響しているとみられる。 対照的に、中学校長の平均年齢は 58.0 歳と韓国の 58.7 歳に次いで高く、小学校は 57.7 歳と参加国・地域の中で最も高かった。 日本の中学教員の最終学歴は、学士レベルが 86.1% と 9 割近く、修士レベルは 10.6% にとどまる。 参加国・地域の平均だと学士レベルが 50.9%、修士レベルが 40.7% だった。

外国ルーツの子増加に、対応できているか

外国にルーツがある子どもらが増えるなか、多様性をどのように教えるのかは、日本の学校も直面する課題だ。 調査では、問題意識を持ちつつも、実践がやや遅れているという傾向が表れた。 調査では、中学校の校長が自校の教員の意識をどのようにとらえているかを聞いた。 「生徒の文化的背景の違いにすぐに対応できることは重要である」と「多数」または「全員、またはほとんど全員」が同意すると回答した日本の校長は 92.1% で、平均の 90.4% より高かった。 「異なる文化の人々は異なる価値観を持ち得ることを生徒が学ぶのは重要である」も 91.9% で、平均の 91.6% をわずかに上回った。

一方、多様な背景を持つ生徒が在籍する中学校で、実際の取り組みについて校長に尋ねると、「多様な民族的、文化的なアイデンティティーを表現することを促す活動や組織を支援する」は 25.0% (平均 69.9%)、「多文化的な行事を開催している」は 32.4% (同 64.0%)、「民族的、文化的な差別にどう取り組むかを生徒に教える」は 73.6% (同 82.5%)で、いずれも平均より低かった。 (編集委員・氏岡真弓、貞国聖子、asahi = 7-15-19)

TALIS = Teaching and Learning Intrnational Survey〉 : 2008 年から 5 年ごとに実施され、今回が 3 回目となる OECD の調査。 中学は OECD 加盟国など 48 カ国・地域、小学校は 15 カ国・地域が参加した。 日本は中学が前回に続く 2 回目、小学校は初めての参加。 無作為に抽出された国公私立の中学校 196 校、小学校 197 校の教員と校長が 18 年 2 - 3 月、調査票の質問に答えた。

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自信が持てない日本の教員 高水準の指導、自己評価「まだまだ」

OECD、48 カ国・地域を調査

経済協力開発機構 (OECD) が 5 年に 1 回実施している、国際教員指導環境調査 (TALIS) の結果が公表された。 日本の教員が、どのような指導や自己評価をしているのか。 学校を取り巻く状況は、他の国と比べてどうなのか。調査結果から浮かぶ傾向を、2 回にわたって報告する。

調査結果で際立つのは、日本の教員の自己評価の低さだ。 例えば、「生徒に勉強ができると自信を持たせる」という質問に対し、「非常に良くできている」または「かなりできている」と答えた中学教員は 24.1%。 調査に参加した 48 カ国・地域の平均の 86.3% の 3 分の 1 未満だった。 似たような質問で、「批判的思考を促す」は 24.5% (参加国・地域平均 82.2%)、「学習の価値を見いだせるように手助けする」は 33.9% (同 82.8%)で、いずれも参加国・地域で最低の数値だった。 「デジタル技術を利用した学習支援」も 35.0% (同 66.7%)にとどまった。

自己評価の低さは、5 年前の調査でも指摘された。 文部科学省は理由として、日本の教員が「高い水準の指導をめざしている」、「実際の達成度にかかわらず謙虚な自己評価を下している」可能性などを挙げる。

現場の教員はどのように受け止めるのか。

「なお足りないと言われた気持ちだ」と千葉県の中学校教員は言う。 学習指導要領の改訂を見据え、少人数で議論する授業などを進めているが、「言われたことをうのみにせず、多角的な見方を出し合う授業や、生徒自身がタブレットを使う場面はまだまだだ」という。 神奈川県の中学校教員は「クラスの一人ひとりを見れば、自信を持てていない子や、学習の価値を見いだせていない子がいる。 そんな中、『非常に』、『かなりできている』を選ぶのは難しい。」と話す。

調査は、日本の教員が授業以外の業務で忙しい状況も明らかにした。 中学教員の 1 週間の仕事時間は 56.0 時間で、平均の 38.3 時間を大きく上回った一方、授業時間は 18.0 時間で、平均の 20.3 時間より短かった。 その分、部活などの課外指導(7.5 時間)と事務業務(5.6 時間)はいずれも参加国・地域で最長。 知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間は 0.6 時間で、最も短かった。

部活・学校運営 … 業務の多さ指摘 教育・スキル局長、シュライヒャー氏

調査の総括責任者だった、OECD のアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は調査公表に合わせて、日本向けにテレビ会議で会見をした。 日本の教員の自己評価が低い理由として、シュライヒャー氏は「相関関係があるとは言い切れないが」としたうえで、授業のほかにも部活動指導や学校運営など、多くの業務を担っている点を挙げた。 「あれもこれもと期待が大きい分、先生たちが『すべてのことについて達成できていない』と思うのかもしれない。」 授業以外でも子どもと深く交流するのは日本の教育の強みとしながら、不必要な業務を見直し、「働き方改革」を進めることを提言した。

このほか、日本が重点的に取り組むべき点として、教員の能力向上のために職能開発の機会を増やすことや、給与を上げて魅力のある職業にすることなどに触れた。 「今後は様々な分野で、人材獲得競争がはげしくなる。 若く優秀な人たちが教員の道に進みたいと思うようにすることが大事だ。」と理由を説明した。 (矢島大輔、編集委員・氏岡真弓、asahi = 7-7-19)

◆ キーワード : TALIS (Teaching and Learning International Suvey) 2008 年から 5 年ごとに実施され、今回が 3 回目となる OECD の調査。 中学は OECD 加盟国など 48 カ国・地域、 小学校は 15 カ国・地域が参加した。 日本は中学が前回に続く 2 回目、小学校は初めての参加。 無作為に抽出された国公私立の中学校 196 校、小学校 197 校の教員と校長が 18 年 2 - 3 月、調査票の質問に答えた。


教員の夏休み「まとめ取り」復活へ 文科省が方針

文部科学省は 28 日、公立小中高校の教員が夏休み中に休日をまとめ取りできるよう、学校の夏季休暇中の業務を減らすことを求める通知を、全国の教育委員会に出した。 これまでは夏休みの間も教員研修を受けたり、授業研究を進めたりするよう求めていたが、教員の長時間労働が問題となるなか、新たな方針を打ち出した。 文科省は学校の週 5 日制が完全導入された 2002 年、教員の夏休みのまとめ取り方式をやめ、研修の実施などを求める通知を出していた。 当時は「教員が休みすぎている」という印象を避ける狙いがあったが、中央教育審議会が今年 1 月に教員の働き方改革に向けた答申を出したことを受け、28 日付でこの通知内容を廃止した。

新しい通知は過度な教員研修や部活動、高温時のプール指導などを見直し、一定期間の学校閉庁日を設けることなどが主な内容となっている。 夏休みのまとめ取りを復活させることで働き方改革が進むことに期待しており、「教職の魅力を高め、志ある優秀な人が活躍し続けるための環境づくりが重要」としている。 経済協力開発機構 (OECD) が 18 年に行った調査では、日本の教員は 1 週間の仕事時間が小学校では 54.4 時間、中学校では 56.0 時間で、調査に参加した国や地域で最も長かった。 (矢島大輔、asahi = 6-29-19)


日本の小中教員、腕磨く時間最短 先進国最長勤務なのに

日本の小中学校の教員は他の先進国と比べて、仕事時間が最も長い一方、教員としての能力を上げるために用いている時間が最も短いことが 19 日、経済協力開発機構 (OECD) の調査で分かった。 文部科学省が目指す、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業を実施している教員も他国より少なく、「勤務状況」と「授業内容」の双方に課題が浮かんだ。

教員の長時間労働が問題となるなか、文科省は働き方改革を「待ったなしの課題」と位置づけている。 また、小学校は 2020 年度から、中学校は 21 年度から新しい学習指導要領に基づく授業が始まり、教える内容や教え方も変革を迫られている。 双方で課題が指摘されたことについて、文科省は「非常に深刻にとらえている。 危機感を持って対応したい。」としている。

OECD が公表したのは、18 年に実施した国際教員指導環境調査 (TALIS) の結果。 中学校は 48 カ国・地域、小学校は 15 カ国・地域が参加した。 日本は 13 年に続き 2 回目の参加で、全国から抽出した国公私立の小中 393 校の教員と校長に質問を送り、回答を得た。 その結果、中学教員の 1 週間の仕事時間は 56.0 時間で、前回調査より 2.1 時間長く、平均の 38.3 時間を大きく上回った。 ただ、内訳をみると授業時間は 18.0 時間で、平均の 20.3 時間より短かった。

代わりに、▽ 部活などの課外指導(7.5 時間)、▽ 事務業務(5.6 時間)は参加国で最長だった。 授業準備(8.5 時間)も平均より長かった。 小学教員は、▽ 仕事時間(54.4 時間)、▽ 事務業務(5.2 時間)に加え、授業準備(8.6 時間)も参加国最長だった。 一方、1 週間で知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間は、小学で 0.7 時間、中学 0.6 時間。 いずれも、参加国で最も短かった。

授業内容についてみると、「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」指導を頻繁にしているのは小学 15.2%、中学 16.1% で、中学は参加国平均の 37.5% の半分未満だった。 「批判的に考える必要がある課題を与える」は小学 11.6%、中学 12.6% で、どちらも参加国で最低だった。 また、「課題や学級での活動に ICT (情報通信技術)を活用させる」指導は、小学が 24.4%、中学が 17.9% (平均 51.3%)だった。 (矢島大輔、asahi = 6-19-19)


教員の時間外勤務、月 45 時間の上限 働き方改革で答申

教員の働き方改革について検討してきた中央教育審議会は 25 日、長時間労働の解消などに向けた対策を盛り込んだ答申を柴山昌彦文部科学相にした。 教員が担う業務を整理し、「自発的」とされてきた業務を「勤務時間」に換算したうえで、時間外勤務を原則「月 45 時間、年 360 時間」以内とする上限を設けることなどが主な柱で、文科省は 2020 年度以降の実施をめざす。

中教審は、教員の時間外勤務が膨れあがっていることを受け、議論をしてきた。 答申では、これまで「自発的な居残り」とされた時間外の授業準備や部活動などの業務は、管理職が管理する「勤務時間」の対象にすべきだと提言。 そのうえで、時間外勤務について月 45 時間、年 360 時間の上限をつくり、抑え込んでいくべきだとした。

また、教員の負担を軽減し、授業などの本来業務に集中できるように、主な業務を 14 項目に整理。 例えば、給食費の集金や督促は自治体、登下校の見守りなどは保護者や地域に委ね、部活は外部の指導員に手伝ってもらうことなどを提案した。 このほか、労働時間を忙しさに応じて年単位で調整する「変形労働時間制」を、自治体が自主的に導入できるようにすることも盛り込んだ。 文科省は超過勤務分を長期休暇のまとめ取りで調整できるよう、夏休み中の教員の研修や、部活動の大会日程などを見直すよう呼びかける。 (矢島大輔、asahi = 1-25-19)