教員不足「悪化した」教育委員会の 4 割超 … 一部地域で「専門的指導が十分行えない懸念」

全国の公立小中高校などで欠員が生じる「教員不足」について、2023 年 4 月の始業日時点と前年同期を比較した結果、「悪化した」と回答した教育委員会の割合が 4 割超に上ることが、文部科学省の調査でわかった。 各教委は教員のなり手を増やす対策を進めているが、文科省は「依然として深刻な状況が続いている」としている。 教員数は児童生徒数などに応じて配置する人数が定められている。 産休・育休の取得者や病気休職者が想定よりも増えると、その代わりとなる教員が見つからない「教員不足」の事態が生じる。 文科省が 21 年度に行った初の実態調査では、こうした教員不足が公立校で 2,558 人に上った。

文科省は今回、都道府県・政令市教委など 68 教委を対象に、22 年度当初と比べ、23 年度の教員欠員数が増減したかを調べた。 その結果、29 教委 (43%) が前年度より状況が「悪化した」と回答。 特に小中学校での悪化が目立ったという。 文科省幹部は「一部の地域では少人数指導や専門的な指導などが十分に行えていない懸念もある」と語る。 一方、前年度よりも状況が「改善した」と回答したのは、11 教委 (16%)。 これらの教委では、再任用者数を増やしたり、臨時教員を早めに探したりするなどしていた。 残りの 28 教委 (41%) は「同程度」と回答した。

文科省は調査で、教員不足を解消するための取り組みについても聞いた。 教員のなり手を増やすため、大学などと連携していたのは、55 教委。 教員免許を持ちながら、学校で教えていない潜在的な「ペーパー教員」の掘り起こしで、教員免許保持者向けの研修会を行ったのは 32 教委だった。 文科省は近く各教委に通知を出し、SNS を活用した募集や高校生への働きかけなど、教員不足解消に向けた各地の取り組みを紹介する。 文科省幹部は「対策の成果も一部で表れつつあるが、引き続き地域の実情に応じた様々な工夫をしてほしい。」と話している。 (yomiuri = 6-20-23)


小中高生の自殺者数、過去最多に 初の 500 人超 厚労省

2022 年の自殺者数(確定値)は前年より 874 人 (4.2%) 増えて 2 万 1,881 人だった。 増加は 2 年ぶり。 小中高校生の自殺者数は 514 人で、統計がある 1980 年以降で最多となった。 厚生労働省が 14 日、発表した。 児童・生徒の自殺者数が 500 人を超えたのは初めて。 16 年から増加傾向で、コロナ禍が始まった 20 年に前年比 100 人増の 499 人となり過去最多を更新。 21 年も高い水準が続いていた。 22 年の内訳は高校生が最多で 354 人、次いで中学生の 143 人だった。

全体では男性が 1 万 4,746 人(前年比 807 人増)、女性が 7,135 人(同 67 人増)で、いずれも増加。 男性は 13 年ぶり、女性は 3 年連続で増えた。 人口 10 万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は全体で 17.5 となり、前年と比べて 0.8 ポイント増えた。 特に男性は 24.3 と、前年より 1.5 ポイント上昇した。 年代別では 50 台が最も多く全体の 18.7%、次いで 40 代が 16.7% を占めた。 都道府県別の年間自殺死亡率では山梨が 24.7 で最も高く、秋田 (23.7)、宮崎 (22.7) が続いた。 原因や動機(1 人四つまで)をみると、「健康問題」が 1 万 2,774 人と最も多く、「家庭問題」が 4,775 人、「経済・生活問題」が 4,697 人だった。 (石川友恵、asahi = 3-14-23)


「残業代なし」変わるか 教員の給与改革、自民で 3 案浮上

教員の長時間労働が問題となるなか、文部科学省は今年、公立学校教員の給与制度の見直しに向けた議論を本格化させる。 検討の対象になるのは、残業代を支払わない代わりに、基本給の 4% を上乗せして支給すると定める「教職員給与特措法(給特法)」。 いくら働いても残業代がつかないとして「定額働かせ放題」と批判されてきた。議論はどのように進むのか。(桑原紀彦)

「頑張っている教師が報われる給与体系になっていない。」
「教員が力を発揮するために、法規や制度の整備が必要だ。」

文科省は昨年 12 月、教員の処遇改善のあり方について検討する有識者会議を設置し、議論を始めた。 今年 1 月の会合では、教員の給与をめぐって複数の委員から、何らかの形で改めるべきだとの指摘が出た。

「定額働かせ放題」半世紀前の制度

給特法は、残業代を払わない代わりに基本給の 4% を「教職調整額」として支給すると定める。 「残業代なし」の仕組みに対しては、現場の教員らから「定額働かせ放題」と批判が上がる。 給特法は 1971 年に成立し、翌 72 年に施行された。 文科省によると、それより前は戦後にできた給与制度によって、教員の給料は一般公務員より 1 割程度高く設定されていた。 勤務時間が一般公務員より長いとされたからだという。 一方、制度的には一般公務員同様に残業代が出る仕組みになっていたが、文部省(当時)は校長らが時間外勤務を命じないよう通達を出し、残業代が生じないよう制度が運用されていた。

しかし、実際には残業が常態化していたことから、60 年代半ばごろから残業代支払いを求める訴訟が全国で起こされた。 これを踏まえ、文部省は 66 年度、公立校教員の勤務実態調査を実施。 その結果、小中学校の 1 カ月の時間外勤務は平均約 8 時間と推計され、@ これに見合う基本給の 4% を「教職調整額」として上乗せして支給する、A 残業代は支給しない - - ことを柱とする給特法の制定に至った。 それから半世紀。 教員の働き方は大きく変わった。 文科省が 2016 年に実施した勤務実態調査では、時間外勤務の平均は小学校が月約 59 時間、中学校が約 81 時間(いずれも推計)で、給特法の制定時と比べて大幅に増加していた。

文科省は 19 年に、時間外の在校時間を月 45 時間、年 360 時間以内とするガイドラインを策定。 さらに、これまで主に教員が担っていた業務について、▽ 登下校対応や学校徴収金の業務は「学校以外が担う」、▽ 調査への回答や児童生徒の休み時間の対応は「必ずしも教員が担う必要がない」、▽ 給食時の対応や授業準備は「教員の業務だが負担軽減が可能」 - - とし、各教育委員会に実施を促した。

だが、教員の長時間労働が広く知られるようになるなか、教員採用試験は受験者の減少に歯止めがかかっていない。 昨年春に採用された公立小学校教員の採用倍率は 2.5 倍で、3 年連続で過去最低を更新した。 国の調査によると、公立小中学校の教員の平均給与は月約 41 万円。 年収ベースでみれば一般公務員(大卒)より 10 万円ほど高いが、文科省幹部は「教員の残業の多さをみれば、給与の枠組みを変えないと今後も民間企業に人材がどんどん流れる」と危機感を募らせる。

こうした状況を背景に、文科省は 22 年度、勤務実態調査を 6 年ぶりに実施。 今春、速報値を公表する予定だ。 岸田文雄首相は今夏にまとめる「骨太の方針」に教員の処遇改善についての方向性を盛り込む意向を表明しており、文科省は有識者会議の論点整理も踏まえて、中央教育審議会(文科相の諮問機関)に給与体系の見直しを諮問するとみられる。 記事後半では、自民党内で浮上している三つの改革案の詳細と、それぞれの課題に触れているほか、識者の見方も紹介しています。

3 案の詳細は、中教審での議論の行方に大きな影響を与えるとみられているのが、元文科相の萩生田光一・自民党政調会長が昨年 11 月に立ち上げた党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」だ。 「本委員会で、教師の養成、採用、現職の各段階を通して必要な改革案を提案していく。」 1 月末にあった会合で、萩生田氏は力を込めた。 党関係者によると、特命委は勤務実態調査の結果発表に前後して新たな給与体系の提言をまとめる方向だ。 これに向け、水面下で 3 案が検討されている。

一つ目は、給特法を廃止し、会社員と同じように時間に応じた残業代を支給するというものだ。 給特法の代わりに労働基準法が適用されると、教員側と管理職が時間外労働をさせる業務の種類や時間の上限を決める必要がある。 労基法 36 条に基づく、いわゆる「36 (さぶろく)協定」だ。 党関係者によると、協定締結にあたって労働組合などと交渉する役目は学校ごとに校長や教頭が担うことが想定され、相当な負担が生じる可能性があるという。

二つ目は、給特法を維持しつつ、現在は基本給の 4% となっている教職調整額を十数 % まで引き上げるというもの。 しかし、この案では多忙な教員もそうでない教員も一律に給与が引き上げられるため、現場に不公平感が広がる懸念がある。

三つ目は、この二つの「折衷案」だ。 給特法を維持し教職調整額を数 % 引き上げたうえで、学級担任や部活の顧問を務めたり、主任の職に就いたりしている教員に相応の手当を上積みする枠組みだ。 だが、これも、どの手当にどれだけの額を支給するのがふさわしいのかといった詰めるべき課題は多い。

文科省幹部は、今後の展望について「自民党の提言をベースに中教審で議論し、答申を受けて制度設計に入る」と話す。 ただ、公立小中学校の教員給与の 3 分の 1 は国が負担しており、自民党のいずれの案でも新たに数千億円規模の財源が必要と見込まれるという。 新制度導入には人件費増を避けたい財務省との厳しい折衝が避けて通れない。 文科省は、党の要職にある萩生田氏を後ろ盾に新たな制度を設計し、25 年の通常国会での法改正を視野に検討を進める方針だ。

小川正人・東大名誉教授(教育行政学)の話 : 会議や部活指導、保護者への対応などもあって教員は長時間勤務を強いられ、授業準備や教材研究、研修の時間が十分に確保できず授業の質の低下につながっている。 健康にも影響を及ぼし、21 年度は「心の病」で 1 カ月以上休んだ教職員が初めて 1 万人を超えた。 年度途中に産休・育休などで現場に欠員が生じても代替の教員を確保するのが難しくなっており、すでに子どもの学びに影響が出ている。

現在の 4% の教職調整額は実態に合っておらず、きちんと金銭的な報酬を支払う仕組みに変えなくてはならない。 また、残業時間が一定の水準を超えたら休暇に振り替えられるようにしたり、夜遅くまで働いたら翌日の出勤時間を繰り下げられるようにしたりと、民間で採り入れられている仕組みの導入も併せて検討すべきだ。 人材確保の点からも、教員の働き方を改善する制度改革を早急に進める必要がある。 (桑原紀彦、asahi = 2-20-23)


時間外勤務「改ざんされた」 130 → 78 時間 小学校教諭が訴え

愛知県内の公立小学校の 50 代男性教諭が、時間外勤務の時間を実際よりも少なく書き換えられたとして、学校のある自治体の教育委員会に対し正しい労働時間への修正などを求める措置要求書を、県人事委員会に提出したことが分かった。 提出は 10 月 27 日付。 要求書などによると、教諭は昨年4月の時間外勤務の合計が 130 時間にのぼった。 勤務時間を教委に提出する際、教頭から過少申告するよう求める旨のメッセージが教諭のスマートフォンに届いたが、教諭は拒否。 だが教委には、休日勤務した分の 52 時間がひかれた 78 時間分の時間外勤務しか提出されていなかった。

この自治体の教委によると、教員は個人カードを読み取り機にかざして出退勤時間を記録するが、誰でも修正ができるようになっているという。 教委の幹部は「事実と異なる勤務時間が教委に報告されたことは間違いないが、教頭と教諭本人が相談した上でのことと認識している」と話している。 教諭は、管理職による過少申告の強要をやめさせることや、勤務管理システムの改善も求めている。 (asahi = 10-31-22)


教員の在校、1 日平均 11 時間超 5 割が「休憩 0 分」連合総研調査

連合のシンクタンク「連合総研」は 7 日、公立学校教員の労働時間調査の結果(速報値)を公表した。 出勤から退勤までの 1 日の在校時間は、平均で 11 時間 21 分。 2015 年の前回調査に比べて 8 分減ったが、高止まりの状況が続いている。 調査は今年 5 - 6 月、全国の公立の小中高校と特別支援学校の教員を対象にインターネットで実施し、約 9,200 人が回答した(回答率 92.1%)。

外部での会議や研修を含めた平日の在校時間(休憩時間除く)の平均は 11 時間 21 分、自宅に持ち帰って仕事をした時間は 46 分で、これを合わせた労働時間は 12 時間 7 分。 1 日の所定労働時間(7 時間 45 分)を大幅に上回った。 15 年調査から在校時間は 8 分減ったものの、自宅での仕事時間は 3 分増えた。 所定労働時間を超える労働時間は月平均で約 123 時間。在校時間中の休憩時間も尋ねたところ、54.6% が「0 分」と答えた。

働き方改革のため国や自治体が取り組むべき課題としては、93.5% が「学校への教職員配置増」と回答。 66.4% が「授業時数削減など」、64.5% が「少人数学級編成の推進」を挙げた。 文部科学省は働き方改革の一環で、▽ 小学校高学年の一部授業での教科担任制導入、▽ 授業準備などを手伝う教員業務支援員の配置、▽ 学校徴収金の徴収・管理や登下校対応などの業務の校外移行 - - といった対策を進めており、今回の調査では、その進み具合も尋ねた。 登下校対応の移行が進んでいると答えたのは 49.4%、徴収金の移行が進んでいるとしたのは 46.9% だった。

調査を分析した清水敏・早稲田大名誉教授は「教員の長時間労働の実態は大きく変化していない。 教員の業務量の削減をめざすこれまでの路線から、予算を拡充して教員を増やす路線に力点を移すことが不可欠だ」と指摘する。 (桑原紀彦、氏岡真弓、asahi = 9-7-22)


足りぬ教員、19 都道府県・4 政令市で 1,020 人 教職員組合調査

全日本教職員組合(全教)は 3 日、公立の小中高校と特別支援学校の今年 5 月 1 日時点の教員配置状況を調べたところ、19 都道府県・4 政令指定市で 1,020 人の欠員が生じていたと発表した。 教員の労働環境悪化がなり手不足を招いているなどとして、文部科学省に改善を申し入れる。 全教が各地の教育委員会や学校に尋ねたところ、19 都道府県と 4 政令指定市で、配置すべき定数を満たせない欠員は 477 人だった。 また、年度中に産休や育休、病休などを取った人の代わりがいないのは 321 人。 このほか、自治体が独自に実施する少人数指導や、非常勤で短時間教える教員が不足していた。

現場からは、▽ 通常学級の担任が病休に入り、特別支援学級の担任が補充されて欠員が発生、▽ 技術・家庭科で欠員が生じ他校の教員が兼務、▽ 少人数指導の教員を担任に回し、少人数指導が行えない - - といった状況が報告されているという。 全教が 2018 年度に実施した同様の調査では、不足数は 667 人だった。 担当者は「新規採用の教員が新年度の直前に民間企業に就職するなど、なり手不足が拡大している」と話す。 (桑原紀彦、asahi = 8-3-22)


校長が PTA に「知人に教員いない?」 新年度、先生不足の学校続出

新学年が始まった各地の公立学校で、必要な数の教員が配置されない事態が相次いでいる。 少人数教育の目的で配置された先生が担任に回るなどし、子どもの学習に影響が出ている。 専門家は長時間労働などで教職が敬遠されていることが背景にあるとして、労働環境の改善を訴えている。

「来るはずの先生が来ないことになりました。」 4 月初め、東京都内の区立小学校。50 代女性教諭は、職員会議での校長の説明に驚いた。 教員 1 人が配置されなくなり、任せる予定の学級の担任が空いてしまったという。 児童の転出入の影響でクラス数がなかなか確定しなかったため、学級担任がいったん発表されたのはこの日のわずか数日前。 担任を組み替えることになり、ただでさえ遅れている新年度の準備を、女性を含む担任教員はストップせざるを得なかった。

調整の結果、算数の少人数学習のため学級担任とは別に配置された産休明けの教員が急きょ学級を持つことに。 担任の不在は何とか避けられたが、昨年度までと同じような少人数教育は難しくなった。 女性教諭にとって、年度当初から教員が不足する事態は初めて。 図工などの専科教員や管理職を除くと、全員が担任を持つ。 新型コロナウイルスによる教員の長期欠勤などもありうるため、担任以外の教員がいないのは危機的な状態だ。 女性は「学校はなんとか回ると思うが、他の教員の負担は重くなる」と心配する。

都教育委員会が 4 月 11 日時点で集計したところ、都内の公立小で計約 50 人が不足。 例年、新年度にクラス数が確定後、代役を務める臨時的任用教員の名簿をもとに確保を図るが、今年は「他に就職が決まった」などと断られ、充当できなかった。 教員希望者が多いとされる東京都で年度当初から不足するのは異例だ。 こうした名簿は採用試験に不合格だった人が主な候補になるが、小学校教員の採用倍率は 2 倍前後と低迷が続く。 担当者は「希望者が少ないことも関係している可能性がある。 一刻も早く不足を解消したい。」と話す。

教員希望者が多いとされてきた東京都で教員が不足し、子どもに影響が出る事態が起きています。 東京だけでなく、教員不足は東北から九州まで各地で指摘されています。 記事後半では、なぜこうした事態が生じるのか、打開策はないのかなどをめぐり、専門家のコメントを紹介しています。

年度途中で病休や産休 「さらに足りなくなる恐れも」

兵庫県のある公立中でも、少人数学習のために配置された教員が 2 人不足している。 この学校の 40 代男性教諭は「年度途中に病気や出産で休む人が多いので、さらに足りなくなる不安がある。」と話す。

実際、昨年度の初めに教員の 1 人が病休になり、担当教科の授業が満足にできなくなった。 足りない分は年度末に振り替えたが、新型コロナの影響で出勤できない教員が出たため、男性が隣り合う 2 クラスを交互に巡回しながら授業をして乗り切った。 「学校は常に臨時講師を探している状態。 経験が少ない人が教えることも多く、教育の質も心配。」と話す。

島根県教委は、4 月 1 日時点で小学校を中心に過去最多の 32 人が不足していることを県議会に説明した。 長時間労働のイメージなどから志願者が減っていることなどを理由にあげ、退職者の再任用や採用数の増加などで対応する方針だ。 担当者によると、いずれも様々な目的で追加配置される教員をあてて担任の不在は避けられているが、「教員の負担を分散するためにも、このままではいけないことは明らか」と話した。

大分県の公立小学校では、昨年度まで教員 2 人で担当していた 37 人の 2 年生のクラスを 1 人で担うことになった。 配慮が必要な子などのために追加で配置されていた教員が不足したためだ。 担当する 20 代女性教諭は「ただでさえ手が回っていない。 ゆっくり見てあげたい子に関わる時間がどれだけとれるのか。」と心配する。

学期が進むにつれて病休や産休で、さらに足りなくなる可能性もある。 不足数を毎月調べている千葉県教委によると、千葉市を除く公立学校で今年 3 月時点で 348 人と、統計を取り始めてから最多になった。 昨年 4 月は 116 人だった。 教員配置の充実を訴えるビラを配った全教千葉教職員組合の中川晃書記長は「不足する人数がここまで多くなるとは。現場の負担も膨らみ、危機感を持っている」と話す。

専門家「教員希望者減 背景に長時間労働」

文部科学省が昨年度に初めて行った調査では、昨年 4 月の始業日時点で、全国の公立学校 1,897 校で 2,558 人が不足していた。 文科省は 4 月、教員免許がなくても知識や経験がある社会人を採用できる制度を活用するよう通知した。

教員不足の問題に詳しい慶応大の佐久間亜紀教授は「最大の要因は財政難の下、少子化がさらに進むことを見込んで、採用されるべき正規教員の数が減らされすぎてしまったことだ。 そのため、年度の初めから非正規に依存する状況がつくられた。 そのうえ長時間労働の実態が広く知られ、非正規を経てでも教員になりたい人の層が枯渇している」と指摘。 「文科省は実態を直視して正規教員を増やし、労働環境を改善するといった対策が欠かせない」と提言する。

特別な配慮が必要な子へのケアが手薄になる事態も起きている。 滋賀県教委によると、4 月 11 日時点で県内の公立学校で 28 人が不足。 うち特別支援学校が 15 人を占めた。 正規採用の教員で不足する分を例年、年度初めに常勤の講師でまかなっているが、今年は必要数も多く、補いきれなかった。 やむを得ずパートタイムの非常勤講師を雇って充当したというが、担当者は「非常勤が担えるのは授業のみ。 常勤を雇うよりは周囲の教員の負担が増える。 欠員解消に向けてさらになり手を探す。」と話す。

特別支援学校は昨年度の文科省の調査でも、教員不足が生じている学校の割合が全国で 13.1% と小中高校と比べて顕著に高く、不足はより深刻といえる。 ある県立特別支援学校では一時、担任が 3 人の学級に 2 人しか配置できない「担任不足」に陥った。 生徒の中には人工呼吸などの医療的ケアが必要な子や、目を離すと外に出て行く子もいて、不足は危険に直結する。 勤務する 30 代の女性教諭は「担任がいない学校はあり得ない。 障害がある子の学級は穴を開けてもいいと思われているように感じ、やりきれない。」と話す。

保護者に不安 「新学期早々、なぜ?」

子どもや保護者には不安が広がる。 「先生がいなくて、どうなるんだろうと思っている」と話すのは、中部地方の市立小 6 年生 (11)。 担任になるはずだった教員が春休み中から病休をとり、始業式後の 4 日間、朝から 6 時間目までプリントが配られ、自習が続いた。 5 日目からは教頭が授業をしている。

「グループで話し合いをする活動がなく、教頭先生が教科書を読み上げることが多い」という。 この小学校の校長は「子どもに申し訳ない。 教育委員会に配置をお願いするだけでなく、私や教職員のつてをたどって電話作戦をしているが、いつ配置されるかまだわからない。」と言う。

都内の公立小では 4 月、PTA の会議で校長が「知り合いに教員免許を持っている方はいませんか」と呼びかけると、「えーっ」と驚きの声が広がった。 配置されるはずの教員が来ず、校長や教職員が知り合いを当たってもいないという。 教員養成大学出身の役員がおり、同窓生伝いに免許を持つ人に頼み込んで、何とか確保した。 「教員を配置するのは行政の責任。 教育委員会も学校もお手上げで親に頼むなんておかしい。」と役員の一人は言う。

東北地方の公立中学校では、始業式から 5 日たっても「学校だより」が配られなかった。 1 年生の母親が学校に電話すると、技術の教員が配置されず、副担任のいないクラスがあり、教職員名簿を掲載できないという。 8 日目になって配置されたが、母親は不安がる。 「新学期早々、なぜ先生が不足しているのか。 これが 2 学期、3 学期になるとどうなるのか。」 (asahi = 5-3-22)


外国人の子、所在確認できず … 1 万人不就学の可能性 文科省調査

日本に住む外国人の小中学生にあたる子どものうち、昨年 5 月時点で 1 万 46 人が学校に通っていない可能性があることが 25 日、文部科学省の調査で分かった。 地元の教育委員会が所在を確認できていない事例がほとんどで、2019 年度の前回調査からほぼ半減したものの、外国人の子が教育を受けられる体制づくりに課題が残る。 憲法や教育基本法により国民には子どもに教育を受けさせる義務があるが、外国人にはない。 ただ、国際人権規約などに基づき、文科省は就学機会を確保するよう各教委に求めている。

住民基本台帳上、小中学生にあたる外国人の子は約 13 万 3 千人。 文科省が全国の市区町村教委を通じて調べたところ、学校に通っていない子(@)は 649 人だった。 また、台帳に記載はあるが戸別訪問などで所在が確認できない子(A)が 8,597 人、教委が状況を確認していない子(B)が 800 人いた。 前回調査で @ - B は計 1 万 9,471 人だったが、今回は B が約 9,400 人減った。 当時、外国人の子の学齢簿を作っていなかった教委が約 2 割あったが、今回は約 4%。 文科省の担当者は「把握が進み就学に至る事例が増えたのでは」とみる。 ただ、外国人の子がいる家庭に就学案内を送付していない教委が 9.8% あった。

また、公立の小中高校で日本語指導が必要な児童生徒が過去最多の 5 万 8,353 人に上ったことも、関連調査でわかった。 中学生の進学率を初めて調べたところ、89.9% で全中学生を 9.3 ポイント下回った。 逆に高校生の中退率は全高校生より 4.5 ポイント高く、文科省は指導を一層充実させたいとしている。 一方、小中学校の特別支援学級で日本語指導の必要な児童生徒が約 2,700 人いた。 文科省は「言葉が不自由、という理由だけで特別支援学級に通っている状況になっていないか、精査したい」としている。 (桑原紀彦、asahi = 3-25-22)


2 月の児童生徒の感染 20 万 5 千人、最多更新 文科省調査

2 月に新型コロナウイルスに感染した、小中高校、特別支援学校の児童生徒と幼稚園児は計 20 万 5,291 人だったと文部科学省が 11 日、発表した。 月別の感染者数で最多だった 1 月の 12 万 7,214 人(2 月 15 日の発表時より 2 万 8,789 人増)を大きく上回った。

学校別では、小学校が最多の 13 万 1,837 人で 1 月から倍増。 中学校 3 万 5,480 人、高校 2 万 7,975 人だった。 1 - 2 月の感染経路をみると、家庭内感染は小学校が 30%、中学校が 34%、高校が 22%。 校内感染は小学校が 4%、中学校が 5% だったが、高校は 19% と比較的高かった。 同一学校で感染者が 5 人以上確認された件数は、1 月の小学校 5,545 件、中学校 2,196 件、高校 1,968 件に対し、2 月は小学校 2,369 件、中学校 1,154 件、高校 635 件で、いずれも減少した。 (桑原紀彦、asahi = 3-11-22)


学校に配布された抗原検査キット 「期限切れ」で破棄相次ぐ

新型コロナの「第 5 波」に見舞われていた昨年 9 月、政府が全国の小中学校などに配った抗原検査の簡易キットをめぐり、使用期限を過ぎて廃棄される例が相次いでいる。 教育現場からは当初から「学校では使えない」など配布を疑問視する声があり、「第 6 波」でキット不足が指摘されるなかでの廃棄に、戸惑いの声が上がっている。 政府は「第 4 波」のさなかにあった昨年 5 月、大学や高校への抗原検査の簡易キット配布を打ち出したのに続き、「第 5 波」に見舞われていた 8 月、萩生田光一文部科学相(当時)が幼稚園や小中学校にも配る方針を表明。 11 月までに計約 125 万回分が配られた。

配布にあたり、文科省は「体調不良時は(医療機関への)受診が基本」とし、使う場合は養護教諭らの立ち会いや保護者の同意が必要、と手引などで各教育委員会に示した。 また、小中学校では使用対象を原則として「教職員」とし、子どもへの使用は「小学 4 年生以上」と区切った。 配布されたキットは、鼻の奥に綿棒を入れてこすりつけ、その綿棒を浸した液体を判定用の容器に垂らすと 15 - 30 分ほどで結果が出るしくみ。 ただ、学校現場からは、うまく使えずに飛沫が飛ぶリスクや、陽性反応が出た際の対応の難しさなどから、「学校では使いづらい」と指摘する声も上がっていた。

こうしたなか、小中学校に配られた 80 万回分の大半は、今年 1 月末に使用期限を迎えた。 文科省は、学校での活用状況は調べておらず、期限が切れたキットの扱いは「各教委の判断に任せる」としている。 「やむなく捨てた」、「期限切れだが、もったいなくて捨てられない - -。」 使わないまま期限切れになったキットを前に、養護教諭らからは困惑や疑問の声が相次いでいる。 東京都内のある公立小学校では、昨年秋に届いたキットを、年明けに全て廃棄した。 一度も開封しないまま、12 月末に使用期限を迎えた。 養護教諭の 50 代女性は「使う機会がなかった。 教員向けというが、少しでも感染不安があれば出勤しない。 家庭に配ったほうがまだよかった。」と話す。

都圏のある公立高校でも今年 1 月、一度も使うことなく「期限が来たら廃棄を」という指示通り捨てた。 養護教諭は、「陽性」と出た場合の対応について「電車やバスで医療機関に向かわせていいのか、まず家に帰すのが良いのか、自分が濃厚接触者扱いになる可能性は … など、分からない点が多く、使えなかった」と語る。 「配られたきり、何も情報がないまま廃棄した学校は多いのでは。」 首都圏のある自治体で今月開かれた養護教諭の連絡会では、キットの処分方法が話題に。 「一般廃棄物にしていいのか」と問われ、教委側が「後日回答する」と答える一幕もあった。 廃棄した学校、校医から頼まれて譲った学校、期限切れが迫り教職員に配った学校など、残ったキットの扱いはさまざまだったという。

期限切れキット、冷蔵庫に 「捨てる気なれない」

連絡会に参加した一人の養護教諭の学校は、結局、一つも使わないまま、保健室の冷蔵庫に残っている。 「第 6 波」でキットが足りないというニュースを聞くたび、憤りを感じるという。 「税金の無駄遣い。 必要としている人たちがほかにいるのに、とてつもなくもったいない。」 新潟県内のある公立小学校の保健室では、期限の切れたキットが冷蔵庫にしまわれている。 養護教諭の 30 代女性は「キットはいま、手に入りづらい。 あまりにもったいなくて、捨てる気になれない。 何かに使えないのか。」と悩んでいる。 昨年 9 月、文科省と県からそれぞれ、10 セット入りの箱が届いた。 文科省からは「教職員が使うことを想定」との通知があったが、地元の教委は逆に、感染の可能性があればすぐに医療機関を受診するよう通知。 教職員が学校に残ってキットを使うことは「想定していない」とした。

使用期限が迫るなか、何とか活用しようと、学級閉鎖になったクラスの担任に渡すことにした。 「症状がないとあまり意味がないのは分かっているが、少しでも役立ててもらおうと思った。」 だが、数個しか使わず、多くが余ったまま期限を迎えた。 そもそも、鼻の奥に綿棒を入れれば、くしゃみやせきが出て感染を広げるリスクもある。 にもかかわらず、研修もなく、不安だった。 「キットをもらえるのは、ありがたい面もあった。 ただ、全国一律で学校に配ったのが、果たして良かったのか …。」

東京都内のある公立小の養護教諭は、「使いようがないものをばらまかれた、という印象。 医療機関などで不足していると聞くと、腹立たしく、申し訳ない気持ちになる。」と話す。 昨秋、校長から 10 セット入りの 1 箱を渡されたが、体調不良で早退した児童が陽性と分かった後に、対応した自分と教員が使ったことが 1 度あるだけだ。「文科省は『学校に配布した。 しっかり対応している。』という既成事実が欲しかっただけではないか、と思えてしまう。」

病院、保健所に持ち込むケースも

使用期限が「第 6 波」と重なり、各地でキットが不足している。 文科省は 1 月 27 日、各教育委員会に「医療機関などの求めに応じて、キットを渡しても差し支えない」と連絡。 それを受け、期限切れ直前に、病院や保健所へ持ち込んだ自治体もある。

キットが 66 箱(1 箱 10 回分)届いた千葉県佐倉市。 市教委は昨年 9 月初旬、34 の小中学校と市立の幼稚園 1 園に 1 箱ずつ配り、残り 31 箱は市で保管していた。 ただ、各校とも、出番はほぼなかったようだという。 期限切れが迫っていた今年 1 月 27 日の夜、県教委などから「医療機関に譲ってもよい」と連絡があり、担当者が新型コロナを担当する健康推進部を通じて翌朝あわてて希望を募ったところ、発熱外来を持つ 18 の医療機関から手挙げがあった。 市教委は学校に配布済みのものも含め、51 箱を配って回ったという。 「(無駄にならないように)できる限りのことはやった」と担当者は語る。

大津市では 148 箱が配備された。 だが、市教委が各小中学校に聞いたところ、「活用の態勢が整った」と手挙げしてきたのは 55 校中 5 校だった。 1 月下旬、県教委などからの連絡を受け、保健所に「有効活用してください」と 100 箱以上を持ち込んだという。 担当者は「配られた時点で、使用期限が残り 3 カ月余りだった。 教職員が適切に使える態勢を整えるには、制約が大きかった。」と話す。

大阪府内のある市教委にも昨年 9 月、約 130 箱が届いた。 ただ、使用にあたっては「研修を受けた教職員の管理下で検査を行う」など、文科省からさまざまな条件が示されており、「第 5波」が収束したこともあって使わずじまいだったという。 年明けにオミクロン株が蔓延し、濃厚接触者になった教職員に 10 回分使ったものの、残りは使用期限が 1 週間後に迫った 1 月下旬、地元の医師会から依頼されて受け渡したという。 担当者は「示された使用条件のハードルが高く、使う機会が無かった」と振り返った。 (asahi = 2-12-22)


デジタル教科書、新年度から全小中学校に配布 まずは「外国語」から

紙の教科書をデータ化した「デジタル教科書」が新年度から、全小中学校に無償で提供される。 文部科学省が、2024 年度の本格導入に向けた実証事業として外国語(英語)で配布し、希望する学校の一部には、ほかの教科からも 1 教科分を提供する。 紙との併存や費用のあり方などについて課題を洗い出す。 デジタル教科書は、紙と同じ内容をデータ化し、パソコンやタブレット端末で使う。 学校教育法改正により、19 年度から紙の教科書に代えて一部授業で使用できるようになった。 文科省の有識者会議は 21 年 3 月、小学校の教科書改訂のタイミングとなる 24 年度からの本格導入を求める提言を出している。

文科省は 21 年度、導入に向けた実証事業として、小 5 - 中 3 を対象に、使用を希望した全国の 4 割の学校に任意の 1 教科分のデジタル教科書と、動画などが流れる付属のデジタル教材を無償で配布した。 新年度からは、同じ学年の国公私立の全小中学校と特別支援学校、小学校の重点校の小 1 〜小 4 に提供するため、21 年度補正予算と新年度当初予算案に関連経費として計 55 億円を計上した。

新年度は、外国語(英語)を全対象者に配布し、デジタル教科書や教材から流れる朗読音声などを使うことがどれくらい有効かをみる。 また、希望する自治体や学校の中から調整し、予算の範囲内でこれ以外にも 1 教科分を提供する。 特に、算数・数学や理科では、図形や実験、観察を動画で学ぶことの効果を検証したい考え。 ただ、教科書会社によって性能や仕様がまちまちであることから、文科省は標準的な要件を決めることにしている。 これらを踏まえ、文科省はデジタル教科書を採用する教科や、紙の教科書と同様に無償化するかどうかなどの判断を 22 年中に決める方針だ。 (桑原紀彦、asahi = 1-8-22)


タブレット学習、子どもの近視防ぐには 校長が導入「20」のルール

学校や家庭でタブレットやスマートフォンを使う機会が広がり、近視のリスクにさらされる子どもたちが増えている。 宮城の小中学生の裸眼視力は全国平均より悪化しているとの調査もある。 今夏、子どもたちの目を守ろうという宮城県気仙沼市の小学校の取り組みを見た。

市立松岩小(児童数約 350 人)。 この夏のプログラミング学習で、4 年 2 組の 29 人がそれぞれタブレット端末を机の上に置いた。 IT 担当の千葉一志先生 (48) が、教材アプリ「ロイロノート」の起動を指示した。 画面にキャラクターが現れる。 子どもたちは素早いキー入力でキャラを動かし、宝物や武器を獲得。 「やったー。」 電子音が響くなか、教室のあちこちで歓声が上がった。 10 分ほど経つと、背筋を伸ばしていた子どもたちが机にひじを付きだした。 首を前に突き出し、顔が画面に近づく。 さらに経つと、ほとんどの子が画面を引き寄せてしまった。 目との距離は 20 センチあるかないかだ。

2019 年から 20 年 0.3 未満が倍近くに

「ピピッ、ピピッ。」 甲高いアラーム音が鳴った。 「はいっ、手を止めて。」 千葉先生が声を掛ける。 「20 分経ちました。 校長先生、何て言ってたっけ?」 子どもたちが答える。 「20 分経ったら、20 フィート(6 メートル)離れたところを、20 秒間見ましょう、です。」 「君たちは頭も目も使った。 少し遠くを見て、目を休ませよう。」 窓に駆け寄り、一斉に 20 秒間、外をじーっ。 そしてまたタブレットに向き合った。 男子児童の 1 人 (10) は「雲を見ていた。 目が少し楽になった。」と話した。

「20 分 x 20 フィート x 20 秒」を打ち出したのは小松英紀校長 (59) だ。 昨冬、関西の小学校で児童の視力が急激に悪化しているとの TV 番組を見て、自校の子どもたちを調べてみた。 2019 年度と 20 年度を比較すると、裸眼視力 1.0 以下の児童が増え、特に 0.3 未満が倍近くになっていることが分かった。 20 年度の調査は、県内で一斉休校が明けた 6 月の実施だ。 校内ではメガネを掛ける子が目についた。 「家でスマホやゲームに没頭したのか?」 原因がわからないまま、児童や親に受診を促した。

今年 1 月から、子どもたち一人ひとりにタブレット 1 台が配られた。 ノートの点検や意見集約には便利だが、家でのスマホやゲームを考えると不安があった。 そこで設けたのが「20 x 20 x 20」のルールだ。

タブレット学習「健康置き去りになっていないか」

授業が中断されるため、戸惑う教師もいたが、協力を頼んだ。 タブレットを使った夏休みの宿題をなくし、養護教諭らの呼びかけもあって、自ら使用時間のルールを設けるようにもなった。 視力は改善傾向だという。 小松校長は言う。 「タブレット学習は不登校や休校の際の学びの確保には有効だが、紙との知識の定着度の比較や、子どもたちの健康が置き去りになっていないか。 機器さえ配ればいいと、前のめりになっていないだろうか。」

市教委によると、タブレットは小学校 14 校、中学校 11 校の全校にそれぞれ配備済みだが、使用実態は各校任せ。 調査の予定もないという。 健康面の配慮は「機器の使用と視力に関する文部科学省の調査結果を注視する」にとどまる。 文科省の 20 年度調査だと、裸眼視力 1.0 未満の小学生は全国で約 4 割、中学生は約 6 割に増えた。 宮城は全国平均よりさらに悪い。 同省は全国の小中学生 9 千人を対象に視力を調べ、実態把握に乗り出した。

日本小児眼科学会や日本弱視斜視学会は、近距離で画面を見続けることで目が内側に寄って左右の視線がずれる「急性内斜視」の増加を指摘。 独自に調査し、視聴時間や休憩などのルール作りを促している。 気仙沼市議会でも 6 月、児童の視力低下が取り上げられた。 小山淳教育長は「一斉休校に伴う影響が否定できない。 今後推移を注視していく。」と答えた。 (星乃勇介、asahi = 12-24-21)