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都の新任教諭 239 人が 1 年以内に退職 過去 10年で最高の 5.7% 東京都教育委員会は 24 日、昨年度採用した公立学校の新任教諭のうち、1 年以内の退職者が約 240 人いたと明らかにした。 全体の 5.7% を占め、過去 10 年で最高という。 都教委によると、昨年度に採用した公立小中高、特別支援学校などの新任教諭は 4,237 人。 うち、239 人が 1 年以内に退職した。 内訳は小学校 146 人、中学校 46 人、高校 18 人、特別支援学校 28 人、義務教育学校 1 人だった。 懲戒免職も 1 人いた。 9 割にあたる 217 人が自己都合退職で、理由別には、精神面での不調が 4 割、転職などによる進路変更が 3 割、介護や転居など家庭の都合が 1 割だった。 指導力不足などから正式採用に至らなかったのは 22 人だった。 都教委は新任教諭の休・退職対策として、2023 年度から臨床心理士が学校に出向いて面談する事業を始め、24 年度には年齢の近い先輩教諭が相談にのる「メンター制度」も導入している。 担当者は「民間企業と比べると定着率は高いとみているが、引き続き離職防止の対策を進めていく」としている。 (浅沼愛、asahi = 4-24-25) 値上がり続く制服、10 年で 3 - 4 割増 リユース定着・ユニクロ制服も リユース学生服を販売する「学生服リボン(埼玉県坂戸市)」。 店内にはブレザーや学ラン、スラックス、スカート、ワイシャツといった制服がところ狭しと並ぶ。 近隣 7 市町の中学、高校約 50 校分の制服が 300 着ほどあるという。 いずれも中古品だ。 制服、修学旅行、卒アル … 保護者負担の学校教育費にも無償化の波 卒業したりサイズアウトしたりして着なくなった制服を預かり、販売している。 価格は服の状態にもよるが、上下でおおむね 1 万円。 売れたら元の持ち主に 1 千 - 3 千円程度を支払う。 趣味目的の購入を防ぐため、購入者には子どもと一緒に買いに来てもらう。 子どもが来店できない場合は生徒手帳を見せてもらう。 店を営む鈴木さとみさん (59) が事業を始めたのは 2017 年。 ちょうど長女が中学に入る年だった。 長女の制服はリボンなども含めると一式約 5 万円。 鈴木さんは貯金から買うつもりでいたが、長女自身が近所の人からおさがりをもらってきたという。 物価高にともなって中高生が着る制服も値上がりを続けています。 父母の負担を抑えるため、制服のリユースが各地で定着するほかにも、さまざまな取り組みが各地で広がっています。 記事の後半でそうした事例を紹介しつつ、物価高時代の学校制服のあり方について専門家に聞きました。 その制服を普通に着ている長女を見て、鈴木さんはリユース制服の事業化を決意した。 着られる制服を捨てずに他の誰かにつなげば、循環型社会にも近付く。 「制服を集めています」というチラシを配ると 1 年目で約 500 着が集まった。 一般的なバザーでは手が届きにくい品質管理や補修など、こまめなフォローが売りで、現在は年約 150 人ほどが購入するという。 成長して制服がきつくなっているのに困窮して新品を買えずにいたり、先生に教えてもらって生徒自ら電話してきたりと事情は様々だ。 長女の高校入学時に同店を利用した埼玉県鶴ケ島市の女性 (56) は「夏服と冬服など(新品で)一式そろえると 10 万円近くした。 娘はリユースに抵抗がなく、家計も助かった。」と話す。 制服リユース「一つの市場になった」 総務省の小売物価統計調査によると、今年 2 月の制服の東京都区部の平均価格(男子は詰め襟上下、女子はブレザーの上着とプリーツスカート)は男子が 3 万 9,533 円、女子が 4 万 0,209 円で、10 年前より約 3 - 4 割高くなった。 文部科学省は「通学用服等の購入について、経済的負担が過重なものにならないよう留意すること」などとする通知を 18 年に教育委員会などに出したが、原材料の高騰などを背景に値上がりが続く。 長引く物価高で強まる節約志向が、リユースのニーズを後押しする。 10 年に香川県で創業した学生服リユースショップ「さくらや」は、いまや全国約 80 店舗まで広がった。 事業を展開するサンクラッドの馬場加奈子社長は「購入希望者の約 2 割は貧困が背景にあり、その他は節約目的やエコ志向の方という印象だ」と話す。 16 年には官民一体で始めた「こどもの未来応援国民運動」の一環として「学生服ツナグプロジェクト」を企画した。 制服の回収ボックスを賛同企業のフロアにおいてもらい、制服を必要な家庭や支援団体に販売、寄付する仕組み。 このプロジェクトで売り上げのうち約 100 万円が子どもの貧困などを支援する基金に寄付された。 民間ではなく、自治体が事業として行っているところも。 東京都中央区は環境施策の一環として、制服を回収してクリーニングや補修をし、実費相当で譲渡する事業を行っている。 馬場さんは「物価高やエコ意識の高まりのなか客数は近年増えている。 制服リユースは一つの市場になったと考えている」と話す。 サブスク、オプションで無料交換も 制服購入の負担を減らそうと、学校側も試行錯誤している。 埼玉県立北本高校では 22 年度から、入学時に一定額を支払えば制服の上下をレンタルできる「サブスク」を始めた。 それまでの制服は生地がよかったこともあって 5 万円以上。 そこで、生徒や保護者、教員らで検討委員会をつくり、あり方を検討したという。 サブスクを利用する場合、同県久喜市の制服メーカー「光和衣料」と保護者が個人契約する。 ブレザーと夏用スラックス、冬用スラックスのセットで 3 万 7 千円、ブレザーとスカートの組み合わせで 3 万 5 千円程度(24 年度)で、1 万円以上の負担減になる。 1,100 円のオプションをつければ、きつくなったり破れたりしたときに無料で交換できる。 昨年度は約 2 割の生徒がサブスクを利用した。 同校の三枝英明・前教頭は「生徒同士にも保護者にも普通に受け入れられている。 特に問題はなく、このまま続けたい。」と話す。 同社によると、レンタルを採り入れる学校は広がっており、千葉県市川市の一部は 23 年度から、鎌ケ谷市、東京都足立区や荒川区の一部は今年度から導入。 7 割以上の生徒がレンタルを利用する学校もある。 購入より 1 割ほど安くなるうえ、サイズが合わなくなったり擦れがひどくなったりした場合に 3 年間で上下それぞれ 2 回ずつ交換できるサービスがついており、支持を得ているという。 ユニクロ導入校「安価で定番そろいやすい」 アパレル大手ユニクロの既製品を導入した学校もある。 さいたま市立大宮北高校では、22 年度から従来の制服に加えて着用を認めてきたが、24 年度からはユニクロ製品に完全移行した。 それまでは、女子のブレザーとスカートの組み合わせで 6 万円程度かかっていた。 「入学が決まってから 3 月に支払うお金が多すぎる」との問題意識から、女子が着るスラックス導入の検討に合わせて見直したという。 制服として着用できる製品は学校側が指定しており、たとえばジャケットなら「感動ジャケットウールライク」か「ストレッチテーラードジャケット」のどちらかで、色はネイビー。 夏服として着るポロシャツや冬の V ネックセーターは、色は自由に選べる。 ピンクや黄色のポロシャツを着て登校する生徒もいる。 制服代としては 4 万 - 5 万円程度抑えられた。 保護者からは「家で洗濯ができ、買い替えもしやすい」などの声があがっているという。 同校の新川健二教頭は「これまでの取引先からは難色を示されたが、比較的安価で定番商品がそろいやすかったためユニクロにした。 学校側が制服はこうあるべきだという固定観念にとらわれなければ改革は可能だ。」と話す。 価格だけにとどまらない議論を 千葉工業大学・福嶋尚子准教授(教育行政学)の話 : 制服代は授業料以外にかかる「隠れ教育費」の代表例。 物価高を背景に学校も対応を迫られている。 ただ、完全に私服にするとかえって高くなる生徒もいるとみられ、リユースやサブスクは一つの方法だ。 学校ごとにばらばらだったデザインを市全体で統一し(て価格を下げ)た神戸市のような例もある。 あくまで制服は「標準服」と位置づけ、似たような市販品を柔軟に採り入れ、ベルトやベストは自由化するなど指定品を削減することは、負担減だけでなく選択肢を増やすことにもつながる。 社会に出たら衣服を選ぶ力も必要だ。 TPO (時間・場所・場面)や気候に合わせ、ある程度は生徒たちが判断できる余地があるとよい。 衣服は自己表現の一つでもあり、価格だけにとどまらない議論も大切だ。 (小林未来、asahi = 4-6-25) 子どもの自殺過去最多 自殺未遂の経験者を支援、政府が調査へ 2024 年の小中高生の自殺者数が 527 人(暫定値)で過去最多となったことを受け、政府は 31 日、関係省庁連絡会議を開き対応を協議した。 小中高生の自殺者で自殺未遂をした経験のある子どもが多いことから、こども家庭庁は自殺未遂をした子どもや家庭を支えるための調査研究を新たに行う。 深刻な悩み検索、1 人 1 台端末でも 子どもの生きづらさ支えるには 会議にはこども家庭庁、文部科学省、厚生労働省、内閣府などが参加した。 厚生労働省は学校や市町村が自殺未遂や自傷行為をした子どもの支援にあたるため、必要な助言をする精神科医などの専門家チームを都道府県や指定市などにおく事業を進めている。 24 年版の自殺対策白書によると、22 - 23 年の小中高生の自殺者のうち、自殺未遂をした時期が 1 年以内だった子どもが過半数だった。 三原じゅん子こども政策担当相は「子どもたちがどんな思いで自ら命を絶ったのかを思うと、言葉にならない。 各省の施策を総動員して、まずは今すぐできるものを実施してほしい」と話した。 29 日に厚労省が発表した統計では、24 年の小中高生の自殺者数は過去最多の 527 人(暫定値)。 小学生 15 人、中学生 163 人、高校生 349 人だった。 人口動態統計(23 年)によると、10 - 30 代の死因はいずれも自殺が最多。 24 年版自殺対策白書によると、主要 7 カ国 (G7)の 10 -19 歳の死因で自殺が 1 位となっているのは日本のみだった。 (川野由起、asahi = 1-31-25) 首都圏の中学受験が本格スタート 5.2 万人が私立・国立中受験予想 埼玉県内にある私立中学校で 10 日、入学試験が始まった。 首都圏の中学受験シーズンが本格的にスタートした。 この日、入試がある栄東中(さいたま市)では 9 日時点で、5,179 人が出願した。 最寄り駅から学校までの道には受験生の長い列ができ、会場では受験票を確認したり、手を握り合ったりする親子の姿が見られた。 東京都板橋区から母親と来た女子児童 (12) は「今日が初めての入試。 今まで頑張って来た成果をしっかり出せるように頑張りたい。」と話した。 首都圏模試センターによると、首都圏の私立・国立中の受験者数は約 5 万 2,300 人にのぼる予想という。 東京、神奈川、千葉、埼玉の 1 都 3 県の小学 6 年生が減少しているため、前年(5 万 2,400 人)より減少する見立てだが、受験率は 18.10% と、記録のある 40 年間のうち、過去最高だった前年 (18.12%) に次ぐ高さとなりそうだ。 20 日には千葉県、2 月 1 日には東京都と神奈川県の私立中でも入試が始まる。 「御三家」を含む難関校、前年より横ばいか微減 2025 年の首都圏の中学受験はどうなるのか。 首都圏模試センターの北一成・教育研究所長によると、模試の志望状況では、埼玉で、開智所沢が前年の倍以上だ。 栄東も人気だ。 20 日に始まる千葉、2 月に始まる東京、神奈川では、麻布や開成、武蔵などの「御三家」を含む難関校が、前年より横ばいか微減の傾向という。 中堅校の人気が高く、北さんは「偏差値や大学の合格実績を重視する層もあるが、保護者が 2000 年以降に社会に出た世代になるほど、震災やリーマン・ショックを経験しているためか、競争より共生に価値を置き、わが子のやりたいことを重視するなど、偏差値にとらわれない層が増えている。 学校選びが多様化し、人気が分散している」と説明する。 入試にも変化が見られる。 プレゼンテーションなどを導入した「新タイプ入試」は、実施校が 21 年の 152 校から 24 年は 147 校とやや減ったが、藤村女子が今年、ダンスのパフォーマンスと面接で合否を判断する「ダンス選抜」を始める。 英語の資格試験を活用する入試も目立つ。 高い受験率が続く。 北さんは「ブームではあっても、過熱だとは思っていない」とする。 「関東圏の中高一貫校は 40 年前から約 100 校増え、入試も多様化している。 選択肢が増えているということ。」 その上で、「わが子を評価してくれる入試と学校を選べば、楽しく学び、社会でも幸せに生きていける力を身につけてくれる。 そういうウェルビーイングな中学受験に近づいている気がする。 併願校に悩む家庭もあると思うが、わが子に合う学校を探してほしい。」と語る。 受験生へもエールを送る。 「入試の時期に一番学力が伸びる。 第 1 志望がダメであっても、複数回受験できる学校であれば、最新の過去問を経験したんだ、と思って自信をもって受けてほしい。 皆さんには伸びしろがある。可能性を信じて。」 (本間ほのみ、asahi = 1-10-25) 公立小中学校 77%、日常業務にファクス 25 年度にゼロ目標だけど 公立小中学校の 77.1% で、日常業務にファクスを使用していることが、文部科学省の調査で分かった。 政府は 2025 年度中に、すべての学校でファクスでのやりとりや押印の原則廃止をめざしている。 23 年度調査の 95.9% からは改善したが、目標達成が厳しい状況が明らかになった。 調査は、校務のデジタル化の推進状況を確認するもの。 昨年秋に全国の 2 万 6,014 校から回答を得た。 ファクスのやりとり相手についても複数回答で聞き、最多は「民間事業者」の 68.5%。 次いで「自校以外の学校 (46.0%)」、「教育委員会 (42.7%)」だった。 押印が必要な書類についても質問し、92.7% が「ある」と回答。 通知表や、修学旅行などの参加同意に関する書類、口座振替申請といった申請書などが挙がった。 校務のデジタル化が進まない要因については、「校内で検討する時間がない(42.6%)」が最多で、「環境面が整備されていない (33.7%)」、「ICT 活用に不安 (29.6%)」 - - などが続いた(複数回答)。 文科省の担当者は「改善の余地はまだまだある」と話す。 先行例の紹介や教委への働きかけなどでデジタル化を進めるという。 (山本知佳、asahi = 1-9-25) 教育移住で逆に気づいた "日本のすごさ" … 給食や教室掃除がもたらすもの 円安や停滞する経済状況の影響か、以前にも増してヨーロッパや英語圏、成長著しいアジアなどへの「教育移住」が注目されている。 私自身、旅しながらリモートワークで働くデジタルノマドとして多くの国を訪れており、もし子どもがいたら海外で教育を受けさせたいと感じるほど、海外での生活が好きな方だ。 しかし実際の現実はどうなのか。 実際にオランダに渡ったキョウコさん(仮名)と、マレーシアに教育移住したエリさん(仮名)に話を聞いてみた。 2 人とも、海外の教育のメリットとデメリットを認識しつつ、現地での教育を選んでいるが、話を聞くなかで日本の教育の意外な良さがわかってきた。 実は将来を柔軟に選択できる日本 「オランダでは、小学 5 年生で将来の方向性を決めなければいけないんです。」 40 代のキョウコさんは、仕事の関係で数年間のオランダ滞在のために 2023 年に渡航した。 もともと子育ては主にキョウコさんが担っていたこともあり、仕事で日本を離れられない夫を残し、息子と娘も帯同した形だ。 ヨーロッパへの留学経験や、アメリカでの居住経験があったキョウコさんは、「世界を見て、生きていくうえでさまざまな選択肢があるということを知ってほしい」と考えていた。 オランダに帯同した子ども 2 人は、ともに現地のインターナショナルスクールに通っている。 キョウコさん自身はオランダに永住する予定はなく、ゆくゆくは日本に帰国する予定だが、キョウコさんがオランダで驚いたのは進路選択の早さだったという。 キョウコさんによると、オランダの教育制度では、日本の小学 5 年生にあたる年齢で大学進学を目指すのか、専門学校に通い早めに就職するのかなどを決める必要があるという。 この進路選択により、将来の方向性がほぼ決まってしまうといっても過言ではなく、やり直しはそう簡単にはいかないとも。 当然のことながら、小学 5 年生が自分の意思で将来の選択をするのは簡単なことではなく、進路選択には親の意向が非常に強く反映されるのが現実だという。 給食の大切さを痛感 キョウコさんの不安は、「健康な体づくり」にもあるという。 キョウコさんによると、オランダには学校専用の校庭があるところは少なく、体育の時間が日本より短い。 もともと日本人より体格の良いオランダ人であれば、短時間の運動でも問題なく身体作りができるのかもしれないが、「日本人の子どもにとっては不十分なのでは」と感じるそうだ。 また食事に関しても、日本のように給食をみんなで食べるという習慣はない。 栄養素を意識した食生活を育む「食育」のような教育もなく、食べるタイミングも自由。 そのため子どもの食事選びをみていると栄養が偏りやすく、将来的に身体作りに影響するのではないかと懸念しているという。 キョウコさんの周囲の教育移住者のなかには、偏った食生活が影響か「子どもの精神面が不安定になっている気がする」と不安視する家庭もあるという。 計算の繰り返しで身につく忍耐力 2 児をオランダのインターナショナルスクールに通わせる日々で、キョウコさんが気がついたのが「日本の小学生の計算能力の高さ」だったと話す。 「オランダでは時計を読めなかったり、計算が苦手な子が多い印象です。」 オランダでは、勉強は良くも悪くも生徒の「自主性」に任せられる。 きちんとそれぞれの子どもの個性を見てほめてもらえるため、自己肯定感が上がりやすい反面、座って勉強してきちんと基礎力を身につけることができない子どもも多いと感じるそうだ。 「日本では時計の読み方を小学校低学年で教わるため、きちんと時計を読むことができ、時間を意識して行動できる子が多いです。 またしっかりと座学をするため、基礎的な計算能力が身についている子が多いですが、オランダでは必ずしもそうではありません。(キョウコさん)」 日本では、同じ漢字を何度も書いて覚えたり、計算問題を何問も連続で解いたりして基礎力や忍耐力を身につけることが多い。 もちろんこうした教育手法には賛否があるが、これによって基礎となる学力が身についていることも否定できないだろう。 「自然な日本語」習得できるか マレーシアに教育移住したエリさんは、そもそも母国語をきちんと話せない状況で、外国語を学ぶことに戸惑いも感じている。 「移住前から覚悟していたことではありますが、日本語への不安が強いです。 人に対して『1 個、2 個』という単位を使ってしまうこともあります.。」 20 代のエリさんは、「もっと世界の色々な文化に触れ、自分自身で考え、選択できる人間になってほしい」と思い、2022 年、文化と言語の両面で多様な環境に身を置けるマレーシアへの教育移住を決めた。 上の子どもは小学生になったばかりで、現地のインターナショナルスクールに通っている。 マレーシアでは当たり前のように英語が通じ、華僑も多いため中国語も身に付きやすい環境で、自然に外国語を身につけられる環境が整っているというが、エリさんは「母国語がないがしろになってしまうという恐怖」があるという。 「日本語をきちんと身につけた上ではじめて、英語や中国語ができるということが強みになると思います。 インターナショナルスクールでは基本的に英語で話すため、日本語は家庭で学ぶように努力しています。(エリさん)」 「世界の文化に触れて育ってほしい」という思いがある一方で、「日本人としての感覚」も身につけてほしいという本音も。 例えば日本では、室内でも野外でも「ゴミはゴミ箱に捨てる」というのは日本では当たり前のマナーとされるが、マレーシアでは必ずしもそうではないと、日々直面するカルチャーギャップの現実についてエリさんは語る。 基本的にマレーシアでは役割分担が明確で、「掃除は清掃スタッフが行う」のが一般的。 自ら公共の場を清潔に保つという意識が生まれにくいという。 そのため家庭内で掃除や日本的なマナーについて教えているという。 (薬袋友花里、Business Insider = 1-3-25) 「もう無理」負担重い教職課程 夏休みも冬休みも授業、留学を断念 … 教員不足が深刻な中、新卒で中学、高校の教員採用試験を受ける人が減少傾向だ。 教員養成を主目的としない学部学科の学生からは教職課程の負担が重いとの声もあがる。 文部科学相は今月 25 日、中央教育審議会に多様な専門性を持つ質の高い教職員集団の形成の方策を諮問し、教職課程の在り方の検討も盛り込んだ。 なぜ、教職取るのはこんなに負担? 「もう無理。」 首都圏の私立大理系学部の男子学生の元には、3 年生の春から、各地の教員採用試験や私立中高の説明会などの案内が次々に届いた。 だが「教職科目の負担が重すぎて卒業単位も取れるか …。 説明会や試験に申し込む気にはなれなかった。」 入学前から教員になってもいいと思い、中学と高校の教員免許を取得しようと決めていた。 だが、入学時のガイダンスで「あまりおすすめしない」と言われて驚いた。 学部やサークルの先輩も「やめた方がいい」と口をそろえた。 理由は、所属学部の専門科目以外に、教員免許のためだけに必要な科目が多いからだ。 しかも、教職向けの科目は指導案作成や模擬授業など手間がかかる一方で、自身が通う大学では頑張っても成績評価 (GPA) や卒業単位には反映されない。 大学院進学にも加味されない。 3、4 年生で介護実習や教育実習が入り、留年者も少なくないと聞いた。 それでもあきらめたくなくて、1 年生では教職科目を履修した。 時間割はびっしり詰まり、興味のある理系の授業はたくさんあるのに一つも組み込めなかった。 夏休み、冬休みに教職の必修授業もある。 授業内容にも疑問がわいてきた。 学校は 1 人 1 台の端末の時代なのに、教科教育法など大半の科目が端末活用はゼロ。 必修の体育もエアロビクスやヨガなどで単位認定される。 「意味があるのか。」 もっと困ったのは、留学だ。 学内の留学説明会に出ると「教職課程を取る人は、卒業まで 5 年かかる可能性が高いので注意を」と言われた。 留年しなくても留学できる制度を楽しみにしていたのに、あきらめた。 「大学時代の様々な学びや経験は教員にとっても大切だと思う。 でも教職課程がそれを阻害すると思えてきた。」 一緒に履修していた人は、学期ごとに消えた。 苦労して免許を取り終えた先輩にはこう言われた。 「学生のうちにしかできないことに時間を使った方がいい。 教員不足だし、簡単に教員になれる時代も来るよ。」 一種免許取得者 小学校は増、中高は減少傾向? 文部科学省の調査では、普通免許状一種免許(四大卒程度)の 2022 年度の授与件数は、小学校教諭は約 2 万 3 千人で、12 年度より約1,400 人増。 一方、中学は約 3 万 9 千人で 12 年度より約 6,200 人減、高校は約 4 万 9 千人で約 1 万 1 千人減った。 今月公表された 24 年度公立学校教員採用試験の状況調査でも、新卒の受験者数は、14 年度比で小学校は 4% 減だが、中学は 18% 減、高校は 36% 減だった。 中学はここ 3 年は微増だが、中長期的には減少している。 採用者の出身大学別の内訳では、国立教員養成大学・学部ではない一般大学・学部の出身者の割合が小・中学校はいずれも 65%、高校は 67% で高い。 同省の担当者は「小学校教諭は、教員養成大学・学部で継続的に養成している上、新たに乗り出す大学・学部もある。 教員不足は、既卒の受験者の減少や採用枠の拡大、育休取得の増加などの影響が大きい」という。 ただ、中学・高校については「免許取得者自体が中長期的に減少傾向で、課題を感じている。 国も開放性を前提とした教職課程の見直しをするが、GPA や留学など大学の判断で対応できる点は改善してほしい。」という。 「理系の優秀な教員が足らない …」 首都圏の私立中高一貫校の校長は「特に理系の優秀な教員が足らない」と嘆く。 国立大や医学部などの入試に対応するには、専門知識も豊富な教員が必要だが、大学側からは「大学院進学も視野にある理系は、負担の多い教職課程を取らない学生が増えている」と聞いた。 毎年、大学別に小中高校教員の就職者数を調査する「大学通信」情報調査・編集部の井沢秀部長も「理系学部は進級が厳しく、専門科目をしっかり勉強しなければ単位を落とす。 これまで理系の教員を多く輩出してきた大学も就職者数は減少傾向だ。」とする。 注目するのは、高校校長などになる人も多い東京理科大。 同社の高校教員就職者数の調査ランキングで、かつては上位 10 位に入っていたが、60 位台まで減ったという。 同大に限らず「教員の多忙さが話題になることに加え、教職課程の負担や就活の売り手市場も影響しているのではないか」とみる。 同大によれば、中高の教員免許取得者(実数)は、14 年度は 466 人だったが 23 年度は半数以下の 212 人に、教員就職者数も 14 年度の 140 人から 47 人に減ったという。 担当者は「総数は減少傾向にあるものの、教職をめざす学生の熱意は変わらず高い」とし、26 年度には数学や情報などの教員免許を取得できる創域情報学部や科学コミュニケーション学科の開設も計画している。 早稲田大も、教職課程の総履修者数(小学校含む)は、22 年度までの 10 年間で 5 割以下の約 2,300 人に減った。 日本大も、23 年度の一種または専修免許の取得者は延べ約 2 千人で、13 年度比で中学・高校とも約 2 割減だった。 ただ、理系学部でも教職科目を担当する教員は「学生が負担に思っているのはわかるし、教員のなり手は増やしたいが、教職科目の安易な削減は教員の専門性を落としかねない」と懸念する。 「一部を卒業単位に組み入れ」 8 割以上の大学容認 今後の教職課程について各大学はどのように考えているのか。 朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」では今夏、教職課程がある大学の学長に、教職の単位の扱い方について考えを聞いた。 「一部を卒業単位に組み入れる」と「(学びの質確保のために一定期間に履修できる単位数を制限する)キャップ制の対象外とする」はほぼ同様の傾向で、回答した 513 大学のうち半数弱が「大いに賛成」。 「仕方ない」も合わせると 8 割以上が容認する考えを示した。 ただ、公立、私立の大学は 8 割以上が容認するのに対し、国立大は 6 割台と少なかった。 「大いに賛成」とした関西の公立大は「専門科目のみで通常の時間割は埋まる。 教職科目は夏休みに開講し、教職を目指す学生に夏休みはない」と厳しい現状を明かす。 一方、「卒業単位に全面的に組み入れる」は容認派と「反対」が 5 割弱で拮抗した。 大規模大で特に反対が多く、東京の私立大は「いま教育に必要なのは予算の大幅増加だ。 教職課程の間口を広げたり、取得を容易にしたりすることは、効果がないだけでなく、教育の質を下げるだけだ」とした。 共同調査では昨夏も、教職課程がある大学の担当者に「教員免許に必要な単位数」などについて質問した。525大学が回答し、「大幅に改善すべきである」「ある程度改善すべきである」の合計が51%と最も多かったのは、「教職課程で教える内容」だった。国立大や大規模大で多く、「教育学部以外の学生は、卒業に必要な単位数以外に多くの教職科目を履修しなければ、免許を取得できない。そのことが中途での教職課程の放棄につながっている」といった指摘があった。 (編集委員・宮坂麻子、増谷文生、asahi = 12-30-24) |