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闇バイト、個人情報 … デジタル技術、良き使い手になるための教育とは 学校でも日常的に使われ、子どもたちの学びや生活に欠かせないものとなっているインターネットやデジタル技術。 一方で、SNS などをめぐってトラブルに巻き込まれたり、犯罪の被害者や加害者になったりする例も後を絶たない。 自ら判断できる力を身につけ、責任ある行動がとれるデジタルの使い手になるには、どうしたらいいのか。 教育現場の取り組みを取材した。 10 月下旬、東京都中央区立月島第一小学校の 4 年生約 100 人が、デジタル技術の良き使い手になる第一歩として「デジタル・シティズンシップ」の授業を受けた。 100 人のうち半数以上が自分のスマートフォンを持っており、半数近くがオンラインゲームで知らない人とチャットをした経験があるという。 授業の最初のテーマは「メディアバランス」。 子どもたちが、休日に 1 日どれくらいメディアに接しているか発表した。 平均でゲームが約 3 時間、ユーチューブが約 2 時間。 講師から、スマホ依存や、スマホ利用が脳に及ぼす影響などについて聞いた子どもたちは、「適切なデジタル時間」について話し合った。 次のテーマは「個人情報」。 講師の 1 人が「ユーチューバーを目指している」という設定で、動画配信でどんな話をすると個人情報が特定されてしまうか、○X (マルバツ)ゲームで考えた。 答えを知る前に、子どもたちは「なぜ自分はそう思うのか」意見を出し合った。 講師は「小さな情報も掛け合わせればあなたにたどり着いてしまう」とし、ネットに上げる前に立ち止まって考えることが必要だと説明。 個人情報を知られることで、闇バイトなどの犯罪から抜け出せなくなる可能性がある、とも強調した。 「活用より前に、つきあい方を」 相談も 授業をしたのは、教育事業を手がける「イコールチャンス(同区)」で、今年度から区教育委員会と連携。 希望する学校で、こうした授業を行っている。 小川圭美社長は「学校からは『デジタルの活用より前に、デジタルとのつきあい方やバランスが問題になっている』という相談が多い」といい、そうしたニーズにこたえる内容にしているという。 「例えば『個人情報が知られると危ない』と言っても、どう危ないのか教えるのは案外難しい。 複数の情報が掛け合わされることでリスクが高まることを、クイズや意見を出し合うことを通して、本質的に理解してもらえたら。」 今回の授業は、東京学芸大学の北澤武教授(情報教育)が監修した。 事前の宿題では、保護者が「(子どもの)理想のメディア利用時間」を記入する部分も設けた。 小川さんは「子どもたちがデジタルとうまく関わっていくには、家庭との連携が不可欠。 宿題などを活用し、家庭でも話し合う機会をつくっていきたい。」と話す。 ネット利用、小学校低学年 83 分、中学生は 151 分 NTT ドコモ・モバイル社会研究所が昨年 11 月、関東の 600 世帯の小中学生と保護者を対象にした調査によると、1 日に勉強以外でネットを利用する時間は、小学校低学年が 83 分、高学年が 110 分、中学生が 151 分。 SNS (LINE、Instagram、TikTok、X)を利用しているのは低学年で 36% (平均利用時間 12 分)、高学年で 58% (同 29 分)、中学生で 96% (同 85 分)で、中学生の 20% は 1 日 3 時間以上使っていた。 子どもの ICT (情報通信技術)利用について、高学年の保護者に不安に感じる点を複数回答で尋ねたところ、「スマホへの依存」が 90%、「長時間利用による健康への悪影響」が 89%、「LINE などへの投稿の内容により友達とトラブルになること」が 87%、「子どもが自分自身の個人情報を公開すること」が 80% だった。 小中学生の親の約 9 割が、子どもが「スマートフォンを使いすぎている」と感じており、閲覧内容のフィルタリングや、利用時間の制限などを設定している親は小学生で 78%、中学生で 62% だった。 デジタル・シティズンシップとは デジタル・シティズンシップ : デジタル技術の利用を通じて、社会に積極的に関与し、参加する能力のこと。 欧米を中心に広まった教育概念で、総務省による保護者向けの手引では、「対人関係とコミュニケーション」、「セキュリティーとプライバシー」など 6 領域のテーマがあることを紹介している。 静岡大学教育学部・塩田真吾准教授インタビュー ネットリテラシー教育に詳しい静岡大学教育学部の塩田真吾准教授に、子どもたちを取り巻くネット環境や、家庭や学校での向き合い方について聞きました。 ☆ 前提として、ネットとのつきあい方や必要な対応は、個人や状況によって異なります。 「あり」、「なし」のような二元論になるのは危険です。 また、ネット環境は日々変化しており、「正解」はありません。 ルールや注意点についても、学校や家庭で常に話し合い、見直していく。 思考をやめないことが重要です。 子どもたちがトラブルや犯罪に巻き込まれないようにするためには、事例を紹介するだけではなく、いかに「自分事」として考えられるかが大切です。 例えば、私が LINE みらい財団と作った中学生などに向けた教材では、複数の写真の中から「どれをネットに載せたいか」と問います。 食事、クラスの友だち、恋人との写真 …。 「問題あり」、「何とも言えない」、「問題なし」など 5 段階で分けると、個人によって判断がばらつくことがわかります。 「人によって感覚が違う」ということを理解できれば、「自分が載せる写真で、嫌な気持ちになる人がいるかもしれない」と思いを巡らせることもできます。 ネットに関するモラルや知識と同時に、その手前にある、基本的なものごとへの理解や知識も必要です。 個人情報については、「知らない人に見られたら困る情報とはなんだろう」というところから考えてもらいます。 中高生が闇バイト事件に関与したケースもありましたが、「簡単な仕事で高額報酬」と言われて「おかしい」と気づけないことが、そもそも問題です。 折に触れて個人情報や労働にまつわる話題を話し合い、基礎知識を身につけていく必要があります。 家庭では、日ごろから子ども自身の考え方を聞き、言葉にしてもらうことをおすすめします。 たとえば、先日の兵庫県知事選をテーマに、「ネットではこんな意見やあんな意見があるけど、どう思う?」と子どもに問いかけてみる。 SNS 投稿などを始める前の幼い子どもでも、「ご飯の前にお菓子を食べちゃダメなのはなぜ?」など身近な話題を投げかけてみる。 大人が考えないような、面白い答えがかえってくることもあります。 そうやって、自分の頭で考え、伝わるように言葉を選ぶ訓練が、ネットから正しい情報を選び取ったり投稿したりする際に役立つと思います。 (塩入彩、石川瀬里、asahi = 12-1-24) 教員合格しても 7 割の 200 人辞退、自己都合退職も増加 地方の現実 教員のなり手不足は全国各地で深刻な課題となっている。 高知県教育委員会が今秋、小学校教員の採用試験で 280 人に合格を通知したところ、約 7 割の 204 人が辞退した。 現地ではいったい、何が起きているのか。 高知県中部に住む 3 児の母 (39) は 10 月末、ニュースで採用試験合格者の大量辞退を知った。 「まずびっくり。 先生はそんなに不人気なのかと悲しかった。 先生の質を維持できるのかも心配になった。」と話す。 この女性は大学を出た 2007 年春、県内の小学校で臨時教員になった。 高知県では近年、小学校教員の採用試験で、合格者の 6 - 7 割に辞退される状況が続いてきました。 記事後半では 11 月に著書「教員不足 - 誰が子どもを支えるのか(岩波新書)」を出版した佐久間亜紀・慶応大学教授に対策を聞きました。 県外に会場、試験の前倒しでも採用足りず 当時の正規採用は県内で 16 人。 臨時教員を続けて正規採用を目指す人もいたが門戸は狭い。 全教科を教える仕事は大変で、2 年ほどで別の道に進んだが、我が子の小学校ではとてもよい先生に出会ったし、保護者も和気あいあいとしている。 「なぜこんなに辞退が多いのか」と思う。 全国の教育委員会は、もう何年も人材の争奪戦を繰り広げている。 高知県の場合、子どもが多かった1980 年前後に採用された小学校教員の大量退職が始まったのは 2010 年代後半。 採用を年 20 人前後から 100 人規模へ増やした。 高知だけでは受験者を確保できず、大阪にも試験会場を設けた。 全国的に 7 月が主流の 1 次試験を 6 月に前倒しし、他地域との併願もできるようにした。 しかし、130 人ずつの採用を計画した 22 年春は 107 人、23 年春は 94 人しか採用できなかった。 23 年度は 1 次試験を 6 月と 12 月の年 2 回に増やし、24 年春には 141 人を確保した。 一方で、年度途中で自己都合退職する人は増え、23 年度は 67 人に上った。 他自治体の現職教員を中途採用する教委は多く、その影響も指摘される。 再任用される退職者を除くと約 120 人が「純減」した。 教員を目指す学生はどうか。 県内で唯一、教育学部をもつ高知大学は、学生の 7 割が県外出身だ。 今春の教育学部の卒業生 130 人のうち 72 人が教職に進み、県内で教員になったのは 30 人。 今秋に合格を辞退した男子大学生 (22) は「高知は他県より 1 カ月試験が早く、3 年生でも筆記試験を受けられる。 大学で紹介され、就職活動のスタートとして挑戦した」と振り返る。 その後、進路に悩み、出身地の中国地方で高校教員を目指そうと決断したのは 4 年生の 8 月だった。 「教育学部生がみんな教員志望というわけではない。 4 年生の 6 月までの教育実習で、自分が教員に向いているか判断する人は多い」と話す。 高知県では試験の前倒しで毎年 6 - 7 割が辞退し、年 2 回の試験で事務量は増える。 一見効率が悪いようにみえるが、それでも「より多くの方に受験してもらい、一人でも多く高知県の教員として迎え入れたい」と県教委の担当者はいう。 今年は民間企業の採用活動などをふまえ、「6 月 16 日」を目安に 1 次試験を前倒しするよう文部科学省が全国に要請していた。 西日本は 6 月 15 - 16 日、関東は 7 月 7 日、東北は 7 月 13 日に 1 次試験をした教委が多かった。 文科省は、来年の試験をさらに 5 月 11 日を目安に前倒しするよう、全国に求めている。 今年は 6 月 1 日と 12 月 15 日に試験を設定した高知の「先取り作戦」は正念場だ。 (蜷川大介、asahi = 11-26-24)
教員採用試験、日程前倒しでも 8 割が受験者減 「効果ない」の声も 今年度の公立学校教員採用試験を昨年度より前倒し実施した機関の 85% で、受験者数(10 月時点)が昨年度より減ったことが分かった。 教員のなり手確保策として文部科学省が求めた日程前倒しだったが、受験者減に歯止めはかかっていないようだ。 朝日新聞が 10 月、採用試験をする 47 都道府県・20 政令指定市の教育委員会と、大阪府豊能地区教職員人事協議会の計 68 機関に取材。 今年度の 1 次試験の前倒しの有無や、今年度と昨年度の受験者数(昨年度は追加募集も含む)などを聞いた。 1 次試験の時期は、64 機関が 6 - 7 月、4 機関が 5 月だった。 受験者数、昨年度から 7 千人超減 昨年度より前倒ししていたのは東北、東海、関西、九州などの 40 機関。 うち 34 機関 (85.0%) で、受験者数が昨年度より減った。 不足を補う追加募集をしている機関も目立つが、大勢は変わらないとみられる。 全体をみても、68 機関のうち 58 機関 (85.3%) で昨年度より減っていた。 受験者数は計 10 万 7,236 人だった。 追加募集分があり単純比較はできないが、昨年度より 7,116 人少ない。 また、文科省の調査で過去最少の 11 万 0,.949 人 (1991 年度)も下回る水準だった。 教員採用試験の受験者数は近年、減少傾向が続く。 文科省の調査で分かる直近の 22 年度(12 万 1,132 人)は、10 年前より約 6 万人少なく、採用者数と受験者数を比べた採用倍率も 2.4 ポイント低い 3.4 倍で過去最低だった。 続く受験者減、長時間労働が背景に 受験者が減っているのは、ベテラン教員の大量退職に伴う近年の採用増で志願者層が薄くなったり、長時間勤務などが原因で敬遠する学生が増えたりしたことが背景にある。 一部の学校で学級担任が確保できないなど「教員不足」も生じている。 このため文科省は昨年 5 月、企業などの就職先決定前に受験してもらおうと、日程の段階的な前倒しを各機関に要請。 一般的な日程より 1 カ月早い 6 月 16 日を 1 次試験の「標準日」として各機関に示した。 従来、1 次試験は 7 月、2 次試験は 8 月、合格発表は 9- 10 月というのが一般的だった。 6 月の前倒し日程は、民間企業の多くが 6 月より前に内定を出していることや、国家公務員の試験が 3 月に前倒ししていることを踏まえた。 文科省は「増えた機関も」 自治体からは疑問上がる 文科省の担当者は、志願者層が薄くなっている中で「新卒は増えた機関もある」とし、前倒しに一定の効果があるとみる。 ただ、朝日新聞の取材に対し、前倒し 40 機関のうち 13 機関 (32.5%) は「効果がなかった」、「どちらかというと効果がなかった」と回答し、「効果があった」は 4 機関 (10.0%) だった。 23 機関 (57.5%) は「分析中」などだった。 (狩野浩平、本間ほのみ、asahi = 11-23-24) 品川区が朝の学童創設へ 無償の朝食支援も 来年度予算案で検討 東京都品川区の森沢恭子区長は 26 日、親が働くなどして朝の居場所がない子どものために、区内の区立小学校、義務教育学校の全 37 校で朝の学童の創設を検討していることを明らかにした。 そのうちの数校で朝食を無料で提供するモデル事業も検討するという。 都内で開かれた「朝日地球会議 2024」で、「ウェルビーイング(心身の健康や幸福)な社会の実現に向けて」と題した講演で明らかにした。 「来年度から朝の居場所作りと無償の朝食支援にチャレンジしたい」とした。 森沢区長は、子どもが小学校に進学すると、「保育園より登校時間が遅くなり、親の出勤に影響し仕事を続けにくくなる朝の小 1 の壁がある」と指摘。 親が出勤した後に、子どもが登校時間まで一人で過ごし、さらに朝食を食べない子どもも一定数いるとした。 森沢区長は、区内在住の大学生に対して、所得制限がない給付型の奨学金制度の創設も検討することを表明した。 対象は 100 人規模で、授業料の一部を給付する仕組みを考えているという。 いずれも来年度予算案の編成で盛り込む方針だ。 区では、区立小中学校の学校給食費無償化のほか、今年度から学用品の無償化などを独自に実施している。 森沢区長は取材に「親の経済状況や生まれた環境によらず、地域社会が支えていくことは重要だ。 本来は国がやっていくべきだが、まずは品川区から第一歩を踏み出していきたい」と話した。 (野田枝里子、asahi = 10-26-24) 東京都の教員採用倍率、小学校で 1.2 倍 制度見直しも最低水準続く 東京都教育委員会による今年度の教員採用試験で、小学校の受験倍率が 1.2 倍だったことが分かった。 小中高、特別支援学校などを合わせた全体では 1.7 倍で、いずれも過去最低だった前年度をわずかに上回ったものの、過去 2 番目に低い。 依然として、なり手不足の厳しい状況が続いている。 都教委が 9 月 30 日発表した。 全体の受験者数は 8,570 人(前年度比 622 人増)で、4,999 人(同 73 人増)が合格した。 校種別の倍率は、国語や数学など中学高校共通は 2.0 倍、特別支援学校は 1.3 倍など。 なり手不足が特に深刻な小学校では 2,441 人が受験し、2,118 人が合格した。 倍率は 3 年ぶりに増加に転じたが、都教委選考課の担当者は「引き続き厳しい状況にある」と話す。 選考制度見直し → 応募者増 多様な人材を掘り起こそうと、都は選考制度の見直しを進めている。 今年度は、一定のキャリアを積んだ教員経験者を最初から主任教諭として任用する「キャリア採用」を新設し、165 人が受験、22 人が合格した。 一部科目を大学 3 年生から受験できる「前倒し選考」では、991 人が合格した。 1 次選考を 3 年生でも受験できるようにしたもので、初めて導入した昨年度は 1,829 人が通過。 このうち 1,468 人が今年度、残りの試験に応募し、1,362 人が実際に受験したという。 都は「前倒し選考に一定のニーズがあり(教員確保の)成果につながっている」とする。 このほか、教員免許なしで受験できる「社会人選考」(受験者 173 人、合格者 122 人)と、教員経験者が 1 次選考を免除される「カムバック採用(受験者 124 人、合格者 95 人)」のいずれも、昨年度から受験者が増えた。 担当者は「多様な層から人材を選抜する取り組みを地道に続けたい」としている。 都は 20 日、教員の働き方などを伝える採用セミナー「TOKYO 教育 Festa!」を渋谷区内で行う。 詳細や申し込みは、都のホームページから。 (太田原奈都乃、asahi = 10-1-24) 品川区、特別支援学校の補助教材費を無償化 都内初 区立小中に続き 東京都品川区が、区内在住で特別支援学校に通う児童・生徒の補助教材費を無償化することが分かった。 区は今年度の当初予算で区立小中学校の補助教材費を無償化していて、さらに対象を広げる。 区によると、対象は区内在住で公立、私立問わず特別支援学校に通う児童・生徒約 250 人。 補助教材費は個人ごとに異なるため、保護者に対して相当分を支給する形にする。 今年 12 月 - 来年 1 月に申し込みを受け付け、来年 3 月ごろに支給する見込み。補正予算案に約550万円計上する方針という。 区は今年度の当初予算で、事業の「無駄」から財源を捻出し、人々の不安を解消して幸せを感じられる施策を盛り込んだ「ウェルビーイング予算」を掲げた。 その一つが、区立小中学校の「学用品」の無償化で、絵の具や習字道具、ドリルなど教科書以外の補助教材費を所得制限なしで無償化していた。 (野田枝里子、asahi = 9-11-24) 東京都、全公立小中学校の給食費「完全無償化」目指し支援拡充 … 「財政的に厳しい」の声を受け 東京都は公立小中学校の給食費について、減額や無償化に取り組む市町村への財政支援を拡充する方針を固めた。 都の支援額を増やすことで市町村の取り組みをさらに後押しし、都内全ての自治体で学校給食の完全無償化を実現させたい考えだ。 給食費の支援拡充は、7 月の知事選で小池知事が公約に掲げていた。 都は今月開会する都議会定例会に、関連費を盛り込んだ補正予算案を提出する。 子育て世帯の負担を軽減するため、都は今年度、区市町村が給食費の減額や無償化に取り組む場合、区市町村が負担するコストの半額を都が補助する制度を始めた。 都の制度もあり、9 月 1 日現在で全 23 区が完全無償化を実現し、39 ある市町村でも 27 市町村が完全無償化に踏み切った。 一方、11 市町は「第 2 子以降のみ」などと条件を付けた無償化や、物価高騰分を支援する形の減額を行い、残る 1 市は未実施のままだ。 財政規模の大小が無償化するかどうかの判断に影響しているとみられ、物価高騰分のみを支援している東村山市の担当者は取材に「できれば完全無償化したいが、今の補助額では財政的に厳しい」と明かす。 完全無償化に踏み切った自治体でも、財政負担が大きく他の事業へのしわ寄せを懸念する声が出ている。 こうした状況を受け、都は補助の拡充を決めた。 都関係者によると、都の補助割合を現在よりも増やし、市町村が負担するコストの 8 分の 7 を都が補助する方向で調整している。 追加の補助は、都が市町村に振興目的で交付している「市町村総合交付金」を増額する形で支給するという。 学校給食に関する財政支援を巡っては、都市長会が 7 月末の都への来年度予算要望で、現行制度の拡充を求めていた。 都議会の自民党や都民ファーストの会、公明党も要望していた。 物価高騰で家計負担が大きくなっていることもあり、都は早期の実施が必要だと判断した。 (yomiuri = 9-6-24) 学童職員が全員退職 … 不安で預けられない 変わる運営、行政の責任は 「子どもを安心して預けられない ――。」 4 月に連載した「学童保育はいま」に対し、たくさんの反響が寄せられました。 放課後児童クラブ(学童保育)の現場では、何が起きているのでしょうか。 読者の声をもとに取材しました。 「春には、今いる職員の大半が辞めます。」 今年 2 月。 関西地方の町にある学童保育に子どもを通わせる 30 代の女性は、職員との面談で聞かされて驚いた。 それまで町が担っていたこの学童保育の運営は、4 月から民間企業に委託されることになり、運営者の変更に伴って職員も変わるという。 実際に 4 月になると、もといた職員 5 人が引き継ぎに残ったほかは、全員が辞めた。 5 月には引き継ぎの職員も退職し、新しい職員だけになった。 女性は「新年度になってから明らかに職員が足りず、子どもが管理されているよう。 子どもから、部屋を出てトイレに行っただけで怒られることもあると聞いた。」と語る。 「子どもを安全にお預かりすることが不可能。(元職員)」 別の 40 代の母親は「日雇いバイトを募るサイトに求人が出ているのを見て不安になった」と語る。 旧体制の職員がいなくなった 5 月以降、学童保育には行かせないようにしているという。 町営の時から勤めていた元職員の 50 代女性によると、運営者が変わるにあたって職員も移籍するよう説得されたが、雇用形態が示されないなどして不信感を抱き、全員が辞めることになったという。 女性は新年度に入っても引き継ぎのために残ったが、職員は各地からかき集められている状態で、「午前 7 時から午後 7 時というむちゃなシフトを示された」という。 女性は「人が足りない上に専門性のない人も多く、子どもを安全にお預かりすることが不可能と感じた。」と話す。 6 月には、町内の学童保育に子どもを通わせる保護者らが署名した請願が町議会に提出され、採択された。 請願では「子どもたちが安心して通うことができず、保護者も安心して預けることができない状況が見受けられる」とし、町に改善を求めた。 増える民間委託 行政が担うべき役割は 学童保育の需要が急増する中で、近年、行政が民間企業に運営を委託するケースが増えている。 全国学童保育連絡協議会(全国連協)が昨年、全国の約 3 万 6 千クラスを対象に行った調査によると、運営主体は公営 27%、民間企業 15%、NPO 法人、社会福祉協議会、父母会や地域の役職者でつくる地域運営委員会がそれぞれ 10% ほどとなっている。 前年と比べると、公営や社会福祉協議会、地域運営委員会は減少しているのに対し、民間企業は増加傾向にあった。 全国連協の佐藤愛子事務局次長は、急増する学童保育の需要に自治体の対応が追いついておらず、アウトソーシングの流れもあって学童保育の民間委託が進んでいると指摘する。 一方で、民間企業が学童保育の事業で利益を追求するあまり、保育の質や職員の待遇が悪化することもあり得るという。 民間企業に限らず運営主体が変わる際には、子どもたちの「生活の場」の継続性が課題になるという。 安全管理を理由に外遊びが制限された、子どもたちが情緒不安定になったなどの相談も寄せられるという。佐藤さんは「学童保育の現場の人手不足や、職員の質の底上げという課題は民間企業だけの問題ではない」としたうえで、「どこが運営者であっても、市区町村の条例や国の『運営指針』に基づき、子どもたちにとって望ましい保育ができているかどうか、事業の実施主体である行政が責任を持って監督する必要がある」と指摘する。(松本千聖) 待機児童やスペース・人手の不足 … 課題は山積 放課後児童クラブ(学童保育)は、親が仕事で留守の小学生らを、放課後や長期休みに学校や児童館などで預かる事業だ。 1998 年施行の改正児童福祉法で法制化された。 ただし、事業の実施は自治体の努力義務。 自治体が設置して民間が運営する「公立民営」が全体の約 5 割(昨年 5 月現在)を占めている。 共働き家庭の増加を背景に、学童保育の利用希望者は都市部を中心に増え続けている。 こども家庭庁の調査によると全国の登録児童数は、5 月 1 日現在の速報値で約 151 万 5 千人と過去最多だった。待機児童数も約 1 万 8 千人にのぼり、子どもたちの居場所確保が社会問題になっている。 受け皿が足りず、希望しても学童保育に入れず保護者が仕事を続けられないケースもある。 重大事故も相次ぎ、狭い空間に多くの子どもが密集している施設もある。 学童保育と文部科学省所管の「放課後子供教室」を一体的に運営する施設などでは、この夏休み中も朝から夕方まで 100 人以上の児童を受け入れている施設もある。 職員の過酷な労働環境や人手不足も課題だ。 (平井恵美、asahi = 8-5-24) 教員の処遇改善案に意見 1 万 8 千件 「残業代なし」再検討求める声も 公立学校教員の人材確保に向けた給与増や働き方改革を議論してきた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会が 5 月に出した審議まとめについて、文科省は 26 日、パブリックコメントが約 1 万 8 千件集まったことを明らかにした。 審議まとめは、公立校教員に時間外勤務手当(残業代)を支給しない代わりに、一律に上乗せ支給している「教職調整額」を、現在の「基本給の 4%」から「10% 以上」に増額することなどが柱。 定年によるベテランの大量退職に伴い大量採用されている若手教員のサポート体制の充実や、教員の平均残業時間を将来的に月 20 時間程度にする目標も盛り込んでいる。 パブコメは 6 月 14 日 - 28 日の 2 週間で行われ、計 1 万 8,354 件集まった。 この 1 年に文科省が行い、電子政府の総合窓口に掲載しているパブコメで、最も多かった意見数は 3,575 件。 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の財産流出を抑止するために制定された特例法の運用基準案に対するものだった。 今回の意見数はそれを大きく上回った。 集まった意見の中には、審議まとめの内容を評価する意見もあった一方で、さらなる国の教育投資や、残業代支給が必要だとして、内容を再検討するよう求める意見もあった。 今後、パブコメを参考に最終的な答申案をまとめる。 (asahi = 7-26-24)
生成 AI どう使う? 授業でも校務でも 文科省ガイドライン作成へ 社会で「生成 AI (人工知能)」の活用が広がる中、学校の授業や校務で使う動きも、少しずつ広がってきている。 ハルシネーション(誤情報)や、権利侵害、情報漏洩など様々なリスクについて教員も子どもも学びつつ、活用法を探っている。 「原因と結果」を表す文には、どんな関係があるのか - -。 生成 AI を使った公開授業が、5 月上旬に行われた。 コニカミノルタが教育用に開発しているサービス「tomoLinks (トモリンクス)」の文章生成 AI 機能を使い、東京学芸大付属小金井小学校の 5 年生が、教育イベントの会場で授業にのぞんだ。 「アイスを食べました。 なぜなら暑かったからです。」という例文を鈴木秀樹教諭が入力すると、AI は「『暑かったから』という原因が先に来て、『アイスを食べました』という結果が後に来ています」と指摘。 逆にすると「結果が起きたことがもっとはっきりします」と助言した。 だが、児童からは疑問の声が。 「元の文は原因が後にある。」 「原因が後でも通じる。」 鈴木教諭はニヤリ。 生成 AI の回答が正しいとは限らないことに気づかせる授業をこれまでもしてきた。 ハルシネーションなど、生成 AI のリスクも理解した上で、様々な形で使いこなせる人に育てたいからだ。 個々の端末で、「なぜなら、〜から」の例文を作って入力し、AI にわかりやすさの判定を求める。 そこで終わらず、近くの児童と納得できるか、議論することで考えを深める。 生成 AI は「思考を深めるツール」、高性能のもの先生が活用を 鈴木教諭はこれまでも、生成 AI に国語の物語の要約文を 3 種類作らせ、なぜ生成 AI はそう要約したのかを考える授業も実践した。 生成 AI は思考を深めるためのツールで、中学、高校に行っても、正解を求めるだけで終わって欲しくないという願いがある。 ChatGPT (チャット GPT)や Microsoft Copilot (マイクロソフト コパイロット)などは、原則 13 歳未満は利用できず、成人までは保護者の許諾を得て使う。 そのため、コニカミノルタやみんなのコードなどの民間が、制限をかけた教育用生成 AI サービスを始めた。 有害単語や使用時間の制限、教員の履歴閲覧など、様々な機能がある。 だが、生成 AI は急速に進歩している。 鈴木教諭は「性能が高い最先端のものを教師が使って見せる授業も併せてしなければ、使える年齢になっても十分に正しく活用できないのでは」と話す。 文部科学省が指定した生成 AI パイロット校は、今年度は小中高で 66 校あり、それ以外でも活用は広がってきている。 群馬県教育委員会では、専門教員が少ない図画工作と美術で今秋にも生成 AI の活用を始める。 同省では、正式なガイドラインづくりの会議を立ち上げる予定だ。 同省学校デジタル化プロジェクトチームの寺島史朗リーダーは「こういう方法で活用して欲しいとはまだ言い切れないが、課題も活用法もよく吟味してから、今の暫定版のガイドラインを改定していきたい」としている。 先生も生成 AI 活用 「お便り」、授業の流れ … 校務で「生成 AI」を活用しようという動きも、鹿児島市や埼玉県久喜市など、あちこちの自治体で始まっている。 今年 3 月、神奈川県鎌倉市の小学校の体育館で、市内の教員ら約 60 人を対象に、生成 AI を活用した授業準備と校務に関する研修が行われた。 指導したのは、教育用オリジナル生成 AI を開発する「ライフイズテック」の講師らだ。 小テストや授業案を、生成 AI を用いて作る。 例えば、英語の小テスト作成で、使用したい単語と文法を入力すると、短時間で複数の問題や選択肢の候補ができる。 授業の流れのたたき台を作る時に活用し、授業案を作成することも有効だという。 参加した 30 代教員は、保護者への「お便り」でチャット GPT をすでに活用している。 「運動会の○○の種目で頑張りました」など、表現のパターンが画一化しがちだが、生成 AI を活用すると、様々な表現を提示してくれるので助かるという。 40 代の教員は「週案の文言や、予定表などの表作成作業が、生成 AI で簡単にできれば時間短縮になる」と話す。 同市の高橋洋平教育長は「良い活用例をシェアして広げたい。 ベテランの先生の指導力と、若手の生成 AI などの DX 活用で互いに補いあう関係ができたらと思う」と話す。 ライフイズテックの讃井康智取締役は「AI 活用が前提となる社会で生きていく子たちを育てるのに、先生たちが活用経験がないわけにもいかない。 働き方改革も意識して使ってもらいたい。」 今年 8 月に東京・大阪で開催予定の「教員向け生成 AI 活用体験サマーキャンプ」には、すでに全国から 150 人超の応募がある。 文科省の昨秋の調査では、同省のガイドライン(暫定版)に基づいて生成 AI を校務で活用している小中学校は、「一部の教職員が活用している」が約 23%、「ほぼ全員」が 0.3% で、「全く活用していない」が 76.8% だった。 同省は、25 年度には全国の学校の約半数が、校務で生成 AI を活用する目標を立てている。 (編集委員・宮坂麻子、asahi = 7-14-24) |