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トランプ関税、当面維持へ 米控訴裁が差し止め命令を「一時停止」 米連邦控訴裁は 29 日、「トランプ関税」の主要部分を違法として差し止めを命じた下級審の決定について、一時的に効力を止める命令を出した。 決定を不服として控訴したトランプ政権側の求めに応じた。 問題とされた関税は、少なくとも控訴審が続く間は継続する見通しとなった。 米国際貿易裁判所は 28 日、ほぼ全世界に課した「相互関税」などトランプ関税の主要部分について、違法で無効だと判示。 政権側に、関税措置を取り消す行政命令を 10 日以内に出すよう命じた。 これに対して政権側は即日控訴。 貿易裁の決定は「即時かつ回復不能な損害」につながると主張し、控訴裁に一時的な停止を求めた。 控訴裁が 29 日に政権側の要求を認めたのは、あくまで審理時間を確保するためのもので、貿易裁の決定の中身を評価したわけではない。 トランプ関税の法的根拠の正当性は改めて審理される。 トランプ氏は 29 日、自身の SNS に「米国にこれほど重大な損害を与える可能性のある判断を下した理由は何なのか」などと投稿し、貿易裁の判断を強く批判した。 政権側は、関税の正当性が控訴審で認められなければ、最高裁まで争う構えだ。 一方で関税措置を継続するため、貿易裁が問題視した法的根拠とは別の根拠を検討する可能性を示す政権幹部もいる。 ホワイトハウスのレビット報道官は 29 日の記者会見で、日本など主要貿易相手と続けている関税交渉については、これまで通り継続する考えを示した。 交渉を担う政権の閣僚らは、「米国は交渉のテーブルにつき続けている」と相手方に伝えているという。 30 日にベッセント財務長官らと 4 回目の関税協議に臨む赤沢亮正経済再生相は 29 日、ワシントンの空港で記者団に対して、「(米国は)三審制の国で、現時点で何か確定的な司法判断が下されたわけではない」と述べ、問題視しない考えをにじませた。 貿易裁は 28 日、トランプ政権が中国などにかけた「国別関税」と、ほぼ全ての国・地域が対象の「相互関税」について、違法で無効だと断じた。 政権に対しては、10 日以内に関税措置を撤回する行政命令を出すよう命じた。 (asahi = 5-30-25) ◇ ◇ ◇ トランプ関税「違法」と判断 米裁判所、政権側に停止求める トランプ米大統領が導入した対中関税や「相互関税」などについて、米国際貿易裁判所は 28 日、違法だとして差し止める判断を示した。 米政権側に 10 日以内に関税を止めるための行政命令を出すよう求めている。 ロイター通信によると、政権側は控訴した。 今回、裁判所が違法だと判断したのは、合成麻薬問題などを理由にした中国、メキシコ、カナダへの関税措置と、ほぼ全ての国・地域が対象の相互関税と呼ばれる新関税だ。 関税の打撃を受ける中小企業などが提訴していた。 トランプ氏がこれらの関税発動の根拠としたのが、国際緊急経済権限法 (IEEPA) だ。 同法上の非常事態を宣言した場合、大統領に多様な経済取引を規制する広範な権限を与えるものだ。 だが裁判所は一連の関税措置が、IEEPA が大統領に与えた権限を越えるものだと判断した。 このため、トランプ氏による一連の関税措置の発動命令は取り消され、「その効力は永遠に差し止められる」とした。 米メディアによると、ホワイトハウスは同日、「国家緊急事態を適切に解決する方法は、選挙で選ばれていない裁判官が決めるべきではない」などと述べて、裁判所を批判した。 トランプ氏が「この危機に対処するため、行政権のあらゆる手段」を使うとも表明しており、ロイターはすでに政権が控訴したと報じた。 米メディアは最終的な結論は最高裁までもつれるとの見方を伝えている。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 5-29-25) トランプ氏「EU に関税 50%」案 来月 1 日から導入と SNS で言及 トランプ米大統領は 23 日、自身の SNS に「6 月 1 日から欧州連合 (EU) に対し、50% の関税を即時導入することを提案する」と投稿した。 EU にすでにかけている関税との関係は不明だ。 トランプ氏は、EU との関税をめぐる協議が進んでいないともつづっており、協議を有利に進めるための交渉戦術とみられる。 トランプ氏は投稿で EU について、「強力な貿易障壁、付加価値税 (VAT)、不当な企業罰則、非関税障壁、通貨操作、米国企業に対する不公正で根拠のない訴訟」などを羅列して批判した。 その上で、米国が EU に年 2.5 億ドルの貿易赤字を計上しており、「この数字は絶対に受け入れられない」とした。 米国は EU と関税をめぐる協議を進めているが、トランプ氏は「らちがあかない」と投稿し、いらだちを示した。 トランプ氏が投稿した「50%」の関税の位置づけは不明だ。 米国は EU に対して、相互関税として 20% (このうち 10% は一時停止中)を課している。 新たな 50% という税率が、相互関税を含んでいるのか、新たに上乗せされるのかなどは分からない。 .英紙フィナンシャル・タイムズは、米国が関税交渉の中で、EU が米国製品にかけている関税の一方的な引き下げを要求していると報じている。 トランプ氏の今回の投稿は、EU に対して交渉上の圧力をかけるものといえそうだ。 米国はこれまでに、英国や中国と関税協議で一定の合意に達している。 22 日には石破茂首相とも電話協議をして、関税をめぐって議論した。 (カナダ東部モントリオール・榊原謙、asahi = 5-23-25) NY 株価 800 ドル超急落 米国債・ドルも下落 長期金利上昇で ニューヨーク株式市場では、アメリカの長期金利が上昇したことなどを受けて売り注文が広がり、株価は 800 ドルあまり急落して取引を終えました。 21 日に行われたアメリカの 20 年債の入札が不調だったことをきっかけに長期金利が上昇したことを受けて、ニューヨーク株式市場では売り注文が広がりました。 先週末、大手格付け会社のムーディーズが、連邦政府の財政赤字の拡大懸念などから、アメリカの格付けを最上級から一段階引き下げていて、アメリカ国債の入札に敏感になっていた市場に動揺が広がった形です。 ダウ平均株価は前の日に比べて 816 ドル 80 セント急落し、4 万 1,860 ドル 44 セントで取引を終えました。 また、外国為替市場では、複数の主要通貨に対してドルが下落。 アメリカの株式、債券、そして通貨がそろって下落しました。 (TBS = 5-22-25) 最上位格付けすべて失った米国債 対立する 2 大政党「共犯」原因か 大手格付け会社ムーディーズ・レーティングスは 16 日、米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に 1 段階引き下げた。 悪化が続く米国財政の改善が今後も見込めないと判断した。 これにより、ムーディーズを含む 3 大格付け会社すべてで米国は「最上位」の格付けを失った。 格付け会社は、各国が借金の証文として発行する国債について、いつでも換金に応じられるだけの財政的な余裕があるかを調べて、その国の信用度を測る機関だ。 米国は長年、最上位格付けを維持してきた。 ムーディーズが今回、米国格付けを引き下げたのは、米連邦財政の改善が過去 10 年超にわたってみられなかったからだ。 米国では、巨額の「トランプ減税」を実行した共和党のトランプ第 1 次政権 (2017 - 21 年)と、コロナ禍後に空前の財政支出をした民主党のバイデン政権(21 - 2 5年)が計8年続いた。 両政権とも財政再建に熱心だったとは到底言えない。 財政悪化は、激しく対立する両党の「共犯」関係の結果だったとも言える。 米紙ニューヨーク・タイムズは今回のムーディーズの決定を、「ワシントンに対する政治・経済的な不信任決議」と報じた。 格付けの引き下げ理由は他にもある。 現政権は、今年末に期限が切れるトランプ減税を延長する構えで、実現すれば今後 10 年で基礎的財政収支の赤字は約 4 兆ドル(約 580 兆円)増えるとムーディーズは見込む。 米政府債務は国内総生産 (GDP) 比で、24 年の 98% から 35 には約 134% まで跳ね上がるという。 背景には、トランプ減税の延長は「現状維持」にとどまるため、税収が伸びない問題がある。 さらに、社会保障費などの「義務的経費」の抑制も進みそうにない。 借金の増大で、利払い費も増えるとはじいた。 大手格付け会社のうち、フィッチ・レーティングスは 23 年に、S & P グローバル・レーティングは 11 年に米国債を最上位から格下げしている。 いずれも、米政府の資金繰りなどをめぐる米財政への懸念の高まりが引き金だった。 (ニューヨーク・杉山歩、ワシントン・榊原謙、asahi 5-17-25) 米大統領令が裏目に出る可能性も、大手製薬会社が対米投資見直し警告 スイスの製薬大手ロシュ・ホールディングは、トランプ米大統領が署名した処方薬価格引き下げを命じる大統領令が実行に移されれば、米投資計画を見直す必要が生じるとの見解を示した。 同社は先月、500 億ドル(約 7 兆 3,200 億円)を米国に投じ 1 万 2,000 人を超える雇用を創出する計画を明らかにした。 この計画を発表したのは、トランプ氏が輸入医薬品に関税をかけると脅した後だった。 トランプ氏は 12 日の大統領令で、製薬各社に自主的な値下げを求め、応じなければ規制措置を講じる可能性を示した。 薬価引き下げ措置を製薬会社は懸念していたが、大統領令は予想よりはるかに手ぬるい内容だった。 バーゼルに本社を置くロシュの広報担当者は「大統領令が実行された場合、米国で発表した大型投資の妥当性が問われることになる」との声明を電子メールで発表した。 「世界的な製薬・医療エコシステムの中心としての米国の地位が損なわれ、米国経済の成長を抑制し、雇用の喪失につながりかねない」と警告した。 米国の消費者は世界で最も高い薬価を支払っており、これが医薬品業界のイノベーションを促進し成長の原動力となってきた。 米政府は 2022 年にバイデン前大統領の下で成立した「インフレ抑制法」に基づき、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)で使用される高額医薬品の一部について、メーカーと価格を交渉しており、今後も毎年、対象薬品が追加される予定。 ロシュが米投資を見直す可能性があることについては、スイスの新聞 NZZ が先に報じていた。 (Levin Stamm、Bloomberg = 5-15-25) トランプ政権、航空機・部品に追加関税? 調査を開始、日本に影響も トランプ米政権は 9 日、輸入する航空機や関連部品に、追加関税をかけるべきかどうかの調査に入ったことを明らかにした。 実際に関税が発動されれば、日本が競争力を持つ航空産業に悪影響が及ぶ可能性がある。 米商務省が 9 日に公開した文書で表明した。 航空機やジェットエンジン、それらの部品について、どのくらい輸入に頼っているかを調べる。 また、供給が特定の海外企業に偏っていないかや、外国政府の補助金の後押しを受けていないかもチェックする。 調査によって、航空分野での輸入が米国の関連産業に打撃を与え、国家安全保障上の脅威になっていると認められれば、追加関税の対象になる可能性がある。 調査期間は 270 日間。 日本企業は米ボーイング機向けの主要部品供給などで確固たる地位を築くなど、航空分野の部品供給網で国際的に存在感がある。 対米輸出に追加関税が課されれば打撃となりかねない。 日本政府は現在、トランプ政権が日本にも課した「相互関税」や、自動車関税、鉄鋼・アルミニウム関税の見直しを求めて交渉中だ。 航空分野への追加関税が今後加われば、さらなる交渉が必要になる可能性もある。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 5-10-25) 米英の貿易合意「手頃な成果に過ぎない」 米欧の報道、冷静な見方も トランプ米大統領が発表した英国との貿易合意をめぐり、米欧のメディアは市場が肯定的に受け止めたと報じた。 ただ、米国にとって英国は貿易黒字を計上していて比較的合意しやすい相手国だった。 今回の合意は「手頃な成果」に過ぎないとする冷静な見方も出ている。 ロイター通信などによると、米大企業を幅広く網羅する株価指数「S & P500」が 0.58% 上昇して 8 日の取引を終えたほか、9 日には豪州や台湾の市場でも主要な株価指数が 0.49 - 1.81% 上がった。 ロイターは「米英の貿易合意が、ほかの国との関税交渉の進展に対する期待を高めた」としている。 ドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレは、「トランプ氏が(高関税政策によって)自ら引き起こした貿易戦争を緩和できるかどうか、(各国の)投資家は注視している」と指摘。 今回の合意が、投資家を安心させるための一歩になりうるとした。 また、英国が 2020 年に欧州連合 (EU) から離脱して以来、各国との貿易拡大を目指してきたことも背景事情として挙げている。 「明日にも破棄が可能」 一方、英 BBC などによると、今回は合意に達したと発表されただけで、正式な協定が署名されたわけではない。 詳細は今後数週間かけて詰めるとされる。 「(トランプ)大統領が望めば、明日にも破棄することが可能(英紙ガーディアン)」と危ぶむ報道もある。 米国から 145% の追加関税を課されている中国などとは対照的に、英国は米国にとって貿易黒字国で、米国からの相互関税も最低税率の 10% にとどまっている。 米紙ニューヨーク・タイムズは、「多くの国との(関税をめぐる)対立が深刻化する中、トランプ政権にとって英国との合意は手頃な成果だとみられていた」と論じた。 合意できた国が、比較的交渉しやすい英国のみにとどまっていることについて、「次なる(他の国との)取引がいかに難しいかを示す悲観的なシグナル」だとする専門家のコメントにも触れている。 (佐藤達弥、asahi = 5-9-25) ◇ ◇ ◇ トランプ氏、関税協議「初合意は英国」 車に低関税枠? 日本にも影響 各国と関税をめぐる協議を続けている米国のトランプ大統領は 8 日朝、英国との間で包括的な合意に達したと自身の SNS で明らかにした。 同日午前 10 時(日本時間 8 日午後 11 時)に、ホワイトハウスの執務室で記者会見を開く。 対日本を含む一連の関税協議のうち、最初の合意案件となる。 トランプ氏は「英国との合意は、今後何年にもわたる米英関係を確固たるものにする、完全かつ包括的なものだ。 長い歴史と忠誠を共にする英国を最初の発表国とすることは、大変光栄だ。」と投稿。 「他の多くの交渉中の案件もこれに続く」とした。 トランプ氏は「相互関税」と称する新関税で、ほぼ全ての国・地域に関税を課した。 また日本や英国などの自動車や鉄鋼の輸出国には、それぞれ別の関税を課している。 各国・地域は、関税措置の減免を求め、トランプ政権と協議を始めている。 トランプ氏は前日 7 日の投稿で、今回の合意案件を「多くの中の第 1 弾だ!」と位置づけた。 ベッセント財務長官によると、米国は 18 の主要貿易相手のうち中国を除く 17 の貿易相手と関税協議を続けている。 今回の合意の発表が、一連の協議の最初の合意になる。 ただ、合意の詳細はまだ明らかになっていない。 ニューヨーク・タイムズによると、英国は米国から輸入する自動車や農産物に対する関税の削減などを議論してきたという。 一方、英紙フィナンシャル・タイムズは 6 日、米国が、英国製の鉄鋼や自動車にかける 25% の関税について、低関税枠を設ける方向だと報じていた。 日本も、米国との関税協議のまっただ中だ。 今月 1 日に米ワシントンであった閣僚級の協議では、日本が特に重視する自動車にかかる関税について、米側は交渉の枠外との認識を示したとされる。 それだけに、米英合意が自動車分野での低関税枠を含んでいれば、日本はこれを「モデルケース」として、交渉の足がかりにする余地が生まれそうだ。 一方で、日本と英国では、対米貿易における立ち位置が全く異なることには注意がいる。 米国にとって、英国はそもそも貿易黒字を確保している相手だ。 相互関税も、ほぼ全世界にかけた一律の最低税率 10% のみが課されている。 米国の主要貿易赤字国で、上乗せ分を含めて 24% の相互関税を課した日本と比べれば、英国は比較的合意が得やすい相手だったとみられる。 一部報道では、今回の合意を経ても、英国は相互関税の一律 10% は免除されない方向だという。 日本は自動車関税はもちろん、相互関税の一律部分も含めて撤回を求める立場だ。 報道通りならば、相互関税をめぐっても難しい交渉が続きそうだ。 米政権は現在、日英に加え、インドや韓国などアジア諸国と活発に交渉を進めている。 ブルームバーグ通信は、インドが米国に対して、鉄鋼や自動車部品、医薬品について、一定量までお互いに関税をゼロにする案を提示したと報じた。 韓国も対米投資の拡大などを米側に提示している模様だ。 ただ交渉は、6 月にある大統領選の行方次第という面も大きい。 日本は今月中旬以降に再び閣僚級の会合を開く。 交渉役の赤沢亮正経済再生相は、「自動車、自動車部品、鉄鋼・アルミニウム、相互関税を含め、すべて遺憾だ。 一連の関税措置をすべて見直してもらいたい。 そこの部分がパッケージの中に入らないと合意ができないと思っている。」と述べる。 米側がこれをのむのか、先行きは見通せない。 米国が計 145% の追加関税を課した中国に対しても、今月 10、11 日にスイスで、米中高官による初協議が開かれることが決まっている。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 5-8-25) EU、米に報復関税検討 航空機など 15 兆円分「交渉決裂なら発動」 欧州連合 (EU) の行政を担う欧州委員会は 8 日、米国との関税交渉が決裂した場合、航空機など 950 億ユーロ(約 15.5 兆円)相当の米国産品への報復関税を検討していると明らかにした。 EU は、米国が「相互関税」の税率上乗せを停止している 90 日間に交渉での解決を求めているが、決裂すれば強硬策に出る構えだ。 相互関税の一律 19% 分と自動車関税に対しての報復措置。 対象品目リストは 218 ページにのぼり、米ボーイングなどの航空機や自動車・同部品、米国が反発するバーボンを含む。 リストをもとに業界団体などに意見を求め、準備を進める。 また EU は米国に対し、44 億ユーロ(約 7,200 億円)相当の鉄鋼スクラップや化学製品の輸出制限も検討する。 今後数週間のうちに、相互関税と自動車関税については世界貿易機関 (WTO) に提訴するという。 切り札の「ゼロ関税」、簡単ではない交渉 EU は 4 月 9 日、米国の鉄・アルミ関税に対する報復関税案を承認。 大豆やオートバイなど 200 億ユーロ(約 3.3 兆円)余りの米国産品に関税をかける予定だった。 ただ、その直後、トランプ米大統領が上乗せ税率の 90 日間停止を発表。 EU のフォンデアライエン欧州委員長はその時間を「交渉に充てたい」とし、土壇場で発動を先送りしたが、米欧の交渉は難航していた。 EU は、自動車を含む工業製品の関税を双方がゼロにする「ゼロ対ゼロ関税」を切り札に交渉を進める。 しかし、貿易と経済安全保障の担当大臣であるシェフチョビッチ欧州委員は 6 日、米国の「不当な圧力」を受けているとし、「簡単ではない」と吐露。 米国が検討中の医薬品や半導体への関税が実際に発動されれば、EU の対米輸出品の 97% にあたる約 5,490 億ユーロ(約 089 兆円)が関税を課される対象となると訴えていた。 一方で、トランプ氏は 8 日、英国との間で包括的な合意に達したと自身の SNS で明らかにした。 対日本を含む一連の関税協議のうち、最初の合意案件となる。 トランプ氏は「英国との合意は、今後何年にもわたる米英関係を確固たるものにする、完全かつ包括的なものだ。 長い歴史と忠誠を共にする英国を最初の発表国とすることは、大変光栄だ。」と投稿。 「他の多くの交渉中の案件もこれに続く」とした。 (ブリュッセル・牛尾梓、ワシントン・榊原謙、asahi = 5-8-25) カナダ首相「売り物ではない」 トランプ氏の「51 番目の州」に反論 カナダのカーニー首相が 6 日、就任後初めてトランプ米大統領と対面で会談した。 トランプ氏はカナダを「(米国の) 51 番目の州」などと呼び、カナダの主権を脅かすような姿勢を示してきたが、カーニー氏は公開された会談の冒頭で「(カナダは)売り物ではない」と落ち着いて反論した。 カーニー氏は 3 月に首相に就任。 年初までは野党保守党への政権交代が確実視されていたが、カナダ国内で強まったトランプ氏への反発も追い風に支持を広げた。 4 月 28 日の総選挙で勝利を収め、有権者の期待を背負ってトランプ氏との初会談に臨んだ。 会談の冒頭で、トランプ氏は今もカナダが「51 番目の州」になるべきだと信じているとの持論に触れた。 両国の国境について「何年も前に誰かが引いた人工的な線」、「(取り除けば)カナダにとっても非常にいいこと」などと述べた。 これに対しカーニー氏は「(トランプ氏が)不動産業の経験から知っているだろうが、決して売ってはならない場所がある」と強調。 「私は総選挙(の遊説)で、カナダという国土の所有者(国民)に会った。 今もこれからも、決して売られることはない。」と続けた。 これに対してトランプ氏も激しく反論することはなかったが、「『決してない』ことは決してない」と切り返した。 トランプ氏は、今回の会談でカナダに対する高関税措置について考え方を変えることがあるかを問われると「ない」と否定した。 米国は経済や安全保障上の関係が極めて密接な同盟国カナダに対し、鉄鋼・アルミニウム関税や、自動車関税も発動。 カナダも対抗措置として、米国製自動車など一部の製品に 25% の関税をかけている。 会談後の記者会見で、カーニー氏は、トランプ氏と「主権があり、独立した国家のリーダーとして会った」と強調。 トランプ氏に「51番目の州」と呼ばないよう求めたと明かしたが、トランプ氏がどう答えたかについては、明確にしなかった。 (ニューヨーク・杉山歩、asahi = 5-7-25) トランプ氏、グリーンランド領有に武力行使排除せず トランプ米大統領は 4 日、資源に恵まれたデンマーク自治領グリーンランドについて国家安全保障上必要だとし、同国を手に入れるために軍事力の行使を検討する可能性があると述べた。 トランプ氏は NBC ニュースのインタビューで、「そうするとは言わないが、あらゆる可能性を排除しない」といい、「我々はグリーンランドを強く必要としている」、「グリーンランドに住む人々はごくわずかで、我々は彼らに配慮し、大切にするつもりだ。 しかし、国家安全保障上、それは必要だ。」と語った。 トランプ氏が示すグリーンランド領有への意欲は、同国の将来の安全保障に一石を投じている。 北極圏では米国、ロシア、中国が影響力を争っている。 トランプ氏は、米国が武力行使や経済的圧力によってグリーンランドを奪取することに何度も関心を示しているが、デンマークとグリーンランドはこの考えを断固として拒否している。 一方、トランプ氏は、カナダを米国の 51 番目の州にするとも繰り返し発言してきたが、カナダの併合のために軍事力を行使する可能性は「極めて低い」と述べた。 カナダ国内での反トランプ感情の高まりもあり、総選挙に勝利したカーニー首相は、6 日にワシントンでトランプ氏と面会する予定。 (CNN = 5-5-25) トランプ氏、外国製作の映画に「100% の関税」導入と SNS に投稿 トランプ米大統領は 4 日、自身の SNS に、外国で作られた映画に 100% の関税をかける考えを投稿した。 米商務省や通商代表部 (USTR) に、必要な措置を講じるよう指示するという。 トランプ氏は投稿で「米国の映画産業は急速に衰退している」との考えを示した。 映画製作者やスタジオが、他国に引き抜かれ、ハリウッドや米国の他の地域が壊滅的な打撃を受けていると主張。 「他国による協調的な試みで、国家安全保障上の脅威にあたる」としている。 ただし、トランプ氏は投稿の中で、具体的な課税の対象や方法については明らかにしなかった。 近年は、映画館に向けて、従来のフィルム配給ではなく、映画をデータのままデジタル配信する流れが強まっている。 映画の視聴方法も、米ネットフリックスに代表される配信サービスの台頭によって大きく変化している。 知的財産 (IP) としての色合いが濃いコンテンツへの関税措置として、どのような仕組みを想定しているかは現時点では不透明だ。 (ニューヨーク・杉山歩、asahi = 5-5-25) 関税が直撃する NY のチャイナタウンは今 お菓子も春雨も値上げした トランプ米政権が中国に累計 145% の追加関税を課してから、1 カ月近くが経った。 大幅な関税の引き上げは、身の回りのものを中国製に頼る米国の人々の生活にも不安を与えている。 ニューヨークのチャイナタウンを歩くと、その影響がすでに見えてきた。 ニューヨーク中心部・マンハッタンの南に位置するチャイナタウン。 地下鉄の駅から出るとすぐに、漢字と英語の看板が目につく。 小さな飲食店や雑貨店がひしめく一帯には約 5 万人が住み、平日でも地元の買い物客や観光客でにぎわっている。 一角にある「スン・ビン・グローサリー」に入った。 中国製の食材を中心に扱うアジア系の食料品店で、菓子や乾物が所狭しと並ぶ。 店を営むジャスミン・バイさん (60) は、「145% の関税なんて、考えもしなかった」と苦笑する。 相互関税発動後の 4 月 15 日、多くの商品の値段を引き上げた。 砂糖菓子は 1.57 ドル(約 220 円)から 1.99 ドル(約 280 円)に、スープなどに使う乾燥湯葉は 6.99 ドルから 7.99 ドルに、春雨は 3.49 ドルから 4.49 ドルに上げた。 一気に 30% 以上値上げした製品もある。 トランプ政権は、相互関税の前にも 20% の追加関税を課していたが、「それほど気にならなかった」という。 ただ今回は、輸入業者から値上げを告げられ、その分を価格転嫁したという。 春休みで観光客が増え、駆け込み需要もあってか、客足は鈍っていない。 心配なのはこれからだ。 「毎日使う物だから、30 セント上げても影響する。 客は二つ買っていたものを、一つに減らしていくんじゃないか。」 イエール大予算研究所の推計によると、トランプ関税の影響で、商品価格は短期的に 3.0% 上昇する。 革製品が 87.1%、洋服は 64.9%、電化製品は 46.4%、ゴム・プラスチック製品は 22.4% などと大幅に上昇する。 食べ物も 2.6% 上がるとしている。 ミシガン大学が 4 月に算定した「消費者が考える 1 年後のインフレ予想」は 6.5% で 1981 年以来の高水準だった。 チャイナタウンでは、145% 関税になる前に仕入れた在庫がまだあるため、本格的な値上げはまだ先との声もある。 身近なモノの値上がりに、懸念は高まる。 「トランプ大統領の考えは正しい。 でも …。」 日用品店を営むケン・リーさん (73) の店には、ひっきりなしに客が訪れていた。 店内には、中国から輸入したキッチン用品や掃除用品、家電などが天井近くまで積まれていた。 店の大半の商品価格は、今のところ据え置いている。 ケンさんは、トランプ大統領を支持しているという。 「彼の考えは正しいと思っている。 関税も、米国を守るには大切だ。」 ただ、広く一律にかけられる税率には戸惑いもあるようだ。 「日常的に使うものは、自動車やハイテク製品とは違う。 普通の人に、そんなにプレッシャーを与えないで欲しい。」 商品棚のつまようじを手に取りながら、そう話した。 (ニューヨーク・杉山歩、asahi = 5-4-25) 米、自動車部品 25% 関税発動 2 年の軽減措置、製造の国内回帰狙う トランプ米政権は 3 日、輸入される自動車部品に 25% の追加関税を発動した。 世界に供給網が広がる自動車の部品製造も、米国内に回帰させたい狙いだ。 メーカーの生産シフトを促すため、2 年間の関税軽減措置による猶予期間も設ける。 米政権はすでに 4 月 3 日に輸入完成車への 25% 追加関税を発動している。 今回は、エンジンやトランスミッション(変速機)、電子部品など幅広い自動車部品を対象に関税をかける。 「米国・メキシコ・カナダ協定 (USMCA)」の枠内での輸入品は除外される。 米国内の部品製造や調達を増やす狙いだが、メーカーが対応するまで、関税分のコスト増が米国内の自動車販売価格を押し上げる恐れがある。 このため、米国で組み立てて販売する自動車に使われる部品には、その自動車価格の15%分の免除枠を設ける軽減措置も用意した。 免除枠は 2 年目に 10% に縮まる。 米国に部品を持ち込む割合が多い日本の自動車や部品メーカーは対応を迫られる。 ただ、供給網の見直しには時間やコストがかかるため、各社とも見極めには慎重だ。 石破茂首相は 3 日、この関税発動について「極めて残念。 引き続き見直しを求めていく立場に変更はない。」と記者団に語った。 (asahi = 5-3-25) NY ダウ・S & P500 が 9 営業日続伸 雇用統計や米中関税交渉受け 2 日の米ニューヨーク株式市場で、主要企業でつくるダウ工業株平均は前日終値より 500 ドル超上昇し、トランプ米政権が 4 月 2 日に相互関税を発表して以来、1 カ月ぶりに 4 万 1,000 ドルを超えて取引を終えた。 2023 年 12 月以来、約 1 年 5 カ月ぶりの 9 営業日続伸となった。 米大企業を幅広く網羅する S & P500 指数も 9 営業日続伸した。 米 CNN によると、04 年以来約 20 年ぶりだという。 4 月の雇用統計の結果が市場予想を上回ったことや、米中間の関税を巡る協議の進展への期待が広がったことなどを受けて、買いが優勢となった。 ダウ平均の終値は、前日より564.47 ドル (1.39%) 高い、4 万 1,317.43 ドルだった。 S &P500 指数は、1.47% 上昇した。 中国商務省は 2 日、米国側が関税について交渉を求めて接触してきていることを認め、「評価を行っている」と明らかにした。 現在、米国は累計 145% の追加関税を中国に課し、中国も報復措置として 125% をかけている。 両国の対立が和らぐとの期待から、幅広い銘柄に買いが広がった。 (ニューヨーク・杉山歩、asahi = 5-3-25) ◇ ◇ ◇ 米 GDP が 0.3% 減、3 年ぶりマイナス成長 関税政策警戒し輸入増 米商務省が 30 日発表した 2025 年 1 - 3 月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)の速報値は、年率換算で前期比 0.3% 減だった。 トランプ米大統領の関税政策を警戒した「駆け込み輸入」が増え、2.4% 増だった前期(24 年 10 - 12 月期)から一転して、22 年 1 - 3 月期以来3年ぶりのマイナス成長となった。 統計 市場の事前予想(前期比 0.3% 増)も下回った。 GDP の約 7 割を占める個人消費は 1.8% 増。 4.0% 増と好調だった前期から伸びが縮んだ。 1 月の米南部での寒波が一部で消費を鈍らせた可能性があり、消費の基調が弱含んでいるかはなお見通せない。 米経済を支えてきた消費の停滞が今後鮮明になれば、米国の景気減速がはっきりしてくる。 (asahi = 4-30-25) ◇ ◇ ◇ NY ダウ一時 700 ドル超下落、4 万ドル割り込む … GDP の 3 年ぶりマイナス成長響く 【ニューヨーク = 小林泰裕】 4 月 30 日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価(30 種)は一時、前日の終値から 700 ドル超下落し、4 万ドルを割り込んだ。 30 日に発表された米国の 2025 年 1 - 3 月期の実質国内総生産 (GDP) が 3 年ぶりのマイナス成長となり、米国景気の先行きへの警戒感が強まった。 ネット通販大手アマゾン・ドット・コムや半導体大手エヌビディアなどの銘柄が売られている。 ダウ平均の 29 日の終値は 4 万 527.62 ドルで、6 営業日連続で値上がりしていた。 (yomiuri = 4-30-25) トランプ氏、自動車関税の影響緩和措置を検討か 米紙報道 米紙ウォールストリート・ジャーナル (WSJ) は 28 日、トランプ米大統領が自動車関税の影響を緩和する措置を検討していると報じた。 自動車関税がかけられた場合に、鉄鋼・アルミニウム関税などがかからないようにするという。 トランプ政権は 4 月 3 日に自動車関税を発動。 外国製の自動車に 25% の関税をかけた。 米国内では、自動車の価格が上昇して販売が減少するとの見方が強まり、販売業者やサプライヤーなどの業界団体が政権側に懸念を伝えていた。 WSJ などによると、5 月 3 日に発動予定のエンジンやトランスミッション(変速機)なども含む外国製自動車部品に対する関税の修正も検討されている。 トランプ氏は 4 月 29 日に自動車産業の集積地として知られるデトロイトで就任 100 日の集会を開く予定だ。 (asahi = 4-29-24) トランプ大統領の支持率 42% に急落、就任から 80 日で歴代最低を記録 ドナルド・トランプ米大統領の就任から約 80 日が経過し、支持率が 42% と歴代最低を記録した。 これは 2016 年の第 1 期トランプ政権の同時期の支持率を下回る数字だ。 最近の関税政策による経済的影響で有権者が離反したとの見方が示されている。 英国の週刊誌エコノミストは 16 日(現地時間)、世論調査に参加した米国人の 42% がトランプ大統領の国政運営を肯定的に評価していると報じた。 エコノミストと世論調査会社ユーガブは、13 - 15 日にかけて米国の成人 1,512 人を対象に世論調査を実施した。 この数字は、トランプ大統領が就任直後に同じ世論調査で記録した支持率から 14% 下落したものだ。 就任後最低の記録であり、否定的評価は 52% にも達した。 エコノミストは、この支持率の下落傾向が 2016 年の第 1 期トランプ政権よりも急激だと指摘した。 ユーガブの定期世論調査によると、第 1 期の支持率は就任後同期間で約 5% しか下落していなかったという。 今回のトランプ政権第 2 期では、発足時には肯定的評価が否定的評価を上回っていたが、就任約 50 日目頃から逆転した。 これは、近年米国で就任した歴代大統領と比較しても芳しくない結果だ。 2009 年と 2021 年にそれぞれ就任したバラク・オバマ前大統領とジョー・バイデン前大統領は、就任初期の約 100 日間は肯定的評価が否定的評価を上回っていたが、今回のトランプ政権ではすでにその比率が逆転している。 この世論調査結果についてエコノミストは、トランプ政権の最近の関税政策により株価が急落し、経済回復に対する有権者の信頼が失われたことを示唆していると分析した。 (竹内智子、江南タイムズ = 4-21-25) 米国防総省は「完全な崩壊状態」、ヘグセス長官は更迭も - 元報道官 米国防総省は第 2 次トランプ政権発足後の数カ月に職員を巡るトラブルや相次ぐ人事異動に見舞われ、「完全な崩壊状態」に陥っており、ヘグセス長官は更迭される可能性がある。 同省の報道官を最近辞任したジョン・ウリオット氏がこう警告した。 これに先立ち情報漏えい調査の過程で解雇されたと報じられた国防省高官 3 人が声明を発表。 自分たちが調査対象となっている理由や、調査が進行中であることさえ知らされていなかったと表明した。 ヘグセス米国防長官 (44) 氏は、親イラン武装組織フーシ派を攻撃する機密情報を通信アプリ「シグナル」で共有したとして既に調査を受けた。 チャットグループにはトランプ政権高官のほか、米誌アトランティックのジェフリー・ゴールドバーグ編集長も誤って招待されていた。 ゴールドバーグ氏はその後、この件を同誌で報じた。 ウリオット氏はニュースサイトのポリティコに 20 日掲載されたコラムで「トランプ大統領は、側近に責任を取らせるという点で高い実績がある」とした上で、「これを踏まえると、ヘグセス国防長官が現在の職にとどまるのは難しいだろう」と指摘した。 トランプ氏はこの件を巡りヘグセス長官や問題のグループチャットを立ち上げたウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任しなかった。 国防総省の監察総監は、上院の有力議員 2 人の要請を受けて、この件を調査中だ。 米紙ニューヨーク・タイムズ (NYT) は 20 日、ヘグセス長官がイエメンでの軍事攻撃に関する機密情報を、妻と兄弟を含むグループとシグナルの別のチャットで共有していたと報じた。 国防総省のパーネル報道官は X (旧ツイッター)に投稿した声明で、「シグナルのチャットに機密情報は一切含まれていなかった。 彼らが何通りもの切り口で報じようとも、それは変わらない」と表明。 NYT 紙などの情報源は同省を解雇された元職員に限られているとも指摘した。 ホワイトハウスに対し 20 日夜にコメントを求めたが、すぐに回答はなかった。 (Bloomberg = 4-21-25) トランプ政権、キャリア職員 5 万人の解雇を容易に 人事改革に波紋 トランプ米政権で、政策形成にかかわるキャリア官僚の解雇を容易にするための改革が本格的に動き出した。 業績の悪い職員を解雇して「実力主義」に変えるというのが政権の主張だが、トランプ大統領の意に沿わない職員が排除されるとの懸念も出ている。 米政府は 18 日、連邦政府の人事に「政策・キャリア職」という新たな分類を設ける方針を発表した。 これらの職員は「随意雇用」となり、職務怠慢などを理由にした解雇が容易になる。 職員全体の約 2% にあたる 5 万人ほどが対象になる見通しだ。 米国では通常、政権交代があれば政治任用された 4 千人ほどの職員が入れ替わる。 だがトランプ氏の改革案は、政権政党にかかわらず勤務してきた 5 万人規模のキャリア職員の交代を可能にする点で、これまでの慣例とは大きく異なる。 ホワイトハウスは「政策に影響を与える職員について、職務怠慢や不正、汚職、大統領の指示への反逆などの理由で迅速に解雇できるようになる」と説明した。 「腐敗した官僚一掃」の公約実現へ トランプ氏にとって、今回の改革は 1 期目の頃から目指してきた政策の一つだ。 「ディープステート(影の政府)」などと主張してそれらの解体を掲げ、「腐敗した官僚から政府を取り戻す」ことは選挙公約の柱でもあった。 背景にあるのは、解雇や懲戒処分の恐れが少ないことで、キャリア官僚の一部が大統領の方針に反する行動をしてきたという現状への不満だ。 トランプ氏はこの日の発表にあたり「連邦政府を『ビジネスのように』運営することが可能になる」と SNSに投稿した。 新たな人事区分はかつて「スケジュール F」と呼ばれ、2020 年にも第 1 次トランプ政権で示され反発を招いた経緯がある。 翌年にはバイデン政権によって撤回されたが、これを復活させるのが今回の改革案だ。 「異論封じ」につながるとの懸念も 改革案に対しては、政府内での異論封じにつながるとの懸念が出ている。 米連邦政府職員連盟はこの日、「有能な公務員を、政治的な取り巻きに置き換えようとするものだ」と反対する声明を出した。 すでに政府に対しては、人事改革を阻止するための訴訟も起こされている。 トランプ政権は、キャリア官僚について「大統領を個人的または政治的に支持する義務はない」とする一方で、「政権の政策を忠実に実行する義務がある」と説明している。 新たな人事改革は今後、正式に大統領令を出して実施に移されることになるという。 (ワシントン・高野遼、asahi = 4-19-25) |