トランプ大統領の支持率急落を示す最近の世論調査 : 『ニューズウィーク』が分析

最近米国で行われた世論調査により、ドナルド・トランプ大統領が有権者からの支持を急速に失いつつあることが明らかになった。 国民の間でトランプ氏に対する不満がたかまっているばかりか、共和党支持層の一部からもその政策に異論が出されつつある。

亀裂が入り始めたトランプ大統領の支持層

 

米政治サイト「ポリティコ」が 11 月 14 日から 17 日にかけて実施した調査によれば、トランプ支持者のうち自身を「MAGA 派」とみなすとした人は 38% にとどまった。 米誌『ニューズウィーク』のアマンダ・グリーンウッド氏によれば、「MAGA 派」以外のトランプ支持者は今後行われる下院選などで共和党候補を支持する可能性が低く、大統領にとって不安の種となりうる。

グリーンウッド氏はトランプ大統領が将来的に苦境に立たされる可能性の根拠として、最近行われた複数の調査結果を紹介した。 なかでも注目されたのは、エマーソン大学と『ザ・ヒル』が実施した調査で、ここでは保守色が強いテネシー州第 7 選挙区で行われた特別選挙で共和党が接戦を強いられたことが取り上げられている。

テネシー州での異変

今年 12 月 2 日に米テネシー州で行われた連邦下院特別選挙では、最終的に共和党のマット・バン・エップス氏が民主党のアフティン・ベーン氏に勝利したものの、その差はわずか数ポイントにとどまった。 2024 年の大統領選挙でトランプ氏が同地で大勝したことを思えば、「驚くべき結果」だと『インディペンデント』紙は評した。

こうしたテネシー州の状況は、トランプ氏が 2026 年の中間選挙で苦労を強いられる可能性を浮き彫りにしている。 だが、来年を待たずとも、すでにさまざまな部分で亀裂が生じ始めている。 米世論調査会社「ギャラップ」が最近行った調査では、大統領を支持すると答えた人が 36% にとどまる一方で 60% が不支持を表し、トランプ氏の支持率は第 2 期開始以来で最低の数字となったのだ。

平均不支持率は 55% に

こうした支持率の低下は共和党支持者の間で顕著であり、支持率は 7 ポイント下がり 84% となった。 また、無党派層でも支持率は 8 ポイント減の 25% に落ち込んでいる。 このギャラップ調査の結果は、米選挙分析サイト「バロットペディア」が発表した世論調査の集計とも合致している。 同集計によれば、主な全国調査ではトランプ大統領の平均支持率は 42%、平均不支持率は 55% に達していたという。

グリーンウッド氏は、「主要な全国調査のすべてにおいて、純支持率がマイナス圏に沈んでいる」と指摘した。 大統領としては来年の中間選挙に向けて国民からの支持を維持し、求心力の低下を避ける必要がある。 2026 年に民主党が下院を奪還するような事態はなんとしても避けたいところだろう。

コア支持層の間でも不満が拡大

さらに、米シンクタンクのピュー研究所が行った最新調査では、ヒスパニック系有権者からの支持が急激に低下していることがわかった。 トランプ氏の性急な移民政策などを理由に、ヒスパニック系有権者の 3 分の 2 が不支持を表明したほか、61% が経済政策によって自らの状況が悪化したと回答した。

ヒスパニック系移民の票は、2024 年の大統領選で同氏を勝利へ導く要因のひとつとなった。 しかし現在、この層で同氏を支持するとした人は25% にとどまり、就任前の 44% から大幅に低下している。 グリーンウッド氏が紹介した各種調査をみるかぎり、支持基盤には亀裂が入りつつあるといえるだろう。 トランプ大統領は果たして、2026 年 11 月の中間選挙までに国民の信頼を回復することはできるだろうか。 (The Daily Digest = 12-7-25)


ベネズエラ上空「封鎖」を警告 「麻薬対策」で圧力強めるトランプ氏

トランプ米大統領は 29 日、「麻薬対策」の名目で圧力をかけてきたベネズエラについて、「上空とその周辺の空域は全て封鎖されるとみなされる」と警告した。 トランプ氏はベネズエラ近海で大規模な軍事展開を進めてきたが、次の段階として、陸上攻撃に踏み切る可能性も示唆していた。 トランプ氏は「あらゆる航空会社やパイロット、そして、麻薬密売人や人身売買に携わる人」に対する通知だ、と SNS に投稿した。 米連邦航空局は 21 日、「ベネズエラと周辺地域における安全状況の悪化と軍事行動の激化」を踏まえ、航空会社に警告を出している。

トランプ政権はこれまで、麻薬運搬船とみなしたベネズエラなどの船に空爆を重ねてきた。 洋上では最新鋭の原子力空母ジェラルド・R・フォードを中核とする空母打撃群を展開し、マドゥロ政権に強い圧力を加えている。 トランプ氏は 27 日、ベネズエラの麻薬密輸対策について「海上での輸送はほぼ阻止した」「今後は陸上での阻止を、まもなく始める」と語っていた。

一方、米紙ニューヨーク・タイムズは 28 日、トランプ氏とマドゥロ大統領が 1 週間ほど前に電話で協議していたと報じた。 米国での対面協議の可能性についても話し合ったが、現時点でその予定はないという。 報道によると、強硬な作戦をトランプ氏に提案しているとされるルビオ国務長官も参加した。 具体的な内容は明らかになっていない。 (ワシントン・青山直篤 サンパウロ・河崎優子、asahi = 11-30-25)


BBC 会長辞任「責任とる」 トランプ氏発言などで「偏向」指摘

英公共放送 BBC は 9 日夜、ティム・デイビー会長 (58) の辞任を発表した。 トランプ米大統領の演説を恣意的に編集したなどの指摘があり、国内外で「偏向だ」とする批判が高まっていた。 発表によると、デイビー氏は自ら辞職を決めた。 その声明では「いくつかの過ちがあり、私は会長として最終的な責任を取らなければならない」と説明している。 BBC をめぐっては英紙テレグラフが今月、BBC の独立外部顧問から理事会側に送られていた内部文書を入手。 看板ドキュメンタリー「パノラマ」の昨年 10 月放送分で、トランプ氏の発言が改ざんされていたことなどを指摘していた。

トランプ氏は 2021 年 1 月、連邦議会議事堂襲撃事件の直前に演説したが、BBC は演説中のトランプ氏の別々の発言をつなぎ合わせて「議事堂まで歩こう。 私もあなたたちとそこにいる。 そして戦う。 死に物狂いで戦う。」と、暴動を直接的に指示したように受け取られる編集をしていた。 これを受け、ホワイトハウスから「100% のフェイクニュース」、「左派のプロパガンダ機関(レビット報道官)」と非難されたほか、ジョンソン元英首相や英国の複数の政治家から批判が集中。 英議会下院のメディア担当委員会も、10 日までに見解を示すよう BBC に求めていた。

トランスジェンダー、中東報道も問題視

内部文書はまた、トランスジェンダー関連の報道で、記者への指示や原稿の確認を担う専門デスクによる「事実上の検閲」があったと主張した。 さらに、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘について、BBC の英語版とアラビア語版で「顕著な差異」があり、「イスラエルを侵略者として描くよう意図されていた」と訴えていた。 独立外部顧問は文書で「解決策は実施されず、問題の存在自体を認めようとしなかった」としている。 BBC は市民の視聴料によって成り立っており、現在は年間 174.5 ポンド(約 3 万 5 千円)。 デイビー氏は 20 年 9 月に就任し、年間報酬は約 54 万ポンド(約 1 億 1 千万円)だった。

9 日はデイビー氏だけでなく、22 年からニュース部門の最高経営責任者 (CEO) を務めてきたデボラ・ターネス氏 (58) も辞任を発表した。 ターネス氏は辞任の理由として、「トランプ大統領についてのパノラマをめぐる議論が、BBC に損害を与えている」と説明。 その責任を取るとした。 一方、「BBC ニュースが組織的に偏向しているという疑惑は間違っていると、明確にしておきたい」と主張している。 (藤原学思、asahi = 11-10-25)


トランプ米政権へ訴え「王はいらない」 全米各地で抗議デモ

トランプ米政権に対する大規模な抗議デモ「ノー・キングス(王はいらない)」が 18 日、全米各地であった。 参加者は「民主主義を守れ」、「ファシズムに抵抗せよ」などと書かれたプラカードを手に不満を訴えた。 首都ワシントンでは、連邦議会議事堂へと続く目抜き通りが参加者で埋まり、音楽に合わせて踊る人たちの姿も見られた。 トランプ政権は不法移民の摘発を強化している。 移民税関捜査局 (ICE) が白人以外の住民を手荒く連行する動画も SNS 上で拡散しており、「ICE に街を占拠されることが怖い」などと ICE への抗議をデモの参加理由に挙げる人が多かった。

中学教師のカルロス・モラレスさん (42) は 15 年ほど前に中米グアテマラから移住し米市民権を持つが「それでも不安だ」といい、「ヒスパニック系だと合法的に住んでいても不当に連行される可能性がある。 現状は狂気だ。」と述べた。 グラフィック・デザイナーのエイドリアン・リップスコムさん (48) は「税金を納め、社会に貢献している移民も抑圧されるから、近所の人たちは怖がって外出もできない。 常に恐怖を感じながら生活することに疲れ、怒りが募って、ここに来ようと思った。」と語った。

米最大都市ニューヨークでも中心部を多くの人が練り歩いた。 ふだんは観光客でいっぱいのタイムズスクエアは交通が封鎖され、デジタルスクリーンの巨大広告が立ち並ぶビル群の下は、トランプ氏に抗議するメッセージで埋め尽くされた。 家族連れの姿も多く、デモは整然としていた。 ここでも ICE に抗議するメッセージが目立った。 「私たちは移民の味方だ」と書かれたメッセージを掲げた男性 (74) は「米国は移民の国だ。 トランプ大統領が移民を敵視するのは間違っている。 様々な文化の多様な人々が認め合って暮らすのが健全な姿だ。」と危機感を口にした。

西海岸でも「またこの国を愛せるように」

民主党が強いカリフォルニア州サンフランシスコでは、港近くから市役所前まで約 1 時間半歩き、沿道まで埋め尽くす人が集まった。 「平和的」に行うことをテーマにし、ユニコーンや恐竜などの仮装姿も多く見られた。 サンディー・ライトさん (69) は、カタツムリの仮装で参加。 「私たちは『テロリスト』でも『脅威』でもないと示したい。」 トランプ大統領が 15 日、次の州兵派遣先としてサンフランシスコを検討していると言及したことに対し、「この街に州兵なんて必要ない」と訴えた上で「平和的に、でも粘り強く声を上げていく」と笑顔を見せた。

版画ポスター作家のマーティ・マッキーさん (76) は出発点に訪れた参加者に、自身の作品をプラカードとして無料で提供した。 ポスターは、移民や女性の権利、多様性など「米国が大切にしてきた価値」を描く。 「またこの国を愛せるような国にしたい」と話す。 退役米軍人のターシャさん (36) は、毎日流れる米国のニュースに「もう疲れた」。 黒人として生きる中、当局による「人種による偏見的な捜査や取り締まり」が今も根強いと感じる。 「この国にはたくさん直さなければならないことがあるが、まず最初にするべきはお互いへの尊重だ」と語った。

トランスジェンダーだというリーバイ・タイシャーさん (15) は同級生と参加。 「いま起きていることは私たちの未来につながっている。 もっと私たちの声を世界に広めなくては。」と言って、群衆の中へ入っていった。 両親が台湾からの移民であるツァイさん (28) は、様々な色を使って性や人種の多様性を象徴する旗「プログレッシブ・フラッグ」を手に歩いた。 「少数派がこの国でひどい扱いを受けているのを見るのはとても苦しい。 すべての人に平等な機会が与えられるべきだ。」

「ノー・キングス」は革新系の政治運動体が中心になり、人権団体や NGO などと連携して企画したもので、6 月に続き 2 回目となる。 米メディアによると、全 50 州の約 2,600 カ所で抗議行動が予定され、前回に続き数百万人の参加が見込まれていた。 参加者には、2014 年の香港の民主化デモ「雨傘運動」や、ロシアの占領に対するウクライナの抵抗運動を象徴する色として、黄色い服の着用が奨励された。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、18 日時点の各種世論調査の平均をみるとトランプ氏の支持率は 43%、不支持率は 53%。 抗議デモの広がりはこうした政権の不人気さを一定程度反映するものだが、民主党議員らが積極的に参加する一方、共和党は事前に抗議デモを「米国嫌いの集会(ジョンソン下院議長)」と位置づけ、党派による分断の深さを印象づけた。 トランプ氏は 17 日に公開された米 FOX ビジネスのインタビューで「私は王ではない」と語っていた。 18 日はフロリダ州の私邸に滞在し、ゴルフなどをして過ごした。 (ワシントン・下司佳代子、ニューヨーク・田村剛、サンフランシスコ・花房吾早子、asahi = 10-19-25)


米政権、連邦職員の解雇に着手 政府一部閉鎖を機に官僚機構縮小へ

予算切れによる政府機関の一部閉鎖が続く米国で、トランプ政権は 10 日、連邦職員の解雇を始めたと明らかにした。 官僚機構の縮小をめざす政権が、政府閉鎖を口実に、職員削減を進める狙いだ。 労働組合は、職員を政治的駆け引きの道具にしているとして反発している。

行政管理予算局のラッセル・ボート局長が自身の X (旧ツイッター)に「RIF (人員削減)が開始された」とだけ書き込んだ。 対象となる個人や事業、日程などの詳細は明らかにしていない。 米紙ニューヨーク・タイムズによると、財務省や教育省、エネルギー省、国土安全保障省など幅広い機関で数千人規模になる可能性があるという。 すでに数十万人の政府職員が一時的に休業させられている状態で、さらなる混乱が広がりそうだ。

予算権限をもつ米議会では激しい党派対立で、政府閉鎖を回避する「つなぎ予算」でも共和、民主両党が折り合えない状態が続いている。 共和党側が医療費削減を撤回しない限り予算案には賛成しない方針の民主党に対し、共和党政権は政府機関の閉鎖による混乱はすべて民主党のせいだと主張して、妥協するよう圧力を強めている。

トランプ大統領や側近らは従来、政府閉鎖中の連邦職員の大量解雇をほのめかしてきた。 政府職員でつくる労働組合は、閉鎖中の大量解雇は違法だとして米政府を相手取った訴訟をすでに起こしており、連邦地裁に迅速な介入を求めている。 (ワシントン・下司佳代子、asahi = 10-11-25)


米政府閉鎖、週明けも継続へ 報道官は大量解雇予告「民主党のせい」

米政府の一部機関の閉鎖が続いている問題で、米連邦議会上院は 3 日、政府の当座の資金繰りに必要な「つなぎ予算」案を否決した。 政府閉鎖は週明けも継続する。 対立する議会共和・民主両党の歩み寄りの兆しはなく、閉鎖が早期に収束する見通しはたたない。 共和・民主両党の勢力が拮抗する議会上院は、両党とも可決に必要な 60 票(定数 100)を確保できず、つなぎ予算案の否決をくり返している。 上院は週明け 6 日に再び採決する方針だ。 下院はすでにこのつなぎ予算案を可決しており、上院が可決すれば、政府閉鎖は収束する。

民主党は、年末に期限が切れる医療保険の補助の延長などを要求している。 共和党が求めに応じない限り、つなぎ予算案には賛成できないとしている。 ただ、共和党は今のところ民主党の要求には取り合わない方針だ。 ホワイトハウスのレビット報道官は 2 日、政府閉鎖が続けば「数千人」規模で政府職員を解雇する考えを示した。 3 日の記者会見では「政府閉鎖を可決した民主党が、ホワイトハウスと大統領をそうした立場に追い込んだ」と批判した。

ただ、この問題をめぐって米国民は、民主党よりもトランプ大統領らに厳しい視線を送っている。 米紙ワシントン・ポストが 1 日実施の世論調査で、閉鎖の責任の所在を尋ねると、回答者の 47% が「トランプ氏と共和党」と答えた。 一方、民主党に責任があると答えた人は 30% にとどまった。 また、同党が求める医療保険への補助の延期を支持した人は 71% にのぼった。 別の世論調査でも、トランプ氏らに厳しい結果が出ている。 閉鎖が長期化すれば、政府・共和党への批判が高まる可能性もある。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 10-4-25)<./p>


ラスベガス再び閑古鳥、コロナ禍の次は「トランプ・スランプ」 … お得意様のカナダ人観光客が

新型コロナ禍の苦境を脱した米国有数の観光地ラスベガスが、トランプ米政権下で再び低迷している。 8 月末に発表された 7 月の旅行者数は、前年同月比で 12% 減少した。 トランプ政権の関税・国境政策や、オンラインカジノ流行の影響が指摘されている。

空席目立つスロットマシン

大型カジノホテルが集まるネバダ州・ラスベガスの中心部ストリップでは 8 月下旬、きらびやかな街並みとは対照的に人通りはまばらで、カジノにずらりと並ぶスロットマシンも空席が目立った。 年に 1 度はラスベガスを訪れるというカリフォルニア州のエディ・ゴンザレスさん (56) は、「海外からの観光客が明らかに減っている」と街の雰囲気の変化に戸惑っていた。 ラスベガス観光局の統計によると、旅行者の減少傾向は第 2 次トランプ政権発足直後の今年 2 月に始まり、2 - 7 月の旅行者数は前年同期比 9% 減となった。

ウェートレスとして働くジョセフィーナ・ウルタードさん (48) は、今のラスベガスの状況を「トランプ・スランプ(トランプ不況)」と呼ぶ。 昨年は 1 日最低 100 ドルを稼いだチップの額は 6 割ほど減る一方、ガソリン代や食費などは値上がりし、生活はコロナ禍以上に苦しい。 「トランプは物価を下げると言ったのに状況は悪化している」と嘆く。

リゾート価格、水 1 本 3,900 円

ネバダ大ラスベガス校ビジネス・経済研究センターのアンドリュー・ウッズ所長は、ラスベガス低迷の要因として、海外からの観光客で最も多かったカナダ人旅行者の減少を挙げる。 ウッズ氏の集計によると、1 - 7 月にカナダの航空会社を使ってラスベガスを訪れた人は前年同期比約 16% 減となった。 カナダ紙「グローブ・アンド・メール」によると、トランプ政権の関税政策や国境管理の厳格化を理由に、米国旅行を取りやめる人が増えている。

旅行者は物価高騰にも苦しむ。 米経済誌フォーブスは今月 3 日、「消費者はラスベガスのホテルの駐車場やプールの料金などあらゆる高コストに嫌気が差した」と報じた。 ある高級リゾートでは、ペットボトルの水が 1 本 26 ドル(約 3,900 円)で販売されている。 ウッズ氏は「関税による価格転嫁や、入国審査の厳格化、ビザ(査証)の手数料値上げなどの不確実性が、旅行者を米国から遠ざけている。」と分析する。

オンラインカジノの急成長も

オンラインカジノの流行もカジノの街に打撃を与えている。 米国ゲーミング協会によると、昨年の全米のギャンブル収益は 720 億 4,000 万ドル(約 10 兆 8,000 億円)で前年比 7.5% 増となった。 このうちオンラインカジノは 28.7% 増と急成長する一方、従来型カジノは 1% 増にとどまる。 ネバダ州など全米各地の司法長官は 8 月上旬、海外の違法オンラインカジノへの対応を強化するよう求める書簡を連名で米司法省に提出した。 書簡では、違法オンラインカジノによる米各州の税収損失は年計 40 億ドル以上に達するとの推計を引用し「州の税収と経済的利益を奪う」などと訴えている。 (米ラスベガス・後藤香代、yomiuri = 9-29-25)


「大型トラックは乗用車ではない」 トランプ政権、日本にも 25% 関税

トランプ米政権は 26 日、10 月 1 日から大型トラックに課す 25% の追加関税について、日本製を例外扱いしない方針を明らかにした。 日本には自動車関税を 15% に抑える特例が適用されているが、大型トラックはこれに含まれないとしている。 ホワイトハウス当局者は、朝日新聞の取材に「トラックは乗用車ではない。 日本には大型トラック関税の全額が適用される。」と述べた。

トランプ氏は輸入する乗用車に 25% の追加関税をかけているが、日本や欧州連合 (EU) に対しては、乗用車にかかる関税の合計を 15% にする特例を認めている。 だが大型トラックはこの特例には含めず、日本を含め例外なく新しい追加関税を徴収する考えとみられる。 トランプ氏は 25 日、「10 月 11日から大型トラックに 25% の関税を課す。 米国の偉大な大型トラックメーカーを不公平な競争から守る」と自らの SNS に投稿していた。 一方、トランプ氏が 10 月 1 日から 100% を課すとしている医薬品については、日本は欧州連合 (EU) と同じ 15% の税率が上限になるとみられている。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 9-27-25)


トランプ氏、演説で国連批判 パレスチナ承認に反対 気候変動は「詐欺」

[国連] トランプ米大統領は 23 日、国連総会で演説し、国連が米主導の和平努力を支援していないと批判した。 自身が国際機関の支援なしに複数の世界的紛争を解決したとも言明した。 トランプ氏の国連での一般討論演説は 2 期目就任後で初となる。

トランプ大統領は「私は 7 つの戦争を終結させ、関係各国の指導者と交渉したが、国連から合意の締結に協力するとの電話を受けたことは一度もない」と述べた。 「国連の目的は何なのか。 国連は非常に大きな可能性を秘めている。 しかし、その可能性を十分に発揮していない。」とした上で、「非常に強い言葉を使って手紙を書くだけで、その後何のフォローアップもしていないようだ。 空虚な言葉ばかりだ。 それでは戦争は解決しない。 戦争を解決する唯一の方法は行動だ。」と言明した。

ただ、演説後に行ったグテレス国連事務総長との会談ではトーンを和らげ、「米国は国連を 100% 支持している」と述べた。 「時に賛同できないこともあるが、私は国連を強く支持する。 国連が平和を実現する可能性が非常に大きいと考えているからだ。」と述べた。 グテレス氏はトランプ大統領に対し「公正な平和のために協力できるよう、国連は全面的に米国と協力する用意がある」と語った。

演説では、トランプ氏はパレスチナ自治区ガザでの停戦を実現させなければならないとし、平和を支持する人々は人質の解放を求めて団結すべきだと訴えた。 同時に「あたかも紛争継続を促すかのように、パレスチナ国家を一方的に承認しようとする向きがある」とし、パレスチナ国家承認はイスラム組織ハマスに対する「あまりにも大きい報酬」と反発した。

トランプ氏は演説後、サウジアラビア、アラブ首長国連邦 (UAE)、カタール、エジプト、ヨルダン、トルコなどの首脳や当局者らと会談し、ガザ情勢について協議した。 同氏は「非常に良い会談だった」と述べた。 トルコのエルドアン大統領は非常に実り多い会談だったとし、共同宣言が発表される予定だと語った。 アクシオスは 22 日、トランプ氏が同会談で停戦や人質解放に加え、イスラエル軍撤退やハマスが関与しない戦後のガザ統治を巡る米国の計画について話し合うと報じていた。

フランスと英国は 23 日、ドイツやイタリア、UAE、サウジ、カタール、カナダ、オーストラリアなどと会合を開き、ガザ安定化部隊の可能性について協議する。 トランプ氏は演説でウクライナ情勢について、ロシアに対し強力な経済措置を講じる用意があると改めて警告。 「ロシアが戦争終結に合意する用意がなければ、米国は極めて強力な関税を課す準備が十分に整っている。 そうすれば流血を速やかに止められると確信している。」と述べた。

同時に、米国の制裁措置が効果を発揮するためには「ここに集まった欧州諸国全てが、われわれと同じ措置を講じる必要がある」とし、他国の連携を呼びかけた。 イランについては、核兵器保有は決して許されないとし、「私の立場は非常にシンプルだ。 世界一のテロ支援国が最も危険な兵器を保有することを許してはならない」と述べた。 また、気候変動を世界に対する「史上最大の詐欺」と非難し、地球環境保護に向けた国際的な取り組みに対する懐疑的な見方を改めて強調した。

トランプ氏は「国連やその他多くの機関による予測は、多くの場合誤った理由に基づいている」とし、「愚かな人々によって作られたもので、国の富や成功のチャンスを奪っている」と主張した。 演説の冒頭、テレプロンプター(演説用の原稿を表示する装置)が機能しないハプニングが起きた。 トランプ大統領は国連ビルのエスカレーターの故障についても言及し、「国連から 2 つのことを受け取った。 悪いエスカレーターとテレプロンプターだ。」と述べ、ジョークを交えながらも、国連に対する個人的な不満を表明した。 (Reuters = 9-24-25)


マール・ア・ラーゴ合意 「私のアイデアじゃない」ミラン氏が推進否定

米連邦準備制度理事会 (FRB) のミラン理事は 22 日、ドル安誘導のための協調介入構想を含む「マール・ア・ラーゴ合意」について、「私のアイデアではない」と語った。 40 年前の協調介入「プラザ合意」に重ねて自らの論文で紹介していたが、「政策提言ではない」と指摘。 トランプ政権下での協調介入を目指しているわけではないとの考えを示した。

ニューヨークでの講演で語った。 ミラン氏はトランプ大統領に近いとされ、FRB の理事の退任に伴い、トランプ氏から 8 月に後任に指名された。 理事になるまでは、閣僚級の要職で、大統領に経済政策を助言する経済諮問委員会 (CEA) 委員長を務めた。 現在は委員長職は休職している。 ミラン氏は、ドル安を目指して1985 年 9 月 22 日に主要国が協調介入を決めたプラザ合意になぞらえ、多国間での協調介入を含む政策パッケージをマール・ア・ラーゴ合意として論文に記した。 論文の発表は昨年 11 月で、マール・ア・ラーゴはフロリダ州にあるトランプ氏の邸宅名だ。

トランプ氏が米製造業の輸出に不利なドル高を問題視していることから、ミラン氏が論文で示したこの構想への注目度は高い。 だがミラン氏はこの日の講演で、「マール・ア・ラーゴ合意を提唱したことはない」、「他者のアイデアを引用した」などと述べ、自らの主張ではないと訴えた。 ミラン氏は金融政策の決定に関して、トランプ氏の影響は受けていないと主張している。 ただ、9 月半ばにあった米連邦公開市場委員会 (FOMC) ではただ一人 0.5% 幅の大幅利下げを主張した。 利下げはドル安につながりやすい。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 9-23-25)