ハリス氏、トランプ氏を大きくリード 無党派層の好感度調査で  アメリカ大統領選

アメリカのバイデン大統領の後継に指名されたハリス副大統領が勢いを見せています。 この 1 週間で 300 億円を超える献金を集め、好感度でもトランプ前大統領を大きくリードしました。 これは、民主党ハリス陣営が先週公開した大統領選向けの CM。 歌手のビヨンセさんの楽曲「Freedom」を全編で使用しています。 この曲は、ビヨンセさんが黒人への暴力や構造的な差別への反対を訴える「ブラック・ライブズ・マター」運動への連帯を強く示したものとして知られ、ハリス氏には、黒人有権者にアピールする狙いがあるとみられます。

「これは市民の力による選挙運動であり、私たちには勢いがある。 私が立候補を表明した翌日、私たちは 24 時間として、大統領選史上最高額の草の根募金を記録した。」

ハリス陣営は 28 日、撤退を表明したバイデン大統領が後継者にハリス氏を指名して以降の 1 週間の献金額が 2 億ドル、日本円でおよそ 307 億円に上ったと明らかにしました。 全体の 66% が今回の大統領選で初めて献金した人だったということです。 さらに、同じ日に発表された世論調査では、ハリス副大統領の好感度が 1 週間前より 8 ポイント上昇し、トランプ前大統領を上回る結果に。 無党派層に限ると、ハリス氏の好感度は 44% と前の週から大幅に増加。 トランプ氏の 27% に大きく差をつけています。

バイデン大統領の撤退表明後の世論調査では、鍵を握る激戦州のミシガン州やペンシルベニア州、ウィスコンシン州でも、ハリス氏とトランプ氏が互角の戦いとなっています。 (TBS = 7-29-24)


イエレン長官、強いドルが米製造業に打撃とのトランプ氏見解を一蹴

→ ドル高の影響評価する際はより広い文脈の中で考察する必要
→ 米製造業の雇用減少は貿易よりも生産性向上の影響が大きい

トランプ前米大統領は強いドルが米製造業者に打撃を与えているとの見解だが、イエレン財務長官はそう単純なものではないとみている。 イエレン長官はブルームバーグ・ニュースが 26 日に行ったインタビューで、ドル高の影響を評価する際はより広い文脈の中で考察する必要があると指摘。 米製造業の雇用に国際貿易が及ぼしている影響はそれほど大きくないとの考えを示した。 イエレン氏は「非常に強いドルは輸出にマイナス、輸入にはプラスとなり得る」とした上で、「しかし、そこにはもっとずっと多くの要素がある。 なぜドルが強いのかを問わなければならない。」と述べた。

イエレン長官は先週、米経済の強さが外資を呼び込み、ドルの価値を高めているとの認識を示した。 トランプ氏は先にブルームバーグ・ビジネスウィークとのインタビューで、「われわれは通貨に関して大きな問題を抱えている」とし、「米国製品は高過ぎるから誰も買いたがらない」と述べた。 イエレン長官はまた、米製造業の雇用は数十年にわたって減少し続けているが、国内総生産 (GDP) に占める製造業の割合は比較的安定していると指摘。 製造業の雇用減は貿易よりも生産性向上の影響が大きいとの見解を示した。 (Christopher Condon、Bloomberg = 7-29-24)


ハリス氏とトランプ氏、支持率ほぼ並ぶ = WSJ 調査

ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) が米大統領選挙について行った最新の世論調査によると、カマラ・ハリス副大統領 (59) とドナルド・トランプ前大統領 (78) への支持率がほぼ並んでいる。 非白人有権者の間でハリス氏への支持が拡大しているほか、民主党員による選挙戦への熱意も劇的に高まっている。

ハリス氏とトランプ氏の二者対決の構図では、トランプ氏がハリス氏を 49% 対 47% でリードしている。 だがこれは、この調査でのプラスマイナス 3.1 ポイントの誤差の範囲内だ。 今月初旬に発表された前回の世論調査では、トランプ氏への支持率がジョー・バイデン大統領を 6 ポイント上回っていた。 だがその後、バイデン氏は選挙戦からの撤退を表明し、後任候補としてハリス氏を支持した。

大統領選に出馬しているロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(無所属)など第三者候補を含めた構図では、ハリス氏への支持率は 45%、トランプ氏は 44%。 ケネディ氏はわずか 4% だった。 決めかねていると回答したのは 5%。 前回の調査では、バイデン氏が複数候補との争いで後塵を拝していた。 黒人、ラテン系、若者のハリス氏への支持は、6 月 27 日の討論会後に行われた WSJ 調査でのバイデン氏への支持を上回った。

民主党支持者の構成が変化すれば、トランプ氏に対してハリス氏が対抗できる州も変わるかもしれない。 バイデン氏が苦戦していたアリゾナ州やネバダ州、ジョージア州、ノースカロライナ州といった、人種や民族の多様性が高い激戦州では、非白人有権者の支持率が高まれば、ハリス氏が有利になる可能性がある。 ハリス氏はトランプ氏との一騎打ちで、非白人有権者の 63% から支持されており、前回の WSJ 調査でのバイデン氏の 51% から上昇している。 ただし、バイデン氏が僅差で勝利した 2020 年大統領選で同氏を支持した非白人有権者の 73% を下回っている(出口調査)。

ハリス氏は前回調査のバイデン氏よりも、30 歳未満の若い有権者の支持を集めている。 だが、2020 年にバイデン氏が勝利した時の支持には届いていない。 ハリス氏は民主党支持者の間でも熱狂を巻き起こしている。 共和党と共同で調査を実施した民主党のマイク・ボシアン氏は「前回調査でバイデン氏を支持する有権者のうち、同氏を熱烈に支持する人は 37% に過ぎなかったが、現在ハリス氏に対するその数字は 81% に達している」と話す。 「これは驚くべき変化だ。」

一方、共和党の世論調査担当者であるデービッド・リー氏は、ハリス氏と民主党は楽観的になりすぎないよう注意すべきだと語る。 「民主党とメディアの多くは、世論調査の拮抗する結果は選挙戦の状況が変化していることの表れだと息巻くだろうが、2020 年 7 月のこの時期、ウォール・ストリート・ジャーナルの全国世論調査ではバイデン氏が 9 ポイント差でトランプ氏をリードし、8 月にはバイデン氏が 11 ポイント差でトランプ氏をリードしていたことを忘れてはならない」とリー氏は指摘。 「2020 年選挙の同じような時期と比較すると、今回の選挙でトランプ氏ははるかに有利な立場にある」と述べた。 (John McCormick、The Wall Street Journal = 7-27-24)


オバマ元米大統領夫妻もハリス氏支持を正式表明 − 選挙陣営が動画公開

オバマ元米大統領夫妻は 26 日、ハリス副大統領を 11 月の大統領選の民主党大統領候補として支持すると正式に表明した。 米国初の黒人大統領となったバラク・オバマ氏は、同国初の女性かつ黒人、アジア系副大統領であるハリス氏が大統領になれるよう、惜しみない支援を提供する。 ハリス氏の選挙陣営は 26 日、同氏がオバマ夫妻からの選挙運動激励の電話に応える様子を捉えた動画を公開。 若くしてホワイトハウス入りを果たしたオバマ元大統領 (62) がハリス氏 (59) にバトンを渡す象徴的な内容となっている。

オバマ元大統領はその中で、「ミシェル(夫人)と私が電話をしたのは、あなたが大統領選で勝利を収めるため、私たちが支持を表明して全力を尽くすことに、この上ない誇りを感じていると伝えるためだ」と話した。 ミシェル夫人はまた、「私の大切なカマラ(ハリス氏)。 この電話で、あなたを誇りに思うと言わずにはいられない。 これは歴史的なことになるでしょう。」と語った。 ハリス氏が大統領候補となることで共和党候補のトランプ前大統領 (78) を破る可能性が高まるとして、民主党内は熱狂しているが、同党で今でも最も人気が高いオバマ夫妻の支持表明でさらに活気づくのは確実だ。

バイデン大統領が 21 日に再選断念を発表後、民主党候補指名を勝ち取って大統領選に勝利する意向を表明したハリス氏は、すでに 22 日夜の時点で党の大統領候補指名を受けるのに十分な数の代議員を確保していた。 6 月 27 日の大統領選討論会での散々な結果を受け、バイデン氏 (81) が再選を果たせるのか民主党内に危機感が広がった後も、オバマ元大統領はバイデン氏の立候補継続の判断を擁護していた。 だが、米紙ワシントン・ポストはその後、バイデン氏勝利の道は大きく遠のいたと元大統領が周囲にプライベートに語っていると報じた。

ハリス氏を 8 月 1 日にも民主党大統領候補指名 − オバマ氏も支持表明へ

バイデン氏の選挙戦撤退表明を受け、オバマ元大統領はバイデン氏のリーダーシップをたたえ、「最も偉大な米大統領の 1 人」で「最高位に位置する愛国者だ」と称賛していた。 バイデン氏は即座にハリス氏支持を打ち出した一方、オバマ元大統領は表明を控えていた。 元大統領の考えに詳しい関係者によれば、こうした判断からは民主党が新たな大統領候補を中心に結束する時間を確保できるようにしたいとの意図がうかがわれるという。 過去の選挙でもオバマ氏は同様のアプローチを取ってきた。 (Jenny Leonard、Bloomberg = 7-26-24)


「センセーショナルに予測不可能」な米大統領選、政策に不確実性

米大統領選まで 4 カ月を切った段階での民主党候補交代という衝撃的な事態は、2025 年以降の経済政策の見通しに新たな不確実性をもたらした。 当面の未知数は、バイデン大統領に代わる候補として期待される副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の経済政策を見直すかどうかだ。 エコノミストも投資家も、ハリス氏の上院議員としての経歴や、それ以前のカリフォルニア州司法長官としての経歴に注目し、そのヒントを探っている。 多くの市場関係者は、11 月の選挙ではドナルド・トランプ前大統領が断然有利とみていたが、ハリス氏への熱狂的な支持の波が、勝算の再計算を迫っている。

ウェルズ・ファーゴのエコノミストは、この先何が待ち受けているのか「とてつもない不確実性」があると述べた。 世界的な経済調査会社であるギャブカル・リサーチは米国の政治状況を「センセーショナルに予測不可能」と表現した。 国際金融協会 (IIF) の調査・政策担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのクレイ・ラウリー氏は「米大統領選を巡りこの 1 カ月間に目撃された劇的な出来事の規模とペースは前例がない」と話した。 共和党候補のドナルド・トランプ氏のアジェンダは、減税、関税引き上げ、移民の厳格な取り締まりであり、多くのエコノミストがインフレを招くと見ている。

ハリス氏はまだ自身の政策案を明らかにしていないが、当面はバイデン政権の現在の政策構成を大筋で踏襲するとエコノミストは予想している。 これには、再生可能エネルギーへの大規模な補助金、生活費高騰への対応、中低所得者層への税優遇の継続などが含まれる。 しかし、個人所得税率や気候変動、消費者保護など、独自の政策を打ち出す分野もあるとみられている。 昨年までバイデン政権の財務省高官だったベン・ハリス氏は「ハリス氏は経済政策に関して言えば、全体像としては古典的な進歩主義者だ。 標準的な進歩主義者の考え方から大きく逸脱することはない。」と述べた。

現在ブルッキングズ研究所に籍を置くハリス氏は、資本課税に関してハリス氏は「恐らくバイデン氏より少し左寄りだろう」と言う。 貿易に関してハリス氏の記録は、自由貿易協定を追求してきたオバマ政権やクリントン政権よりも保護主義的なアプローチを示唆しており、トランプ大統領が中国に課した関税引き上げを維持するバイデン大統領に近い。 ハリス氏は大統領選への立候補を表明して以来、労働組合から支持を得ており、組合員、非組合員を問わず組合がもたらす経済的利益を強調している。

気候に関してハリス氏は、バイデン氏が大統領として支持してきたものを超える、いわゆるグリーンニューディール(自然エネルギーや地球温暖化対策に公共投資することで新たな雇用や経済成長を生み出す経済刺激策)を議会で支持した。 規制についてエコノミストは、カリフォルニア州司法長官を務めていたときにハリス氏が消費者保護のアジェンダを追求していたことに注目している。 バイデン政権が確保できなかった主要な優先事項の一つは、いわゆるケアエコノミー(家事や育児、介護、看護などのケアワークに関する経済活動)の主要分野での長期的な拡大であり、ハリス氏はこの分野で足跡を残せるかもしれないとブルッキングズのハリス氏が述べた。

いずれにしても、ハリス氏とトランプ氏の政策提案には大きな隔たりがある。 元米上院職員で現在はルーズベルト研究所スタッフのエリザベス・パンコッティ氏によれば「「歴然とした違いがある」という。 こうした違いは選挙戦への関心を高めるだろう。 初期の世論調査によれば、支持はより拮抗してきた可能性がある。 ギャブカルの共同創業者でチーフエコノミストのアナトール・カレツキー氏は今週のリポートで「地政学とグローバル金融における米国の覇権を考えると、この影響は世界経済のあらゆる部分に影を落とすだろう」と指摘した。 (Enda Curran、Viktoria Dendrinou、Bloombeerg = 7-25-24)


ハリス旋風が SNS 席巻、「不人気」覆す勢い保てるか 若い世代連帯

米大統領選は高齢候補の再戦になるはずだった。 だが急きょカマラ・ハリス副大統領 (59) が立つことになり、選挙戦に新風が吹き込んだ。 デジタル空間で支持者は沸き、世論調査も巻き返しの気配を示す。 「瞬間風速」に過ぎないのか、流れをつくるのか。 投票日まで約 100 日。 ハリス氏は 23 日、バイデン大統領 (81) の後継者として初の選挙集会も開いた。

いま SNS で「ココナツ」の絵文字がにわかに流行している。 ハリス氏を示すミーム(人々が模倣する動画や画像)として使われているのだ。 由来は昨年のハリス氏の演説だ。 「母によく言われた。 『あなたはココナツの木から落ちてきたとでも思っているの?』と」。 ハリス氏はそう語り、笑った。 人間は先人の歩みや周囲との関係性において存在していると言いたかったようだ。 ハリス氏はよく豪快に笑う。 その姿を、11 月の大統領選で争うことになるトランプ前米大統領 (78) は嘲笑してきた。 20 日の選挙集会でも「笑うカマラを見たか? 狂っている。」と中傷した。 だが、21 日のバイデン氏の撤退表明を機に「ココナツ」発言の動画が肯定的な文脈で拡散されるようになった。 若い世代がココナツの絵文字で、ハリス氏に対する連帯の意思を表現している。

英人気歌手チャーリー XCX が最新アルバムの名前に引っかけて、「カマラはブラット(悪ガキ)だ」と親しみを込めて書いた投稿も、インターネット上で爆発的に広まった。 チャーリー XCX によると、「ブラット」とは「少し面倒くさがりで、パーティーが好きで、時々間抜けなことを言って、どこか壊れているような … そんな女の子」という意味だという。 ハリス氏が踊る動画と組み合わされて、動画投稿アプリ「ティックトック」を席巻している。 ハリス陣営も呼応し、X (旧ツイッター)の公式アカウントの背景を、チャーリー XCX のアルバムのジャケットに合わせた黄緑色にした。 別の人気歌手の曲に合わせて投稿した公式アカウントの動画は、2 日で 3 千万回再生された。

「多くの政治家は性格を隠そうとするのに、彼女は自分の性格を隠していない。 個性的で、たくさん冗談を言う。 堅苦しい政治家とは違う。」 民主党の議員候補者の陣営で働くモーガン・フレギーンさん (24) はそう語る。 バイデン氏の撤退後に実施されたロイター通信の世論調査では、ハリス氏が支持率 44% で、トランプ氏の 42% を上回った。 リードは誤差の範囲で、銃撃事件も機に共和党をまとめたトランプ氏の勢いが失われたわけではない。 出遅れを挽回する時間はきわめて限られる。 ただ、撤退表明前はトランプ氏優位の流れが固まっていただけに、注目すべき変化の兆しだ。 (ウィスコンシン州ウェストアリス・合田禄、ワシントン・高野遼)

「候補者として成長する時間がある」

23 日、ウィスコンシン州ミルウォーキー郊外で開かれた選挙集会にハリス氏が登場すると、米人気歌手ビヨンセの曲とともに、「カマラ、カマラ」の大歓声が響いた。 米 CNN によると、集会直前にビヨンセ側から使用許可を得た。 スーパースターのビヨンセが楽曲の使用を簡単に認めることはない。 公式に支持を表明したわけではないが、ビヨンセがハリス氏を応援していることを示唆しているという。 ハリス氏は演説で「未来のための戦いだ」と訴え、子育て支援などの政策を掲げて世代交代を強く印象づけようとした。 2020 年の大統領選に不正があったと根拠なく訴えるトランプ氏が「過去」の存在だと強調した。

会場は熱気に包まれていた。 転職活動中のクレア・マクマレンさん (26) は「私たちが直面している問題に通じている人が必要だ。 年退職した年齢の人たちではない。」と語った。 ウィスコンシン大の学生新聞記者、ジェイク・パイパーさん (20) は「民主党には投票したいが、バイデン氏には投票したくないという若者は多かった。 そういう人たちにとって、ハリス氏(の立候補)は民主党に投票し続ける絶好の機会となった」と話した。

「4 年前にバイデン氏が勝てたのは、トランプ氏を支持したくない無党派や共和党員の票も獲得したからだ」と民主党の選挙戦略に詳しいネイサン・ダシュル氏は言う。 「その有権者層が、今年は衰えたバイデン氏への投票をためらっていた。 若さと活力をもたらすハリス氏は、新たな受け皿となりうる。」 ハリス陣営によると、22 日までの 2 日間で献金を寄せた 110 万人超のうち、62% は初めての献金者だった。 黒人の有権者がバイデン氏から離れていた課題も、黒人であるハリス氏の登板によって緩和されそうだ。 女性に寄り添い、人工妊娠中絶の権利を強く擁護してきた姿勢も、トランプ氏に対する強みとなりうる。

ヒラリー・クリントン元国務長官は 23 日、米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で「この動きは止められない波になる」と指摘。 ハリス氏が女性初の米大統領という「ガラスの天井」を打ち破ることへの期待も示した。 ただ、今は世論が好意的に受け止める「ハネムーン期間」ともいえる。 当面の興奮が落ち着いた後に勢いを保てるのかが問われることになる。 クリントン氏は寄稿で、アフリカ系とインド系の血をひくカマラ氏が向き合う「(人種問題に由来する)特有の厳しい挑戦」について言及した。 左派のイメージが強いカリフォルニア州出身だけに、無党派層への浸透も大きな課題となる。

ハリス氏には「不人気」の印象もつきまとってきた。 世論調査での支持率は 40% を下回り、バイデン氏と変わらない。 懐疑論はいったん影を潜めているが、それは「民主党にハリス氏しか選択肢がないからだ」と、ジャーナリストでブランダイス大教授のロバート・カトナー氏はみる。 「ただ、ハリス氏には候補者として成長する時間がある。 それを証明できるかは、彼女次第だ。」 そうカトナー氏は言う。 (ウィスコンシン州ウェストアリス・合田禄、ワシントン・高野遼、望月洋嗣、asahi = 7-24-24)


ハリス副大統領が世論調査支持率でトランプ氏をリード 「アメリカを後退させようとしている」 ジョージ・クルーニーさんも支持表明

アメリカの大統領選挙で、民主党からの候補者指名が確実となったハリス副大統領が、最新の世論調査の支持率でトランプ前大統領をリードしました。 ロイター通信は 23 日、ハリス副大統領の全米での支持率が 44% となり、42% のトランプ前大統領を 2 ポイントリードしたと報じました。 調査は、バイデン大統領が撤退を表明した後の 22 日から 23 日にかけて実施され、「ハリス氏がバイデン氏の後任として出馬する根拠を明確にした」と指摘しています。 ハリス氏を巡っては、民主党の上下両院のトップ 2 人が 23 日に支持を明言しました。 さらに、バイデン氏に撤退を求めていた俳優のジョージ・クルーニーさんも支持を表明するなど、民主党内でハリス氏を中心にした選挙戦への団結が強まっています。

こうした中、ハリス氏は、激戦州のウィスコンシン州で初めて選挙集会を開き、演説でトランプ氏が「アメリカを後退させようとしている」と批判。 検察官の経歴を踏まえ、有罪判決を受けたトランプ氏への攻勢を強めていく構えです。 一方、新型コロナに感染し、地元の東部デラウェア州で療養していたバイデン大統領は医師から完治したとの診断を受け、23 日、本格的に公務に復帰しました。 24 日には選挙戦から撤退を決めた理由などについて、国民向けの演説を行う予定です。 (FNN = 7-24-24)


ハリス氏、大統領選候補に指名の見通し 米報道 献金も「最高額」

米民主党のハリス副大統領 (59) は 22 日、党の大統領候補の指名獲得に向け十分な代議員の支持を確保した。 AP 通信などが報じた。 バイデン大統領 (81) の後を継ぎ、11 月の大統領選で共和党のトランプ前大統領 (78) と争うことになる。 民主党は 8 月の党大会までに、各州を代表する代議員の投票で大統領候補を正式に決める。 AP 通信の集計では、3,900 人以上の代議員のうち、既に 2,600 人以上がハリス氏への投票を決めた。

ハリス氏は 22 日、バイデン氏から引き継いだデラウェア州の選対本部で演説し、本格的な選挙運動を始めた。 検察官出身のハリス氏は「私はあらゆる種類の加害者を相手にしてきた。 女性への虐待者、消費者に詐欺を働く者、自らの利益のためにルールを破る者。 まさに、ドナルド・トランプ的なタイプを知っている。」と語った。 元不倫相手への口止め料を隠すため虚偽記載をしたとして有罪評決を受けたトランプ氏との対比を強調した。 さらに「トランプ氏は我が国を、米国人が自由と権利を持つ前の時代へと後退させようとしている」と批判。 「私たちはどんな国に住みたいのか。 自由と思いやり、法の支配がある国か。 それとも混乱と恐怖、憎悪の国か。」と問いかけた。

演説では大統領選に向け、初めて政策面にも言及した。 経済面では「中間層を強化することが、私の大統領としての目標になる」として、バイデン政権の路線を継承する姿勢をみせた。 また、大統領になれば、女性による人工妊娠中絶の権利を認める法律に署名するとも宣言した。 初の女性大統領を目指す候補者として、中絶問題は今後の大きなアピールポイントとなる。 この演説には、新型コロナウイルス感染で療養中のバイデン氏も電話で参加し、「ともに選挙戦を戦う」と改めて支持を打ち出した。 選挙活動でバイデン陣営を率いた主要幹部が、ハリス陣営を継続して支えていくことも明らかにされた。

ハリス氏は選対本部での演説に先立ちホワイトハウスでも演説し、バイデン氏の功績を強くたたえた。 バイデン氏の撤退発表から一夜明け、民主党は後継候補をハリス氏で一本化することでまとまりつつある。 重鎮であるペロシ元下院議長もハリス氏への支持を表明し、党執行部の有力議員たちも支持に回る構えだ。 ほかに名乗りを上げる候補は現れていない。 ハリス陣営は、バイデン氏が撤退を表明してからの 24 時間で 8,100 万ドル(約 127 億円)の献金を集めたことも発表した。 「24 時間での献金額としては史上最高額」にあたると陣営は説明している。 (ワシントン・高野遼、合田禄、asahi = 7-23-24)

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バイデン氏撤退に米経済界反応 … 「トランプ前大統領の危険性を真剣に考えるべき」
 マスク氏はトランプ氏支持表明

【ニューヨーク・小林泰裕】 バイデン米大統領が大統領選から撤退を表明したことを受け、米経済界からはバイデン氏の功績をたたえる声や、トランプ前大統領への警戒を示す声などが上がった。 マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、「彼が成し遂げたすべてのことに感謝する」と X (旧ツイッター)に投稿し、バイデン氏をたたえた。 クリントン政権で財務長官を務め、現在はオープン AI 取締役のラリー・サマーズ氏は「バイデン氏が撤退した今、トランプ前大統領の危険性を真剣に考えるべきだ。 彼の政策は米経済の安全性を損なう。」として、トランプ氏以外が大統領に就くべきだと強調した。 一方、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は、「かつて、個人の自由と利益を最大化するのは民主党だったが、今は共和党だ」と X に投稿し、改めてトランプ氏支持を表明した。 (yomiuri = 7-22-24)

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討論会「民主党内はパニック」 不安露呈のバイデン氏、交代論も浮上

11 月の米大統領選に向け、27 日に開かれた 1 回目のテレビ討論会は、バイデン大統領 (81) を擁する民主党にとって極めて厳しい結果となった。 高齢への不安が指摘されてきたバイデン氏は、全米の注目が集まる場で、言い間違いや活力のなさを露呈した。 動揺した党内から交代論が噴き出したとも報じられている。 討論会後、バイデン氏の陣営は、騒然とした雰囲気に包まれていた。 会場にいた民主党の有力政治家、カリフォルニア州のニューサム知事には、「バイデン氏の撤退を望むか?」、「代わりに立候補する考えは?」と記者からの質問が殺到した。 ニューサム氏は「全くない。 我々は全てを(バイデン氏に)賭けたのだ。」と否定すると、早々と取材対応を打ち切った。

一方、共和党のトランプ前大統領 (78) の側近らは、質問が尽きるまで取材に応じ「(トランプ氏が)力強さをみせた」と強調。 高揚を隠さなかった。

バイデン氏の「老い」 開始早々に顕在化

討論会の中継を終えた直後、CNN ジョン・キング記者は「これはゲームチェンジ(形勢を一変させる)の討論会だった」と言い切った。 「民主党内では深く広いパニックが起きている」とし、バイデン氏に大統領選からの撤退を促す声さえ出ている、と伝えた。 他の主要メディアにも「民主党がパニック(フィナンシャル・タイムズ)」、「悪夢だ(政治専門紙ヒル)」、「バイデン氏が苦戦(ワシントン・ポスト)」といった見出しが並んだ。 CNN が視聴者に討論会の「勝者」を尋ねた調査では、トランプ氏が 67% で、バイデン氏の 33% を大きく引き離した。

バイデン氏の「老い」は、全米の有権者がかたずをのんで見守る画面で開始早々から顕在化した。 何度かせきを繰り返し、声も普段よりかすれて小さかった。 開始から 10 分が経ったころ。 医療保険制度の強化について語るうち、言い間違いをきっかけに言葉がよどむ。 3 秒ほど下を向いたまま動かなくなった。 さらに「(高齢者向け保険の)メディケアを退治した」と、意味の通らない言い間違いを重ねた。 その後もたびたび言葉がつかえたり、トランプ氏の発言中に視線をさまよわせ、口も半開きになったりする場面が目立った。

バイデン陣営「大統領は風邪で」

米メディアによると、バイデン陣営は「大統領は風邪で、出足はゆっくりだったが、本来のペースを徐々に取り戻した」と釈明した。 バイデン氏は後半、ユーモアを交えて語るなど調子を取り戻したようにも見えたが、前半の失態を取り返すことはできなかった。 一方のトランプ氏は普段通り、一方的に持論を展開した。 事実と異なる主張をしたり、誇張したりする場面も目立った。 ボストン・カレッジのピーター・スケアリー教授(政治学)は「トランプ氏は何も特別なことをしなかったのに、バイデン氏の見るに堪えない振る舞いのおかげで、心身ともに力強さを感じさせた」と話した。

従来も民主党にとって、バイデン氏の高齢への不安は解消しがたい「爆弾」だった。 ただ、本人が再選を目指すと決めた以上、党内では異論を抑え、一丸となって支えようとする態勢を整えてきた。 今回の討論会が、その結束に動揺をもたらすのは確かだ。 大統領選の年の 9 月以降に実施されてきた通例の討論会とは異なり、今回は 6 月という異例の早期開催だった。 前倒しを提案したバイデン陣営としては、討論会で高齢への不安を払拭し、それを弾みに選挙戦を有利に進めたい狙いがあった。 狙いが裏目に出て「惨敗」といえる結果に終わり、にわかに戦略を練り直す必要が出てきた。

バイデン氏が正式に民主党の大統領候補として指名される党全国大会は 8 月。 本人が立候補断念を表明すれば、手続き上は、他候補を擁立することも不可能ではない。 現職大統領が、大統領選まで半年を切ったこの時期に撤退した例はなく、「バイデン交代論」はまだ現実的ではない。 ハリス副大統領を含む次世代の政治家にも、衆目が一致する有力な後継者がいるわけではない。 それでも、今後数週間で、今回の「惨敗」が世論調査などを通じて如実に示される可能性もある。 その場合、このままバイデン氏を擁して大統領選へ突き進むべきなのか、民主党は極めて困難な再考を迫られることになる。 (アトランタ・望月洋嗣、高野遼、asahi = 6-28-24)


トランプ氏「米全体の大統領に」 指名受諾演説、バイデン氏批判は抑制 - 銃撃後初・米共和党大会

【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)】 トランプ前米大統領 (78) は 18 日、最終日を迎えた共和党全国大会で、大統領候補の指名受諾演説を行った。 13 日に銃撃を受けて負傷した経験を踏まえて「米社会の不和と分断を癒やす。 米国の半分でなく、全体のための大統領になる。」と表明。 バイデン大統領 (81) に対する批判は抑制した。 トランプ氏は 1 時間 32 分に及んだ演説の冒頭約 15 分間を割き、銃撃事件の様子に初めて言及。 「神が味方してくれた。 頭を動かしていなかったら銃弾は命中していた。」と振り返った。 事件で亡くなった消防士だった男性の防火服とヘルメットを演壇のあるステージ上に飾り、哀悼の意を示した。

トランプ氏がこの日、バイデン氏の名前を出したのは対イラン政策を批判する際の 1 回だけ。 4 年前の指名受諾演説では約 40 回口にし、大半を批判に費やしたのとは様変わりした。 ただ、民主党への攻撃は従来通りで、自身に対する刑事訴追の 4 件は「党派的な魔女狩り」だとの主張を繰り返し、起訴取り下げをバイデン政権に求めた。 根強いインフレや、ロシアによるウクライナ侵攻などについてもバイデン政権の指導力のなさを批判した。 (jiji = 7-19-24)

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トランプ氏、副大統領候補にバンス上院議員を選出 … 白人労働者層を描いた回想録がベストセラー

【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州) = 淵上隆悠】 米大統領選で、共和党の指名獲得が確実なドナルド・トランプ前大統領 (78) は 15 日、副大統領候補に J・D・バンス上院議員 (39) を選んだと発表した。 トランプ、バンス両氏は、15 日に開幕した党大会氏で、正副大統領候補に正式指名される。  トランプ氏は自身の SNS に、「熟考を重ね、最もふさわしい人物だと決断した」と投稿した。 オハイオ州出身のバンス氏は、2016 年出版の回想録「ヒルビリー・エレジー」で、製造業が衰退した「ラストベルト」の一つである同州の貧困に苦しむ白人労働者層の姿を描いた。 同年大統領選で、トランプ氏を白人労働者が熱狂的に支持した現象が理解できるとして、ベストセラーとなった。 バンス氏はかつてはトランプ氏を批判していたが、支持に転じ、トランプ氏の推薦を受けて 21 年 11 月の上院選を戦い、初当選した。 (yomiuri = 7-16-24)

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トランプ氏集会で発砲音 負傷か、拳突き上げ会場去る

【ワシントン = 大内清】 11 月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領 (78) が東部ペンシルベニア州バトラーで開催した支持者集会で 13 日、トランプ氏の演説中に複数の発砲音があり、現場からの映像によると同氏は壇上に伏せる格好で倒れ込んだ。 トランプ氏はその後、警備にあたるシークレットサービス(大統領警護隊)に支えられて車両に乗り、会場を後にした。 同氏は立ち上がる際に拳を突き上げる仕草をみせた。 米メディアは、トランプ氏がけがを負ったと伝えた。 現場では聴衆から大きな悲鳴が上がった。 (sankei = 7-14-24)

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トランプ前米大統領に有罪 不倫相手へ「口止め料」隠すため文書偽造

米大統領経験者が史上初めて刑事責任を問われた裁判で、ドナルド・トランプ前大統領 (77) が 30 日、元不倫相手への口止め料を隠すために業務記録を偽造した罪で有罪とされた。 ニューヨーク州の裁判所で、陪審員が判断した評決を伝えた。 無罪を主張してきたトランプ氏は控訴するとみられる。 トランプ氏は評決の後、裁判所の廊下で報道陣に向けて「恥ずべき事態だ。 腐敗した裁判官による、仕組まれた裁判だった。」と主張。 さらに「本当の評決は(大統領選がある) 11 月 5 日、国民によってなされる。 我々は最後まで戦い続ける。 そして勝つ。」と述べ、大統領選に向けて争い続ける意向を強調した。

評決は、トランプ氏の行為を「2016 年の大統領選をゆがめる犯罪的策謀だった」と訴えた検察側の主張を認めた形となった。 トランプ氏は 20 年の大統領選の敗北を認めず、24 年 11 月の大統領選で復権を目指している。 司法から有罪の判断を受けた人物が再び最高権力者の座をうかがう、きわめて異例の事態となった。 公判は 4 月 15 日に陪審員の選任から始まり、約 6 週間続いた。 計 22 人の証人尋問などを経て、ニューヨークのマンハッタンに住む 18 歳以上の市民から選ばれた 12 人の陪審員は 5 月 29 日から評議を始めていた。 有罪を判断するためには全会一致が必要だった。

この事件では複数の小切手や帳簿への記載が問題となった。 検察は一つ一つの偽造を別の行為ととらえ、計 34 件の罪で起訴していた。 業務記録の偽造はニューヨーク州法では「軽犯罪」に過ぎないが、選挙法違反など他の犯罪を隠蔽する意図があれば重罪になる。 陪審員はこの点についても、検察側の主張を認めた。

トランプ氏が勝利した 16 年の大統領選は、民主党候補のヒラリー・クリントン氏と接戦だった。 トランプ氏のスキャンダルが公になれば大統領選の結果に影響する可能性があり、陣営は特に、女性をめぐる不祥事が露呈するのを警戒していた。 トランプ氏が不倫相手だったとされる元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に 13 万ドル(約 2 千万円)を支払った一件も、こうした背景のなかで起きたことだった。

検察側は、この口止め料を一時肩代わりした元顧問弁護士、マイケル・コーエン氏ら 20 人を証人として法廷に呼んだ。 会話の録音やメールのやりとりなども証拠として提示した。 トランプ氏に犯罪を隠す意図があったことは「合理的な疑い」を差し挟む余地がないと断じ、「計画的な選挙不正」だと結論づけた。

一方、トランプ氏の弁護団は問われた罪のすべてで無罪を主張した。 検察が用意した証人は信頼性に欠けるとし、コーエン氏が肩代わりした口止め料に対する弁済について「弁護士費用」と記録しても問題ない、と正当性を強調。 トランプ氏は自ら証言することは避けたが、法廷外では、裁判について「魔女狩り」、「政治的迫害」だと言い募る姿勢を崩さなかった。

有罪評決を踏まえた量刑は 7 月 11 日にマーシャン判事から言い渡される予定だ。 州法に基づき、最長 4 年の禁錮刑が言い渡される可能性もある。 ただ、専門家の間では、トランプ氏にとっての「初犯」であることも踏まえ、執行猶予つきの刑や罰金刑になるとの見方もある。

仮に実刑が言い渡されても、共和党の候補者として 11 月の大統領選に立候補することは可能だ。 控訴している間は刑の執行停止を求めることもできる。 ただ、量刑の内容によっては選挙活動が制限されることも考えられるという。 米紙ワシントン・ポストは、執行猶予がついた場合、自宅軟禁措置を科せられたり、州外に移動する場合は保護観察の監督者による許可が必要になったりする可能性があると伝えた。 大統領に返り咲いた場合は、職務に支障をきたすとして刑事手続きを停止させようとすることなども想定される。

トランプ氏は四つの刑事事件で起訴されたが、11 月の大統領選までに司法判断が下されるのは、この口止め料をめぐる事件だけになる可能性が高い。 トランプ氏は起訴されるたび「政治的迫害」だと訴え、中核的支持層の結束を図ってきた。 今回の有罪評決が大統領選の結果に及ぼす影響は読みにくいが、中道寄りの有権者が有罪を重く受け止め、トランプ氏に不利に働く可能性はある。 (ニューヨーク・遠田寛生、中井大助、asahi = 5-31-24)

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トランプ氏が被告として法廷に 復権に挑む大統領経験者に歴史的審判

トランプ前米大統領による元不倫相手への「口止め料」をめぐる事件の初公判が 15 日、ニューヨーク州の裁判所で始まる。 米国史上、大統領経験者が法廷で罪に問われるのは初めて。 2016 年の大統領選に向け不都合な情報の隠蔽を図ったとされる事件の審判は、24 年、再び共和党の大統領選候補として立つトランプ氏の資質や政治手法を改めて問うものになる。

トランプ氏は無罪を主張しており、公判には 2 カ月近くを要する見通しだ。 トランプ氏はほかにも三つの事件で起訴されているが、いずれも公判準備に時間がかかっており、11 月の大統領選までに評決が出るのは「口止め料」の事件だけになる可能性もある。 有罪になっても大統領選への立候補は可能だが、前例のない事態だ。

マンハッタンにある裁判所の周辺では 15 日早朝から報道陣が集まった。 支持者や抗議デモの参加者が集まることが見込まれており、厳重な警備態勢がとられた。 裁判所は、公判には 6 - 8 週間かかるとの見通しを示す。 水曜日を除く週 4 回、開廷し、原則としてトランプ氏本人が出廷する。 公判は、市民から 12 人の陪審員を選ぶ手続きで始まる。 陪審員選びには数日かかる可能性があり、その後に冒頭陳述などの審理に入る。 審理が終わると、陪審員が非公開の評議で有罪か無罪の評決を下す。

起訴状によると、トランプ氏は 16 年の大統領選前、かつて不倫関係にあったとされる元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に 13 万ドル(約 2 千万円)の「口止め料」を支払い、これを隠すために業務記録に虚偽の記載をした。 口止め料の支払い自体は違法ではないが、「弁護士費用」と偽って会計処理したことが罪に問われている。 関連する請求書や小切手、帳簿の虚偽記載は 34 件に上る。 検察は「大統領選で、自らに不利な情報を有権者から隠すため、業務記録を繰り返し不正に改ざんした」と主張している。

ニューヨーク州法では、業務記録の改ざんは「軽犯罪」にとどまる。 だが、選挙法違反などほかの犯罪行為を隠す意図で虚偽記載が行われていれば「重罪」に格上げとなる。 初犯で執行猶予がつく可能性はあるが、重罪なら 1 件につき最長で禁錮 4 年の法定刑だ。 トランプ氏は 23 年 3 月に起訴され、罪状認否では無罪を主張した。 初公判を前に開いた会見でも「すべてはペテンだ。 犯罪ですらない。」と述べ、公判では自ら証言に立つ意向を示している。 (ニューヨーク・高野遼、asahi = 4-15-24)