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NZ 国内の行動規制解除へ 新規感染・感染中ともにゼロ

ニュージーランドのアーダーン首相は 8 日、新型コロナウイルスの感染を防ぐための行動規制について、9 日から外国人の入国制限を除いてすべて解除すると発表した。 大規模集会が可能になり、店舗の利用者の人数制限などもなくなる。 8 日までに 17 日間連続で新規感染者がゼロで、感染中の人もゼロになったためだ。 新型コロナの警戒水準(4 段階)でレベル 2 から一番下のレベル 1 に下げる。 同国では 1,504 人が感染したが、亡くなった 22 人を除く全員が回復した。

政府は引き続き、かぜのような症状ならば検査を受けるように求める。 また、感染経路を追跡しやすくするため、人々に 5 月に導入したスマートフォン用の感染追跡アプリの利用も勧める。 利用者がアプリを使って、事業所の入り口などに表示された QR コードをスキャンすることで、日々の行動を記録できる。 同国は 3 月 20 日に外国人の入国を原則禁止し、同月 26 日に、警戒水準をレベル 4 に上げて全土を封鎖する外出規制を敷いた。 その後、感染の抑制傾向が顕著になり、4 月以降、段階的に規制を緩和していた。 入国禁止についてはまず、7 月以降に感染が抑えられている隣国のオーストラリアや周辺の島国に限って緩和する方向で検討している。 (シドニー = 小暮哲夫、asahi = 6-8-20)


物流センター、感染者 96 人に 韓国、2 日連続で 50 人超 - 新型コロナ

【ソウル】 韓国政府は 29 日、新型コロナウイルスの新規感染者が 58 人だったと発表した。 大半がソウル近郊の物流センターで発生した集団感染と関連しており、同センターに絡む感染者はこれで計 96 人になった。 政府はソウルなど首都圏での感染拡大を警戒し、29 日午後 6 時から 6 月 14 日まで、首都圏住民に外出自粛などを要請。 博物館などの公共施設を休館とする。 政府は 1 日 50 人以上の新規感染者が 2 週間続いた場合などに外出制限を一段と強化する方針を示しているが、50 人を超えたのは前日の 79 人に続き、2 日連続。 当局は物流センターの勤務者を含む約 4,300 人の検査を進めている。 (jiji = 5-29-20)

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制限緩和した韓国、82 人が集団感染 4 月以来の規模に

韓国保健福祉省は 28 日、ソウル郊外の物流センターで新型コロナウイルスの集団感染が発生し、同日午前までに従業員ら 82 人の感染が確認されたと発表した。 韓国政府は流行が落ち着いたとして、今月 6 日に行動制限の要請を大幅に緩和した。 ただ、緩和後にソウルのクラブでも集団感染が起きており、「第 2 波」への警戒感が強まっている。

 同省によると、集団感染があったのは、京畿道にあるインターネット通販大手の物流センター。 28 日に発表した韓国全体の新規感染者数も 79 人に上った。 前日は 40 人だった。 1 日当たりの新規感染者が 70 人を超えるのは 4 月 5 日以来で、ソウル市内にある別の物流センターや京畿道のコールセンターなどでも感染者が確認されているという。

韓国では 4 月末から 5 月初めにかけて新規感染者数が 1 桁まで下がり、政府が不要不急の外出自粛などを求めた要請を解除。 今月 20 日からは高校 3 年生の登校が再開された。 また、6 月 8 日までに小中高校の全学年の登校を認める予定になっている。 ただ、要請の解除後、ソウルのクラブで集団感染が発生。 このクラブに関連した感染者は 28 日までに 261 人に達している。 国内で再び感染が広がっているとの懸念から、一部の学校は授業をオンラインに戻した。 また、今週に入り、政府の要請に基づいて全国のバスやタクシー会社、ソウルの地下鉄を運行するソウル交通公社などが利用客にマスク着用を義務づけた。 (ソウル = 鈴木拓也、asahi = 5-28-20)


世界の感染者数、累計 500 万人超える 死者は 32 万人

新型コロナウイルスの世界の感染者が 21 日、累計で 500 万人を超えた。 死者は約 32 万 8 千人。 米ジョンズ・ホプキンス大学が集計した。 12 日前後で 100 万人ずつ増えるペースが続いている。 累計感染者は 4 月 3 日に 100 万人を超え、同 15 日に 200 万人、28 日に 300 万人、今月 10 日に 400 万人を記録していた。 感染者が最も多いのは 155 万人超の米国で、約 30 万人のロシア、約 29 万人のブラジルが続く。 増加の伸びが抑えられ始めた欧州を、感染が拡大している新興国が上回る状況となっている。 死者も米国が約 9 万 3 千人で世界最多。 次いで英国が約 3 万 6 千人、イタリアが約 3 万 2 千人となっている。 (asahi = 5-21-20)


感染者増のインドなどにサイクロン上陸 数百万人が避難

インド東部とバングラデシュに 20 日夜、大型のサイクロンが上陸し、暴風や高潮による被害で少なくとも 22 人が死亡した。 300 万人以上が避難したが、新型コロナウイルスの感染者が増えている両国で、避難所で人が密集して感染が拡大する懸念も高まっている。 地元メディアなどによると、数千棟の家屋の倒壊や洪水などでインドでは 14 人の死亡が確認された。 バングラデシュでも避難所へ向かう途中に倒木で 5 歳の男児が死亡するなど、8 人が犠牲になった。

バングラデシュは川の河口に位置し、国土の大部分が標高の低いデルタ地帯にあることから、高潮で広範囲が水没しやすい。 100 万人以上のロヒンギャ難民が暮らす南東部コックスバザールのキャンプは、サイクロンの直撃は免れた模様だが、被害状況を国際機関などが確認している。 両国では新型コロナの感染者が増加しており、感染が拡大しないよう避難所の定員を制限したり、消毒を徹底したりする対策が取られた。 今回の大型サイクロンは、1999 年にインド東部で約 1 万人が犠牲となったサイクロンに匹敵する規模だという。 (奈良部健、asahi = 5-21-20)

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インドの感染者、8 万 6 千人に 中国を上回りアジア最多

インドで新型コロナウイルスの感染者数が中国を上回り、アジアで最多となった。3 月末から全土の封鎖(ロックダウン)を実施してきたが、感染の拡大に歯止めがかかっていない。 米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、16 日現在のインドの感染者数は約 8 万 6 千人で、中国の約 8 万 4 千人を超えた。 人口は中国の 14 億人超に対し、インドは約 13 億 5 千万人を抱える。

経済発展研究所のマノジ・パンダ教授は「中国とインドは政治体制が異なり、民主主義国家のインドは中国ほど迅速で強力な措置をとれない」と分析する。 死者数はインドが約 2,800 人と、中国(約 4,600 人)より少ない。 インドのバルダン保健担当相は 15 日、「死亡率は世界平均 (6.92%) より、インドは 3.23% と低く抑えられている」と語った。 インドでは 3 月 25 日から、全土で罰則付きの外出規制が実施されてきたが、新規の感染者が増え続けている。 政府は「検査能力を 1 日 9 万 5 千件まで増やした」とし、検査数が増えたことで感染者の判明も増加したと説明している。

感染者増の背景には手洗い設備の普及の遅れがあると、公衆衛生の専門家は指摘する。 病院でさえも基本的な手洗いの設備がないことがあり、多くの院内感染が報告された。 貧困層の過密な住環境は、家庭内での飛沫感染の拡大リスクが大きいとみられる。 アジア最大級で約 100 万人が暮らすとされる商都ムンバイのスラムでも感染者が確認され、爆発的な拡大が懸念されている。

モディ首相は 12 日、3 度目となる封鎖期間の延長とともに、外出制限を緩和していく方針を示した。 すでに感染者数が少ない地域では徐々に店舗や工場を再開させ始めている。 海外にいるインド人を帰国させるための航空便が飛び始めたほか、職を失った出稼ぎ労働者を帰郷させるため臨時列車の運行も始まった。 こうした移動制限の解除は、感染をさらに広げるリスクをはらむ。

モディ首相は外出制限の緩和とともに、28 兆円規模の経済対策も打ち出した。 長期化する外出制限で経済に深刻な影響が出ており、国民の不満をやわらげる狙いがあるとみられる。 感染拡大が続く中での規制緩和は時期尚早との指摘もあるが、公衆衛生財団のギリダラ・バブ教授は「封鎖を緩和しなければ貧困層が生きていけない。 重要なのは経済とのバランスだ。」と話す。 (奈良部健、asahi = 5-16-20)


国境開放へ動き出した欧州 迫る夏、バカンス需要の重み

欧州連合 (EU) の各国で、新型コロナウイルスの影響で 3 月半ばから続けていた国境封鎖を段階的に緩和する動きが始まった。 夏のバカンスシーズンを前に、域内経済にとって重要な観光産業などへの打撃を抑える狙いだ。 日本など域外からの渡航制限の解除はまだ見通せない。 ドイツは 13 日、周辺国との出入国の制限の緩和を決めた。 ルクセンブルクとの国境管理を 15 日で終え、デンマーク国境での管理も近く解除する方針だ。 フランスやオーストリア、スイスとの国境管理は 6 月 15 日まで続けるが、この間の管理は抜き打ち方式にするなどして緩め、同日以降の全面解除をにらむ。

ドイツでは 3 月 16 日以降、通勤や物流などを除き、この 5 カ国との間で国境管理を始めた。 ウイルスの感染が急拡大している時期だった。 すでに隣接するポーランドなどが入国制限を始めていたのを受けたものだが、人の移動の自由が基本理念の EU にあって、苦しい決断だった。 だが、感染者数の拡大ペースが落ち、4 月下旬から店舗再開などの規制緩和を段階的に進めている。 これに合わせ、感染が落ち着いている国との間の移動の制限を緩める判断となった。 オーストリアも 13 日、6 月 15 日にドイツ、スイスとの国境管理を全面的に解除すると発表した。 エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト 3 国は 5 月 15 日から、互いの国境を開ける。

EU の行政を担う欧州委員会は 13 日、入国制限の緩和に向けた指針を発表。 感染状況に差がなく、検査や医療体制が整っている国どうしは足並みをそろえる必要があるとした。 前提となるのは、安全確保だ。 移動の制限を緩めた途端、感染の再拡大に見舞われないよう慎重を期す。 例えば、各地から人を受け入れるホテル向けの指針で欧州委は、エレベーターの相乗りを避けたり、共用スペースでの人数制限を設けたりするよう提案。 宿泊客の連絡先をきちんと確認するほか、ドアノブや蛇口、椅子のひじかけの消毒といった細かな点まで対応策を例示した。 (野島淳 = ベルリン、青田秀樹)

EU が域内での移動の自由の再確立に動くのは、夏のバカンスが近づいているためだ。 旅行や飲食業などは EU の域内総生産の約 1 割を占める。 6 - 8 月、域内の市民の旅行は 3 億 8,500 万件を数え、消費額は 1,900 億ユーロ(約 22 兆円)に上るという。 オーストリアでは、ドイツからの旅行客が観光業の大きな収入源。 地元報道によると、昨夏は延べ約 800 万人が来訪し、国別の外国客では最も多い。 同様にドイツなど欧州北部からバカンス客が繰り出す地中海沿いのギリシャやクロアチアにとって観光は、雇用でも国内総生産でも 2 割超を占める一大産業だ。

欧州で最初に感染爆発が起きたイタリアも、観光業が国内総生産の 13% を占める。 だが、周辺国はまだイタリアとの国境開放には慎重姿勢で時期を明言していない。 コンテ首相は 13 日の記者会見で「イタリアが EU の外に置かれてしまう」と不快感を示した。 欧州委は、国境管理の緩和に当たっては、「差別的な対応があってはならない」と釘を刺している。

世界保健機関 (WHO) は加盟国が行動制限解除にあたって注意するべき指針を 6 つ設け、その一つに、他地域からウイルスを持ち込まれた際の対応を挙げている。 WHO の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は 13 日の記者会見で、「多くの国が(隣国と)リスクや感染対応を同等にすることに目を向けている」と述べ、対応の水準を合わせることの重要性を示した。 EU は日本など域外からの来訪者の制限は 6 月 15 日まで続ける方針を示しているが、その後に緩和できるのかは不透明だ。 EU 各国でも感染状況に違いがあり、まず域内で足並みをそろえることを優先するとみられる。 (ウィーン = 吉武祐、ローマ = 河原田慎一、asahi = 5-19-20)


シンガポール感染者急増 忘れられた人々「時限爆弾」に

新型コロナウイルスの流行が始まった当初、徹底した接触者の追跡で感染の広がりを食い止めていたシンガポールで、感染者数が急増している。 建設業などで働く外国人労働者の間で感染が急拡大したためだ。 さらなる増加を防ごうと、見過ごされがちだった労働者の生活環境の改善に注目が集まっている。 「新型コロナは寝食をともにする家庭内で感染率が高い。 外国人労働者の宿舎は、大きな家みたいなものだった。」 12 日、記者会見に臨んだガン・キムヨン保健相は感染拡大の背景をこう説明した。

感染者数は 16 日時点で 2 万 7,356 人で、うち 9 割以上が専用宿舎に住んでいた外国人労働者だった。 宿舎に住む全約 32 万 3 千人の 8% 近くが感染しており、さらに増える見込みだ。 大部屋に 2 段ベッドを並べて 10 人以上で寝るような宿舎もあり、過密な環境が急速な広がりを招いたとみられる。 「トイレやシャワーなどの清掃がいい加減で、非常に不衛生な宿舎もあった。 何より問題だったのは、体調が悪くても声を上げられなかったことだ。」 宿舎で労働者を診察した医師は言った。

契約によっては医療費は自己負担。 病気になって現場に出られないと解雇されたり、収入を減らされたりする心配もあった。 「仲介業者に借金がある場合もあり、彼らはお金のことを何より心配する。 病気だと診断され、泣き出す人もいたほどだ。」と振り返る。 感染者の発見や接触者の追跡は難航。 感染の疑いがある人をなるべく早く見つけて隔離する政府の戦略は、ここでは十分に機能しなかった。

ただ、宿舎での集団感染が発覚した 4 月以降、政府は次々に手を打った。 集団感染が出た宿舎は外との往来を禁止して封鎖。 清掃や消毒、住人に距離を取らせるといった対策を取り、市民の生活に不可欠な仕事に就く労働者はホールなどを改装した一時宿泊施設に移した。 これまでに 3 万人以上の PCR 検査が終了。 PCR 検査と抗体検査を組み合わせ、最終的に約 32 万人全員を検査する方針だ。

新型コロナに感染して回復した労働者の滞在場所としてクルーズ船などを準備したほか、新しい住宅も建設する。 賃金については「政府は税金の免除などをしており、雇い主に原資はある。 賃金の支払いや雇用の維持を求めている。(ジョセフィン・テオ人材相)」という。 取り組みの成果を示すため、政府は 5 日、外国人労働者向けの一時宿泊施設を公開。 バングラデシュから来て 12 年というシャミン・カーンさん (35) は「エアコンや無線 LAN など設備が充実していてうれしい」と語った。

この施設に移る前の宿舎は一部屋に 12 人。 新型コロナの流行後はシャワーへの行列も 1 メートル間隔を空けるなどの対応が取られたが、感染は広がった。 いまはベッド間は 2 メートル、1 人当たり 6 平方メートルの空間がある。 最大の心配事は「昨年 2 月以来の帰郷ができないこと」だという。 民間の支援も広がる。 労働者の支援団体「イッツレイニング・レインコート」代表のディーパ・スワミナタンさん (48) は「宿舎では、感染が急速に広がるだろうと心配していた。 残念ながら現実になった。」と話す。

労働者の要望を聞きながら、食事や物資の支援を続けている。 新型コロナが広がる前に約 150 人だったボランティアは、500 人規模になった。 「どんな社会にも『忘れられた』人たちがいる。 だから私たちは目配りを忘れてはいけないし、気づいたら助けなければいけない。 世界のどこでも同じだ。」 国外から人材や資金を集めて経済成長を遂げたシンガポールでは、約 570 万の人口の 4 割近くを外国人が占める。 そのうち約 30 万人にのぼる低賃金の建設労働者については、雇用環境や住環境がたびたび問題視されてきた。

国連大使や駐米大使などを歴任したトミー・コー氏 (82) は 4 月、「(労働者の宿舎は)時限爆弾のようなものだった」、「今回の事態を『目覚まし時計』として、ひどい扱いをやめるべきだ」とフェイスブックに書き込み、それを許してきた政府を批判。 投稿は 3 千回以上シェアされた。 移民問題を扱ってきた人権団体 HOME は 4 月、ニュージーランドの団体と共同で約 100 人の労働者への調査を実施。 「労働者は感染防止策を知っていたのに、部屋の定員が多いなどの環境要因で実践できなかった」と指摘した。

調査担当者はこう訴える。 「コロナの流行は、彼らがこの国に欠かせないことをはっきりさせた。 感染が広がったら困るとか、労働力を安く使えるといった費用対効果ではなく、労働者の人権問題として雇用環境を見直すべきだ。 労働者たちが重圧なしに声を挙げられる仕組みも必要。 問題はコロナの流行が終わった後にどうなるかだ。」 (シンガポール = 西村宏治、asahi = 5-17-20)

前 報 (4-27-20)


ウイルス・ハンターが受けた衝撃 新型コロナ出現よりも

新型コロナウイルスは国境を越え、世界中に感染が拡大している。 野生動物が持つ「未知のウイルス」を事前に発見し、感染リスクに備える予防的措置に取り組んできた専門家からは、どのように見えるのか。 「ウイルス・ハンター」と呼ばれる、デニス・キャロル元米国際開発局新興感染症室長に電話で取材をした。

- - 新型コロナウイルスをどのように見ていますか。

「新型コロナは過去に、中国や東南アジアで発見された複数のコロナウイルスとよく似ています。 ゲノムは、SARS (重症急性呼吸器症候群)や MERS (中東呼吸器症候群)を引き起こすコロナウイルスとも非常に似ています。 これらのウイルスと同様、コウモリなどの野生動物から人間へと感染したとみられ、驚きはありません。 むしろ、これからはもっと多くのウイルスが動物から人間へとうつるでしょう。」

- - どうしてですか。

「大きな理由は、世界人口の爆発的な増加です。 20 世紀初めは 20 億人以下でしたが、それから 60 億人増え、現在は 80 億人に迫っています。この人口増加に伴って農地拡大や都市化による森林伐採などが続き、ウイルスを持っている野生動物と人間の距離が近づき、感染のリスクが高まっています。」

「グローバル化の影響も大きいです。 以前は感染が起きてもウイルスが一つの地域にとどまっていましたが、人が世界中に移動するようになったことで、ウイルスも広がるようになっています。 新型コロナはこの典型と言えます。」

- - 具体的に新型コロナは、どのように人間へ感染したのでしょうか。

「SARS の場合は、コウモリ起源のウイルスがつばやフンなどを通してハクビシンに感染して市場に持ち込まれ、そこから人間に感染したと考えられています。 非常に似た出来事が、新型コロナでも起こったと想像できます。 コウモリ起源のウイルスが哺乳類のセンザンコウに感染した可能性が指摘されています。 一方、農家がコウモリのフンなどから感染した可能性もあります。 感染経路については、さらなる調査を待つしかありません。」

- - 2009 年には米国際開発局 (USAID) で「Predict」という取り組みを始めていますが、どのような活動をしていたのですか。

「人間への感染が起こる前に、野生動物が持つウイルスの脅威を特定しようという事業です。 世界の専門家らと協力し、1 千種類以上のウイルスを発見しました。 野生生物から人間に感染する仕組みやリスクを理解し、感染が起こりやすい地域の地図もつくり、ウイルスへの対策を早くから始められるよう努めてきました。」

「しかし、自然界には 160 万種類ものウイルスが存在するとされます。 私たちは中国や東南アジアで新型コロナに非常に近いウイルスを発見、追跡してきましたが、新型コロナそのものではありませんでした。 パンデミックを防ぐためには、はるかに多くのウイルスを発見し、理解を深めなければなりません。 18 年にはウイルス発見の加速に国際社会が一丸となって取り組む必要があると提唱し、日本政府の組織とも協議を行いました。 ところが、Predict は今秋で終了することが決まりました。 米国際開発局のような官僚機構にとって、ウイルス発見の事業は革新的過ぎたようですが、コロナ危機を受けて再考されることを期待しています。」

コロナ脅威予見の映画に協力

- - 新たに「グローバル・バイローム・プロジェクト」というプラットフォームを立ち上げましたね。

「Predict で積み重ねた科学的知見をもとに、米国を拠点としない国際 NGO として、今年 2 月に発足しました。 アジア、アフリカ、欧州、南北アメリカの専門家が参加しています。 ウイルスの遺伝子情報などのデータベースをつくり、新型のウイルスにも効果をもたらすワクチン開発をめざすことも掲げています。 こうしたデータを活用することで、受け身ではなく、積極的な感染症対策に変えていこうという発想です。」

「新型コロナのワクチン開発は容易ではありません。 他のコロナウイルスのワクチンの開発例はなく、効果的なワクチンがいつになったら使えるようになるのかは不確実です。 それでも、多大な国際的な取り組みによって、いくつもの有望な候補が出ています。」

- - 新型コロナの脅威を予見したような米映画「コンテイジョン(11 年)」にも協力したそうですね。

「映画は、ウイルスが野生動物の間でどのように循環し、人間に感染するか、実に正確に描写しています。 99 年にマレーシアで起きたニパウイルスの感染拡大がモデルです。 大量のコウモリが生息する森の隣に、養豚場がつくられ、コウモリが持っているウイルスが豚へ、さらに人間へと拡大していきました。 ニパウイルスは死亡率が高く、感染した人の 7 割もが亡くなりました。」

「マレーシア政府は感染拡大後、封じ込めに成功しました。 豚を囲い込まれた施設で飼育し、コウモリと接触させない厳しい防疫措置をとったのです。 この例は、適切な措置をとれば、ウイルス感染を防げることを示しています。」

- - 新型コロナへの国際社会の対応はどうですか。

「私が驚き、ショックを受けたのは、新型コロナの出現ではなく、国際的な対応の欠如です。 05 年の鳥インフルエンザ、09 年の新型インフルエンザ (H1N1)、14 年のエボラ出血熱の際は、国際社会はもっと一致団結し、連携して取り組みました。 新型コロナは国際経済にも甚大な影響を与えていますが、各国は自国のことで精いっぱいになっているように見えます。 しかし、これは国境をやすやすと越え、世界中に広がるウイルスです。 国際社会で対応をまとめることが不可欠です。」

他国支援、沈黙するトランプ政権

- - トランプ米政権の対応をどう評価しますか。

「国家安全保障会議 (NSC) にパンデミック担当チームができていましたが、18 年に解体してしまいました。 中国での感染の初期情報もあったのに、政権内でうまく共有されず、本格的な対応をとるのが大幅に遅れました。」

「米国と中国は、保健や科学分野で強い協力関係があり、感染症対策でも効果的な情報共有や緊密な連携を可能にしていました。 しかし、トランプ政権による中国に対する危険で挑発的な言動はこの協力関係を損ねています。 パンデミックの最中に、世界保健機関 (WHO) への拠出金の見直しを表明したことも不幸でした。 WHO は組織として改善の余地があるでしょうが、現在拠出金を止めるのはタイミングが悪く、人々の助けになりません。」

- - あなたはブッシュ(子)、オバマ政権の感染症対策にも中心的に関わりましたが、どう違いますか。

「ブッシュ政権は、アフリカでのエイズ対策を大統領が指揮を執る課題に引き上げ、巨額の予算を投じ、国際社会で重要なリーダーシップを発揮しました。 オバマ政権も、新型インフルエンザ (H1N1) やエボラ出血熱の対策で同様でした。 両政権とも、国際的な健康上の危機に際し、米国人の健康を守るだけではなく、国際社会が団結して取り組むことを主導するという、重要な役割を果たしました。」

「今後、新型コロナウイルスは医療水準が脆弱で、貧困層が多い国々にも広がり、さらに厳しい事態が起こることも予想されます。 しかし、トランプ政権は、こうした国々を支援する必要性について、完全に沈黙しています。 一方、米国に代わって真の指導力を発揮している国もなく、非常に残念に思います。」 (ワシントン = 渡辺丘、asahi = 5-16-20)

Dennis Carroll : 1948 年生まれ。 91 年、米疾病対策センター (CDC) から国際開発局に移り、感染症対策の上級アドバイザー、新興感染症室長などを歴任し、19 年に退職。 感染症予防を目的とする「グローバル・バイローム・プロジェクト」を主導する。


新型コロナ死者、世界で 30 万人超 中国は全体の 1% に

新型コロナウイルスの感染による世界の死者が日本時間の 15 日、30 万人を超えた。 米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターが集計した。 世界で死者が 10 万人を超えたのは 4 月 11 日。 15 日後の同 26 日に 20 万人になり、それから 19 日で 30 万人に達した。

同センターによると、日本時間 15 日午前 10 時現在の世界の死者は 30 万 2,115 人。 最も多いのは米国(8 万 5,884 人)で、英国(3 万 3,693 人)、イタリア(3 万 1,368 人)、フランス(2 万 7,428 人)と続く。 感染者は累計で 443 万 8,371 人に上っている。 WHO がパンデミック(世界的な大流行)と認定した 3 月 11 日時点の死者は 4,292 人。 約 2 カ月で約 70 倍に達した。 当時は中国が全体の約 4 分の 3 を占めていたが、現在は約 1% にとどまる。 感染拡大の中心は欧米に移っており、アフリカや中南米での拡大が懸念されている。 (半田尚子、asahi = 5-15-20)


新型コロナ感染者数、ロシアが世界 2 位に 23 万人超

【モスクワ = 小川知世、メキシコシティ = 宮本英威】 ロシアで新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。 12 日に感染者数は 23 万人を超え、スペインや英国を抜いて米国に次いで世界で 2 番目に多くなった。 1 日当たりの新規感染者数は 10 日連続で 1 万人を上回り、3 月末から続く外出制限下でも増加に歯止めがかからない。 米欧で感染者数の増加が緩やかになる一方で、新興国での拡大が顕著になっている。

米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米東部時間 12 日午後 0 時(日本時間 13 日午前 1 時)時点で世界の感染者数は約 420 万 6 千人、死者数は約 28 万 7 千人。 最多は米国の 130 万人超で全体の 3 割を占める。 ロシアでは感染拡大のペースが高止まりし、感染者の 5 割がモスクワに集中する。 死者数は約 2,100 人。 政府は 12 日までに 580 万件にのぼる検査を増加の理由に挙げ、早期治療で死亡率を 1% 未満に抑えていると成果を強調する。 ただ死因の統計が正しく行われず、実際の死者数はもっと多いとの見方が強い。

プーチン大統領は 12 日から企業活動の制限を段階的に緩和する方針を示し、モスクワでは建設業と製造業が再開した。 外出制限は継続し、交通機関でのマスクや手袋着用も義務付けたが、制限緩和を急げばさらなる感染拡大を招きかねない。 政権内でも首相ら閣僚の感染が続き、12 日にはペスコフ大統領報道官の感染が新たに判明した。 病院での集団感染や、人工呼吸器の出火が原因とみられる火災による死者も相次ぎ、医療体制への懸念も深まっている。

感染者数の増加が鈍った米欧が制限緩和に動くなか、ロシアやブラジル、インドなど新興国では感染拡大の勢いが衰えていない。 インドネシアでは 12 日に東南アジアで初めて死者数が 1,000 人を上回った。 感染者の抑制に一定の成果を出しても、制限緩和後に再び感染拡大に転じるリスクも浮き彫りになっている。 韓国ではソウルのクラブで起きた集団感染で、二次感染を含む感染者数が 12 日に 100 人を超えた。

新型コロナウイルスが世界で最初に拡大した中国の湖北省武漢市では 9 日、都市封鎖の解除後初めて新たな感染者が確認された。 同市は約 1,100 万人の市民全員を対象に、感染の有無を調べる PCR 検査を実施することを決めた。 感染の再拡大を抑える狙いだ。 最大の感染国である米国では 12 日夕(日本時間 13 日朝)の時点で、感染者数が 136 万人、死者数が 8 万 2 千人を超えた。

米疾病対策センター (CDC) は 11 日、ニューヨーク市で新型コロナに関係した死者数が約 5,300 人多い可能性があると発表した。 3 月 11 日から 5 月 2 日の間、これまでは死者数が 1 万 8,879 人と報告されていたが、大幅に膨らむ可能性がある。 米 NBC ニュースは 12 日、経済が再開した州の都市圏で、感染率が急上昇しているデータがあると報じた。 ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策本部が 7日付けでまとめたが公表されていないという。 (nikkei = 5-13-20)


ロシアの感染者数、1 日 1 万人ペースで増加 … 制限緩和でさらに拡大の懸念

【モスクワ = 田村雄】 ロシアのプーチン大統領は 11 日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために経済活動を休日並みに抑制する「非労働」期間について、11 日までで終了すると表明した。 今後は連邦を構成する共和国や州、首都モスクワ市などが、それぞれ経済活動や外出に対する制限を緩和するかどうか判断する。 感染者がロシア国内の過半数を占めるモスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長は既に、原則的な外出禁止措置を今月末まで継続しつつ、12 日からは建設業など一部で業務再開を認めることを明らかにしている。 一方で、12 日から公共交通機関や商業施設でマスクと手袋の着用を義務づける。

モスクワより感染者が少ない共和国や州では、制限緩和が相次ぐ可能性もある。 ただ、ロシアでは 1 日約 1 万人のペースで感染者数が増えており、増加に歯止めがかかっていない。 政府は 11 日、国内の感染者数が前日から 1 万 1,656 人増え、22 万 1,344 人になったと発表した。 経済活動や外出への制限緩和で人と人の接触機会が増えると、感染がさらに拡大する恐れがある。 「非労働」期間は感染者の急増を受け、3 月下旬からロシア全土に導入していた。 (yomiuri = 5-12-20)


新型コロナ死者 28 万人超す 被害拡大、下火にならず

【ジュネーブ】 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルス感染症による死者が 10 日、世界全体で 28 万人を超えた。 3 月 31 日に 4 万人を上回って以降は、1 - 2 日ごとに 1 万人以上増える状態が続いており、被害拡大が下火になる気配はない。

感染者は 9 日に 400 万人を超えた。 死者が約 7 万 9 千人と世界最悪の被害が出ている米国は、870 万件超のウイルス検査を実施済みで、感染者も 130 万人以上で世界最多となっている。 欧州では英国とイタリアで死者が 3 万人を超え、スペインとフランスでも 2 万 6 千人を上回る。 欧米に死者の 84% が集中している。 (kyodo = 5-11-20)


ドイツで新型コロナ感染が再拡大、再生産数 1.1 に上昇

[ベルリン] 新型コロナウイルス感染拡大抑制に向けた外出制限措置が緩和されたドイツで、感染が再拡大する様相を見せている。 政府の公衆衛生研究機関ロベルト・コッホ研究所は 10 日、1 人の感染者が何人に感染を広げるかを示す「再生産数」が 1.1 に上昇したと発表した。 1 を上回ると感染が拡大していることを示す。 メルケル首相は 6 日、ロックダウン(都市封鎖)を段階的に緩和していくと発表。 商業施設や学校の再開を許可した。 ただ同時に、感染が拡大した場合には再び制限を可能にする「緊急ブレーキ」措置も導入した。

疫学の教授でもある社会民主党のカール・ローターバッハ議員は、週末の人出が極めて多かったことを指摘、政府の緩和判断は拙速に過ぎたとして、新型ウイルスの感染が再び拡大する可能性を警告した。 ロベルト・コッホ研究所の 10 日の発表によると、国内の新たな新型ウイルス感染者は 667 人増加し、累計感染者数は 16 万 9,218 人になった。 死者数は 26 人増加し、計 7,395 人となった。 (Reuters = 5-11-20)

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ドイツ、各地でクラスター確認 規制緩和に苦慮 - 新型コロナ

【フランクフルト】 メルケル首相が 6 日、新型コロナウイルスに絡む規制の大幅緩和を打ち出したドイツ各地で、クラスター(感染者集団)発生が確認されている。 どこまで規制を緩和するかは 14 州と 2 特別市ごとに決めるが、難しい地域も生まれそうだ。

西部ノルトライン・ウェストファーレン州は 8 日、食肉処理工場でクラスターを確認した。 11 日から飲食店などの再開が予定されているが、工場のある郡については 1 週間延期された。 北部シュレスウィヒ・ホルスタイン州でも食肉処理工場で同様のクラスターが見つかり、当局が対応を協議中。 中部テューリンゲン州では、高齢者施設の入居者や職員にクラスターが確認された。 現場となったグライツ郡は、二つの小さな町に限られているとして「郡全体を規制下に置くつもりはない」と主張、対応に苦慮している。 AFP/時事 = 5-9-20)

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ドイツ、経済始動へ大きな一歩 レストラン営業やプロサッカー再開へ

ドイツは経済活動を再開する方向に大きく踏み出した。 レストランやすべての商店の営業再開に向け準備を進めるとともに、プロサッカーリーグもシーズンを再開させる。 ロックダウンの多くは段階的に解除されるが、社会的距離を維持する措置は少なくとも 6 月 5 日まで延長される。 感染が局地的に再び拡大した場合には、地域ベースで制限措置を復活させる可能性がある。 メルケル首相は感染拡大の第 2 波が起きるリスクを抑えるために、これまで通り住民間の接触を控えるよう求めた。

メルケル首相は 6 日に国内 16 州の知事らと会合後、「ドイツではパンデミック(世界的な大流行)のまさに最初の段階が過ぎ去ったと言える」と述べた上で、新型コロナウイルスとの闘いはまだ初期の段階だとし、「状況が悪い方向へ逸れないよう注意しなければならない」と警告した。 今回の緩和措置では全ての店舗に人数を制限した上での営業再開が認められるほか、レストランは 9 日から衛生管理などを徹底した上で再開できる。 サッカーリーグは今月後半に再開予定だ。 (Arne Delfs & Birgit Jennen、Bloomberg = 5-7-20)

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