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WHO、コロナ予防に「ヒドロキシクロロキン」推奨せず

【パリ = 白石透冴】 世界保健機関 (WHO) は 2 日、抗マラリア薬の「ヒドロキシクロロキン」を新型コロナウイルスの予防薬として使わないよう「強く勧める」と発表した。 6,000 人以上を対象とした 6 つの無作為の研究で、死亡や入院を防ぐ効果がない可能性が高いとわかったと説明した。 ヒドロキシクロロキンはトランプ前米大統領が服用していると話した薬剤で、有効だと指摘する科学者もいた。 WHO は感染そのものを防げる効果についても、効果が無いという「中程度の確実性の証拠」があると指摘した。 「おそらく副作用の危険も高まる」とも付け加えた。 新型コロナ予防薬としてのヒドロキシクロロキンの調査は優先度が低く、ほかの薬剤の研究を進めるべきだと訴えた。

ヒドロキシクロロキンについて WHO は 2020 年 10 月にも、新型コロナ感染者の死亡率の引き下げに「ほとんどあるいは全く」効果がないと発表していた。 今回はさらに強い表現で否定的な見解を示した。 一方、WHO のテドロス事務局長は 1 日の記者会見で、過去 6 週間減り続けた世界の新規感染者数が再び、増加に転じたと明らかにした。 新型コロナ対策の緩み、変異ウイルスの広がり、気の緩みなどが原因だとみられるという。 「ワクチンだけに頼るのは間違っている」と述べ、マスクの着用など基本的な対策も続けるよう呼びかけた。 (nikkei = 3-2-21)


地中海の島「コロナフリー」宣言 接種 2 回済み観光再開

地中海に浮かぶギリシャ東部のカステロリゾ島が、住民の約 8 割が新型コロナワクチンの 2 度の接種を終えたとして「コロナフリー」を宣言した。 ギリシャでは観光業が国内総生産 (GDP) の約 2 割を占めており、コロナ禍からの経済復興には観光業の再開が不可欠だ。 政府は、観光地の島々で優先的にワクチン接種を進めることで、欧州内外からの観光客の呼び込みを狙う。

カステロリゾ島は、色とりどりの建物が海岸に立ち並び、イタリア映画「エーゲ海の天使」の舞台にもなった観光地。 人口は 500 人ほどだが、地元メディアによると、子どもなどを除き、接種の対象となる島民が 2 月末までに 2 回目の接種を終えたという。 地元保健当局の担当者は「大病院のない小さな島ではワクチン接種が不可欠だ。 観光客が入ってきた時の守りになる」としている。 ギリシャ政府は今後、人口 1 千人以下の 41 カ所の島を対象に、年齢や職種に関係なく、希望する全島民に接種を進める方針だ。

ミツォタキス首相は、ワクチン接種をてこに、春以降の本格的な観光再開を目指している。 2 月には、ワクチン接種が速いペースで進むイスラエルとの間で、ワクチン接種を終えた人の自由な行き来を認めることで合意。 欧州連合 (EU) に対しても、ワクチンの接種証明があれば域内の自由な移動を認める公的な証明書「ワクチンパスポート」を導入するよう提案した。 イタリアやスペインなど観光業に依存する国は前向きだが、ドイツやフランスなどは難色を示している。 (ローマ = 河原田慎一、asahi = 3-1-21)


英国、ロックダウンを段階的に緩和へ 6 月には全て解除

英国のジョンソン首相は 22 日の英議会で、新型コロナウイルスの感染抑止のためのロックダウン(都市封鎖)を 3 月 8 日から段階的に緩和すると発表した。 ワクチン接種が順調に進むことなどを条件に段階的に緩和を進め、6 月には全て解除する計画だ。 イングランドでは 1 月 5 日から全土で学校や商店を閉鎖、原則自宅待機とするロックダウンが続く。 今回発表された緩和計画はロンドンのあるイングランドが対象で、他の地域は各自治政府が対応を決める予定だ。

緩和計画は、@ 3 月 8 日に学校を再開し、屋外では同居人以外と 1 人までならピクニックも認める、A 4 月 12 日に小売店や美容院を再開し、飲食店の屋外営業も認める、B 5 月 17 日に 30 人までの屋外集会を認め、スタジアムのスポーツ観戦も条件付きで認める、C 6 月 21 日に全ての法的な規制を解除する - - の 4 段階になっている。 ただし、各段階に進むには、▽ ワクチン接種が順調に進む、▽ ワクチンには入院や死亡を減らす十分な効果があるという証拠がある、▽ 感染率が上がって医療サービスに過度な負担をかけることがない、▽ 変異ウイルスによって状況が根本的に変わることがない - - などの条件を満たしている必要がある。

ジョンソン首相は 22 日、「コロナから人々を守るためにできる全てのことをしながら、慎重かつ不可逆的に自由を取り戻す」と述べた。 英国の 22 日の新規感染者は 1 万 641 人で、1 月上旬の 6 万人超から大幅に減少した。 1 日あたりの死者も 178 人で昨年 10 月以来の少なさとなった。 ワクチン接種も順調に進んでいる。 ワクチンは 1 人 2 回の接種が必要で、全成人のおよそ 3 分の 1 にあたる 1,700 万人以上が 1 回目の接種を受けた。

ワクチンの効果も見え始めている。 英政府は 22 日、昨年 12 月に接種を始めた米ファイザー・独ビオンテック製のワクチンについて、80 歳以上の人が接種した場合、1 回目の接種後にはコロナの症状が出るリスクを 57%、死亡リスクも 56%、減らすことができたと明らかにした。 (ロンドン = 下司佳代子、asahi = 2-23-21)


米国、コロナ死者 50 万人突破 1 人目の判明から 1 年

【ニューヨーク = 野村優子】 米国で新型コロナウイルスによる死者数が累計 50 万人を超えた。 米国で 1 人目の死者が判明した 2020 年 2 月末から増え続けており、わずか 1 年足らずで第 2 次世界大戦の米国の死者数をも上回る事態となった。 記録的な死者数となるものの、足元では増加ペースに落ち着きもみられている。 米ジョンズ・ホプキンス大によると、米国の累計死者数は米東部時間 22 日午後 5 時前(日本時間 23 日午前 7 時前)時点で 50 万人を超えた。 バイデン大統領は 22 日、死者が近く 50 万人超となることを受けて今後 5 日間、ホワイトハウスや公共施設で弔意を示す半旗を掲げるよう指示した。

バイデン氏は 1 月下旬の就任当初、コロナによる死者が第2次世界大戦の死者を上回ったとして、「いまは戦時下にある」と強い危機感を示していた。 米退役軍人省によると、第 2 次世界大戦の米軍の死者数は約 40 万 5 千人だった。

米国で死者が膨らんだ歴史的な出来事と比べても、新型コロナの死者は突出している。 昨年 2 月 29 日に西部ワシントン州が米国初となる死者を発表して以来、1 年足らずで死者は急増。 ベトナム戦争の死者(約 5 万 8 千人)を昨年 4 月、第 1 次世界大戦の死者(約 11 万 6 千人)を昨年 6 月に上回り、感染再拡大が深刻となった今年 1 月には第 2 次世界大戦の死者を上回った。 米国の平均寿命は 20 年 1 - 6 月に前年に比べて 1 歳短くなり、マイナス幅は第 2 次世界大戦中の 1943 年以来の大きさとなった。

もっとも直近では、1 日あたりの新規死者数は減少傾向にある。 21 日の新規死者数(7 日移動平均)は 1,870 人と、1 月中旬の約 3,300 人から 4 割超減っている。 各州で行動規制を緩和する動きが広がっており、ニューヨーク市では 2 月中旬にレストランの屋内飲食が客数の上限付きで再開され、23 日からはスポーツや音楽イベントなど大型スタジアムでの観客受け入れも再開する。

当初計画は下回っているものの、新型コロナのワクチンも普及してきた。 米疾病対策センター (CDC) によると、22 日時点で少なくとも 1 回接種した人は 4,413 万人に上り、米人口の約 15% に相当する。 バイデン政権は約 3 億人の米国民全員分のワクチンを 7 月末までに供給すると表明しているが、現状の供給数は累計 7,520 万回(約 3,760 万人)分にとどまる。 一方、足元ではワクチン供給を巡る混乱が続く。 ロサンゼルス市では天候問題によりワクチンの到着が遅れ、前週に一部の大規模接種所を閉鎖。 約 1 万 2 千人分の接種予約が延期となった。 ペンシルベニア州はワクチン不足により、最大 10 万人分の予約が延期またはキャンセルになる可能性を示している。 (nikkei = 2-23-21)

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米の感染ペース、減速鮮明 一部でワクチン在庫不足も

【ニューヨーク = 野村優子】 米国で新型コロナウイルスの感染ペースの減速が鮮明となってきた。 1 日あたりの新規感染者数はおよそ 3 カ月ぶり、新規死者数もおよそ 1 カ月ぶりの低水準となった。 ワクチンについては米国民の 1 割超で接種が進む一方、在庫不足も一部地域で発生している。 各地で規制緩和が進むなか、気の緩みによる感染再拡大の懸念も出ている。

米ジョンズ・ホプキンス大によると、米東部時間 11 日午後 3 時(日本時間 12 日午前 5 時)時点の米国の感染者数は 2,734 万人、死者数は 47 万人超となった。 世界最大の感染国となる米国だが、10 日の新規感染者数(7 日移動平均)は約 10 万 4 千人と、1 月上旬につけたピークから約 6 割減となり、昨年 11 月以来の低水準をつけた。 新規死者数(7 日移動平均)も約 2,800 人となり、減少傾向が続いている。

ワクチン接種も進んできた。 米疾病対策センター (CDC) によると、11 日時点で 4,639 万回分のワクチンが接種されており、少なくとも 1 回接種した人は 3,472 万人となった。 これは世界最多で米人口の 1 割強にあたるものの、当初想定していたペースを大きく下回る。 マサチューセッツ州では接種加速を図るため 11 日から、75 歳以上の高齢者の接種に同伴した人も、ワクチンを接種できるようにした。

ワクチン普及に向けて、薬局やスーパーなど小売店での接種も始まる。 薬局チェーン大手 CVS は 11 日から、ウォルグリーンズは 12 日から一部店舗での接種を始める見通しで、ホームページを通じて予約を受け付けている。 米政府は 6,500 店舗に 100 万回分を供給する見通しだが、CDC によると当初の供給数は限定的になるという。 ワクチン不足も懸念されている。 カリフォルニア州ロサンゼルス市は、ワクチンの在庫不足により一部の大規模接種所を 12 - 13 日に閉鎖すると発表した。 米大リーグ、ドジャースの本拠地であるドジャースタジアムも接種所となっていたが、こちらも閉鎖される予定。 ガルセッティ市長は 10 日、「今週は 1 万 6 千回分しか届いておらず、これはほぼ 1 日分の接種回数にしかならない」と述べた。

米政府も、ワクチンの確保を急ぐ。 バイデン政権は 11 日、2 回の接種が求められるファイザー製とモデルナ製のワクチン 2 億回分を追加購入する契約を締結したと発表。 米政府によるワクチン購入量は計 6 億回分となる。バイデン大統領は 11 日、訪問先の NIH (米国立衛生研究所)で 7 月末までに 3 億人分のワクチンを供給できるとの見通しを示した。 従来は、夏の終わりまでに供給するとしていた。

感染ペースが落ち着いてきたことから各地で規制緩和が進んでおり、気の緩みを警戒する向きもでている。 米ニュースサイト、アクシオスが実施したアンケート調査によると、コロナ前の生活に戻ることが健康面に中程度から重大なリスクになると答えた人の割合は 66% と、10 月以来の低水準になったという。 こうした中で CDC は 10 日、2 重にマスクを着用することで感染リスクを大幅に削減できるとの研究結果を発表。 医療用マスクの上に布マスクを重ねて着用した場合、せきによる飛沫を 92.5% 防止する効果があったという。 (nikkei =2-12-21)


インドすでに 3 億人感染か 複数都市で集団免疫の可能性

人口 13 億 5 千万人のインドで、少なくとも 5 人に 1 人がすでに新型コロナウイルスに感染している可能性があることが、政府機関の調査でわかった。 サンプル調査に基づく推計で約 3 億人が感染した計算になる。 政府系のインド医学研究評議会が各地で抗体検査を実施。 対象となった一般人 2 万 8,589 人と医療従事者 7,171 人のうち、それぞれ 21.5% と 25.7% が陽性だった。 人口を元に単純計算すれば、約 3 億人が感染していると推計される。 4 日現在、インドの累計感染者数は米国に次いで多い 1,079 万人で、死者は 15 万 4,703 人に上る。

また別の調査では、首都ニューデリーの人口約 2 千万人のうち、56% がこれまでにコロナに感染し、抗体を持っている可能性も報告されている。 新型コロナの集団免疫を獲得するには、少なくとも人口の 60 - 70% が免疫を持つ必要があるとされる。 同評議会は、いくつかの都市ではすでに集団免疫を獲得している可能性があると指摘している。 インドの 1 日の新規感染者数は 1 万 1 千人ほどで、ピークだった昨年 9 月の 10 万人弱に比べれば、減少傾向にある。 首都ではマスクをしなければ 2 千ルピー(約 2,900 円)の罰金がとられることから、多くの人がマスクをしているが、郊外に出るとマスク姿はほぼ見られない。 (ニューデリー = 奈良部健、asahi = 2-9-21)


130 カ国でワクチン接種始まらず WHO、分配を依頼

世界保健機関 (WHO) のテドロス事務局長は5日の記者会見で、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっていない国が約 130 カ国に上り、接種が一部の国に集中しているとしてワクチン供給の偏りへの危機感を示した。 先行する国は、自国の医療従事者らへの接種が終わった段階でワクチンを他の国に分け与えるように呼びかけた。

テドロス氏は、これまでに世界で行われたワクチン接種のうち 4 分の 3 以上が 10 カ国に集中していると述べた。 ワクチンが行き届いていない国が多い半面、一部の国では重症化や死亡のリスクが高くない人への接種も進んでいるとして、「(各地の)高リスクの人々への接種に時間がかかるほど、ウイルスが変異したりワクチンが効かなくなったりする恐れが高まる」と指摘。 「すべての場所でウイルスを抑えないと(ウイルスとの闘いは)振り出しに戻る」と述べた。

テドロス氏は、すでにワクチン接種を始めた国は自国の医療従事者や高齢者ら高リスクの人々への接種が終わった段階で、途上国にも公平に分配する国際的な枠組み「COVAX (コバックス)ファシリティー」にワクチンを提供するよう呼びかけた。(ロンドン = 下司佳代子、asahi = 2-6-21)


台湾コロナ責任者を「この方」と呼ぶ中国 失礼と話題に

新型コロナウイルスの防疫をめぐり、台湾と中国の舌戦が過熱している。 台湾当局が中国製ワクチンの安全性に疑義を呈したところ、中国は台湾で人気のコロナ対策責任者を「この方」と呼んで痛烈に批判。 台湾でワクチン確保に対する世論の懸念が高まるなか、日本も台湾への援護射撃に乗り出した。 台湾はコロナの流行抑止に成功する一方、ワクチン接種は 3 月の予定で、欧米に比べて出遅れる。 台湾当局の対策本部を率いる陳時中衛生福利部長(厚生労働相に相当)はこれまで、各国のワクチン争奪戦の激化を理由に挙げつつ、中国製については安全性に疑問を呈し、「効果も限定的」と指摘。 導入の考えがないと説明してきた。

これに対し、中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は 1 月 27 日の記者会見で、多くの台湾人が知る陳氏を「この方」とあえて人称代名詞で呼び、台湾の防疫について「誠実に人々に説明すべきだ」、「中国を誹謗し、真相を隠して人々をだまそうとしている」などと述べた。 中国は 1 月以降、大陸に進出した台湾人ビジネスマンらに自国製ワクチンの接種を続けている。

この発言に台湾では「失礼だ」との受け止めが広がった。 蔡英文(ツァイインウェン)総統は同日、自身のフェイスブックに陳氏との写真を投稿。 「『この方』は陳時中。 台湾の対策本部トップです。」と記し、「すばらしい仕事ぶりで、ほとんどの台湾人もそう感じていると信じている」と反論した。 また、日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会(大使館に相当)も翌 28 日、フェイスブックで台湾のコロナ対応の成功を紹介した際、「日本メディアに鉄人部長(大臣)と呼ばれる『この方』の他、防疫の最前線にいる人々のおかげだ」と投稿。 事実上、台湾側に立って援護した。

台湾では台北近郊の公立病院で 1 月に院内感染が起き、同月 29 日に 8 カ月ぶりの死者 1 人が確認された。 社会ではワクチン確保をめぐる懸念も高まっている。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 2-5-21)


10 カ月ぶり市中感染が変異型? → 都市封鎖 豪パース

オーストラリアの西オーストラリア州は 1 月 31 日、州都パースなどで同日午後 6 時から 5 日間、ロックダウン(都市封鎖)を敷くと発表した。 前夜に昨年 4 月以来の新型コロナウイルスの市中感染例を確認。 感染力が強いとされる英国由来の変異ウイルスによる感染とみられるため、一気に封じ込めを図る。 州によると、30 日深夜にホテルの警備員の男性の陽性結果が判明した。 ホテルでは帰国者らが 14 日間、強制的に隔離されており、陽性がわかった帰国者 4 人のうち、2 人が英国の変異型、1 人が南アフリカの変異型に感染していた。 警備員は、英国の変異型に感染した 1 人が滞在する階を担当していた。

マクゴワン州首相は「多くの州民が驚いていると思うが、とても深刻な状況だ。 断固として迅速に対応した。」と説明した。 パースとその南の州内の 2 地域で、食料品などの買い物、医療や介護、運動、在宅でできない仕事を除いて外出が禁じられる。 同州は昨年 4 月から他州・地域からの入境も厳しく制限して、同 4 月 11 日を最後に「市中感染ゼロ」を続けてきた。 豪州では、東部クイーンズランド州が 1 月 8 日から 3 日間、同様に州都ブリスベンでロックダウンを敷いた。 州内では、昨年 9 月以来の市中感染例だったが、帰国者が隔離されるホテルの清掃員が英国の変異型に感染していた。 (シドニー = 小暮哲夫、asahi = 1-31-21)


世界のコロナ感染者、1 億人に 1 日で 60 万人増える

新型コロナウイルスの世界全体の感染者が 27 日、米ジョンズ・ホプキンス大の集計で累計 1 億人を超えた。 人類の約 78 人に 1 人が感染したことになる。 最近は毎日 60 万人前後(過去 7 日平均)の新たな感染者が報告されている。 感染による死者数は 215 万人を超えている。 同日午前 6 時現在で、世界の累計感染者数は 1 億 6 万人を超えた。 昨年 6 月末に 1 千万人、同 11 月に 5 千万人を超えた後、その後の約 2 カ月半で累計感染者は倍増した。

最も感染者数が多いのは米国で約 2,538 万人。昨年 11 月ごろから 1 日の新規感染者数が 20 万人前後の日が続いていた。 インド(約 1,067 万人)、ブラジル(約 887 万人)が続く。 欧州では昨年 10 月以降に感染者が急増し、いまも毎日約 20 万人の感染者が出ている。 ロンドンがあるイングランドでロックダウン(都市封鎖)が続くなど、状況は改善していない。 (合田禄、asahi = 1-27-21)


米名門大「脱オンライン」への挑戦 探り出した感染対策

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、大学はリモート授業ばかりでよいのか - -。 米国の大学が試行錯誤の末に一つの対策を探り出し、徹底した感染対策の中で寮生活や対面授業を可能にした。 全米から注目を集める対策の要は、学部生が週 2 回 PCR 検査を受けるという内容で、詳しい感染予測モデルから導き出した。 危機の時の研究者や大学の役割とは何か。 関係者は今も問い続けている。

「キャンパスで学生生活送りたい」

米北東部の名門「アイビーリーグ」の一つで、ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学。 昨年 12 月、体育館に次々と学生が入っていった。 大学が学内外 9 カ所に設営した PCR 検査施設の一つになっている。 同大では昨年 9 月から学生や教職員ら計約 2 万 8 千人が PCR 検査を受ける。 学部生は週 2 回、大学院生や教職員は週 1 - 2 回だ。 昨年 3 月から、コロナの感染拡大を受けて授業を順次オンライン化。 大学を閉鎖し、寮や下宿にいた学生は自宅に戻っていた。 だが、「キャンパスで学生生活を送りたい」との声が強く、学生の半数以上が「授業がオンラインでも、9 月の新学期から大学周辺の下宿などに戻る」と回答。 マイケル・コトリコフ副学長らは「授業だけでなく、大学での学生生活も重要な教育の柱だ」と考え、再開の道を探り始めた。

このころ、同大のピーター・フレイジアー准教授(情報工学)の論文が話題になっていた。 複数の検体をまとめて検査し、陽性が出た場合のみ個別に再検査する「プール方式」を使えば、大規模な PCR 検査が可能になる。 さらに、頻繁に検査することで、社会全体の感染を大幅に抑えられる、と書いていた。 准教授は、副学長の依頼で 11 人の研究チームを作り、学内の感染を抑えるためのモデル構築を始めた。 どの程度の陽性率の地域から何人の学生が大学に戻るのか、学内での接触や飲食の頻度、接触時間、寮や教室の占有率など、様々な要因を加えていった。

抑制モデルが出した「興味深い結果」

約 2 カ月後、再開への感染抑制モデルが完成すると、興味深い結果が出た。 大学や寮に学生を戻して定期的に PCR 検査をする場合と、大学を閉鎖したままオンライン授業を続け、学生らを検査しない場合とを比べると、感染者数は「大学閉鎖のほうが数倍多くなる」となった。 だが、全学生と教職員を検査すると、陽性者が約 1 千人見つかる可能性があるとの試算も出た。 一方、学部生は週 2 回、教職員も週 1 - 2 回の検査を受け続ければ、陽性者数はどんどん減ることも示していた。 「大学を閉鎖したまま、学生を放置するのは、大学の社会的な責務を放棄することになるのではないか。」 副学長らは、大学再開を決断した。

教職員約 100 人で再開チームを立ち上げ、準備を急いだ。 建築学部や工学部の教授らは教室や寮、図書館、学食などの構造や広さ、空気の流れを分析。 感染を抑えられる空間の占有率を算出し、席の数や配置を変えていった。 獣医学部は医学部と共に研究用の PCR 検査施設を拡充。 地元の保健当局と連携し、プール方式で 1 日 7 千件の検査能力を確保し、陽性者は当局が再検査し、規則に従い隔離することにした。 このころ同州は、隣接しない州からの移動に一律 14 日間の隔離を求めていた。 別の教職員チームは、学生らの隔離に必要なホテル探しに走り、近隣に計約1千室を確保した。公開した再開計画の報告書は約100ページに及んだ。

対策に必要な費用は 1 年で約 2,500 万ドル(約 25 億円)。 しかし、大学が明確な方針を打ち出せず、入学を延期する学生が続出すれば、損失は最大 2 億ドル(約 200 億円)とも試算。 そうなれば大学側は人員削減しなければならない。 迷う余地はなかった。

感染者、どんどん減少

再開への動きが進むと、地元住民らから「町に感染を広げるのか」と激しい批判が起きた。 しかし、副学長らの決断は揺るがなかった。 「批判の多くは恐れからくる感情的なものだった。 リスクがゼロという選択がない中では、科学に立脚した安全策を取るしかない。」 学内外への説明会は 8 月までに 2 0回を超えた。 9 月、学生が検査を受け始めると、すぐに陽性者が出始めた。 だが予測どおり、検査を繰り返すと、感染者はどんどん減少した。 実施した PCR 検査は秋学期の約 3 カ月で約 45 万件で、陽性者は計 303 人。 日本とは計算方法と違うため単純比較はできないが、陽性率は 1% 以下に抑えられている。

同大 4 年のアレクサ・ポドルスキーさん (21) は「卒業の年なので大学にいたかった。 大学が詳細な分析と調査で対策を示してくれ、検査があるので安心。 もはや大学の外に行くのが怖いくらい。」と話す。 2 月からは学部生の 8 割以上が寮に戻る予定だ。 対面授業は約 3 割で、これまでに授業での感染はない。 同大の対策は米国で注目を浴び、副学長は主要メディアに論考を何度も公表。 都市部の大学からも、検査態勢作りなどの相談が寄せられる。 「政府は対策を大学に押しつけず、財政支援などをしっかりすべきだ」と訴える。 近隣の大学の検査を請け負う協力態勢も構築中だ。 フレイジアー准教授は分析モデルを他大学でも使えるよう公開し、検証も進める。 「大学は専門家集団。 危機の時に、研究者の知見をいかに社会に還元できるかだ。」

大学は 2 月から新学期を迎える。 正念場が再びやってくる。 (宮地ゆう、asahi = 1-23-21)

日本の大学の状況は

国内の大学は新型コロナの感染拡大を受け、昨年 4 月ごろから学内への立ち入りを禁じたり、遠隔授業に切り替えたりした。 文部科学省が昨年 9 月に発表した全国の大学や高等専門学校への調査では、後期からは約 2 割が「全面的に対面授業」、約 8 割が「対面と遠隔を併用」と回答した。

ただ文科省によると、授業での感染例は少なく、学生寮や運動部の活動、飲み会などで感染が広がることが多いという。 医学系の大学などには、希望する学生に PCR 検査を行っているところもあるが、ごく一部にとどまっている。 ある国立大の教授は「日本でも PCR 検査機を持つ大学は多く、学生を広く検査する態勢は作れるはずだ」と指摘。 「知識の伝達はオンラインでもできるが、大学はそれだけの場ではない。 学生生活の充実のために大学はもっと積極的に動くべきでは。」と話す。


台湾で医師ら 10 人感染 春節控え、ランタンフェス中止

台湾北部の桃園市にある病院で新型コロナウイルスの院内感染が起き、20 日夕までに医師や看護師、その家族らを含む 10 人の感染者が確認された。 当局は感染拡大を防ぐため、2 月以降に予定されていた春節(旧正月)のランタンフェスティバルなどの催しを相次ぎ中止。 学校の終業式をオンライン方式に変える自治体も出ている。 他国と比べ感染者は少ないが、厳戒態勢の様相だ。

院内感染が起きたのは衛生福利部(厚生労働省に相当)が運営する桃園病院。 今月 12 日以降、米国から戻った感染者を治療した 30 代の男性医師のほか、看護師やその家族ら計 10 人の感染が確認された。 当局は入院患者 220 人の転院を決めたほか、病院の職員 427 人を隔離した。 国防部は 19 日以降、陸軍兵士を派遣して患者搬出に使った車両を消毒させる一方、ほかの兵士らに対しては、感染しないよう同市内の公共施設などへの出入りを避けるよう命じた。

台湾は徹底した水際対策など積極的なコロナ対応で感染を抑え込み、昨年の経済成長率も 2.54% のプラス成長を維持した。 今回も中華圏で重視される春節を 2 月 12 日に挟む大型連休を控えながら、経済より感染対策を優先する方針は揺らいでいない。 当局のコロナ対策本部は 19 日、各地で予定される春節の祝賀行事の延期や中止を要請。 行政院(政府)は北部の新竹市で予定されていたランタンフェスティバルの中止を決めたほか、中部や南部の自治体も祝賀行事を取りやめた。 人々が初詣に訪れる寺院でも参拝自粛を求める動きが広がっている。 台湾メディアは専門家の話として、観光業の損失は 100 億台湾ドル(約 360 億円)に上ると伝えた。

社会にも影響を与えている。 新北市は 20 日に予定していた市内全校の終業式をオンライン方式に切り替えた。 対策本部長の陳時中・衛生福利部長(大臣)は 20 日の会見で「感染者の人数や隔離者の規模などから、これまでで最大の危機だととらえている」と述べた。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 1-20-21)


新型コロナウイルスの死者、世界全体で 200 万人突破 増加ペースが加速、3 カ月半で倍増

【ジュネーブ】 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルス感染症の死者が 15 日、世界全体で 200 万人を超えた。 増加ペースは加速の一途をたどり、昨年 9 月 29 日に 100 万人を上回ってから 3 カ月半で倍増した。 各地で医療機関が逼迫しており、被害拡大の収束に向けた見通しは全く立っていない。

今回、死者が 10 万人増えるのにかかった日数は 7 日と、過去最短を更新した。 昨年秋以降、欧米を中心に感染が急速に再拡大。 感染者は昨年 9 月下旬には 3 千万人台だったが、現在は約 3 倍の 9,300 万人にまで急増し、重症者への対応が追い付いていないことも、死者増加の背景にあるとみられる。 国別で死者が最も多いのは米国で、40 万人近くに上っている。 ブラジルが 20 万人、インドが 15 万人、メキシコが 13 万人台で続き、昨年暮れに変異種が確認された英国も 9 万人近くに上り欧州最多となっている。 (kyodo = 1-16-21)


フランス全土、午後6時以降外出禁止 変異型へ対応強化

フランスのカステックス首相は 14 日、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として実施中の夜間の外出禁止令について、今月 16 日から全土で、開始時間を現行の午後 8 時から午後 6 時に2時間早めると記者会見で明らかにした。 英国で猛威を振るう感染力が強い変異ウイルスは、フランスでも連日 200 - 300 件の感染が確認されており、南アフリカ型の変異ウイルスも報告されている。 24 時間の新規感染者数は連日約 2 万人を数え、300 人前後が亡くなっている。

カステックス氏は変異ウイルスの拡大を防ごうと、入国規制の強化も表明。 欧州連合 (EU) 以外の国からの渡航については、出国前に検査した陰性証明書の提示と、入国後 7 日間の自主隔離を今月 18 日から求める。 これまで免除されていた日本からの入国者も対象となる。 フランスでは現在、感染が深刻な東部を中心とした一部地域のみ、午後 6 時以降の外出を禁じている。 昨年春と秋に導入した 24 時間の外出禁止令については、「社会的、経済的なコストが重すぎる」として見送ったが、「感染状況が悪化すれば、ただちに出さざるを得ない」と警告した。

現在営業を許可されている商店には、閉店時間が早まることによる混雑を避けるため、昼食休憩を取るのをやめたり、日曜も店を開けたりすることで客を分散させるよう呼びかけた。 レストランやカフェ、映画館や美術館は引き続き客の受け入れが禁じられる。 (疋田多揚、asahi = 1-15-21)


米、ワクチン 1 回目接種を拡大 高齢者向けに 2 回目分放出

【ワシントン = 鳳山太成】 米政府は 12 日、新型コロナウイルスワクチンの接種を広めるため、在庫を全量放出すると明らかにした。 ワクチンは 2 回の接種を前提とするが、高齢者などへの接種を増やすため、2 回目のために保管するワクチンを放出する。 国内の死者数が 1 日 4,000 人を超えるなか、遅れを取り戻すために戦略を転換する。 アザー厚生長官が記者会見で明らかにした。 2020 年 12 月中旬以降に始まった米ファイザーや米モデルナのワクチンは 1 人 2 回の接種を前提としており、2 回目分は配らずに取り置いてきた。 同氏は「供給が需要に追いついた」と述べ、取り置き分を放出すると説明した。 2 回目の接種が遅れることはないと主張している。

米疾病対策センター (CDC) によると、12 日までに約 2,770 万回分が各州に供給され、約 933 万人が1回目を接種した。 アザー氏によると、保管分を放出することで即座に配布分も含めて合計 3,800 万回分が利用可能になる。 さらに今週追加で供給する予定だ。 米国では約 2,100 万人の医療従事者と約 300 万人の介護施設居住者に優先的にワクチンを投与してきた。 これから約 5,300 万人に上る 65 歳以上の高齢者にも接種を始める。 米政府は、実務を担う州に対し、すべての医療従事者が 2 回打つのを待たずに、高齢者への接種を始めてもよいと勧告した。

ファイザーやモデルナのワクチンは 3 - 4 週間空けて 2 回接種することで 90% 超の予防効果が得られるという。 ただ 1 回目でも一定の予防効果があり、アザー氏は接種者を増やすことが「現時点で人命を救う最良の方法だ」と強調した。 コロナの被害拡大が止まらないなか、各国政府の対応は時間との闘いだ。 いかにワクチンを速やかに供給するかが大きなカギを握る。 トランプ政権は 2020 年末までに 2,000 万人のワクチン接種を目指したが、2 割にとどまった。 メーカーの増産に時間がかかるほか、接種場所や人員の確保、物流網の整備が遅れている。 一般市民へのワクチン接種を始めるにあたり、西部カリフォルニア州ではディズニーランドを拠点の一つにする。

ワクチンの早期供給はバイデン次期米大統領が最初に直面する難題だ。 就任後、朝鮮戦争下に成立した「国防生産法」を使って、ワクチンに必要な材料を優先的に生産するよう企業に命じる方針だ。 政権移行チームは 8 日、ワクチンの在庫を全量放出する方針をトランプ政権より先に表明していた。 バイデン氏は就任 100 日後の 4 月末までに 1 億回分を接種する目標を達成するため、自らの供給計画を近く発表する。 ただワクチン接種の最終権限は地方自治体が持ち、連邦政府の対応には限界がある。 CDC が指針をつくって助言するが、誰の接種を優先するかなど具体策は州によって分かれる。 公約実現のハードルは高い。 (nikkei = 1-13-21)


世界の累計感染者、9 千万人超える 死者は 193 万人超

新型コロナウイルスの世界の感染者数が日本時間 11 日、9 千万人を超えた。 米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、同日午後 5 時現在で、世界の累計感染者数は 9,029 万 5,028 人。 約 2 週間で 1 千万人増えており、感染拡大の勢いは衰えていない。 最も感染者が多いのは米国で約 2,240 万人、次いでインドが約 1,046 万人、ブラジルが約 810 万人。 死者数は世界で計 193 万人を超えている。 (asahi = 1-11-21)


ロンドンの感染拡大は「制御不能」 市長が重大事態宣言

英国の首都ロンドンのカーン市長は 8 日、市内の新型コロナウイルスの感染拡大が「制御不能の状態にある」とし、「重大事態」を宣言した。 英国政府は同日、英国全体の 1 日の新規感染者数は 6 万 8,053 人、死者数は 1,325 人に上ったと発表。 ともに過去最多となった。 英国では変異したウイルスが猛威を振るっている。 ロンドン市の発表によると、今月 6 日までの約 1 週間で、市内の病院の入院患者数は 3 割近く急増して 7 千人を超え、昨春のピーク時より 35% 多い状況にある。 通常は多いときで 5,500 件ほどの救急要請も 8 千件に増えているという。

カーン市長は 8 日の声明で、30 人に 1 人が感染者とされる市の現状について「医療機関が崩壊する危機にある」と指摘。 「いま行動しなければ、もっとたくさんの犠牲者が出る」と市民に自宅待機の徹底を訴えた。 英政府は 5 日、ロンドンを含むイングランド全域で 3 度目のロックダウン(都市封鎖)措置を導入した。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 1-9-20)

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イングランド全域で 3 度目のロックダウン 学校も閉鎖

英国政府は 5 日、新型コロナウイルスの感染急拡大に歯止めをかけるため、首都ロンドンを含むイングランド全域で 3 度目のロックダウン(都市封鎖)を開始した。 2 月半ばまで不要不急の外出を罰則付きで禁止し、学校も原則閉鎖される。 市民生活や経済に痛みを強いるが、連日 5 万人超の新規感染者が出て医療体制への負担が増す状況のなか、感染対策を優先した。 ジョンソン首相は 4 日夜に公開したテレビ演説で、「ワクチンが行き渡るまでこの新しい変異型を抑制するには、いま以上の取り組みが必要なのは明らかだ」と述べ、3 度目のロックダウン導入を宣言した。

生活必需品を扱う店以外は原則閉店になる。 飲食店は持ち帰りや宅配のための開店は認められ、書店や家電店などはネットで先に販売した品の受け渡しでのみ営業を続けられる。 市民の外出は、在宅勤務できない仕事や運動、通院などに限られる。 家族以外と公共の場で会うことは原則できない。 違反者には、200 - 6,400 ポンド(約 2 万 8 千 - 約 89 万円)の罰金が科される。 また、パーティーなど大勢での集まりは厳禁。 違反したグループへの罰金は 1 万ポンド(約 140 万円)に上る。 英政府は昨年 3 月と 11 月にもイングランド全域でロックダウンを実施した。 今回は最初のパターンに近いとされる。

秋との大きな違いは、学校の閉鎖だ。 子どもの学力への影響に加え、子どもの世話で親が働けなくなれば経済的な手当てが必要になる。 国の借金が膨らむなか、政府は慎重だった。 だが、ジョンソン氏は 4 日のテレビ演説で、「出来ることは何でもやらなければ」として「学校は家庭間に感染を広げる媒介になりうる」と述べ、昨春以来の閉鎖に踏み切った。 政府は雇用対策のため、一時休業者の賃金補助制度を 4 月まで継続。 企業が支払う賃金の 8 割を 1 人月 2,500 ポンド(約 35 万円)まで公金で補う。 また、企業への低利融資制度も設け、5 日には、休業した小売店などに出す 4 千 - 9 千ポンド(約 56 万 - 約 126 万円)の補助金など総額 46 億ポンド(約 6,400 億円)の支援金枠を発表した。

イングランドは 2 度目のロックダウンを昨年 12 月に解除した後、地域ごとの感染状況に応じた規制を導入してきた。 しかし、感染力が強い変異ウイルスの拡大で、12 月下旬以降は多くの地域で厳しい移動制限などを課してきた。 それでも、感染者は減らない。 4 日に発表された英国全体の新規感染者数は過去最多の 5 万 8,784 人。 7 日連続の 5 万人超えで、医療機関への負担が懸念されている。

「ロックダウン疲れ」が見える国民に対し、ジョンソン氏が示す明るい材料はワクチン接種だ。 英国は昨年 12 月に世界に先駆けて米製薬大手ファイザーなどが開発したワクチン接種を開始。 今月 4 日には、英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大が開発したワクチン接種も始めた。 ジョンソン氏は、欧州各国に比べても大規模な接種が進められていると強調する。 さらに、早く効果を行き渡らせるため工夫も凝らす。 1 人 2 回接種する間隔を、本来の 3 週間から 12 週間に広げ、その分、1 回目の接種をより多くの人に受けさせることを決めた。 1 回目の接種で十分な効果があるとされるためだ。 医師会などから異論もあったが、政府の医学顧問もこの方式の有効性を認めた。

ジョンソン氏は、順調にいけば 2 月半ばには、高齢者や医療従事者ら優先度が高い人々への 1 回目の接種を終えられるとの見通しも示し、「そうなれば多くの規制を解ける」と話した。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 11-5-21)

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英国、1 日の感染者 5 万人超える 「前例のないレベル」

英国で 29 日、新型コロナウイルスの 1 日あたりの新規感染者数が初めて 5 万人を超え、2 日連続で過去最高を更新した。 感染拡大が激しいロンドンでは今月半ばから 3 回目となる事実上のロックダウン(都市封鎖)に入ったが、歯止めはかかっていない。 保健当局は「前例のないレベルの感染が続いている」と警告している。 英国政府の発表では、29 日の新規感染者は 5 万 3,135 人。 前日には初めて 4 万人を超えたばかりだった。 春の第 1 波より検査件数が飛躍的に増えていることもあるが、入院している患者の数も春の水準に達している。

感染拡大の背景には、従来の新型コロナウイルスに比べて最大 7 割感染が広がりやすいとされる変異ウイルスの存在がある。 政府の諮問会議の委員を務めるユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのアンドルー・ヘイワード教授は BBC のラジオ番組で「流行は非常に危険な新段階に入りつつある」と語り、現状の感染抑止策は不十分で、さらに強化する必要があるとの認識を示した。 英国では 29 日から、米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックが開発したワクチンの 2 回目の接種が始まった。 8 日に 1 回目の接種第 1 号となったマーガレット・キーナンさん (91) もこの日、英中部コベントリーの病院で 2 回目の接種を受けたという。 (ロンドン = 下司佳代子、asahi = 12-30-20)

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