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韓国のクラブ集団感染、客ら 86 人感染 釜山などに拡大

新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化したとして、行動制限を大幅に緩和した韓国で、クラブの客を中心とした集団感染が起き、感染者は 11 日時点で 86 人となった。多くはソウルやその近郊に住むが、釜山や済州島などにも広がっている。 韓国の新型コロナ対策は国内外で高い評価を受けてきたが、政府は規制の再強化を迫られている。

韓国保健福祉省によると、ソウルの繁華街・梨泰院にある 3 軒のクラブを訪れた 20 代男性の感染が 6 日に判明。 ソウル市は計 5 軒のクラブで感染のおそれがあるとみている。 保健当局がクラブの客の名簿を点検したところ、重複を除いて 5,500 人余りの客が特定できた。 ただ、連絡先の携帯電話番号の虚偽記載や電話に出ないなど、半数と連絡が取れない状態という。

今回の感染者のほとんどは 20 代、30 代の若者で、約 35% が「無症状」だった。 感染後、自覚がないまま暮らしのなかでウイルスを広めるおそれがあるため、「静かな拡大 非常状況(東亜日報)」と懸念が広がっている。 韓国では、大量の PCR 検査で感染者を早期に見つけ出して隔離・治療するとともに、携帯電話の位置情報などによる追跡で接触者を割り出し、感染拡大を防ぐことを防疫の柱とする。 ただ、そもそも連絡先が特定できなければ、追跡も難しい。

今回の事態に、ソウル市は 9 日、クラブなどの遊興施設に事実上の営業禁止に当たる集合禁止令を出した。 ソウル近郊の京畿道も 10 日、クラブの客に検査を義務付け、人と接触しないよう求める行政命令を出した。 教育省は 11 日、段階的に 13 日から行うとしていた学校の登校再開を 1 週間、延期すると発表した。

韓国では流行が下火になったことを受け、4 月 20 日から、名簿の作成や発熱チェックを条件にクラブなど遊興施設の営業を再開。 政府は 6 日から「社会的距離の確保」と呼んでいた行動制限を緩和させていた。 国内の新規感染者は 5 月に入って 9 日まで 1 ケタ台がほとんどだった。 ただ、今回の集団感染を受けて 10、11 日と連続で 30 人台となっている。 文在寅(ムンジェイン)大統領は 10 日の就任 3 年の演説で集団感染に触れ「防疫の手綱を緩めてはいけない」と強調しつつ、「韓国の防疫体制は油断しなければウイルス拡散をコントロールできる」と語った。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 5-11-20)

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韓国の新規コロナ感染者 約 1 か月ぶりに 30 人台 = クラブ集団感染で

【ソウル】 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスを巡り、韓国の中央防疫対策本部は 10 日、この日午前 0 時現在の韓国での感染者数は前日午前 0 時の時点から 34 人増え、計 1 万 874 人になったと発表した。 一時は 1 桁台が続いていた 1 日当たりの新規感染者数が 30 人台を記録したのは 4 月 12 日以来、28 日ぶり。 新規感染者 34 人のうち、26 人は国内での市中感染だった。 今月初めの連休中に感染者がソウルの繁華街・梨泰院のクラブなどを訪問して発生した集団感染が全国に広がる様相を見せている。

地域別でみると、ソウル市が 12 人、大邱市が 2 人、仁川市が 3 人、京畿道が 6 人、忠清北道が 2 人、済州道が 1 人となっている。 残りの 8 人は海外からの入国者だった。 死者は 3 日連続発生せず、計 256 人。 全体の感染者のうち、完治して隔離措置を解かれた人は前日から 42 人増え、計 9,610 人となった。 現在隔離・治療中の人は 1,008 人。 中央防疫対策本部は、毎日午前 10 時に同 0 時時点の新型コロナウイルスの感染者数を発表している。 (韓国・聯合ニュース = 5-10-20)

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韓国、クラブで集団感染 計 15 人、さらに増加か

【ソウル】 韓国で新型コロナウイルスに感染した 20 代の男性が感染確認前にソウル市内のクラブ 3 カ所などを訪れていたことが分かり、韓国政府は 8 日、クラブでの接触者 12 人や本人を含めて計 15 人の集団感染が発生したと発表した。

政府はクラブ側が作成した名簿を確認した結果、当日の客や従業員が計 1,500 人以上だったと公表。 男性とは訪れた時間が異なる人もいるとみられるが「感染者が増える可能性が非常に高い」として警戒を強めている。 政府は 8 日、自治体を含めた緊急会議を開催。 クラブなど全国の遊興施設に対し、同日夜から 1 カ月間の営業自粛を勧告する行政命令を出した。 (kyodo = 5-8-20)

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韓国で新たな国内感染者「ゼロ」に 新型ウイルスで日常が様変わり

韓国は 30 日、国内で新たに新型コロナウイルスに感染した人の数が、2 月中旬以降で初めてゼロを記録したと発表した。 韓国ではこの日、新たな感染者が 4 人確認されたが、全員が外国からの渡航者だった。 到着後すぐに隔離された。 この 4 人を加え、国内で確認された感染者は 1 万 765 人になった。 一時は新型ウイルスの世界的な大流行の現場となった韓国にとっては、大きな節目となった。 同国は熱心な努力により、驚くべきことに、全面的なロックダウン(都市封鎖)をせずに「新たな感染者ゼロ」にこぎつけた。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は 30 日、「これが韓国とその国民の強さだ」と語った。

どうやって実現した?

韓国では大邱市で 2 月、新型ウイルスのクラスター(感染者集団)が宗教団体で確認され、感染者数が急増した。 この宗教団体、新天地イエス教証しの幕屋聖殿(新天地イエス教会)の 1 人から、何十人かに感染が広がったことが判明。 のちに、何千人もの感染がこの教会に関係があったこともわかった。 これを受け、政府は大規模な検査キャンペーンを開始した。 検査を受けやすくするため、ドライブスルー型の診療所を全国各地に開設した。

検査件数の増加により、感染者数も急増した。 ただ、当局は誰が感染しているのかを早い段階で把握し、隔離して治療した。 韓国政府はまた、感染経路の追跡を積極的に進めた。 確認済みの感染者と接触した人々を見つけ、隔離して検査した。 陽性と判定されると、その人の近くで暮らすか働いている人に、当局が通知した。 国民はすぐに、そうしたメッセージが当局から続々と届くことに慣れた。

新天地イエス教会のクラスターと関連のある感染者は一時、感染者全体の半数近くを占めた。 当局が集会の規制に乗り出すなか、韓国のすべてのキリスト教会は閉鎖を命じられた。 現在、教会は再開されている。 ただ礼拝者は距離を置き、マスクを着けるよう義務付けられている。 同様の規則は、学校の生徒にも適用されている。 一部の企業の食堂では、昼食はもはや社交の場ではなくなっている。 従業員同士の接触を減らすため、昼休みの時間をいくつかずらして設定した企業もある。 社会的距離の保持は引き続き求められているが、すべてのレストランやカフェが厳格なルールに従うかはわからない。

国民の多くにとっては、生活は元通りに戻りつつあるようだ。 通りに出て、うろつく人の姿が目立つ。 ただ、イベントに参加したり建物の中に入ったりするときは、必ず体温を測定しなくてはならない。 韓国の新型ウイルスを抑え込む能力は、今月あった選挙で試された。 4 月 15 日の総選挙では、何千人もの有権者が投票所の前に列をつくった。 一人ひとり、ビニール手袋が渡され、間隔を置いて立つよう指示された。 投票所に入る前には体温測定を受けた。

投票によって感染者が急増するとの恐れもあった。 しかし 2 週間たったいま、そうならなかったことは明らかだ。 選挙では与党が大勝し、今回の危機への対応を国民が支持していることをうかがわせた。 地下鉄の駅は、利用者が呼吸をしやすいようにと、細心の注意を払って清掃に励んでいる。 消毒スプレーを使ったふき取り掃除も繰り返している。 韓国で極めて人気がある野球は現在も続いている。 ただ無観客だ。 ファンは入場が認められず、審判は手袋をはめるよう指示されている。 選手のハイタッチすらご法度となっている。

学校には子どもが戻った。 といっても、バーチャルな方法でだ。 教室は先生を除いて空っぽで、授業はオンラインで実施されている。 4 月中旬に学校が再開されたとき、丁世均(チョン・セギュン)首相は、「私たちは新たな道を切り開いている」と述べた。 「リモート授業がうまく行くよう努力するが、究極的には COVID-19 の流行が収束し、子どもたちが学校に戻れるように最善を尽くす。」

韓国政府は、日常生活のさまざまな場面で厳しい措置を実施することで、感染の流行を抑え込んだ。 同国を訪れる人は全員、14 日間の隔離を受けるため、新たな感染がもたらされる可能性は低い。 しかし、当局は気を緩めていない。 韓国の疾病対策センターは、ワクチンができるまでは、パンデミック(世界的流行)が戻って来ることは避けられないと話している。 (BBC = 4-30-20)


テスラが異例の提訴 郡の外出禁止令は「憲法違反」

電気自動車の米最大手、テスラ社は 9 日、カリフォルニア州にある工場が停止させられているのは米国憲法違反だとして地元のアラメダ郡を相手取り、米連邦地裁に提訴した。 外出禁止令をめぐり米主要企業が提訴するのは異例だ。 同社のイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は 9 日、「我慢の限界だ」とツイートした。 フリーモント工場の操業再開を認めないアラメダ郡を訴える考えを表明。 実際にテスラは 9 日に提訴した。

訴えでは、郡の外出禁止令は行き過ぎで憲法で保障された法の下の平等にも反するなどとし、命令の停止などを求めた。 マスク氏はカリフォルニア州内にあるテスラ本社について「テキサス州かネバダ州に即座に移転する」ともツイートした。 また、フリーモント工場を残すかどうかも、「将来的にテスラがどういう扱いを受けるかによる」と移転をちらつかせた。

アラメダ郡を含むシリコンバレー一帯の 6 郡が 3 月 17 日に外出禁止令を出したことに伴い、工場は 3 月 23 日に操業を停止した。 マスク氏は 4 月末、外出禁止令について「ファシストだ」と強い不満を示していた。 カリフォルニア州は 8 日から外出禁止令を緩和し、一部の小売店や工場の再開を認めた。 ただ、アラメダ郡など 6 郡は、従来の厳しい外出禁止令を維持。 8 日には、アラメダ郡幹部が、テスラのフリーモント工場の操業再開を認めない考えを示していた。

マスク CEO はこの郡幹部の発言に猛反発。 提訴や「本社移転」のツイートに至った形だ。 フリーモント工場は、もともと北米進出したトヨタ自動車と、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ (GM) の合弁会社「NUMMI (ヌーミー)」の所有物だった。 GM の経営破綻を機に合弁は解消され、2010 年 4 月に操業を停止。 その後、テスラの生産工場に生まれ変わっていた。 (サンフランシスコ = 尾形聡彦、asahi = 5-10-20)


米の新型コロナ死者、7 万人突破 感染者は約 120 万人に

ロイターの集計によると、米国の新型コロナウイルス感染症による死者が 5 日、7 万人を突破した。 米国内の感染者数は累計約 120 万人で、欧州で深刻なスペイン、イタリア、英国、フランス、ドイツの感染者の総計を上回っている。 米ワシントン大学保健指標評価研究所 (IHME) は前日、モデル分析に基づく 8 月初旬までの米国での新型コロナ感染による死者数が約 13 万 5,000 人に達すると予測。 先月発表した前回予測からほぼ倍増した。 また、米紙ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ政権は国内の新型コロナ感染による 1 日の死者数が 5 月末までに 3,000 人と、現時点の 2,000 人から加速すると試算している。 (Reuters = 5-6-20)

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自粛解除はいつ、どのように? 満たすべき「7 基準」と NY 知事の「北風と太陽」作戦

ニューヨーク州では 5 月 4 日、1 日の死者が 226 人となった。 この数は 5 週間で最低値だ。 州では 1 ヵ月前の最悪期に、1 日の死者が 700 人を超える日が 6 日間続いた時期もあった。 重症の入院患者数が減る中で、クオモ州知事が毎日開く記者会見で再三語っているのは、経済活動再開をいつ、どのようにするか、ということだ。 3 月 22 日以降ロックダウン(外出制限)となっているニューヨークでは、その期限は当初 4 月 19 日だった。 しかし途中で 4 月 29 日まで延長され、現在は 5 月 15 日までとなっている。 となると、今のような不自由な生活はあと 10 日間ということか?

経済活動再開について、クオモ知事はこの日、州内を 10 地域に分け、それぞれに適応される経済再開計画のために満たすべき「7 つの基準」を明示した。

  1. (コロナ関連の)入院患者数が 14 日間減少、もしくは 3 日間の平均が 1 日につき 15 人未満になること
  2. (入院患者数の中からの)コロナ関連の死者数が 14 日間減少、もしくは 3 日間の平均が 1 日につき 5 人未満になること
  3. 1 日あたり新規入院者が、3 日間の平均で 10 万人あたり 2 人未満になること
  4. PPE の備蓄が少なくとも 90 日分あり、病院の病床数に少なくとも 30% の空きがあること
  5. PPE の備蓄が少なくとも 90 日分あり、集中治療室の病床数に少なくとも 30% の空きがあること
  6. 住民 1,000 人あたり、7 日間平均として、少なくとも 30 検査/月が実施されること
  7. 住民 10 万人あたり、少なくとも 30 人の濃厚接触者の追跡調査を行うこと

クオモ知事はシンガポールやドイツなど他国の失敗例を紹介しながら、再三「命よりも大切なものはない」として、経済再開の時期を慎重に決め、計画を進める意向を示してきた。 知事によると州内北部や中部など一部の地域はこれら「見える化」された 7 つの基準のうちすでに 5 つ(緑色部分)を満たしており、すべての基準を満たすのも時間の問題とのこと。 ただし被害の 1 番大きいニューヨーク市は、上記項目 1、2、6 の 3 つしか満たしておらず、すべての経済活動再開 = 日常生活に近い状態になるまで、しばらく時間がかかりそうだ。

市長は北海道や香港、シンガポールでは、感染が沈静化しかけたものの社会的活動を早期に再開したことで再び拡大したと指摘。 「気を付けないとブーメランのように戻ってくる」と述べ「正しい規制」が必要と訴えた。 (sankei = 5-4-20)

また、経済活動再開は一気に行われるのではなく「段階的に」進められる。

  1. 生活に不可欠なエッセンシャル度が高く
  2. 感染リスクの低い業種

が優先され、その逆(エッセンシャル度が低く、感染リスクの高い)業種は、再開まで時間がかかりそうだ。

活動再開の業種の第 1 フェーズは建築業と製造業。 第 2 フェーズは小売業、不動産業。 第 3 フェーズは外食産業やホテル業。 第 4 フェーズは芸術、娯楽、エンターテインメント業となる。 日本では大阪府の吉村洋文知事が、自粛を解除するための解除基準を「見える化」し、独自の大阪モデルを公表した。 ニューヨークのクオモ知事が試むスタントと非常に似ており、今後の行方が期待される。

アメリカ全体では?

全米で、すでに再開している州とまだロックダウンしている州

5 月 11 日までに 31 の州で、経済活動再開のため社会的距離の確保が緩められるとされている。 しかしそれに伴う代償は大きい。 トランプ政権は 1 ヵ月後の 6 月上旬、国内で 1 日の死者数が 3,000 人に増加すると予想している (現在は平均 1,750 人/日)。

NY 州、実効再生産数は 0.8 に

感染率 = 実効再生産数は現在 0.8 以下まで下がっている。

最悪期には 1.4 だった感染率 = 実効再生産数。 1 ヵ月間のロックダウン(外出制限)の成果として、この数字が 0.9 まで下がったことが発表されていたが、先月 26 日には新たに州北部(アップステート)は 0.9 を維持、州南部(ダウンステート)は 0.75 まで下がっていることも発表されている。 これについて知事は「It (コロナウイルス)が勝手に下げてくれたのではない。 We (我ら)がそのような結果をもたらした。」という言葉で、外出制限やソーシャルディスタンシング、マスク着用などに従った人々やエッセンシャルワーカー 1 人ひとりを評価し、感謝の気持ちを示した。

今後の行方も「We」の努力にかかっている。

「GW はがまんのウイークです。(神奈川知事)」
「データを開示し、なぜそれが必要か考えてもらう。(NY 知事)」

クオモ知事は先日、「ロックダウンを決めた時に、州の人口 1,950 万人すべてがおとなしく家でじっとできるとは到底思えなかった。 だからこそ、毎日の会見でデータ、数字という『事実を』開示し、なぜ自宅待機が必要なのか、それぞれに考えてもらうことにした。」と語った。 また知事は「ニューヨーカーとはタフで、賢く、結束力があり、忍耐強く、愛 = 思いやりがある」というスローガンを何度も何度も会見を通して、人々に繰り返し訴えかけている。

ここに住む人々が毎日午後 7 時から未だに 1 日も欠かさず、自室の窓から拍手と声援を送り続ける行動を通し、知事の思いが全員とは言わないまでも多くの人々に伝わっていることを感じる。 目に見えない敵に勝つには、結束してこそというのを、ここの人々は心から理解している。

一方、神奈川県の黒岩祐治知事がゴールデンウィーク中の外出自粛をお願いするために送った緊急速報メールには、こう書かれていたそうだ。 「GW はがまんのウイークです。」 私は「我慢」という言葉を聞き、日本の戦時中のスローガン「欲しがりません勝つまでは」を思い出した。 世界中で長期戦が予想されるウイルス戦争とそれに伴う経済復活戦略に向け、辛くネガティブな気持ちのままで今後も闘い続けていけるだろうか? クオモ知事が行なっているのは、まさしくイソップ寓話の「北風と太陽作戦」だと思った。 (安部かすみ・ニューヨーク在住ジャーナリスト、Yahoo! = 5-5-20)

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米ニューヨーク州の学校再開は 9 月以降 … 影響 420 万人、学校別に再開を承認

【ニューヨーク = 村山誠】 新型コロナウイルスの感染が深刻な米ニューヨーク州で 3 月中旬から休校が続いている学校の再開が、9 月以降になる見通しとなった。 アンドリュー・クオモ知事が、1 日の記者会見で表明した。

クオモ氏は、休校で州内の約 420 万人の児童や生徒、学生が影響を受けているとした上で、「子供や教育者を守らなければならない」と強調した。 夏休みが明けて新学期の始まる 9 月以降、各校が立案する感染防止計画を基に、個別に再開を承認する計画だ。 休校中の各校はオンラインで授業を行っている。 州内では、医療従事者らエッセンシャル・ワーカー(必須労働者)向けに育児サービスなども提供中で、これらの取り組みも継続される。 (yomiuri = 5-3-20)


長崎停泊中の大型クルーズ船、陰性だった 1 人が陽性に

長崎市に停泊中で、乗員の新型コロナウイルス感染が相次いでいる大型クルーズ客船コスタ・アトランチカ(イタリア船籍、8 万 6 千トン)について、長崎県は 4 日、当初の検査で陰性だった乗員 1 人が陽性になったと発表した。 乗員は外国籍の 20 代男性で、2 日夜から微熱とせきがあり、3 日に検査をして陽性と判明。 入院はしていない。 クルーズ船の陽性者はこれで 149 人となった。 (asahi = 5-4-20)

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長崎のクルーズ船、新たに乗員 57 人感染 計 148 人に

長崎県は 25 日、長崎市に停泊中のクルーズ客船コスタ・アトランチカ(8 万 6 千トン、乗員 623 人)内で新たに乗員 57 人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。 船内の感染者は、24 日までに判明していた 91 人と合わせて計 148 人。 乗客はいない。 客船はイタリアのコスタクルーズ社が運航。 中国で予定していた修繕工事が新型コロナウイルスの影響でできなくなり、2 月下旬から長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼(こうやぎ)工場で修繕を受け、その後の試運転などを経て、再び停泊していた。 (asahi = 4-25-20)

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長崎港のクルーズ船、新たに乗員 14 人が感染 … 計 48 人に

長崎市の長崎港に停泊中の大型クルーズ船「コスタ・アトランチカ」で、新たに乗員 14 人が新型コロナウイルスに感染していることが 23 日、わかった。 感染が判明した乗員は計 48 人になった。 (yomiuri = 4-23-20)

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長崎の客船、新たに 33 人感染 三菱重工の工場に停泊中

長崎県は 22 日、長崎市の三菱重工長崎造船所香焼工場に停泊中の客船「コスタ・アトランチカ」内で新たに 33 人が新型コロナウイルスに感染したと明らかにした。 (asahi = 4-22-20)

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長崎港に停泊の大型クルーズ船で 1 人感染確認 53 人検査へ

長崎港に停泊中の大型クルーズ船の船内で、外国籍の乗組員 1 人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。 船内にはほかにも発熱などの症状のある乗組員がいるということで、濃厚接触の可能性がある 53 人について検査が進められる予定です。 感染が確認されたのは長崎港に乗客を乗せずに停泊しているイタリア船籍の大型クルーズ船「コスタ・アトランチカ」の外国籍の乗組員です。

長崎県や長崎市などによりますと、この船は、先月 25 日にかけて長崎港にある三菱重工長崎造船所香焼工場で修繕を受けたあと、試運転などをへて、今月末までの予定で港に停泊しています。 乗組員は今月 14 日に発熱の症状がみられ、20 日の検査で感染が確認されたため船内の個室に隔離されているということです。 ほかにも 3 人について検査が行われ、陰性だったということです。

船には外国籍の乗組員合わせて 623 人が乗り組み、ほかにも発熱などの症状のある人がいるということで、濃厚接触の可能性がある 53 人について検査が進められる予定です。 長崎県は国内での感染拡大を受けて、先月 13 日、乗組員の下船を控えるよう求めていたということです。 (NHK = 4-21-20)


コロナの感染拡大、地域差はなぜ? 第一人者が読み解く

新型コロナウイルスの感染は、ある国や地域で爆発的に広がり、他の場所では抑え込まれつつある。 偶然の結果ではなく、それぞれに理由があると、感染症対策の第一人者、デイビッド・ヘイマン氏は指摘する。 エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群 (SARS) への対応に長年携わった経験をふまえ、現状を読み解いてもらった。

David Heymann : 英王立国際問題研究所特別栄誉研究員。 1946 年米国生まれ。 インドで天然痘撲滅事業にかかわった後、米疾病対策センター (CDC) や世界保健機関 (WHO) でエイズ、エボラ出血熱、SARS、ポリオなどの専門家チームを率いる。 WHO 事務局長補を経て現在はロンドン大学衛生熱帯医学大学院教授を兼務。

- - 中国で新型コロナウイルスが検出されたと報じられて 3 カ月半。 新型コロナの脅威に早々とさらされたアジア諸国の多くは、これまで被害をかなり食い止めているように見えます。 苦戦しているのはむしろ、当初傍観気味だった欧米諸国です。 どうしてこうなったのでしょうか。

「アジアの国々の多くは 2002 - 03 年に SARS の大規模な感染拡大を経験しました。 失敗を教訓としてベッド数を増やし、人工呼吸器を備えるなど対策を進めた結果、今回は効果的な治療ができたのです。 これらの国では、病院へのアクセスが常に確保されていましたが、逆に、欧州各国はこのような準備ができていませんでした。」

「香港や韓国などは感染者の行動を丹念に追跡し、接触者を特定することの重要性をよく理解しています。 小規模の感染拡大が起きたら諦めずに封じ込もうとし、市中への広がりが最小限に抑えられました。 感染を防ごうとする市民の連帯も支えです。」

- - 欧州は違ったと。

「アジア以外の多くの国は感染者の行動を把握できず、追跡を途中でやめてしまいました。 病院で患者を選別したり、中国と同様に都市封鎖に踏み切ることで病院に行く人の数を絞ったり、といった対応に集中することになったのです。 アジア各国で行動制限が少ない一方、欧米では相次いだのも、これが理由でした。」

- - 以前はアジアもそれほど意識が高くなかったのでしょうか。

「SARS が流行した際に、私は WHO で緊急対策専門家会合の議長をしましたが、中国は最初、WHO に情報を出そうとしませんでした。 業を煮やした当時のブルントラント事務局長が「異変があったらすぐに報告せよ」と公然と批判したのです。 中国は慌てて WHO にも協力するようになり、強力な感染防止策も打ち出しました。 つまり、SARS を機に世界の結束が築かれ、WHO もリアルタイムの対応策を示すことができるようになりました。」

- - ほかにもアジアに特有の背景はありますか。

「共通しているのはマスクをする習慣です。 SARS 流行よりずっと前から定着しており、今回も感染を防ぐのに役立っています。 手をよく洗うのも、アジアならではの文化です。」

- - 欧州では北イタリアでの被害が衝撃的でした。

「国による死者数の違いは病院の受け入れ能力と社会の年齢構成から説明できます。 イタリアの特徴は人口に高齢者が占める割合の高さで、65 歳以上は 20 - 25% に達します。 多くは高血圧や糖尿病、慢性疾患などを抱え、合併症を引き起こしやすい。 若者と高齢者が一緒に暮らす生活スタイルも、被害が広がるきっかけになりました。 アジア諸国の場合とは異なり、感染した高齢者を受け入れる病床も十分確保できていませんでした。」

「当局は当初、被害を地域で封じ込めようと試み、人々の外部への旅行も禁止しました。 ただ、その間にも、多くの人の集まるスポーツイベントが開かれました。 そこに来た若者たちが感染し、そのまま、家に帰る。 その家にはお年寄りが暮らしている …。」

- - ただ欧州も一様ではなく、被害がそれほど広がらなかった国もあります。 ドイツは、イタリアほど死者を出していません。

「ドイツでは、イタリアとは対応も異なっていました。 若者がスキーに出かけ、その先で感染して帰宅したのは同じです。 また、ドイツも高齢者の占める割合が高い社会です。 しかし、高齢者への感染の危険性を認識していた独当局は厳しく感染者の行動を追い、隔離政策を進めました。 年配者を感染者から隔離して生活させる措置も取りました。」

- - 北イタリアから欧州全体に感染が広がった、とよく言われます。 スキーリゾートを通じて独仏に伝染したとか、スペインのチームを招いたサッカーの試合がいけなかったとか。

「それは間違いです。 それより以前に、中国からの旅行者が各国に入っていましたから。 欧州の被害をイタリアのせいにするのは、フェアではありません。」

- - 欧州の多くの国は今や国境を閉じました。

「感染拡大を防ぐ上で国境はあまり役に立たないでしょう。 国境を越えて移動する人はいるからです。 大部分の疫学者はむしろ、国内でしっかり監視することが重要だと考えています。」

- - 一方、英国のように空港を開いている国もあって対応は様々です。

「WHO も空港閉鎖を奨励しているわけではありません。 英国の対応も、国内で感染者を発見し隔離する方が重要だと考えてのことです。 行動追跡のアプリ導入も試みていますが、感染の可能性を人々に知らせるうえで有効です。 英国は自らリスクを分析し、最も正しいと思った対策を決めているといえます。」

- - 独自の方針を続けるのがスウェーデンです。 多くの国が都市封鎖に踏み切る中で、普段と大差ない生活を続け、大部分の学校も休校していないようです。

「スウェーデンならではの発想です。 政策を透明化し、市民を信頼し、人々に知識を持ってもらうことで行動制限を最小限にとどめる。 市民も、人と人との間隔を空けることや手洗いの重要性を理解している。 しっかりとした専門家が政府に協力し、綿密に助言をしています。」

- - 一方で米国に目を転じると、感染が特に広がったニューヨークでは黒人らマイノリティーの被害が大きいようです。

「喫煙率が高く肥満や糖尿病の問題も抱え、合併症を招きやすいことが関係していると考えられます。 彼らはまた、良質な医療にもアクセスしにくく、感染を防ごうとする意識も持ちにくい。 英国にも同様の傾向が見られます。」

- - 欧米以外に話を進めると、今後はアフリカなど途上国での流行が懸念されます。 医療インフラが弱いので、大いに心配ではないでしょうか。

「ただ、アフリカはある意味でよく準備ができている地域です。 一つの要素はコミュニティー単位の動員や周知が容易で、対策の必要性を指導者が理解すると、市民の間にも浸透しやすいことです。 セネガルやナイジェリアなどではここ 10 年の間に研究施設が整備され、威力を発揮している。 若者が多い年齢構成も感染の広がりに抗する意味では好材料です。」

「途上国で、主要国のように都市を封鎖するのは難しい。 ただ、自分や周囲を守る意識が社会に浸透すれば、対応は可能です。」

- - 感染者の増加に苦心する国がある一方で、オーストリアやドイツなど一部の国は、外出規制を緩和し始めました。 規制を解くタイミングは、どうつかんだらいいでしょうか。

「都市封鎖の解除には戦略が必要です。 すべてを一度に再開することはあり得ません。 産業界や民間部門が政府と連携し、どのセクターから営業を再開すべきなのかを探るべきです。 その際に大規模な市中感染が避けられるのか、業種ごと地域ごとに調査しなければなりません。」

「例えば、休校している学校を再開する際には、それが新たな感染拡大を招かないか、綿密な監視と測定が求められます。 (武漢が位置する)湖北省の封鎖を中国が解除した際も、極めて慎重に、リスクアセスメントを伴いつつ進めました。 WHO はそのための指針をつくっています。」

- - 特に留意すべきポイントは?

「高齢者の保護です。 すでに導入している国もありますが、例えばスーパーで高齢者向けの特別な営業時間を設けるなどの対策が必要になるでしょう。」

- - 強権的な国家ほど統制が利いてうまく事態を収拾できる、といった見方がありますが。

「むしろ欠かせないのは市民の理解です。 人と一定の間隔を保つ『ソーシャル・ディスタンシング』を気にかけ、間隔を保てないならマスクを着用する、大勢が参加するイベントに行かない、手を洗う - -。 一人ひとりが基本を守り、『自分をどう守るか』、『周囲をどう守るか』を意識し、政府の対策を自発的に支えることこそが、感染の広がりを防ぐと思います。」 (聞き手 ヨーロッパ総局長・国末憲人、asahi = 5-3-20)


英国のコロナ死者、2.6 万人超す 集計方法変え急増

英国で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の数が 29 日、2 万 6 千人を超えた。 米国、イタリアに次いで世界 3 番目の多さとなった。 介護施設での感染拡大をどう食い止めるかが大きな課題になっている。

英国では、毎日発表している死者の集計方法を 29 日から変えた。感染して病院で亡くなった人の数だけを発表していたが、介護施設などで亡くなった人の数も含めるようになった。 その結果、前日の発表より 4 千人以上増えて 2 万 6,097 人となり、スペイン、フランスを上回る形となった。 英国の介護施設では、スタッフが使うマスクなどの防護具が足りず、入所者やスタッフの感染の有無を調べる検査の実施も進んでいないと指摘されている。 政府は防護具の配送支援に英軍を投入し、症状のない人にも検査対象を広げるなど対応を急いでいる。 (ロンドン = 下司佳代子、asahi = 4-30-20)


新型コロナ感染者、300 万人を突破 死者は 21 万人に

新型コロナウイルスの世界の感染者数が 28 日、累計で 300 万人を超えた。 米ジョンズ・ホプキンス大学が世界保健機関 (WHO) や各国政府の発表をもとに集計した。 死者は同日、21 万人に達した。 世界の累計感染者は今月 3 日に 100 万人に達し、同 15 日に 200 万人を超えた。 その後も欧州や米国を中心に増加が続いた。

同大の集計によると、日本時間 28 日午前 11 時時点で、感染が確認されたのは世界全体で約 304 万人。 国別では米国が約 98 万 8 千人で最多、スペイン約 22 万 9 千人、イタリア約 19 万 9 千人、フランス約 16 万 6 千人などと続く。 死者も米国が 5 万 6 千人超と最多で、イタリア、スペイン、フランス、英国はいずれも 2 万人を超えている。 感染拡大のペースが落ち着いてきた一部の国では、経済再開に向けた議論も始まった。 イタリアは、5 月上旬から外出規制を順次緩和する方針を明らかにしている。 一方で、医療従事者や高齢者施設での感染拡大はなお深刻な状態が続いている。 (asahi = 4-28-20)


いまだ死者ゼロの国 隔離を強制、厳しすぎだと思ったが

「感染者の少なさや厳しい取り組みを伝えても、東京に信じてもらえない。」 ベトナムの新型コロナウイルス対策について議論していた時、ある日本人駐在員が嘆いた。 日本とは違う社会主義国のやり方は参考にならないと思われているのかもしれない。 私も当初は政府の発表する感染者数が少なすぎると疑っていたし、徹底した隔離もやり過ぎではないかと感じていた。 新型コロナの感染拡大が始まって約 3 カ月。 今は「主義」の違いを超えて、日本が学べることは何かを考えている。

感染者数は本当?

ベトナム政府は 23 日、「社会隔離」と名付けて 1 日から続けていた外出制限を緩和した。 首都ハノイや南部ホーチミンではレストランや露店が営業を再開し始めた。 タクシーも車両の台数に制限はあるが営業を許可された。 新たな感染者は 16 日から 23 日まで出ず、約 9,600 万人の人口に対して、同日時点の感染者数は累計 268 人。 このうち約 8 割の 220 人がすでに回復した。 死者はいない。 24 日になって新たに感染が確認された 2 人は、特別便で 2 日前に日本から帰国したベトナム人だった。

少ない感染者数をどう見るべきか。 当初の意見はベトナム国内でも分かれていた。 初めて感染が確認されたのは 1 月 23 日。 感染が広がった中国・武漢出身の親子だった。 感染者はその後、2 月 13 日までに計 16 人に増加。 同 14 日時点でのクルーズ船を除く日本の感染者数は 41 人で、日越両国に大きな差はなかった。 中国と約 1,400 キロの国境を接していることを考えると、ベトナムの方が感染者が少な過ぎると感じた。

ベトナムの政治に詳しい日本人にその印象を伝えると、「国民に危機感を持たせるためにも数字は隠していないはずだ」という答えが返ってきた。 一方で、親しいベトナム人からは逆に「ベトナム人は誰も政府の発表する数字を信用していない」と言われた。 この時点での私には、ベトナム人の意見の方が妥当だと思えた。 感染者数に比べて、政府の進める対策があまりにも厳しく、実際の感染者数はもっと多いのではないかと疑いを持ったからだ。

ベトナム政府は 2 月 1 日に中国との旅客航空便の運航を停止。 同 5 日には過去 2 週間以内に中国に滞在歴のある外国人の入国拒否を始めた。 日本が中国からの入国の大幅な制限を決めたのは 3 月 5 日で、ベトナムの方が約 1 カ月早い。 さらに旧正月の休暇を終えて再開するはずだった学校も、早々に休校が決まっていた。 再開は繰り返し延期になり、結局、ほとんどの学校は 1 月下旬から休校したままになっている。 私の息子 (9) も 1 月の赴任に合わせて転入した新しい学校に、旧正月前の 4 日しか通えていない。

2 月 13 日には 6 人の感染者が出たハノイ近郊の村全体が隔離された。 日が経つにつれて、私の考えは変わっていった。 欧州や米国で感染者が爆発的に増加し、一部の国で最近始まった抗体検査により公表されている数の何十倍もの感染者がいるという推計も出た。 日本ではいまだに検査態勢の拡充を求める声がやまず、感染の広がりを把握し切れていないという指摘が根強い。

ベトナムでも把握できていない感染者の存在は否定できない。 しかし、国の政治制度にかかわらず、感染者の把握は世界中の国々にとって共通の課題であることが明確になっている。 そう考えると、国民の危機意識に強く訴えるためにも把握した数字を隠さずに出す方が自然だと思える。 ハノイ市内の民間診療所に勤務する医師の千葉大さん (46) は「医療現場で肺炎患者が相次いでいる状況は起きていない。 日本人の感覚では、どうしてそこまでするのかと思えるような 2 月の早い段階から手を打ってきた積み重ねが効いているのではないか。」とみる。

症状なくても強制隔離

2 月 13 日の 16 人目を最後に 3 週間止まっていた感染者数は、3 月 6 日に欧州からの帰国者の感染が判明した後、再び増え始めた。 ベトナム政府は同 21 日からすべての入国者を隔離の対象にし、22 日には外国人の入国を事実上禁止にしている。 4 月 1 日からはハノイや南部ホーチミンなど大都市を中心に 3 週間にわたって外出制限を実施した。 欧州経由での感染が拡大し始めた段階で、感染者やその接触者、海外からの入国者を病院や自宅、軍の施設などに隔離する措置を徹底するようになった。

日本から見れば、症状のない人まで強制的に隔離する方法は一党支配の社会主義国ならではの「力業」かもしれない。 ベトナムで暮らす外国人の一人の生活者としては、国が「有事」と判断すればすぐにそこまでできる体制に不安も感じる。 しかし、民主主義国家の英国やフランス、米国でも罰金を伴う外出の制限や行動の制約が 3 月半ばから広がってきた現実をみると、このウイルスの前では「主義」の違いはもはや問題にならないとも思う。 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためには、一定期間、人と人との接触を断つことが最も有効なのは認めるしかない。

世界保健機関 (WHO) によると、2016 年時点での人口 1 万人当たりの医師の数は日本の 24.1 人に対して、ベトナムは 3 分の 1 の 8.3 人。 医療体制が十分でない危機意識はベトナム人に共通している。 少なくともベトナムのやり方は、「社会主義」というイデオロギーを基準に決められたものというより、医療や経済的な資源が限られるなかで感染を封じ込めるために最も効果的な方法が何かを基準に決められたのだろうと今は考えている。

SARS は最初に「制圧」

2003 年に重症急性呼吸器症候群 (SARS) が流行した時も、ベトナムは同じようなやり方を取っている。 当時は民間病院での集団感染をきっかけに、5 人が死亡、63 人が感染した。 ベトナムは感染者と接触者を徹底的に追跡し、隔離することで世界で最初に SARS の「制圧」を宣言した。

ベトナム政府は 4 - 6 月に毎月 180 万ドン(約 8,200 円)を失業者に給付することを含めた総額 62 兆ドン(約 2,800 億円)の経済対策を決めたが、外出制限で生じたすべての人の損失や苦境を助けられる額ではない。 日本のようにきめ細かい行政サービスができあがっているわけではなく、「本当にどれだけの人が受け取れるか分からない」と話すベトナム人の知人もいる。 国を頼ろうとしない姿勢は、たくましさと同時に、頼りたくても頼れない厳しい状況を思い起こさせる。

1 万人を超えるまでに感染者が増えた日本で、ベトナムと同じくらいに感染者が減るまでには長い期間がかかる。 その間、飲食店の休業や外出の自粛を要請し続けるとすれば、多くの人の生活はそれだけ厳しくなる。 収束のめどが見えてきた段階で基準をつくって経済活動を再開させることになるのだろうが、それがいつになるか見通すことも難しい。

一つの国だけでこの危機を終わらせることはできない。 ベトナムも今は感染者数が少ないが、世界全体で収束しない限り、国境をまたいだ人の往来は戻らず、様々な国の人たちが行き交っていた元の姿は取り戻せない。 時間がかかればかかるほど、しわ寄せは弱い立場の人たちに向かうだろう。 いつかやって来る「コロナ後」まで生き抜いていけるように、日本政府もベトナム政府も助けを必要としている人たちに手を差し伸べてほしい。 (ハノイ = 宋光祐、asahi = 4-28-20)

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