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ウィズコロナはやはり難しいのか ワクチン先進国で止まらぬ感染拡大 新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだシンガポールや英国で感染者の増加が止まらない。 規制への考え方は両国で分かれるが、感染拡大の理由が明確でないのは共通する。 どのように以前のような日常を取り戻すのか。 「コロナとの共生」への模索が続く。 これまで感染防いだことで、逆に感染拡大か 高層ビルの谷間に、マレー系の伝統的な串焼き「サテ」の煙が漂う。 だが、コロナ前はオフィス帰りの会社員や観光客らでにぎわったシンガポール中心部の屋台街は、8 月の外食解禁後も空席が目立つ。 「売り上げはコロナ前の 60% 減。 特に平日は厳しい。」 屋台を営んで 19 年というイアノンさん (58) が困った顔で話した。 観光客が来ないことに加え、イアノンさんが感じるのは、感染増や政府の外出制限が長く続いたことによる市民の気持ちの変化だ。 「多くの人が外出に慎重になった。 でも、テーブル間の距離を取るなど、安全対策はしている。 ワクチン接種済みの人は安全に気をつけ、ぜひ来てほしい。」 シンガポールは今年 7 月ごろまで新規感染者数が 1 桁の日もあるなど、コロナ対策の「優等生」と呼ばれた。 米ファイザー製と米モデルナ製を中心にワクチン接種も東南アジアで最速のペースで進め、すでに接種率は 85% に近い。 政府は 8 月 10 日、「コロナとの共生」を目指し、接種者に 1 組最大 5 人までの外食を解禁。 その後は在宅勤務が可能な業務でも 50% まで出社を認めるなど、規制緩和に踏み切った。 ところが、感染力の強いデルタ株の蔓延で目算が狂った。 8 月下旬から感染が急速に拡大し、いまは 1 日の感染者数が 3 千人を超える。 日本の人口なら 1 日 7 万人の水準になる。 ほとんどが接種完了後の「ブレークスルー感染」だ。 政府は職場や宿舎の食堂、トイレなど、マスクを外して多くの人が共同で使う場所が、感染を媒介した可能性があるとみる。 いずれも生活には不可欠で、対策を難しくしている。 ワクチンの効果も、接種から時間がたてば下がり、さらに未感染者の場合は感染経験者に比べて低いとみている。 接種が早く、感染経験者も少ないことが、いまの感染増につながった可能性があるとの見方だ。 いまは感染者の 98.6% が無症状か軽症で、亡くなる人は 0.2% 程度だが、20 日の政府発表によると、感染者を隔離する病床の使用率が 9 割に近づき、集中治療室 (ICU) の使用率が 3 分の 2 を超えた。 政府は 9 月下旬に規制を再強化。在宅勤務が原則となり、外出は同時に 2 人までとなった。 その後、特に未接種者は「重症化リスクが高い」として、ショッピングセンターへの入場や外食の禁止に踏み込んだ。 再強化の期限は約 1 カ月延期し、11 月 21 日とした。 来年 1 月以降は、接種者か感染経験者のみ職場への復帰を認める方針だ。 検査にも力を入れる。 8 月から全家庭に抗原検査キットを無料で配布。 通学する生徒や、職場への出勤が必要な人には週 1 回の定期検査を求めている。 ただし、自己検査で陽性でも症状がない場合は、自主隔離するだけにとどめ、病院などを受診しないように呼びかけている。 一方、ワクチン接種では 9 月に 3 回目の「ブースター接種」を 60 歳以上に向けて開始。 10 月に対象を 50 歳以上に広げた。 11 歳以下の子ども向けの接種も検討中で、来年初めの開始を視野に入れている。 共生戦略は「一時停止」の状態になったが、9 月上旬にドイツとブルネイとの間で始めた入国時の隔離なしの往来は今月、10 カ国に拡大。 他の国とも協議を続けている。 苦境の外食産業からも「2 人連れが上限では、家族そろっての食事は難しい」などとして、「せめて5人にできないか」といった要望も出ている。 リー・シェンロン首相は 9 日のテレビ演説で、「私たちはコロナとの共生戦略とともに、前に進まなければならない」と訴えた。 (シンガポール = 西村宏治) 英国「後戻りできない」 英国は 7 月、人口の 8 割超を占めるイングランドでロックダウン(都市封鎖)の法的規制をほぼ解除し、いち早く「コロナとの共生」にかじを切った。 だが、1 日の感染者数は高止まりが続き、10 月 21 日に再び 5 万人を上回った。 ワクチン接種が進んで死者数 1 月ほど深刻ではないが、少しずつ増えて、最大で 1 日 200 人台で推移。 一時は 1 千人を下回った入院患者も 8 千人を超えた。 ジャビド保健相は 20 日の会見で「感染者が 1 日 10 万人に届く可能性がある」と話した。 それでも医療逼迫は起こっていないとして、「現時点では緊急措置は実施しない」と強調し、未接種者や 3 回目の対象者に早期に接種するよう求めた。 これに対し、英国医師会 (BMA) は 20 日、「政府は、まるでパンデミックが終息して通常の生活に戻ったかのような印象を与えている。 しかし現実は、感染率も入院率も死亡率も、他の欧州諸国では聞いたこともないほどの許容できないレベルだ」と批判。 「最前線で働く医師としては、今がプラン B を宣言する時期と断言できる」と主張した。 プラン B は、ロックダウンの一歩手前の緊急措置。 入院患者が急増した場合にマスク着用の義務化などの規制復活を求めている。 病院でつくる国民保健サービス (NHS) 連合も 19 日、マスク義務化の復活などを政府に要求。 冬の本格化を前にすでにコロナ患者が増え、「病院スタッフが燃え尽き症候群に近い状態にある」と対策を求めた。 感染拡大の一因と指摘されているのが、ワクチン効果の低下だ。 世界に先駆けて昨年 12 月に接種が本格化し、2 回目を 4 - 6 月に受けた人が多い。 2 回接種の半年以内に効果が下がり始めるとみられており、イングランドでは最近 4 週間の死者の 8 割近くを 2 回接種した人が占めた。 免疫を高める 3 回目のブースター接種を 9 月に始め、これまでに 400 万人が受けたが、英タイムズによると、接種率は優先されている 80 歳以上でも半分に届かない。 70 代で 24%、60 代でも 8% にとどまっている。 また、多くの学校で 9 月に夏休みが終わり、子どもの感染も増えた。 年齢別の感染率は 10 - 19 歳が最も高く、5 - 9 歳、子育て世代の 40 歳代が続く。 子どもの接種率は 12 - 15 歳で 1 割台、16 - 17 歳でも 6 割に届いていない。 新たな変異株も懸念されている。 デルタ株から派生した「AY.4.2」で、「デルタプラス」とも呼ばれる。 イングランドではまだ感染の約 6% だが、感染力がデルタ株より強い可能性を指摘する声がある。 国民の心理面の変化も大きいとみられる。 ロックダウン解除の日は「自由の日」と呼ばれ、街に人々が繰り出すようになり、飲食店やナイトクラブはにぎわいを取り戻した。 解除直前にロンドンで開かれた欧州サッカー選手権の決勝も 6 万人以上の観客が入って盛り上がった。 出社する人も増えた。 BBC によると、政府の調査でマスクを「着けている」との回答が 10 月でも 82% と高いが、公共交通や食料品店では着用の方が少数派になることもある。 社会的距離を保っているとした人の割合も 7 月の 63% から 10 月は 39% に落ちた。 「会場を見渡してくれ、誰もマスクをしていない。 ワクチン計画に成功したことで、『ウィズコロナ』ではなく『コロナ後』になった。 こんなに前向きな国がほかにあるだろうか。」 今月上旬に英マンチェスターで開かれた与党・保守党の党大会で、党員のアシュラフ・マフマドさんはジョンソン政権を高く評価した。 当初、英国は記録的な死者数となるなど失策が続き、ジョンソン首相も感染した。 だが、接種開始後は国内外の評価が一変。 メディアはワクチン開発を英国のコロナ対応で「おそらく唯一の成功物語」などと伝え、ジョンソン氏の支持率もいったん上向いた。 マフマドさんは断言した。 「英国は 18 カ月間で 3 度ものロックダウンを経て、ついに自由を取り戻した。 もう後戻りはできない。」 (ロンドン = 金成隆一、asahi = 10-23-21) 途上国へのワクチン支援、道半ば 供給に遅れ、先進国 3 回目に不満も 新型コロナウイルスのワクチンを共同調達し、途上国にも公平に分配する国際的な枠組み「COVAX (コバックス)ファシリティー」が供給を始めて約 8 カ月が過ぎた。 中米やアフリカ、アジアの現場を訪ねると、コロナ危機に対する国際協調の試みの成果や課題が見えてきた。 地域を回るミニバンが次々と到着し、未接種の住民を降ろすと、接種を終えた人を乗せて去っていく。 最貧国の一つ、中米エルサルバドルの首都サンサルバドルにできたワクチン接種センター。 弟 (8) と妹 (16) を連れてきた主婦のアリソン・ソレアノさん (20) は「やっときょうだいも打てた」と喜んだ。 1 年ほど前、友人 2 人が新型コロナに感染して亡くなった。 「家族が感染しないか、ずっと怖かった。 外国から送られたワクチンには本当に感謝している。」 このワクチンを供給したのがコバックスだ。 世界保健機関 (WHO) や、途上国などでワクチン普及を進める国際組織「Gavi アライアンス」などが主導。 21 年中に世界で 14 億 2,500 万回分を供給する見通しだ。 人口 630 万人のエルサルバドルは今年 6 月までに割り当ての 41 万 7,400 回分を受け取ったほか、7 月にも 150 万回分の供給を受けた。 今月 5 日までに 350 万人が 2 回目の接種を終え、中米諸国ではパナマと並んで最も高い。 フランシスコ・アラビ保健相は 6 日の記者会見で、「コバックスによるワクチンへの公平なアクセスは、世界中の命を救うために間違いなく、重要な役割を果たしている」と強調した。 (サンサルバドル = 岡田玄) 接種完了 3% の国も WHO アフリカ地域事務局によると、アフリカ全体で 9 月 22 日現在、1 億 7,740 万回分のワクチンが供給され、うち約 4 割にあたる 6,750 万回分がコバックスを通じて配られた。 「コバックスのおかげで、欧米に行かなくても無料でワクチンを受けられてラッキーだ。」 ケニアの首都ナイロビから約 140 キロ離れた町で 9 月 23 日、トラック運転手のギデオン・オチョラさん (49) は英アストラゼネカ製ワクチンの接種を受け、ほっとした様子で喜んだ。 朝日新聞助手が訪ねた施設で提供されているワクチンは、コバックスを介して入手した。 ケニアの新型コロナの感染者数は 25 万 2 千人、死者は 5 千人を超える。 職員のパトリック・キアンバさんは「ワクチンを作ったり買ったりできないアフリカの国々には最高の仕組み。 これがなければ犠牲者が増え、状況はより悲惨になっただろう。」と感謝する。 ただ、ケニアはワクチンの 7 割をコバックスに依存するが、供給量は十分ではない。 ケニア保健省によると、10 月 20 日時点で接種を完了したのは人口の 3% に満たない約 132 万人。 外国に行く機会が多いオチョラさんは、数カ月前から何度も病院を訪れていた。 いま、オチョラさんが不安なのは 2 回目の接種だ。 12 週間後に受ける必要があるが、ワクチン不足のため確かではないという。 「2 回目を計画通りに受けられなかった知人は離れた施設に行き、何日も待たされた。」 アフリカ疾病対策センターによると、アフリカでワクチンを 1 回以上受けた人は 10 月 20 日現在、全人口の約 7.95% %にとどまる。 日本や欧米のような先進国に比べて大きく後れを取っている。 原因の一つが、輸出制限などによる調達不足からコバックスが年内の供給見通しを 20 億回分から引き下げたこと。 センターのモエティ事務局長は 9 月のオンライン会見で、「年末までにすべての国で人口の 40% の接種を終えるという WHO の目標をアフリカ全体で達成できなくなった」と指摘。 先進国で追加接種の「ブースター」が広がりつつある現状を批判した。 (遠藤雄司) 供給滞る間に死者急増 コバックスの供給遅れはアジアの国々にも影響している。 ベトナムは実質的に無償でワクチン提供を受ける 92 カ国の低中所得国の一つ。 政府はワクチン確保の柱と期待していた。 しかし、分配が始まった今年 3 月から供給が滞った。 チン首相が電話や書簡で何度も急ぐように求めたが、9 月末までに提供されたワクチンは約 1,200 万回分。 当初計画された年内分 3,900 万回の 3 分の 1 にも届かなかった。 19 日現在、1 回目のワクチン接種を終えたのは人口の約 5 割、2 回目は 2 割にとどまっている。 一方、4 月末から感染力の強いデルタ株が蔓延し、900 万人が暮らす最大都市の南部ホーチミン市だけでも 42 万人が感染。 国全体で 5 月上旬まで 35 人だった死者数は 5 カ月で 2 万 1 千人に急増した。 政府は日本や米国、ロシア、キューバなど二国間関係に頼ってワクチンの提供を受けた。 国民感情に配慮して慎重だった中国製ワクチンの接種も進むが、不信感は根強い。 ホーチミン市のグエン・トゥ・ハさん (49) はワクチンを 1 回も接種していない。 「ワクチンを選べず中国製になるかもしれないから、接種したくない。」 追加接種を進める先進国への不満もある。 ズオン・トゥアン・ビンさん (50) は「3 回目が本当に必要とは思えない。 世界中の人々が 1 回目の接種を終えることを優先すべきだ」。 (ハノイ = 宋光祐、asahi = 10-22-21) ロシアの感染、過去最悪 政治不信招き「国産ワクチン打ちたくない」 ロシアで新型コロナウイルスの感染拡大が過去最悪の状況になっている。 1 日あたりの感染者数は 3 万人、死者数も 1 千人を超えた。 ロシアは昨年、世界初の新型コロナワクチンの開発に成功したと発表したが、政治不信から接種率は低迷。 マスク着用も広がらず、感染拡大に歯止めがかかる気配はない。 (モスクワ = 石橋亮介) 人気レストランが数多く入居するモスクワ最大級のフードコートに併設された接種会場を 14 日に訪ねると、来場者の姿はほとんどなかった。 職員は「1 日に約 500 人を受け入れられるが、昨日は 80 人しか来なかった」と話した。 街中を歩くと、マスクを着けている人はまれで、地下鉄車内でも未着用が目立つ。 まるでコロナ危機が終息したような雰囲気だ。 しかし、ロシア政府によると、16 日は 1 日あたりの感染者数が 3 万 3,208 人、死者数は 1,002 人と、いずれも過去最悪になった。 感染者数は昨年 12 月の約 3 万人をピークに一時は 1 万人以下に減ったが、感染力の強いデルタ株が広がり今年 6 月から急増している。 背景にあるのが、ワクチン接種率の低さだ。 国内の関連データを集めているサイト「GOGOV」によると、14 日時点で 2 回の接種を終えた人は 31.3%。 政府が目標とする接種率 70% に届くまで 1 年以上かかるペースだという。 昨年、病床確保などに取り組んだ成果か、医療崩壊は伝えられていない。 ただ、あまりに社会の緊張感が薄く、政府は危機感を強めている。 ロシア大統領府のペスコフ報道官は 14 日、ロシアメディアにこう訴えた。 「死亡率や感染率の拡大など最悪の事実も隠さず伝え、国民にワクチン接種を説かなければならない。」 弱腰の対策 支持率の低下恐れ ロシアは昨年 8 月、世界で最初に新型コロナウイルスのワクチン「スプートニク V」を承認。 政権は世界初の「偉業」を誇り、12 月に国民への接種を始めた。 だが、最終段階の大規模な臨床試験は省略。 さらに 3 種類の国産ワクチンを承認したが、スピード優先の姿勢は効果や安全性に対する国民の不信を招いた。 しかも、ロシアで接種できるのは国産だけ。 英医学誌ランセットは今年 2 月、スプートニク V の感染予防効果が 91.6% に上るとする論文を掲載したが、独立系世論調査機関「レバダセンター」の 9 月の調査によると、「国産ワクチンを打ちたくない」と答えた人は 52% だった。 ボルコフ所長は「ワクチンは開発より接種の方が難しいことが明らかになった」と指摘する。 政府や自治体の感染対策も迷走する。 モスクワで 6 月、飲食店の入店に接種証明の提示義務が導入されたが、経済界が激しく反発し約 3 週間で撤廃された。 モスクワの企業は従業員の 60% 以上が接種しないと罰則を受けることになったが、「事実上の強制接種だ」との批判を受け、市長が「実態調査はしない」と表明した。 対策が弱腰なのは、全国各地で昨年、罰金がある厳しい外出規制を導入した後、プーチン大統領の支持率が過去最低の 59% に低下したことがあるとみられる。 政権は感染予防を理由に反政権デモを禁じる一方、戦勝記念日の軍事パレードや五輪選手の凱旋イベントなどの国威発揚行事を実施するなど姿勢が一貫していない。 地方では知事の判断で再び規制も強まりつつあるが全国統一の方針を打ち出せておらず、政権として国民に厳しい規制を強いるのは難しい状況だ。 (asahi = 10-17-21) コロナ急増中のシンガポール、海外旅行者の受け入れは拡大へ シンガポールが 19 日から海外からの旅行者受け入れを拡大する。 すでに 2 カ国と、ワクチン接種済みの旅行者の隔離なしの往来を再開しているが、これを英米など 11 カ国に広げる。 国内では新型コロナウイルスの感染者が急増しているが、高いワクチン接種率を強みに国境の開放は進める。 シンガポールは 9 月上旬にドイツとブルネイからの隔離なし受け入れを開始。 10 月 8 日までに 3 千人以上が入国したが、コロナが陽性だったのは 2 人だった。 これを受け、19 日から対象を米国、カナダ、英国、フランス、スペイン、イタリア、オランダ、デンマークにも拡大。 11 月 15 日からは韓国からも受け入れる。 日本はシンガポールからの旅行者を隔離なしで受け入れていないことや、ワクチン認証の仕組みが構築中のことなどから、現時点では対象から外れている。 シンガポールでは 10 月 8 日には 3,590 人の新規感染を報告。 過去最悪ペースで感染が増えている。 一方でワクチン接種は人口の 83% まで進んでおり、最近では感染者の 98.4% は無症状か軽症だ。 9 日にテレビで演説したリー・シェンロン首相は「ここ数週間で感染が急増した。 みなさんの不安は理解できる。」としたうえで、「私たちはコロナとの共生戦略とともに、前に進まなければならない」と強調。 「まず初めに、そして最も根本的なこととして、マインドセットを更新する必要がある」と訴えた。 (シンガポール = 西村宏治、asahi = 10-9-21) ◇ ◇ ◇ 「ワクチン先進国」シンガポールで、いま本当に起きている「すごすぎる現実」 私が暮らすシンガポールでは、これまで世界的に見ても最も厳しくコロナについての行動制限を行ってきましたが、全国民の 8 割以上が mRNA ワクチンの 2 回接種が完了したために、海外渡航も含めて行動規制を緩和し始めています。 「アフターコロナ」に向けて着実に歩みだしているシンガポールの最新の状況について、現地から紹介します。 シンガポールでのワクチン接種は、昨年末にファイザー・バイオテックのワクチンを承認して、世界の国々の中でもかなり早い 2021 年頭から始まりました。 その後、2 月にモデルナのワクチンも承認され、今に至るまでこの 2 つの mRNA ワクチンのみが承認されて接種が進められています。 シンガポールの人口は約 600 万人の内約 4 割が外国人という構成となっていることから、国籍に関係なく居住者は年齢順に接種が行われました。 私たち家族は就労ビザを取得してシンガポールに滞在していますが、65 歳以上の高齢者から 5 歳刻みで段階的に接種対象が拡大され、夫婦ともに 1 回目を 5 月の下旬に 2 回目を 7 月の頭に接種できました。 8 月からは接種対象となっている 12 歳以上であれば誰でも予約なしで、国中に 40 ヵ所ほどある接種会場にてウォークスルーで接種できるようになっており、さらに 8 月半ばから復活した店内飲食についてもワクチン接種者のみとすることで接種へのインセンティブを高め、8 月末に世界の主要国で初めて全国民の 8 割が mRNA ワクチンの接種を完了することに成功しました。 「アプリ」で一目瞭然 シンガポールでは、移動が難しい高齢者もカバーするために、リクエストをすれば自宅を医療従事者が訪れて接種するなど、他国が行っていない手段も駆使してこの接種率まで持ってきました。 シンガポールではどの店舗や施設に入るときも、政府が準備した行動管理アプリで QR コードをスキャンするか、スマホを持っていない高齢者や子供はトークンでチェックインするようになっています。 この行動管理アプリがワクチンの接種歴のデータを ID 番号で紐づけることで、mRNA ワクチンを 2 度接種して 2 週間が経過した人はアプリ上に "Vaccinated (接種済み)" と表示されます。 店内飲食をするときは、必ずこの行動管理アプリで接種が完了しているかをチェックするようになっています。 接種対象外の子供も含めて 1 グループ 5 人まで自由に店内飲食できるようになって、我が家ではインドネシア人の 30 代のメイドさんも接種が完了したので、2 人の子供も一緒に家族 5 人で外食をしています。 日本のように接種証明をわざわざ申請する必要もないですし、店舗でのチェックもスムーズで ICT の利用に手慣れたシンガポール政府ならではの、洗練されたワクチンパスポートの国内適用事例だと思います。 ICU 入院患者は「1 ケタ」 シンガポールが高いワクチン接種率にもかかわらず新規感染者が増えていると日本でも報道されているように、新規感染者は 9 月半ばに 800 人を超えるところまで増えてきています。 だた、日本と同じくシンガポールでもファイザー/モデルナの 2 社の mRNA ワクチンのみを接種しており、これらのワクチンはデルタ株に対しても高い重症・死亡リスクの低減効果を誇っていて、人口 600 万人のシンガポールにおいて国全体の ICU 入院者は1ヵ月以上、1 ケタのままで推移しています。 死者もここ 4 週間で 4 人にとどまっており、その 4 人も全員ワクチン接種が完了してない人たちでした。 9 月からはリスクが高い 60 歳以上で、ワクチンの接種完了から半年以上経過した人たちから、3 度目のブースターショットを打つことも新たな方針として打ち出して、シンガポール政府は上記のようなアフターコロナを見据えた行動制限の解除をスローダウンさせることはあっても、後戻りすることはないと強調しています。 後編記事(『「ワクチン大国」のシンガポール、出遅れた日本の「コロナ対応」とここまで違っていた …!』)ではそんなシンガポールで進む海外渡航の取り組みや、日本などとの差についてさらに紹介していきます。 (岡村聡、現代ビジネス = 9-22-21) モデルナ製ワクチン、30 歳以下への接種を一時停止 スウェーデン 北欧スウェーデンの保健当局は 6 日、米モデルナ社製の新型コロナウイルスワクチンの 30 歳以下の人への接種を一時停止することを決めた。 ロイター通信などが伝えた。 心臓の筋肉に炎症が起きる心筋炎や、心筋を覆う膜に炎症が起きる心膜炎といった副反応のリスクを理由に挙げている。 当局は一方で、「リスクは極めて小さい」と述べ、1991 年以降に生まれた人への接種停止は、12 月 1 日までの措置としている。1 同年代への接種は米ファイザー社製ワクチンの使用を推奨している。 北欧デンマークも同日、予防措置として 18 歳以下の人にモデルナ製の接種を一時停止することを決めた。 欧州連合 (EU) の専門機関、欧州医薬品庁 (EMA) は 7 月、モデルナ製ワクチンの 12 歳から 17 歳の子どもへの接種を承認することを推奨していた。 (遠藤啓生、asahi = 10-7-21) 米、ワクチンのブースター接種を開始 65 歳以上や医療関係者らに 新型コロナウイルスに対する免疫を高めるワクチンの追加接種「ブースター」について、米政権は 24 日、ファイザー製の 2 回目の接種から 6 カ月以上過ぎた 65 歳以上の人らに、3 回目の接種を始めると発表した。 接種対象をめぐって専門家の間でも意見が分かれたが、18 歳以上については重症化しやすい持病がある人や、感染リスクが高い医療関係者や教師らに限られることになった。 米国内では 18 歳以上の約 66%、約 1 億 7 千万人がファイザー製以外も含めたワクチンの接種を完了している。 今回の追加接種の対象となる人は約 6 千万人。 すでに 2 回目から 6 カ月を過ぎている人は 2 千万人ほどになるという。 バイデン大統領は 24 日に会見し、「私もできる限り早く接種する」と表明した。 米国内にはモデルナ製や米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン (J & J) 製のワクチンを接種した人もいるため、今後、対象を広げる可能性にも言及した。 ホワイトハウスは 8 月中旬、ファイザー製とモデルナ製を 2 回接種して 8 カ月以上過ぎた 18 歳以上の人を対象に、9 月 20 日から 3 回目の接種を開始する方針を公表。 米食品医薬品局 (FDA) の科学者らが計画の変更を求めたり、抗議の辞任を表明したりする騒動に発展していた。 ファイザーは 16 歳以上のすべての人を対象に承認申請していたが、FDA は 65 歳以上、または感染しやすい環境にいたり重症化するリスクが高かったりする 18 歳以上に限定して緊急使用を承認した。 僅差で否決 その後、議論した米疾病対策センター (CDC) の諮問委員会は、医療関係者ら感染リスクが高い人たちを接種対象に含めるかについて僅差で否決した。 ただ、ワレンスキー所長が下した結論は諮問委が推奨した内容とは異なり、医療関係者らも含めるという内容だった。 ワレンスキー氏は 24 日の会見で「パンデミックは不均衡な影響を与えてきた。 特に影響が大きいのは、病院や教室で最前線に立っている人たちや、密集した環境で日々危険にさらされている人たちだ。」と述べ、諮問委員会とは違う結論を出した理由を語った。 3 回目の接種によってどれくらいの効果が得られるのかなどについて、まだ十分なデータがないと指摘する専門家も多かった。 結局、当初の米政権の計画とは違う形でブースター接種が始まることになった。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 9-25-21) ワクチン未接種者の死亡率、11 倍高めか 米 CDC 調査 米疾病対策センター (CDC) は 11 日までに、ワクチン未接種者が新型コロナウイルスが原因で死亡する比率は接種した場合と比べ、11 倍高い可能性があるとする研究結果を発表した。 入院率は 10 倍高くなりそうだとも分析。 CDC のワレンスキー所長は、未接種者の感染率は約 4.5 倍増える可能性があるともした。 その上でワクチン接種の重要性にも改めて言及した。 今回の研究は今年 4 月から 7 月半ばにかけ計 13 州の症例 60 万件を材料にしている。 ワクチン投与がない米国民は 7,500 万人以上とされ、多くの州の病院が患者であふれてもいる。 専門家は秋季の感染拡大を危惧しその規模を少なくする対策に躍起となっている。 米国のファウチ大統領首席医療顧問(米国立アレルギー感染症研究所長)は米ネットメディア「アクシオス」の取材に、感染者数を最小限にするのが理想だが、妥当な目標の数値は 1 日あたり 1 万人以下との判断を示した。 米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、米国で感染力がより強いデルタ型の変異株が国内で猛威を振るう前の今年 6 月中旬の 1 日の感染件数は 7 日間の平均で約 1 万 1,000 人だった。 この中でバイデン米大統領は 9 日、連邦政府職員、大企業や公衆衛生の当事者らを対象にワクチン接種を義務づけるより厳しい対策を発表。 ただ、共和党の知事が率いる一部の州ではこれに反発し、法廷闘争に持ち込む構えも示している。 これらの州では高い入院率や低い接種率が目立つ。 (CNN = 9-11-21) 寝泊まりして働く「工場隔離」 厳格ベトナム、生産遅れて世界が悲鳴 「脱中国」を志向する製造業の受け皿になってきたベトナムが、感染力の強い新型コロナウイルスのデルタ株の広がりで、世界的な部品供給網のリスクになり始めた。 背景には、ワクチン接種の遅れから、感染封じ込めの切り札として導入された「工場隔離」がある。 「ほかにも私たちみたいな会社はありますか? 『工場隔離』の追加手当は 1 日 2 万ドン(100 円)。」 ハノイ郊外の工業団地にある日系電子部品メーカーの工場で働くヒウさん (34) は 8 月 9 日、フェイスブックでこう問いかけた。 3 日後、工場のコロナ対策として、従業員が寝泊まりしながら働く工場隔離が始まることになっていた。 いつ家に帰れるかは分からない。 迷った末の行動だった。 「手当が安すぎる。 他の仕事を探した方がいい。」 「会社も今は厳しい。 働けるだけマシ。」 多くのベトナム人から賛成や反対の意見が相次いだ。 しかし、実はヒウさんに選択肢はなかった。 タクシー運転手の夫はコロナによるロックダウン(都市封鎖)で失業中。 小学生の息子が 2 人おり、収入がなければ暮らせない。 「家族から離れて働くなんて誰もやりたくない。 でも今はやらざるを得ない。 子どもに会えないのがとにかく寂しい。」 隔離を始めて数日後、そう打ち明けた。 世界で新型コロナの感染が拡大した昨年、ベトナムは感染者数を抑えて、世界保健機関 (WHO) からコロナ対策の「優等生」と称賛された。 しかし、今年 4 月末からデルタ株の蔓延で感染が急拡大。 7 月に入って最大都市ホーチミンがある南部で連日、数千人規模の感染者が報告されるようになった。 そこで政府が導入を決めたのが工場隔離だ。 感染地域の工場は、従業員が敷地内などの特定の宿舎に寝泊まりして働くことが操業の条件となった。 ところが数百人分の宿泊場所や寝具、食料を確保できず、操業停止に追い込まれる工場が相次いだ。 操業できても、従業員を通常の半分以下に減らして稼働率が大幅に下がった工場は少なくない。 スマホアプリの TikTok では、工場内に敷いた段ボールやテントで眠る様子を撮影し、「家に帰りたい」、「コロナが怖い」と訴える動画が拡散している。 企業からも「従業員はもう限界だ」との声が出ている。 一方、感染者ゼロを前提としたベトナムの工場隔離政策が、世界的なサプライチェーン(部品供給網)を寸断するリスクを顕在化させ始めた。 サプライチェーン、寸断するリスク ベトナム保健省によると、韓国のサムスン電子は 7 月中旬、ホーチミンにある 16 工場のうち 3 工場で感染者が確認され、操業停止を余儀なくされた。 ナイキやアディダスのスポーツシューズを製造し、5 万人以上を雇用する台湾の宝成工業は工場隔離に対応できず、1 カ月以上操業できていない。 ベトナム繊維協会によると、国内の衣料品工場の 3 割が操業を停止した。 大半は中小企業で、宿泊施設や食料を提供するための資金を確保できない。 仕事を失った労働者が都市部から故郷に帰る動きも目立つ。 ベトナムの海外企業への影響 政府のやり方に対する異論も産業界などから出ている。 地元メディアによると、食品業界の関係者が視察に訪れた政権幹部に対し、「工場隔離は機能しない」と訴えたという。 社会主義体制のベトナムでは異例のことだ。 ベトナムで新型コロナの感染が下火にならない理由の一つに、ワクチン接種の遅れがある。 WHO などが主導する国際的な調達の枠組み「COVAX (コバックス)ファシリティー」を中心にワクチンを確保する戦略だったが機能せず、2 回の接種を完了した人は人口の約 3% にとどまる。 日本や欧米、中国から提供を受け、南部の住民を優先して接種を急いでいるが、欧州の外交関係者は「当初、感染封じ込めがうまくいき、ワクチン確保の優先順位が下がった面もある」と指摘する。 昨年は新型コロナの感染拡大が中国から始まったことで、過度な中国依存への警戒感が強まった。 米中貿易摩擦への懸念もあって生産を移す動きも目立ち、ベトナムは「脱中国」の受け皿として世界のサプライチェーンの中で存在感を高めていた。 それだけに生産の停滞をめぐる危機感は強く、有名ブランドなど 1 千社でつくる米国アパレル・フットウェア協会は 7 月下旬、バイデン大統領にベトナムへのワクチン支援を求める手紙を送った。 ベトナムは衣料品輸入の 2 割を占めており、「米国のアパレル産業の成功がかかっている」と訴えた。 ベトナムへの直接投資の件数 今回の混乱を受け、すでにアップルやグーグルがベトナムで計画していた新製品の製造を中国に戻したという報道も出ている。 ベトナムは近年、製造業を中心に外国からの投資を呼び込むことで急速に発展し、2019 年までの 5 年間は国内総生産 (GDP) の成長率が平均 6.7% を超える。 だが、世界銀行は 8 月下旬、21 年の成長率の予想を 6.8% から 4.8% に引き下げた。 ホーチミン食品協会のリ・キム・チ会長は「このままでは受注や投資の機会を失う。 政府は現実を受け入れて柔軟に対応するべきだ。」と主張する。 ここ数年、ベトナムに生産拠点を集めてきた日本企業も大きな打撃を受けている。 トヨタ自動車は 8 月 19 日、感染拡大によりベトナムなどで部品の生産が滞った影響で、9 月の世界生産を約 36 万台減産すると発表した。 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本のワイヤハーネス(組み電線)の輸入先はベトナムがトップで 4 割を占める。 他にもモーターや自動車シートなど様々な日系メーカーの工場が全国にあり、トヨタ以外の自動車メーカーにも波及する可能性がある。 日系企業の中には、ベトナムより感染対策の規制が厳しくないタイや中国に生産の一部を移す動きも出ている。 ホーチミン日本商工会議所の水嶋恒三会頭は「工場隔離を続けたままでは経済が立ちゆかなくなる。 対応を誤れば、築き上げた生産拠点としての魅力が失われ、長期的には『ベトナム離れ』を招きかねない。」と危惧する。 記者から 我慢させているのは私たち 「コロナ禍で生活費を稼ぐためには仕方ない。」 工場隔離について最初はそう思っていた。 しかし、取材を通じて考えが変わった。 家族に会えずに働くベトナム人が支えているのは、大量の生産と消費で成り立つ先進国の経済であり、その恩恵を受ける私たちだ。 状況を改善するにはワクチン接種を進めるしかない。 しかし、ベトナムはワクチンの確保に苦労しており、接種を完了した人は人口の 3% にとどまる。 一方で、先進国では、世界保健機関 (WHO) の反対にもかかわらず、3 回目接種の実施や準備が進む。 日系企業では管理職の日本人も工場内にとどまっている。 「現場で働き続けている人たちは精神的にも肉体的にも限界だ」というホーチミン日本商工会議所の水嶋恒三会頭の言葉が重く感じられる。 サプライチェーンを守るということは、現場で働く人たちを守ることだとあらためて実感した。 (ハノイ支局長・宋光祐、asahi = 9-5-21) 台湾、108 日ぶりに域内感染ゼロ でも入境制限は続行 台湾の蔡英文政権は 25 日、新型コロナウイルスの新たな域内感染者がゼロだったと発表した。 新規の域内感染者がいなくなったのは 5 月 9 日以来、108 日ぶり。 5 - 6 月には一日 500 人前後に上ったが、抑止策を徹底し、今月 12 日以降は 2 週間連続で感染者を 1 桁に抑え込んでいた。 政権の新型コロナ対策本部トップを務める陳時中衛生福利部長(厚生労働相に相当)は 25 日の定例会見で、「この 2 週間は(感染状況の)重要な観察期間だった。 このまま抑え込めることを願っている。」と述べた。 一方で、「台湾の外ではまだ感染が続いている」とし、警戒を緩めぬよう呼びかけた。 台湾の今月 24 日時点での累計の域内感染者数は 1 万 4,507 人(死者 821 人)。 対策本部の発表では、昨年 - 今年 4 月末で累計の域内感染者は 87 人だった。 5 月以降の流行拡大を受け、政権は学校の登校停止や、違反者には過料を科す飲食店の店内飲食の停止、接待を伴うスナックなどの営業停止を実施。 徹底して人と人の接触を減らすとともに、検査数を増やして感染者の把握・隔離を進め、3 カ月余りで流行を抑え込んだ。 また、感染者の減少を受け、今月には学位取得目的や、当局の奨学金を得た留学生の受け入れを再開したが、語学修習目的の留学生の入境禁止は維持している。 陳氏は「台湾の内部の流行抑止措置はできるだけ緩めたいが、水際管理はまだ続ける」とした。 こうした慎重姿勢の背景には、台湾のワクチン不足がある。 今月 23 日から独自開発したワクチン接種が始まったものの、欧米製ワクチンを合わせた接種数は人口(約 2,350 万人)の約 4 割にとどまっている。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 8-25-21) 米、3 回目のワクチン接種へ デルタ株拡大でブースター 米政府は 18 日、3 回目の新型コロナウイルスのワクチン接種を 9 月 20 日から始めると発表した。 2 回目のワクチン接種から時間がたつと、感染力が強いデルタ株などに対する免疫が落ちるというデータが出てきていることから、追加接種で免疫を高める「ブースター」が必要だと判断したという。 3 回目の接種は、ファイザー製とモデルナ製を 2 回打ってから 8 カ月経過した 18 歳以上の人が対象。 米国では昨年 12 月にワクチン接種が始まったため、優先して1、2 回目のワクチン接種を受けた医療関係者や高齢者の人たちから、3 回目の接種が始まる。 米国では今夏に入って急速にデルタ株が広がった。 ホワイトハウスの新型コロナウイルス対応チームは、デルタ株の拡大にともなって感染を防ぐ効果がファイザー製が 76% から 42% に、モデルナ製は 86% から 76% に落ちたというデータを重視した。 ワクチンの 2 回接種によって感染を防ぐ効果が、ニューヨーク州では 92% から 80% に落ちているデータにも注目した。 2 回接種であっても重症化や死亡を防ぐ効果は依然高いという。 米疾病対策センター (CDC) によると、米国内の 1 日の感染者は 6 月後半に約 1 万 2 千人(7 日間平均)まで減ったが、最近は約 13 万人(同)まで増加している。 米国ではジョンソン・エンド・ジョンソン (J & J) 製のワクチンも緊急使用が許可されているが、このワクチンが使われ始めたのは 3 月からだったため、追加接種についてはさらなるデータが出てから判断するとした。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 8-19-21) ラムダ株は「感染力強い」 ワクチン効きにくい可能性も 南米ペルーを中心に流行している新型コロナの変異株「ラムダ株」の感染者が日本でも見つかった。 ペルーでは新規感染者の 8 割から検出されており、ワクチンが効きにくい可能性も指摘されている。 最初にラムダ株を報告したペルーの専門家は、「感染力が強いことは確実だ」としつつ、致死率が他の変異株より高いかは不明だとしている。 ラムダ株は 2020 年 12 月にペルーで報告された。 これまでに中南米を中心に、日本を含む 40 カ国以上で感染が確認された。 ラムダ株を初めて報告したペルーのカエタノ・エレディア大学の分子遺伝学者パブロ・ツカヤマ博士 (42) は「わずか 3 カ月で急速に広まった。 感染力が強いことは確実だ。」と話す。 ツカヤマ氏によると、ペルーでは昨年 12 月時点で、ラムダ株の感染者数は 200 人だった。 だが、今年 3 月には首都リマだけでも新規感染者の半数がラムダ株になった。 7 月には、全国の新規感染者の 8 割がラムダ株になったという。 ペルーでは今月 10 日までに 19 万 7 千人以上が新型コロナで死亡しており、死亡率は 9% を超える。 人口あたりの死亡者数は世界で最も多い。 だが、ツカヤマ氏は「ラムダ株の致死率が、他の変異株よりも高いかはわかっていない。」と話す。 ペルーでは今年 6 月、過去の集計に問題があったとして死亡者数を修正した。 ラムダ株流行前の死者数も多く含まれ、吸入用酸素の不足や、医療態勢のもろさが原因となった死者も少なくない。 ラムダ株だけが、死亡率が高い原因とは言い切れない。 ペルー、感染者や死者数は減少 ツカヤマ氏たちの研究グループは、「ラムダ株に見られる変異が、ワクチンの効果を弱める可能性がある」と報告したが「まだ結論は出ていない」という。 隣国チリではすでに国民の 6 割が 2 回のワクチン接種を終えているが、ラムダ株の感染が広がった。 ただ、チリでは、他のワクチンに比べて有効性の低い中国メーカーの「シノバック」が主流だ。 また、チリの研究グループは、ラムダ株がシノバックのワクチンに適応した可能性を指摘している。 一方、ペルーではワクチン接種を加速させており、ファイザーと中国のシノファームがほとんど。 新規感染者数は 3 月ごろをピークに減少傾向にある。 医療態勢も改善されており、1 日あたりの死者数も減っている。 ペルー政府は現在、ラムダ株よりもデルタ株の感染拡大を警戒しており、国民にワクチン接種や注意を呼びかけている。 世界で報告された新型コロナの変異株を追跡するデータベース「GISAID」でも、ラムダ株は割合が減少している。 ツカヤマ氏は、ラムダ株にはワクチンが効きにくい可能性はあるとしながらも、有効だとしている。 ラムダ株をめぐっては、世界保健機関 (WHO) は 6 月 14 日、感染しやすさやワクチンの効果などに影響を与える可能性が示唆される「注目すべき変異株 (VOI)」に指定した。 ブラジルで広がった「ガンマ株」や、インドから拡大した「デルタ株」は、最も警戒度の高い「懸念される変異株 (VOC)」に分類されている。 (サンパウロ = 岡田玄、asahi = 8-14-21) |