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効き目ない宣言、4 カ月で感染者は倍 長期戦にらむ欧米

国内での新型コロナウイルスの感染者が 6 日、100 万人に達した。変異株の広がりとともに増加のスピードは加速している。 日本国内で初めて感染者が確認されたのは、2020 年 1 月 15 日。 その後、春の「第 1 波」で初の緊急事態宣言が出て、対象は一時全国に拡大した。 夏に「第 2 波」があり、10 月に感染者は10万人を突破。 冬場の「第 3 波」では感染者が急増し、21 年 2 月に 40 万人に達した。 重症者や死者も増え、十分な医療を受けられずに亡くなる人も出た。

東京で 2 回目の宣言が解除された 3 月下旬ごろから、大阪府や兵庫県など関西地方を中心に再び感染者が増え始め、4 月 9 日に 50 万人を超えた。 「第 4 波」の背景には、従来株より感染力が強いアルファ株が広がったことがある。 「第 5 波」では、さらに感染力が強いデルタ株が広がって、感染拡大のスピードが上がった。 6 月 21 日に東京などで 3 回目の宣言が解除されると、どんどん感染者が増え、五輪開催中に 1 日あたりの感染者数が全国で計 1 万人を突破した。

最初の感染確認から 50 万人に達するまでには、1 年 3 カ月かかったが、さらに 50 万人が感染するまでは 4 カ月しかかからなかった。 厚生労働省の専門家組織は現状について、「これまでに経験したことのない感染拡大が継続している」と危機感を示している。

専門家も感染の収束を見通せず

ただ、最近の死者の数は比較的少ない。 5 月は月間で最多の 2,816 人を記録したが、7 月は 408 人だった。 4 月から高齢者を対象としたワクチン接種が進んだ結果とみられている。 高齢者施設での感染者集団(クラスター)の発生も 1 月には 1 週間で 100 件を超えたが、7 月以降は 1 週間で 20 件に満たない。 しかし、感染者が現在のような水準で増えれば医療が逼迫し、十分な医療を受けられずに亡くなる人が出てくる。 内閣官房の資料によると、4 日時点の病床使用率は石川県で 87%、沖縄県で 79%、福島県で 77% など各地で高くなっており、50% 以上の「ステージ 4 (感染爆発段階)」水準の都府県は少なくとも 10 に及ぶ。

今後は 50 代以下へのワクチン接種を進めるとともに、人出を抑えることが重要になるが、宣言は以前ほどは効かず、対策に新味はない。 専門家も感染の収束を見通せていない。 政府分科会の尾身茂会長は 5 日、感染が爆発的に広がる現状を脱することができない場合、「ロックダウン(都市封鎖)みたいなことを、法制化してくださいというようなことさえ議論しなくちゃいけないことになる」と記者団に語った。(石塚広志)

ワクチンが行き渡らない途上国

新型コロナが 2019 年 12 月に中国・武漢で最初に確認されてから 1 年半余り、米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、世界の感染者数は 6 日午後 5 時現在で 2 億 93 万 920 人。 1 月下旬に 1 億人を超えてからわずか半年で倍増した。 6 月下旬には 1 日の新規感染が 30 万人を下回る日もあったが、再び増加傾向に転じ、5 日は 60 万人以上だった。 1 日の死者数は約 1 万人と高い水準が続く。 欧米を中心にワクチン接種が進んだ国では減少しているが、途上国にはワクチンが行き渡らない。 当初は感染を抑え込んだアジアでも、デルタ株の猛威を受け、タイなど各国で感染が急拡大。 1 日の感染者や死者が過去最多を更新している。

広大な敷地に白い墓標が数多く並び、人々が花を供えに訪れていた。 ジャカルタ郊外にあるコロナによる死者を埋葬する特別墓地。 インドネシアでは連日、約 1,500 人以上がコロナで亡くなり、世界最多の水準が続く。 2 回のワクチン接種を完了したのは人口の 8%。 累計でも 10 万人を突破。 在インドネシア日本大使館が把握する日本人の死者は 21 人にのぼる。 一時は 1 日 5 万人を超えた感染者数は 3 万人台に減ったが、コロナ対策の難しさもある。 病床が不足して自宅療養が増える中、病状が急速に悪化し、病院に行くのが遅れる人が多いという。

こうした状況でも政府は経済活動を優先して規制を一部緩和。 7 月末からジャカルタなどで、市場や日用品販売店などの通常営業を可能にした。 ロックダウン(都市封鎖)並の措置を求める声もあるが、ジョコ大統領は「問題の解決を保証するものではない」と否定する。

バイデン氏の呼びかけ、州知事が拒否

ワクチン接種が進んだ欧米では「長期戦」をにらんだ試行錯誤が続く。 累計の感染者数、死者数とも世界最多の米国では、最も深刻だった今年 1 月には 1 日あたり約 30 万人が感染し、約 4 千人が死亡。 ワクチン接種が進んで一時、感染者数が 1 万人を割り込む水準に減少した。

これを受け、米疾病対策センター (CDC) は 5 月、接種者はマスク不要との方針を発表した。 レストランなどの収容人数制限も解除され、街には大勢の人がマスクなしで繰り出すようになった。 だが、デルタ株により 7 月から再び増加し、3 日には約 10 万人になった。バイデン政権はマスク着用方針を再導入したほか、連邦政府職員にワクチン接種か毎週の PCR 検査を義務づけ、企業にも同様の措置を呼びかけるなど新たな対策を打ち出した。 バイデン政権は入国する外国人へのワクチン接種の義務化も検討している。

しかし、各州政府が大きな権限を持つ米国では、連邦政府の方針に従わない州もあって足並みがそろわず、マスク着用やワクチン接種はここに来て、再び政治的な対立軸にもなりつつある。

バイデン大統領は 3 日の演説で、「これは政治問題ではない。 ウイルスにとっては民主党員も共和党員も関係ない」と話し、改めてワクチン接種を呼びかけた。 また、「テキサス州とフロリダ州が、国全体の新規感染者数の 3 分の 1 を占めている」と指摘し、両州を含めた一部の共和党州知事に協力を呼びかけた。 これに対して、学校でのマスク着用義務などに反対するフロリダ州のデサンティス知事は 4 日、「バイデン氏から新型コロナ対策ついて言われたくはない」と協力を拒否した。

米国ではワクチン接種後も感染する「ブレークスルー感染」も問題になっているが、CDC は「ブレークスルー感染はまれで、ワクチンを接種すれば重症化は防げる」として、ワクチン接種率の向上を引き続き最優先課題に据えている。 バイデン政権は当初、7 月 4 日の独立記念日までに成人の 7 割が 1 回以上ワクチンを接種するとの目標を掲げていたが、実施に達成を発表したのは約 1 カ月後の 8 月 2 日だった。

英国は「コロナとの共生」を模索

一方、英国のジョンソン首相は 7 月、首都ロンドンがあるイングランドでロックダウン(都市封鎖)の法的規制をほぼ解除することを決めたが、英メディアはこう伝えた。 「イングランドのコロナ・ギャンブル。」 1 日の感染が最多で 5 万人に急増した時期で、医療崩壊への懸念も強かった。 政権中枢からは 1 日の感染 10 万人を覚悟する声も出ていた。 それでもジョンソン氏は、ワクチン接種で重症化を防げると判断。 「コロナとの共生」を模索しながら、経済を回す道を選んだ。 英国では、600 万人近くが感染し、13 万人が死亡。 これまでイングランドではロックダウンを 3 回実施。 いったん感染を抑えても、再拡大して規制強化する繰り返しだったからだ。

昨年 11 月 5 日からの 2 度目のロックダウンでは、クリスマス休暇前、家族で祝えるよう緩和方針を決めた。 だが、感染力の強い変異株(アルファ株)が見つかり感染が再拡大。 1 日の死者が 1 千人に迫る中、さらに今年 1 月からの 3 度目のロックダウンでは、不要不急の外出を罰則付きで禁じ、生活必需品の店以外は原則閉店。 飲食店は持ち帰りや宅配に限り、書店や家電店などはネットで先に販売した品の受け渡しでのみ営業できた。 外出は、在宅勤務できない仕事や運動、通院などに限られた。 市民に「コロナ疲れ」が広がった。

ロックダウンが解除された日は「フリーダムデー(自由の日)」と呼ばれた。 ホテルの従業員もこう喜んだ。 「みんな、ため込んだストレスを爆発させている。」 ワクチン効果の持続や、新たな変異株への対応を視野に、追加接種で免疫を高める「ブースター」も検討中。 「今後も重症者や死者は出るが、ワクチンで水準を抑えるインフルエンザのような共存するウイルスになる」との見方もある。 (半田尚子、ワシントン = 大島隆、ロンドン = 金成隆一、asahi = 8-6-21)


米で 400 人超集団感染、7 割がワクチン接種後

米疾病対策センター (CDC) は、マサチューセッツ州で 7 月に起きた新型コロナウイルスの集団感染で、感染者の 7 割がワクチンを接種済みだったとの調査報告書を 2 日までに公表した。 CDC は、インドで見つかった変異株(デルタ株)の感染力の強さを示しているとして、マスク着用など注意を呼びかけた。 CDC によると、同州バーンスタブル郡の町で 7 月、大規模なイベントに参加した人たちなどを通じて 400 人以上が感染。 このうちの 74% がワクチン接種を完了していた。 死者はいないという。 メーカー別の内訳はファイザー社製が 46%、モデルナ社製が 38%、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製が 16% だった。 同州全体でのワクチン接種完了者の内訳はそれぞれ 56%、38%、7% という。

CDC は集団感染が起きた町を公表していないが、複数の米メディアは同州プロビンスタウンで起きたと報じている。 CDC のワレンスキー所長は調査報告書の公表に合わせて声明を出し「デルタ株はほかの変異株と異なり、感染すると、ワクチンを接種していても他者に感染を広げる恐れがある」と指摘。 この調査結果が、ワクチン接種済みでもマスク着用を呼びかける指針の根拠の一つになったことを明らかにした。 この報告書とは別に、ワシントン・ポストなど複数の米メディアは、デルタ株は水痘(水ぼうそう)と同じ程度の感染力があると CDC が分析した内部文書を報じた。

米メディアが入手して公表した CDC の文書は、デルタ株の感染力は水痘並みに強いと指摘。 デルタ株の米国内での広がりを受け、CDC が今後取るべき方針の一つとして「戦況が変わったことを認める」とある。 ホワイトハウスによると、米国内の新型コロナウイルスに占めるデルタ株の割合は、2 カ月前には 1% だったが現在は 80% 以上だという。 (ワシントン = 大島隆、asahi = 8-2-21)

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約 7 割がワクチン接種後に感染 アメリカが観光地で調査

CDC (アメリカ疾病対策センター)が、アメリカの一部地域で調査した結果、感染者のおよそ 4 分の 3 が、ワクチン接種を終えていたにもかかわらず、感染していたことがわかった。 これは、CDC が東部マサチューセッツ州の人気観光地で新型コロナウイルスの陽性が判明した 469 人を調査したもので、74% にあたる 346 人が、ワクチン接種後に感染する、いわゆる「ブレークスルー感染」だった。

さらに、このうち 79% に、せきや発熱などの症状が見られたが入院したのは 4 人で、死者はゼロだった。 また、陽性だった人の一部(133 人)をさらに調べたところ、およそ 90% が、インド型変異ウイルス「デルタ株」だったこともわかった。 調査が行われた地域は、人気観光地として知られ、7 月も多くの人が訪れていたほか、大規模な集会も催されていたという。 (FNN = 7-1-21)

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イスラエル、高齢者に 3 回目のワクチン接種へ 8 月から

新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているイスラエルで、保健省が 29 日、60 歳以上の高齢者に 3 回目の接種を始めることを決めた。 AP 通信は「欧米のワクチンの 3 回目接種を広範囲にする初めての国になる」と指摘している。

保健省によると、接種は 8 月 1 日に始める。 2 度目の接種から 5 カ月以上経っていることを条件とする。 イスラエルは昨年 12 月から世界一のペースでファイザー製のワクチン接種を進め、人口の 6 割近い約 530 万人が 2 回の接種を終えた。 一時は 1 日の新規感染者数が 1 桁に減少したが、インドで見つかった変異株(デルタ株)の影響で、6 月下旬から感染が拡大。 今月 26 日以降、1 日の新規感染者が 3 日連続で 2 千人を超え、政府は危機感を強めている。

ベネット首相は 29 日の声明で、3 回目の接種の決定は「デルタ株の流行を含め、十分な研究と分析に基づいている」としている。 イスラエルでは 7 月、持病により免疫力が低い人を対象に 3 回目の接種を始めた。「すでに 2 千人に接種し、強い副反応は出ていない」とも指摘している。 ファイザー製ワクチンの効果をめぐっては、保健省は今月 5 日、発症を防ぐ効果が従来の 94% から 64% に減少したと発表したが、「重症化を防ぐ効果は 93% ある」とも指摘した。 政府は 12 歳以上の子どもを含む市民にワクチン接種を呼びかけている。 (エルサレム = 清宮涼、asahi = 7-30-21)

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感染増えても規制緩和する欧米 カギ握るブースター計画

新型コロナウイルスの感染報告が 1 日で 5 万人を超える英国が 19 日、人口の 8 割超を占め、首都ロンドンがあるイングランドでロックダウン(都市封鎖)の法的規制をほぼ解除した。 政府は 10 万人に増える事態も想定するが、ワクチンで重症化は抑えられると判断した。 ワクチン接種が進む米国でも、「コロナとの共生」への模索が始まっている。 (ロンドン = 金成隆一、ワシントン = 合田禄)

6 万人以上の観客で盛り上がったスタジアム。 大歓声が響くが、マスク姿の人はほとんど見当たらない。 ロンドンで 11 日に開かれたサッカー欧州選手権の決勝は、規制解除を先取りしたような光景となった。 ジョンソン英首相が規制解除の見通しを発表したのは 5 日。 5 月には感染報告が 1 日 2 千人を下回る日もあったが、インドで見つかった変異株(デルタ株)の広がりで再び感染が急増。 「19 日までに 5 万人になるかも」との見方も示していた。

その言葉通り、16 日に 5 万人を突破。 6 万人を超えた今年 1 月のピークに迫る勢いだ。 「夏に 10 万人に達する可能性がある」とみていたジャビド保健相も 17 日に自身の感染が確認された。 ジョンソン首相まで自主隔離となったが、解除の決意は揺らがなかった。 理由は「ワクチンの接種で感染者の重症化や死亡を減らせる」と判断しているからだ。 英国では成人の 68% が 2 回の接種を完了。 死者数は増加傾向がみられるが、1 日 10 - 60 人前後の水準で、1 千人台が続いた 1 月より大幅に少ない。

天候に恵まれ、学校が休みになる夏に、「社会をオープンにできなければ、いつ平常に戻れるんだ(ジョンソン氏)」という思いもある。 規制解除を歓迎する声も根強い。 英中部コベントリーの食糧配布所から出てきたチャーリーさん (22) は、16 歳で学校を卒業して以来働いていた飲食店がコロナ禍で閉店し、無職に。 規制が解除されれば、働き口を見つけやすくなると期待している。 「政府の規制は厳しすぎる。 1 匹のハエを殺すのにハンマーで机までたたき壊しているようなもの。 壊されたのは、私の暮らしだ。」 北アイルランドでも 26 日に一部規制が緩和される予定。 スコットランドでも今月 19 日に規制レベルが最も下がり、来月 9 日に主な規制が解除される見込みだ。

「インフルエンザのような共存ウイルスに」

英国はさらに先を見て、3 回目の追加接種で免疫を高める「ブースター」計画も進めている。 政府には「新型コロナはインフルエンザのように(人類と)共存するウイルスになる」との見方がある。 2 回接種で少なくとも 6 カ月間ほどワクチンの効果を維持できると見ているが、英国では接種が昨年 12 月に始まっており、秋以降には高齢者を中心に半年が過ぎる人が相次ぐ。 このため、条件が整えば 9 月にも高齢者や医療従事者らに 3 回目の接種が始まるとみられる。 今後は定期的に接種する可能性もある。

一方で解除を懸念する声も小さくない。 解除への不安の程度を聞いた世論調査会社ユーガブの調査(今月 16 日実施)では、「とても不安 (23%)」と「不安 (37%)」で計 6 割に達した。 オピニウムの世論調査では、今月 19 日の解除について、成人の半分 (50%) が「延期するべきだ」と、31% が「予定通りやるべきだ」、10% が「もっと早く解除するべきだった」と答えた。 過半数が、法的な義務でなくなって以降も、公共交通機関や店内でのマスク着用を続けると答えている。

感染拡大で労働力不足の懸念も強まっている。 感染者の濃厚接触者として自主隔離を求められた人は 7 月の最初の 1 週間で 53 万人を超えた。 飲食業界や小売業界、交通機関などでの人手不足が懸念されている。 すでに主要空港で出勤できる職員が不足し、長蛇の列ができる問題が起きた。 感染者だけでなく重症者が増えれば、医療崩壊を招く恐れもある。 科学者や医師ら 100 人以上は 7 日、英医学誌ランセットへの寄稿で政府の判断を「危険で早計だ」と批判した。

ホワイトハウスで大規模パーティー

人口の約半数が接種を完了した米国。 ワシントン中心部のホワイトハウス前には連日、多くの観光客がマスクなしで訪れている。 保険セールスのトーマス・クルーズさん (50) はフロリダ州から家族とやってきた。 すでにワクチンを 2 回接種。 「求められれば着けるが、いまは求められていない。 マスクなしで観光できるのは快適だ。」と笑った。

ただ、感染者数は 7 日平均で 1 万 1 千人ほどまで減っていたが、今月 16 日に 5 万人を超えるなど増加傾向にあり、米紙ニューヨーク・タイムズによると、全米の全ての州で感染者数が 2 週間前を上回る。 米疾病対策センター (CDC) の推定では、7 月に入ってデルタ株が 6 割を占める。 接種率は高齢者で高く、若い世代で低い。 CDC のワレンスキー所長は「未接種者のパンデミックが始まっている」と懸念するが、規制強化の動きは、室内でのマスク着用義務を再開した米カリフォルニアのロサンゼルス郡などわずかだ。 今月 4 日の独立記念日には、ホワイトハウスで大規模なパーティーが開かれ、ほとんどの人がマスクなしで参加した。

米国でも追加接種への注目が高まっている。 ファイザーとワクチンを共同開発した独バイオ企業ビオンテックのウール・シャヒン最高経営責任者 (CEO) は 13日、「ブースターなしには、このパンデミックを制御できない」と発言。 ファイザーの幹部も「ブースター接種についての重要な研究結果を近く発表する」と語った。 近く米食品医薬品局 (FDA) に許可を申請するとみられる。

フランスでもワクチンを 1 回以上接種した人は 50 代以上で 7 割を超えるが、足元では 1 日の感染者数は 1 万人を超える。 マクロン大統領は 12 日、病院や介護施設などの職員に接種を義務づけると発表。 カフェや美術館、長距離列車などの利用にも接種か陰性の証明書の提示が必要とした。 これまで無料だった PCR 検査の有料化も打ち出し、接種への圧力を強めている。 (asahi = 7-19-21)


韓国の駆逐艦で 68 人感染 ソマリア沖、300 人が乗船

韓国軍の合同参謀本部は 18 日、海賊から韓国船舶を保護するため、アフリカ東部ソマリア沖に派遣している海軍の駆逐艦「文武大王」(4,400 トン)の乗組員 68 人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。 艦内は気密性が高いうえ、空調設備が全ての区画をつないでいることから、感染者が増えるおそれがある。 300 人余りが乗船しているが、ワクチンを接種した乗組員は一人もいないといい、「国のために派遣したのに国は守ってくれなかった(朝鮮日報)」と軍や文在寅(ムンジェイン)政権の対応に批判が出ている。

合同参謀本部は作戦を事実上中断し、18 日に乗組員を帰国させるための輸送機 2 機を出発させる。 部隊は 2 月に派遣され、8 月初めに交代する予定だった。 6 月末に近隣国に寄港しており、今月 2 日から乗組員が風邪のような症状を訴えた。 ただ、新型コロナの検査は行わず、風邪薬を与えただけだったと韓国メディアは報じている。 (ソウル = 神谷毅、asahi = 7-18-21)


台湾の感染者、一桁まで減少 過料やマスクの義務は継続

台湾当局の新型コロナウイルス対策本部は 17 日の定例会見で、域内の新規感染者数が 7 人だったと発表した。 域内の感染者数が 1 桁台になるのは、5 月 11 日以来、67 日ぶり。 ただ、違反者に過料を科す外出時のマスク着用義務など主な防疫策は今月 26 日まで維持するとしている。 対策本部によると、16 日までのワクチン接種は、人口約 2,350 万人の台湾で約 490 万回。 ワクチン不足もあって 5 月以降、新型コロナウイルスの「第一波」が起きた。 5 月中旬 - 6 月上旬には域内の新規感染者数が 1 日 500 人前後に上った。 累計の域内感染者は 4 月末の 87 人から 1 万 4,111 人まで拡大した。

対策本部は 5 月中旬以降、全土で名物の夜市を含む飲食店の店内飲食を禁じたほか、すべての学校を登校停止にするなど、人との接触を抑制する対策を徹底した。 6 月には、台湾南部で感染力の強い変異株(デルタ株)の流行も確認されたが、濃厚接触者の素早い隔離などで抑え込んだ。 新規感染者数の減少を受け、対策本部は今月 13 日、一部の制限を緩和することを決めた。 しかし、台北市などほとんどの自治体は、緩和が再流行を招くとしてこれまで通りの厳しい抑止措置を続けている。 (台北 = 石田耕一郎、asahi = 7-17-21)

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国内製造ワクチン 113 万回分、台湾に追加提供へ 外相

茂木敏充外相は 6 日の閣議後会見で、台湾の新型コロナウイルス対策への支援として、国内で製造した英アストラゼネカ製ワクチン 113 万回分を追加提供すると発表した。 台湾向けワクチンは 6 月に 124 万回分を送っており、今回は第 2 弾となる。 ワクチンは 8 日に航空便で送る。 台湾とは国交がないため、窓口機関である「台湾日本関係協会」を通す形を取る。 外務省は「台湾におけるワクチン不足は当面続くことが予想され、追加でワクチンを供与することとした」としている。

このほか茂木氏は会見で、各国がワクチンを共同調達する枠組み「COVAX (コバックス)ファシリティー」を活用する形での海外支援策に改めて言及。 「東南アジア、南西アジア、太平洋島嶼国に 1,100 万回分のワクチン供与を予定している。 7 月中旬以降になると思う。」と述べた。 政府は 6 月 2 日にオンラインで開かれた「ワクチン・サミット」で、菅義偉首相がコバックスファシリティーなどに約 3 千万回分のワクチンを現物で提供する方針を表明していた。 (asahi = 7-6-21)

前 報 (6-25-21)


英空母「クイーン・エリザベス」で 100 人感染 … 日本にも寄港予定

【ロンドン = 緒方賢一】 英 BBC は 14 日、インド太平洋に向けて航行している英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」で新型コロナウイルスの感染が広がり、約 100 人が感染したと報じた。 空母打撃群として一緒に航行している艦艇でも感染者が出ているが、任務に支障はないという。 空母打撃群の乗員は計約 3,700 人にのぼる。 ベン・ウォレス国防相は、全ての乗員は 2 回のワクチン接種を受けており、ウイルスの広がりには対処できていると説明した。 感染者は、定期的に行っているウイルス検査で陽性と判明した。 空母打撃群は 5 月下旬に英南部ポーツマスを出港した。 今年後半には日本に寄港して、海上自衛隊との共同訓練も予定している。 (yomiuri = 7-15-21)


出国に中国ワクチン必須を一転 インドネシアが規制緩和

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないインドネシアで 9 日、政府が外国人に対する出国制限を緩和した。 主に中国製のワクチン接種が国際線の搭乗に義務付けられ、在留邦人の中で不安が広がっていた。 日本人の感染者数は増え続け、いまも 60 人以上が入院を待つ。 ワクチン接種などを目的に帰国を急ぐ動きも活発になっている。 インドネシア政府は 6 日から、出国のため国際線に搭乗する外国人にワクチン接種を義務づけた。 6 月以降、新型コロナの感染が急拡大。 インドで見つかった感染力の強い変異株(デルタ株)の広がりなどで、1 日の新規感染者数は約 5 千人から、7 月には約 3 万人台に増えており、新型コロナ対策の一環だった。

だが、これに困ったのが外国人だ。 インドネシアでは接種の中心が中国製のシノバックやシノファーム。 日本など承認していない国も多く、1 回接種して帰国しても2 回目を受けられない。 日本では 2 回目に別のワクチンを打つことも難しく、敬遠する人が多い。 ジャワ島中部のジョクジャカルタのガジャマダ大学院生の藤本迅さん (35) は日本で就職先が決まり、7 月下旬の帰国を予定していた。 「帰国の道を断たれることがこんなに怖いことだと思わなかった」と振り返る。 「副反応のことも考えると、ワクチン接種は命に関わること。 接種の強制は、冗談じゃないという気持ちが強かった。」と憤る。

これを受け、日本や米国、豪州、シンガポールなどが共同で規制緩和を働きかけた。 現在は、外国人が接種なしでも国内の大半の交通手段で移動し、国際線に搭乗することが可能だ。

インドネシアの感染者数は 7 月 9 日には約 3 万 8 千人と過去最高を更新。 日本大使館が把握する 10 日時点の日本人の感染者数も約 310 人、死者数は 12 人と、1 週間前に比べて、それぞれ約 40 人、4 人増えた。 医療機関の紹介などをする「ウェルビーホールディングス」によると、入院待ちも 64 人と増加傾向が続く。 日系団体ジャカルタ・ジャパン・クラブの小倉政則事務局長は「政府の規制によって、駐在員の帰国を進める日系企業にも混乱が生じていた。 緩和によって、国外退避の道がきちんと確保されたことは大きい。」

東ジャワ州に暮らす 30 代の日本人駐在員の男性は「中国製ワクチンは効力に不安があり、打つことに抵抗がある。 外国人にも接種を強制する政府の姿勢が怖かった。」と話す。 規制緩和を受け、8 月 1 日に日本政府が始める、在外邦人を対象とした新型コロナワクチンの無料接種を受けたいという。 藤本さんも「日本で認証されたワクチンを接種できるという選択肢を得られたことは、本当にありがたい。 日本政府の働きかけに感謝している。」と話す。 (半田尚子、asahi = 7-11-21)

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インドネシア、医療崩壊「目前」 駐在員の帰国検討も

新型コロナウイルスが猛威を振るうインドネシアで在留邦人の感染が急増し、3 日時点で 50 人以上が入院を待つ事態になっている。 首都ジャカルタでは、隔離病床の 9 割が埋まり、現地の日本大使館は「医療崩壊の一歩手前」と危機感を募らせる。 駐在員の帰国や国外退避を検討する日系企業も出ているという。 インドネシアの在留邦人は約 1 万 9 千人(2019 年時点)。 在インドネシア日本大使館が把握するだけでも感染者数は 3 日時点で 267 人で、約 70 人に 1 人が感染した計算になる。 うち約 3 割が 6 月以降の感染。 死者も 8 人出ている。

インドネシアでは 6 月上旬から感染が急拡大。 1 日の新規感染者数は約 5 千人から、7 月 3 日には約 2 万 7 千人に増えている。 インドで見つかった感染力の強い変異株(デルタ株)の広がりが背景にあるとみられる。 国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC) は 6 月 29 日、インドネシアの医療状況について「デルタ株により大惨事の瀬戸際に近づいている」と警告した。 新型コロナ用の病床を中心に医療現場が逼迫。 日本大使館の長徳英晶総括公使は「医療機関の収容能力を超えた患者が日々押し寄せ、症状の重い患者以外は入院が難しい」と懸念する。

日系企業の駐在員に医療機関の紹介などをしている「ウェルビーホールディングス」が把握している入院待ちの日本人患者は 3 日時点で 58 人。 現地法人の西田陽一郎代表は「入院できないのを心配し、一部の日系企業は駐在員の帰国や国外退避の検討を本格的に始めている」という。 日本人のワクチン接種が進んでいないことも原因の一つだ。 外国人向けの接種の遅れに加え、日本では承認されていない中国のシノバック製が中心で敬遠する人もいる。 こうした事態に対応し、日本政府は 8 月 1 日、在外邦人を対象に、一時帰国の際の新型コロナワクチンの無料接種を、成田、羽田の両空港で始める。 長徳氏は「ぜひ利用して欲しい」と呼びかける。

ジャカルタを中心に医療用酸素の不足への懸念も広がっている。 現地メディアによると、業者の前にタンクを持つ人々が列をつくり、価格は 2 - 3 倍に高騰。 ブディ保健相は 2 日、「国内で酸素のパニック買いが起きている」と懸念を示した。 入院できず、自宅療養を続ける人々の個人購入の増加が一因とみられ、SNS にはジャカルタで自前の酸素タンクを手にした 40 人以上が路上で行列する動画が投稿されている。 ブディ保健相は「国内の医療機関への酸素は行き渡っている。 不足については、工業用に生産されたものを転用して対応する」と話した。

日本人の感染、インドでも

在外邦人の新型コロナの感染では、4 月から 5 月にかけて 1 日の新規感染者数が世界最多の 40 万人を超えたインドでも、大使館などに報告があっただけで約 350 人にのぼる。 すでに多くの日本人が帰国したが、デルタ株がさらに変異した「デルタプラス」も出てきた。 医療サービス会社の現地代表は「ワクチン接種が思ったほど進んでいない。 デルタプラスにどこまで効果があるのかも不透明だ。」と心配する。 (半田尚子、奈良部健、asahi = 7-4-21)

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急増のデルタ株、欧州でも 感染者の 9 割に到達見込み

新型コロナの規制解除を進めている欧州で、デルタ株の割合が高まっている。 1 回のワクチン接種だけでは十分に予防できないためだ。 感染力の強いデルタ株は夏までに感染者の 9 割を占めると予想されており、感染拡大で再び規制に踏み切る国も出てきた。 ロイター通信などによると、ポルトガルは 24 日、首都リスボンで週末の飲食店の閉店時間を午後 3 時半にすると決めた。 週末の首都圏への出入りも、ワクチン証明書か、陰性証明書がない限り禁止する。 人口約 1 千万人の同国の新規感染者は 24 日、1,500 人を超え、2 月下旬以来の水準に達した。 リスボンではデルタ株が 7 割を占め、政府は「数週間で感染者はさらに増え続ける」とみているという。

欧州疾病予防管理センター (ECDC) は 23 日、デルタ株が 8 月末までに EU 内で 9 割を占めるとの予測を示した。 英国では今月、デルタ株の割合が 99% に達しており、欧州大陸でも広がった形だ。 EU のフォンデアライエン欧州委員長は 25 日、「EU でも感染の拡大のスピードがあがっている」と危機感を示した。

フランスでも南西部ランド県でデルタ株の割合が 7 割に達し、カステックス首相は 24 日、同県のワクチン接種や PCR 検査態勢を強化すると表明した。 フランスでは人口のほぼ半数がワクチンを 1 回接種しているが、変異株への高い予防率を得られる 2 回の接種は 3 割にとどまる。 国全体での新規感染者数は約 2 千人で、デルタ株の割合は 1 割だが、パリ首都圏を中心に今後割合が上昇すると予測されている。

ドイツでは、ロベルト・コッホ研究所によると、検査で陽性と判明した人のうちデルタ株の割合は 6 月半ばで 15%。 5 月末は 4% だった。 規制緩和で、街で買い物や飲食を楽しむ光景が戻ったばかり。 大幅に減ってきた感染者が夏場に再び増えるのを懸念する声が専門家らから上がっている。

ロシアも 1 日の感染者数が 6 月初めの 2 倍以上の 2 万人台に膨らみ、多くがデルタ株とみられている。 特にモスクワは 19 日に過去最高の 9,120 人を記録。 高止まりが続いている。 当局は夏休みを前に抑え込みたい考えだ。 飲食店やショッピングモールなどの事業者に、8 月半ばまでに従業員の 60% のワクチン接種を終えるよう命令。 接種を拒むと出勤できないとされている。 (パリ = 疋田多揚、ベルリン = 野島淳、モスクワ = 石橋亮介、asahi = 6-27-21)

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東南アジアで感染再拡大 観光再開の動きに「無謀」批判

新型コロナウイルスへの感染が、東南アジアで再び拡大している。 感染力の強い変異株が猛威をふるっているのに加え、ワクチンが十分に確保できず、接種が進んでいないことが背景にある。 それでも経済の立て直しに向け、リスクを承知で観光客の受け入れ再開を目指す動きが出ている。

インドネシアの感染、6 月に急増 1 日 2 万人突破も

インドネシアの首都ジャカルタの北部にあるロロタン公共墓地の一角に、新型コロナによる死者を埋葬する特別墓地がつくられている。 朝日新聞の現地助手が 24 日に訪れると、棺を載せた車が次々に到着。 1 日に 80 体が運び込まれることもあるという。 既存の墓地の敷地を広げて作られた特別墓地では 1 月に埋葬が始まり、24 日に計 1 千体を超えた。 7,200 体を埋葬できるが、この墓地で約 20 年働くダルシマンさん (48) は「このままでは、すぐに空きがなくなる」と話した。

特別墓地がある土地は水分を多く含む湿地で、墓地には不向きだ。 遺族の 1 人は「この墓地は一時的なものと聞いている。 それでもこんな土地に家族を埋葬したくない。 墓が今後どうなるか不安だ。」と話した。 インドネシアの 1 日の新規感染者数は 5 月には 2 千人台の日もあったが、6 月に入って急増し、26 日は 2 万 1 千人を突破。 5 月のイスラム教徒のレバラン(断食明けの大祭)で人が密集し、感染力の強いデルタ株が広がったのが原因とみられている。 政府は県をまたぐ移動や商業施設の営業時間などを規制したが、歯止めをかけられず、今月 25 日には国内の使用可能な新型コロナ病床のうち、7 割が埋まっていることを発表した。

マレーシアでも変異株の流入で 4 月後半から感染が拡大。 その後ピーク時に 1 日 9 千人を超え、6 月 1 日から生活必需品の買い物などに限って外出を認める全国的なロックダウン(都市封鎖)に追い込まれた。 28 日までの予定だが、いまも 1 日 5 千人を超える規模の感染者が出ており、延長される可能性がある。

感染拡大をほぼ抑え込んできたタイでも 4 月下旬以降、英国で確認された変異株(アルファ株)の流入などでバンコクの歓楽街やスラム、全国の刑務所などで集団感染が連鎖。 5 月からはデルタ株も広がり始め、1 日あたりの新規感染者が 3 千 - 4 千人で推移する。 4 月初旬時点では 1 日あたりの感染者数は 2 桁台だったが、今月 26 日時点で累計の感染者数は 24 万 452 人と、この 2 カ月で 4 倍以上に増えた。 当局は感染が目立つ地域で飲食店の営業時間を制限したり、運動施設を一時閉鎖したりしているが、抑え込みはできていない。

コロナ対策の「優等生」とされたベトナムも、25 日午前現在の感染者数は計約 1 万 4 千人。 4 月下旬から 1 万人以上増えた。 効果を上げてきた感染者らの隔離だけでは、変異株の拡大を抑えきれないとの悲鳴が上がる。 24 日に開かれた外務省の定例会見では、ベトナムのコロナ対策について「幸運が尽きかけている」と報じた米紙ニューヨーク・タイムズに、ハン報道官が「ベトナムの成功を運が良かったと表現するのは客観性を欠いている」と反論し、政府内の焦りをにじませた。

ワクチン確保に苦しむのも各国に共通する。 インドネシア政府は来年 3 月までに人口の 3 分の 2 にあたる約 1 億 8 千万人に接種を終える方針だが、供給不足や 4 - 5 月の断食月中の接種を避ける人が多かったことなどで、接種完了は約 1,260 万人にとどまる。 タイも 6 月から市民へのワクチン接種を本格化させたばかりだ。 10 月中旬までに人口の 7 割を超える 5 千万人に、最低 1 回の接種ができるよう対応を急いでいる。

ベトナムも、今月 25 日現在で 2 回の接種を終えた割合は 0.1%。 世界保健機関 (WHO) などが主導する国際的な枠組み「COVAX (コバックス)ファシリティー」を中心にワクチンを確保する戦略が機能せず、これまでに COVAX を通じて確保できたのは人口の約 1% 分の約 260 万回にとどまる。 ハノイの外交筋は「当てにしていた COVAX でワクチンを思うように確保できず、ベトナムは困っている」と話す。

戦略の転換を迫られた政府は 5 月下旬、国内外の民間企業や個人などから寄付を募ってワクチンの購入に使う基金を設立した。 年末までに人口の 75% にあたる 1 億 5 千万回分の確保を目指しており、官民合わせて総額 25 兆ドン(約 1,200 億円)を集める計画だ。 日本企業ではトヨタ自動車が 100 億ドンを寄付。 韓国のサムスン電子は 400 億ドンを寄付している。

ハノイにある各国の大使館を通じて、日米欧にもワクチン確保の支援を求めており、日本から英アストラゼネカのワクチン約 100 万回分が 16 日夜にハノイに到着した際には、ロン保健相が空港まで駆けつけ、日本の山田滝雄大使とともに歓迎。 ロン氏は「今回のワクチンは最も必要としている場所で活用したい。 政府を代表して支援に感謝したい。」と述べた。 これまで受け入れを見送ってきた中国製ワクチンについても方針を変え、20 日には中国政府からワクチン 50 万回分の支援を受けた。

「ワクチンを買い占めた国々からようやく寄贈の申し出を受けた。 何カ月も待っていたのに。」 マレーシアのカイリー科学技術イノベーション相は 21 日の会見で、欧米などに偏るワクチン供給への不満をあらわにした。 経済規模がマレーシアより小さなハンガリーに比べてもワクチン接種が進んでいないと批判されたことを受け、「ハンガリーはワクチンを買い占めてきた欧州連合の一員だ。 欧米では英国は人口の 5 倍、カナダも同じぐらいワクチンを買った。」などと訴えた。

2 月にワクチン接種が始まったものの、必要な回数を終えたのは人口の 5% ほど。7 月半ばまでに 10% への接種をめざしている。 もともとは年内に 80% への接種をめざしていたが、見通しは立っていない。 それまでは外出制限などで感染を抑えるねらいだが、足元の状況は厳しい。

観光再開の動き 専門家「無謀」

「120 日以内に開国を宣言したい。」 タイのプラユット首相は 16 日のテレビ演説で、入国者に義務づけてきた隔離措置を、10 月にもワクチン接種者に免除する方針を表明した。 国民へのワクチン接種は始まったばかりだが、「経済的な窮状を踏まえると、(感染拡大の)リスクを受け入れる時が来ている」と、経済の立て直しを急ぐ考えを示した。 背景には、国内総生産 (GDP) の約 2 割を占める観光業の苦境がある。 打開策として、政府は 7 月 1 日、南部のリゾート地プーケットで試験的に始め、入国管理局によると、初日は欧米や中東から約 1 千人を受け入れる予定だという。 問題が無ければ、北部チェンマイや南部クラビにも対象を広げていく計画だ。

インドネシア政府も経済活動の継続に軸足を置く。ジョコ大統領は 23 日、「現行の規制は、現状に適している。 経済を殺すことなく実行できるからだ。」と強調した。 専門家からはロックダウン(都市封鎖)並みの強い規制を求める声も上がるが、政府は職場の在宅勤務率の引き上げや、商業施設の営業時間の制限などで対応。 ジャカルタ・ポストはこうした政府の対応を「大統領のパンデミックギャンブルだ」と報じた。

感染急増の局面を迎えつつも、7 月にはリゾート地バリ島の観光を再開する方針だ。 国内旅行者の受け入れから始め、その後、海外からも迎える考え。 観光・創造経済省は22 日、バリ島を訪れた観光客がワクチン接種を受けられる「ワクチンツアー」の計画を検討していると発表した。 しかし、疫学が専門のインドネシア大学のパンドゥ・リオノ博士は「政府はパンデミックを真剣に捉えておらず、経済的な再建しか見ていない。 観光再開はあまりに無謀だ。」と批判する。 (半田尚子、シンガポール = 西村宏治、ハノイ = 宋光祐、バンコク = 乗京真知)

夜 11 時まで埋葬 防護服でも消えぬ不安

「自分や同僚も、いつかこうなってしまうのだろうか。」 悲しみに暮れる遺族たちを見ていると、やりきれなさを感じるという。 インドネシアの首都ジャカルタの北部にあるロロタン公共墓地。 ここで約 20 年にわたり働くダルシマンさんが 24 日、朝日新聞の現地助手に思いを語った。 新型コロナウイルスによる死者の急増を受け、ジャカルタ特別州政府はこの墓地を拡充する形で「特別墓地」を設けた。 既存の墓地に隣接する約 3 ヘクタールで、7,200 体を収容できる。 1 月から埋葬が始まった。

ダルシマンさんは午前 7 時から、約 40 人で作業を始める。 感染防止のための防護服とマスクの着用が必須だ。 ワクチンを接種し、健康状態を保つためのビタミン剤も配られている。 約 2 メートルの穴を掘り、プラスチックのシートにくるまれた棺(ひつぎ)を入れて土をかける。 投光器を使い、作業は夜 11 時まで続く。 「ここで働き始めて、こんなに忙しかったことはない。」 墓地にはひっきりなしに棺を乗せた車が到着する。 インドで確認された変異株(デルタ株)のニュースが流れるようになった頃から、忙しさが増した。 1 日で 80 体の遺体が運び込まれたこともある。

毎晩、くたくたになって帰宅するが、妻と 2 人の娘には決して近づかない。 家族はワクチン接種を受けていないからだ。 夜は 1 人で眠る。 自分のせきで目が覚め、「感染してしまったのかもしれない」と心配になる時もある。 ワクチンを接種していても、防護服を着ていても不安は消えない。 墓地で悲しむ遺族に近づくのも怖い。 「遺族は亡くなったコロナ患者と接触している。 遺体よりも、集まった遺族から感染する可能性が高いのではないか。」 仕事中は、自然と言葉が少なくなる。 「同僚たちも毎日、同じ恐怖と闘っている。 けれど、これが私の仕事だ。 責任を持ってやり遂げたい。」 (半田尚子、asahi = 6-27-21)

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