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コロナ感染してないのに「陽性」 誤判定続く簡易キット 新型コロナウイルスに感染したと診断され、保健所に届け出された後に、実は感染していなかったと発覚するケースが最近相次いでいる。 誤りに気づかれないまま入院、隔離される人の存在すら否定できない - -。 ある保健所担当者は話す。偽陽性を減らすには、どうすればいいのか。 その後の PCR は「陰性」 群馬県高崎市の黒沢病院では 9 月 7 日、職員 1 人が倦怠感やせきなどの症状を訴え、抗原検査の簡易キットで陽性となった。 保健所に届け出たが、その後の PCR 検査では陰性。 職員の家族や濃厚接触者ら 35 人全員も陰性だったため、簡易キットの結果は、感染していないのに陽性と出る「偽陽性」だったと判断。 2 日後に届け出を取り下げた。 錦戸崇・内科医長によると、症状が出た職員の夫や子どもにもかぜ症状が出ていた上、職員の職場は新型コロナに感染すると重症化しやすい透析患者を診る部署だった。 こうしたことなどから、早急に対策を取る必要があると考え、すぐに結果が出る簡易キットを使ったという。 その日のうちに保健所の立ち入り検査を受け、消毒もすませた。 だが、届け出を受けて群馬県が病院名を公表し、診療に大きな影響が出た。 外来の患者からは「受診をして大丈夫か」といった問い合わせが相次ぎ、入院患者が転院を予定していた医療機関からは「2 週間は受け入れられない」といった連絡もあったという。 届け出を取り下げたが、黒沢功理事長は「陽性者が出たという情報はすぐ広がるが、取り下げたことは伝わらない。 簡易キットでの偽陽性だったのに『誤診したのではないか』と言う人もいた。」と話す。 誤判定で取り下げ 34 件 簡易キットの「偽陽性」とわかり、医師が保健所に感染者の届け出を取り下げる例は増えている。 自治体への取材では 7 月から 10 月 1 日までに、少なくとも 15 都県で計 34 件が確認された。 うち 9 割近くが 9 月以降だ。 簡易キットは扱いやすくその場で結果がわかり、国内ではインフルエンザの診断などで普及してきた。 新型コロナ向けでも、富士レビオが 5 月、デンカが 8 月から国内で販売を始めた。 ただ、PCR よりも感染者を見逃す「偽陰性」が起きやすい。 この点は当初から注意が払われてきた。 厚生労働省の指針は、結果が陰性なら、発症 2 日目から 9 日目の場合を除き、PCR などの追加検査を求めている。 一方、結果が陽性だった場合は確定診断に使え、PCR と同じ扱いだ。 しかし、偽陽性が相次いで報告されていることに、二木芳人・昭和大客員教授(感染症学)は「偽陽性は起きないかのように思われてきたが、無視できない数が生じている」と指摘する。 「検査する側は偽陽性のリスクを理解するべきだし、厚労省も必要な情報を公開するべきだ」と話す。 検査の精度は一般に、感染している人が陽性と判定される割合(感度)と、感染していない人が陰性と判定される割合(特異度)で表される。 特異度が低いと、偽陽性が起きやすい。 PCR も特異度は 100% ではない。 新型コロナ特有の遺伝情報をとらえるプライマーの設計が悪かったり、感染者の検体が別の人の検体に混じったりすることが原因になる。 愛知県では 4 月、PCR で 24 人が陽性と誤判定され、親族などを含む 35 人と 2 事業者に計約 252 万円を賠償することを決めた。 ただ、PCR 検査の場合、「検体の汚染を防ぐ対応や適切な精度管理で、PCR だと偽陽性はほぼゼロにできる」と亀田メディカルセンターの大塚喜人・臨床検査管理部長はいう。 PCR では賠償する事態に発展 これに対し、簡易キットは、検体採取の方法、前処理液の状態、鼻水や唾液に含まれる粘性物質などが結果に影響しうる。 検体に新型コロナが全く含まれていなくても陽性になることがある。 簡易キットに詳しい北里大感染制御研究センターの松井秀仁・上級研究員は「感度を求めれば、特異度が下がり偽陽性が出やすくなる。 特異度をいかに保ちながら感度を上げられるかが、メーカーの腕の見せどころだ」と話す。 偽陽性について、富士レビオの担当者は「原因を調査しているが、今のところ製品の不具合は見つかっていない」という。 キットの使い方にも問題があるとし、「検体を採った綿棒を処理液でしっかりもみほぐし、液を 5 分静置しないと偽陽性が起こりうる」と話す。 デンカも誤判定を数件把握しているという。 だが、偽陽性は減らすことはできる。 実際に偽陽性がどの程度生じるかは、検査の精度だけでなく、どのような人に簡易キットを使うかに大きく左右されるからだ。 メーカーは新型コロナの簡易キットの感度と特異度を公表していないが、仮に感度 70%、特異度 98% とした場合、感染者が 1% しかいない集団に検査すると、陽性と判定されても 74% は誤判定だ。 陽性が 4 人いれば、偽陽性が 3 人という計算になる。 感染者が 20% の集団なら、陽性の誤判定が 10% に減る。 新型コロナが流行していない地域で簡易キットをやみくもに使えば、偽陽性が起きやすくなるというわけだ。 こうしたことから、厚労省の指針では、簡易キットは、「新型コロナの感染を疑う症状があると医師が判断した人」に使うこととしている。 しかし、必ずしも守られていないという問題もあるようだ。 取り下げが複数起きた政令指定市の担当者は「発熱がない人も含め、救急現場などでスクリーニングのように使われ始めている」と明かす。 厚労省の指針の内容も混乱の一因だ。 指針では、陽性結果を確定診断にできるとし、新型コロナと診断した医師は「直ちに」保健所に届け出る必要があると記載している。 このため、陽性という検査結果だけで機械的に届け出るようなケースもあり、ある市の担当者は「こちらで(陽性が)怪しいと思っても受理を拒む根拠がない」と困惑する。 気づかれぬ誤判定も? 届け出の取り下げは、時間を置かずに PCR で追加検査したことなどで、簡易キットの偽陽性が発覚したケースが多い。 90 代女性で誤判定が起きた甲府市では、保健所の調査で女性が感染しそうな生活ではないとわかり、念のため、PCR 検査したという。 別の市の担当者は「指針では PCR などの追加検査は求めていない。 偽陽性に気づかないケースがあってもおかしくない。」と懸念する。 今後、インフルエンザとの同時流行が懸念される中で、政府は簡易キットを 1 日 20 万件に拡充し、不足する PCR の検査能力を補う方針を打ち出している。 使い方次第では偽陽性が増え、感染していないのに隔離され、高齢者や持病のある人なら、入院して新型コロナに感染する恐れすらある。 保健所も濃厚接触者を探し、検査する業務に追われる。 黒沢病院の錦戸内科医長は「1 日 20 万件まで増やすなら、確定診断のあり方は検証する必要があると思う」と話す。同病院では、今は簡易キットで陽性になっても、濃厚接触者などではなく、偽陽性が疑われる人は、すぐには届け出ず、PCR の結果を待つことにしている。 その間、入院が必要な人は、感染予防策がされた陰圧個室で入院。 可能ならば、自宅待機してもらっているという。 政府の新型コロナ対策分科会メンバーの岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は、簡易キットでの検査のやり方などには改良の必要があるという。 「簡易キットの承認時は少数の事例で検証している。 大勢に使われれば色々と誤差が出てくる。 100% 正確な検査はないが、このままでよいわけではない。」という。 届け出についても検査結果のみで診断するのではなく、「各医師が症状や濃厚接触者の調査などを踏まえて総合的に判断するものだ」と強調する。 検査に詳しい菅野治重・鹿島病院感染症診療支援センター長は「現状、新型コロナの診断の正確さには高いレベルが要求される。 自前で PCR 検査をできない医療機関は簡易キットに頼らざるを得ない面があるが、簡易キットだけに頼るのは危険だ。 簡易キットの結果が陰性、陽性にかかわらず疑わしい患者は PCR などで再確認するべきだ。」と指摘する。 厚労省の担当者は偽陽性について「現状では事例を網羅的にチェックはしていないが、不当な人権制約はあってはならない。 ある程度数が出てくるようなら、対応を考えなければならないだろう。」と話す。 (阿部彰芳、松浦祐子、富田洸平、asahi = 10-3-20) 感染していないのにコロナに免疫? 無症状が多いわけは 新型コロナウイルスの「第 2 波」を迎えた 8 月の致死率は 0.9% と、5 月に比べ 8 分の 1 に下がった。 検査の拡充で軽症や無症状の人が多く見つかり、分母となる感染者数が増えたことが大きな要因だ。 なぜ多くの人は、感染しても軽症や無症状ですむのか。 新型コロナの一番やっかいな特徴は、誰が感染を広げているのかが見えにくい点だ。 厚生労働省の診療の手引には、新型コロナに感染して発症した人の 80% は軽症のまま治るとある。 だがこのデータは、中国で 2 月 11 日までに診断された約 4 万人のデータに基づく。 当初は軽症や無症状の感染者がかなり見過ごされており、軽症のまま治る人の割合はもっと高い可能性がある。 中国の研究グループは 7 月、3 月 8 日までに武漢市で感染した人の 87% は、検査で感染が確認されていなかったと推計した。 東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「感染症には無症状から重篤まで幅があるのがふつうだ。 感染すれば重症化すると思われているエボラウイルスでも無症状の人はいる。 どちらになりやすいかは、ウイルスの特性や感染した人の状態など、様々な要素が関わる。」と話す。 重要なのが、過去に感染したウイルスを覚え、再び感染したら速やかに攻撃を始める「免疫」の働きだ。 主役となる T 細胞というリンパ球は、ウイルスに感染した細胞を殺し、ウイルスが増えるのを抑える抗体をつくるよう指示する。 ただ、最初の感染時は、T 細胞や抗体が攻撃力を高めるまでに時間がかかる。 この間にウイルスが増えてしまい、症状が長引いたり、悪化したりしやすい。 新型コロナは昨年末から流行し始め、人類は免疫を持たないとみられてきた。 それが最近の研究で、感染していなくても、新型コロナに反応する T 細胞を持っている人が一定の割合でいることがわかってきた。 米国の研究グループが新型コロナ流行前の 2015 - 18 年に採った 20 - 60 代の人の血液を調べたところ、約半数に新型コロナに反応する T 細胞が含まれていた。 同様の報告は英国やオランダ、ドイツ、シンガポールなどからもあがる。 過去に採った血液から、新型コロナに反応する抗体が一部で見つかったという報告もある。 なぜなのか。 考えられるのが、過去にできた免疫が似ているウイルスにも反応する「交差反応」という現象だ。 コロナウイルスには、普通のかぜの原因になるものも 4 種類ある。 過去にかぜをひいたときにできた T 細胞や抗体が、交差反応を示した可能性がある。 このことが、新型コロナに感染しても、非常に軽い症状や無症状ですむことに影響しているかもしれない。 09 年に流行した新型インフルエンザでは高齢の患者が比較的少なく、交差反応が一因とされている。 1918 - 20 年に「スペイン風邪」を引き起こしたウイルスは、新型インフルと一部が酷似し、当時の流行などで得られた抗体が効いた可能性が指摘されている。 まだ仮説の段階 慶応大の吉村昭彦教授(免疫学)は「交差反応は有力な仮説の一つだ」と話す。 ただ、新型インフルのときと比べ、新型コロナは風邪コロナと似た部分が少ない。 新型コロナに交差反応を示すT細胞や抗体が試験管内で見つかっただけで、体内でどう働くのかはまだ不明だ。 新型コロナに実際に感染してもらう実験をすれば調べられるが、倫理上許されない。 「仮説が正しいかどうかは、長期的に経過を見ていく中で解明されるだろう。」と吉村教授は話す。 一方、交差反応する抗体が、かえってウイルスを細胞に感染させやすくしたり、異常な免疫応答を引き起こしたりする可能性もある。 大阪大の荒瀬尚教授(免疫学)は「新型コロナの重症化につながる可能性もまだ否定できない」と指摘する。 ワクチンでは、交差反応するT細胞や抗体の有無が、効果や副作用を左右する可能性もあるという。 (阿部彰芳、asahi = 9-26-20) 唾液 PCR 検査開始 1 回 2 千円 ソフトバンク子会社 ソフトバンクグループ (SBG) の子会社「新型コロナウイルス検査センター」は 24 日、法人や自治体を対象とした事業を始めると発表した。 唾液を用いた PCR 検査を 1 検体あたり 2 千円(税・配送料など除く)で請け負う。 無症状の感染者を見つけ出すことをねらいとし、新型コロナの感染拡大防止につなげたいという。 検査は当面、法人などを介して実施し、個人からは受け付けない。 自身で唾液を採取して容器に入れ、特定の配送業者を使って送付する。 検査施設に到着後、最短2時間で結果がわかるという。 ただし、医師がかかわらない仕組みのため、陽性の判定が出た場合、正式な診断には医療機関の受診が必要になる。 検査施設は、医学的な指導を受ける国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)内に開設。 検査能力は 1 日 4 千件だが、今秋中に同 1 万件に引き上げることをめざす。 すでに 100 万回分の検査キットを確保したという。 同病院で会見した SBG の孫正義会長兼社長は、事業について「利益を目的にしていない。 安心して経済を再稼働していくためにも安価で簡単な検査は有益だ。」と話した。 (松浦祐子、asahi = 9-25-20) アビガン、10 月にも承認申請へ 国産コロナ治療薬で初 新型コロナウイルスの治療薬候補「アビガン」について、富士フイルム富山化学は 23 日、臨床試験(治験)の結果、熱などの症状を改善する効果が確認できたと発表した。 10 月にも国に製造販売の承認を申請する。 承認されれば、日本で開発された新型コロナ治療薬としては初めてとなる。 同社によると、重症でない新型コロナウイルス肺炎の患者 156 人を対象に治験を実施した。 アビガンを投与した患者では、熱や肺の機能などの症状が改善するまでの日数の中央値が 11.9 日と、偽薬を投与した患者の 14.7 日より 2.8 日短くなったという。 同社は「早期に症状を改善することを確認できた」と主張している。 申請を受けて、厚生労働省が有効性や安全性などを審査し、承認するかどうかを決める。 新型コロナ治療薬はこれまでに「ベクルリー(一般名レムデシビル)」と「デキサメタゾン」が承認されている。 アビガンは感染初期の軽症の段階で使うことが想定されている。 これまで一部の病院で、患者の希望と医師らの判断で使える「観察研究」という枠組みで使用されてきた。 正式に承認されれば、多くの病院、患者に使用できるようになる。 ただ、胎児に奇形を生じるおそれがあることがわかっている。 妊娠中やその可能性のある女性、相手の男性には使えない。 富山化学は 3 月末に国内での治験を始めた。 96 人を目標に参加者を募集し、当初は 6 月末に終える予定だった。 参加者数をすぐには確保できず、7 月以降も治験を続けていた。 7 月中旬ごろから患者が再び増えたことで、当初の目標数を上回る 156 人の参加者を確保できたという。 (江口英佑、真海喬生、asahi = 9-23-20) 痛風は新型コロナの死亡リスク 慶応大グループ明らかに 痛風や高尿酸血症の人は新型コロナウイルスに感染すると死亡リスクが高まる - -。 そんな研究結果を、慶応大病院などの研究チームが市中感染した国内の入院患者を分析し、国際医学誌に論文を発表した。 慶大病院と東京近郊の 13 の関連病院で 2 月から 6 月 19 日にかけて受け入れた新型コロナの全患者 345 人について、入院後の重症化や死亡が基礎疾患と関係あるのかなどを調べた。 集団感染が起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗員、乗客は含まない。 患者の年齢の中央値は 54 歳。 基礎疾患別では多い順に高血圧 90 人、糖尿病 48 人、高尿酸血症が 28 人と続いた。 これらの分類をもとに、他の基礎疾患の有無や性別といった条件を除くなどして統計学的に処理したところ、従来の研究で死亡リスクが高いといわれていた「高齢」や「慢性腎臓病」だけでなく、高尿酸血症や痛風も高リスクであることがわかったという。 新型コロナに感染すると、過剰な免疫反応で多臓器に炎症を起き、亡くなるケースが知られている。 高尿酸血症や痛風の人はもともと体内の炎症反応が強まりやすく、糖尿病になると死亡リスクが高いことも知られているという。 チームは、新型コロナに感染することで炎症が増幅され、死亡リスクが高まる可能性を指摘している。 食生活の改善や薬で尿酸値を下げることで死亡リスクが下がるかは不明だ。 論文をまとめた慶応大の石井誠准教授(呼吸器内科)は「痛風や高尿酸血症の人はよりリスクがあると考え、感染に注意してほしい」と話している。 論文は米東部時間の 10 日に ジャーナル・オブ・インフェクション。 (三上元、asahi = 9-19-20) 名古屋大学 新型コロナ 人工の抗体 速やかに作ることに成功 新型コロナウイルスに感染すると体内にできる「抗体」と同様のたんぱく質を速やかに人工的に作ることに名古屋大学などの研究グループが成功し、細胞への感染を抑えることも確認できたと発表しました。 研究グループは、新しい治療薬の開発などに応用できる可能性があるとしています。 抗体を作ることに成功したのは、名古屋大学の村上裕教授と名古屋医療センターの研究グループです。 新型コロナウイルスに感染すると、体内に「抗体」と呼ばれるたんぱく質が作られ、その後、ウイルスが細胞に入り込むのを防ぐとされています。 これまで、抗体を人工的に作るには少なくとも数週間かかっていましたが、研究グループは 10 兆を超える人工の抗体の中から特定のウイルスに結びつくものを速やかに選び出す「TRAP 提示法」という新しい技術を開発し、新型コロナウイルスに対する抗体を 4 日間で作ることに成功したということです。 また、人工的に作った抗体は新型コロナウイルスだけと非常に強く結合する特徴があり、ウイルスの細胞への感染を抑えることが確認できたということです。 研究グループでは、この抗体を感染の有無を調べる検査や新しい治療薬の開発に応用できる可能性があるとしています。 研究成果は、アメリカの科学雑誌「サイエンス・アドバンシズ」の電子版に 19 日、掲載されます。 (NHK = 9-19-20) 新型コロナ → 川崎病、国内初か 医師「2 カ月は注意を」 東京都立小児総合医療センター(府中市)で、3 月下旬に新型コロナウイルス感染症と確認された 1 歳男児(当時)が、その後、全身の血管に炎症が起きる「川崎病」と診断されていたことがわかった。 新型コロナ感染後では国内初の症例とみられ、専門家は今後の動向を注視している。 センターによると、川崎病と診断されたのは 1 歳 11 カ月(当時)の男児。 母親が新型コロナに感染し、男児も発熱。 PCR 検査で陽性となり、3 月下旬に入院し、約 1 カ月後に母親と一緒に退院した。 男児は約 3 週間後に再び発熱。 発疹などの症状から川崎病と診断された。 欧米では、コロナ感染者で川崎病に似た症状が重症化する例が報告されている。 年齢層が 10 代後半までと広く、典型的な川崎病と区別して MIS-C (小児多臓器炎症性症候群)などと呼ばれている。 このため改めて鼻の奥から検体を取り PCR 検査をしたところ陰性で、感染歴がわかる抗体検査では陽性だったという。 同センターで 3 - 5 月に川崎病と診断された 14 人のうち抗体検査で陽性だったのはこの男児だけだった。 男児は血液製剤や炎症を抑えるステロイドなどを使った治療で回復し、退院。 現段階では後遺症もみられないという。 症例は近く、日本小児科学会の英文学会誌で発表される。 川崎病の引き金はウイルス感染とする説もあり、小児循環器が専門の三浦大・同センター副院長は、新型コロナと川崎病との因果関係は不明としたうえで、「今回の症例は、新型コロナ感染が引き金になったと推測できる」と話す。 乳幼児がいる保護者には「コロナから回復後も、2 カ月は、目の充血、手足が赤く腫れるなどの症状が出ないか注意してほしい」と呼びかける。 日本川崎病学会副会長の鮎沢衛・日大准教授は、「新型コロナの 10 歳未満の感染者が約 1,700 人ほど出ているなかでの『川崎病第 1 例』で、今後も同じような事例が出るかどうか、注意深くみる必要がある」と話している。 (野口憲太、熊井洋美、asahi = 9-11-20) 唾液でコロナ・インフルを同時検査 秘密は金の微少粒子 唾液からインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスへの感染を同時に判定できる世界初のキットと装置を、医療機器の生産を手がける大手機械メーカー「渋谷工業(金沢市)」と、鹿児島大学発のベンチャー企業「スディックスバイオテック」が、共同開発すると発表した。 同時流行が危惧される今冬中にも医療機関などに装置を販売したい考えだ。 インフルや新型コロナのウイルスは唾液中には少量しか含まれないため、感染を調べるには、鼻の粘液を採取する検査が一般的。 だが、今回開発する検査は、唾液中に含まれるウイルスの表面に「糖鎖固定化磁性金ナノ粒子 (SMGNP)」と呼ばれる金の微少粒子を付着させた後、磁力でウイルスを 50 倍ほどに濃縮することから、検査に必要なウイルス量を得られるという。 SMGNP は、新型コロナ、インフル(A 型、B 型)どちらも付着させられるという。 目指す検査の流れは、オンライン診療などを受けた患者が、1 日のうち比較的ウイルス量が多い起床時に、キットに同封されている容器の中に唾液を入れ、それを医療機関に投函。 医療機関などは、検査装置で PCR 検査し、「陽性/陰性」を判定する。 検査自体は 15 分程度で済み、これまでの PCR 検査よりも大幅に時間短縮できるという。 この冬は、症状が似ている新型コロナとインフルが同時流行すると言われ、医療従事者が鼻拭いで検体を採取する際の感染リスクが指摘されているが、この検査方法が導入されれば「非対面型」で行え、そうしたリスクを回避できる。 渋谷工業の毛利克己専務は 7 日の会見で「簡易な装置は医療従事者の安全のためにもなる。 冬には間に合わせたい。」と説明。 同社はキットの生産を開始し、小型の検査装置「ミューサー(仮称)」の開発も年内に間に合わせたい考えだ。 スディックスバイオテック社代表の隅田(すだ)泰生・同大大学院教授(糖鎖生化学)は 10 年ほど前に、唾液でインフルの感染を判定するキットの研究を始め、昨年 10 月に実用化に向け動き出していたという。 その矢先に新型コロナの感染が発生し、コロナへの応用を探った。 隅田教授は「毎年インフルが流行するのは検査が十分でないからだ」とも語り、患者が手軽に検体採取できる唾液検査が広がれば、インフル自体の流行も抑えられると期待する。 (波多野陽、asahi = 9-10-20) 新型コロナ重症者らにはステロイド 2 学会が指針を発表 日本集中治療医学会と日本救急医学会でつくる委員会は、新型コロナウイルス患者への薬物治療に関するガイドラインを作り、9 日発表した。 研究結果に基づいて使用を推奨するかどうかを示した国内初の指針だという。 酸素吸入が必要な中等症と重症患者に対してステロイド剤のデキサメタゾンを '強く推奨' している。 新型コロナの治療に精通した医師や感染症が重症化して起こる敗血症の専門家が作った。 現場の医療者の判断を助けるため、治験や論文をもとにして効果が期待されている 5 種類の薬の効果と副作用などのデメリットを評価した。 抗ウイルス薬のレムデシビルは中等症と重症患者に '弱く推奨' とした。 軽症患者には推奨していない。 同じく抗ウイルス薬のファビピラビル(アビガン)は軽症患者に '弱く推奨' するとした。 国内では有効性は定まっていないが、評価の根拠として中国で抗ウイルス薬と比較した治験の結果などを挙げている。 中等症と重症患者には「利益と害のバランスは判断不能」として推奨しなかった。 催奇形性は留意すべきだとした。 ステロイド剤のデキサメタゾンは、重症者には過剰な免疫が臓器に障害を与える反応を抑える働きがあると推測され、'強く推奨' している。 一方、軽症者には症状を悪化させることがあるため '使わないことを強く推奨' している。 日本では自己免疫疾患の治療に使われるマラリア治療ヒドロキシクロロキンはいかなる患者にも '投与しないことを強く推奨' している。 ただ、医師が患者の状況や意向を考慮して指針以外の治療を選ぶこともあり、その裁量を制限するものではないとしている。 (三上元、asahi = 9-10-20) アストラゼネカ 新型コロナのワクチン 臨床試験 一時的に中断 イギリスの製薬大手アストラゼネカは、オックスフォード大学とともに開発を進めている新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を一時的に中断したことを明らかにしました。 詳細は明らかにしていませんが、安全性に関するデータを検証するためだとしています。 アストラゼネカは 8 日、声明を出し、ヒトでの安全性や有効性を確かめるためにイギリスやアメリカで行っているワクチンの最終段階の臨床試験を一時的に中断したことを明らかにしました。 声明は、「独立した委員会が、安全性のデータを検証するためだ」としたうえで、「大規模な臨床試験では、試験の参加者に何らかの症状が出ることがあり、独立した検証を行う必要がある」としています。 一方で、具体的にどのような症状が出たのかなど詳細は明らかにしていません。 アストラゼネカは、「開発のスケジュールへの影響を最小限にとどめつつ、試験の参加者の安全にも十分配慮する」としています。 新型コロナウイルスのワクチン開発は中国やアメリカなど各国で続けられていますが、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発中のワクチンは、その中でも最も進んでいるものの 1 つです。 日本政府は、アストラゼネカが開発に成功した場合、来年初めから 1 億 2,000 万回分、2 回接種で 6,000 万人分の供給を受けることで基本合意しています。 一方で、新型コロナウイルスのワクチン開発は、各国が実用化を急ぐ中、過去に例のないスピードで進められていて、専門家からは、安全性を十分検証するよう求める声が出ています。 日本での臨床試験も中断 アストラゼネカは、新型コロナウイルスのワクチンの開発に向けて日本でも先月下旬から臨床試験を始めています。 アストラゼネカによりますと、国内の複数の施設で、18 歳以上のおよそ 250 人を対象に臨床試験を行う計画で、ワクチンを接種した人と接種していない人を比較して安全性や有効性を検証します。 しかし、日本で行っていた臨床試験も、安全性を確認するために中断したということです。 専門家 中断の判断を評価 アストラゼネカが新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を一時的に中断したことについて、ワクチン開発に詳しい東京大学医科学研究所の石井健教授は「どのような事情で止まったのか分からないが、臨床試験が止まることは時々あることで、一喜一憂すべきではない。 ワクチンは一度打つと、元には戻らない免疫反応を起こすので、安全性に問題があってはいけない。 しっかり安全性を見るのがワクチンの臨床試験の基本で、有害事象が起きて止まること自体は何ら問題ないし、止めないで進めてしまうほうがリスクが高い。」と話しています。 そして「最終段階にあたる第 3 相の臨床試験は、数か月ではなく、何年も続くことが普通で、オリンピックやアメリカの大統領選挙までに終わらせないといけないという政治的な圧力がかかる事態のほうがリスクだ。 このプレッシャーの中でしっかり止めて様子を見る決断をしたのは正しい判断だと思う。」と述べて、中断した判断を評価しました。 菅官房長官 投与一時中断との説明あった 菅官房長官は、午後の記者会見で、厚生労働省がアストラゼネカ社に確認したところ、事案の詳細を調査するまでの間、日本国内を含めた新たな投与を一時的に中断するとの説明があったことを明らかにしました。 そのうえで、「ワクチンについては、来年前半までに全国民に提供できる数量を確保することを目指して、わが国で承認申請があった場合は治験のデータと最新の科学的知見に基づき、有効性と安全性の確保の観点から、承認の可否について適切に審査していく」と述べました。 厚労省「安全対策検証し再開可否の判断を」 厚生労働省は「症状が出た場合に安全性などを調査するのはワクチンに限らず臨床試験では一般的に行われることだ。 安全対策などを詳しく検証したうえで再開の可否を判断してもらう必要がある」としています。 アストラゼネカのワクチンめぐる経緯 新型コロナウイルスのワクチンについて、政府は、来年前半までにすべての国民が接種できる量を確保する方針を打ち出しています。 そのため、欧米の複数の製薬会社との間で、開発に成功した場合、来年以降、ワクチンの供給を受ける方向で交渉を進めています。 「アストラゼネカ」とは、先月、少なくとも 6,000 万人分の供給を受けることで基本合意し、このうち 1,500 万人分については来年 3 月までの供給を目指すことになっていました。 (NHK = 9-9-20) コロナワクチンの副作用、製薬企業を免責 法案提出へ 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種をめぐり、政府は、副作用による健康被害が出た場合の製薬会社などの賠償責任を免除する方針を固めた。 必要な救済措置は政府が講じる。 ワクチンを速やかに確保するための特別措置で、政府は、10 月以降とみられる次期国会に関連法案を提出する。 自民党の森山裕国会対策委員長は 26 日、記者団に「(企業の)免責の法案が必要になるのではないか」と述べ、関連法案が次期国会に提出されるとの見方を示した。 官邸幹部も同日、「(免責の法案は)当然やることになる」と話した。 政府関係者によると、特別立法とする案や、予防接種法を改正する案などを軸に検討しているという。 新型コロナの予防に使うワクチンの開発は現在、世界の製薬会社や研究機関などが進めている。 各国で需要が極めて強く、臨床試験(治験)や承認手続きを一部簡略化し、通常より短期間で実用化される見込みだ。 ウイルスの遺伝情報を使うといった新しいタイプのものも多く、実用化後に予期しない健康被害が生じる恐れがある。 このため、製薬側は通常時に求められる責任の免除を求めている。 政府も、巨額の賠償責任を嫌って製薬側のワクチン開発が滞るのを避け、早期の実用化と、必要な量を確保する点から厚生労働省を中心に具体的な救済制度の内容などを検討していた。 今月 21 日に開かれた政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)でも、「09 年の時と同様の対応をとる必要がある」との意見が出ていた。 新型インフルエンザが流行した 2009 年に欧州の製薬大手からワクチンを緊急輸入する時も、政府は諸外国と同程度の免責を求められ、特別措置法をつくった経緯がある。 11 年には予防接種法を改正し、同様の規定を設けたが、16 年に失効している。 新型コロナのワクチンは、実用化後の確保をめぐり、すでに国内外で獲得競争が激しくなっている。 開発に成功したとしても、当初は生産量が限られるとみられるためだ。 政府は 7 月、米ファイザー社から 6 千万人分の供給を受けることで基本合意した。 今後、開発に成功し、承認されることを前提に、来年 6 月末までに供給されるという。 英製薬大手アストラゼネカ社とも今月、1 億 2 千万回分の供給で基本合意。 ほかのメーカーとも引き続き交渉しているほか、開発中のメーカーに補助金を出すなどして、実用化後の生産設備の準備も促している。 優先的に行うワクチン接種を行う対象者についても議論され、政府の分科会は 21 日の会合で、新型コロナ患者の治療にあたる医療従事者や高齢者、持病がある人に優先的に接種することで合意した。 開発状況をみながら、今後、政府が決める方針だ。 (中田絢子、土肥修一、asahi = 8-27-20) 香港でコロナ回復後に再感染 世界初確認か 香港大学の研究チームはこのほど、新型コロナウイルスに感染して回復した男性 (33) が、約 4 カ月半後に再び感染したことを確認したと発表した。 男性は今年 3 月、新型コロナに感染し 4 月に退院した。 しかし、今月 6 - 15 日に英国とスペインを旅行し、香港に戻った直後の検査で 2 度目の感染が判明した。 男性に目立った症状はなく、21 日に治療施設から退院した。 研究チームが 1 度目と 2 度目のウイルスの遺伝子を分析した結果、一部の配列が異なっていたという。 研究チームは、新型コロナに感染し回復した人が再感染したのが確認されたのは世界で初めてとしている。 研究チームは、新型コロナの感染後に体内にできる抗体は短期間で減少し、インフルエンザのようにまた感染する恐れがあると指摘。 そのため、感染歴がある人もワクチン接種の検討に加え、マスク着用などの感染防止策を継続するべきだと呼びかけている。 (香港 = 益満雄一郎、asahi = 8-25-20) ワクチン、期待と効果に溝 「急な導入はリスク」指摘も 新型コロナウイルスの予防ワクチンが開発に成功した場合に、優先的に接種する対象者が 21 日、固まった。 いつワクチンは開発に成功し、日本に入ってくるのか。 政府は確保に向けた準備を急ピッチで進めるが、安全性と有効性の確認はこれからだ。 コロナワクチン、医療従事者や高齢者優先 妊婦は見送り 世界保健機関 (WHO) によると、20 日時点で動物実験などで効果を確認し、臨床試験に入っているワクチン候補は 30 ある。 開発には一般的に 100 人以下で安全性をみる第 1 段階、1 万人以下で効果や安全性をみる第 2 段階、1 万人以上で発症や重症化を防ぐ効果をみる第 3 段階というステップが必要。 6 種類が最終の第 3 段階にある。 最も先行している一つと注目されている英製薬大手アストラゼネカ社と英オックスフォード大のワクチン候補について、政府は 1 億 2 千万回分の供給を受けることで 8 月に基本合意した。 接種回数は 1 - 2 回とみられ、2 回接種なら 6 千万人分になる。 開発に成功すれば、来年 1 - 3 月に 3 千万回分が供給されるという。 7 月末には、米ファイザー社から国内向けに 6 千万人分の供給を受けることでも基本合意。 これも 6 種類のうちの一つで、開発に成功すれば、来年 6 月末までに国内に供給される。 いずれも新型コロナの遺伝情報を使ったり、遺伝子組み換え技術を駆使したりしてつくる新しいタイプだ。 これまで報告されている効果は、臨床試験で接種した人の血液中の抗体が増えるといった内容が中心で、感染や発症を防ぐ効果があるかは明らかになっていない。 初期の臨床試験結果では、二つとも深刻な副反応はなかったものの、接種した半数以上に頭痛や発熱などが報告されている。 専門家「じっくりゆっくりが基本」 ワクチン候補が第 2 段階にある米バイオ企業ノババックスは 7 日、武田薬品工業と提携し、日本国内で年間 2.5 億回分を生産する体制整備を進めることを発表。 国内の製薬企業アンジェスも第 1 段階と第 2 段階を合わせた臨床試験中で、30 人に 2 回接種を終えたことを 18 日に発表している。 分科会の尾身茂会長は会見で「理想的なワクチンができる可能性は保障されていない。 一方で人々のワクチンに対する期待は高く、ギャップがある。」と語った。 新しいタイプだけに、効果が十分ではなく、ほかのワクチンを再接種する必要が出てくる可能性もあり、複数のワクチン開発を同時に進めるべきだとの意見も根強い。 東京大医科学研究所の石井健教授(免疫学)は優先接種を進めるとしても「じっくりゆっくりが基本で、一気に導入すると予想しない副反応が相次いで起きるリスクがある」と話す。 新しいタイプのワクチンは、世界的大流行(パンデミック)などの緊急時に、感染リスクの高い医療従事者らに接種するためのものと指摘。 「一般に普及させるのは、安全性を数年かけて調べたうえで、(ほかの病気のワクチンとして普及している)不活化ワクチンや生ワクチンなどにシフトさせるのがよいのではないか」と話している。 (後藤一也、合田禄、asahi = 8-21-20) |