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コロナを 35 分で判定、しかも高精度 長崎大などが開発

新型コロナウイルスへの感染について、約 35 分で判定できる小型の遺伝子検査システムを、長崎大がキヤノンメディカルシステムズ(本社・栃木県大田原市)と共同開発した。 現在の PCR 検査(約 4 時間)より大幅に短縮される。 高い精度が認められ、26 日から行政検査で使えるようになった。

ウイルス検査は、のどや鼻から採取した検体からウイルスの遺伝子を取り出し、検出可能になるまで増やして調べる。 新システムの鍵は、化学合成で作る「プライマー」と呼ばれる短い DNA 鎖。 長崎大はジカ熱ウイルスなどの検出法研究の蓄積を生かし、新型コロナウイルスの遺伝子だけを短時間で増やすプライマーの開発に成功した。

このプライマーを使い、栄研化学(本社・東京都台東区)が開発した遺伝子増幅技術「LAMP 法」によって遺伝子を一定の温度で増幅。 試薬が発する目に見えないレベルの光をキヤノンメディカルシステムズ社の蛍光検出装置で探知する。 温度の上げ下げが必要な PCR 法よりも効率的に遺伝子を増幅でき、前処理を施した検体から 10 分で検出できる。 前処理から検出を経て感染の有無が判定されるまでは約 35 分。

検査機器は 6 人分検査できる最小のタイプで幅 16.5 センチ、奥行き 24 センチ、最大厚さ 8.5 センチで、重さは 1.9 キロ。20 キロ以上ある PCR の検査機器と比べ小型で、持ち運びできる利点がある。 長崎大は長崎県と協力し、19 日から臨床研究として、離島・壱岐市で感染者の治療に当たった看護師らに対して新システムを使った検査を始めた。 長崎大学病院や、検体の輸送が困難な離島にも順次配備する予定だ。

26 日には、国立感染症研究所が陽性一致率 90%、陰性一致率 100% の高い精度を確認した検査方法として公表。 正式な感染確認に必要な行政検査で使うことも可能になった。 開発に携わった長崎大熱帯医学研究所の安田二朗教授 (54) = ウイルス学 = は「自信の持てる結果が得られた。 必要としているところでの検査に役立てたい。」と話している。 (榎本瑞希、asahi = 3-27-20)


【新型コロナウイルス】 抗マラリア薬「クロロキン」服用のアメリカの男性、体調急変して死亡
トランプ大統領が新型コロナに有効だと、推奨していました

トランプ大統領が、新型コロナウイルス治療に「有効だ」と推奨していた抗マラリア薬「クロロキン」を服用した男性が死亡した。 男性を治療したアリゾナ州のバナーヘルス医療センターによると、死亡したのは 60 代の男性。 男性はクロロキンを服用したが、30 分後に体調が急変し病院に運ばれた。 救急治療を受けたが、その後に死亡した。 クロロキンを服用した男性の妻も重篤な状態にあり、集中治療を受けている。

マラリアの治療薬として使われてきた

クロロキンはこれまで、マラリアの治療薬として使われてきた。 魚飼育用の水槽を洗う用途などでも使われているという。 新型コロナウイルスの治療にも一定の効果を発揮するという一部研究結果もあるが、数は多くない。 トランプ大統領は 3 月 20 日の記者会見で、クロロキンが新型コロナウイルス感染症の治療に有効であり、FDA が承認したと発言した。 しかし直後に、FDA の長官が「新型コロナウイルスの治療薬としては正式に承認していない」と大統領の発言を訂正していた。

それでもトランプ大統領の発言の後、クロロキンに注目が集まった。 CNN によると、ナイジェリアではクロロキンを買い求める人が急増。 服用した人の中毒例が複数報告された。 ナイジェリア疾病対策センターは、自己判断でクロロキンを使わないよう呼びかけている。

「WHO は、新型コロナウイルス対策としてクロロキンの使用を認可していません。 科学者たちはコロナ対策のため複数の薬の安全性を確認しようとしています。 どうか、クロロキンで自己治療をしないでください。 危険であり、死に至る場合もあります。」 クロロキンの新型コロナウイルスに対する有効性については、 FDA などが調査中だ。 バナーヘルス医療センターのダニエル・ブルック医師は、「クロロキンを使って自己流の治療をしないよう」強く訴えている。 (安田聡子、Huffpost = 3-24-20)

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マラリア治療薬で新型肺炎の症状改善 福岡の病院が報告

新型コロナウイルスがひきおこす肺炎について、福岡県内の病院が、患者 2 人に別の感染症であるマラリアの治療薬を使ったところ、症状が改善したとの報告書を公表した。 重症例にも効いた可能性があり、治療の選択肢になるとしている。 日本感染症学会の ウェブサイト で公開された報告書によると、患者は夫婦で、いずれも 60 代。夫は高血圧と糖尿病が持病で、発熱やだるさが 1 週間続いた。 X 線検査で肺炎に特徴的な画像が写り、ウイルス検査で新型コロナウイルスの感染が判明した。

当初、中国や日本などで新型コロナウイルスの患者の症状を改善したとされる抗エイズウイルス (HIV) 薬を使ったが、症状が改善せず重症化し、人工呼吸器が必要になった。 そこで、マラリア治療薬「ヒドロキシクロロキン」を併用したところ、呼吸の状態が徐々に改善したため、9 日目には薬をやめた。 報告書を公表した時点では入院継続中だという。 妻は夫の濃厚接触者として検査した結果、新型コロナウイルスの感染が判明。 入院後に 38 度の発熱が続き抗 HIV 薬を始めたが、食欲不振や下痢などの副作用があり中止。 肺炎が悪化したためマラリア治療薬を使ったところ、服用 2 日目から熱は下がり、全身の状態も改善。 服用から 10 日後に退院した。

マラリアは、ウイルスではなく、微生物が病原体の感染症だ。 蚊が病原体を運び、熱帯地域で流行している。 このマラリア治療薬が中国で新型コロナウイルス患者に使われ、症状が改善したとの報告があり、ウイルスが増えるのを抑える可能性もあると考えられている。 日本感染症学会は 2 月末に、マラリアの治療薬を新型コロナウイルスに使用できる可能性のある薬のひとつに挙げていた。

ヒドロキシクロロキンはマラリア治療薬だが、国内ではマラリアが流行していない。 日本では免疫に関わる病気の全身性エリテマトーデスの治療薬として承認されている。 副作用に網膜の障害などがあるが、報告書は、危険性を考慮するのは長期使用の場合だとして、今回のような短期間の使用では、「副作用もほとんどなく安全に使える」と評価。 「第一選択薬あるいは併用薬として考慮すべき薬剤と考える」としている。 (野中良祐、asahi = 3-12-20)


「パンデミック加速している」 WHO トップが危機感

世界保健機関 (WHO) のテドロス・アダノム事務局長は 23 日の記者会見で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が「加速している」と述べた。世界で確認された感染者が 20 万人から 30 万人に増えるのにわずか 4 日しかかからなかったことに危機感を示した。 テドロス氏は、感染者は「世界中のほぼすべての国」に広がっていると報告した。 そのうえで、WHO に最初の報告があった日から感染者が 10 万人になるまで 67 日、それから 20 万人に増えるのに 11 日かかり、「次の 10 万人までは、たったの 4 日だった」と加速ぶりを振り返った。

一方、「我々は無力な傍観者ではない」と述べ、各国の連帯による対策強化を訴えた。 移動せずに自宅にとどまったり、人と人の距離をとったりするほか、積極的な検査や隔離による封じ込めが大事だと呼びかけた。 また、延期が検討されることになった東京五輪について、WHO の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は「競技者や観客にとって危険な大会であるなら、日本政府と国際オリンピック委員会 (IOC) は開催しないと確信している」と述べた。

ライアン氏は記者の質問に、「我々は(主催者との)議論に携わっている」としながら、延期の判断は主催者だけが下すものと強調。 そのうえで「言うまでもなく、我々はリスク判断の助言を提供する過程にある」と語った。 (ジュネーブ = 吉武祐、asahi = 3-24-20)


新型コロナ研究成果相次ぐ 体内侵入時、細胞と結合強く

新型コロナウイルス感染症の治療の難しさを克服する手がかりが見えてきた。 ウイルスの侵入時の結合の強さや体内での増殖しやすさなどに関与する研究成果が相次ぐ。 欧州にみられるような爆発的患者急増(オーバーシュート)への警戒が各国で強まる中、流行の予測や治療薬開発を後押ししそうだ。 世界の感染者は累計で 23 万人超、死者も 1 万人に達するなど感染拡大が止まらない新型コロナ感染症。 高齢者の重症化防止や、水面下での感染者の小規模集団(クラスター)形成の防止に向け、ウイルスが人に感染するメカニズムの解明が克服への焦点のひとつだ。

新型コロナウイルスは、2003 年に流行した重症急性呼吸器症候群 (SARS) と持っているゲノム情報の 8 割は同じ。 だが、無症状の人から感染し、軽症から重症までの症状にばらつきがあるなど SARS とは違う点も目立つ。 発生から約半年で終息した SARS に対し、新型コロナウイルスの収束時期は見えていない。 「長期間定着する可能性もあるやっかいなウイルス(英インペリアル・カレッジ・ロンドン研究者)」との見方も出ている。

具体的な研究として、クラスター形成の原因の一つとされる感染力の強さに関するメカニズムの解明につながりそうな成果が出てきた。 米テキサス大学などが米科学誌サイエンスに公表した成果によると、新型ウイルスの表面にある突起のたんぱく質が、人の細胞に侵入する時の入り口となるたんぱく質と結合する力が、SARS などと比べて強いことがわかった。 人から人へのうつしやすさや感染拡大のしやすさなどにかかわっている可能性があるという。

群馬大学の神谷亘教授は「ゲノム配列が似ていても、ウイルスのたんぱく質などが違えば、症状や免疫反応などに変化が出る可能性がある」と指摘する。 感染すると重症化する人が多い SARS に対し、症状にばらつきが出る謎に迫る成果もある。 メキシコ国家科学技術審議会は、無症状の感染者や患者のウイルスから、増殖に必要な遺伝子の一部が SARS と異なることを突き止めた。 人によっても微妙に異なる可能性もあり、どのような人が重症化し、軽症にとどまるのかを突き止める手がかりになる可能性があるという。

一方、新型コロナと SARS の酷似性もウイルスの構造から確実となり、治療薬開発への近道が見えている。 ウイルスの細胞への侵入経路は、新型コロナと SARS は共に「ACE2 (アンジオテンシン変換酵素 2)」を利用し、一致していることを米国立衛生研究所の研究グループが突き止め、英科学誌に発表した。 さらに、ウイルスが細胞の中で増えるときに最も重要なたんぱく質の立体構造を中国の上海科技大学などが解明し公開。 東京工業大学の関嶋政和准教授らによると、SARS のたんぱく質とよく似ているという。

SARS は発生から半年で終息したため、治療薬やワクチン開発が中断した。 当時途中まで研究が進んでいた薬候補を臨床試験などにつなげれば、開発期間を短縮できる。 すでに SARS の治療薬候補の一つだったカレトラは、国内の患者の治療のために試験的な投与が始まっている。 世界保健機関 (WHO) がパンデミック(世界的な大流行)を宣言した新型コロナウイルスの感染拡大や流行は長期化するとの見方が強い。 謎が多いウイルスの正体解明は、治療薬開発の短縮化や長期的対策の立案まで網羅的な支援につながる。

論文、3 カ月で 2,000 本 中国多く

世界的に、新型コロナウイルスに関する研究はこの数カ月で急増している。 世界保健機関 (WHO) のまとめでは、関連する論文数は患者の発生からわずか約 3 カ月で 2,000 本を超える。 国別で見ると、中国と米国の多さが目立ち、研究をけん引している。 米調査会社のクラリベイト・アナリティクスが、一定の基準で 3 月中旬までに収集した 130 本弱の新型コロナウイルスに関連する論文のうち、国別でみると中国が 43%、米国が 18% で両国で半分を超え、英国の 8%、イタリアの 7% を圧倒する。 日本は 1.5% だった。

このほか情報共有も異例の形で進む。 米医学誌の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」や英医学誌の「ランセット」は新型コロナウイルスによる感染症に関連した論文の無料公開を開始。 学術誌出版大手のエルゼビアが関連する医療情報を集約した特設サイトを用意するなど、世界の学術界が協力した形で研究加速を下支えする。 資金面での研究支援も米中を中心に加速している。 米国は 3 月上旬にワクチンなどの研究開発費用として 30 億ドル以上を捻出することを決定。 中国国家自然科学基金委員会も新型コロナウイルスに関する基礎研究の助成開始を発表済みだ。 (nikkei = 3-20-20)


東大、新型コロナウイルス感染阻止が期待できる既存薬剤を同定

井上純一郎教授、山本瑞生助教(ともに医科学研究所)らは 3 月 18 日、新型コロナウイルス感染初期のヒト細胞へのウイルス侵入過程を阻止し、効率的に感染を阻害する可能性のある薬剤を明らかにしたと発表した。 今回新型コロナウイルス感染阻害に有効な可能性が明らかになったのは急性膵炎などの治療薬として使用されている「ナファモスタット」。 日本で開発された薬剤で、開発元の日医工が「フサン」という商品名で発売している他、特許が切れた現在では後発医薬品(ジェネリック医薬品)の販売も進んでいる。

発表によるとナファモスタットは、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスである SARS-CoV-2 の感染の第一段階である、ウイルス外膜と感染する細胞の細胞膜との融合を阻止することで、ウイルス侵入過程を効果的に阻止する可能性がある。

COVID-19 の治療薬となる薬剤の研究は国内外で行われており、3 月初旬にはドイツの研究者がナファモスタットの類似薬である「カモスタット」の有効性を発表していた。 カモスタットもナファモスタット同様日本で開発された薬剤で、「フォイパン」などの商品名で急性膵炎などの治療薬として処方されてきた。 しかし、ドイツの研究者の発表によると、カモスタットを使用する場合、現在一般に用いられているよりも多くの量を患者に投与する必要があるという。

東大の発表では、今回東大が有効性を発表したナファモスタットは、カモスタットの 10 分の 1 以下の低濃度でウイルス侵入過程を阻止できるとした。 ナファモスタットは国内で特に多く使用されており、十分な数の臨床データの元、安全性が確認されているため、速やかに臨床試験に移行することが可能であるという。

同日会見に臨んだ五神真総長は「ナファモスタットは COVID-19 に対してかなりの効果が期待される。 井上教授らの成果は論文未発表であるが社会的影響を考慮して会見を行った」と説明。 東大として新型コロナウイルスの封じ込めに全力で取り組む姿勢を表明した。 今後は国立国際医療研究センターなどの研究機関や病院などと連携を取りながら今月から来月初旬までに臨床応用へ対応していくという。 (東大新聞 = 3-18-20)


「パンデミック」認定

世界保健機関 (WHO) のテドロス・アダノム事務局長は 11 日、新型コロナウイルスの感染拡大について、世界的な大流行を意味する「パンデミック」に分類され得ると述べた。 パンデミックは 2009 年に新型インフルエンザ (H1N1) を認定して以来。 今回の認定は、世界経済の動向や東京五輪開催の判断にも影響する可能性がある。 (ジュネーブ = 吉武祐、asahi = 3-12-20)


WHO が新型コロナの死亡率を 3.4% に引き上げたワケ 「日本の検査態勢では高齢者が手遅れに」米紙

前々回と前回の投稿では、オーストラリア国立大学の教授やアメリカのネブラスカ大学医療センターの教授が推定した新型コロナウイルスによる死亡者数について紹介した。 感染者が世界で 11 万人を超え、死亡者数も 4,000 人を超えるのを目前にしている今、死亡率はどうなのか? 死亡率については、感染を自覚していないため検査を受けていない人や検査を受けたくても受けられない人もいることから、どれだけの感染者が潜在しているか不明なので、知ることは難しい。 しかし、誰もが非常に気になるところだろう。

無症状の感染者は多くない

その死亡率を、WHO (世界保健機関)は先日、3.4% に引き上げた。 なぜなのか疑問に思っていたのだが、その理由について、感染症研究で著名な国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID) 所長のアンソニー・ファーシ博士が先日、米議会で、こう明かしていた。 「WHO 側と話したのだが、考えられていたほど無症状の感染例が多くないということだ。 だから、彼らは死亡率を引き上げたのだと思う。」

検査件数の約 10% が陽性

また、ファーシ博士は、トランプ政権が検査キットを検査機関に行き渡らせていないため、ウイルス検査が進んでいない現状にフラストレーションを感じていた。 「どうしていいかわからない。 十分な検査をして分子(感染者数)がわかったら、困ったことになるだろう。」 アメリカでも、日本同様、検査件数が少ないことが問題なのだ。 米誌「アトランティック」の 3 月 6 日(米国時間)の報告によると、アメリカでの検査件数は 1,895 件で、その約 10% が陽性だったという。

先日、新型コロナ対策担当のペンス副大統領は「いかなるアメリカ人でも検査を受けられるようにする。 150 万個の検査キットをラボに送る」と豪語したが、実際には十分に行き渡っていないのである。 日本同様、検査件数が非常に少なく、新型コロナの症状を見せていても、検査を受けられない人々がアメリカには多数いるのだ。 しかし、検査件数が増えたら感染者数は増加するものの、死亡率は低下すると多くの専門家が予測している。

以下は、筆者がジョンズ・ホプキンス大学のデータを元に割り出してみた、感染例が 100 例以上ある国々の死亡率(米国時間 2020 年 3 月 9 日、午前 10 時 13 分時点)だ。

国名死亡率(死亡者数/感染者数)
全世界3.5%(3,892/111,397)
中国3.9%(3,120/80,735)
韓国0.7%(53/7,478)
イタリア5.0%(366/7,375)
イラン3.3%(237/7,161)
フランス1.6%(19/1,209)
スペイン2.6%(25/979)
アメリカ3.7%(22/600)
日本3.3%(17/511)
スイス0.5%(2/374)
イギリス1.1%(3/280)
オランダ1.1%(3/265)
香港2.6%(3/115)

上記からわかるように、検査件数が多い韓国での死亡率は 0.7% だが、検査件数が少ないアメリカや日本の場合、死亡率はそれぞれ 3.7%、3.3% と高い。

感染者数を倍にしたくない

検査件数が少ない背景には、増やすことにより感染者の数を大きくしたくないという為政者の計算があるのかもしれない。 例えばそれは、トランプ大統領の発言に如実に表れている。 集団感染が起きた、サンフランシスコ沖の「グランド・プリンセス号」の乗船者たちを下船させる措置についてトランプ大統領は反対し、こう言及したのだ。 「こちらには落ち度はないのに、一隻の船のために感染者の数を倍にしたくはない。」 この発言に対し、専門家からは「国民のことより、数を気にしてるのか」という批判の声が上がった。

高齢者は手遅れになる

日本の検査件数が少ない問題についても、アメリカのメディアは批判している。 米紙ニューヨーク・タイムズは「日本同様、高齢者人口が多い韓国やイタリアは迅速に検査規模を拡大して感染者の治療や隔離を行なったが、日本は検査には制限があり、高齢者は 2 日間高熱が続かないと検査を受けられない、それでは手遅れになるかもしれない」と非難。 また、同紙は「もし、日本が韓国と同じくらいの数の検査をしたら、実際の感染者数はどれほどになるだろう。 見つかっていない感染例がどれだけあるのか。」という専門家の皮肉な声も紹介している。

たったの 6,647 件

安倍首相は先日「かかりつけ医など身近な医者が必要と考える場合は、全ての患者が検査を受けられる十分な能力を確保する」と述べたものの、検査件数が増えているかは疑問だ。 厚生労働省によれば、3 月 6 日(日本時間)までに実施された検査はわずか 6,647 件。 この検査件数の少なさにもかかわらず、新型コロナウイルス対策に関する政府専門家会議は 3 月 9 日(日本時間)、日本の感染状況について「爆発的な感染状況には進んでおらず、一定程度持ちこたえている」と判断した。

検査件数を増やせば、感染者数が増えるのは必至だ。 しかし、死亡率は下がることになるだろう。 死亡率の低下は、今、"新型コロナ・パニック" に襲われて右往左往している国民の心を多少なりとも落ち着かせることにつながるのではないか? 何より、検査件数を増やすことで、感染した高齢者や病弱な人々を迅速に発見でき、早期に治療することができるはずだ。

インフルエンザの 10 倍死亡

ところで、前述のファーシ博士は、新型コロナの死亡率についてこう話している。 「季節性インフルエンザの死亡率は約 0.1% だが、新型コロナの死亡率が(WHO がいう 3.4% から) 1% まで下がったとしても、季節性インフルエンザの 10 倍も死亡するのです。」 検査件数が増えても、季節性インフルエンザよりは高いと予測されている新型コロナの死亡率。 それだけに、日本もアメリカも、検査規模の大幅拡大を図ることが急務だ。 (飯塚真紀子、3-10-20)


武漢市、仮設病院を対象にしばらく「退院禁止」

武漢市は市内のすべての仮設病院を対象に、患者の退院を一時期間禁止することを発表しました。 中国メディアによりますと、新型コロナウイルスの急激な感染拡大に対応するため、体育館などを改装して臨時に設けられた病院について、武漢市当局は治療を終えた患者が退院することをしばらくの間、禁止しました。 武漢市の仮設病院から退院した 36 歳の男性がわずか 5 日後に新型コロナウイルスによる肺炎で死亡したと伝えられるなど、退院患者に再び陽性反応が出るケースが相次いでいることを受けた措置とみられます。 中国では治療を終えて退院する患者が増えたため、仮設病院の一つを閉めることができたとアピールしたばかりです。 (テレ朝 = 3-6-20)

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新型コロナ再び「陽性」 専門家「潜伏し増殖の可能性」

大阪府の新型コロナウイルス患者で一度は陰性と確認されながら、20 日後に再び陽性と診断されたケースが確認された。 中国ではすでに同様の症例が報告されているが、厚生労働省によると、退院後に再び陽性となるのは国内初。 専門家は再感染や臓器などにウイルスが潜む「持続感染」の可能性を指摘し「陰性となって退院した後も、再び症状が出れば再検査を行うことが望ましい」と指摘する。

府によると、再び陽性が確認されたのは府内の 40 代女性ガイド。女性は 1 月、同じく感染が判明した奈良県の男性運転手とともに中国・武漢市からの観光客とバスに同乗した。 現在、医療機関に入院しており、府は「非常に特異な事例」として国に症例を報告した。 府によると、女性は 1 月 29 日に最初の陽性が確認された後、大阪市内の病院に入院していたが、回復したため 2 月 1 日に退院。 せきの症状があり、6 日に感染の有無を調べる「PCR 検査」をしたが陰性だった。 しかし、その後も喉の違和感や胸の痛みが続いたため、21 - 25 日にかけて医療機関を受診。 26 日に PCR 検査を受け、陽性と診断された。 熱はないという。

女性は退院後、毎日マスクを着用しており自宅療養していたという。 府の女性への聞き取りでは濃厚接触者はいないという。 女性が 2 月以降に受診した医療機関は感染症に対応しており、府内ではこれまでに新たな感染者も見つかっていない。 感染症に詳しい大阪大医学部付属病院の朝野和典教授は女性ガイドについて「再感染の可能性がある一方、臓器などにウイルスが潜む『持続感染』が起き、ウイルスが再び増えた可能性がある」と指摘する。

女性は PCR 検査で「陰性」といったんは確認された。 朝野教授によると、体調が一時的に回復し検査で陰性が出ても、ウイルスの量が少ないと陰性になるため、ウイルスが完全にいなくなったということではないという。 朝野教授は「退院後も経過観察を行い、再び熱やせきなどの症状が出れば改めて検査することが望ましい」と助言する。 阪府の事例を受け、これまでに 13 人の感染が確認された和歌山県は 27 日、関係部局の担当者が集まり対応を協議。 現在は陰性が確認されて退院した患者に 1 週間の自宅待機を求めているが、今後は 2 週間に延長することを決めた。

退院の可否を判断する PCR 検査も、採取する検体を増やしてより正確な診断ができるように見直す方針という。 担当者は「県内でも再び陽性となる患者が出る可能性は否定できず、感染拡大を防ぐためにも対応を強化したい」としている。 (札内僚、nikkei = 2-7-20)

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新型肺炎、退院後 14% が再び陽性 中国「経過観察を」

中国・広東省政府は、新型コロナウイルスによる肺炎患者について、病院で治療を受けて退院した人のうち 14% に再びウイルスの陽性反応が出たと発表した。 その上で、病院に対し、退院後も 14 日間は患者の経過観察をするよう求めている。 広東省政府が 25 日の会見で明らかにした。

再び陽性反応が出ても、体内に免疫のはたらきでウイルスを攻撃する「抗体」が出来ていれば、周囲に感染させるリスクは低いと説明。 若い世代では抗体は約 2 週間でできるが、高齢者は抗体ができるまで時間がかかるため、「再び感染源にならないよう、厳重な経過観察が必要」とした。 省都の広州市では、再び陽性が確認された患者が 13 人おり、濃厚接触者 104 人を検査したが、いまのところ感染は確認されていないという。 (上海 = 宮嶋加菜子、asahi = 2-27-30)


新型肺炎、ぜんそく薬で改善例 有効な治療法の可能性

新型コロナウイルスが引き起こす肺炎について、神奈川県立足柄上病院などのチームは、患者 3 人にぜんそくの吸入薬を使ったところ、症状が改善したとの報告書を公表した。 治療に使える可能性があり、今後、ほかの医療機関の使用例を集めて調べる。 3 人はいずれも大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客。

70 代女性は感染が確認された後、2 月 11 日に入院した。 全身のだるさからほぼ寝た状態で、入院 4 日目からは中国などで使用例があった抗エイズウイルス (HIV) 薬が使われた。 肺炎が改善せず、副作用とみられる下痢や食欲不振なども出たため、9 日目に抗 HIV 薬の使用を中止した。 10 日目からぜんそくに使う吸入ステロイド薬「シクレソニド」を使い始めたところ、11 日目から熱が下がり、12 日目には病室内を歩けるように。 肺の炎症が改善し、入院 15、16 日目のウイルス検査で陰性が確認され、18 日目に退院した。

70 代男性と 60 代女性は 2 月 16 日に入院。 シクレソニドのみを入院 5 日目から使用。2 人とも酸素投与を受けていたが不要となり、食事も全て食べられるほど回復した。 2 人は入院 12 日目の 2 月 27 日時点でウイルス検査が陽性で、報告書では治療継続となっている。

報告書では、シクレソニドについて「重症肺炎への進展防止効果が期待される」と評価。 有害な副作用はみられていないという。 今後、愛知医科大などと協力し、有効な治療法になるかどうか調べる。 足柄上病院の岩渕敬介医師は朝日新聞の取材に、「肺炎を起こしている患者には、症状を短期化するための第一選択となり得る。 だが、かぜ程度の軽症者であれば、耐性ウイルスを増やす可能性があり、安易な投与は避けるべきだ。」と説明した。

「市中感染」の症例も公表

一方、日本感染症学会は、日常生活のなかで感染した「市中感染」の可能性がある 50 代男性の症例を公表。 当初は新型コロナウイルスの感染を調べる PCR 検査の対象にならず、診断が難しかった。 病院名は非公表とした。 この男性は高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの持病があり、2 月 3 日、37 度台の発熱があり、かかりつけ医を受診。 インフルエンザ検査は陰性だった。 翌日、2 カ所目の病院で、細菌の一種マイコプラズマによる肺炎の検査もしたが、違った。

中国への渡航歴や感染者との接触情報はなく、新型コロナウイルスには効果がない抗生物質などが使われた。 10 日に強い息切れが出るなどしたため、3 カ所目の病院の救急外来を受診し、入院。 重症化し、集中治療室で人工呼吸器を装着した。 血液検査などでほかの病気の可能性も除外されたため、14 日に PCR 検査をしたところ、新型コロナウイルス感染が判明。 男性は指定医療機関へ転院した。 報告書は感染者への接触情報がなかったため「初診時および入院時にて(新型コロナウイルス感染の可能性がある)疑似症とする根拠は乏しかった」としている。 (野中良祐、asahi = 3-3-20)


日韓など中国外 4 国、WHO「深刻な懸念」 新型コロナ

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、世界保健機関 (WHO) のテドロス・アダノム事務局長は 2 日の記者会見で、日本、韓国、イラン、イタリアの 4 カ国の状況について「深刻な懸念」がある、との認識を示した。 WHO のまとめでは、この 4 カ国で中国外での感染者数の 8 割を占める。 日本については先月下旬に国内での感染判明例が 200 人を超えたことを重くみた。

新型コロナウイルスの発生源で感染者が累計で 8 万人を超えた中国については、新規感染者が 1 月下旬以来の水準に戻った点を前向きにとらえ、懸念を示す発言はしなかった。 WHO によると、各国が WHO へ毎日行う報告で、2 日までの新規感染は中国が 206 人で、中国外はその 9 倍あったという。 WHO は現在、集団感染が起きたイランやイタリアから他国へ広がっていることに危機感を持っている。 一方で、感染者 4 千人超の韓国でも集団感染の追跡がほぼできているとして、封じ込めは可能だとした。

新型コロナウイルスの性質について、WHO の緊急対応責任者マイク・ライアン氏は会見で、冬季に流行するインフルエンザと違って予防接種もなく、治療法も確立していないとしながらも、隔離などの措置による封じ込めが効果を上げているとの見方を示した。 テドロス氏はこのほか、WHO の専門家チームがイランに到着したと明らかにした。 技術協力や診察支援を行うとしている。 WHO の現地事務所職員 1 人の感染が確認されたという。 (ウィーン = 吉武祐、asahi = 3-3-20)


新型肺炎に感染の 80 歳超 5 人に 1 人が死亡 WHO 報告

中国での新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、世界保健機関 (WHO) は 28 日、ウイルスの特徴や症状の傾向、中国の緊急対応などについての専門家グループによる共同報告書を公表した。 中国国内での死亡率は全体で 3.8% だったが、80 歳超では 21.9% に上ったとしている。 専門家グループは、WHO が派遣した多国籍の調査チームと中国の保健当局者で構成。 ウイルスの性質や感染の仕方、感染者の症状について、2 月 20 日時点までのデータに基づいて調査・分析し、中国や世界の対応についても検証した。

中国国内の検査で感染が確認された 5 万 5,924 件のうち、症状が多かったのは発熱 (87.9%)、空ぜき (67.7%)、倦怠感 (38.1%)、たんが出る (33.4%) など。全体の約 80% が軽度の症状で、重症は 13.8%、危篤が 6.1% だった。 19 歳未満では重症は 2.5% で、全体に比べて少なかった。 死亡率は地域によって違うが、集団感染の中心となった湖北省武漢では 5.8%、その他の地域では 0.7% だった。 死亡率は年齢が高くなるにつれて上がり、60 歳超や高血圧、糖尿病、循環器の病気を抱える人たちは死亡率が高い傾向があった。

報告書は中国の初動対応について「過去にない野心的、機敏、積極的な封じ込めの努力をした」と評価。 知見が広がるにつれ、科学的で危険性を考慮した取り組みになったとした。 専門家グループは 25 人からなり、日本の国立感染症研究所の高橋仁氏も参加した。 2 月 16 - 24 日、北京などで当局者から聞き取りをしたほか、少人数に分かれ、武漢や深セン、広州、成都などを訪れた。 WHO 側の代表はブルース・エイルワード氏。 中国側は梁万年氏が代表を務めた。 (ジュネーブ = 吉武祐、asahi = 2-29-20)


新型肺炎、重症例の治療経過を公表「数日で急速に進行」

大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に乗船し、新型コロナウイルスに感染した乗客を治療している豊島病院(東京都)は、人工呼吸器が必要となった重症例など4人の治療経過を公表した。 「病状が数日で急速に進行する印象を受ける」として、注意深く観察する必要があると指摘している。 同病院感染症内科の足立拓也医師らが 25 日、日本感染症学会のウェブサイトで報告書を公開した。

症例は、60 代 1 人、70 代 2 人、80 代 1 人の計 4 人で、いずれも男性。 ウイルス検査で陽性となり、緊急搬送された。 60 代、70 代、80 代の 3 人は高熱やだるさ、せきなどの症状があり、入院時点で 37.2 - 38.5 度の熱があった。 残る 70 代の 1 人は無症状だった。 同病院では緊急の倫理委員会を開き、10 日間の計画で抗 HIV 薬を使うことにした。

60 代と 70 代の 2 人は高血圧などの持病があった。 入院後も発熱が続いたため解熱剤を服用。 酸素の投与を行った。 その後、抗 HIV 薬を使い始めた。 現在も治療を継続している。 残る 2 人については症状が悪化し、人工呼吸器が必要になった。 80 代男性は高血圧などの持病があった。 抗 HIV 薬が投与された。 発症から 13 日目で人工呼吸器の使用を開始。 ショック状態に陥り、透析が必要となった。 だが、呼吸の状態が改善せず、高度な治療ができる医療機関に転院した。

また、当初は無症状だった 70 代男性は入院 3 日目以降、38 - 39 度の発熱を繰り返すようになった。 抗 HIV 薬を使用。 14 日目に人工呼吸器が必要になったが、その後、改善がみられ治療を続けている。 報告書は 4 人について、病院に搬送された時の状態は比較的良好だったが、一部の人では酸素の投与が必要になってから、「数日で急速に進行する印象を受ける」と指摘。 最初に診察した段階で呼吸状態が安定している場合も、注意深く観察を継続する必要があるとしている。

日本感染症学会の ウェブサイト では、緊急報告として症例を募集している。 (野中良祐、asahi = 2-29-20)


プラスチックの表面では 2 時間以上、米当局がウイルス生存力に注目

米疾病対策センター (CDC) のロバート・レッドフィールド局長は 27 日、新型コロナウイルスが物質の表面でどの程度長く生存可能で、感染力を持つかを CDC が積極的に調査していると明らかにした。 局長は下院公聴会で政府のウイルス対応について説明。 「銅と鉄の表面では 2 時間程度だが、段ボールやプラスチックなどほかの物質の表面ではより長時間となる。 われわれはこの点を注視している。」と述べた。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で発生した大量感染について、空気よりも接触による感染が原因だった可能性があると指摘した。 また、新型ウイルスによる致死率は中国以外の地域でより低い可能性があるとし、「データはないが、少なくとも私は、現時点で中国以外での致死率は 0.5% 前後と推測している。 しかし繰り返すが、この点を本当に明確にするにはさらにデータを(得て)検討する必要がある。」と述べた。 世界保健機関 (WHO) は、中国での致死率を 2 - 4% と示唆している。  レッドフィールド局長は、季節性インフルエンザの致死率は 0.1% 程度としている。 (Reuters = 2-28-20)


未知のコロナ、政府がサンプル破棄指示か 中国誌報道

独自の調査報道で知られる中国メディア「財新」は、昨年末、中国の複数の検査機関が未知のコロナウイルスの存在を確認しながら、中国政府が情報を公開しないよう命じていたと伝えた。 ウイルスのサンプルも破棄するよう指示していたとしている。 対応に当たった医師らへの取材や公開情報の分析に基づく記事は、2 月 26 日にネット上で公開されたが、まもなく削除された。

記事によると、武漢市の病院で受診した患者のサンプルを調べた広東省の検査機関が、12 月 27 日に未知のコロナウイルスの存在を確認。 別の広東省の機関も 12 月 30 日、重症急性呼吸器症候群 (SARS) に似た新しいウイルスの存在を病院側に伝えていたという。 しかし、国家衛生健康委員会は 1 月 3 日、関係機関に「いかなる機関や個人も検査結果を外部に公開してはいけない」と通知。 サンプルを保有する機関には、破棄するか国が指定した機関に送るよう求めたという。 同月 1 日、湖北省衛生健康委員会から電話で同様の指示を受けたとする検査機関職員の証言も伝えた。

中国では 1 月 9 日に新型ウイルスが検出されたことが初めて公表され、中国政府が世界保健機関 (WHO) に遺伝子情報を伝えたのもその後だった。 中国当局は、昨年末、SNS を通じてウイルス性肺炎の発生を警告した医師らを「デマを流した」として処分している。 (北京 = 高田正幸、asahi = 2-28-20)

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