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ワクチン接種後死亡 "ちゅうちょなくアドレナリンを" 医師会

愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた女性が、接種直後に容体が急変し死亡した問題で、愛知県医師会は「アナフィラキシーが強く疑われるもので、ちゅうちょすることなくアドレナリンの筋肉注射をすべきだった」などとする検証結果を報告しました。

医師会長「今後の接種事業に与える影響極めて大きい」

今月 5 日、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンの 4 回目の接種を受けた飯岡綾乃さん (42) が、接種から 5 分後に息苦しさを訴えたあと容体が急変して救急搬送され、およそ 1 時間半後に死亡しました。 これについて、愛知県医師会は、重大な事案だとして、医療事故の検証を行う医療安全対策委員会を 15 日、緊急に開催しその内容について 17 日、記者会見を行いました。

会見では、飯岡さんがワクチンの接種後アナフィラキシーショックを起こしていたかどうかについては「解剖がされていないこともあり解明には至らなかった」とした一方で、せきや息苦しさなどの症状を訴えていたことなどから「アナフィラキシーが強く疑われるものだった。 ちゅうちょすることなくアドレナリンの筋肉注射をすべきだった。」と指摘しました。 一方、飯岡さんは、接種後にせきが出始めてから医師が駆けつけるまでの間に、急激に症状が悪化していたとして検証では「最重症型であった可能性が予想され、医師が呼ばれた時点でアドレナリンを投与していても救命できなかった可能性が高い」と判断しています。

そうしたなかでアドレナリンの投与がすぐにできなかった体制に問題があったとして、容体の急変時に、医師だけでなく会場のスタッフ全員にアナフィラキシーの発生を予期するような協力体制を整える必要があり、発生時には迅速にアドレナリンを投与できる協力体制の確認も必要だったと指摘しました。 会見で愛知県医師会の柵木充明会長は「集団接種が広く行われる中で今回の事案が、今後のワクチン接種事業に与える影響は極めて大きく、医師会として迅速かつ正確に審議した」と述べました。

遺族「すべてがあやふやな会見」

愛知県医師会の検証結果の公表を受け、亡くなった飯岡綾乃さんの夫の英治さんが愛西市内で会見を開きました。 英治さんは県医師会の発表について、「結局、アナフィラキシーじゃないかということは言っているが、そうだという判断はないし、すべてがあやふやな会見だったと思う」と述べました。

そのうえで「もっとちゃんとした調査をしてほしい。 『アナフィラキシーかもしれないが、アドレナリンを打っても亡くなった可能性が高い』などとされているが、実際には打ってないのに亡くなった可能性があるというのは何を言っているんだと感じ、怒りしかない。」と述べました。 さらに「今回、私は一切、説明を受けていません。 勝手に調査をして勝手に報告している。 報告前でさえ僕のところには知らせがなかった。 一方的に調べて公表したことは許せないです。」と憤っていました。 (NHK = 11-17-22)


新型コロナとインフルエンザ 同時流行の可能性 どんな事態が?

新型コロナウイルスは夏以降、減少傾向が続き、水際対策が緩和され、全国旅行支援も始まりました。 マスクを外してもよいのでは、という声も聞こえてきます。 この中で、専門家が懸念しているのが、これから冬にかけて新型コロナとインフルエンザが同時に流行する可能性です。 新型コロナが出現してからの過去 2 シーズン、同時流行はありませんでしたが、ことしは何が違うのでしょうか? どのような事態が想定されるのか、そして、どう対応すればよいのでしょうか?

新型コロナとインフルエンザ "流行の可能性、極めて高い"

「10 月から来年 3 月の半年間に、新型コロナの流行拡大と季節性インフルエンザの流行が発生する可能性は極めて高い。」 今月 5 日、新型コロナの対策に当たってきた専門家が連名で、この先の見通しを示す文書を、厚生労働省の専門家会合に提出しました。 提出したのは、東北大学の押谷仁教授、京都大学の西浦博教授、国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長、専門家会合の座長も務める脇田隆字所長の 4 人です。 これを受ける形で、専門家会合は「秋以降、インフルエンザが例年よりも早く流行し、新型コロナとの同時流行になることが懸念され、こうした事態を想定した対応が必要だ」と指摘しました。

過去 2 年なかったインフルエンザの流行

新型コロナの感染が始まる前、毎年冬には季節性インフルエンザが流行していました。 1 つのシーズンで 1,000 万人が感染し、多い年には 2,000 万人が感染したと推計されています。 新型コロナの出現以降、インフルエンザの患者は激減。 全国およそ 5,000 の医療機関からの情報をもとに国立感染症研究所が推計したところ、2020 年から 21 年はおよそ 1 万 4,000 人、2021 年から 22 年はおよそ 3,000 人でした。

インフルエンザは、東南アジアやアフリカなどの熱帯から亜熱帯の人口の多い地域では 1 年を通して感染が広がっています。 それが国際的な人の移動で各国に流れ、ウイルスが広がる環境ができやすい冬の時期に大規模な流行を起こすと考えられてきました。 それが、コロナ対策で国際的な人の行き来が制限されたり、人と人との接触が少なくなったりした影響で、インフルエンザの流行も起きなかったとみられています。

なぜ ことしは同時流行のおそれ?

これが、ことしは様相が変わっているというのです。 専門家は、インフルエンザの流行が 3 年ぶりに起きるおそれがあるとして、次のような要因を挙げています。

  • 水際対策などの緩和

    欧米をはじめ、世界の多くの国ではことしの春から夏以降、水際対策など行動制限を緩和する動きが続き、国際的な人の移動が大きく増えてきています。 日本でも今月 11 日からは、水際対策が大幅に緩和。 入国者数の上限が撤廃され、海外からの自由な個人旅行が認められました。 新型コロナだけでなく、インフルエンザの流行も起きやすい条件が整いやすくなると考えられています。

  • インフルエンザの免疫ある人が少ない

    インフルエンザはこの 2 年は日本国内で流行しなかったので、感染してインフルエンザの免疫を獲得している人の割合が少なくなっていると考えられています。 毎年インフルエンザの流行期に入る前には、予防接種法に基づいて、全国各地でインフルエンザの抗体を持つ人の割合を調べる「インフルエンザ感受性調査」が行われています。

    それによりますと、A 型のインフルエンザウイルスの一部に対する抗体を保有していた人の割合は、去年の夏でも、その前の年、2020 年の夏より低かったということです。 ことしの結果はまだ分かりませんが、専門家が出した文書では、抗体の保有状況が低いことでインフルエンザの流行が例年より大きくなる方向に働く可能性があるとしています。

  • 南半球のオーストラリアで流行

    日本とは季節が逆で、インフルエンザの流行の時期が半年ずれる南半球・オーストラリアではことし、コロナが拡大する前と同じ程度のインフルエンザの流行が 2 年ぶりに起きました。 オーストラリアでは、例年は 8 月が流行のピークでしたが、ことしは 6 月にピークを迎え、流行が早く起きたということです。 こうした点を踏まえ、専門家はこの冬にかけてインフルエンザの流行が起き、コロナの「第 8 波」と重なる可能性があると見ているのです。 一方で、日本国内での人と人との接触の機会は、コロナの拡大以前ほどには戻っておらず、インフルエンザの流行規模がかつてほどにはならない可能性もあるとみられています。

コロナとインフル同時流行 どのような事態か?

日本国内で最大の感染拡大となった新型コロナの「第 7 波」では、ことし 7 月から 9 月までの 3 か月間だけで、1,200 万人近くが感染し、およそ 1 万 3,500 人が亡くなりました。 致死率は、0.11% となります。 ピークだった 8 月下旬には、1 週間でおよそ 159 万人の感染が報告されました。 インフルエンザの患者数は、新型コロナが拡大する前、2018 年秋から 2019 年春までのシーズンでおよそ 1,200 万人だったと国立感染症研究所が推計しています。 ピーク時の 1 月下旬には、1 週間の患者数がおよそ 223 万人に上ったと推計されています。

2022 年 3 月に厚生労働省の専門家会合で示された、専門家によるおおまかな推計では、インフルエンザの致死率は 0.01% から 0.05% ほどだとされています。 この夏の新型コロナの「第 7 波」では、発熱外来を設置している医療機関に患者が殺到し、医療機関や保健所にも連絡がつかないケースが相次ぎました。 また、確保した病床の使用率が上がり、多くの地域で入院が難しくなったほか、重症化リスクのある人でも救急搬送が難しい状況になりました。 専門家は、新型コロナとインフルエンザの同時流行で、同じような状況、さらに悪化した状況が起きないか、懸念しているのです。

新型コロナもインフルエンザも発熱やせきなどの症状は似ています。 のどの痛みや関節痛などの症状も似ており、検査をせず症状だけで両者を判別することはかなり難しいとみられています。 発熱を訴える患者が、診断を求めて医療機関の外来に殺到し、ひっ迫する事態が想定されています。 新型コロナの「第 8 波」の感染拡大が大規模になると、インフルエンザへの対応も重なって救急など医療機関のひっ迫も避けられなくなります。

さらに、毎年冬は、気温の低下によって心筋梗塞といった循環器などの病気が多くなって医療機関の負荷が増す時期で、新型コロナとインフルエンザの同時流行が加われば、医療機関の負担はこれまでよりもさらに大きなものになるという懸念もあります。 政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は「発熱患者が全国で一日に 50 万人を超すレベルで発生し、ことし夏の第 7 波以上に外来診療がひっ迫する最悪の事態を想定する必要がある」と話しています。

同時流行下で発熱 私たちはどう対応?

では、もし新型コロナとインフルエンザが同時流行する事態になり、症状が出た場合、私たちはどう対応すればよいのでしょうか。 政府は 13 日、発熱など体調不良の時にどう受診すればよいか、考え方を示しました。

  • 重症化リスクがある人の場合

    小学生以下の子どもや妊婦、基礎疾患のある人や高齢者といった重症化リスクのある人は体調不良の場合、速やかに発熱外来やかかりつけ医を受診します。 受診した医療機関で新型コロナウイルスとインフルエンザの検査を受け、診断に応じて、治療薬の処方を受けるなどの対応をとります。

  • 重症化リスクが低い人の場合

    一方、若い世代など重症化リスクが低い人は体調不良の場合、自宅などで国に承認された医療用の抗原検査キットを使って新型コロナに感染しているかどうか確認します。 コロナ陰性の場合は電話やオンライン診療、かかりつけ医などを通じてインフルエンザかどうか診断を受け、必要に応じて抗インフルエンザ薬の処方を受けます。 コロナ陽性の場合は健康フォローアップセンターを通じて登録し、自宅療養となります。 ただ、症状が重いと感じるなど受診を希望する場合には、発熱外来やかかりつけ医を受診するとしています。

「多くの医療機関で発熱患者診療を」

厚生労働省の専門家会合のメンバーで東北大学の小坂健教授は、同時流行した場合、地域の医療機関で発熱患者に対応できることが大事だと指摘します。

「もし同時流行下で発熱を自覚したとき、症状だけでは区別がつかない。 いまコロナについてはインターネットなどでも抗原検査キットが購入できるので、自分で判断することができる場合もあるがインフルエンザは難しい。 地域の多くの医療機関が率先して発熱患者を診療する体制が必要になるのではないか。 重症化リスクの低い若い世代の人にとっては、インフルでもコロナでも、解熱剤を飲んだり水分補給してしっかり休養したりすれば、基本的には症状はよくなっていく。 まずは休養ということも大切なことだ。(小坂教授)」

小坂教授は、どの感染症にかかったのか考える際には、地域でインフルエンザがどれくらい流行しているかみることも重要だと述べました。

「地域のインフルエンザの流行状況は、大きな目安になる。 ただ、いまの仕組みでは、定点把握などを通じて知らせるようになっているため、情報が少し遅く、新型コロナのように毎日情報が更新されるリアルタイムな把握になっていない。 治療薬の出荷状況など、少しでも最新の状況がわかるような把握方法を活用した上で、その情報をしっかりと医療機関や市民が共有できる体制が非常に重要になってくる。(小坂教授)」

また、厚生労働省専門家会合の脇田隆字座長は 10 月 12 日に開かれた専門家会合のあとの記者会見で「新型コロナの感染拡大の第 7 波では、検査キットが不足したり解熱薬が買いにくくなったりした。 発熱した際に、(自分で手当てをする)『セルフメディケーション』を行ってもらうためにも、いまのうちに検査キットや解熱薬を買っておくということも重要ではないか。 検査キットが購入しやすい環境を整えることも重要だ。」と指摘しました。

ワクチンは? 医療体制は?

さらに、同時流行に備えるにあたって、ワクチン接種についてはどう考えればよいのでしょうか。 新型コロナのワクチンも、インフルエンザのワクチンも、感染をある程度防ぐほか、重症化を防ぐ効果は高いとされています。 小坂教授は、新型コロナの 3 回目、4 回目のワクチン接種とともに、インフルエンザの接種を受けるよう呼びかけています。

「コロナもインフルも、同時にワクチンを打っても問題はない。 医療機関によっては同時に接種できるところもあり、しっかりとタイミングを逃さず両方のワクチンを接種しておくことが、冬に向けて重要だ。(小坂教授)」

厚生労働省専門家会合の脇田座長も「オミクロン株対応のワクチンやインフルエンザのワクチンの接種を進めることは、流行の規模をなるべく小さくし、重症化を予防するためにも非常に重要だ」と話しています。

とるべき感染対策は変わらない

一方で、新型コロナもインフルエンザも呼吸器の感染症で感染経路は似ていて、とるべき対策は大きく変わりません。

  • 発熱などの症状がある場合は学校や仕事には行かず、ほかの人との接触を極力避ける。 休養が重要。
  • 手指の消毒、屋内で人と近い距離で会話する場面などではマスクを着用する。 飲食店などでは換気を徹底する。

専門家は、新型コロナとインフルエンザが同時流行した場合の感染の規模を小さくする意味でも、こうした基本的な対策を続けることが大事だと呼びかけています。 (NHK = 10-13-22)


乳幼児用のコロナワクチン、日本で初承認 生後 6 カ月から 4 歳対象

生後 6 カ月 - 4 歳を対象とした米ファイザー社製の新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は 5 日、国内での製造販売を特例承認した。 12 歳以上が対象となるオミクロン株の「BA.5」に対応したワクチンも特例承認した。 同省は 7 日に別の専門家分科会を開き、いずれも予防接種法にもとづく公費接種とする見通し。 これまで小児向けとしては 5 - 11 歳が対象のものがあったが、4 歳以下の子どもが使えるワクチンは初めてとなる。 接種 1 回あたりの有効成分の量は、5 - 11 歳用のワクチンの 3 分の 1 以下で、計 3 回うつ。 1 回目から 2 回目は 3 週間、2 回目から 3 回目は 8 週間空けてうつ。 米国ではすでに使われている。

ファイザー社による臨床試験では、ワクチンをうった生後 6 カ月 - 4 歳の体内にある感染を防ぐ「中和抗体」の量を調べたところ、16 - 25 歳がワクチンをうった場合と同程度の有効性を確認できた。 7 割の発症予防効果があったというデータもある。 中国・武漢由来のウイルスをもとにしたワクチンだが、3 回目接種でオミクロン株にも有効性を示すとしている。

一方、安全性については、生後 6 カ月 - 2 歳で 3 回目接種後の 38 度以上の発熱が 6.8%、食欲不振が 20.2% などが報告されている。 死亡例は確認されていない。 24 日の週から配送され、その後に接種が始まる見込み。 一方、オミクロン株に対応したワクチンは、ファイザー社製に加え、米モデルナ社製でも、「BA.1」に対応したタイプで 9 月から、高齢者らへの接種が始まっている。 BA.5 に対応したワクチンの承認を受け、ファイザー製については 10 日の週の配送からこのタイプへと切り替え、順次接種を始める。 11 月 7 日の週までに計約 4,300 万回分を配送する。

接種間隔は 5 カ月だが、年末年始の感染拡大の可能性も視野に、厚労省は短縮を検討している。 BA.5 対応のワクチンは、従来のワクチンと同じ武漢株と、BA.4 と BA.5に共通する成分を使った「2 価ワクチン」。 マウスへの実験では、BA.5 に高い有効性が確認された。 一方、ヒトでのデータは公表されていない。 BA.1 対応のワクチンと比べて成分の一部を変更するだけのため、安全性に大きな違いはないと判断した。 部会では「BA.1 対応のワクチンのデータを上回る懸念はない」との意見が出たという。ただ、ファイザー社には追加でヒトでのデータも求める。

従来のワクチンは、変異株に対して感染や発症を防ぐ効果が弱まるおそれが指摘され、オミクロン株に対応したワクチンの開発が必要になった。 日本や英国は先に確保の見通しが立った BA.1 対応のワクチンの使用を決めた。 その後、BA.5 対応のワクチンが開発され、米国はこのワクチンを使用している。 モデルナも 5 日に BA.5 に対応したワクチンを厚労省に承認申請しており、今後審議される見込み。 (市野塊、asahi = 10-5-22)


塩野義の新型コロナ飲み薬 最終治験でオミクロン株に効果確認

塩野義製薬は 28 日、開発中の新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」について、最終段階の臨床試験で効果を確認できたと発表した。 同社によると、オミクロン株に特徴的な発熱や鼻水など 5 つの症状が消失する時間を、24 時間短くする効果が確認できたという。 今後、できるだけ早い承認に向けて、さらにデータの解析などを進める。 ゾコーバをめぐっては、これまで塩野義は感染症流行時などに期限付きで迅速に審査する「緊急承認」の適用を目指していた。 しかし、7月の厚労省の専門家会議では、データが不十分だとして承認が見送られていた。 (栗林史子、asahi = 9-28-22)

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コロナ飲み薬「ゾコーバ」開発の塩野義製薬、韓国の製薬大手とライセンス契約

塩野義製薬は 16 日、開発を進めている新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、韓国での緊急使用許可の申請に向け、韓国の製薬大手「イルドン ファーマスーティカル」とライセンス契約を結んだと発表した。 イルドン社は許可を得た後、韓国政府との販売交渉も担う。 韓国向けの製造を担当する可能性もあるという。 塩野義側はライセンス契約料と販売量に応じて一定の収益を受け取る。

塩野義は現在、日本を中心に最終段階の臨床試験を実施している。 この中には韓国内の約 200 人も含まれ、イルドン社はこれらのデータを基に申請する。 塩野義は中国当局に承認に向けたデータを提出しているほか、米国でも近く最終段階の臨床試験を始める。 一方、日本では緊急承認申請したものの、7 月に承認が見送られ、継続審議となっている。 (yomiuri = 9-16-22)

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塩野義製薬、新型コロナワクチンを 6 - 7 月にも承認申請へ

塩野義製薬は 11 日、開発中の新型コロナウイルス向けワクチンについて、6 - 7 月をめどに厚生労働省に承認申請する方針を明らかにした。 同社は現在、最終段階の臨床試験(治験)と、追加接種(ブースター)用としての治験をしている。 結果がまとまり次第、あわせて申請するという。 この日開いた 2022 年 3 月期決算の説明会で手代木功社長が「どんなに遅くとも、6 月か 7 月には申請したい」と話した。 手代木社長は、「完成度の高いワクチンだと自負している」と自信を見せた。 4 月に公表した中間段階の治験結果では、安全性が確認され、実施中の最終治験で有効性を確かめているという。

同社は当初、3 月までに実用化を目指す、としていた。 しかし、21 年内の予定だった最終治験の開始時期が 22 年 1 月にずれ込んでいた。 同社は新型コロナの飲み薬も開発し、厚労省に承認を申請し、審査中だ。 23 年 3 月期は、飲み薬とワクチンで計 1,100 億円の売り上げを見込む。 (田中奏子、asahi = 5-11-22)


オミクロン株対応ワクチン接種 都の大規模接種会場で始まる

東京都が運営する 3 つの大規模接種会場では、22 日からオミクロン株対応ワクチンの接種が始まりました。 オミクロン株対応ワクチンは、来月 5 日までは高齢者や基礎疾患のある人、医療従事者らに加えて警察、消防職員や教育、福祉関係者などエッセンシャルワーカーの 4 回目の接種を希望する人が対象となります。 6 日からは 2 回目を接種済みの 12 歳以上へと対象を拡大します。 都内在住か都内に勤務、通学する人が接種でき、予約なしでも受けられます。

「エッセンシャルワーカーも東京都の方で新しくオミクロン対応の接種ができるということだったので、非常に早く接種できたので大変、嬉しいです。(接種した人)」

都の担当者は「感染状況は落ち着いているが、次の感染の波や冬のインフルエンザとの同時流行に備え、接種を検討してほしい」と呼び掛けています。 (テレ朝 = 9-22-22)

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BA.4 と BA.5 に対応ワクチン ファイザーが厚労省に承認申請

米ファイザー社は 13 日、オミクロン株の変異系統「BA.5」と「BA.4」に対応した新型コロナウイルスのワクチンについて厚生労働省に承認申請したと発表した。 従来株とオミクロン株のウイルスに対応する「2 価ワクチン」で、米国では 8 月末に承認されている。 厚労省は 12 日、オミクロン株の系統の一つで昨冬に流行した「BA.1」に対応したファイザー製と米モデルナ製のワクチンについて、国内での製造販売を特例承認した。 このワクチンは「BA.5」にも一定の効果があるとしており、来週にも接種が始まる。 (asahi = 9-13-22)

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ファイザー、BA.5 対応ワクチンを近く承認申請 接種前倒しへ

米食品医薬品局 (FDA) がオミクロン株の「BA.4」と「BA.5」に対応した新型コロナウイルス 2 価ワクチンの緊急使用を許可したことを受け、米製薬大手ファイザーは 1 日、日本国内でも、製造販売の承認を厚生労働省に近く申請すると発表した。

国内では、既に同社と米モデルナ社がオミクロン株の「BA.1」と従来株由来の成分を含む 2 価ワクチンについて承認を申請している。 今月中旬に予定されている専門部会を経て承認されれば、当初予定の 10 月中旬からの接種開始を前倒しし、月内に始まる見通しだ。 一方、「BA.4」、「BA.5」対応の 2 価ワクチンが承認されれば、今後ワクチンの成分が切り替わることが想定される。 早ければ今月中にも承認され、使用可能になる見通しが出てきた。 (金秀蓮、mainichi = 9-1-22)


水分飲めないと受診、顔色悪いと救急車 コロナ拡大で学会が受診目安

新型コロナウイルスの第 7 波の感染拡大による救急や発熱外来の逼迫を受け、日本感染症学会など関連学会は 2 日、救急利用や発熱外来受診の目安を示した声明を出した。 「新型コロナにかかったかも? と思った時にどうすればよいのか」と題し、ポイントをあげた。 オミクロン株について、▽ 感染した時の症状の多くは 4 日程度で軽くなる、▽ 重症化する人は数千人に一人程度 - - と記載。 だが、水分が飲めないなど症状が重い場合や、発熱(37.5 度以上)が 4 日以上続く場合は、受診が必要とした。

救急車を呼ぶ必要がある症状として、▽ 顔色が明らかに悪い、▽ 息が荒くなった、▽ 座らないと息ができない - - などを挙げた。 判断に迷う場合には、救急安心センターなどがある自治体は「#7119」にかけたり、行政などが設置している発熱相談窓口などを活用したりすることを推奨している。 記者会見で日本プライマリ・ケア連合学会の大橋博樹副理事長は「医療につながらなければいけない患者がつながれるよう、疑わしい症状が出たらまずは自宅療養という風潮が広まってくれれば」と話した。

声明は、日本感染症学会のほか、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本臨床救急医学会の 4 学会が合同で出した。 声明では、感染急拡大の現状を「検査を目的として受診する人で発熱外来が逼迫していて、本来みるべき、基礎疾患のある人や高齢者を発熱外来で断っている。 そういった方が救急車を呼び、救急要請に対応できない事態が生じている」として、症状が出たらまずは自宅療養を始めるよう呼びかけている。 (神宮司実玲、asahi = 8-2-22)

コロナで医療機関の受診や救急車を呼ぶ症状などの目安

次のどれかに当てはまるとき、受診が必要

▽ 37.5 度以上の発熱が 4 日以上続く、▽ 症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くてあやしてもおさまらない) 症状が軽くても、65 歳以上や基礎疾患がある人などは早めにかかりつけ医に相談

コロナで救急車を呼ぶ必要がある症状

▽ 顔色が明らかに悪い、▽ 唇が紫色、▽ 息が荒くなった、▽ 胸の痛みがある、▽ 意識がおかしい(ない)など

(日本感染症学会などの「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する 4 学会声明」より)


中国・武漢の市場の動物 → ヒト感染、何度も起きた? コロナ起源で論文

新型コロナウイルスの「起源」として有力とされる、動物から人間への種を越えた感染は、少なくとも 2 回、最大で 20 回あまり起 こっていたかもしれない。 米国などの国際研究チームが 7 月 26 日付の米科学誌「サイエンス」に、そんな内容の研究論文を発表した。 主要なメンバーが同じ別の研究チームが、同時に発表したもう 1 本の論文では、流行の初期のデータを分析した結果、中国・武漢市の海鮮市場が、種を越えた感染の「発生地」と考えられるとしている。

新型コロナの「起源」は、動物から人へ、種を越えて感染したウイルスだとする説が有力だ。 しかし、いつ、どのように種を越えた感染が起きたのかは、直接的な証拠がなく、よく分かっていない。 世界でも最初の流行は中国・武漢市で起こった。 武漢市の複数の患者の検体を分析した結果から、初期の新型コロナウイルスは二つの系統に大別できることがわかっている。

野生のコウモリから見つかったコロナウイルスに進化的により近い「A 系統」と、A 系統より早く感染拡大を起こし、その後の世界の流行の中心になった「B 系統」だ。 B 系統は、いわゆる「武漢株」とも呼ばれ、いまも世界中で拡大するオミクロン株などの変異株の「親」にあたり、ワクチン開発の最初のターゲットにもなった。 研究チームは今回、種を越えた感染がどのように起これば、A と B、二つの系統が生まれ、実際の感染拡大を再現できるかシミュレーションした。

まず、種を越えて感染した単一の「起源」から、A と B、二つの系統が派生したと仮定して検討すると、実際の感染拡大パターンと整合しなかった。 一方、二つの系統にそれぞれの「起源」があると仮定すると、A 系統が動物のコロナウイルスにより近く、B 系統による感染拡大がより早く起きたことをうまく再現できた。 種を越えた感染の時期は、B 系統が 2019 年 11 月中旬、A 系統は同月下旬と推計された。

また分析では、種を越えた感染が起こっても、多くの場合でそのウイルスは次の人に感染できず、自然に消滅すると予測された。 現実に起こったように、最終的に、A と B、二つの系統が生き残るには、少なくとも 2 回、最大 23 回の種を越えた感染が起きた可能性があるとされた。 (asahi = 7-27-22)


あだ名は「ケンタウロス」 国内でも確認の BA.2.75 系統とは

国内でも感染が確認された新型コロナウイルスの「BA.2.75」系統。 世界保健機関 (WHO) の正式な命名ではないものの、SNS などでは「ケンタウロス」とも呼ばれる。 インドで最初に報告され、日本国内で流行しているオミクロン株「BA.5」系統より、さらに感染力が高くなっている可能性も指摘されている。 どんなことが分かっているのか。 「BA.2.75」系統はオミクロン株のひとつ「BA.2」系統から派生していて、インドで 5 月に初めて確認された。 英国やドイツ、米国、韓国などでも報告されている。 日本国内では、検疫のほか、7 月になって神戸市や大阪府、東京都などで感染者が確認された。

治療薬やワクチンの効果、感染しやすさに影響するスパイクたんぱく質に、BA.2系統からさらに8カ所の変異が入っている。 国立感染症研究所の資料(7 月 8 日時点)によると、この変異によって、ワクチン接種で体内につくられ、ウイルスの感染を防ぐ効果のある「中和抗体」から逃れやすくなっている可能性があるという。 BA.5 系統がインド国内で広がりつつあった状況の中でも、見つかる割合が高まったことも指摘されていて、感染力がさらに増している可能性があると注目されている。

ただし、どれほど感染力が強くなっているのか、重症化しやすくなっているのか、などの詳しい情報は、はっきりしていない。 海外では、「ケンタウロス」という呼び名で報じられて話題になった。 ケンタウロスはギリシャ神話に登場する半人半獣の種族だ。 7 月はじめにツイッターで、星座のケンタウロス座にちなんで名付けられたのがきっかけで、WHO が正式に命名したものではない。 その「名付け親」となった投稿によると、「BA.2.75」のような数字と記号の羅列よりもニックネームの方が理解しやすいこと、感染力の強さなどの警戒すべき情報が伝わりやすいことが命名の理由にあげられている。

WHO が命名に使うギリシャ文字よりも数が豊富な星座などをつかうべきだ、としていて、「ケンタウロス」を選んだ理由は「私が決めたから (because I impose it)」と投稿している。 WHO では昨年から、世界に与える影響が大きいと判断した変異株について、「デルタ」や「オミクロン」といったギリシャ文字の名前をつけている。 それ以前は、最初に報告された地域などにちなんで「英国型」などと呼ばれていたが、差別や偏見につながるおそれがあるため、ギリシャ文字が使われるようになった。

これに対し、「BA.2」や「BA.2.75」といった名前はウイルスの変異に基づくより細かい分類方法で、主に研究者の間で使われる。 これまでのところ WHO は、「BA.2」系統から派生した系統についても、まとめて同じ「オミクロン株」に分類している。 そのため、BA.2.75 系統もオミクロン株として扱われている。 現在、世界中でさまざまなオミクロン株の派生系統が生まれていて、その中でもより注意が必要なものを、WHO はリスト化している。 7 月 19 日時点で BA.2.75 系統もこのリストに載っているが、このリストに記載されている系統は、もともとのオミクロン株と比べて明確に異なる特徴をもつと証明されれば、別の名前がつけられる可能性もある。 (野口憲太、asahi = 7-27-22)


バイデン氏のコロナ治療が映す医療の進歩、トランプ氏感染当時と一変

→ トランプ氏は 20 年感染、治療法が模索され重症化・死亡率も高かった
→ 20 年 10 月当時はワクチン開発前、FDA 承認の治療薬も存在せず

バイデン米大統領が 21 日、新型コロナウイルス検査で陽性になった。 対応を見ると、トランプ前大統領が感染した 2020 年 10 月当時と比べ、ウイルスや治療法がいかに変化したかが分かる。 バイデン氏はホワイトハウスで自主隔離しながら職務を続けつつ、米ファイザーの飲み薬「パキロビッド」を服用。 パキロビッドは重症化リスクの高い患者に対する一般的な治療薬とされる。

一方、トランプ氏の感染時は最善の治療法が模索される途上にあり、重症化率も死亡率も今よりずっと高かった。 3 日間入院したトランプ氏は当時の米国民が罹患した場合に望んだであろう最高レベルの治療を受けたが、投与された抗体カクテル療法はまだ治験段階にあった。 同氏はステロイド薬デキサメタゾンと抗ウイルス薬レムデシビルの投与も受けた。 当時は新型コロナワクチンが開発される前で、米食品医薬品局 (FDA) が承認した治療薬も存在していなかった。 トランプ、バイデン両氏の治療法の違いは、変異するウイルスと医療対応の変化を反映している。

足元で流行する「BA.5」などオミクロン株の派生型は感染力は強いものの、致死率が大幅に低く、症状も軽めの傾向がある。 バイデン氏はワクチンを 4 回接種しており、79 歳と高齢にしては健康状態が良い。 オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの感染症専門医であるモハマド・マーディー・ソブハニー氏は、新型コロナは他のウイルス性呼吸器感染症と同様に「早めの治療が鍵だ」と言う。 バイデン氏のようにワクチンを接種し、陽性と診断された後すぐに治療を受ければ「入院せずに済み、ほかの重篤な合併症も避けられる可能性はかなり高くなる」と述べた。 (Robert Langreth、Crayton Harrison、Bloomberg = 7-22-22)


アルパカからオミクロンに効く抗体開発 飼育して候補 2 千万から絞る

新型コロナウイルスのオミクロン株に効く小型の抗体を開発したと、京都大などのグループが 14 日、発表した。 アルパカが持つ特殊な抗体をもとに作製。 これまでの抗体より効果が高く低コストで生産できる可能性があるとして、治療薬の開発につなげたい考えだ。 抗体は、通常、H 鎖と L 鎖と呼ばれるたんぱく質でできているが、アルパカなどラクダ科の動物は H 鎖だけの抗体も作ることができる。 この抗体の先端を切り出したものは「VHH 抗体」あるいは「ナノボディ抗体」と呼ばれている。

グループは VHH 抗体が小型で改変しやすく、しかも安定していることに注目、新型コロナの変異ウイルスに効く抗体の開発を目指してきた。 アルパカを飼い、2 千万種類の抗体候補から絞り込み、その中からウイルスが細胞に侵入する際に使う「スパイクたんぱく質」に強く結合する 6 種類を選んで調べた。 しぼりこんだ抗体の一つはオミクロン株が細胞に侵入することを防ぐ効果がこれまでの治療用抗体より高いとわかった。 アルファ株など他の変異ウイルスも抑えた。 この抗体がスパイクに結合する様子を特殊な電子顕微鏡で観察したところ、スパイクの深い溝にくっついていた。 ヒトの抗体だと大きすぎて入らない溝で、変異が起こりにくい場所と考えられた。

京都大の高折晃史教授は「動物実験を進め、吸入薬としての開発につなげたい」と話す。 論文は、京都大、大阪大、横浜市立大、東京大、バイオ企業 COGNANO の共同研究で英科学誌に発表、ウェブサイト (https://www.nature.com/articles/s42003-022-03630-3) で読める。 (瀬川茂子、asahi = 7-14-22)


9 分でコロナ判定、診断装置を開発 PCR なみの高精度、低コストで

PCR 検査より大幅に短く、9 分以内で新型コロナウイルスを検出できる感染症診断装置を、理化学研究所(埼玉県和光市)と東大、京大、東京医科歯科大、自治医科大などのグループが開発した。 遺伝物質を増やさずにウイルスを検出できる新技術を昨年開発し、さらに感度を約 1,400 倍に向上させた。 PCR 検査なみの高い精度と低いコストで検査ができるという。

グループは 2021 年 4 月、ウイルスの遺伝物質を取り込むと活性化する酵素の性質を利用した検出技術「SATORI 法」を発表していた。 この技術では、活性化した酵素が溶液中の蛍光物質を光らせることで検体中のウイルスを検出する。 唾液(だえき)やのどの粘膜から採った検体や酵素、蛍光物質を混ぜた溶液を、微少な試験管が集まったマイクロチップと呼ばれるプレート上で反応させて光った試験管を数える方法で、遺伝物質の増幅が必要な PCR 検査では 1 時間ほどかかっていた検査時間を大幅に短縮した。

しかし、PCR 検査より低い検出感度が課題となっていたという。 そこでグループは、活性が高い新種の酵素を使うことで感度を高め、磁気ビーズと結びつけた酵素を磁石で試験管に導く濃縮法でさらに感度を向上させた。 陽性判定の正解率は 98% 以上で、検査コストも 1 回 2 ドル程度と PCR 検査なみを実現したという。 また、試料を作るロボットや測定に必要な顕微鏡を組み込んだ全自動検出装置の開発で、最短 9 分以内の検出が可能になった。

グループは協力企業と装置の小型化を進め、来年度までの製品化をめざす。 変異株の判定にも利用が可能で、将来はほかの感染症の診断への応用も見込む。 グループの渡辺力也主任研究員は「装置を街中のクリニックにも届け、迅速診断につなげたい。 がんなどの早期診断への応用も期待できる」と話した。 (林義則、asahi = 5-26-22)

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