... - 10 - 11 - 12 - 13 - 14 - 15 - 16 - 17 - 18 - 19 - 20 - ...

世界中で次々明らかになる「中国製のコロナワクチンは役立たず」 更に安全性にも問題

中国政府は 6 月上旬「中国は既に全世界に 3 億 5,000 万回分のワクチンを提供した」ことを明らかにした。 中国国内のワクチン開発企業は 24 時間フル稼働で生産に当たっており、ワクチン生産量は大幅に増加している。 中国は 40 カ国以上にワクチンを輸出しており、世界保健機関 (WHO) も「一般的な冷蔵庫で保管できる」メリットに着目して中国製ワクチンについての緊急使用を承認した。

ワクチン生産大国であるインドが自国の感染爆発のせいで海外への輸出を停止する中で中国製ワクチンの存在感が高まっているが、輸入国から「感染拡大防止の効果が疑わしい」との声が高まっている。 まず最初に問題になったのはチリである。 チリはワクチン接種が最も進んでいた国の一つだったが、4 月に入ると国内で感染が再び拡大し、チリ政府は 6 月 10 日、首都サンチャゴの全域にロックダウンを再導入すると発表した。 チリで接種されているワクチンの 9 割が中国のシノバック製ワクチンである。

バーレーンでも同様の問題が起きている。 バーレーンは中国のシノファーム製ワクチンの接種率が極めて高いのにもかかわらず、感染者が急増している事態を受けて、ワクチンの 2 回接種を完了した人を対象に米ファイザー製ワクチンの追加接種を開始した。 インドネシアでは中国製ワクチンを接種した医療関係者数百人が新型コロナウイルスに感染したことが明らかになっている(6 月 18 日付ロイター)。

新型コロナワクチンの有効性に関する報告書の公表がこのところ相次いでいる。 JP モルガン・アセット・マネジメントは 11 日「欧米製ワクチンを採用している国々(米国、英国、フランスなど 9 カ国)では人口の 40% 以上に接種した後、感染者が大幅に減少したのに対し、中国製ワクチンを採用している国々(9 カ国)ではワクチン接種後に感染者が減少したのはハンガリーのみであり、特にバーレーン、モルデイブ、セイシェルでは感染拡大が深刻化している」との分析結果を公表した。 オックスフォード大学も「世界で最も感染率の高い上位 10 カ国のうち、パラグアイを除く 9 カ国が中国製ワクチンを採用している」との調査結果をまとめている。

フランス政府はワクチンを接種した入国者に対する緩和措置を発表したが、中国製ワクチンは対象外となったことから、在仏中国大使館はフランスに対して「同等の制裁」を行うと抗議した。 韓国政府もワクチンを接種した入国者に対する緩和措置を公表したが、欧米製ワクチンに加えて中国製ワクチンも対象とした。 これについて中国政府は歓迎の意を表したものの、韓国国内では「再び感染が拡大する」との不安が広がっている。

中国国内に目を転じると、自国製ワクチンの接種が猛烈な勢いで進んでいる。 1 日平均のワクチン接種回数は 2,000 万回以上であり、人口の 40% 以上がワクチンを 1 回以上接種した。 総接種回数も 10 億回に到達し、世界全体の接種回数である 25 億回の 4 割近くを占めている。 ワクチン接種が進むにつれて、マスク着用や社会的距離確保の方針が緩和されている欧米諸国とは対照的に、中国国内の移動制限措置などはいまだに厳格なままである。

最近も広東省でインド由来の変異株(デルタ)の感染者が発見されると、大規模な PCR 検査が実施されるなどの強硬な手段を講じられている状況を見るにつけ、「中国政府自身も自国製ワクチンの有効性を信じていないのではないか」と思いたくなる。 中国の疾病対策当局も 4 月に「中国製ワクチンの効果は小さい」との見方を示していた。 その直後にこの発言は撤回されたが、中国当局もバーレーンのようにファイザー製などのワクチンの追加接種を検討しているようである。

ファイザー製などのワクチンの有効率が 90% 以上であるのに対し、中国製ワクチンの有効率が 50% 程度 (WHO が定めた最低水準)と低い原因はその製造方法にある。 中国企業が開発したワクチンは不活化ワクチンである。 熱やアンモニアなどで不活化した(殺した)ウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法である。 この方法はインフルエンザワクチンなどで使われているが、インフルエンザウイルスに比べて増殖の速度が遅い新型コロナウイルスでは体内で抗体ができにくい。 このためワクチンの有効性が低いとの判断から、欧米のワクチンメーカーはこのやり方を採用しなかった。 現在の状況にかんがみるとその予測が正しかったと言えるだろう。

中国製ワクチンの問題は有効性の低さにとどまらない。 中長期的なスパンで見た安全性についての疑義もある。 筆者が懸念しているのは ADE (抗体依存性感染増強現象)である。 ワクチン接種によってつくられた抗体がウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に細胞への侵入を助長する現象のことである。 大阪大学の研究チームが最近、新型コロナウイルス感染者の体内に「感染増強抗体」がつくられていたことを突き止めていることから、ADE に対する懸念が深まっている。

ファイザー製などのワクチンでもこのリスクはあるが、不活化ワクチンについては新型コロナウイルスと遺伝情報が類似している SARS ウイルスのワクチンを研究している際に ADE が生じ、その開発が断念されたという経緯がある。 中国製ワクチンは感染防止に役立たないばかりか、ADE のリスクが高まる危険な代物かもしれないのである。 中国政府は一刻も早くワクチンの有効性や安全性に関する情報公開を行うべきではないだろうか。 (藤和彦、デイリー新潮 = 6-27-21)

藤和彦 : 経済産業研究所コンサルティングフェロー。 経歴は 1960 年名古屋生まれ、1984 年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003 年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

〈編者注〉 ADE リスクに関して言えば、いずれのワクチンも同等にリスクを抱えていると、確たるデータの無い今は、そう言うべきではないでしょうか? 次のパンデミックに備えて、独立して研究を進めるべき課題と考えます。

◇ ◇ ◇

ビオンテックとシノバック、コロナワクチンの抗体レベルに大差 = 香港紙

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト (SCMP) は 6 月 19 日、香港で行われた研究で独バイオ医薬品会社ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンを接種した人の抗体レベルは、中国製薬大手の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)の同ワクチンを接種した人の抗体レベルを「著しく上回る」ことが分かったと報じた。

調査を主導した香港大学 (HKU) のベンジャミン・カウリング疫学教授は SCMP に対し、シノバック製を接種した人の一部は 3 回目の追加接種が必要かもしれないとの見方を示した。 この研究は香港政府の委託で HKU 医学部公衆衛生学科が実施し、いずれかのワクチンを接種した市民 1,000 人の抗体反応を調べた。 インドネシア当局者は最近、シノバック製ワクチンを接種した医療関係者 350 人余りが新型コロナウイルスに感染し、数十人が入院していると警告し、感染力が強いとされる変異株に対するシノバック製ワクチンの効果に懸念が広がっている。

ウルグアイは今月、シノバック製ワクチンの実環境データで、新型コロナ感染症患者の集中治療室への収容と死亡を防ぐ効果が 90% 強と確認されたと発表した。 同国政府はまた、医療関係者と 80 歳以上合わせて 16 万 2,047 人を対象とする調査で、米ファイザー・ビオンテック製ワクチンの集中治療室への収容と死亡を防ぐ効果が 94% で、感染件数は 78% 減少したと明らかにした。 (Reuters = 6-21-21)

◇ ◇ ◇

中国ワクチン接種の受刑者死亡 バーレーンで抗議デモ

中東バーレーンで、ワクチンを接種済みだった受刑者の男性 (48) が新型コロナウイルスに感染して死亡し、政府に責任があるとして反政府デモが起きた。 AP 通信などが伝えた。 国王が強権を握るバーレーンで、政府への批判が大規模な反政府デモに発展するのは異例だ。 バーレーンの国営通信によると、刑務所に収監されていた男性は新型コロナに感染。 ここ数日、人工呼吸器が必要な状況だったといい、健康省の監督下の医療施設で治療を受けていたが、9 日朝に死亡した。 新型コロナのワクチンは 2 月と 3 月に計 2 回、接種を済ませていたという。

AP 通信は、経緯を知る人権団体の話として、接種したのは中国のシノファーム製のワクチンだったと伝えている。 ソーシャルメディアに投稿された動画には、男性の死亡が報道された 9 日の夜、首都マナマに隣接するディヤ地区で少なくとも数百人の民衆が、男性の遺影を掲げながら行進する様子が映っている。 ハマド国王に向けて、「打倒ハマド!」、「ハマドよ、あなたは(神の罰で)身動きできなくなればいい」などと批判を繰り返した。

イスラム教スンニ派が政府中枢を統治するバーレーンでは、10 年前に波及した中東の民主化運動「アラブの春」で一部のシーア派住民が反政府デモを展開したが、サウジアラビア軍の助力も得た政府は武力で徹底的に弾圧して封じ込めた。 死亡した男性もシーア派とみられ、男性の死をきっかけに、抑え込まれてきたシーア派住民の感情に火が付いた可能性がある。 バーレーンは人口約 170 万人の島国で、これまでに 25 万人以上が新型コロナに感染。 5 月下旬には 1 日当たりの新規感染者が 3 千人を超え、政府は商業施設の営業中止などを求めるロックダウン(都市封鎖)を発令していた。 (ドバイ = 伊藤喜之、asahi = 6-11-21)

◇ ◇ ◇

中国製コロナワクチンの効果に不安、ファイザー製「再接種」の国も

中国の国営シノファーム(医薬集団総公司)製のワクチンの有効性に対する不安が、ますます高まっている。 新型コロナウイルスのワクチンの接種率が最も高い水準にありながら、圧倒的な勢いで感染者が急増しているバーレーンは 6 月 3 日、すでにシノファーム製ワクチンの 2 回の接種を完了した人を対象に、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの「ブースターショット(追加接種)」を開始することを明らかにした。

米ウォール・ストリート・ジャーナルは、バーレーン保健省は、「シノファーム製ワクチンの 2 回目の接種を受けてから 6 カ月が経過した人のうち、感染リスクが高い人(肥満、50 歳以上、慢性疾患があるなど)に対し、ファイザー製ワクチンによるブースターショットを受けるよう呼び掛けている」と報じている。 同国で接種を完了した人の割合は、およそ 50% に達している。 その上、シノファーム製のブースターショットをすでに開始していた。 それにもかかわらず、人口 10 万人当たりの死者数がインドを大幅に上回っていることから、方針を変更したものとみられる。

主にシノファーム製のワクチンを使用し、接種率が高いその他の国でも、感染者が急増する深刻な事態が生じている。 アラブ首長国連邦 (UAE) はすでにブースターショットを開始。 セーシェルも、同様の措置を検討している。

WHO は承認したが - -

シノファームのワクチンは 5 月上旬に世界保健機関 (WHO) から緊急使用の承認を得た。 だが、同様に WHO から緊急使用を認められている中国シノバック(科興控股生物技術)製のワクチンとともに、有効性に関する懸念が示されている。 両社が主張する有効性を検証するために必要な臨床データが不足しているほか、公開されているデータに不備があること、中国政府がワクチンを政治利用していると指摘されていることなどが、その主な理由だ。

5 月末に発表された両社製ワクチンの第 3 相臨床試験の結果を分析した査読付き論文では、2 種類のワクチンの有効性はそれぞれ、73%、78% とされている。 だが、臨床試験は対象者の大半が若く健康な男性であり、慢性疾患がある人、女性、高齢者が含まれていない。 そのため両社の臨床試験は、ワクチンの有効性を明らかにするには「不十分だった」と指摘されている。 WHO もまた、高齢者に接種した場合の有効性については懸念があるとの見方を示している。

その他、論文の著者らは、重症化と無症状の感染を防ぐという面での有効性については、これらの臨床試験の結果から「結論を導き出すことはできなかった」と述べている。 フォーブスはこの件についてシノファームにコメントを求めたが、返答は得られていない。

ワクチンは外交ツール

中国は、自国の国営企業が開発したワクチンの品質と有効性を、かたくなに擁護している。 「パンデミックと戦う上での効果的な、かつ必要なツール」として、臨床試験が終了する前に接種が開始されたこのワクチンは、中国にとってはコロナ禍での外交政策上、重要なツールとなってきた。 両社のワクチンはどちらも、WHO と米食品医薬品局 (FDA) が緊急使用を認める最低基準、50% の有効率を上回っている。 この下限は、これを満たしていれば、ワクチン需要が供給を大幅に上回る世界において、命を救うために多大な影響を及ぼすことが可能と考えられる数値だという。

だが、今年 3 月からシノファーム製ワクチンのブースターショットを開始していた UAE は、接種を完了した人たちを対象として、ひそかにファイザー製のワクチン接種を進めていると伝えられる。 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、再び接種を受けたことを同紙に明らかにした人は、「数十人いる。」 その中には、シノファームのワクチン接種を受けた後も、抗体が確認されなかった人がいるという。 (Robert Hart、Forebes = 6-4-21)


唾液で 5 分、コロナ検査法開発 AI 使い迅速検査めざす

新型コロナウイルスの感染を、唾液を使って約 5 分で判定する新しい検査法を、大阪大学などの研究グループが開発した。 17 日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。 ウイルスの識別に人工知能 (AI) 技術を使ったシステムで、他のウイルス検査にも応用できる。 多くの人が集まる場所での迅速検査に向け、実用化をめざしている。 グループは、ウイルス 1 個を識別して検知する方法を開発した。 まず、半導体の微細加工技術で基板に直径 300 ナノメートル(ナノは 10 億分の 1)の穴を空けた計測装置を作製。 この穴に唾液を流し、唾液に含まれる様々な物質が、穴を通過する時に出る電気信号を測定した。

新型コロナウイルスがある(陽性)場合、ない(陰性)場合、それぞれの信号を AI に学習させ、感染を識別できるようにした。 その結果、ウイルスが含まれた 50 個の陽性サンプル、含まれない 50 の陰性サンプルで、陽性と判定できた率は 90%、陰性と判定できた率は 96% になった。 今春の選抜高校野球の参加者 175 人で試験したところ、全員が陰性で、従来の PCR 検査の結果と一致した。 このシステムは、AI の学習対象を変えれば、他のウイルスの検査法にも応用可能という。 未知のウイルスの感染拡大が起こった時に、素早く検査できることが期待される。

グループの谷口正輝教授は、「共同で開発してきた企業が、12 月までに厚生労働省に製造販売承認申請の予定」と話している。 論文は、科学誌の ウェブサイト で発表された。 (瀬川茂子、asahi = 6-17-21)


ノババックスのワクチン有効性 9 割 日本にも供給予定

米バイオ企業ノババックスは 14 日、開発中の新型コロナウイルスワクチンの最終段階の臨床試験の結果、有効性が約 90% だったと発表した。 英国型の変異株が流行している米国とメキシコの試験結果で、英国型への効果も確認できたという。 ノババックスのワクチンは国内で武田薬品工業が製造と流通を担うことになっている。 日本政府は 2022 年初頭から 7,500 万人分の供給を受ける予定。 厚生労働省にはまだ承認申請していない。

臨床試験には約 3 万人が参加。 ワクチンを 2 回打つ人と偽薬を打つ人を 2 対 1 の割合で分け、新型コロナへの感染を比べた。 その結果、77 人の感染が確認され、うち 14 人がワクチンを打った人、63 人が偽薬を打った人で、有効性は 90.4% だったという。

「中等症以上の予防効果は 100%」

ワクチンを打って感染した人に中等症か重症の人はおらず、中等症以上の予防効果は 100% だとした。 副作用は接種した部位の痛みが主で、疲れや頭痛を訴える人もいたが、2 - 3 日以内で治まったという。 接種後に起こるあらゆる好ましくないできごと「有害事象」が起きる割合はわずかで、接種したグループで統計的に多いわけではなかったという。 米メディアによると、同社は 9 月ごろに米国や欧州などで承認を得たい考え。 その頃には月 1 億回分の製造が可能という。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 6-15-21)


国産ワクチン 初期の解析結果を発表 新型コロナ

製薬企業のアンジェス(大阪府茨木市)などが開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、第 1 段階の小規模な臨床研究(治験)の結果、接種した人の 6 - 7 割でウイルスの感染を防ぐ「中和抗体」が確認された。 実際に発病を防ぐ効果を調べる大規模な治験の計画は決まっていないという。 アンジェス創業者でもある森下竜一・大阪大学寄付講座教授が 9 日、日本記者クラブの講演で発表した。

アンジェスは、ウイルスのたんぱく質をつくる DNA を使った新しいタイプの「DNA ワクチン」を阪大と共同で開発し、昨年 6 月から 60 人を対象にした第 1 段階の治験を始めた。 そのうち 30 人を対象に阪大で行われた治験の解析結果の一部が今回発表された。 ワクチンの量や接種間隔を変えて調べたところ、4 週間隔で 2 回接種した 10 人のうち 6 人、2 週間隔で 3 回接種した 10 人中 7 人で中和抗体が確認された。 ワクチンによって抗体ができるだけでなく、細胞性免疫と呼ばれる免疫の働きも高まることも確認した。

アンジェスは第 2 段階の 500 人規模の治験も進めており、結果を解析中だが、その後の治験計画は未定だという。 現在、国内で使われている輸入ワクチンは、数万人の大規模な治験を行い、実際に発病を防ぐ高い効果が認められたものだ。 すでに効果が高いワクチンが実用化されている中で、同じような大規模治験を行うことは難しくなってきている。 大規模な治験をせずに、代替の試験方法も検討されているが、実用化の時期についてはわからないとした。 (瀬川茂子、asahi = 6-9-21)


口の細胞、コロナに直接感染 唾液から他人に広がる恐れ

舌や唾液腺など、人間の口内の細胞にも新型コロナウイルスが直接感染していることを、米ノースカロライナ大などの研究チームが突き止めた。 口内でウイルスが増え、唾液を通じて感染を広げる可能性があるという。 専門家は会食など飲食の場での感染対策に一層の注意を呼びかける。 新型コロナのウイルスは肺やのどの細胞に感染し、肺炎を起こして呼吸困難による重症化を起こす。 PCR 検査に使う唾液の中にもウイルスが存在することはわかっていたが、口内の細胞に直接感染しているのかは不明だった。

そこで同大チャペルヒル校や米国立保健研究所 (NIH) などの研究チームは、様々な方法で口内での感染の可能性を調べた。 まず健康な人の舌や歯肉、唾液腺などの細胞をくわしく調べ、肺などと同様に、ウイルスが細胞に侵入するのに使うたんぱく質「ACE2」や、「TMPRSS2」が存在していることを特定した。 次に、新型コロナで亡くなった患者から提供された唾液腺や軽症患者の唾液を調べ、ウイルスが口内の細胞に感染し、増殖している様子を確認できたという。

また、ウイルス量の多い患者の唾液を、体外で培養したサル由来の細胞にふりかける実験で、ウイルスが細胞に感染、増殖したことを確認した。 唾液が感染を広げることを証明できた。 無症状の新型コロナ患者でも、唾液からは 3 週間以上ウイルスが検出された例もあった。 味覚や嗅覚がなくなった患者の唾液からは、ウイルスが見つかりやすい傾向もみられた。 こうした結果から、研究チームは、口内の細胞に新型コロナが直接感染する、と結論づけた。 研究者は口内の細胞が、気づかぬうちに感染し、唾液をのみ込んで気管や肺などにウイルスが侵入したり、他人に飛散させたりする「培養装置」になっているとしている。

チームの加藤貴史ノースカロライナ大研究員(呼吸器内科)は「考えられていた以上に口腔や唾液が重要な感染経路だとわかった。 口腔で増えたウイルスが肺などに侵入し、重症化とどう関わるかも研究を進めていきたい。」と話した。 論文は米科学誌 ネイチャー・メディシン に掲載された。 新型コロナの口内での感染については、日本歯科医学会連合が昨年 4 月、「口腔は、鼻腔とともに咽頭や気道より先んじて感染するのだと推測されます」とウェブサイトで市民に注意喚起するなど、可能性が指摘されてきた。

国が 10 月に発表した国内のクラスター(感染者集団)事例の分析資料でも、「発症者とスプーンを共用していた」、「大皿料理を共有していた」などの例があったと報告。 「唾液で感染することを強調すべき」と注意を呼びかけていた。 日本歯科医学会連合専務理事の小林隆太郎・日本歯科大附属病院教授(口腔外科)は「ウイルスを含む飛沫は見えないので、マスクを適切に着け、唾液の飛沫が口に入る可能性が高まる飲食の場ではさらに注意が必要になる」と話す。 (竹野内崇宏、asahi = 6-8-21)


コロナ感染、高まる子どもの割合 数週間後重症化の例も

「子どもは感染しにくい」とされてきた新型コロナウイルスだが、感染者全体に占める 20 歳未満の割合が約 1 割にまで高まってきた。 感染後、わずかながら重い症状に陥る例も報告されている。 感染力が強い変異株の流行を踏まえ、専門家は家庭での対策を改めて徹底するよう訴えている。

感染から 2 カ月後に高熱や下痢で入院

各地の学校や保育施設でクラスター(集団感染)が発生している。 新潟県の保育園では 2 月、変異株のウイルスによって園児 13 人、保育士 4 人が感染。 さらに家族にも広がり、計 42 人の大規模クラスターになった。 「変異株の感染力の強さを物語る事例だ」と日本小児科学会で感染症対策を担う斎藤昭彦・新潟大教授は話す。

厚生労働省の 6 月 2 日時点のまとめによると、10 代以下の感染者はこれまでに 7 万 8,952 人。 全体(73 万 7,086 人)の約 10.7% を占める。 変異株が広がってきた 2 月 3 日時点の感染者数からは約 2.2 倍となった。 20 代以上の各年代の伸びは約 1.9 倍で、10 代以下の伸びが目立っている。 斎藤さんは「変異株が特に子どもに感染しやすいのではなく、患者全体が増える中で、子どもの患者も増えている」とみる。

子どもの場合、ほとんどが軽症で済むが、極めてまれに、感染から数週間後に重症化する例がある。 心機能や肝機能が低下したり、下痢や腹痛など消化器の症状が出たりする「小児多系統炎症性(しょうにたけいとうえんしょうせい)症候群 (MIS-C)」で、国内でも複数報告されている。

日本川崎病学会が確認した 4 例のうち、10 代の男児は家庭内感染の約 2 カ月後、高熱や下痢で入院した。 首のリンパ節が腫れ、体に発疹もあり、目が充血したり唇が赤くなったりするなど、川崎病に共通した症状がみられた。 血液製剤を投与したが、高熱が続き、肺に水がたまったり、心不全を起こしたりした。 症状には川崎病特有ではない腹痛の訴えもあった。 男児は約 4 週間入院し、快復。 後遺症の報告はないという。

米国では、5 月 6 日までに 385 万人以上の小児が新型コロナに感染した。 米疾病対策センター (CDC) の 5 月 3 日までのまとめでは MIS-C の患者が約 3,700 人、うち 35 人の死亡が報告されている。 日本川崎病学会副会長の鮎沢衛・日本大准教授は「子どもへの感染が広がって、国内でも MIS-C の患者が増える可能性がある。 感染後 1 - 2 カ月間は、特に消化器の症状や胸の痛み、顔色に注意し、異常があれば小児診療の態勢が整う病院で診察を受けてほしい。」と話す。

感染しても発熱は 4 分の 1

日本小児科学会による 10 代以下の小児の分析では、およそ半数が感染しても無症状で、37.5 度以上の発熱も 25% にとどまる。 健康チェックで発熱だけに注目しても感染が見逃される恐れがあり、自覚症状が薄いままウイルスが広がってしまう懸念がある。 2 歳未満の子どもには、窒息や熱中症のリスクがあるため、日本小児科医会はマスクを着けないように呼びかけており、保育の現場では感染対策が課題になっている。

小児科学会で分析を担当する聖マリアンナ医科大の勝田友博准教授は、「子どもどうしの感染にも注意は必要」としつつ、推定される感染経路の 7 割以上は家庭内だと指摘。 「大人が家庭内にウイルスを持ち込まないように考えることがまず大切だ」と強調する。

ファイザー社製のワクチンは日本でも 12 - 15 歳が公費接種の対象に加わった。 高齢者や基礎疾患がある人への接種にめどがつけば、子どもへの接種も検討課題になる。 新潟大学の斎藤昭彦教授は「これまでの報告では重篤な副反応はまれだが、まだ十分なデータがそろっていない。 今後、海外からのデータなどを慎重に見ていく必要がある」としつつ、「学校生活を維持し、社会全体の感染者を減らすことができ、また重篤な合併症の MIS-C を予防できるという観点では接種を勧めるべきだと考える」と話す。 (熊井洋美、編集委員・田村建二、asahi = 6-6-21)


凍結された国産 mRNA ワクチン ゆくてを阻んだものは

新型コロナウイルスに対する米ファイザー製と米モデルナ製のワクチンは、1 年たらずで実用化に成功した。 大きな要因が「m (メッセンジャー) RNA ワクチン」という新しい技術だ。 実は、国内でもこの技術を使ったワクチン開発が数年前に進んでいた。 しかし、ヒトに使う臨床試験(治験)の手前で計画は凍結されてしまった。 携わったのは、現・東大医科学研究所の石井健教授。 2015 年ごろ、当時所属していた医薬基盤・健康・栄養研究所で、新しい感染症に迅速に対応するワクチンを研究していた。

目をつけたのは mRNA の技術

コンセプトはこうだ。 あらかじめワクチンの「入れ物」をつくっておき、どこかで流行が起きたら、その病原体に応じてワクチンの「中身」だけを入れ替える。 「モックアップ(模擬)ワクチン」と呼ばれる考え方で、これを実現するために目をつけたのが mRNA ワクチンの技術だった。

mRNA ワクチンは、病原体の遺伝情報を体内に入れることで、病原体の一部と同じたんぱく質だけを体につくらせ、免疫のしくみを刺激する。 病原体そのものが手に入らなくても、遺伝情報さえわかれば開発に着手でき、大量製造もすばやくできるという利点がある。 「中身」として、2015 年に韓国で流行が起きた中東呼吸器症候群 (MERS) を使うことに決め、16 年から MERS に対するワクチンを開発するプロジェクトを開始した。

「効果」確認するも …

マウスなどを使った実験では、有望な結果が出た。 ヒトに最も近い実験動物のサルでも、MERS に対する免疫ができることを確認できた。 しかし、開発はここで止まってしまった。 ヒトに使って有効性や安全性をみる治験に進もうとしたが、そのための資金を企業や国から得られなかった。 国際的なファンドからも支援を得られなかった。 医薬基盤研内でも予算がつかず、2018 年にプロジェクトは凍結された。 一方海外では、同じように mRNA ワクチンの技術開発をしていたベンチャー企業が、治験に入っていった。 ドイツのビオンテックは米ファイザーから、米モデルナが米国防総省傘下の機関などから、それぞれ支援を受けて、インフルエンザに対するワクチンなどの開発をめざした。

治験か否か、大きな差に

治験では、実際にヒトにワクチン候補を接種する。 参加者を多く集めたり、高い品質のワクチン候補を大量に製造したりと、お金も人員も必要だ。 また、いくら似ていてもヒトとサルは異なる生物だ。 用法・用量やどんな免疫反応が起きるのかなど、治験でなければ得られない情報がたくさんある。 2019 年末に新型コロナの世界的な流行が始まってから、わずか 1 年たらずで、ファイザーとビオンテックがワクチンを実用化。 モデルナも続いた。

コロナ禍までの知見の積み重ねが、海外とのワクチン開発の差につながった面があると石井さんは指摘する。 「スポーツに例えれば、筋トレをしていただけか、実際の試合に出たことがあったか。 それくらいの大きな差です。」 MERS も、2002 - 03 年に流行した重症急性呼吸器症候群 (SARS) も、日本では流行しなかった。 日本では、有事に備えることが現実の課題として捉えづらかった側面もあり、石井さんも「正直、(凍結された MERS ワクチンのプロジェクトを)次に進めることへのちゅうちょが数年前の私にもあった。 あのときに治験にまで進められていれば、というのは反省点です。」と振り返る。

新型コロナワクチンへ 技術は生きる

ただ、2016 - 18 年に培われた技術そのものは、いまの新型コロナワクチン開発に生かされている。 当時、共同でプロジェクトを進めていた第一三共が、このときの技術を生かして、mRNA タイプの新型コロナワクチンを開発中だ。 3 月には国内で初期段階の治験を始めている。 実用化できれば、別の感染症が起きたときにも、短い時間でワクチンがつくれると期待される。 9 日に横浜市であった日本感染症学会のシンポジウムで、第一三共の担当者は「技術基盤として構築したい」と意欲を示した。

応用へ期待も 「周回遅れ」で終わらせず

石井さんは「新たな予防医学としても、この技術は最先端です」と話す。 mRNA ワクチンの技術は感染症だけでなく、がんやアレルギー治療への転用も期待されているという。 一方、慎重さも大切だと強調する。「安全性をおろそかにしてすすむと、痛いしっぺ返しをくらうということは歴史が証明している。 以前から言っていることだが、『急がば回れ』が重要です。」

新型コロナ対応として、日本のワクチン開発の遅さを指摘する声は根強い。 石井さんは、「『周回遅れ』と言って思考停止になるのではなく、今回のことを反省材料にして、社会全体で、この先の感染症対策や緊急時の対策をどうしていくべきなのかを考える必要がある」と話す。 (野口憲太、asahi = 5-29-21)


変異ウイルスにワクチンが高い効果 インド型でも

英国型やインド型など新型コロナウイルスの変異型が世界各地で広がる中、米ファイザー製のワクチンが変異ウイルスにも高い効果があることが海外の接種結果から明らかになった。 警戒されるインド型でも効果はほぼ落ちないようだ。 よく似たワクチンの米モデルナ製も同様の効果があると考えられる。 ただ、高い効果には 2 回の接種が欠かせず、着実に接種を進める必要がある。

国内の第 4 波では感染力の強い英国型が全国に広がっている。 変異型の割合を調べるスクリーニング検査では約 8 割を英国型が占め、厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は「一部の地域を除き、従来型からほぼ置き換わった」と分析する。 国立感染症研究所は英国型の感染力は従来型の 1.3 倍、重症化リスクが 1.4倍に高まったと推定する。 50 歳以下の現役世代でも重症者が増え、第 3 波までより強い対策が必要になっている。 感染研が英国型とともに「懸念される変異」に指定して警戒する南アフリカ型やブラジル型、インド型の感染者も散発的に確認されている。

インド型の感染力は、従来型より感染しやすい英国型をさらに上回ると考えられている。 感染力が強いインド型の出現はインドで感染者急増の一因になったとみられ、英国など他国でも広がる。 京都大学の西浦博教授は「インド株は今後国内でも、市中で流行拡大を起こす可能性が高い。 感染性や重症度などの特性を明らかにしていくことが極めて重要だ。」と話す。

世界で接種が進むワクチンの中で、最も多くのデータが分析されているのがファイザー製だ。 従来型ウイルスについては臨床試験で 9 割以上の発症予防効果などが示されていたが、変異型に対して詳細は分かっていなかった。 英イングランド公衆衛生庁は 22 日、インド由来の変異ウイルスについて、ファイザー製を 2 回接種すると発症を 88% 減らす効果があったという研究結果を発表した。 同庁は 3 種類あるインド型のうち英国型を上回る勢いで広がる「B.1.617.2」と、英国型に感染した計約 1 万 3 千人のデータを分析。 英国型での発症予防効果 93% からは少し下がるが、インド型でも近い効果があると結論づけた。

インド型に対し、ワクチン接種の効果が確認されたのは初めてだ。 英アストラゼネカ製ワクチンについても、英国型への有効性は 66%、インド型では 60% と分析した。 ただ、2 回目の接種開始がファイザー製より遅かったことなどから実際の効果より低い数字の可能性もあるという。 いずれかのワクチンを 1 回だけ接種した効果は英国型で 51%、インド型で 34% にとどまり、2 回接種する重要性も明らかになった。 一方、英国型については多くのデータが集まっている。 イスラエル保健省とファイザーは 1月下旬 - 4 月初めに確認された約 23万人の感染者のデータを分析し、論文が英医学誌「ランセット」に掲載された。

イスラエルでは英国型が感染者の 95% を占めていた。 2 回目の接種から 1 週間以上たった場合、未接種に比べて感染は 95% 減り、発症や入院、重症化、死亡を減らす効果もそれぞれ 97% あった。 各年齢層で 2 回接種の割合が上昇するにつれ、感染者の発生率は低下した。 同国での感染者減少にワクチン接種が貢献していることを確かめたとしている。

同じ中東のカタールでも、20万人以上のファイザー製の接種データから同様の報告が出ている。同国では2月下旬〜3月中旬に英国型と南ア型がほぼ半々の比率で流行していた。米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された論文によると、2回目の接種から2週間以上たった人は未接種の人に比べて英国型への感染が90%減り、南ア型でも75%減った。2回接種の場合、英国型や南ア型に感染しても重症化した例がなかった。

南ア型に対してはワクチン接種者の抗体の効果が下がるという血液実験の結果が報告され、ワクチンが効きにくい可能性が懸念されていた。 ファイザーは 4 月、南ア型が流行する南アフリカで 100% の感染予防効果を確認したと発表していたが、まだ小規模なデータに基づくものだった。 カタールでの南ア型への効果は従来型や英国型より少し低いが、6 割程度といわれるインフルエンザワクチンと比べ十分に高い。

ブラジル型についてワクチンの効果を大規模に調べたデータはまだない。 だが、南ア型と似た特徴を持つため、カタールの報告などからファイザー製ワクチンには一定の効果があると期待される。 モデルナ製ワクチンはファイザー製と非常によく似ているため、それぞれの変異ウイルスについてファイザー製と同様の効果があると考えられている。 一方、アストラゼネカ製は南ア型に対して効果が大きく下がるという報告もある。 ワクチン接種は変異型への感染による被害を防ぐだけでなく、ウイルスの流行を抑えることで新たな変異型の出現を阻止するという意義もある。 時間との闘いになっている接種の加速が求められる。 (nikkei = 5-29-21)

◇ ◇ ◇

ワクチン 2 回接種、インド変異株にも「有効」 英当局

英国のイングランド公衆衛生庁は 22 日、米ファイザー製と英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスのワクチンが、2 回接種することによって感染力が強いとみられているインド型の変異株にも「有効」とする検証結果を発表した。 ファイザー製は、2 回目の接種から 2 週間後の発症予防率が 88%、アストラゼネカ製も同 60% だった。 英国型の変異株に対しても、それぞれ予防率は 93% と 66% だったという。 いずれのワクチンも、1 回目の接種から 3 週間後の予防率はインド型の変異株で 33%、英国型で 50% にとどまったという。

ハンコック保健相は「変異株を含めたコロナ感染予防に、2 回目のワクチン接種が肝要であることは明らかだ」と強調。 英国内で 2 千万人以上が 2 回目の接種を終えて変異株への「重要な防御」を得たとして、残りの人々にも「順番が回ってきたら予約してほしい」と呼びかけた。 二つのワクチンで予防率に差が出たことについては、ファイザー製の接種が先行したこと、アストラゼネカ製の方が効果の最大化に要する時間が長いことなどが考えられるという。 調査は、インド型の変異株が確認されて以降、4 月 5 日 - 5 月 16 日に全世代を含めて実施されたという。 (ロンドン = 金成隆一、asahi = 5-24-21)


接種率 70% までコロナ収束せず、WHO 欧州事務局長

【コペンハーゲン/デンマーク】 世界保健機関 (WHO) 欧州地域事務局のハンス・クルーゲ事務局長は 28 日、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミック(世界的な大流行)は人口の 70% 以上がワクチン接種を終えるまで収束しないと警告し、欧州地域におけるワクチン接種のペースは「遅過ぎる」と批判した。 インタビューに応じたクルーゲ氏は AFP に対し、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックが終わったと思わないでほしい」として、各国政府とその国民はパンデミックについて楽観してはいけないと述べ、ワクチン接種率を上げる必要があると指摘した。

WHO 欧州地域事務局は、ロシアと中央アジア諸国の一部を含む 53 の国と地域を管轄している。 このうち、新型コロナウイルスワクチンの 1 回目の接種を受けた人は 26%。 AFP の集計によると、これまでに欧州連合 (EU) 内で少なくとも 1 回のワクチン接種を受けた人は総人口の 36.6% で、接種を完了した人は 16.9%。 クルーゲ氏の主な懸念の一つは、新たな変異株の感染力が強いことだという。 AFP の集計によると新規感染者数は 4 週連続で減少しているが、クルーゲ氏は、夏に向けて「人々が警戒を解くこと」が主な懸念事項だと語った。 (Camille Bas-Wohlert、AFP = 5-29-21)


コロナワクチン 1,000 万回突破でも見逃せない「接種後死亡」の衝撃

政府によると、26 日までに報告された総接種回数は計 1,059 万 5,100 回で、内訳は医療従事者向けが約 710 万回、高齢者向けが約 350 万回。 2 回打ち終えた人はそれぞれ約 280 万人、約 20 万人だった。 24 日からは自衛隊が東京都と大阪府に設置した大規模会場で接種が始まったほか、厚労省によると、27 日時点で宮城、群馬、愛知の 3 県でも大規模接種を開始。 菅政権が「1 日 100 万回接種」を掲げているのを受け、他の自治体でも大規模接種の準備が進んでいるが、改めて注意する必要があるのが、ワクチン接種による副反応だろう。

厚労省の「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」によると、医療機関などから報告された死亡事例は、2 月 17 日から 5 月 21 日までに計 85 件。 このうち、同部会は 5 月 16 日までに報告された 55 事例の評価を実施し、26 日に公表している。 いずれも「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」とされているのだが、各事例の詳細(いずれもファイザー製)を読むと内容は衝撃的だ。

インフルエンザ薬「タミフル」のような異常行動も

多くは 70 - 90 代の高齢者なのだが、中には若者も少なくない。 例えば、基礎疾患のなかった「26 歳の女性」は 3 月 19 日午後 2 時にワクチンを接種。 アナフィラキシーや体調変化もみられず、職場で普段通りに勤務していたが、同 23 日午前 11 時ごろ、脳出血などで死亡。 花粉症だった「37 歳の男性」は 4 月 5 日午後 6 時に 2 回目のワクチンを接種し、3 日後の 8 日朝に心肺停止となった。

特筆するべきは「25 歳の男性」の事例だ。 男性は、4 月 23 日午後 4 時にワクチンを接種。 25 日に友人と過ごしていると、立ち眩みや手の震えを覚えたために帰宅。 27 日に職場に出勤したのだが、言動に怪しいところがみられたという。 その時の男性の様子を報告した資料にはこうある。

「(男性は)終始落ち着かない様子。 問いかけに対しても空返事。 小声で 『ハイ、ハイ』、理解しているのか判断できない。」
「話しかけるが全て『ハイ』と返答。 (略)(男性は)言いたくない、ダメだ、ダメだ。 何、やべぇ、最悪、最高です。 楽しい、違う、、。 (略)誰かの声が聞こえるかと問うと、『ハイ』と。」

その後、男性は両親と一緒に車で職場から帰宅するのだが、帰途の高速道路で車から飛び降りて後続車に引かれ、救急搬送先の病院で死亡が確認された。 家族によると、男性は幼少期に発熱時の異動行動が認められたというのだが、まるでインフルエンザ薬「タミフル」でみられた異常行動と同じではないか。

他にも「47 歳の女性」が 4 月 27 日にワクチンを接種し、5 日後の 5 月 2 日早朝にトレイで心肺停止状態に。 「67 歳の男性」は 5 月 9 日にワクチンを接種し、10 日後の 19 日にテニスを楽しんでいる時に「卒倒」し、心肺停止となっている。

いずれもワクチン接種との因果関係は不明とはいえ、どう考えればいいのか。 医療ガバナンス研究所理事長で、内科医の上昌広氏がこう言う。

「高齢の人はともかく、若い人がワクチン接種後、比較的早い段階で亡くなっていることは注目するべきでしょう。 ワクチンの接種容量が多いほど、副反応は出やすいわけで、例えば体重が 90 キロを超えるような大柄な米国人と、小柄な日本人が同じ容量のワクチンを接種するのはどうなのか。 国はきちんと(リスクについて)アラート(警告)した方がいいと思います。」

ワクチンは決して「魔法の薬」ではないことを覚えておいた方がいい。 (日刊ゲンダイ = 5-29-21)

... - 10 - 11 - 12 - 13 - 14 - 15 - 16 - 17 - 18 - 19 - 20 - ...