... - 12 - 13 - 14 - 15 - 16 - 17 - 18 - 19 - 20 - 21 - 22

3 回目接種後に 2 人死亡、因果関係「評価できない」 … 厚労省が公表

厚生労働省は 21 日、新型コロナウイルスワクチンの 3 回目の追加接種後に 2 人が死亡したと公表した。 米ファイザー製と米モデルナ製を接種した各 1 人で、3 回目接種後の死亡例の公表は初めて。 同日に開かれた厚労省の専門家検討部会で報告した。 死亡した 2 人は、昨年 12 月 16 日にファイザー製の接種を受けた女性 (57) と、同 20 日にモデルナ製を接種した男性 (70)。

男性については、過去の病歴や薬の服用はなく、同 28 日に自宅で死亡しているのを発見された。 女性の詳細は不明。 いずれも、接種との因果関係は情報不足などで「評価できない」とされた。 1、2 回目と比べ、死亡例の発生頻度に大きな差はないという。 また、ファイザー製の 3 回目接種が計約 53 万回行われた 1 月 2 日までに、副反応が疑われる症状の報告は計 157 件あった。 この割合もこれまでと大きな変化はなく、同部会は、現時点で接種の継続に「重大な懸念は認められない」とした。 (yomiuri = 1-21-22)


3 回目ワクチン接種、オミクロン株に有効 「中和抗体」 2 週間 - 1 カ月で 100% に 神戸大調査

神戸大などは 18 日、新型コロナウイルスワクチンの 3 回目接種を終えた神戸大病院の医師 65 人を対象にした調査で、全員がオミクロン株に対しても感染や発症を抑える「中和抗体」を持っていたと明らかにした。 同株に対する 3 回目接種の効果確認は、欧米では示されていたが、国内では初めてという。 昨年 12 月、ワクチンの 3 回目を接種した 20 - 60 代の医師 65 人の血清を今月解析した。 オミクロン株に対する中和抗体の保有率は、2 回目接種の約 2 カ月後には 23%、約半年後にはわずか 5% だった。 第 5 波の主流だったデルタ株や従来株に対する同保有率に比べ、大きく下回っていた。

だが、3 回目接種から 2 週間 - 1 カ月後には、デルタ株や従来株と同様に 100% に上った。 中和抗体の量も、3 回目接種によって大幅に上昇した。 神戸大大学院の森康子・感染症センター長は「3 回目の接種がオミクロン株にこれだけ有効だというのは想像以上で驚いている。 できるだけ早く接種することが今の流行を抑える最大の鍵になる。」と述べた。

一方、神戸大と兵庫県などは、昨年 11 - 12 月に県内で健康診断を受けた 18 - 79 歳の計千人のうち、3.9% に新型コロナの感染歴を示す抗体があったと明らかにした。 同時期に判明していた感染者は県民の 1.45% 相当だったが、実際はその 2 倍以上が感染していた可能性がある。 年代別では 20 代が 10.6% で最も高かった。 昨年 8 月の前回調査では感染歴があるとされる割合は 2.1% で、第 5 波を経て 2 倍近くに増えた。 デルタ株に対する中和抗体の保有率は今回の調査でほぼ 8 割を占め、普及したワクチン接種が第 5 波収束に一定の効果があったとしている。 (井川朋宏、神戸新聞 =1-18-22)


米ファイザー、コロナ飲み薬を厚労省に承認申請 米メルク社製に続き

米製薬大手ファイザーは 14 日、新型コロナ用の飲み薬について、日本での製造販売承認を厚生労働省に申請したと発表した。 特例承認の制度に基づく早期の審査を求めるとしている。 承認されれば、軽症者向けとしては昨年 12 月から利用が始まっている米メルク社製に続いて、二つ目の経口治療薬となる。 申請した薬は米国での名称が「パクスロビド」で、昨年 12 月に米食品医薬品局 (FDA) の緊急使用許可を受けた。 ウイルスの増殖に必要な酵素の作用を阻害する新薬と、その効果を持続させる抗ヒト免疫不全ウイルス (HIV) の既存薬を組み合わせたものだ。

米メルク社製の「モルヌピラビル(販売名ラゲブリオ)」と同じく、重症化リスクの高い患者が対象になるとみられる。 日本を含む各国で実施された国際的な臨床試験(治験)では、発症から 5 日以内に投与した場合、偽薬を投与したグループに比べて、入院したり死亡したりするリスクを 88% 減少させたという。 感染が拡大しているオミクロン株への効果についてファイザーは「実験では、抗ウイルス活性を維持している」としている。 オミクロン株の感染が広がるなか、各国はパクスロビドの確保を急ぐ。 ファイザーは日本で承認された場合、200 万人分を供給することで昨年 12 月に日本政府と合意している。 (渡辺淳基、asahi = 1-14-22)


オミクロン株では死亡率が急減、4 分の 1 以下に 南アフリカで報告

新型コロナウイルスのオミクロン株による第 4 波を急速にピークアウトしつつある南アフリカ。 首都プレトリアにあるスティーブ・ビコ学術病院の入院患者を分析した研究チームは、第 4 波では過去の波に比べて重症化する割合が少ないことなどを指摘し、「オミクロンは、パンデミック(世界的流行)が終わり、エンデミック(地域的流行)へと導く前兆となるかもしれない」と主張した。 調査の対象は、第 4 波が始まっていた 11 月 14 日 - 12 月 16 日に入院した新型コロナの患者 466 人。 同院などの専門家による研究チームは重症化率などを分析し、デルタ株などによる過去 3 回の感染の波の患者 3,976 人と比較した。

この結果、入院患者が死亡した割合は過去の波の 21.3% に比べ、4.5% に急減。 入院した人のうち集中治療室 (ICU) に入る割合も 1% で、過去の波の 4.3% より低かった。 平均入院日数も 4.0 日で、過去の波の 8.8 日から半分以下に減った。 また、12 月 14、15 日にかけて入院していた 98 人について調べたところ、6 割以上が当初は新型コロナと無関係の病気や手術などを理由に入院していた。 この患者らは入院時の検査で新型コロナの陽性が確認されたという。 研究チームは「南アフリカではこれまでに観察されなかった現象で、オミクロン株への感染における無症状の多さを反映している可能性が高い」と指摘した。

第 4 波では感染者数の急増に比べて死者や重症者が少ない状況について、研究チームは「感染歴のある人やワクチンを接種した人の割合が高いため」と指摘。 オミクロン株そのものが弱毒化した可能性もあるが、この理論を裏付けるためにはさらなる研究が必要だとした。 プレトリアとその周辺では、第 4 波が始まって 5 週目には感染者も入院数も減少したことや、重症化率も低かったことなどを指摘。 この傾向が世界的にも広がれば、感染数の増加に比べて死亡率が低く推移する可能性が高いとした。 (ヨハネスブルク = 遠藤雄司、asahi = 1-8-22)


中国シノバック製ワクチン、オミクロンに低効果 = 査読前論文

中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物化学)製の新型コロナウイルスワクチンについて、2 回接種後にファイザー・ビオンテック製のワクチンでブースター接種(追加接種)を行っても、オミクロン変異株に対する免疫効果が低いとする研究結果が発表された。 研究結果を発表したのは米エール大学とドミニカ共和国の保健省などの研究者。 査読前の論文によると、シノバック製ワクチン 2 回とファイザー製ワクチン 1 回の接種で得られた免疫効果は、メッセンジャー RNA (mRNA) ワクチン 2 回の接種と同水準だった。

また、オミクロン株に対する抗体レベルは、従来株に比べ 6.3 倍低かった。 このほか、ドミニカ共和国で実施された調査では、シノバック製ワクチン 2 回の接種でオミクロン株に対する有意な中和効果はみられなかった。 (Reuters = 1-1-22)


メルク製のコロナ飲み薬を厚労省が特例承認 軽症者向け、国内初

厚生労働省は 24 日、新型コロナウイルスの飲み薬として開発された米メルク社の「モルヌピラビル」の国内での製造販売を特例承認した。 軽症者にも使える新型コロナの飲み薬は国内初。 政府は全国の指定の医療機関や薬局に 20 万人分を配送し、週明けに使えるようにする。 胎児への影響を考慮し、妊婦への使用は認められない。

モルヌピラビルは、細胞に感染したウイルスが増えるのを抑える効果が期待できる。 12 時間おきに 5 0日間、計 10 回服用する。 対象は、18 歳以上で、高齢や基礎疾患があるなど重症化リスクが高い軽症から中等症の患者。 発症から 5 日以内である必要がある。 医療機関で患者に服用してもらうほかに、外来での診療後に院内の薬局で処方したり、院外の薬局から自宅に配送して届けたりする。 往診にも対応する。 新型コロナの薬は国が費用をまかなうため、患者の自己負担はない。

同社によると、発症 5 日以内で、重症化するリスクが高い軽症から中等症の患者約 800 人が参加した臨床試験(治験)での中間結果では、偽薬を飲んだ患者に対し、この薬を飲んだ患者は入院や死亡するリスクが約 5 割下がった。 しかし、より規模の大きい、約 1,400 人が参加した最終解析では、入院や死亡のリスクは約 3 割の低下だった。

ファイザー社も

新たな変異ウイルスのオミクロン株はウイルスが細胞に感染するときに重要な「スパイクたんぱく質」に多くの変異があり、感染力を高めていると考えられている。 モルヌピラビルはウイルスが細胞に感染した後に増殖を抑えるはたらきがあることから、オミクロン株の影響は小さいとみられている。 海外では 11 月 4 日に英国が世界で初めて承認。 米国では 12 月 23 日に緊急使用許可が出た。 日本ではメルクが 3 日、厚労省に承認申請していた。

新型コロナの軽症者にも使える薬は、ウイルスの感染を防ぐ作用がある中和抗体薬の「ロナプリーブ」や「ソトロビマブ」があるが、いずれも点滴や複数回の注射が必要だった。 政府は使いやすい飲み薬があれば重症者を減らせると期待し、「国民が安心して暮らせるようになるための切り札」と位置づける。 メルク社から計 160 万人分を調達する契約を結んだ。

新型コロナの飲み薬では、米ファイザー社も軽症者が使える「パクスロビド」を開発。 米国で緊急使用許可が出ており、近く、日本の厚労省にも承認申請される見通し。 同社は、重症化リスクのある人が入院するリスクを約 9 割下げたという治験結果を発表している。 政府は 200 万人分の供給を受ける基本合意を同社としており、承認申請があれば、速やかに審査することにしている。 (市野塊、asahi = 12-24-21)

◇ ◇ ◇

メルクのコロナ飲み薬、近く正式許可へ 臨床試験で入院死亡リスク減

米製薬大手メルクが開発した新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」について、米食品医薬品局 (FDA) の諮問委員会は 30 日、重症化するリスクが高い軽症や中等症の患者を対象に緊急使用許可を出すよう勧告した。 FDA はこの勧告を尊重する可能性が高く、近く正式な許可を出すとみられる。 モルヌピラビルはウイルスの増殖を防ぐことを狙った薬で、12 時間おきに 5 日間、計 10 回服用する。 もともとはインフルエンザ治療の候補薬だった。

臨床試験は高齢や肥満、糖尿病といった重症化のリスクが高く、ワクチンを接種していない軽症や中等症の患者が対象だった。 中間結果では入院したり、死亡したりするリスクを半減させることができた。 ただ、約 1,500 人をモルヌピラビルと偽薬をのむ二つのグループに分けて検証した最終的な解析結果では、入院したり、死亡したりするリスクは約 3 割の減少にとどまった。 FDA の諮問委では、13 人の委員が重症化するリスクが高い人への緊急使用許可に賛成、10 人が反対した。 反対した委員からは、薬によってウイルスに変異が生じることのリスクを懸念する声が相次いだ。 (ワシントン = 合田禄、asahi = 12-1-21)

前 報 (10-11-21)


米、コロナ飲み薬に緊急使用許可 FDA

米食品医薬品局 (FDA) は 22 日、米製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスの飲み薬に緊急使用許可を出した。 臨床試験では重症化しやすい人の入院のリスクを約 9 割減らせたとする結果が出ていて、オミクロン株が流行するなか、重症化する人を減らす切り札として期待されている。 この飲み薬は、新しい抗ウイルス薬を 2 錠、すでにある抗 HIV 薬を 1 錠の計 3 錠を組み合わせた「パクスロビド」。 1 日に 2 回、5 日間服用する。 新型コロナの陽性が出た、重症化しやすいリスクがある 12 歳以上が対象。 医師らが処方し、症状が出てから 5 日以内に服用する。(ワシントン、asahi = 12-23-21)


田辺三菱のコロナワクチン、カナダで承認申請 植物由来は世界初

田辺三菱製薬は 17 日、カナダの子会社が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、現地で承認申請したと発表した。 2021 年度中の供給開始を目指す。 日本でも臨床試験(治験)を実施中で、来年 3 月にも厚生労働省に承認申請し、22 年度中の実用化を目指すという。 北米などで行った最終治験の中間解析の結果、発症予防効果は 71% だった。 変異株のデルタ株やガンマ株への有効性も確認された。 オミクロン株に対応するための開発も実施予定だという。 2 回接種後に 38 度以上の発熱があった人は 10% 未満で、ほかに重大な副反応は確認されていない。

日本でも 10 月に治験を始めた。 海外で行った大規模治験のデータと合わせて来春に承認申請する予定。 国内では現在、3 社のワクチンが承認され、ほか 2 社が承認申請中となっている。 同社のワクチンはウイルスの構造を模倣した「VLP (ウイルス様粒子)」というタイプで、タバコ属の植物の葉の細胞にウイルスの遺伝子を組み込んで、VLP を生成する仕組み。 植物由来のワクチンが実用化されれば、ヒト向けでは世界で初めてとなる。 (田中奏子、asahi = 12-17-21)


ブースター接種でオミクロン株の抗体 25 倍 2 回でも重症化を防ぐ調査結果も

オミクロン株の登場を受けて、岸田文雄首相はワクチンのブースター接種の前倒しを表明した。 3 回目の接種で変異株にどれだけの効果が期待できるのか。

懸念されているのは、変異株に対してワクチンの効果がどう変化するかだ。 東京都医学総合研究所が都立病院の 1,139 人を分析した際には、従来株に対する、感染を防ぐ効果のある「中和抗体」の量「中和抗体価」を調べた。 ファイザー製もモデルナ製も従来株に対する中和抗体ができるように設計されているからだ。 一方、研究チームは変異株に対するワクチンの効果を調べるため、別の 6 人の血液を使い、従来株とデルタ株に対する中和抗体価を調べた。接種完了 2 - 3 週間後でも、接種 7 カ月後でも、従来株に比べ、デルタ株に対する中和抗体価は約 10 分の 1 だった。

「デルタ株でもこれだけ中和抗体価が下がるので、ワクチンが標的とするウイルス表面のスパイクたんぱく質にデルタ株よりもずっと多くの変異が入っているオミクロン株に対する中和抗体価はさらに下がる可能性が高いです。(東京都医学総合研究所の小原道法・特別客員研究員)」 南アフリカのアフリカ・ヘルス・リサーチ研究所は 12 月 7 日、ファイザー製のワクチンの接種を完了した 12 人の血液を使い、従来株とオミクロン株に対する中和抗体価を比較した結果を公表した。

アルファ株の前に流行していた従来株に対する中和抗体価が 1,321 だったのに対し、オミクロン株では 32 と、40 分の 1 未満だった。 ただし、12 人のうち感染経験者 6 人の中和抗体価は感染したことのない 6 人よりも高く、研究チームは「オミクロン株に対しても重症化を防ぐことができるとみられる」としている。 ファイザー社は 8 日、オミクロン株に対するワクチンの効果に関する実験結果を発表した。 ブースター接種により、オミクロン株に対する中和抗体価が 2 回接種に比べて 25 倍増えるという。 その結果、2 回接種で従来株に対して得られた中和抗体価とほぼ同水準になり、従来株に対するのと同じぐらいの効果が期待できるという。

重症化を防げるのでは

また、免疫細胞が認識するスパイクたんぱく質の部位の 80% は、オミクロン株に生じている変異の影響を受けないという。 このため同社は、「2 回の接種でも、重症化を防ぐ効果は得られるのではないか」としている。 デルタ株に対しては、ブースター接種により、効果が回復するとわかっている。 イスラエルの研究チームが約 114 万人を調べたところ、ブースター接種終了から 12 日以上経った人は、ブースター接種をしていない人に比べて感染率が約 11 分の 1、重症化率は約 20 分の 1 だった。

3 月末に国民の半数以上がワクチン接種を完了したイスラエルを始め、複数の国で今年夏以降、次々とブースター接種が進んでいる。 Our World in Data によると、12 月 5 日現在、100 人当たりのブースター接種を終えた人数が多いのはチリ(46.77 人)やイスラエル(44.13 人)、ウルグアイ(40.59 人)、英国(30.17 人)などだ。 国内のブースター接種の具体的なスケジュールは不明だ。 岸田文雄首相が「前倒し」を表明した翌日、後藤茂之厚生労働相は閣議後会見でこう述べた。

「全国民を対象に、前倒しを一律に行うことは困難。」

ワクチンがいつ、どの程度輸入できるかまだわからないからだ。 ブースター接種は今のところ最初の接種の際とは異なり、高齢者優先になっていない。 オミクロン株の重症化率や感染性などはまだ不透明だが、国内のブースター接種の行方も不透明だ。 (科学ジャーナリスト・大岩ゆり、AERA dot. = 12-15-21)


WHO、免疫不全・不活化ワクチン接種者にブースター接種を「推奨」

新型コロナウイルスワクチンの追加接種(ブースター)について、世界保健機関 (WHO) のワクチン専門家でつくる諮問グループは 9 日、免疫不全の人や不活化ワクチンを打った人に対して推奨すると発表した。

ワクチン接種を巡っては、高所得国で追加接種が広がる一方、供給が不十分な低中所得国では未接種者が多い。 対象を限定することで、「ワクチン格差」の拡大を抑えるのが狙いだ。 不活化ワクチンは保管が容易なため、低温管理が難しい低中所得国での使用に適しているとされる。 代表的なものに、中国のシノバック製とシノファーム製や、インドで開発された「コバクシン」がある。 ただ、遺伝物質「m(メッセンジャー)RNA」を使った米ファイザー製や米モデルナ製のワクチンと比べて、有効性が低いとされている。 (ローマ = 大室一也、asahi = 12-11-21)


オミクロン株、ブースター接種が有症状感染 70 - 75% 防ぐ - 英調査

→ オミクロン株への効果、2 回接種ではデルタ株に比べはるかに低い
→ 英国は 12 月半ばまでにオミクロン株の感染が約半数を占める見通し

急速に感染を広げている新型コロナウイルスのオミクロン変異株について、ワクチンのブースター(追加免疫)接種で有症状感染を最高 75% 防げるようになると、英保健当局が暫定データを基に明らかにした。 英当局はアストラゼネカ、ファイザー・ビオンテックが開発した両ワクチンの効果を調査。 この暫定結果によると、2 回の接種後でオミクロン株の有症状感染を防ぐ効果はデルタ株と比べてはるかに低いが、ブースターを接種すれば接種後初期には有症状感染を 70 - 75% 防げる水準に効果が高まる。 (James Paton、Suzi Ring、Bloomberg = 12-11-21)


日本人 6 割持つ白血球の型、「ファクター X」か 対コロナ

理化学研究所は日本人の約 6 割にある白血球の型を持つ人では、風邪の原因となる季節性のコロナウイルスに対する免疫細胞が新型コロナウイルスに対しても反応することをみつけた。 細胞実験レベルだが、コロナウイルスへの交差免疫があり、日本人で新型コロナの重症者などが少ない要因「ファクター X」の一つである可能性があるという。

成果は英科学誌に掲載された。 ウイルスが体内に侵入すると、抗体ができるだけでなく様々な免疫反応が起こる。 免疫細胞の一つ「キラー T 細胞」はウイルスに感染した細胞を探して殺す。 キラー T 細胞はウイルスのたんぱく質の断片「ペプチド」を認識して活性化する。 ペプチドには様々な種類があり、白血球の型によってキラー T 細胞が反応するペプチドが異なることが知られている。

研究チームは日本人の約 6 割が持つ「A24」という白血球の型に注目した。 このタイプの人の血液の細胞を取り出し、ウイルスのスパイクたんぱく質の一部であるペプチド「QYI」を投与すると、キラー T 細胞が活発になり増殖することをみつけた。 QYI で働きが活発になったキラー T 細胞に、季節性コロナウイルスと新型コロナウイルスのペプチドをそれぞれ加える細胞実験をした。キラーT細胞はどちらにも同じように働いた。季節性コロナに感染した経験があれば、交差免疫として新型コロナでも働く可能性が確認できたという。

日本は新型コロナでの重症化や死者が少ないという見方があり、その要因を探す研究が進んでいる。 A24 の白血球の型は欧米人では 1 - 2 割程度しか持たない。 理研の藤井真一郎チームリーダーは「ファクター X の一つであるといえる状況だろう」と話す。 ただ今回の実験は細胞実験にすぎない。 実際に A24 を持った人の感染時の状況などを詳細に調べる必要がある。 (nikkei = 12-10-21)


コロナ抗体薬ソトロビマブ「オミクロン株にも有効」 英 GSK 発表

英製薬大手グラクソ・スミスクライン (GSK) は 7 日、新型コロナウイルス感染症の治療薬「ソトロビマブ」が、変異株「オミクロン株」にも有効だと発表した。 ソトロビマブは、高齢者や基礎疾患があり、重症化リスクが高い軽症や中等症の患者の治療に使える点滴薬として、日本では 9 月に国内での製造販売が特例承認された。

GSK の発表によると、オミクロン株の疑似ウイルスを使った試験で、ウイルスが細胞に感染するのを妨げる中和抗体が、有効に作用していることを確認できたという。 GSK の研究開発トップのハル・バロン博士は声明で、「試験データは、この中和抗体がオミクロン株を含み、懸念される変異株全てに効果があると示している」と述べた。 治験では、ソトロビマブを使うことで、有効成分を含まない偽薬の場合と比べて、死亡や入院の割合が 79% 少なくなったという。 (ロンドン = 和気真也、asahi = 12-8-21)


塩野義の開発中ワクチンに有効性、2 回接種で回復者と同等の抗体量

塩野義製薬は 4 日、開発中の新型コロナウイルスワクチンを 2 回接種した場合、感染を防ぐ「中和抗体」の量は、新型コロナに感染して回復した人と同程度となり、一定の有効性があったとする初期段階の治験の中間集計を明らかにした。 長野県で開催中の日本ワクチン学会で、担当者がデータを公表した。 同社によると、20 歳以上の男女 60 人を、〈1〉 高用量のワクチンを接種、〈2〉 低用量を接種、〈3〉 偽薬を接種 - - の三つのグループに分け、2 回目から 4 週間後までの血液中の中和抗体の推移を調べた。

ワクチンを接種した 2 グループでは約 2 週間後までに、新型コロナに感染して回復した人をやや上回る中和抗体が確認された。高用量のグループは、4 週間後も回復者と同程度の量が維持されていたという。 同社のワクチンは新型コロナのたんぱく質の一部を人工合成して主成分としており、3 週間間隔で 2 回接種する。 現在は中間段階の治験中で、年度内の供給開始を目指している。

同学会ではこの日、国内で新型コロナワクチンを開発中の第一三共、KM バイオロジクス、アンジェスも進行状況を発表した。 各社は新たに出現した「オミクロン株」を念頭に、変異株に対応したワクチン開発を検討する考えを示した。 (yomiuri = 12-4-21)


米紙「抗体カクテル薬オミクロン株に有効性失う」

|アメリカのメディアは新型コロナの抗体カクテル薬について、オミクロン株に対して有効性を失う恐れがあると報じました。 ウォール・ストリート・ジャーナルによりますと、30 日、アメリカのリジェネロン社は自社が開発した抗体カクテル薬について、「予備試験の結果、オミクロン株への有効性を失うと話した」と報じました。 また、別の抗体カクテル薬を開発したイーライ・リリー社は、オミクロン株に対する試験結果をまだ公表していませんが、「それほど効果的ではない」という外部の研究者の見方を紹介しています。 抗体カクテル薬はウイルスの表面に付着して細胞への侵入を防ぐ薬で、ウイルスのスパイク部分に変異があると効果が弱まるとみられています。 (テレ朝 = 12-1-21)


既存ワクチン効果「低下するだろう」 モデルナ CEO、オミクロン株

南アフリカで見つかった新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」について、米モデルナのバンセル最高経営責任者 (CEO) が既存のワクチンの効果が低下するとの見通しを明らかにした。 英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が 30 日に報じた。 報道によると、バンセル氏は、ウイルスの変異が感染にかかわる部位「スパイクたんぱく質」に多く見られることや、南アフリカで急速に広まっていることを指摘。 既存のワクチンについて「(効果は)大きく低下するだろう」、「デルタ株と同じレベルの効果が得られることはないと思う」と述べた。

バンセル氏が話した科学者も懸念を示していることも根拠に挙げた。 一方で、「どの程度(効果が下がる)かは分からず、データを待つ必要がある」とも話した。 バンセル氏の発言が報じられたことを受け、上昇していた日経平均株価は急落。 前日より 462 円 16 銭 (1.63%) 安い 2 万 7,821 円 76 銭で取引を終えた。 日経平均が 2 万 8,000 円台を割り込むのは約 2 カ月ぶり。

バンセル氏は報道で、ワクチンは来年には改良する必要があるかもしれないとしたうえで、オミクロン株向けの新しいワクチンを大規模に製造するには数カ月かかるとの見通しも明らかにした。 ワクチンをつくる製薬各社は、既存ワクチンのオミクロン株に対する効果を調べている。 モデルナは数週間以内に、ファイザーも 2 週間以内にデータが得られる見込みだ。 (ニューヨーク = 真海喬生、asahi = 11-30-21)


中国に配慮してオミクロン株に? WHO が 2 文字飛ばしの理由を説明

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」について、世界保健機関 (WHO) は 27 日、命名の理由を明らかにした。 WHO はギリシャ文字で変異株に名前をつけ、直近で用いた文字は「ミュー (μ)」だったが、アルファベット順で続く「ニュー (ν)」、「クサイ (ξ)」を飛ばして「オミクロン (ο)」を使ったのは、発音が似た英単語との混同や人名を避けるためだと説明した。 WHO が 26 日、新しい変異株を「オミクロン株」と命名したと発表すると、ソーシャルメディアなどで 2 文字を飛ばしたことが話題になった。

「クサイ」は英語で「xi」と表記する。 中国の習近平(シーチンピン)国家主席の「習」の字も英語で「xi」と記されることから、WHO が中国に配慮し「クサイ」を飛ばしたのではないかといった見方が出ていた。 WHO は、「ニュー(英語表記 nu)」は英単語の「new」と混同しやすいと説明。 「xi」は姓として使われ、WHO のガイドラインは新しい感染症に名前をつけるときに地名や人名を疾患名に含めてはならないとしているため、「クサイ」を避けたとしている。

新型コロナの変異株は、確認された国や地域の名前を使って「英国株」、「ブラジル株」などと呼ばれていたが、WHO は差別や偏見を避けようと 5 月末以降、ギリシャ語のアルファベット(24 文字)を 1 番目の「アルファ (α)」から順に用い、「懸念される変異株 (VOC)」や「注目すべき変異株 (VOI)」などに指定した変異株の名前をつけている。 (ローマ = 大室一也、asahi = 11-28-21)


南アで確認、変異株「B.1.1.529」 感染力は? ワクチンは?

南アフリカなどで新たに確認された変異株「B.1.1.529」は、感染力を左右する「スパイクたんぱく質」に多くの変異を持ち、新たな脅威になる可能性があるとにわかに注目されている。 だが、確認されている感染者はまだ少なく、感染力やワクチンが効くのかどうかなどの情報も非常に乏しい状況だ。

B.1.1.529 の感染者は、南アフリカと同国に隣接するボツワナのほか、香港でも南アフリカからの旅行者で確認されている。 この変異株の特徴は、スパイクたんぱく質にみられる変異の多さだ。 欧州疾病予防管理センター (ECDC) の資料によると、30 以上も確認され、アルファ株などで感染力を高める働きがあったとみられている「N501Y」もある。 スパイクは、ウイルスがヒトの細胞に侵入する道具だ。 変異の入り方によっては、効率的に侵入できるようになり、結果的に感染力を高める。

スパイクの中でも、細胞の表面の分子とくっつく部分が特に重要になるが、英 BBC は、デルタ株ではこの部分の変異が二つだったが、今回の変異株は 10 個ある点に言及している。 スパイクの変異によって、ワクチンが効きにくくなる恐れもある。 ワクチンを接種すると、スパイクを攻撃する抗体や免疫細胞が体内にできる。 ただ、現状のワクチンは、中国・武漢で流行した当初のウイルスに基づいてつくられている。 免疫にとって敵の姿が変われば、攻撃しにくくなることが起こりえる。

南アフリカではこの夏以降、デルタ株が蔓延してきた。 まだデルタ株が残っている状況で、今回の変異株が拡大しだしている点も懸念点になっている。 しかし、確定的なことが言える段階ではない。 変異の数が多い少ないというだけで、感染力やワクチンの効果が変わるわけではない。 どのような変異が入るかが重要になる。 また、南アフリカでは夏に 1 日 1 万 - 2 万人の感染者がいたが、最近では数百人に下がっていた。 デルタ株を押しのけて、今回の変異株が広がっているとは必ずしも言えない。 同国でワクチン接種が完了した人は約 24% だ。

変異株の判定には、感染しているかどうかを調べる PCR 検査などとは別に、遺伝情報を詳しく調べる必要がある。 費用と時間がかかり、変異株の検査は数が限られている。 このため、今回の変異株が実際に現在、どの程度広がっているのかも正確にはわかっていない。 世界保健機関 (WHO) は、感染力が上がったり、ワクチンや薬の効果が落ちたりする変異株を「懸念される変異株 (VOC)」と名付け、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4株が現在指定されている。 VOC までの脅威はないものは「注目すべき変異株 (VOI)」とし、いまはラムダとミューの 2 株が指定されている。

VOI の指定条件は、(1) ウイルスの性質(感染力など)を変える可能性のある変異があること、(2) 実際に複数の国で集団感染などが報告されること、の二つだ。 さらに WHO は「監視下の変異株」という分類も設け、B.1.1.529 も 24 日付で指定されている。 いずれも随時、流行状況や感染力などが評価されて、指定が見直される。 実際、VOI に一時指定されたイータ、イオタ、カッパは警戒度が下がり、9 月に、リストからはずれた。 一方、欧州疾病予防管理センターは 25 日までに独自に B.1.1.529 を VOI に指定している。 (阿部彰芳、asahi = 11-26-21)


意外? ワクチン原料 … 日本の "醤油メーカー" が製造

来月始まる 3 回目のワクチン接種に向け、接種券の発送が始まっています。 世界中で接種されるワクチンの原料を、食卓には欠かせない調味料を作る日本企業が支えています。

ワクチン原料を「ヤマサ醤油」が製造

神戸市健康局ワクチン接種対策室・山本圭一担当部長 : 「2 回目接種をされた約 1 万 5,500 人の方宛に、接種券を発送した。 神戸市としては、安全かつ迅速に追加接種、3 回目を皆さんに受けて頂けるように努めたい。」

自治体で進む、3 回目のワクチン接種の準備。 国内で主に接種されるのは mRNA ワクチンと呼ばれる、ファイザー社とモデルナ社のワクチンですが、実はそこに、日本の老舗企業「ヤマサ醤油」が開発した原材料が使われています。 創業 300 年以上のヤマサ醤油。 この老舗企業が、ワクチンに欠かせない重要な原料を製造しているのです。

「ヤマサ醤油」医薬・化成品事業部、石毛和也室長 : 「『シュードウリジン』と呼ばれる化合物です。」

その原料が、白い粉状の物質「シュードウリジン」。 一体、どんな役割を果たしているのでしょうか? 人工複製したウイルスの mRNA を体内に入れると、炎症反応が起きていました。 しかし、シュードウリジンに置き換えた mRNA の場合は、炎症反応が起きず、抗体が作られるのです。 では、なぜ、醤油メーカーのヤマサ醤油が、新型コロナワクチンのスピード開発につながる鍵となった原料の製造を行っているのでしょうか?

石毛和也室長 : 「我々元々、醤油メーカーですから、"うまみ" ですね。 "うまみ" に対する思いというのは、古くからあったんだと思います。 うま味調味料というものも開発して、そこから広げてきたというのが経緯ですね。」

カツオ節やシイタケのうまみ成分など、長年「化合物」について研究を続けてきたヤマサ醤油。 その過程で製造されたのが、シュードウリジンでした。 mRNA の研究段階から使われていて、ワクチンの開発が始まって以降も、原料として使用され続けているのです。

石毛和也室長 : 「大量に高品質なものということになりますと、世界でもごく限られた数社になると思います。 誇らしい気持ちもありながらも、高品質のものを大量に作らなければならないということで、責任感のようなものは非常に強く感じます。」

千葉県銚子市の工場は現在、フル稼働。 今年 5 月には、およそ 30 億円をかけた新工場建設を発表しています。  新型コロナワクチンを支える日本企業は他にもあります。 素材メーカーの AGC は、ファイザー製ワクチンの原料の製造を請け負っています。 (テレ朝 = 11-23-21)


コロナ検査、5 分で高精度 川崎重工はロボで大量処理

新型コロナウイルス対策と経済活動を両立する「ウィズコロナ」社会に向けたテクノロジーの開発が進む。 検査では、大量の自動処理や診療所に適した技術がそれぞれ登場。 川崎重工業は PCR 検査を自動でするロボットの検査数を年内にも 2 倍以上に増やせる体制を整えた。 拡充が進まないという課題解決に向けて貢献が期待される。 コロナ禍前の訪日客のにぎわいには遠い 9 月の関西国際空港。 空港内に置かれた全長 10 メートル超のコンテナの中で、13 台のアーム型ロボットがせわしなく動き始めた。 自動制御のロボットたちが手掛けているのが、空港の利用客の PCR 検査だ。

川重や検査機器大手のシスメックスなどが開発した検査システムは、半導体や自動車製造でも使われる産業用ロボットを利用した。 検体を投入すれば自動で測定結果まで出る。 検体容器の蓋の開栓や検体からの遺伝子の取り出しなど、一連の検査工程を自動で処理する。 1 回あたりの動作の誤差は 20 マイクロ(マイクロは 100 万分の 1)メートル以内で、人による検査よりもミスが起きにくいという。 検査能力は稼働状況にもよるが 1 日あたり数千件ほどで、3 時間超かかる検査工程が約 80 分になる。 関空のほか、シスメックスが運営する神戸市の PCR 検査場でも同システムを 9 月に導入した。 検査能力は従来の 1 日 500 件から 1,500 件と 3 倍に増えた。

足元ではコロナの感染状況は落ち着いているが、次の流行がいつ訪れるかは分からない。 川重は検査数の拡充に向け準備を進めている。 複数の検体を同時に調べる「プール方式」で検査できるようにシステムを改良できるようにした。 もし年末に感染者数が急増しても、すぐに検査数を引き上げられるという。 PCR 事業総括部の久保田哲也氏は「陽性率にもよるが単純計算で検査能力は 5 倍、少なくとも倍増できる」と力を込める。 感染症対策と経済の両立に向けた検査の問題はまずアクセスのしやすさだ。 かかりつけ医の診療所などですぐに PCR 検査などの信頼性の高い結果が出れば、感染拡大を抑えられる。 今後実用化が期待される飲み薬で、すぐに治療できるようにもなる。

現状の検査では PCR 検査の精度が高く、感度は 7 割ほどといわれる。 ただウイルスの RNA の精製や複製に時間がかかることや、医療従事者の感染リスクなどが課題だ。 ウイルスのたんぱく質を調べる抗原検査は、短時間で調べられるものの精度にばらつきがある。 短時間で高精度の新たな手法が求められている。

診療所に向けた新技術の実用化はもうすぐだ。 大阪大学発スタートアップのアイポア(東京・渋谷)は、人工知能 (AI) を使い、唾液から 5 分で感染を判別できる研究用検査キットの販売を 2020 年 10 月から始めた。 半導体チップに唾液を入れて調べる。 ウイルスの種類によって電流の流れ方が異なることを利用して新型コロナへの感染を見分けるという。

検査結果は PCR 検査と 90% 以上一致しており、実用化レベルに達しているという。 同社は患者の診断やスクリーニングなどに用途を広げるため、医療機器としての承認を目指す。 現状の検査コストが数万円というのが課題だ。 創業者で取締役でもある阪大の谷口正輝教授は「半導体チップの大量生産ができればコストも下がる。 将来は 1 回の検査を数千円で実現したい。」と話す。

PCR 検査と同等以上の精度で 5 分ですむ技術も登場した。 理化学研究所は検体を入れてから 5 分以内で結果が出る検査機器を開発した。 机に載る大きさで、検体をいれれば自動で検査結果がでる。 シスメックスに技術移転し、22 年度にも実用化する。 理研の渡辺力也主任研究員は「PCR 検査と同等以上の精度になる」という。 表面に微小な試験管を敷き詰めたプラスチック製チップを使う。 表面に検体と試薬を入れると、ウイルスの有無を蛍光で判別できる仕組みだ。 検査にかかる費用は PCR 検査と同等以下になるという。 渡辺主任研究員は「地域の診療所や人が集まる大規模施設に置けば、気軽に検査ができるようになる」と期待する。

課題は自宅で簡単に正確に調べられる検査キットの実現だ。 厚生労働省は 9 月、医療用として承認された抗原検査キットの薬局での販売を解禁した。 経済活動の正常化に向けた検査ニーズに応える狙いだ。 より高精度の半導体を使った検査キットが診療所などで使われて信頼性が高まれば、消費者が購入して利用できる道が開けるかもしれない。

1,000 人に 1 件体制、整備遅れ 受けやすさの改善課題

日本の検査体制の整備は遅れている。 英オックスフォード大学の研究者らでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、日本で感染者数が多かった 8 月下旬の 1 日あたりの検査数(7 日移動平均)は人口 1,000 人あたり約 1 件にとどまった。 ほとんど横ばいの状況で拡充が進んでいない。 同期間に 1 日あたりの新規感染者数が日本と比較的近いフランスでは 10 件超にもなる。 シンガポールは各家庭に検査キットを無料配布するなど検査に力を入れており、8 件超で推移した。 厚生労働省によると、現状の PCR 検査の能力は 1 日約 35 万件、このうち主に自費検査となる民間検査会社は 10 万件ほどを占める。

長崎大大学院の柳原克紀教授(臨床検査医学)は「経済活動を安心して再開させるため、引き続き検査能力を増やすことが必要だ」と指摘する。 検査サービスを手掛ける企業は増えている。 東洋紡は、富山大学と新型コロナウイルスに反応する抗体を開発、これを利用した抗原検査キットを発売した。 国が検査キットとして承認した抗原検査や PCR 検査などの「体外診断用医薬品」は 70 種類を超えている。

経済活動を活発にするには、消費者が日常生活で利用しやすいように検査キットを入手できる環境を整えるとともに、信頼性の高い検査キットを選別できるようにする必要もある。 検査キットを巡るトラブルも相次いでおり、消費者庁は国が承認した体外診断用医薬品を選ぶよう呼びかけている。 抗原検査キットはネット販売の解禁の是非も議論されている。 さまざまな場所で使いやすい検査を充実させる必要がある。 (落合修平、張耀宇、北川舞、福岡幸太郎、nikkei = 11-18-21)

... - 12 - 13 - 14 - 15 - 16 - 17 - 18 - 19 - 20 - 21 - 22