カラフルな幾何学模様の大阪市中央公会堂 光のルネサンス開幕

大阪・中之島エリアを光で彩るイベント「OSAKA 光のルネサンス 2023」が 14 日、始まった。 1918 年開館で国指定重要文化財の大阪市中央公会堂では、プロジェクションマッピングが壁面に投影された。 プロジェクションマッピングは、デジタル技術を用いたアートイベントを各地で開催している「NAKED(東京都渋谷区)」が制作。 企画と構成には大阪芸術大学の学生も参加した。

公会堂の東側壁面にはカラフルな幾何学模様など、約 7 分の映像が音楽とともに投影された。 観客らはスマートフォンで撮影するなどして楽しんでいた。 近隣の中之島公園では、雪だるまをモチーフにした約 10 メートルのバルーン人形や、公園の一部をイルミネーションで飾るプログラムなども同時に開催されている。 イベントは 25 日まで。 公会堂壁面への映像の投影は、午後 5 時から 9 時まで 15 分間隔で行われる。 観覧無料。 (田辺拓也、asahi = 12-14-23)


北野天満宮の名刀「鬼切丸」、刀剣ファン後押し
 CF は目標 2 倍超え

北野天満宮(京都市上京区)が所蔵する太刀「鬼切丸(別名髭切「ひげきり」、国重要文化財)」の外装「拵(こしら)え」を新たに制作するプロジェクトが始まった。 1,500 万円の費用を募るクラウドファンディング (CF) を 11 月末に始めたところ、刀剣ファンの後押しもあって、すでに 3,300 万円(12 月 8 日時点)が集まっている。 鬼切丸は平安時代の太刀で、北野天満宮が所蔵する約 100 振りの中で最も古い。 武将・渡辺綱が自分を連れ去ろうとした鬼の腕をこの刀で切ったという伝説から鬼切丸と呼ばれている。

同天満宮によると、源頼朝や新田義貞らの手を経て、最上家の家宝として受け継がれてきたという。 明治時代に最上家の手を離れると、当時の滋賀県令の呼びかけで北野天満宮に奉納された。 刀剣ブームのきっかけとなったオンラインゲーム「刀剣乱舞」には鬼切丸をモデルにしたキャラクターがおり、北野天満宮が所蔵する刀への関心も高まっている。 刀身を納める鞘(さや)や握る部分の柄(つか)、鍔(つば)などの拵えは鬼切丸では失われており、25 年に 1 度の大祭「半萬燈祭(2027 年)」に向けて、新たな拵えを制作することにした。

東川楠彦総務部長は「北野天満宮では、大祭の度に御神宝を未来につなぐ活動をしてきた。 昨今は、特に若い世代を中心に刀への人気が高まっている。 伝統と時代の流れを融合させて、新たな拵えをつくり、祭りで奉納することにした」と話す。 大祭での拵えの奉納は、江戸時代の加賀藩前田家など、古くから行われてきたという。 北野天満宮や京都女子大学(京都市東山区)、金工、木工、漆など 18 人の工芸作家が参画する「KOUGEI Next」が実行委員会を作り、現代的な「令和版」の拵えを目指す。

京都女子大学生活造形学科の学生が前崎信也教授(工芸文化史)の指導のもと、クラウドファンディングの実務や SNS での情報発信などをする。 制作を担う「KOUGEI Next」の総合プロデューサーを務める江口哲平さんは「拵えに使う金属は、パソコンやスマホからリサイクルした『都市鉱山』由来のものを使いたい。 現在と過去を融合して歴史に残るものを作る試みになる」と話した。 クラウドファンディング の受け付けは来年 1 月 25 日まで。 2 月から制作を始め、26 年春の完成を目指す。 (西田健作、asahi = 12-10-23)


USJ の新エリア名「ドンキーコング・カントリー」に 24 年春開業

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)は 5 日、任天堂のゲームキャラクター「ドンキーコング」をテーマにした新エリアについて、2024 年春に開業すると発表した。 名称は「ドンキーコング・カントリー」。 拡張工事中の「スーパー・ニンテンドー・ワールド」内につくる。 新エリアは、ゲームでおなじみのトロッコに乗ってレールを走るような、ライドアトラクションを楽しめるのが目玉だ。ドンキーコングたちが暮らすジャングルの風景も再現する。

ワールドは建設費 600 億円以上をかけて 21 年 3 月に開業。 マリオカートを楽しめるアトラクションやキャラクターの世界観に合わせたレストランなどがある。 今回、新エリア拡張の事業費は公表していない。 ワールドの敷地面積は 1.7 倍に広がる。 USJ を運営する「ユー・エス・ジェイ(同市)」のボニエ社長は「新エリアのクオリティーには絶大な自信を持っている。 皆様にスケールアップした体験をお届けできる日が今から楽しみです。」と話した。 (森下友貴、asahi = 12-5-23)


京の師走の風物詩「花街総見」 芸妓や舞妓が團十郎の歌舞伎を観劇

歌舞伎の劇場「南座(京都市東山区)」で 4 日、京都に五つある花街(かがい)ごとに芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)が「吉例顔見世(きちれいかおみせ)興行」をそろって観劇する「花街総見(かがいそうけん)」が始まった。 舞踊などの勉強を兼ねた恒例行事で、初日は祇園甲部の芸舞妓ら約 50 人が訪れた。

今年の興行は十三代目市川團十郎の襲名披露で、昼の部は約千席の場内が満席に。 華やかな着物姿の舞妓が桟敷席に並んで座り、歌舞伎十八番の「景清」などを鑑賞した。 舞妓は好きな役者の名前を記したかんざしを挿すのが習わしとなっている。 團十郎さん (45) と息子の新之助さん (10) にサインしてもらった佳つ秀さん (18) は「新之助さんは初めて書かはったと思うので、記念になりました。 文字に顔が描いてあってかわいらしいですね。」と話した。 吉例顔見世興行は 24 日まで。 (西田健作、asahi = 12-4-23)


全国 3 万社の総本宮 「千本灯籠」はじまる 京都・伏見稲荷大社

全国に 3 万社あるとされる稲荷神社の総本宮・伏見稲荷大社(京都市伏見区)で、境内の千本鳥居を灯籠で照らし出す「千本灯籠」が始まった。 10 月 9 日まで。 千本鳥居を含む約 400 メートルの参道に、350 基ほどの灯籠が置かれている。 灯籠のあかりはオレンジや、黄色、赤色などで、赤い鳥居が足元からほのかに照らし出されていた。 幻想的な雰囲気を、多くの外国人観光客らも楽しんだ。 灯籠の点灯は、午後 6 時から 8 時半まで。 (新井義顕、asahi = 10-1-23)


十割そばが簡単に? 世界初、もちもちソバを育種 のどごし香りよし

少し先だが、年末年始の楽しみといえば、年越しそばとお餅を思い浮かべる人も多いかもしれない。 ソバの実はゆでても粘り気がなく、そのままだとパサパサするので、つなぎに小麦粉などを使うが、京都大や理化学研究所などのチームが、粘り気が強い「モチ性」のソバを世界で初めて開発した。 簡単に「十割そば」をつくることができたという。 「もち米」、「もち麦」と呼ばれるように、コメやコムギなどの穀物にはモチ性を持つ品種があるが、ソバにはない。 コメやコムギほど普及しなかったため、育種の研究開発があまり進められてこなかった。

だが、世界的な人口増加で、コメとコムギ、トウモロコシの三大穀物に頼るだけでは将来、食糧不足になる懸念がある。 高地でも育てられるソバなどが食糧不足を補う有望な作物の一つになると考えた研究チームは効率的に育種研究を進められるよう、ソバのゲノムを高精度に解読した。 ソバは日本では麺の「そば」として食されるが、海外では、パンやガレット、パスタなどにも使われている。 また、十割そばを打つには職人の高度な技術が必要になる。 研究チームは、これまでにないモチ性のソバの作出に挑んだ。

穀物の実に含まれるでんぷんには、粘り気のもとになるアミロペクチンと、粘り気にならないアミロースがある。 コメやコムギなどでは、アミロースの合成にかかわる酵素をつくる遺伝子が機能しなくなることで、アミロペクチンの割合が増え、モチ性が出てくることが知られている。 ソバゲノムの解読で、ソバにはこの遺伝子が五つもあり、うち二つが実の部分で強く働いていることがわかった。 そこで種子に化学薬品をかけて様々な変異を起こさせた 5,801 個体から、二つの遺伝子が一つずつ働かなくなったものを、遺伝子解析で見つけた。 それらを交配させ、二つとも機能しない個体をつくり出し、つけた実を調べたところ、モチ性を確認できた。

すでに特許を申請し、京大付属農場(京都府木津川市)で試験栽培して繰り返し収穫している。 開発したモチ性ソバと、ふつうのソバの粉を混ぜると、小麦粉などがなくてもそばを簡単に打てて、ゆでても切れにくくなり、歯ごたえやのどごし、香りもよくなった。 モチ性ソバは米飯のように炊けて、餅やせんべい、あられもつくれたという。 ソバゲノムの情報は、共同研究したかずさ DNA 研究所(千葉県木更津市)のデータベース (http://buckwheat.kazusa.or.jp) で公開されている。

研究チームの安井康夫・京大助教(植物遺伝学)は「モチ性ソバは一例であるが、解読したゲノム情報をもとに、高収量で環境ストレスに強いなど、これまでにないソバを開発すれば、食糧問題の解決や新たな食文化・産業の創出に役立つ可能性がある」と話している。 研究成果は 10 日付の英科学誌ネイチャープランツ電子版 (https://doi.org/10.1038/s41477-023-01474-1) に掲載される。 (桜井林太郎、asahi = 8-11-23)


復活の天神祭ギャルみこし ネパール人の彼女はなぜみこしを担ぐのか

京都・祇園祭、東京・神田祭と並ぶ日本三大祭りの一つ、大阪天満宮(大阪市北区)の天神祭。 天神祭を前に、女性だけでみこしを担いで練り歩く恒例の「ギャルみこし(天神祭女性御神輿)」がコロナ禍を経て 4 年ぶりに復活する。 186 人の応募者の中、選考を勝ち抜いて本番でみこしを担げるのは 80 人。 担ぎ手となる女性たちは、3 年の空白を経てどんな思いでみこしを担ぐのか。 選考会場の中でも、ひときわ小さな声で自己紹介をしていたネパール人女性に密着。 その思いを聞いてみた。

本番を 2 週間後に控えた 7 月 8 日。 天神橋筋商店街に面したビルで開かれた選考会に、担ぎ手に応募した女性たちが続々と集まってきた。 参加者が元気いっぱいに声を張り上げて順番に自己 PR をしていく中、ネパール人のサプコタ・シリシティさん (23) が立ち上がり、小さな声で自己紹介と志望した動機を話しはじめた。

「不安で、緊張しすぎて、言葉が出なくて。 だけど楽しかったです。」

てんびん棒に結ばれた重さ 60 キロの俵を担ぐ「実技審査」では、倒れそうによろめきながらも、しっかりと俵を持ち上げた。 サプコタさんは 15 歳の時に来日。 サプコタさんと姉を親戚の元に預け、大阪でカレー店を営んでいた父と母と一緒に暮らすための来日だった。 しかし、住み始めたものの全く日本語ができず、学校などで勉強を続ける環境が整わなかったことから、2 カ月ほどで単身、ネパールに帰国した。

再び家族と遠く離ればなれとなり、改めて独りの寂しさを痛感。 もう一度来日することを決意し、父の店を手伝いながら独学で日本語の勉強を始めた。 最初のころは、簡単な自己紹介はできたものの店の客とのやりとりに困っては、助けを求めて父や母のいる厨房に駆け込んだ。 自分で買った参考書などで、2 年ほど日本語の勉強を続けたが、その後は夜間中学に入学。 昼はホテルの清掃の仕事をしながら勉強を続けたという。

「もっと勉強して、やりたい仕事をしたい」と、中学卒業後には定時制高校に進学。 日本語能力試験では、日常会話のほか一般的な読み物も読んで理解できる程度で、5 段階中で上から 2 番目のレベル「N2」にも合格した。 高校卒業後は、短大への進学を検討しているという。 そんなサプコタさんに「ギャルみこし」を教えてくれたのは、通っている高校の先生だった。 早速、YouTube に残っていた過去の動画を探して見てみた。

「大きい声で『わっしょい、わっしょい』、めっちゃ楽しそう。 祭りの服も着てみたい。」

担ぎ手に応募しようと決めた。 今回、サプコタさんが応募した理由の一つには「自分自身を成長させたい」という思いがある。 もともとシャイな性格で、自分から話しかけたり、会話を始めたりするのは苦手だ。

「今のままじゃダメで、もっと自信を上げていきたい。」

本当は積極的にいろいろなことに取り組んでみたいけど、尻込みしてしまう自分がいる。 そんな自分を変えるきっかけになるかもしれない。 ギャルみこしに参加することで、日本語の能力も含めてコミュニケーション力を高めたい。 そう思った。 また、ギャルみこしの動画はサプコタさんにネパールのお祭りを思い出させてくれた。 みんなが集まり、楽しそうに踊ったり声を出したり。 ネパールに帰ったときには、「また友達と遊びに行きたいな。」

無事に面接選考を通過し、15 日にあった合格者のオリエンテーション。 初めて法被に袖を通し、「ちょっとサイズがきついけど、色使いがとてもきれい。 はちまきも好き。」とはにかんだ。 最初は一人でいることも多かったが、みこしを担ぐ練習では、「わっしょい、わっしょい」と大きな声を張り上げ、近くの担ぎ手の仲間のはちまきを直してあげる姿も。 自己紹介はまだ少し小さな声だったが、「シリちゃんと呼んでください」と場を盛り上げた。 そして、自ら声をかけ、仲間と一緒に自撮りして連絡先も交換した。 サプコタさんは将来、短大などで様々な外国語を身につけ、空港で働きたいという夢がある。 ネパールには帰らず、家族もいる大阪で暮らすつもりだ。

「いっぱい自己紹介もして日本語の勉強にもなったし、たくさん友達もできた。 23 日の本番は、もっと楽しみたい。」 (白井伸洋、asahi = 7-23-23)


京都に溢れる観光客、募る不満と苦情 「観光公害」に対策はあるか

6 月に日本を訪れた外国人観光客は 200 万人を超えた。 人気の観光地では、混雑が激しさを増し、地域の生活に影響が出始めている。 「後ろ寄りの車両は混雑しております。 前寄りの車両をご利用ください。」 7 月 16 日、JR 京都駅 32・33 番線ホームに駅員のアナウンスが響いた。 観光名所の嵐山などを結ぶ嵯峨野線の車両の後方は、発車 5 分前にもかかわらず、スーツケースを持ち込んだ外国人観光客らでごった返していた。 少し空きのあった前方にも多くの客が乗り込み、列車は出発した。

このホームは降車の際も大混雑する。 観光客のほか、途中駅には住宅街や大学、ショッピングモールもあり、地元の人たちが多く使う。 記者が利用したときは、ホームから出口まで行列のようになり、近くの烏丸中央口まで約 5 分かかった。 地元の利用客からは苦情の声も出ているという。 JR 西日本は 7 月からの夏の観光シーズンに、1 日あたり 6 - 10 本の臨時列車の運行を決めた。 長谷川一明社長は、春に大混雑になったことから対応したと明かした上で、「毎日ご利用いただいている方々に、快適にご利用いただけるというのは大事だ」と話す。

同じ日、京都駅から清水寺や祇園に向かうバス乗り場には、130 人ほどが列をなしていた。 ロータリーの中央部分にまで及び、係員が誘導していた。 銀閣寺近くの女性 (46) は通勤などにバスを使う。 最近は大人数の外国人観光客が大きな荷物をもって乗り込むため、「バスに乗りづらい」という。  一方、観光客がいなければ、京都の経済にお金が落ちないという面もある。 「うまくモラルを守って調和するという形にできれば良いのだが …。」と話す。

混雑を解消するため、京都市交通局は「バス 1 日券(700 円)」を 2024 年 3 月末で廃止することを決めた。 利用者の約 9 割が観光客など市外の在住者で、住民から「乗れない」などの苦情も出ているためだ。 このほか、一部の路線で市バスから地下鉄に無料で乗り継ぎできるようにするなど対策に力を入れる。 早朝から寺社に参拝できるようにしたり、夜間にライトアップしたりして、観光客の分散化を図っている。

バスを増便したくても、運転手不足

人手不足が拍車をかける。 神奈川県の箱根も、訪日客に人気の観光地だ。 藤田観光は 12 日、「箱根ホテル小涌園」をリニューアルオープンした。 伊勢宜弘社長は「外国人客に利用してもらえれば平日の稼働率が上がる。 欧米などからの集客に力を入れていくことで、秋ごろには訪日客が半分近くになる日も出てくるだろう」と期待する。 箱根町内のバス乗り場では、長い行列ができていた。 運転手はどこも人手不足。 客の増加に追いつかない状況だ。 「箱根登山バス」は運転手が足りず、便数を増やせない。 担当者は「訪日客が来てくれるのはうれしいが、急に戻ってきたので対応が難しい。」と話す。

タクシーも足りない。 「箱根モビリティサービス」はコロナ禍で 100 台あったタクシーを 66 台に減らした。 運転手を募集しても集まらないという。 乗り場では炎天下で観光客が列をなし、社員が水とおしぼりを配っていた。 町などは、道路や駐車場の混雑状況を人工知能 (AI) 搭載のカメラで把握し、観光客に混雑していない道を提案する取り組みを始めている。

こうした観光客の増加によって、市民生活や観光客の満足度などに負の影響をもたらす状況は「オーバーツーリズム(観光公害)」と呼ばれる。 観光庁が 19 年にまとめた調査報告書では、旅行者が増え、摩擦が生じやすくなっていることや、地域の文化や生活そのものが観光資源となり、住民の暮らしへの影響が大きくなっていることを関心が高まっている要因に挙げる。 西表島のある沖縄県竹富町では、観光客らに課税する「竹富町訪問税(仮称)」の創設に向けた議論が進む。 北海道ニセコ町などでも宿泊税の導入が検討されている。 (吉田貴司、長橋亮文、asahi = 7-20-23)


宝恵かごに乗った「愛染娘」が練り歩き 江戸時代の参拝を再現

阪の夏の風物詩として知られる「愛染(あいぜん)まつり」が 30 日、大阪市天王寺区の四天王寺支院・愛染堂勝鬘院(しょうまんいん)で始まった。 7 月 2 日まで。 初日に行われたパレードでは、浴衣姿の「愛染娘」 9 人が 4 基の華やかな「宝恵(ほえ)かご」に交代で乗り、雀(すずめ)おどりの人たちとともに沿道を練り歩いた。

パレードは、江戸時代に商売繁盛などを願う芸者がかごに乗って同堂を訪れたことを再現しているという。 参拝者らでにぎわう境内に愛染娘らが入ると「あいぜんさんじゃ」、「商売繁盛」などの声が掛けられた。 担ぎ手がかごを持ち上げ、愛染娘が手を振ると大きな歓声が上がった。 今年は 6 年ぶりに露店も復活。 約 40 店が出店されている。 (小宮路勝、asahi = 6-30-23)


宇宙船? 未来的なデザインの 400 系 大阪メトロで 25 日から運行

宇宙船のようなフォルムと八角形の斬新な「顔」が特徴の大阪メトロの新型車両「400 系」の出発式が 24 日、中央線の森ノ宮駅であった。 2025 年の大阪・関西万博を見据えて開発された車両で、25 日から中央線で運行を始める。 中央線は 24 年度中に万博会場の夢洲まで延伸する予定。 400 系は今年 4 月の運行開始を目指してきたが、車両の試験の過程で機器の調整に時間がかかり、6 月 25 日からの運行となった。

森ノ宮駅のホームで開かれた出発式では、大阪メトロの河井英明社長が「多くの方々に乗っていただき、もうすぐ万博が来ることを実感していただきたい」などとあいさつした。 テープカットの後、400 系は出発した。 車両は、前面をガラス張りの展望の形状とし、宇宙船を思わせる未来的なデザインを採用した。 車内は座席の背を高くして座り心地を向上させたといい、全車両に空気浄化装置や防犯カメラを設置。 つり広告を廃止して車内の開放感を高めるなどした。

大阪メトロは 400 系のデビューを記念して、400 系などの写真をあしらった 1 日乗車券セットを 25 日から販売する。 4 枚入りで、特製の記念台紙とクリアファイルが付く。 3 千セット限定で、公式オンラインショップ (https://osakametro-shop.myshopify.com) で購入できる。 税込み 3,500 円(別途送料が必要)で 1 人 5 セットまで。 販売期間は来年 1 月末までとなる。 この乗車券の有効期間は来年 10 月末までで、大阪メトロの全線などで使える。 問い合わせは大阪メトロ・シティバス案内コール (06・6582・1400) へ。 (瀬戸口和秀、asahi = 6-24-23)


全日空、3 年ぶりに関空から国際便 上海便を再開、まずは週 3 往復

関西空港で 5 日午前、新型コロナウイルスの影響で休止していた全日空の上海(浦東)定期便が 3 年ぶりに運航を再開した。 関空からの同社の国際線再開はコロナ禍後初。 まずは週に往復 3 便を運航する。 コロナ禍前、全日空は関西空港から中国各都市への便を週に往復 42 便運航していた。 全日空の宮坂純子関西空港支店長は「今日は国際線再開の第一歩。 たくさんご搭乗いただいて、夏の海外旅行シーズンに向けて便を増やしていきたい。」と期待を込めた。

関西空港発着の国際線の便数は、6 月時点でコロナ前の 5 割超まで回復。 ただ国際線の 4 割を占めていた中国便は、コロナ前の 2 割ほどの再開にとどまっている。 コロナ禍前は上海便を毎週利用していたという奈良県斑鳩町の会社役員、増田隆さん (60) は「これから仕事での行き来が増える。 定期運航はありがたい。」と話した。 現地法人に中国の顧客を案内する予定という。 関空では、上海吉祥航空が 7 月 1 日、2019 年に開港した北京大興空港への新規就航を予定している。 (田中章博、asahi = 6-5-23)


鴨川でシカの目撃相次ぐ 京都御苑近くの市街地、中州や川の中を歩く

27 日午後、京都市内を流れる鴨川で野生とみられるシカの目撃が相次いだ。 京都御苑から東へ数百メートルの市街地で、警察などが人に危害を与えるなどしないよう見守った。 京都府警川端署によると、午後 1 時すぎに観光客から「シカが鴨川の中州に迷い込んでいるようだ」と交番に連絡があり、荒神橋付近の中州にいるシカ 1 頭を駆けつけた警察官らが確認した。 シカは川の中州を歩いたり、対岸に渡ったりしていたという。 午後 4 時半ごろには、中州の茂みから姿を現したシカが草を食べたり、川の中を歩いたりし、近くを通った人らがスマートフォンのカメラで撮影するなどしていた。 (八百板一平、鈴木康朗、asahi = 5-27-23)


大阪府が米 10 キロ支給へ 子育て世帯の支援第 2 弾 吉村知事が方針

子育て世帯の支援のため、子ども 1 人につき 10 キロ相当の米を支給する府の事業について、吉村洋文知事は 17 日、第 2 弾も実施する方針を明かした。 9 月から申請を受け付ける見込み。 府内の 18 歳以下の子どもと妊婦の約 140 万人が対象。 財源は国の臨時交付金を使う。 第 1 弾(6 月末まで受け付け中)では米のほか、缶詰や調味料なども選ぶことが可能だったが、今回の米以外の支給品など詳細は今後検討するという。 吉村知事は会見で「物価高が続いている。 子育て世帯は食費の割合が非常に大きい。」と話した。 (吉川喬、asahi = 5-17-23)


高校・公立大学の授業料「完全無償化」 大阪府が 26 年度に実現へ

大阪府は 9 日、高校や大阪公立大学の授業料の「完全無償化」に向けた制度の素案を公表した。 親の所得や子の人数に制限なく、府内のすべての生徒を対象にするという。 来年度から段階的に開始し、2026 年度には全員の無償化を想定。 府によると、都道府県での高校の完全無償化は全国で初めてという。 府はこれまでも高校、公立大学の無償化を進めてきたが、世帯年収などで対象を限ってきた。 吉村洋文知事は今春の知事選で、完全無償化を公約に掲げて当選。 府が具体化に向けて 9 日会合を開き、素案を公表した。

素案によると、公立・私立高校や高等専門学校、また大阪公立大学に通う府民が対象。 高校では来年度は 3 年生だけを対象とし、26 年度までに全学年で無償化とする。 ただ、学費が高い私立学校などでは学校側に一部負担を求める場合もあり、すべての学校が制度に参加するかは今後の調整だという。 また関西の高校に通う府民も無償にする考えで、今後、関西 1 府 4 県や高校側とも制度設計について協議する。

大学は来年度に 4 年生、25 年度に 2 - 4 年生、26 年度に全学年に対象を広げる計画という。 府によると、少なくとも年約 427 億円の公費が必要で、歳出抑制や府の基金の活用などで財源を確保するという。 府は制度案を 8 月に正式決定し、年明けの来年度予算案に盛り込む方針。 (箱谷真司、asahi = 5-9-23)

〈編者注〉 IR 導入を決めた大阪府らしい施策です。 確かに、少子化対応の決め手となるような気がします。 でも公金が使われますので、日本で最も厳しい高校、大学となることが絶対条件でしょう。


近畿日本ツーリスト会見し謝罪 過大請求は「最大 16 億円」自治体数は 80 超か
新型コロナ業務受託での過大請求 原因は「営業目標の達成意識」

旅行会社大手の近畿日本ツーリストが大阪府などに対しコロナワクチン業務の委託料などを過大請求していた問題で、近畿日本ツーリストの高浦雅彦社長らが会見を開き、一連の問題について謝罪し、社内点検について報告しました。 過大請求は最大 16 億円に上ることが新たに判明しました。

「誠に遺憾ながら、4 月 12 日公表分を含めて最大で約 16 億円の過大請求の疑義があることが判明しました。 過大請求額の速やかな返納はもちろん、関係者の皆様、お客様ひいては社会の皆様の信頼を裏切り、多大な迷惑をおかけしましたことを改めて会社として厳粛に受け止め、お詫び申し上げます。(近畿日本ツーリスト・高浦雅彦社長)」

近畿日本ツーリストを巡っては、新型コロナワクチン業務の委託料を大阪府や東大阪市など複数の自治体に対して 3 億円以上過大請求していたことが判明していて、社内点検を行っていました。 緊急の社内点検は 2020 年 4 月 1 日 - 2023 年 3 月 31 日までに取り扱いの 762 自治体から受託の 2,924 件の事業などが対象に行われました。 また、これまでに発覚していた大阪府などの自治体に加えて新たに 9 自治体で過大請求が判明したということです。 さらに 70 の自治体などで過大請求の疑いがあるということです。

契約より少ない人数を配置しながら、契約通りの人件費を申告し請求していたということです。 大阪府は立ち入り調査などで、請求額について精査し過大請求分の返還を求める方針を表明していました。 近畿日本ツーリストは、専門家を入れた外部調査委員会が調査を行うなどして、今後、報告をまとめる予定です。

一連の問題で発覚している過大請求の額
大阪府約 4,882 万円
東大阪市約 3 億 3,628 万円
羽曳野市約 1,362 万円
泉大津市約 356 万円
河南町約 20 万円
静岡県・焼津市約 4,650 万円
静岡県・掛川市約 2,200 万円
その他 9 自治体約 1 億 1,310 万円

原因は「法律知識の欠如」、「営業目標の達成の意識」

会見の中で近畿日本ツーリストは今回の過大請求の原因について、契約数に沿った人数や個数で手配すべきところ、運営ができていれば必ずしも契約数と一致したものでなければ問われないといった誤った認識をするなど契約についての法律的知識が乏しいことや、営業目標達成を達成したいとの思いが強く働いていたということです。 (MBS = 5-2-23)


宇治茶の宣伝「娘」だけじゃない 双子男性も挑んだ八十八夜の茶摘み

立春から数えて八十八夜の 2 日、新茶の季節を告げる「茶摘みの集い」が京都府宇治市の茶業センター茶園であった。 例年、姉さんかぶり姿の「宇治茶レディ」が報道陣の前で茶を摘んで PR してきたが、ジェンダー平等の流れを踏まえ、今年は性別不問の「宇治茶宣伝隊(6 人)」に衣替え。 女性 4 人と藤林ゴウさん、シュウさん (24) の双子の兄弟が緑の作務衣に前掛け姿で加わり、輝く新芽を摘んだ。

集いはコロナ禍をへて昨年、3 年ぶりに再開。 今年も事前申し込みの参加者 600 人に限り、茶摘みや製茶体験を受け付けた。 府茶業会議所の堀井長太郎会頭 (73) は「男性がいれるカフェも多く、男女の宣伝隊に期待する。 香り高い、旬の宇治茶を楽しんでほしい」と話した。 (小西良昭、asahi = 5-2-23)

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政府、大阪 IR 計画を認定 国内初
長崎は審査継続 首相「国の成長に寄与」

カジノを含む統合型リゾート施設 (IR) を巡り、政府は 14 日、大阪府・市が申請した整備計画を認定した。 IR 推進本部(本部長・岸田文雄首相)での判断を受け、斉藤鉄夫国土交通相が決定した。 IR 計画の認定は国内初。 岸田首相は IR 推進本部の会合で「大阪の IR は国の成長に寄与する」と語った。 同時に審査を受けていた長崎県の整備計画は、国の有識者委員会で継続審査となった。

岸田首相は会合で「2045 (令和 7)年大阪・関西万博開催後の関西圏の発展に寄与するとともに、日本の魅力を世界に発信する観光拠点となることが期待される。 依存防止対策を含めた環境整備をお願いする」とした。 大阪は令和 11 年秋 - 冬の開業を目指している。 具体的な運営方法などに関する事業者との協定締結や、政府のカジノ管理委員会による審査、カジノ事業の免許交付といった手続きを経て正式な開業に至る。

米カジノ大手 MGM リゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中核株主とする「大阪 IR 株式会社」を事業者とし、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)での開業を目指す。 年間の来場者数は約 2 千万人、経済波及効果は近畿圏で 1 兆 1,400 億円と試算する。 斉藤氏は 14 日の閣議後記者会見で、大阪の計画について「有識者委で約 1 年にわたる十分かつ丁寧な審査で『認定し得る』との評価を得た。 日本最大規模の国際会議場の計画や経済波及効果が肯定的な評価を得られた」と説明した。

一方、長崎県は佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス」の敷地で 9 年秋ごろに開業する計画。 資金調達面で不透明さが指摘されているが、斉藤氏は審査継続の理由について「審査中のため答えを差し控える」と述べるにとどめた。 大阪府・市と長崎県は昨年 4 月に計画を提出。 国の有識者委で審査していた。 (sankei = 4-14-23)


中国人に「大阪・西成一帯」が人気! 中国高級車の旗艦店も出店で街が激変

日本のインバウンドツーリズムは再び幕を開け、ビジネス上の人的交流も息を吹き返しつつある。 ポストコロナに期待されるのは「外からの目線」を利用した日本の課題解決だ。 外国からの人の流れと資本の参入は街をどう活性化させるのか。 中国からの人と資本の動きに注目して、大阪・西成一帯の変化をリポートする。

中国人の間で西成区が人気

人口減少に悩まされる日本列島だが、大阪市で外国人居住者が増えている。 2020 年からのコロナ禍で減少傾向にあった外国人居住者が 2022 年 12 月末に 15 万 2,560 人に達したのだ。 中でも注目したいのが同市西成区だ。 統計が確認できる 1960 年以降、西成区は右肩下がりの人口減少が続き、その食い止めが行政の大きな課題のひとつになっていた。 ところが、2022 年は微増に転じたのである。

西成区の人口増加に貢献しているのが外国人居住者だ。 2019 年(9 月末)には 9,525 人だったが、コロナ禍にもかかわらず毎年その数は増え、2022 年(9 月末)には前年比で 1,563 人増加し 1 万 1,696 人になった。 韓国・朝鮮籍(3,422 人)、ベトナム籍(3,007 人)に続くのが中国籍(2,976 人)の居住者だ。 中国語の通訳ガイドを務める楢崎宣夫さんは、「西成区役所の住民登録などを行う窓口では、以前に比べてはるかに多くの中国人を目にするようになりました」と語る。 早朝の西成区役所窓口を訪れた筆者も、順番待ちの中に何人かの中国人を目撃した。

中国人が増えている背景には、いくつかの理由がある。 その一つが中国からの "脱出" だ。 大阪市に住む中国人の陳明さん(仮名)は「ここ数年で友人たちはみな、海外に出ていきました。 ロックダウンで悲惨な目に遭った中国人は、なおさらこの国に居続けていいかを真剣に考えているのです。」と明かす。 陳さん自身はすでにコロナ前に日本で経営管理ビザを取得しており、2022 年 6 月に中国から東京に戻ってきたが、住みやすさを理由に大阪に転居したという。

在留の中国人の中には、あえて西成区を選んで居住する中国人もいる。現在、独立起業した趙雲さん(仮名)も大阪定住を選んだ一人だが、その魅力をこう語っている。 「西成は物価が安く、さまざまな国から来た人たちが住んでいる。 私たちにとってはそういう場所が住みやすい。 ここが好きな中国人は結構多いですよ。」 不動産情報サービスを手掛けるジープラスメディアによれば、2022 年 5 月、「大阪で外国人が不動産を買いたい街」は、西成区が東大阪市を抜いて 1 位になった。

街の評価を変えたのは外国人

「JR 新今宮駅周辺は独特な雰囲気だった。」 こう振り返るのは、大阪市浪速区に住む会社員・本田美幸さん(仮名)だ。 浪速区との区界となる「堺筋」の南にある西成区の萩之茶屋一帯を、子どもの頃から異空間として見つめ続けてきた。 すぐそばにある JR 西日本・大阪環状線の天王寺駅には、日本一の高さを誇る複合ビル「あべのハルカス」があり、富裕層の住む街としても知られる。 その隣接駅の新今宮駅や御堂筋線・堺筋線の 2 路線が乗り入れる動物園前駅一帯には、日雇い労働者のための宿が集積する「あいりん地域」がある。

「新今宮駅の周辺は、仕事や家族やお金がないといった難しい問題を抱える人たちが集まる地域でしたが、昨年春に星野リゾートのホテルができたのには本当に驚きました」と本田さんは続ける。 問題山積の、地元の人からも見捨てられた一帯だったが、「ここが変わり始めたのは、日本がインバウンドに向けて大きくかじを切った頃からでしょうか」と、前出の通訳ガイド・楢崎さんは話す。

堺筋を挟んで北の浪速区には、通天閣などの観光地がある。 関西空港や USJ (ユニバーサルスタジオ・ジャパン)などへのアクセスもいい。 ある意味 "手つかず" だった西成区の萩之茶屋一帯は、実は地の利に恵まれた絶好のエリアであり、インバウンドが本格化したこの 10 年で徐々に外国人客が訪れるようになった。 西成区の変遷を見つめる企業経営者の男性は、「日雇いの人々にも変化が起きています。 スマホを見ながら場所探しする外国人ツーリストに積極的に声をかけて道案内するなど、できる限りの "おもてなし" をする風景を目にするようになりました。」と語る。 外国人の中にはホテルでの仕事に就いたり、バーを経営したりと、この地に根を下ろす人たちもいる。

日雇い労働者の街が遂げた一大変化の裏には、こうした外国人目線による再評価がある。 楢崎さん自身もこれを実感する一人だ。 最近も中国人出張者から「大阪の安い宿を探してくれ」と頼まれてネットを検索し、一泊 1,700 円で利用できる西成警察署前の宿を紹介したところ、「これは安い!」と手をたたいて喜ばれたという。 「バス・トイレは共同で、三畳一間というまるで独房のような部屋やけど、コスト重視の中国人出張者もめっちゃ気に入ってましたわ。(楢崎さん)」

宿の向かいにある高い柵や鉄格子で囲まれた西成警察署が象徴するように、実は少し前まで、宿が立地するエリアは暴動が起きるなど、あいりん地域でも危険視されていた場所だった。 楢崎さんは長い歴史を振り返りながら、「そんないわく付きのエリアに外国人客が泊まるってこと自体が歴史的な一歩なんや」とつぶやく。

中国系店舗も地域との関係を重視

一帯には、"中国資本" も流入するようにもなった。 西成警察署から車で 3 分ほどの浪速区大国町に、2021 年末、中国第一汽車の高級自動車ブランド「紅旗」の旗艦店がオープンした。 毛沢東が乗ったといわれる中国の国産車だが、1,000 万円を超える中国の高級自動車を扱う旗艦店が大国町にできたことは、一部の地元民からも注目された。 日本の第一号店を大阪に設けたのは「中国でもハイエンドモデルができるという宣伝戦略(中国メディア)」であり、また「輸入元が関西にあるため(日本メディア)」とも言われる一方で、中国事情についてよく知る地元の男性は、こうした動向について次のような解釈を与えている。

「西成区と接するこの一帯も、地元の人からすれば『ややこしい地域』ですが、そんなところに高級車を売る外国資本が参入してきたことは、中国企業にとって過去の評判やイメージなどまるで関係ないことを意味しているのです。」 前回、当コラムでは「2010 年前後に萩之茶屋の商店街の空き店舗を中国資本が買収した」という話をお伝えした。

その後、瞬く間に数を増やした中国系カラオケ居酒屋は、「危険地帯にできた怪しげな店舗群」として、2015 年頃に大手メディアなどでたびたび取り上げられてきた。 萩之茶屋一帯に中国系カラオケ居酒屋ができた当初は、客引きや大音量のカラオケ、ゴミの不始末などの諸問題が増え、これまで以上に輪をかけた無秩序化が進んだ。 しかし、約 10 年がたった今は、これも昔話になりつつある。 ゴミ問題については「依然として、路地裏に不法投棄をするケースもある」という地元の声もあるが、筆者がこの商店街を歩いたときには、目をそむけたくなるような光景や客引き、大音量のカラオケは特に気にならなかった。

西成区も見て見ぬふりをせずコミット

後日、西成区役所に尋ねてみた。 すると次のようなコメントが返ってきた。 「カラオケ居酒屋などの事業者は、民間業者に委託する形でゴミを回収するようになりました。 当初は問題もあった中国系居酒屋でしたが、ルールを守るようになり、地域との関係を重視するようになったといえます。」 西成区役所は「適正な指導を続けた結果」とも話していたが、そこには橋下徹氏が大阪市長時代に行った大改革を下地とした積極的なコミットがあったことが見て取れる。

同区は長らく "貧困と福祉の街" ともいわれ、「昔から "ややこしい人" の対応に慣れている」といった前向きな評価がある。 この街には、コミュニケーションが難しい外国人をも包摂し、前向きに課題解決をする力があると捉えてもいいのかもしれない。 今後もアジアからの定住人口が増加すれば、人口減少に歯止めがかかり、若い世代が増えて新たなカルチャーを生み出す可能性がある。 過渡期的には "ニューカマー" との摩擦やあつれき、犯罪発生やルール違反もあるだろうが、同区は恐らく今後も、見て見ぬふりをせず政策的サポートで地域の発展にリンクさせていくのではないか。

世界に目を転じれば、G7 の多くの都市は外国からの人や資本の移動を新たなチャンスと受け止め、難題を抱えながらも積極的な受け入れで発展を維持している。 西成区には、国際社会で進む "真のダイバーシティ" に比肩するようなダイナミズムがあり、多様なカルチャーが創る「未来都市の到来」を十分に予感させるのだ。 (姫田小夏、Diamond = 4-7-23)