中国の住宅ローン返済拒否が銀行を直撃する
返済拒否問題対応のため金融当局と銀行団が緊急会合

元 UBS グループのエコノミスト、ジョナサン・アンダーソン氏はかつて、中国不動産業界を「宇宙で最も重要なセクター」と呼んだ。 それから 10 年余りを経て、世界の投資家がこのセクターに再び注目しているが、今回は悪い理由でだ。 世界 2 位の経済大国の約 4 分の 1 を占める業界で今週、ストレスの兆しが強まった。 住宅ローンを組んで住宅を購入したものの物件が未完成だとしてローン返済を拒む借り手が増えており、中国当局が銀行側とこの問題を話し合うため緊急会合を開いた。 事情に詳しい関係者が明らかにした。

パンセオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、クレイグ・ボサム氏(ロンドン在勤)は「不動産はずっと悪くなり続けている。 価格や販売、着工と全てがひどい。」と指摘。 「慢性的な悪化は今、別の一歩を踏み出した。 広範に不動産が融資の担保となっており、最終的に金融セクターに打撃を与えるのが常だ。」と述べた。 不動産開発大手の中国恒大集団で始まったトラブルが、大半の同業や大手銀行、住宅を買った中間所得層を巻き込む危機に発展しつつある。 15 日発表の統計によると、中国の新築住宅価格は 6 月、10 カ月連続で前月から下落した。

J キャピタル・リサーチの共同創業者アン・スティーブンソンヤン氏は「ピラミッド全体が崩壊しつつある。 1 年前の恒大危機が中国経済の隅々に波及している。」と語った。 オーストラリア・ニュージーランド銀行 (ANZ) の王蕊シニアエコノミストは 14 日のリポートで、「住宅購入者によるローン返済ボイコットが広がれば、金融システムの健全性のみならず今の景気下振れ局面で社会問題を引き起こす」との見方を示した。

野村ホールディングスによれば、中国では完成前の住宅を販売する慣行が一般的で、これが住宅ローンの返済拒否の背景になっている。 開発会社側の資金不足が悪化しており、住宅プロジェクトが完成するとの信頼感が揺らいでいる。 野村の陸挺氏らエコノミストは、中国の不動産開発会社は 2013 - 20 年に事前販売した住宅の約 60% しか引き渡していないと推計。 その間、中国の住宅ローンは 26 兆 3,000 億元(約 539 兆円)増加した。

広発証券は最大 2 兆元の住宅ローンが返済拒否の影響を受ける可能性があると予想している。 中国の銀行は住宅ローン返済ボイコットに伴う延滞債権が計 21 億 1,000 万元相当に上ることを明らかにした。 (Richard Frost、Bloomberg/東洋経済 = 7-18-22)


中国、ゼロコロナで経済失速 異論は封殺 世界から中国離れの機運も

ロックダウン(都市封鎖)など厳格なゼロコロナ政策により、中国経済が急減速している。 15 日発表された 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) は前期比でマイナスに転じた。 中国国内ではゼロコロナ政策への異論や批判が封殺されるなか、世界からは「中国離れ」の機運も出始めている。

ロックダウン後も続く停滞

12 日、中国・上海市郊外にある米電気自動車大手テスラの工場は、大型トラックが行き交っていた。 ゲート付近には従業員を相手に麺類や揚げ物を売る屋台が軒を連ねる。 おやきを売っていた女性店主は「少しは活気が戻ってきた」と喜ぶ。 上海を代表する巨大工場の様子を約 2 カ月に及ぶロックダウン中も国営メディアは逐一報じ、経済の回復ぶりを強調した。

だが、ロックダウンで 3 月末から約 3 週間操業を停止した同工場は、4 月下旬になって再開はしたものの、稼働は限定的。 輸送への規制も続き、生産は 5 月末まで制限された。 中国乗用車協会によると、2 カ月分の挽回生産として 6 月の上海製車両の販売台数は 7 万 8 千台超で、前月の約 2.5 倍になった。 工場に勤務する男性従業員は「私の担当するラインはまだ完全には戻っていない」と話す。 別の男性従業員は 6 月中旬に職場復帰したと言う。 「4 - 5 月は全く仕事がなかった。 コロナの感染状況によってはまた逆戻りしないか心配だ。」

上海でロックダウンが解除されて 1 カ月以上経つが、数字からも停滞ぶりがうかがえる。 15 日発表された 1 - 6 月の住宅の販売額は前年同期比で 3 割超も減少。 中国では若者の就職難が深刻化しており、失業率は 16 - 24 歳で 19.3% と過去最高水準だった。 過去最高の 1,076 万人の大学生が今夏に卒業するとされるなか、中国メディアは 4 月、大卒予定者の内定率が 3 割にも満たない状況だと報じた。 経済の停滞で収益が悪化した企業が採用を絞っているためだ。

経済の減速は地方政府の財政も直撃する。 中国財務省によると、今年上半期の一般公共予算の収入は前年同期比で約 1 割減少。 さらに一般公共予算と別で、地方財政が依存する土地の使用権売却収入は、不動産市場の冷え込みで前年同期比で約 3 割超減った。 収入が減っている中で、逆に借金である地方債の 6 月の発行額は過去最大を更新する見通し。 習近平(シーチンピン)指導部が景気刺激策でインフラ投資を加速させているためだ。

異論は削除、メンツが優先

中国国家統計局の報道官は 15 日の会見で「中国の潜在成長率は 5 - 6% ほどあり、世界的に見てまだ中・高水準だ」とし、経済は良い方向へと向かっていると強調した。 一方で、ゼロコロナ政策の問題を指摘する声は次々に削除されている。

国営新華社通信が運営するネットメディアで 6 月、コラムニストが「コロナ禍の経済に対する衝撃は大きく、客観的に見れば今年の 5.5% の成長目標は困難だ」と発言したが、直後に削除された。 また、同月に華南理工大学公共政策研究院の鄭永年氏が中国経済の停滞について当局による IT 企業締め付けに問題があることや、公共工事頼みの景気刺激策の問題点を指摘した文章も見られなくなった。 他にも著名な経済ジャーナリストの呉暁波氏などの文章も消されている。

中国政府関係者によると、政府内にはゼロコロナ政策が絶対であるとする派と、「習氏の政策はやり過ぎ」として経済成長を重視すべきだとする派に割れているという。 後者は李克強(リーコーチアン)首相を中心としたグループとされる。 同政府関係者は「今年春ごろにはゼロコロナ政策を緩和する方法について検討されていた」と明かす。 だが、3 月以降の深?や長春、上海のロックダウンでその声はかき消されたという。 「結局は上のメンツが一番大事だということだ」と振り返る。

中国では徐々に入国後の隔離期間の短縮や、日本を含む他国との直行便の再開が進む。 ただ、オミクロン株の系統の一つ「BA.5」が国内で確認され、一部都市で再び移動制限などの対策を取り始めている。 再びロックダウンが広がれば、中国経済のさらなる停滞は避けられない。

欧州連合 (EU) の中国進出企業でつくる中国 EU 商会の調査によると、回答した約 8 割の会員企業が中国は投資先として魅力が落ちたとし、約 2 割は中国以外に投資先を移すと答えた。 経済活動が制限されるリスクを感じているからだ。 イェルク・ウトケ会長は「ゼロコロナ政策は科学ではなく、(政治的な)イデオロギーだ。 すぐに変わることはない。」と指摘する。(上海 = 井上亮、北京 = 西山明宏)

欧州で高まる懸念

中国経済の減速は、ウクライナ危機に伴う物価高(インフレ)に苦しむ世界経済に追い打ちとなる恐れがある。 特にロシア産エネルギーに依存し、中国が重要な貿易相手国の欧州にとって二重苦だ。 欧州連合 (EU) の行政府・欧州委員会は 14 日に発表した最新の経済見通しで、2022 年のユーロ圏の経済成長率を 5 月発表時の 2.7% から 2.6% に下方修正した。 2 月時点の 4.0% から 1.4 ポイントも引き下げた。 ウクライナ危機によるエネルギーや食品の価格高騰に加え、欧州委がリスク要因に挙げたのは「中国の厳しいゼロコロナ政策による経済への負の影響」だ。

特に懸念が強いのが、EU 内で対中貿易額トップのドイツ。 上海のロックダウンでは、自動車の部品や化学産業の原材料供給の目詰まりが生産に響いた。 ドイツ産業連盟のルスブルム会長は 6 月、「中国の不可解なゼロコロナ戦略が世界貿易をまひさせている」と批判した。 独 ifo 経済研究所がまとめた 6 月の景況感指数は 92.3 で前月の 93.0 から悪化。 オランダの金融大手 ING は「(物価高と景気後退が同時に進む)スタグフレーションが今年は基本シナリオになる」とドイツの現状を指摘した。 EU 全体の GDP の 25% を占めるドイツの停滞は EU 全体に波及しかねない。

日米にも及ぶ悪影響

米国でもスタグフレーションの懸念は強まっている。 13 日発表の 6 月の消費者物価指数 (CPI) は前年同月より 9.1% も上昇し、約 40 年半ぶりの高水準を記録。 中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会 (FRB) は、インフレ抑制のため利上げを進めているが、さらに大幅な利上げを急ぐとの観測が広がる。 利上げでドル高が進み、ドル建て借金が多い新興国の返済負担も増している。 そこに中国の景気減速が追い打ちをかければ、アジアの新興国などの苦境はさらに深まる。

影響は日本の生産や貿易にも及ぶ。 経済産業省がまとめた 5 月の鉱工業生産指数(15 年 = 100、季節調整値)は 88.0 で前月比 7.5% 下がった。 下げ幅はコロナ禍が始まった 20 年 5 月(10.5% 減)以来の大きさだった。 部品供給が滞った自動車や自動車向けの蓄電池、カーナビなどの生産が軒並み減少した。 一方、5 月の中国向けの自動車輸出は前年同月から半減し 1 万台を割り込んだ。 中国の 6 月の輸入は全体で 1% 増えたが、日本からは 14.2% 減と低迷が続く。 日本政府関係者は「都市封鎖は解除されても(中国人の)消費マインドは依然弱い。 日本産業にとっては打撃だ。」と懸念する。(和気真也 = ロンドン、北川慧一、asahi = 7-16-22)


中国不動産の世茂集団、海外債権者が組織化準備 - ドル建て債不履行で

中国の不動産開発会社、世茂集団が 3 日に期日を迎えたドル建て社債 10 億ドル(約 1,360 億円)相当を償還できなかったことを受け、同社の海外債権者は組織化の準備を進めている。 米投資銀行フーリハン・ローキーとウェイル・ゴットシャル & マンゲスが設定した 5 日遅くの電話会議で、フーリハンの幹部は世茂集団の社債保有者に対し、自行の債権団に加わるよう求めた。 会議に参加した社債保有企業の関係者が明らかにした。 世茂集団は現時点で全体的な再編を受け入れる方針で、それにはある程度の期間が見込まれると、会議で幹部が説明したという。

フーリハンとウェイルは世茂集団債の大規模保有者に助言を提供しており、グループ拡大を目指している。 一方、デットワイヤの報道によると、投資銀行モーリスは助言先のオフショア債保有者の特別グループを拡大したい考え。 世茂集団とフーリハン、ウェイル、モーリスにコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。 (Bloomberg = 7-7-22)

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中国の不動産大手「世茂集団」がデフォルト … 創業者は富豪ランキング上位も経験

【北京 = 山下福太郎】 中国の不動産大手「世茂集団」は、3 日が満期だった米ドル建ての債務 10 億ドル(約 1,350 億円)に関する支払いができず、債務不履行(デフォルト)になった。 コロナ禍で中国の不動産市況は一段と悪化し、売上高が急減した。 世茂は中国の不動産業界で十数位の規模にある。 香港証券取引所に提出した開示資料によると、1 - 5 月の販売額は 342 億元(約 6,800 億円)で、前年同期に比べて 72% 減った。

2021 年後半から不動産市況が悪化したことに加え、感染を抑止するロックダウン(都市封鎖)によって取引が縮小した。 プロジェクトを中断し、資産売却も進めたが、資金繰りが確保できなかったとみられる。 中国の不動産大手では、昨年 9 月に中国恒大集団の経営危機が表面化し、12 月にはドル建て社債の利払いができず、一部債務不履行と認定された。 世茂は、恒大に比べて経営が比較的安定していると見られており、当局が資金繰りを支えているとの報道も出ていた。 創業者の許栄茂氏は、富豪ランキングの上位に選ばれたこともある。 (yomiuri = 7-5-22)


河南省で異常事態、複数の銀行で「預金引き出し不可」、金融パニックの前兆か

「アリの一穴」という言葉がある。 「動態清零(ゼロコロナ政策)」という「中国の特色ある不可思議なコロナ対策」のせいもあって、いまや青息吐息の地方金融機関のヤバい実態の氷山の一角が垣間見える事件が、河南省で起こった。

中国には昨年末現在で、金融機関が 4,602 行あるが、その中で「村鎮銀行」と呼ばれる地方の信用金庫が 1,651 行ある。 河南省にある 4 つの「村鎮銀行」 - - 禹州新民生、上蔡恵民、柘城黄淮村、開封新東方の預金者の預金が、4 月下旬から突然、引き出せなくなった。 この 4 行は「システムを改良中で一時的に障害が起きている」と説明したが、約 2 カ月経った現在でも、「システム障害」は続いたままだ。 おまけに銀行も店を閉じてしまった。 「これって銀行の破綻じゃないの?」と慌てた預金者たちが、銀行に殺到した。 その模様は、たちまち SNS で中国全土に拡散した。

高利率のファンドに中国全土から顧客殺到

この 4 行は、高い利息をエサに、全国からファンドの預金者を募っていた。 例えば禹州銀行では、最低投資額 150 万元(1 元、約 20.1 円、以下同)で、利息 6%。 50 日後に引き出し可能というファンドを設けていた。 いまどき通常のファンドでは、これだけ短期でこんなに利息が高いものはないので、中国各地からファンドの出資者が現れた。 中国はスマホ決済社会なので、スマホでピピピッと多額の投資ができてしまう。 というわけで、多くの出資者が被害に遭ったというわけだ。

中国は、「動態清零」の影響が大きく、4 月の若年層失業率は 18.2% と過去最高を記録した。 収入を失った人、給与が減った人などが、なけなしの貯金をはたいて河南省に投資したものが、蒸発してしまったのだ。 銀行に殺到するのは当然だろう。

「黒幕」はすでに米国に逃亡

問題はこの 4 行に、一体何が起こっているのかだ。 この 4 行の共通点は、河南新財富集団投資という会社が大株主になっていることだ。 この投資会社を率いるのは、呂奕(ろ・えき)という男。 だが呂氏は、すでにアメリカへ逃亡してしまったという。 6 月 18 日、河南省許昌市公安局は、「警情通報」という異例の情報公開を行った。 そこにはこう記されている。

2022 年 4 月 19 日、わが市の公安機関は法に基づき、河南新財富集団投資ホールディング株式会社を、重大な犯罪立件容疑で捜査した。 現在の初歩的な捜査によれば、2011 年以来、この会社の実際上の経営者である呂某をトップとする犯罪集団が、村鎮銀行を利用し、一連の重大な犯罪に手を染めていた。

現在、これらの案件は進展をみていて、公安機関はすでに一部の容疑者を拘束している。 かつ一部の資金、資産を突きとめ、差し押さえ、凍結した。 これらの犯罪は長期にわたり、関わった人数も多く、状況は非常に複雑だ。

公安機関は、さらにこの案件の捜査規模を拡大し、犯罪者が法の外に逃れたり、懲罰を逃れたりできないようにしていく。 さらに損失回復の手立てを尽くし、市民の合法的権益維持と保護に努めていく。 合わせて、適切な時期にこの案件の捜査の段階的な状況を発表していく。

公安(警察)局とは別に、幹部の汚職を捜査する河南省党規律検査委員会・監察委員会も、6 月 10 日、河南集団投資の元首席発展顧問という要職にあった竇栄興(とう・えいこう)氏を拘束し、取り調べ中であると発表した。 竇氏は、呂奕氏の「盟友」と言われる人物だ。 さらに 6 月 17 日、河南省党規律検査委員会・監察委員会は、河南省財界の大物である中原銀行の魏傑(ぎ・けつ)副会長を拘束し、取り調べを始めたと発表した。 魏氏は同日付で副会長職を辞任したが、やはり呂奕氏の「盟友」とも囁かれる。

冒頭に「アリの一穴」と書いた理由の一つは、この 4 つの地方信金の詐欺事件が、中原銀行という河南省最大の地方銀行と一線上につながったからだ。 中原銀行の総資産は 1.2 兆元で、従業員は 2 万人を超える。

河南省トップは習近平の忠臣

中原銀行の経営に問題はないのか? またこうした地方信金の問題は、明るみに出ないだけで、中国各地で起こっているのではないか? 中国人の疑心暗鬼は膨らんでいった。 中原銀行は 5 月 27 日には、同じ河南省の洛陽銀行、平頂山銀行、焦作中旅銀行を吸収合併。 「河南省初の 1 兆元の『金融空母』誕生!」と大々的に宣伝したばかりだ。 河南省の省都・鄭州で行われた合併式典には、河南省トップの楼陽生(ろう・ようせい)河南省党委書記も参加した。

楼陽生党委書記は、現在 62 歳で、習近平(しゅう・きんぺい)総書記の浙江省党委書記時代の忠臣である。 2019 年 11 月、山西省党委書記に抜擢され、昨年 5 月に河南省党委書記に転じた。 今年後半に開かれる第 20 回中国共産党大会で、さらなる出世が噂される。 楼書記について私が驚いたのは、鄭州に勤務して間もない昨年 7 月から 8 月にかけて起きた未曽有の洪水被害の時だった。 河南省で 1,400 万人もの人々が被害に遭い、死者は 302 人に上った。 日々洪水被害が増しているのに、対応が後手後手に回ったことで、河南省の人々は「これは人災だ!」と怒りの声を挙げた。

私も、すわ、3 カ月でトップ交代かと見守っていた。 ところが楼書記は「お咎めなし」に終わったのである。 習近平総書記が守ったことは一目瞭然だった。 そんな楼書記は今年に入ると、習総書記に「恩返し」するかのような行動に出ている。 習総書記が推進する「動態清零(ゼロコロナ政策)」の徹底ぶりである。 1 月 11 日、人口 550 万人の安陽市をいきなりロックダウンにしたのを皮切りに、省内の各都市でロックダウンを断行。 5 月 2 日には、今回の金融詐欺事件の舞台になっている人口 70 万人の許昌市を、20 代の女性一人が感染者になったとして、ロックダウンにした。 「河南省恐るべし」と、多くの中国人も唖然とした。

抗議する預金者をスマホの防疫アプリを一方的に操作して「強制自宅隔離措置」に

実は「アリの一穴」と言える理由は、もう一つある。 今回の金融事件に関して、楼書記の裁断なしには不可能と思えるような事態が起こっているのだ。 それは、銀行に預金者たちが殺到したため、河南省はその対策として、預金者たちのスマホの「健康コード」を赤色にしてしまったのだ。 すなわち、コロナの感染者と同じ扱いで、「強制自宅隔離措置」である。 預金者が「強制自宅隔離措置」になると、その家族も同様になる。 実際、「禹州新民生にわずか 0.2 元の預金があるだけで、子供も学校に行けなくなった!」などという声が、SNS 上に上がっている。

さらに河南省は、建設中のマンションを買ったものの、その後、不動産会社の資金繰りが悪化し、建設がストップしてしまった際にも、すでにマンション購入費全額を収めた市民を、「強制自宅隔離措置」にしていることも暴露された。 「抗議せずマンション代は諦めます」とサインすれば、「コロナ感染者」から除外されるのだという。 こんな話が事実なら、まさに「ゼロコロナ政策の乱用」だ。 そんなこんなで、いろんな意味で今回の事件が、中国の「アリの一穴」となるリスクを秘めている。 (近藤大介、JB Press = 6-21-22)

◇ ◇ ◇

"8,000 億円" 出金停止 中国河南省で抗議活動激化

中国の銀行で、預金が引き出せない問題が起きていて、抗議する人が当局に連行される事態となっている。 河南省の 4 つの地方銀行では、2022 年 4 月から、およそ 8,000 億円の預金が引き出せなくなり、現地では抗議活動が行われ、当局も調査を始めている。 こうした中、中国の SNS では、返金を求める人が地元政府に連行され、ホテルとみられる場所に閉じ込められる様子が投稿されている。

「あなたは、ここから出られない。 出たらわたしが職を失う。(地元当局者)」
「政府がこんなことするのか? (返金を求める人)」
「そうだ。(地元当局者)」

返金を求める人の中には、突然、新型コロナウイルスの感染者として行動制限を求められたケースもあり、混乱が広がっている。 (FNN = 6-14-22)


「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来を暗示か

[深セン] デービッド・フォンさんが中国中部の貧しい村を出て、急発展を遂げる南部の深センに移り住んだのは、若かった 1997 年のことだ。 それから 25 年間、外資系メーカーを転々とした末、通学かばんから歯ブラシまで幅広い製品を手がける数百万ドル(数億円)規模の企業設立にこぎ着けた。 47 歳になったフォンさんには、インターネットに接続できる消費者向け機器を製造して海外進出する計画がある。 しかし新型コロナウイルス対策で 2 年にわたってロックダウン(都市封鎖)が繰り返されたことで、出荷コストは上がって消費者心理は冷え込んでしまった。 今では会社が存続できるかどうかを心配している。

「この 1 年、持ちこたえられればよいのだが」とフォンさん。 高層ビルが立ち並ぶ街を見下ろす最上階のオフィスで、商品に囲まれながら「商売の正念場だ」と語った。 フォンさんの出世物語は、深センそのものの歩みと重なる。 深セン市は、中国が経済改革に乗り出した 1979 年に誕生。 経済特区に指定された同市は、農村が集まる地域から主要な国際港湾都市へと変貌を遂げ、中国の名だたるハイテク、金融、不動産、製造企業が拠点を置くようになった。

過去 40 年間は、毎年少なくとも 20% の経済成長を記録。 オックスフォード・エコノミクスは昨年 10 月時点で、2020 年から 22 年に深センが世界トップの成長率を達成すると予想していた。 しかし今では、米カリフォルニアのシリコンバレーにあるサンノゼにその地位を奪われた。 深センの今年第 1・四半期の経済成長率はわずか 2% と、新型コロナの第一波で中国経済が停止状態となった 20 年第 1・四半期を除くと、過去最低となった。 深センは今も中国最大の輸出都市ではあるが、3 月にはロックダウンの影響で海外向け出荷が 14% 近く落ち込んだ。

深センは長年、中国の改革開放政策の成功ぶりを示す都市と見なされてきた。 習近平・国家主席は 19 年に同市を訪問した際、「奇跡の都市」と呼んだ。 オックスフォード・エコノミクスの世界都市調査ディレクター、リチャード・ホルト氏は、深センは「炭鉱のカナリア」であり、ここが苦しくなることは中国経済全体への警戒信号だと指摘する。

ロックダウンで魅力あせる

人口約 1,800 万人の深センではここ数年、地元を拠点とする大手企業が次々と災難に見舞われた。 通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は米国の制裁を受け、不動産開発大手、中国恒大集団は経営危機に陥った。 加えて 3 月には深センその他の都市で新型コロナ感染対策のロックダウンが敷かれ、深センで製造される製品への国内需要が落ち込んだ。

政府系シンクタンク、中国開発研究所のディレクター、ソン・ディン氏は 5 月のエッセーに、「深センの経済はぐらつき、傾き、低迷している。 深センは十分な勢いを失ったのではないかとの見方もある」と記した。 ロイターは深セン政府にコメントを要請したが、回答は得られなかった。 しかし市当局者らは内々に、深センの「奇跡」を持続させることが日増しに難しくなっていると認めている。

U ターンの潮時か

中国行きの国際便はほとんど停止し、ロックダウンにより港湾の作業は滞り、かつてにぎわった香港との境界も閉鎖同然となった今、深センはビジネスに向かない都市になってしまった。 深セン、香港、マカオなどを結ぶ中国の「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア、GBA)」構想は棚上げになったようにみえる。 かつて自社デザインを製品化しようと深センに押しかけていた海外企業家らの来訪も途絶え、数十軒の駐在員向けバーやレストランは閉店、もしくは地元民の嗜好に合わせた店に変わった。

外国の商工会議所は中国政府に対し、海外人材が大量流出すると警告している。 「中国のシリコンバレー」とも言われる深センは、野心と才能を備えた新卒者が中国全土から集まる都市でもあり、平均年齢は 34 歳と全国屈指の若さだ。 しかし景気減速によって新卒者の職探しも難しくなった。 ハイテク企業が集まる「ハイ・テク・パーク」地区近くにはアパートが密集しており、例年 5 月には不動産屋が家探しの新卒者でごった返す。 しかしある不動産代理店経営者は先月ロイターに対し、取り扱い件数が昨年の半分になったと明かした。 「貸します」の看板も目立つようになっている。

低賃金で働く出稼ぎ労働者の状況は厳しい。 生計費の上昇に苦しみ、不動産価格は全国有数の高さとあって家を持つこともかなわない。 マッサージ師のシュー・ジュアンさん (44) の友達は最近、成都市の故郷に帰って火鍋屋を始めた。 シューさん自身もそうしようかと考えている。 「飲食代ですら値上がりし過ぎているし、仕事はきついし、他の地方の生活水準はすごく良くなった。 そろそろここを離れる時かもしれない。」とシューさんは語った。 (David Kirton、Reuters = 6-18-22)


中国経済「バブル崩壊」へ … まさかの「第四の巨大不動産会社」デフォルト危機で "口座凍結パニック" も!

中国「大手不動産会社」に突然のデフォルト危機!

中国の不動産バブル圧縮政策によって、崖っぷちに追いやられていた恒大集団。 ここへきて、政府支援のもとで債務再編を進め、4 月の契約売り上げが 30.9 億元となったそうだ。 国内プロジェクトも 95% が再稼働したという。 5 月 4 日の段階で、中央銀行、銀行保険監督管理委員会、証券市場監督管理委員会の「一行両会」は不動産融資を支援せよとのシグナルを業界に出しており、不動産業界の環境も好転するかに見えていた。

だが、5 月 12 日、中国第四のデベロッパー融創が、7.42 億ドルの海外債権利息が未払いとなり、再び中国不動産企業のデフォルト問題が注目を浴びている。 それだけではない。 中国最大手デベロッパーの広東省の碧桂園が 5 月 7 日、福州全市のプロジェクトに関する口座が凍結され、一時的に出金できない騒ぎもあった。 果たして、中国不動産業界は復活するのか、それとも終焉となるのか。

融創は昨年、恒大集団がデフォルトに見舞われたころは "最も安全な企業" の一つとみなされていた。 だが今年になってデフォルト危機に直面。 この事件は、投資家たちに、比較的安全だと思われている不動産企業ですら、いつデフォルトに陥るかわからないというリスクがあることに気づかせた。

中国当局からの「5 月 4 日のメッセージ」

ロイターが内部関係者から取材したところによれば、融創はまさに対外債務の再編を進めているところで、支払い期限を延期したのだという。 融創の売り上げは中国不動産業界第三位。 国有企業からの戦略投資についても目下相談中だという。 融創は香港証券取引所において、この数週間に償還期限をむかえる 7,500 万ドルの利息を支払わないことを発表。 すでに専門の法律・金融顧問団を招聘し、企業の資本構造と流動性についての評価を始めている、としている。

過去数十年、中国の不動産業界の発展は黄金期であり、デベロッパーたちはハイレバレッジでチャンスを争ってきたが、そのことで債務が激増。 昨年から中国の市場監督管理当局は不動産業界の整理整頓を開始し、デベロッパーに対する融資を制限した。 このことでデベロッパーの資金流動が断裂し、デフォルトの波が一つ、また一つと押し寄せてきたのだった。 恒大集団は 3,000 億ドルの債務危機に見舞われ、このことは業界全体に波及した。

花様年ホールディングス(ファンタジア)、佳兆業集団、中梁ホールディングスなどのデベロッパー企業が次々とデフォルト警報を出し、実際に華夏幸福、泰禾集団、藍光発展、新力ホールディングス、陽光 100 などが経営・債務危機に直面した。 こういった状況をうけて、中国当局は不動産業界に対する融資緩和のメッセージを 5 月 4 日に出したばかりだった。 融創について、もう少し説明すると、発行済の企業債券は 77 億ドルで、これは中国デベロッパーとしては第四位の高額だ。

ブルームバーグによれば、融創は、すでに資金調達の困難に直面し、また新型コロナ感染状況の悪化によっても売り上げが打撃を受けているという。 融創は「中国不動産業のマクロ環境に巨大な変化が発生した」と説明している。

典型的な「高回転モデル」

もうひとつの騒動になっている碧桂園の口座凍結問題については、福州で推進されていた世茂集団と碧桂園、保利集団のデベロッパー三者の合同プロジェクトが原因だった。 三者の株式比率は 34%、33%、33%。 これは典型的な不動産高回転時代(完成前から販売を開始し、資金繰りを早回しするモデル)の産物で、昨年 5 月から分譲を開始したら、その後半年のうちに次々と不動産の品質問題が起きた。

5 月 6 日、世茂集団傘下の福州世茂世睿不動産が出した解決法は、品質問題が起きたマンションについては、適時修理を行うと約束すると同時にマンション管理者に事業からの退却の余地を提供するということだった。 口座凍結は、マンション管理者の退却問などの解決法案が順調に進められることを保障することが目的だという。 しかし、5 月 6 日、福州管理当局とプロジェクト関係者の間で意見対立が起きた。

市場はパニック!

碧桂園側が管理当局に対し「政府側が建築安全問題を非常に重視するために、このような矛盾が発生した」と、当局側の基準の厳しさにも問題があると言い出したのだった。 実は 4 月末の政治局会議で商品用住宅の前売り資金の管理の最適化が要請されていた。 福州市の措置はこの要請を受けてのことだった。 碧桂園が福州にもつ全市範囲のプロジェクト口座が凍結されてしまい、投資家たちには、当局によって、同様に不動産リスクが発生することが増えていくのではないかと懸念が広がったのだった。

事態はまた急変し、7 日午後には凍結されていた碧桂園の前売り資金管理口座に対する凍結の解除命令がだされ、すでに通常に処理できるようになった。 だが市場では今度は碧桂園の成都などのプロジェクトの前売り資金口座に対する管理強化がされるという噂が流れた。 その後、いくつかのメディアが裏とりに走ったところ、福州当局のような通知を出した都市はほかにはなかった。 だが、一部市場はパニックを起こし、碧桂園株が売りに出され、利益を得た投資家もあった。

中国指導部の「意見対立」

こうした状況が示すことは、過去の不動産高回転時代、不動産黄金期時代が終わり、市場と管理監督政策に大きな変化が起きてくる、ということだ。 この外部監督管理環境のいかに適応するか、それを見誤ると、融創や碧桂園のような「安全企業」とみなされていた企業もデフォルトリスクに直面するということだ。 さらに問題なのは、今、中国の経済政策の方向性を正しく見極めることが極めて難しくなっていることである。 (福島香織、現代ビジネス = 5-27-22)

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中国恒大、債務 2 兆 4 千億円分返済検討

【北京】 ロイター通信は 27 日、経営危機の中国不動産大手、中国恒大集団が約 190 億ドル(約 2 兆 4 千億円)分の外貨建て債務について、子会社株式と交換するなどの方式で返済を検討していると伝えた。 (kyodo = 5-27-22)


人民元安の黙示、1 国 3 通貨の限界 15 年型切り下げも

人民元に香港ドル、マカオパタカと 3 通貨を抱える中国。 社会統制を強め、異例の 3 期目に向かう習近平(シー・ジンピン)総書記の下、その利用価値は急速に薄れ、限界が近づいている。 一部の市場関係者は最近の人民元の急落を通貨統一の黙示ととらえている。 人民元が 13 日、1 米ドル = 6.81 元台と約 1 年 7 カ月ぶりの水準に下落した。 4 月下旬からの下落率は 6% 強。 景気減速や米国との金利差拡大が理由だが「地域通貨としての人民元普及という中長期的な深謀遠慮がうかがえる。(UBS SuMi トラスト・ウェルス・マネジメントの青木大樹氏)」

共産党中央にとって納税手段が複数あるのは不都合だ。 通貨を統一し、「一物一価」とする必要がある。 それには購買力平価からみて、割高な通貨は切り下げ、割安な通貨は切り上げて購買力格差を縮めておく方が後の経済・社会的混乱を回避しやすい。 購買力平価を示す英エコノミスト誌の「ビッグマック指数」によれば、今年 1 月時点では人民元に対して香港ドルは 26% 割安だった。 現状のまま香港ドルを人民元に吸収すると、香港ドルを持っている人は購買力の点で不利になる。 資本逃避さえ起きなければ人民元安は理にかなう。

中国の通貨政策は政治で動く。 人民元を突然切り下げた 2015 年夏は国際通貨基金 (IMF) の SDR (特別引き出し権)組み入れに向けた実勢レートの調整が目的だった。 通貨統一の布石として人民元再切り下げの可能性も排除できない。 東京財団政策研究所の柯隆氏は、人民元と香港ドルは 3 段階を経て統合されるとみる。 第 1 は香港の国際金融都市機能の空洞化。 第 2 は香港ドルの利用価値の大幅な低下。 第 3 は香港ドルを 1 米ドル = 7.75 - 7.85 香港ドルの範囲で米ドルに連動させるペッグ制の廃止だ。

すでに香港金融の地盤沈下は進み、第 2 段階にさしかかっている。 金融仲介のタレットプレボンによれば香港ドルと米ドルを 1 年後に受け渡しする「フォワードレート」は 3 日、1 米ドル = 7.84 香港ドル近辺と民主化デモがエスカレートした 19 年秋以来の水準に一時下落した。 過去 10 年でレンジの下限前後に達したのは 16 年、19 年、20 年、そして今年の 4 回しかない。 フォワードレートの下落はペッグ制の持続可能性に対する市場の疑念を示す。

香港金融管理局 (HKMA、中央銀行に相当)は 12 日、香港ドル売り圧力の強さから約 3 年ぶりに香港ドル買い・米ドル売り介入を迫られた。 香港ドルの維持コストが増している。 世界経済にとって、さらに深刻なのは半導体の集積地、台湾を巡る米中対立だ。 英フィナンシャル・タイムズ (FT) によれば、米英は台湾有事における緊急対応策の協議を急ぎ、中国は金融制裁から海外資産をどう守るか議論を詰めている。

米国による台湾株への投資残高は台湾の時価総額の2割弱に当たる 3,300 億米ドル(42 兆円)。 中国本土株や香港株よりもはるかに多い。 一方中国は 3 月に米国債を 270 億米ドル売り越した。 米中貿易摩擦が激化した 19 年 8 月以来の大きさだ。 米中が保有する国債や株式は米連邦準備理事会 (FRB) の量的引き締めが始まると、より「地経学的手段」としての重みを増す。

市場には「香港の例があるだけに習氏は台湾に対してより強硬に『中国化』を進めるはずだ(楽天証券経済研究所の加藤嘉一氏)」との見方がある。 そうなれば、人民元と台湾ドルの統一も非現実的な話と切り捨てるのは難しくなる。 本土復帰で法定通貨を米ドルから円に切り替えた 1972 年前後の沖縄では物価高騰による経済へのダメージが長引いた。 習政権が 3 期目に経済統制の横車を押せば、世界の成長フロンティアは一段と狭まり、グローバル市場は縮小均衡に陥るリスクが高まる。 (編集委員 永井洋一、nikkei = 5-22-22)


中国最高指導部「ちぐはぐメッセージ」への疑念
ゼロコロナか経済か、コロナ対策を巡り意見対立か

中国の李克強首相は 7 日、「複雑で厳しい」雇用情勢について警告し、何カ月もそうした警告を発していた人々をも危惧させたが、それが注目される理由はほかにもある。 習近平国家主席が推進する「ゼロコロナ」戦略への言及がなかったことだ。 数日前には共産党中央政治局常務委員会が上海を含む国内各地のロックダウン(都市封鎖)につながった同戦略について、疑いを挟まないよう警告したばかり。 同委の声明に経済に関する言及はなかった。

中国最高指導部からのちぐはぐなメッセージは、新型コロナウイルスを一掃し、経済成長を可能にする方法を見つけなければならない地方当局者の混乱を招いただけでなく、コロナ禍を脱出する最善の方法を巡り指導部内で意見が割れているのではないかとの疑念をもたらした。 ローウィー研究所(シドニー)の上級研究員で「中国共産党?支配者たちの秘密の世界」の著者リチャード・マクレガー氏はそうしたメッセージについて、「コロナとその影響に関する指導部内の意見の相違を表している。 さらなるロックダウンは経済的損失に見合った価値があるかどうか、中国は真剣な議論が必要な段階を迎えている。」との見方を示した。

ワクチン普及と死者数減少に伴い、世界の多くの国・地域が通常の生活への復帰を目指す中、中国はゼロコロナ政策を堅持している。 ロックダウン頼みの同政策により、上海では 2,500 万人の住民の多くが 1 カ月以上にわたって制限下に置かれ、首都・北京でもこのところ規制がさらに強化されている。

北京に本拠を置くコンサルティング会社トリビアム・チャイナの上級アナリスト、アンディ・チェン氏は、中国指導者らの間で政策の優先課題が食い違っているとは考えていないとして、党を運営する政治的リーダーの習氏とは対照的に、李首相は経済に焦点を当てなくてはならないと指摘した。 「コロナ感染抑制は力強い経済モメンタムを維持する前提条件・基盤だと当局は捉えている。 したがって、雇用確保を強調することはコロナ対策の方が優先度が低いという意味ではない。 コロナ対策は今も最優先事項だ。」とチェン氏は語った。

マクレガー氏は、退任の準備を進める李首相が政策課題に関する主張を強めるかどうかが注目されると指摘。 「鍵となるのは、李首相が経済について公の場で発言し続けるかどうかだ。 その場合は、対立が本当に起きている可能性がある。」と述べた。 (Bloomberg/東洋経済 = 5-13-22)