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独アウディ、中国「EV 工場」の建設計画が足踏み
「中国政府の許認可に遅れ」と独メディア報道

ドイツの高級車メーカーのアウディが中国で計画している EV (電気自動車)の現地生産プロジェクトが、中国政府の許認可の遅れにより足踏みしていることがわかった。 11 月 29 日、ドイツの自動車専門メディアの『アウトモビルウォッヘ』が、アウディ関係者からの情報として報じた。 この報道によれば、ドイツ経済エネルギー省の後押しにより、プロジェクトは中国の所管当局の許認可を 12 2月中に得られる可能性があるという。 アウディの中国法人は 11 月 30 日、財新記者の照会に対して「関係する各方面が緊密なコミュニケーションを取っている」とコメントした。

アウディは 2020 年 10 月、中国の国有自動車大手の中国第一汽車集団(一汽)と高級 EV を共同生産することに合意し、覚書を結んだ。 2021 年 3 月には合弁会社の「アウディ一汽新能源汽車」を新たに設立、資本金の 60% をアウディおよび親会社のフォルクスワーゲン (VW) が、40% を一汽が出資した。 つまり、合弁会社の経営権を(外資である)アウディ側が握ったということだ。

外資規制緩和で合弁会社を新設

中国の自動車産業では、中国政府が 1994 年に施行した外資規制が 20 年余りにわたって維持されていた。 外資系メーカーが乗用車を現地生産する場合、中国メーカーとの合弁が義務づけられ、外資側の出資比率は 50% 以下に制限された。しかし 2018 年 4 月、中国政府はこれらの規制を段階的に緩和し、5 年以内に全廃すると発表した。 そして、規制緩和の最初の対象に選ばれたのが EV などの「新エネルギー車」だった。 これを受けて、2018 年 7 月にはアメリカの EV 大手のテスラが、100% 出資の現地法人による工場建設を上海市で開始した。

(訳注 : 新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車 (FCV)、プラグインハイブリッド車 (PHV) の 3 種類を指す。 通常のハイブリッド車 (HV) は含まれない。)

アウディが EV 生産のために新たな合弁会社を立ち上げたのも、この規制緩和が背景だ。 一汽と結んだ覚書によれば、アウディとポルシェが共同開発した EV 専用車台「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック」をベースにした(中国市場向けの)新型車を開発し、2024 年に量産を始める計画だった。 (余聡、中国・財新/東洋経済 = 12-14-21)


「電池交換式 EV」は一つの柱に育つか 中国政府も推進 早い安いだけでないメリット

|電池交換式 EV 充電 "第三の方式"

EV (電気自動車)の普及が進んでいる中国では、電池交換式 EV が急激に拡大しているようだ。 乗用車 EV もあれば、EV トラックもある。 今回はこのような電池交換式 EV の課題や将来像について考えてみたい。 中国工業情報省は 2021 年 11 月、全国 11 都市を対象に電池交換式 EV 向けのインフラ整備や車両の開発を進めると公表した。 中国国内で電池交換式の乗用車 EV や EV トラックが増加し始めたことが背景にある。 電池交換ステーションは 2021 年 10 月時点で約 1,100 カ所存在するが、さらに 1,000 カ所以上増やす方針で、これまでの北京、上海、深センのみならず、大都市の多くが含まれている。

従来、EV の充電はケーブルを接続する「コンダクティブ充電」と、ワイヤレスにてグラウンド側機器から車両へ送電を行う「ワイヤレス電力伝送」に二分していた。 またコンダクティブ充電には、日本国内であれば 100V、200V の普通充電と、大出力で充電を行う急速充電がある。 直近の実例でいえば、急速充電器は日本国内で約 8,000 基、中国では約 30 万基に達している。 近年は大容量の電池を搭載した車両が増えたことから、日中共同開発案件として、超急速充電(ChaoJi : チャオジ)の開発も進められており、2022 年から中国にて実用化見込みである。

なぜ今「電池交換式」なのか 「早い安い」だけでないメリット

それらとは全く別の方式として電池交換式がある。 なぜ今、電池交換式 EV が普及してきたのかと考えると、ユーザー視点でみた場合、3 つの利点があるように思う。

  • 充電に比べ、電池交換式 EV は交換時間が極めて短い

    電池交換式 EV の場合、乗用車 EV では交換時間に 1 - 2 分程度、EV トラックでも 3 - 5 分であり、電池交換ステーションに入庫して短時間で済む。 対して充電の場合は、急速充電でも乗用車 EV で 80% まで約 30 分、EV トラックでは 2 - 3 時間を要する状況で、交換式のほうが圧倒的に早い。 ガソリン車の給油より早いといっても過言ではないくらいである。

  • 車両価格が安い

    EV は電池価格が高価であるため、必然的に車両価格も高くなる。 しかし、電池交換式 EV の場合、最初から電池を差し引いた価格で販売していることから、ユーザーにとっては購入価格が安くなる。 電池交換式 EV として有名な NIO の場合、電池交換式を選択し、レンタルとすることで車両価格は約 120 万円安くなるようだ。 また、電池交換は月額 1 万 6,000 円前後のサブスクリプションサービスに対応しているとのこと。

    EV トラックの場合はさらに差が大きくなる。 電池価格を差し引いた車両価格は通常に比べて 200 - 300 万円差し引いた設定が多い。 電池交換費用も月 2 万円前後とのこと。このような影響のためか、中国では、ルートがほぼ固定された場所を走行するトラックを中心として、既に 1 万台以上の EV トラックが実用化されている。

  • 電池交換式 EV の電池は電池メーカーが主導

    実はこれが購入するユーザーからみて、最も大きな安心材料なのかもしれない。 電池交換式乗用車のNIOやEVトラックは、車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が主導して実用化している。実際の電池交換サービスは、他の民間企業に任せているものの、電池を交換する際の技術、品質的な部分は電池メーカーが主導しているため安心感につながっている。またCATLは主要トラックメーカーを集め、電池サイズや取り付け方法などの標準化を進めているようだ。

日本に先例があったが …

振り返ると、電池交換式 EV はこれまでになかったわけではない。 2010 年初頭、ベタープレイス社が日本において電池交換をメインとする新ビジネスモデルの構築を公表した。 しかし、当時は自動車メーカー、電池メーカーとも、電池が競争領域のため積極的に参加しなかった。 また、EV は黎明期のため、進化スピードが著しく、形状なども固定化されることに後ろ向きであったし、交換した電池に対する品質保証懸念も考えられた。 結果として、ベタープレイス社は行き詰まり 2013 年 5 月に清算となった。

筆者も、これまで電池交換式 EV は普及が難しいと考えてきたが、中国のように EV が急激に普及し、かつトラックまでも EV 化の推進が始まると、多くの車両が充電スタンドで充電するのではなく、ある規模の車両は、充電した電池を交換することが理にかなっているように思える。 また、交換時間、車両価格、品質の3点が揃っていることも大きい。 筆者の勝手な予想であるが、中国の場合、2030 年には新エネルギー車の中で、乗用車部門で 2 割、トラック部門では 3 割が電池交換式なるのではと考えている。

なお、日本でも似たような動きはある。 2021 年 6 月、ENEOS ホールディングが北米のスタートアップ企業 Ample と組んで、電池交換式の実証試験を行うと発表した。 タクシーや貨物輸送事業者を対象に、稼働率、運用コスト、サービス料金、諸規制などを検討するようだ。 ENEOS ホールディングの場合、既存のガソリンスタンドを将来的に電池交換ステーションとして活用できる点も大きなメリットであろう。 しかし、日本ではまだ電池交換式の車両も少なければ、電池を供給できるところも少ない。 上記 3 つの要件を揃えることができるかが実用化のカギとなるのではないだろうか。 (和田憲一郎、Merkmal = 12-8-21)


中国で EV 開発・生産加速へ ホンダ 2 車種発表

ホンダは、中国で 2022 年春に発売する EV (電気自動車)を発表し、現地での開発・生産を加速する方針。 ホンダは 13 日夜、2022 年春に中国でホンダブランドとして初めて発売する、SUV タイプの EV 2 車種を発表した。 今後、「e : N」シリーズとして、中国国内で開発・生産した EV を、5 年間で 10 車種投入し、中国からほかの国への輸出も計画している。 2023 年の稼働を目指して、中国に EV 専用の工場を 2 カ所建設し、2030 年以降は、ガソリン車の新モデルの投入をしない方針も明らかにした。 井上勝史中国本部長は、「中国でリードする車をつくれば世界で通用する」と話している。 (FNN = 10-14-21)


中国で続々出現 EV の墓場

上海支局・森岡紀人記者の報告です。 世界一の EV = 電気自動車大国の中国で、EV が放置される、いわゆる「EV の墓場」が社会問題になっています。 なぜ EV が捨てられるのか。 中国ならではの事情がありました。

森岡紀人記者「すごいですね。 見てください。 自動車が敷地を埋め尽くすように停められています。 数百台以上あるでしょうか。」

上海から車で 2 時間ほどの浙江省嘉興市。 ここは EV = 電気自動車が、大量に放置されている「EV の墓場」です。 一部の車はバンパーやボンネットが外れていて、ボロボロ。 敷地内では部品をとるのでしょうか、解体作業が行われています。

作業員「数か月前にここに運ばれてきました。 全部で 1,000 台くらいあるよ。」

実はこの EV、かつて上海などでカーシェア用に使われていた車です。 中国で続々と出現している「EV の墓場」には、このカーシェア事業が深く関係しています。 白い車体に緑のロゴが特徴のシェア自動車「EVCARD」。 SUV やセダンタイプなどがあり、最も小さい車の場合、1 分およそ 10 円で利用することができました。 かつては上海市内の駅など市内 4,000 か所の駐車場に 8,000 台が配置されていましたが …。

記者「上海の高速鉄道の駅前に EVCARD のシェアカーが停められていたのですが、現在は充電スタンドは残されていますが、車は一台も停まっていません。」

EVCARD は事業の不振により 2019 年にカーシェア事業から撤退。 日本でも広まりつつあるカーシェアですが、中国では下火なのです。 中国では 2016 年頃からスマートフォンで簡単に利用できるシェア自転車が爆発的に広まりました。 シェアビジネスへの期待が高まり、次は自動車が普及するとにらんで各地でカーシェア会社が乱立。 しかし、中国ならではの事情でその思惑は外れてしまいます。

記者「スマートフォンのアプリを立ち上げて目的地を設定します。 そして呼び出しボタンを押すと、あっという間につかまりました。」

タクシーをスマートフォンで手軽に呼ぶことができるうえ、料金がそもそも安いこともあり、自ら運転しなければならないカーシェアは利用者をひきつけられませんでした。

市民「タクシーの方が便利です。 カーシェアは使った後指定の駐車場に返さないといけないので時間が無駄になる。」 「1、2 回シェアカーを使いましたが、駐車場が少なかった。」

中国政府は EV 普及のためメーカーや購入者、そしてカーシェア会社に補助金を出し、利用を促してきました。 その結果、大量の EV が行き場を失うことになったのです。 世界の EV 市場で主導権を握る、という政府の方針は当分変わらないとみられ、今後も各地で「EV の墓場」が出現するかもしれません。 (TBS = 9-26-21)


中国バッテリー業界、テスラの新型電池を巡り波乱の予感

米 EV 大手テスラが中国国内で、新型の車載用円筒形電池「4680」の提携メーカーを探し始めている。 すでにテスラに車載電池を供給している CATL (寧徳時代)や LG 化学のほかに、EVE エナジーなどとも交渉が進んでいるという。

EVE エナジーと提携している関係者によると、協議されている提携方式の一つは「テスラが設計した 4680 電池の生産をバッテリーメーカーに委託する」というもの。 ただ 4680 は新技術を採用した電池であり、業界全体としては 2023 年に量産開始との認識だと、別の関係者は指摘する。 まだサンプルすら出せていない企業も多く、OEM 生産の話はあってもごく初期段階だということだ。

この件について 36Kr がテスラ中国法人に問い合わせたところ、「ノーコメント」という回答だった。 事情に通じた人物によると、CATL や LG 化学がテスラと 4680 生産の交渉を行っているほか、円筒形電池一筋に打ち込んで来た BAK バッテリー(比克電池)も自らをテスラに売り込んでいるという。 「CATL は『如意棒』というプロジェクト名で、円筒形電池の生産体制を急ピッチで整えている」とある関係者は明かす。 これについて CATL 側のコメントは得られていない。

テスラは昨年 9 月に開催した電池事業の説明会「バッテリーデー」で、電極タブを廃止したタブレス円筒形電池 4680 を発表した。 これまでテスラが採用していた 2170 電池に比べてエネルギー密度が 5 倍、出力は 6 倍になり、航続距離は 16% 向上した。 しかもキロワット時当たりのコストは 14% 削減できる。 テスラが 4680 へのシフトを表明したことは、バッテリーメーカーにとって大きなチャンスと言える。 これを機にテスラのサプライチェーンに食い込み、業界の勢力図を書き換えられるかもしれないからだ。

テスラは 4680 を発表すると共に、実用化に向けてペースアップしている。 第 2 四半期決算のカンファレンスコールでイーロン・マスク CEO は、4680 の性能や寿命はすでに検証が終わっているほか、製造に関する検証も完了間近で、今は生産工程の改良に取り組んでいるところだと明かした。 今後、米テキサス州とドイツ・ベルリンの工場で生産されるセミトラックとモデル Y に 4680 が搭載される。

ベルリン工場の主な施設はすでに完成しており、現在はドイツ当局の審査を待っているところだ。 今年第 4 四半期には最終的な承認が得られる見込みで、操業開始は来年になると見られる。 これに伴い、4680 の製造技術もほぼ同時期に中国に導入されるものと考えられる。 今やテスラは年間販売台数 100 万台を目指す巨大企業に成長した。 2020 年に全世界で販売した EV は 49 万 5,000 台、今年の上半期はすでに 38 万 6,000 台を売り上げており、うち中国市場での販売台数が 16 万台と、半数近くを占めている。

サプライチェーンの一部がテスラに対していくらか様子見の態度を示していた数年前とは状況が大きく変わった。 特にバッテリーメーカーにとっては、テスラとの契約を取れるかどうかで業界内での順位が変わってくるのだ。 テスラは生産能力の拡大に伴い、サプライチェーンを分散させ始めている。 これまでリン酸鉄リチウム (LFP) 電池は主に CATL が、円形電池は LG 化学が供給してきたが、今年に入ってから他のサプライヤーとも交渉しているとのうわさが飛び交ってきた。 大手バッテリーメーカーも、新技術の実用化に伴う業界再編の波に十分警戒する必要があるだろう。 (36Kr = 9-5-21)


独ブランド買収の中国自動車メーカーに重いツケ

福田汽車、減損迫られ利益を 83 億円押し下げ

中国国有自動車大手の北京汽車集団の傘下企業で、大型トラックなど商用車を主力にする福田汽車は、7 月 23 日、2021 年 1 - 6 月期の決算報告を開示した。 そのなかで同社は、関連会社である「宝沃汽車」の経営不振による減損損失が、税引き前利益に 4 億 9,000 万元(約 83 億 5,000 万円)のマイナスをもたらしたと明らかにした。 宝沃汽車の社名の由来は、1961 年に破産したドイツの自動車ブランド「ボルクヴァルト」である。 2014 年に福田汽車は 500 万ユーロ(約 6 億 4,980 万円)でボルクヴァルトのブランド利用権を買い取り、2016 年に宝沃汽車を設立。 福田汽車の乗用車技術をベースに開発した数種類のモデルを発売したが、販売はまったく振るわなかった。

2018 年に福田汽車は宝沃汽車の不振のあおりを受け、純損益が約 36 億元(約 613 億 4,400 万円)の赤字に転落した。 同年 10 月、福田汽車は(子会社の損失が親会社の連結決算に及ぼす影響を軽減するために)宝沃汽車の発行済み株式の 67% を競売にかけて手放した。 その株式を取得したのは、当時 M & A (買収・合併)で勢力を拡大していた「神州系」と呼ばれる新興企業グループを率いる陸正耀氏の関連会社だった。 ところが、神州系は資金ショートに陥って株式の取得代金を支払えなくなり、福田汽車の財務をさらに圧迫する結果になった。

未収金の残高にはさらなる減損リスク

福田汽車には、宝沃汽車に関連する資金の焦げ付きが主に 2 つある。 1 つ目は神州系から回収不能となっている 67% の株式の譲渡代金、2 つ目は福田汽車から宝沃汽車への貸付金で、合計約 82 億元(約 1,397 億 2,800 万円)に上る。 福田汽車が 2020 年 4 月に開示した情報によれば、その時点で株式譲渡代金のうち 14 億 8,000 万元(約 252 億 1,900 万円)が未回収であり、貸付金については未返済分の支払期限を延長していた。

宝沃汽車関連の未収金の残高には、今後さらなる減損リスクがある。 2021 年 6 月 30 日時点の財務諸表には、株式譲渡の未回収金が時価評価の減損を折り込んでも 10 億 1,600 万元(約 173 億 1,300 万円)、宝沃汽車への貸付金が同じく減損を折り込んでも 13 億 6,600 万元(約 232 億 7,700 万円)、それぞれ計上されている。 目下の経営状況からみると、宝沃汽車が苦況を自力で抜け出すのは難しい。 宝沃汽車が北京市の環境保護局に提出した文書によれば、2020 年 2 月から 2021 年 6 月末までの期間、宝沃汽車の工場はまったく稼働していなかった。 (中国・財新、安麗敏、東洋経済 = 8-23-21)


5 月の中国「商用車販売」 1 年ぶりに減少の裏事情
新排ガス規制導入前の駆け込み需要が終了

中国汽車工業協会は 6 月 11 日、2021 年 5 月の中国国内の自動車販売台数が前年同月比 3.1% 減の 212 万 8,000 台だったと発表した。 月次の販売台数が前年同月を下回ったのは、2021 年に入ってから初めてのことだ。 その主因は大型トラックを中心とした商用車販売の大幅減少だ。 同協会のデータによると、5 月の商用車の販売台数は前年同月比で 7.4% 減った。 商用車の販売台数の前年同月割れは、2020 年 4 月以降で初めて。 ここに至るまで、商用車市場は 1 年近く右肩上がりで成長し、月次の販売台数は過去最高を幾度となく更新していた。

同協会の副秘書長を務める陳士華氏は、商用車販売がこの 1 年近く爆発的に伸びたのは、新たな排ガス規制の導入を控えて、需要の先食いが起きた結果だと説明した。 中国では 2021 年 7 月 1 日以降、国内市場向けに生産、輸入、販売、登録されるすべての大型ディーゼルエンジン車に対して、欧州の現行の排ガス規制である「ユーロ 6」よりも厳しい「国 6」と呼ばれる新基準をクリアすることが義務付けられる。

半導体供給不足も影響

陳副秘書長によると、「国 6」をクリアできる大型トラックの価格は従来基準の「国 5」に比べて、1 台あたり 2 万元(約 34 万円)以上高くなる。 そのため多数のユーザーが、7 月 1 日が来る前に「国 5」の大型トラックを駆け込み購入したのだ。 一方、5 月は乗用車の販売台数も前年同月比で 1.7% 減少した。 商用車とは異なり、原因は業界を半年余りにわたり苦しめている半導体の供給不足だ。 陳副秘書長は、「半導体を巡る問題は、いまだに深刻な状況で、大多数の自動車メーカーが減産せざるをえない状況だ」と語った。

とはいえ同協会は、2021 年の通年の販売に関しては、先行きを楽観視している。 陳副秘書長は「半導体の供給不足は 2021 年 7 - 9 月期にはある程度好転し、10 - 12 月期には大きく改善する」との見解を示した。 その前提で、同協会では 2021 年の通年の自動車販売台数は前年比 6.5% 増の 2,700 万台に達すると予測している。 (劉雨● = 金偏に昆 =財新/東洋経済 = 6-28-21)


テスラが中国で約 28 万 5 千台のリコール届け出

アメリカの電気自動車大手「テスラ」は 26 日、中国当局にリコールを届け出ました。 対象はおよそ 28 万 5,000 台に上ります。 中国の国家市場監督管理総局によりますと、リコールの対象は 2019 年の 1 月から 11 月に輸入された「モデル 3」と、2019 年 12 月から今年 6 月に中国で生産された「モデル 3」、そして今年 1 月から 6 月に中国で生産された「モデル Y 」の、あわせておよそ 28 万 5,000 台です。

運転支援システムに不具合があり、急なカーブを曲がる際などにシフトレバーを操作すると急加速して事故を起こすおそれがあるということです。 テスラは不具合を解消するために無料でソフトの更新を行うということで、「国家の要求に厳格に従い、安全性を絶えず改善・向上させる」とのコメントを発表しました。 テスラをめぐっては今年4月、上海モーターショーでオーナーがブレーキに不具合があると抗議する騒ぎが起き、当局もテスラに対し品質の確保を求めていました。 (TBS = 6-27-21)

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テスラの中国販売が軟調に、投資家に懸念広がる

ニューヨーク : 中国で米電気自動車 (EV) 大手テスラをめぐる悪いニュースが最近相次いだことを受け、売り上げに打撃が出ている模様だ。 投資家の間では懸念が広がっている。 中国乗用車市場信息聯席会が公表した数字によると、中国でのテスラ車の 4 月の販売台数は 2 万 6,000 台を割り、3 月から 27% 減となった。 一方、上海蔚来汽車 (NIO) や小鵬汽車(シャオペン)、理想汽車(リ・オート)といった中国の EV メーカーはいずれも国内販売が改善した。

中国では先月、上海で行われた国内最大のモーターショーで、テスラ車のオーナーが車に問題があると抗議する一幕があった。 また中国の 5 つの規制当局は、上海で製造されたテスラの「モデル 3」の品質に疑義を提示。 さらに車載カメラがスパイ行為に利用される可能性があるとの懸念から、中国軍が軍施設へのテスラ車の進入を禁じたとの報道もある。 テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) はスパイ行為に利用される可能性を否定している。

ウェドブッシュ証券のハイテク部門アナリスト、ダン・アイブス氏は「テスラの 4 月の売り上げが引き続き落ちることは予想されていたが、これほどとは見られていなかった」と語る。 11 日にはロイター通信の記事も株価の打撃となった。 ロイターが事情に詳しい複数の情報筋の話として伝えたところによると、テスラは米中通商摩擦をめぐる不透明感を理由に、上海工場を世界的な輸出拠点に拡張するための土地取得計画を停止したという。 中国販売減速のニュースとロイターの報道を受け、テスラ株は 11 日の早い時間帯の取引で 3% 下落。 株式市場開始前の取引ではさらに下げていた。

テスラの株価は昨年 743% の目覚ましい上昇を見せ、同社は米国で最も評価額が高い企業のひとつとなった。 自動車メーカーとしては優に世界一の評価額であり、6 大自動車メーカーの合計に匹敵する。 ただ、今年は最初の数週間こそ好調が続いたものの、2020 年 10 - 12 月期の決算がやや期待外れに終わると、1 月後半には株価が頭打ちに。 テスラ株は今回の下落前にすでに、ピーク時から 29% 下げて弱気相場入りしていた。 (CNN = 5-12-21)

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中国軍、テスラ車の利用禁止 位置データなど漏洩懸念

【北京 = 多部田俊輔】 中国の人民解放軍が 19 日、軍人に米テスラの利用を事実上禁止したことが明らかになった。 車両に搭載したカメラなどから軍事機密が漏れるのを防ぐためとしている。 米中の外交トップの直接会談で激しい応酬が繰り広げられたことから、中国当局が米側に圧力をかけているとの見方も浮上している。 関係者によると、人民解放軍の複数の部隊が 19 日、所属する軍人にテスラを利用して軍事施設や駐屯地などに乗り入れることを禁じた。 全方位カメラや超音波センサーから位置情報などの軍事機密が漏洩する恐れがあるとしている。

中国の国家市場監督管理総局と共産党中央インターネット安全情報化委員会弁公室、工業情報化省などは共同で 2 月にテスラの中国子会社を事情聴取したと発表した。 関係者によると、異常な加速や発火だけでなく、利用者の走行情報を中国から持ち出している疑いについて説明や対応を求めたとみられる。 中国当局の規定で、電気自動車 (EV) やプラグインハイブリッド車 (PHV) などの新エネルギー車は走行する位置や電池使用などリアルタイムの車両情報を当局に提供することが義務付けられている。 テスラはその規定を守っていないとの疑いも出ている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、軍に加えて政府の職員についてもテスラの利用を制限している。 中国の地方政府幹部は「テスラが中国の法律や規則を守っていないならば、利用を制限されるのは当然の措置だろう」と話す。 英調査会社 LMC オートモーティブによると、テスラの 2020 年の中国販売台数は 14 万 5,000 台。 前の年よりも約 3 倍に増え、新エネ車としては上海汽車集団、比亜迪 (BYD) に次ぐ 3 位に急浮上した。 海外旅行ができない富裕層や中間層が現地生産で値ごろ感のあるテスラの購入を増やしている。

テスラの世界販売台数の約 3 割を占め、中国販売の拡大は 20 年 12 月期で初めての最終黒字となる原動力となった。 米国企業を味方につけたい中国政府はこれまでテスラを優遇し、外資の自動車メーカーとして最も早く全額出資の製造販売子会社の設立を認めたが、米中対立の激化でテスラへの風向きが変わる可能性もある。 ブリンケン米国務長官と楊潔チー中国共産党政治局員は 19 日(日本時間 20 日)、米アラスカ州アンカレジでの 2 日間の会談を終えた。 バイデン政権発足後、初となる米中外交トップによる対面協議だったが、台湾や香港問題などの主要な対立点を含めて議論は平行線に終わった。 (nikkei = 3-20-21)

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中国当局、米テスラに行政指導 電池発火や異常加速巡り

[北京] 中国政府当局者は米電気自動車 (EV) メーカーのテスラに対し、消費者から電池の発火や異常な加速、無線ソフトウエアの更新失敗が報告された問題を巡り行政指導を行った。 中国国家市場監督管理総局 (SAMR) が 8 日、ソーシャルメディアへの投稿で発表した。 発表によると、SAMR、工業情報化省、緊急管理省、サイバースペース管理局、交通運輸省の当局者がこのほど、テスラの幹部と会合した。 詳細な日程は示されていない。

当局者はテスラが中国の法律に沿って事業を運営し、消費者の権利を保護するよう要請。 これに対し、テスラは消費者から報告された問題を徹底的に調査し、検査を強化するとした。 テスラは上海の工場でセダン「モデル 3」とスポーツタイプ多目的車 (SUV) 「モデル Y」を製造。 中国製の 1 月販売台数は 1 万 5,484 台。 (Reuters = 2-9-21)


中国で規制クリアできない日系メーカーの憂慮
上海モーターショーで見えた NEV 対応への課題

新型コロナウイルスの感染拡大後、世界で開かれる自動車ショーとしては最大規模となる「上海国際モーターショー」が、2021 年 4 月 19 - 28 日に開催された。 部品メーカーを含む自動車関連 1,000 社超が出展し、車両展示は電気自動車 (EV) を中心に 1,310 台。 日米欧の新車販売が低迷する中、世界の大手自動車メーカーは中国市場に商機を見いだし、多くのモデルの世界初公開が行われていた。

また、新興 EV メーカーに加え、ネット検索最大手の百度(バイドゥ)、通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)もスマートカーシステムを展示するなど、EV や自動運転を巡る競争は激しさを増していた。 中国で SUV (多目的スポーツ車)の人気が続く中、日系自動車メーカーは相次いで新型 SUV を出展し、兄弟車戦略に取り組んでいる。 しかし、日系各社は SUV 販売台数の増加を果たした一方で、燃費目標やメーカーの省エネ化を促す中国政府による EV 生産義務の規制をクリアできず、NEV (New Energy Vehicle = 新能源車)シフトを急ピッチで進めなければならない状況だ。

販売順調だが規制には未達成の日系各社

新型コロナウイルスの影響を受け、一時的に低迷した中国の新車市場は、予想以上の回復を示している。 その牽引役は、SUV だ。 アフターコロナの中国では、公共交通機関の利用による感染リスク回避のため、人々の足となるクルマの需要が高まっており、特にファミリー層の間で SUV の販売台数が増加している。 2020 年の SUV 販売台数は 946 万台に達したが、これは乗用車全体の 47% に当たり、初めて SUV がセダンの台数を超えた。

SUV 市場における日系メーカーのシェアは、ドイツ系メーカーを抑えて 20% に達した。 中でもホンダは、SUV 年間販売台数 80 万台を達成し、同市場のトップブランドとなっている。 一方で、フォルクスワーゲンやトヨタなど大手外資系自動車メーカーの多くは、中国で乗用車メーカーに義務づけられている燃費目標(CAFC 規制)および NEV 生産の「ダブルクレジット規制」の 2020 年度目標が未達成だ。

中国工業情報省は今年 2 月、ダブルクレジット規制の 2020 年度評価基準を緩和する方針を示した。 燃費規制では 100km 当たりの燃費 (L/100km) を算出する際、アイドリングストップシステム、回生ブレーキ、シフトチェンジサポートなどを搭載する車種では、それぞれの機能分を割り引いて計算する措置を取る。 また、NEV 規制では、コロナの影響で NEV 生産が遅れたことを考慮し、メーカーが 2020 年の「NEV クレジット」不足分を 2021 年の実績と合わせて精算することが可能となる。 特にコロナの震源地であった湖北省に立地する企業(東風ホンダ、東風日産)に対しては、燃費/EV クレジット目標の未達成分を 2 割差し引いて評価すると規定した。

しかし、2021 年 4 月に公表した乗用車メーカー各社の昨年のダブルクレジット規制の実績を見ると、対象メーカー 117 社のうち、71 社が燃費目標未達成、30 社が NEV 目標未達成だった。 メーカー各社は販売拡大を図るため、比較的排気量の大きい SUV の生産に注力している。 昨年の乗用車販売台数トップ 3 の一汽フォルクスワーゲン、上汽フォルクスワーゲン、上汽 GM (ゼネラルモーターズ)が目標達成ランキングのワースト 3 となっている。

高騰する NEV クレジット単価

欧米系メーカーだけではなく、日系自動車メーカーもその上位に名を連ねた。 日系の中国合弁企業 9 社のうち、天津一汽トヨタの燃費目標および鄭州日産の NEV 目標を除くと、7 社は燃費および NEV ともに目標達成できなかった。 特に東風日産(東風汽車有限公司)、広汽ホンダ、東風ホンダが燃費超過で 30 万ポイント以上のマイナスクレジットを抱えている。 上記 9 社は、燃費超過分を NEV 生産で賄うことができるものの、各社は NEV 生産台数が少ないため、他社から NEV クレジットの購入を余儀なくされる。

乗用車メーカーにとって燃費規制への対応遅れは、NEV の生産負担や NEV クレジット購入コストの増大につながる。 2020 年の NEV クレジット供給量は 328 万ポイントであったのに対し、燃費超過にともなうクレジット需要量は、666 万ポイントに上がった。 その結果、NEV クレジット単価は 2019 年の 2 万円程度から 2020 年には 5 万円超へと急上昇している。

一汽フォルクスワーゲンが「1 クレジット 3,000 元」を提案し、テスラから NEV クレジットを購入すると報じられた。 先に述べた日系 7 社の未達成分を単純計算すると、燃費クレジットと NEV クレジットの計 188 万クレジットの購入コストは、約 960 億円に上る。 一方、テスラ、BYD、上海 GM 五菱など、11 社の余剰 NEV クレジットは 10 万ポイントを超えた。 そのクレジットの売買益が、メーカーの NEV シフトを促すインセンティブになっている。

日米欧メーカーは SUV タイプの EV を一斉に投入

今回のモーターショーでは、各社の電動化シフトから NEV 市場成長への期待が大きいことが反映されたが、それだけではなく中国政府の規制をクリアする意向もうかがえた。 特にテスラ「モデル Y」や NIO 「ES8」などが起爆剤となった SUV タイプの高級 EV 市場では、各社が相次いで新車を投入した。 ドイツ・フォールクスワーゲンは、専用プラットフォーム「MEB」を採用した SUV タイプの新型 EV「ID.6」を発表した。

小型ハッチバック EV の「ID.3」、小型電動 SUV の「ID.4」に続く第 3 弾となる同モデルは、ID シリーズとしては初めて 3 列シートの 7 人乗りとして実用性を重視するとともに、通信機能を充実させた。 また、キャデラック「LYRIQ (リリック)」、BMW 「i4」の「M スポーツ」プロトタイプ、アウディ「コンセプト Shanghai」、メルセデス・ベンツ「EQB」も、今回ワールドプレミアされた SUV タイプの高級 EV として挙げられる。

欧米系自動車メーカーが攻勢をかける中、日系自動車メーカーも新型 EV の世界初公開を相次いで行い、トヨタは 2025 年までに新型車 9 車種を含む 15 車種を投入すると発表した。 その第 1 弾として、スバルと共同開発した SUV タイプのコンセプトカー EV 「bZ4X」を 2022 年中に発売する予定としたほか、ブランニューの「クラウンクルーガー」や新型「ハイランダー」を発表し、ICE (内燃機関車)分野でも SUV を強化する姿勢を示した。

トヨタが ICE 車分野でもニューモデルを続々と発表する中、「2040 年に脱ガソリン」へと舵を切るホンダは、EV に加え PHEV (プラグインハイブリッド車)も展開。 日産は独自の電動化技術であるシリーズハイブリッドの「e-Power」を含めて電動化を訴求する。 ホンダは、中国初となるホンダブランドの EV、「SUV e:prototype」を世界初公開し、中国市場で 2022 年春をめどに発売すると発表。 「BREEZE PHEV」は、広汽ホンダ初の PHEV だ。 また、「5 年以内に中国でホンダブランドの EV 10 車種を投入する計画だ」とアナウンスした。

日産は今年、昨年 7 月にオンラインで発表した SUV タイプの新型 EV 「アリア」の発売を開始するが、そのほかにも 2025 年までに「e-Power」を搭載した 6 モデルと EV3 モデルの計 9 モデルを中国市場に投入する。 また、日産のオールラウンド SUV の最新モデルである新型「エクストレイル」も発表した。 この新型エクストレイルには、1.6 リッターの可変圧縮エンジン「VC ターボ」を搭載するという。

中国における NEV の販売台数は、2020 年に 10.9% 増の 136.7 万台と過去最高を記録した。 中国政府は、2025 年に新車販売に占める NEV の比率を 20% に引き上げ、2035 年には EV を新車市場の主流とする目標を掲げている。

異業種の EV 市場参入で既存メーカーはどうする?

こうした中で、電子機器の受託生産 (EMS) 世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業をはじめ、バイドゥ、シャオミ、スカイワースなど異業種からの EV 参入が相次ぐ。 今回の上海モーターショーでは、大手 IT・通信企業が自動車分野に注力する姿勢を示した。 開発に特化し、生産の外部委託、オンライン・オフラインのダイレクト販売などを特徴とする異業種企業の EV ビジネスは、既存メーカーとはまったく異なる。 今後、分業が広がれば部品や車両の低価格化が進み、EV 業界の競争軸はこれまでとはまったく別のものになるはずだ。

ICE 車と EV が共存する市場構造が少なくとも 2030 年まで継続する中で、日系自動車メーカーは ICE 車市場でシェアを維持しながら、コストダウン、乗車体験、車両のスマート化など、消費者目線で他社 EV と差別化する戦略を検討する必要があるだろう。 (湯進・みずほ銀行法人推進部主任研究員、東洋経済 = 5-11-21)


3 月中国新車販売、トヨタ 6 割増 ホンダは 2 倍強

【広州 = 川上尚志】 トヨタ自動車は 6 日、中国での 3 月の新車販売台数が前年同月比 63.7% 増の 16 万 6,600 台だったと発表した。 ホンダも同日、3 月は同 2.5 倍の 15 万 1,218 台だったと発表した。 前年同月に新型コロナウイルスの感染拡大で需要が落ち込んだ反動が出た。 両社とも主力車種が好調だったことも伸びをけん引した。 トヨタの 3 月は 12 カ月連続で前年実績を上回った。 新型コロナ問題前の 19 年 3 月の実績と比べても約 4 割伸びた。 主力の「カローラ」や「アバロン」の販売が伸び、高級車ブランド「レクサス」も前年同月比 2 倍強の 2 万 4,100 台だった。

ホンダも 3 月は 9 カ月連続で前年実績を超えた。 19 年 3 月の実績と比べても 2 割強増えた。「CR-V」や「アコード」などの主力車種が堅調だったほか、ハイブリッド車 (HV) の販売も 2 万台を超え好調だった。 中国全体の新車販売台数は 2 月まで 11 カ月連続で前年実績を上回っている。 中国では新型コロナの感染拡大を早期に抑え込み、新車の需要回復が続く。 その中でもトヨタなど日系大手の販売好調は際立っている。 (nikkei = 4-6-21)


中国の「新興 EV」、半導体不足で生産を一時停止
蔚来汽車、キーパーツの安定調達に不透明感

中国の新興 EV (電気自動車)メーカーの蔚来汽車 (NIO) は 3 月 26 日、半導体不足のため安徽省合肥市の工場での生産を 3 月 29 日から 5 日間停止すると発表した。 この工場は、蔚来汽車が安徽省政府系の国有自動車メーカーの江淮汽車 (JAC) と合弁で建設したものだ。蔚来汽車の董事長(会長に相当)を務める李斌氏は 3 月 2 日に開催した 2020 年 10 - 12 月期の決算説明会で、「合肥工場の生産能力は月産 1 万台だが、車載用半導体や電池などの供給不足により、実際の生産は月産 7,500 台にとどまっている」と述べていた。

決算説明会の時点では、蔚来汽車は 2021 年 1 - 3 月期に納車可能な台数を 2 万台から 2 万 500 台と説明していた。 しかし今回の生産停止により、1 - 3 月期の納車計画は約 1 万 9,500 台に下方修正された。 5 日間の生産停止の終了後について、蔚来汽車は「生産再開は可能」としている。 ただし、半導体や電池などキーパーツの長期的な安定調達については「引き続き状況を見極める必要がある」とした。

思わぬ天災や事故で供給不足に拍車

蔚来汽車に限らず、半導体不足は世界の自動車産業が頭を悩ます共通の難題となっている。 「かつては生産計画を 3 カ月サイクルで立てていたが、半導体不足のため、今は 1 時間単位で計画を調整している。」 中国の民営自動車大手、吉利汽車(ジーリー)の安聡慧董事長は、3 月 23 日の決算説明会でそう語った。 ドイツのフォルクスワーゲンの北米事業トップを務めるスコット・キーオ氏は、海外メディアの取材に対して「半導体不足は秋には落ち着くと予想するが、さらに半年間前後は影響が残るだろう」と述べた。

今回の半導体不足の原因は、スマートフォン向けなどの需要拡大のスピードに半導体メーカーの生産能力増強がまったく追いついていないことにある。 加えて、思わぬ天災や事故の発生が需給逼迫に拍車をかけている。 アメリカのテキサス州では今年 2 月、未曾有の寒波による大雪や凍結などの影響で、韓国のサムスン電子やオランダの NXP セミコンダクターズなどの現地工場が一時生産停止に追い込まれた。 3 月には、日本のルネサスエレクトロニクスの工場で火災が発生。 同社の生産停止は 1 カ月におよぶ可能性があり、半導体不足は深刻になる一方だ。 (鄭麗純・財新/東洋経済 = 4-5-21)