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まるで EV の墓場、中国都市部に大量の廃棄車両 - 急成長の負の遺産 中国浙江省の省都、杭州の郊外にある古びた小さな寺院からは、膨大な数の電気自動車 (EV) が雑草やゴミの中に放置されている光景が一面に見渡せる。 それはまるで EV の墓場のようだ。 中国国内の少なくとも 6 都市に、不要になったバッテリー駆動車の似たような集積地がある。 杭州のそうした場所には、トランクから植物が生えるほど長い間放置された車もあれば、ダッシュボードの上にふわふわのおもちゃが置かれたままになっている車もある。 こうした光景は、2018 年の「シェアサイクル」バブル崩壊後の状況を思い起こさせる。 当時は、巨大ハイテク企業の出資を受けてシェアサイクル事業を展開するオッフォやモバイクなどの新興企業の台頭と衰退を経て、何千万台もの自転車が川や側溝、使われなくなった駐車場に放置されていた。 今回の EV の大量廃棄は、車両を所有していた配車サービス会社が経営破綻したか、より優れた機能とより長い走行距離を備えた新しい EV が各社から次々と発売され、時代遅れになりかけた車が増えたことが原因とみられる。 急成長中の産業に資本が集中した際に起こり得る過剰生産と大量廃棄の顕著な例で、ここ数年の電気輸送の劇的な進歩を表す奇妙な記念碑でもあるかもしれない。 約 10 年前、政府の補助金に引き付けられ、中国全土で何百社もの自動車メーカーが、既存企業も新興企業もこぞって EV 事業に参入し、初期段階の EV を大量に生産した。 比較的シンプルなタイプで、1 回の充電で 100 キロ前後しか走れないバッテリーが搭載された車もあった。 こうした車両を主に購入したのは配車サービス会社で、ドライバーにリースしていた。 上海とシュツットガルトにオフィスを構えるコンサルタント会社、JSC オートモーティブのシニアアナリスト、ヤン・ホアン氏によれば、「中国 EV 市場の初期段階では、購入者は配車サービス会社が中心で、個人の顧客はわずかだった」という。 そうした需要を追い風に、EV 業界はその後、飛躍的な成長を遂げた。 中国は今やクリーンカーの世界的リーダーで、昨年の EV・プラグインハイブリッド車の生産台数は約 600 万台と、国内で販売された新車の 3 台に 1 台程度。世界の EV の 60% を占め、地球上で最も広範な EV 充電インフラを有している。 そうしたインフラも政府支援で整備された。 しかし、その急激な発展は多くの犠牲を伴った。 EV をいち早く導入した配車サービス会社の多くは廃業した。 中国の EV メーカーは現時点で 100 社前後と、19 年の約 500 社から減少している。 EV の墓場はそうした再編の負の遺産だ。 単に見苦しいだけでなく、EV が生産時に温暖化ガスを大量に排出し、内燃機関車に対する優位性が生じるには数年かかることを考えれば、すぐに廃棄されれば気候変動面のメリットが少なくなる。 また、各車両の使用済みバッテリーにはニッケルやリチウム、コバルトなどの希少金属が含まれており、これらの金属をリサイクルすることで中国の EV 産業をより環境に優しいものにできるはずだ。 地元メディアの報道によると、杭州市政府は 19 年に増え始めた廃棄車両を処分すると表明している。 しかし、ブルームバーグ・ニュースの記者が先月末に同市を訪れた際に衛星画像を精査した結果、市内の余杭地区と西湖地区に放置された EV で埋め尽くされた場所が数カ所見つかった。 米テスラが中国に進出し、20 年初めに上海の自社工場で生産を開始する以前、中国で生産される EV の大半は小型で低品質だった。 見栄えの良い内燃エンジン車がちまたにあふれる中、EV は消費者にとって魅力的とは言い難かった。 EV の普及に弾みをつけるため、政府は 2000 年代後半、1 台当たり最大 6 万元(約 120 万円)の補助金を支給し、一部の大都市でガソリン車の保有を制限し始めた。 自動車メーカー各社は配車サービスを手掛ける新興企業数社を設立・支援し、そうした企業は自社の車両に自動車各社の EV を採用した。 ところが 19 年になって、政府は EV 購入への補助金を軒並み削減し始めた。 多くの配車サービス会社は政策変更への備えができておらず、資金繰りに深刻な打撃を受けた。 「そうした企業は生き残れなかった」とフアン氏は述べた。 その年に EV の墓場に関するニュースがインターネットユーザーや地元メディアから流れたことで、世間の注目が集まり始めた。 格付け会社フィッチ・レーティングスの中国企業調査ディレクター、ジン・ヤン氏は今では EV の墓場が存在すると聞いても驚かないという。 タクシー会社やフリート運営業者が採用したことで、EV が安全な選択肢であることを消費者に知らせることができたと同氏は説明。 消費者向けの EV 市場がまだなかった時代に、メーカーが EV 関連技術に投資する動機となり、需要拡大の基盤を築いたと付け加えた。 深セン市在住の写真家、ウー・グオヨン氏は 18 年に山積みの放置自転車をドローンで撮影し、開発ブームに起因する大量廃棄の記録を中国でいち早く映像に収めた。 19 年には杭州のほか、江蘇省の省都である南京周辺の空き地に置かれた何千台もの EV の映像を空撮した。 同氏はインタビューで、中国の資本市場は開放された当初は小さかったが、今では無秩序に調達された資金が 「津波」のように押し寄せていると指摘。 「シェアサイクルや EV の墓場は、制約のない資本主義の結果だ。 資源の浪費や環境へのダメージ、富の消失は当然の帰結だ。」と語った。 (Linda Lew、Chunying Zhang、Dan Murtaugh、Bloomberg = 8-22-23)
インド政府、中国 EV 大手 BYD の 10 億ドル規模の工場建設提案を拒否 - 仏メディア 仏 RFI (中国語電子版)によると、インド政府は、ハイデラバードを拠点とするメガ・エンジニアリング・アンド・インフラストラクチャーズと提携して同地に 10 億ドル(約 1,417 億円)規模の四輪車生産工場を設立するという中国の電気自動車 (EV) 大手、比亜迪 (BYD) の提案を拒否した。 インド紙エコノミック・タイムズが 22 日付で報じた。 ロイター通信は今月中旬、BYD がメガ・エンジニアリング・アンド・インフラストラクチャーズと提携してインドで EV とバッテリーを生産する計画を規制当局に提出したと報じていた。 エコノミック・タイムズによると、インド商工省の産業国内取引促進局 (DPIIT) はこの投資提案について他の省庁に意見を求めていた。 インド当局者によると、中国によるインドへの投資に関する安全保障上の懸念が審議中に指摘されたという。 別の当局者は「インドの既存の規則ではそのような投資は認められていない」と述べた。 両社は提案書で年間 1 万 - 1 万 5,000 台の EV を生産することを約束していた。 ロイター通信によると、BYD はインドで SUV の「ATTO 3」とワゴンの「e6」を企業向けに販売していて、今年は高級セダン「SEAL」を発売する。 (柳川、Record China = 7-24-23) 中国で強まる PHV への回帰 補助金打ち切りで EV に割高感 新エネルギー車の普及が著しい中国で、中国メーカーがプラグインハイブリッド車 (PHV) を積極投入している。 これまでは電気自動車 (EV) に注目が集まっていたが、EV の航続距離への不安が根強いことに加え、補助金の打ち切りで割高感が強まった EV からの回帰の流れが生まれ始めている。(石井宏樹)
◆ 新たなSUVを続々 … 吉利が PHV で攻勢 中国浙江省杭州市に本社を置く吉利グループは昨年 11 月の PHV の中型スポーツタイプ多目的車 (SUV) に続き、今年 5 月にも新たな中型 SUV を発売。 今年中にさらにもう 1 車種を発売する予定で攻勢をかけている。 吉利の広報担当者は「EV は高価なため、消費者は完全な電動化に懐疑的だ。 エンジンと組み合わせることで電池を小さくでき、航続距離の不安も取り除ける」と利点を強調する。 吉利は EV 専業の米テスラや、自ら電池を製造する BYD と比べ、電池のコスト競争で不利だ。 広報担当者は「私たちには長年、PHV をつくった経験があり、モーターやエンジンを内製できる」と説明。 新たなハイブリッド技術を開発し、エンジン製造のノウハウを新エネ車の強みに変えようとしている。 初期の PHV は充電速度や航続距離で不十分な点が多かったが、「今では 100 キロをモーターのみで走れる PHV もある。 新しい技術を好む中国の消費者を満足させられる。」という。 ◆ うまみも需要も薄れた EV、急伸する PHV PHV 躍進は数字上でも明らかだ。 中国の業界団体によると、今年 1 - 4 月の新エネ車販売台数は前年同期比 36% 増の 184 万台。 内訳を見ると、EV は 125 万台で全体の 7 割を占めるが、伸び率は 19% にとどまった。 一方、PHV は 58 万台と台数では EV に及ばないが、増加率は 94% とほぼ倍増した。 昨年末で新エネ車への補助金が打ち切られたため、消費者にとって高価な電池を大量に搭載する EV は価格上の強みが薄まった。 テスラなど EV 大手が値下げ攻勢をかけたことで収益が悪化し、メーカーにとってもうまみは減りつつある。 EV はこれまで政府から環境対応を求められるタクシー会社やネット予約タクシーの運転手らが顧客として買い支えてきた。 しかし、タクシー需要が飽和状態になり、EV の販売増加の余地が小さくなっている。 一方、ガソリンも使える PHV は航続距離の不安が少なく、通勤や旅行などで一般消費者の根強い支持を集めている。 ◆ 政府の規制も追い風、激化する競争 政府は 2021 年、自動車メーカーへの新エネ車規制を改定。 PHV に有利な内容となり、メーカーにとって開発のメリットが増した。 関係者は「EV 一辺倒では脱落する会社も出かねないと政府が危機感を持っている」と推測する。 こうした背景の中、吉利のほか、BYD や長城汽車が 5 月に相次いで PHV 中型 SUV を発表。 価格帯も似通っており、熾烈しれつなシェア競争が展開されている。 新車の発表ラッシュに沸いた 5 月、長城汽車は突如、BYD を当局に告発したと発表し、市場の注目を集めた。 長城側は「BYD の PHV は気体状の汚染物質の排出に関して国の基準を満たしていない」と主張した。 BYD はすぐさま声明で「長城側の調査方法が不当だ」と批判。 PHV の成長のパイを奪い合う激しい競争が予想外の場外戦に発展している。 (東京新聞 = 6-29-23) 中国当局が EV の過剰生産懸念、テスラの上海工場増強に暗雲 [上海] 米電気自動車 (EV) 大手テスラは中国・上海工場の増強を目指しており、この野心的な計画の成否は、中国政府から承認が得られるかどうかにかかっている。 かつて国内 EV 産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰な EV 生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。 しかし、かつて国内 EV 産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰な EV 生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。 低コストの優位性を生かして輸出拡大を図ろうと上海工場の増強を画策するテスラは、中国市場で成功して販売台数を劇的に増やしたことが、事業拡大の逆風になるという皮肉な事態に直面している。 ライバル企業の幹部やアナリストによると、中国国家発展改革委員会(発改委)は過剰生産能力とテスラが仕掛けた値下げ競争を懸念しており、どの自動車メーカーに対しても、EV 工場の新規承認に慎重な姿勢だという。 コンサルタント会社オートモビリティーの創業者兼最高経営責任者 (CEO)、ビル・ルッソ氏の推計によると、中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約 1,000 万台と、昨年の北米全生産台数の 3 分の 2 に相当する。 「テスラ側は、新製品があるのだから新しい工場が必要だと主張するだろう。 だが、中国政府側は市場の供給過剰ばかりに目が向いている」という。 テスラは新型コロナウイルス対策の上海封鎖時に地元政府から提供された支援に感謝する昨年 5 月の熱烈な書簡で、現工場から 3 キロほどの場所に年間生産能力 45 万台の新工場を建設する計画の詳細を公表した。 販売価格に基づく年間の生産額は 108 億ドル強。 元農地の建設予定地は、今のところ雑草が伸び放題だ。 テスラのイーロン・マスク CEO や中国当局の公式発言では明らかにされなかったが、この問題に詳しい関係者によると、マスク氏の先月末の電撃的な訪中の際に、上海工場増強計画が話題に上った。 マスク氏は丁薛祥・筆頭副首相など中国の高官との会談後、テスラの少人数のスタッフに工場増強についての話し合いで「前向きな進展があった」と明かしたが、詳細な説明はなかったという。 テスラと発改委は、コメント要請に応じなかった。 ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブス氏は「テスラは中国での事業を倍増させている。 昨年はいくつか思わぬ問題が生じたが、マスク氏の訪中で状況が落ち着き、今後数カ月内には進展について発表があるだろう」と述べた。 テスラの上海工場は、2019 年の着工から 1 年足らずで竣工した。 <テスラ、中国は欠かせぬ存在> 米国のバイデン政権は EV の国産化支援策を打ち出しており、テスラの中国依存は米国では複雑な問題だ。 しかし、テスラの上海工場は昨年、「モデル 3」と「モデル Y」を合計で約 71 万 1,000 台生産するとともに、最大生産能力を年間 100 万台強に引き上げた。 この工場は競合他社に対するコスト優位性の面で極めて重要で、東南アジアとカナダへの輸出を後押ししている。 テスラは 2022 年に 131 万台だった全世界販売台数を3 30 年までに 2,000 万台に引き上げるとの目標を掲げており、設備投資の可能性についてインドと協議しているほか、韓国やインドネシアなどの政府からも誘致の働き掛けを受けている。 中国の EV 大手、蔚来集団 (NIO) よると、中国がサプライチェーン(供給網)と原材料を支配しているため、中国で生産された EV は、他国での生産に比べてコスト面で 20% も有利だ。 だが、中国政府が供給過剰への懸念を強め、テスラが上海工場の増強を計画する中、EV 市場参入を目指す中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)は生産許可の取得が遅れている。 また、米高級 EV メーカー、ルーシッド・グループも中国での自動車生産に意欲的だが、実現できる可能性は低いとの助言を受けている、と複数の業界関係者が明かした。 シャオミとルーシッドは、コメント要請に応じなかった。 テスラが当局の承認を待たされているという状況は、5年前に初めて上海工場開設の取り決めを結んだときの温かな歓迎ぶりと対照的だ。 当時、アナリストは中国はテスラを利用し、国内の EV 開発に拍車をかけることができると考えていた。 強力なテスラの進出で弱小メーカーは生き残りのために迅速に動かざるを得なくなるからだ。 オートモビリティーのルッソ氏は「状況は様変わりした」と話した。 その上で「ただ、テスラにとって中国は欠かせない。 中国進出でサプライチェーン上の利点を手に入れ、中国での競争によって世界的により競争力のある企業になれるからだ。 生産能力を手に入れられなければ、機会を逸する」と上海工場増強の意義を強調した。 (Reuters = 6-19-23) 米テスラ、中国で 110 万台リコール 安全性巡り [上海/北京] 中国の国家市場監督管理総局は 12 日、米電気自動車 (EV) 大手テスラが事故発生リスクを抑えるソフトウエア改修のため、約 110 万台をリコール(回収・無償修理)すると発表した。 対象は「モデル S」、「モデル X」、「モデル 3」、「モデル Y」。 中国で生産されたモデル、輸入されたモデルのいずれもが該当する。 (Reuters = 5-15-23) 中国 vs ドイツ vs 日本の苛烈な戦い … 『上海モーターショー』で分かった 「電気自動車」 新時代 4 月 27 日に最終日を迎えた『上海モーターショー』。 世界最大級の新型車見本市と言われ、東京ドーム約 8 個分という広大な展示スペースで開催された。 「4 月 18 日の開幕から 10 日間で、大手自動車メーカーなど 1,000 社以上の企業が参加し、100 台を超える世界初公開の新型車が発表されました。 一般来場者も多く、期間中で唯一の週末となった 22 日 - 23 日は、計 25 万人以上が足を運ぶなど盛況を博しました。(上海地元紙記者)」 モーターショーで最も注目を集めたのが電気自動車 (EV) の開発競争だ。 その進化はとどまるところを知らず、最高時速が 300km に迫るものや、一回の充電で 700km の航続距離を誇るもの、2 秒以下で時速 100km までの加速を行う高出力のものまでさまざまなモデルが発表された。 現地で取材をした自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が語る。
その中でも EV 業界を牽引する中国メーカーがある。 それが『BYD』だ。
中国では『上汽通用五菱汽車』が 2 万 8,800 元(約 54 万円)の『宏光 MINIEV』を発売し、爆発的なヒットを記録するなど価格競争が起きている。 一方で日本の雄・トヨタは性能で勝負に出た。
価格競争と性能特化の 2 極化が進んでいく EV 市場。 今後はどのような未来が待ち受けているのか。 加藤氏が予想する。
誰もが当たり前に、安全に EV に乗る。 そんな未来が、すぐそこまで来ているのかもしれない。 (FRIDAY = 5-13-23) 国際自動車メーカーが電気化に全力を注ぎ、中国の自動車産業もスマート化競争に突入 第 20 回上海国際自動車工業展覧会(上海モーターショー 2023)が 4 月 18 日に開幕し、8 日間にわたって 1,000 社以上の企業が参加した。 これは、世界で最大級の自動車展覧会の一つとなった。 今回の展示面積は 36 万平方メートル超で、1,500 台以上の車両が展示された。 そのうち、新エネルギー車(新エネ車)は 3 分の 2 を占め、本展覧会の「主役」となった。 展覧会期間中、多くの国際自動車メーカーが、新エネルギー車に全面的に取り組む計画とロードマップを発表した。 多数の世界的な従来ガソリン車メーカーが、個別化・ハイエンドの方向に向かって発展していることを示し、本展覧会の目玉となった。 上海モーターショーで、中国の各新エネ車メーカーは、車載用のスマートデバイス、スマートシャシー・操作システムやスマートパワーシステムなどを展示し、特に「スマート + 低炭素」という新たなトレンドが新エネ車分野で密接に結びついている。 業界関係者によると、中国の新エネ車のスマート化競争はすでに始まっており、この産業への需要は大きな高まりを迎えるかもしれないという。 自動運転からスマート車室に、操作システムから車両とクラウドの相互接続に至るまで、多様な新技術が自動車に適用され、多様なスマート応用シーンが拡大している。 例えば、中国の国有自動車大手の長安汽車傘下の電気自動車ブランド「阿維塔科技」は、全車種に華為技術(ファーウェイ)のハイエンドスマート運転システム ADS2.0 を追加している。 これにより、高精度地図に依存しなくても、より多くの都市と地域でスマート運転が実現できる。 完成車メーカーの他、多くのスマート産業チェーンの企業も新たなスマート製品を展示した。 運転中に周辺の道路状況に基づいてリアルな 3D 地図ナビゲーション画面をリアルタイムで生成する機能、リモートパーキング、メモリーパーキング、駐車時衝突緊急ブレーキなどの機能がとりあげられた。 今回の上海モーターショーで示された「新エネルギー」のトレンドは、中国の自動車市場で「電気化」の発展トレンドをダイレクトに表している。 中国汽車工程研究院ディレクターの抄佩佩さんは、「私たちは前回の業界調査を経て、ユーザーが自動車製品に関心を持つ点が機械的製品からスマート端末やエネルギー端末に変わっていることを知った。 消費者の関心は、従来の安全ラインに加え、スマートインタラクションやヘルシーな車室にも及んでいる。 将来の技術革新は、ユーザーのニーズを中心に行われるだろう」と述べた。 (殷立勤、CNS/JCM/AFPBB = 5-7-23) 中国共産党が号令「EV 優位拡大せよ」 市場の主導権を握る狙いか 中国共産党は 28 日、党のトップ 24 人が集まる政治局会議を開き、経済情勢について議論した。 中国で成長が続く電気自動車 (EV) などの新エネルギー車 (NEV) について、「発展の優位を拡大、確立しなければならない」との方針を示した。 中国メーカーが自動車市場で主導権を握るよう、さらに国を挙げて取り組む考えとみられる。 国営新華社通信が伝えた。 習近平(シーチンピン)国家主席が会議を主宰。 会議は「科学技術の自立自強の基礎を固めなければならない」としたうえで、NEV について「充電スタンドや蓄電設備などの建設、電力ネットワークの改造などをさらに加速させなければならない」として具体的に取り上げた。 政治局会議は定期的に経済状況について分析している。 中国が NEV で先行することへの危機感が米欧日で高まる中、中国国内に優位を保つ意識を徹底させたい狙いがあるとみられる。 中国はガソリン車のエンジン製造技術で日本やドイツなどのメーカーに追いつけなかったことから、エンジンを使わない EV に着目。 EV や電池の市場で先行し、部品を含めた供給網をすべて中国メーカーが握ることで、自国に有利な状況を生み出すことをめざしている。 中国では政策による誘導もあって、新車販売全体の 4 分の 1 が NEV で占められるまで成長している。 EV の車種が少ない日本勢は足元で販売台数が落ち込むなど、劣勢に追い込まれている。 (北京 = 西山明宏、asahi = 4-28-23)
中国 EV 業界に新たな富豪、バッテリー交換「U パワー」上場で 電気自動車 (EV) 向けのバッテリースワップ技術を開発する中国のスタートアップ「U パワー(優品車)」の会長兼 CEO の Li Jia は 4 月 20 日、ナスダック・キャピタル・マーケットに上場した同社の株価が 620% 急騰したことで、ビリオネアの仲間入りを果たした。 IPO 価格が 6 ドルだった U パワーの株価は、1 株 75 ドルまで急騰した後、43.18 ドルで 20 日の取引を終えた。 時間外取引で、株価はさらに 21% 下がって 34 ドルをつけたが、フォーブスは同社の 73% を保有する Li の保有資産を 13 億ドル(約 1,740 億円)と試算している。 U パワーの株価は 20 日に乱高下したため、少なくとも 22 回取引が停止された。 Li が 2013 年に設立した U パワーは、目論見書によると、中国の中小の自動車ディーラーとバイヤーをつなぐ車両の調達事業を行った後、2020 年にバッテリースワップ技術を事業の中核に据えた。 同社の UOTTA と呼ばれるバッテリー交換技術は、鉱業から物流まで幅広い分野で応用できるとされる。 上海のコンサルタント会社 Automotive Foresight のエール・チャンは、U パワーが、バッテリー大手 CATL の小規模なライバルになり得ると述べている。 CATL は、物流業界向けにバッテリースワップ関連の製品やサービスを提供しようとしている。 U パワーの 2022 年上半期の売上高は前年同期比 615% 増の 430 万元(約 60 万ドル)に達したが、これはバッテリー交換サービスの売上が伸び始めたためとされる。 しかし、売上の約 3 分の 1 を車両調達事業から得ている同社は、研究開発費の増加などの要因により、2022 年上半期に 190 万ドルの損失を計上した。 同社の株価の急騰は、急成長する中国の EV 市場へのエクスポージャーを持つためとされている。 シンガポールに拠点を置く DZT Research の調査主任の Ke Yan は「この会社は、中国で急激に成長している EV 業界に、バッテリー交換という興味深いコンセプトを提示している」と述べた。 (Yue Wang、Forbes = 4-25-23)
中国 EV メーカー、海外勢より優位でも前途多難 【上海】 中国の自動車メーカーは電気自動車 (EV) の生産拡大に全力を挙げ、世界で進むガソリン車からのシフトをけん引している。 だが、海外メーカーが失った市場シェアを奪い返そうとする中、中国メーカーの進む道は険しそうだ。 開催中の上海モーターショーで EV に注目が集まっている。 中国では 3 年前に新型コロナウイルスが流行して以降、国内外から来場者を受け入れる大規模な自動車業界イベントの開催はこれが初めてとなる。 最も注目を集めているのは中国ブランドだ。 中国の EV メーカーが自信を高めていることは、展示されている一連の新型モデルからも明らかだ。 今回は、最低価格が 1 万 1,500 ドル(約 155 万円)を下回る、比亜迪 (BYD) の 4 人乗りハッチバック「シーガル」から、理想汽車(リ・オート)や上海蔚来汽車 (NIO)、小鵬汽車(シャオペン)といった有望な新興メーカーの高級車に至るまで各種モデルが展示されている。 日産自動車のアシュワニ・グプタ最高執行責任者 (COO) 氏は、3 年前は誰もがまだ自動車の電動化を目指している段階のように見えたと話す。 グプタ氏は今回、中国がコロナ感染拡大に伴う国境規制を 1 月にほぼ全面撤廃して以降、初めて同国を訪れた。 同氏は、電動自動車は多くの人が予想していたよりもはるかに早く普及したと指摘し、中国は電動車を普通の車として受け入れる「転換点を越えた」と語った。 中国で昨年販売された新車の 4 分の 1 は EV ないしプラグインハイブリッド車 (PHEV) で、台数は 2021 年から 2 倍近くに増えた。 内燃機関車(ガソリン車)の販売台数は 13% 減った。 海外との合弁企業は、世界最大の自動車市場である中国で市場シェアの維持に苦労している。 国内ブランドが活況の EV 部門で消費者の好みをうまくつかんでいるからだ。 だが競合するメーカーが増え、各ブランドは自社モデルの差別化に取り組むことが一段と求められている。 ディスプレーやソフトウエア、アプリは、中国の消費者が好む主な内装の特徴だ。 リ・オートの 6 人乗り PHEV 「L9」に搭載された大型ディスプレーは、車の状態をドライバーに知らせるだけでなく、映画や動画を流して同乗者を楽しませる。 自動車メーカーは、デジタル機能とインフォテインメント機能がとりわけ中国の顧客にとって重要だと指摘する。 この分野は国内ブランドが海外ブランドを明らかにリードしている。 流線型の未来的な外観は、テスラと同じ購買層を狙う中国製高級 EV の特徴になりつつある。 シャオペンによると、同社のクーペ SUV (スポーツ用多目的車)「G6」はデザインのインスピレーションを SF 作品からそのまま得たという。 ボンネットには光る細長い線が走り、ボディーは滑らかな仕上げになっている。 全体的に見ると、上海モーターショーで展示されている中国メーカーの EV の洗練ぶりは約 10 年前からいかに進歩を遂げてきたかを示している。 中国のモーターショーはかつて、奇抜で不格好な外観の国産車であふれていた。 中国車は、燃費でも海外ブランドに後れを取っていた。 中国の消費者は当時、海外で開発されたグローバルモデルを展開し、圧倒的な存在感を築いていた外国メーカーの車を所有することに憧れていた。 現在、そうした傾向は一変している。 トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長は、「中国のお客様が『欲しい』と思う車をお届けするには、中国のお客様の声にもっと耳を傾け、中国で開発するのが最も近い道のり。 そのために必要なのは、謙虚に学ぶ姿勢」だと語った。 トヨタは上海モーターショーで、来年の発売を予定する 2 車種のコンセプト EV を公開した。 独フォルクスワーゲン(VW)や米フォード・モーターのほか、日産、ホンダなどの世界的な自動車メーカーは、何十年にも及ぶ乗用車生産の経験に加え、安全性や信頼性における実績を強調している。 ドイツから経営陣やマネジャー数十人が上海モーターショーへの出展に同行した VW は、今秋に中国で発売予定の新型 EV セダン「ID.7」を披露した。 同モデルの一部の仕様は航続距離最長 435 マイル(約 700 キロ)を実現した。 ID シリーズは発売後初期の売れ行きが伸びず、VW は近年、中国での市場シェアを落としていた。 VW はまた、約 10 億ユーロ(約 1,470 億円)を投じて中国に EV 開発・調達センターを建設し、新車の市場投入にかかる時間を約 3 割短縮する計画を明らかにした。 ホンダは、中国での電動化計画を 5 年前倒しし、2035 年までに同国での販売を EV のみにするとの目標を発表した。 中国メーカーが直面する課題は、EV のラインアップを強化する外国ブランドとの競争激化だけではない。 今後も価格競争を生き残らなければならず、一部のメーカーは黒字化と増産も必要になる。 上海に工場を持つテスラは、今回のモーターショーに出展しなかった。 同社は中国政府が EV 補助金を段階的に廃止したことを受け、中国で最初に値下げした自動車メーカーの一つだ。 テスラは、ほとんどの競合他社よりも値下げへの耐性が高いとみられる。 世界をリードする EV メーカーの同社は 19 日発表した 1 - 3 月期決算で、収益性の基準となる営業利益率が 11.4% だった。 これは自動車業界で最も高い水準だ。 一方、テスラに挑む最有力の中国 3 社(リ・オート、NIO、シャオペン、いずれも米国に上場)は常に利益を出しているわけではない。 NIO とシャオペンの昨年の純損益は赤字、リ・オートは営業損益が赤字だった。 シャオペンの広報担当者によると、同社の何小鵬最高経営責任者 (CEO) は、自動車メーカーが 10 年を超えて生き残るためには、年間 300 万台を販売する必要があると語ったという。 同社の 2022 年の販売台数は約 12 万 0,800 台だった。 中国は現在、世界の自動車メーカーによって新たに活気づく電動化ゲームの中心にいる。 国内ブランド同士の競争も激しいことから、中国のEV市場は今後も急速に進化する可能性が高い。 コンサルティング会社アクセンチュアの自動車部門マネジングディレクター、ユルゲン・リアーズ氏は「開発が引き続き非常に活発であるため、EV 市場のシェアは変動が大きくなるだろう」と述べている。 (Yoko Kubota、Wall Street Journal = 4-24-23) ドイツ車、中国市場で劣勢 EV が変えた業界勢力図 [上海/ベルリン] ドイツの自動車メーカーが、18 日に開幕した世界有数の自動車展示会「上海国際自動車ショー」に全精力を注いでいる。 電気自動車 (EV) 時代に優位に立つには、中国で成功できるかが勝負の分かれ目になるとみているためだ。 今年の上海国際自動車ショーは、フォルクスワーゲン (VW) が取締役会メンバー全員に加えて従業員 100 人余りを現地入りさせるなどドイツ勢の存在感が際立ち、日本勢やフランス勢と対照的だ。 コンサルティング会社オートモーティブ・フォーサイトのエール・ツァン氏は、ドイツメーカーが課題を深刻に受け止めている証左だと指摘する。 ドイツメーカーは乗用車販売の 3 分の 1 を中国に依存しており、ここで敗北した場合の打撃も最も大きい。 独 BMW のオリバー・ツィプセ最高経営責任者 (CEO) は記者会見で「われわれの車は機能の多くが中国に触発されたものだ」とし、中国市場は世界の潮流の先を行っていると述べた。 内燃機関の全盛時代、中国でドイツ車は技術的に世界の頂点にあるとみなされていた。 ツィプセ氏の発言は、圧倒的なスピードで EV 技術の開発を進めた中国メーカーにドイツメーカーが学ぶ時代へと、業界の勢力図が大きく変わったことを示している。 VW の経営陣は、他を圧倒する事業規模が低価格 EV の販売競争を勝ち抜く上で追い風になるとみている。 しかし、販売で負ければ生産能力の大きさは足かせになり得る。 中国の EV 大手、比亜迪 (BYD) は今年に入り、中国でのシェアが VW ブランドを上回っている。 ドイツメーカーは中国の EV 市場でシェアが上昇しているが、まだまだ小さい。 ロイターが中国汽車工業協会 'CAAM) の販売統計をもとに計算したところ、中国 EV 市場におけるアウディ、BMW、VW、メルセデス・ベンツのドイツメーカー 4 社の合計シェアは 2022 年が 4.8% で、20 年の 2.2% から拡大した。 しかし、4 ブランドの EV 販売を全て合わせても BYD の 4 分の 1 にすぎない。 ドイツ自動車工業会 (VDA) のデータによると、ドイツメーカーの中国でのシェアは 2015 年の 19.9% から 19 年に 24.6% に上昇したが、その後 19.1% に下がった。 コンサルタント会社カーニーのパートナー、トーマス・ルク氏は「中国市場はドイツメーカーにとって、もう以前のように安定してはいない」と言う。 「より速くなるだけでは追いつけない。 企業文化を変えるべきだ。」 <思考の変革> アナリストは、ドイツメーカーは新型 EV を内燃機関車の電動版として販売する傾向があり、まだ EV 化を第 1 に考えるという意識改革ができていないようだと指摘する。 ツァン氏は「EV を内燃機関車の延長線上ではなく、新世代の製品として捉えることが重要だ」と話す。 「上海自動車ショーでこの誤解が解けることを期待している」と語る。 中国の自動車メーカー、広州汽車集団 (GAC) の馮興亜社長は「海外ブランドが自らの考え方に固執すれば、徐々に消えゆくだろう」と述べた。 ドイツメーカーは中国での販売てこ入れの一環として、中国人の EV ブロガーやマーケティングの専門家などに声を掛けていると、実際に接触を受けたブロガーの 1 人が明らかにした。 中国ブランドは欧州進出のために新たな販売戦略を採っており、アナリストは欧州で既に地歩を築いているブランドがデジタル時代に対応するために、こうした動きから学ぶべきだとしている。 上海蔚来汽車 (NIO)、吉利汽車とボルボ傘下の Lynk はコミュニティースペースやカフェ、バーを設置している。 NIO によると、こうした取り組みは口コミの拡散を通じて販売につながる。 また、多くのメーカーが直接販売も導入しつつある。 BMW やメルセデス・ベンツなどドイツメーカーもこの数カ月、直接販売を行う意向を示した。 しかし、消息筋によると、中国ブランドは欧州で積極的な戦略に打って出る前に、まず国内市場の足固めに注力している。 欧州ではアジアのバッテリーメーカーが既に確固たる地位を築いている。 ある消息筋によると、中国の EV ブランドは価格を引き下げることができるにもかかわらず、中国メーカーによる市場支配を懸念する欧州の政策当局者を動揺させないため、今のところ価格を高く設定しているという。 BYD は今週、航続距離 300 キロを超える EV 「シーガル」を発売。 最低価格はわずか 1 万 1,000 ドルと、欧州の多くのエントリークラスの内燃機関車よりも安い。 BYD は今年後半に新たな新型 EV 「シール」と「ドルフィン」を欧州市場に投入する予定だ。 ルク氏によると、中国メーカーは欧州で慎重に事を進めている。 一方、中国市場における戦いは熾烈を極めている。 オートモーティブ・インサイトのツァン氏は「以前は『絶望的』という言葉を使うことに慎重だった。 しかし今は、少なくとも中国では、外国ブランドの時代は着実に終焉を迎えつつあると確信している。」と話した。 (Reuters = 4-23-23)
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