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中国政府、米テスラ車の乗り入れを解禁 自動運転参入も加速か

中国政府が、米 EV 大手のテスラ車に対する重要施設への乗り入れ制限を解除する見通しとなった。 中国経済の減速が目立つ中、対外開放の姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。 テスラにとっては、苦戦する中国販売の後押しや、自動運転への参入の加速につながる可能性がある。 中国当局はデータの国外流出への懸念を理由に 2021 年から規制を強化し、テスラ車の政府機関や空港などへの乗り入れを禁止していた。

マスク氏が中国首相と面会

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は 28 日、中国で李強(リーチアン)首相と面会。 中国の政府機関と自動車の業界団体は同日、テスラが上海工場で製造する 2 車種について、データの安全管理に関する規定に適合にしていると発表した。 中国メディアによると、これでテスラ車への乗り入れ制限が解除される見通しだという。 テスラは中国の SNS 上で、「クリーンエネルギーと自動運転の実現を加速させる」と表明した。 ロイター通信などによると、テスラは公道でのデータ収集のため、中国のネット大手百度(バイドゥ)との協業でも合意したという。 (asahi = 4-29-24)


トヨタが北京モーターショーで BYD と共同開発の量販 EV 「bZ3C」と「bZ3X」を発表

トヨタ自動車は 2024 年 4 月 25 日に開幕した北京モーターショーで 2 台の EV を発表した。 どちらも市販モデルで世界初公開となる。 トヨタはこれまで BYD と中国における EV の共同開発をしていたが、それがさらに進んでいることが明らかになった形だ。


Z 世代向けとファミリー向けのスタイリッシュな EV

トヨタは 2021 年 4 月の上海モーターショーで初の bZ シリーズm「bZ4X コンセプト」を発表している。その後、2022 年 44月に量販車となる「bZ4X」を国内販売して、さらに同年 10 月には BYD との共同開発による中国専売車「bZ3」を発表。 2023 年 4 月の上海モーターショーでは新たなコンセプトカー「bZ Sport Crossover」と「bZ FlexSpace」を公開した。

そして今回、発表たのはその市販バージョンとなる「bZ3C」と「bZ3X」だ。 bZ3C」はトヨタと BYD Toyota EV Technology カンパニー有限会社、一汽トヨタ、トヨタ知能電動車研究開発センターが共同開発したもので、アクティブなクロスオーバー EV という位置づけだ。 Z 世代向けでパーソナルな空間を楽しめる機能を追求しているという。

「bZ3X」は心地が良い動く家を意味する「Cozy Home」がコンセプトで、大空間で快適な巨樹性をもつファミリー向け SUV タイプの EV だ。 両モデルとも最新の運転支援システム、スマートコックピットを採用して、安全で快適なドライブと新しい体験価値を提供するとしている。 なお「bZ3C」と「bZ3X」は今後 1 年以内に中国での販売が予定されている。 (スマートモビリティ JP = 4-26-24)


中国のリチウムイオン電池生産量、1 - 2 月は 15% 増

【北京】 中国工業情報化部はこのほど、中国のリチウムイオン電池産業が今年 1 - 2 月も成長基調を保ち、生産量が 117 ギガワット時を超え、前年同期比 15% 増となったと明らかにした。 蓄電池の生産量は 17 ギガワット時を超え、新エネルギー車 (NEV) 向け車載電池の搭載量は約 50 ギガワット時だった。 輸出額は 619 億 4 千万元(1 元 = 約 21 円)に上った。

電池材料の生産量は、正極材が 4.5% 増の 27 万 7 千トン、負極材が 5.6% 増の 23 万トン、セパレーターが前年同期と横ばいの 24 億 5 千万平方メートル、電解液が 3.8% 増の 13 万 5 千トンだった。 電池材料に使用する炭酸リチウムの生産量は 7 万 5 千トン、水酸化リチウムは 4 万 1 千トンで、1 トン当たりの平均価格は、炭酸リチウム(バッテリーグレード)が 9 万 7 千元、水酸化リチウム(パウダー)が 9 万 2 千元となった。 (中国・新華社 = 4-18-24)


中国 EV 販売、第 1・四半期は低い伸び 小米参入で値下げ激化

[北京] 中国での 3 月の電気自動車 (EV) の販売台数は前年比 10.5% 増加した。 比亜迪 (BYD) をはじめ、メーカー各社が値引きを強化したことが背景。 中国乗用車協会 (CPCA) が 9 日公表したデータによると、1 - 3 月の EV 販売台数は 103 万台。 前年比 14.7% 増で 2023 年第 2・四半期以来の低い伸びだった。 全電気自動車やプラグインハイブリッド車 (PHV) を含む新エネルギー車 (NEV) は、3月の乗用車販売の 41.5% を占めた。 3 月の乗用車販売は 5.7% 増の 171 万台だった。

3 月は、中国のスマートフォンメーカーの小米科技(シャオミ)が同社初の EV を発表したのを受け、各社が値下げや奨励金を発表した。 BYD はプレミアムブランド「騰勢」の 4 車種を含む 9 車種の最低価格を最大 20.5% 引き下げた。 テスラの 3 月の中国製 EV の輸出は 2 万 6,666 台で、前月から 11.8% 減少した。 3 月の中国の自動車輸出総数は 39% 増の 40 万 6,000 台と過去最高を記録し、伸び率も 2 月の 18% から拡大した。 (Reuters = 4-9-24)


EV よりバッテリーとソーラーが深刻 - 中国の過剰生産能力を分析

米国と欧州連合 (EU) は、中国が他国の産業を一掃しかねない過剰な生産能力の急増に見舞われているとの見方で一致している。 そのダメージを食い止めようと保護主義的な措置に拍車がかかっている。 イエレン米財務長官は今週の訪中に先立ち、ソーラーパネルや電気自動車 (EV)、バッテリーを巡り「中国の過剰生産能力は世界的な価格と生産のパターンをゆがめ、米国の企業や労働者をはじめ、世界中の企業や労働者に打撃を与えている」と述べた。

イエレン米長官が警鐘、中国の生産能力増強は世界経済に悪影響

EU の行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、中国の EV 対する補助金調査を開始した理由として過剰生産能力を挙げた。 中国指導部は EV やバッテリー、再生可能エネルギーなどの新たな産業に焦点を絞り、製造業に資金を投入。低価格の輸入品が自国市場にあふれ、雇用が一掃されることを懸念する貿易相手国は反発し、場合によっては中国製品に対する障壁を引き上げている。

中国政府は過剰生産能力を抑制したいと表明している。 データを分析することは、中国の問題を明確に捉える上で重要だ。 ソーラーとバッテリーには過剰な生産能力が見られるが、EV はそうとも言えない。 また、先進国が中国に過剰生産能力への対策を迫る際、どう指摘すれば折り合いがつく可能性が高まるのかを示す指針にもなる。

自動車

中国は世界最大の EV・ハイブリッド車市場だ。 昨年の国内販売台数は 36% 急増し、今年は 25% 成長が見込まれている。 生産台数に占める輸出の割合は、ドイツや日本、韓国といった他の自動車生産国に比べはるかに低い。 ブルームバーグの上場企業分析によれば、中国自動車メーカーの在庫はそれほど多いようには見えない。 中国自動車流通協会が発表したディーラー在庫に関するデータも、異常な増加は示していない。

中国には 5,000 万台以上の自動車生産能力があると推定し、国内販売台数 2,200 万台に対して稼働率が 550% を下回っていると結論付けるアナリストもいる。 ただ、UBS グループの中国自動車調査責任者ポール・ゴン氏は、そうした算出には老朽化し使われなくなった生産設備もしくは「単なるはったり」が含まれているとみている。 「過剰生産能力の話は誇張され、単純化され過ぎている」というのが同氏の意見だ。 JSC オートモーティブの推計によると、 中国の EV 最大手、比亜迪 (BYD) や米テスラの上海工場、上海汽車集団を含む中国最大級の EV 輸出企業は、いずれも稼働率が 80% を超えている。

一方、吉利汽車は 44% と低い稼働率にとどまっている。 大手の輸出自動車メーカーである同社による昨年の販売は過半数が内燃機関 (ICE) 車だった。 ICE セクター部門は生産能力過剰の「より大きな影響を受けている」とロジウム・グループのアナリスト、カミール・ブルノワ氏は指摘。 EV の過剰生産能力は小規模で競争力のない企業に集中しており、これらの企業は生き残れないだろう同氏はみている。

先進国にとって、本当に問題なのは中国国内でのサプライチェーンや新たな交通インフラ、低いエネルギー・土地コストのおかげで、中国の自動車メーカーの競争力が高まっていることだ。 政府の補助金も一役買っているが、イノベーション(技術革新)にとっては二の次かもしれない。 中国はグリーン技術に関する査読付き論文数で EU と米国をリードしている。 ブルノワ氏は、中国の EV 輸出トップ企業は「価格だけでなく品質でも競争力がある」と述べた。

グリーン製品

しかし、EV に使用されるバッテリーに関しては、生産容量が需要を上回っていることは明らかだ。 長安汽車の朱華栄会長は昨年、中国の EV 用電池メーカーの年間生産計画容量は来年までに 4,800 ギガワット時に達するが、中国が必要とするのはせいぜい 1,200 ギガワット時だと語った。 価格は急落しており、電池の材料となる炭酸リチウムの価格は 2022 年のピーク時から 80% 下落。 ソーラーパネルも同様で、昨年は価格が半分以下になった。 (Tom Hancock、Bloomberg = 4-4-24)


中国 BYD、第 1 四半期 EV 販売が前期比 43% 減 首位陥落の可能性

[北京] 中国の 電気自動車 (EV) 最大手 BYD (比亜迪)が発表した第 1・四半期の EV 販売台数は前期比 43% 減少した。 世界販売首位の座を米テスラに明け渡す可能性が出てきた。 昨年第 4・四半期は過去最高の 52 万 6,409 台で、テスラを上回り世界首位となった。 深セン証券取引所に提出した資料によると、第 1・四半期の販売台数は 30 万 0,114 台。 前年同期比では 13.4% 増加したが前期から 43% 減少し、テスラに抜かれる可能性がある。

テスラは 3 日に第 1・四半期の販売実績を公表する。 ビジュアル・アルファがまとめたアナリスト予想は 45 万 8,500 台。 前期比で 5% 以上の減少となる。 BYD の第 1・四半期の全車種販売台数は 62 万 6,263 台と前年比 13.4% 増加したが、過去最高だった昨年第 4・四半期から 33.7% 減少した。 3 月単月では 30 万 2,459 台と前年比 46% 増加した。 月間の販売台数としては 2 番目の高水準だった。 過去最高は 12 月に記録した 34 万 1,043台。 同月の EV 販売台数は 13 万 9,902 台と前年比 36.3% 増加した。 プラグインハイブリッド車は 16 万 1,729 台で 56.4% 増だった。

中国汽車工業協会が 2 日明らかにしたデータによると、テスラの中国製 EV の 3 月の販売台数は 8 万 9,064 台で前年比 0.2% 増だった。 BYD もテスラも中国での EV 販売の伸びが減速すると予想している。 テスラは昨年初めに中国で価格引き下げを開始。 BYD も 2 月から価格競争に参戦している。 (Reuters = 4-2-24)


欧州の EV の 4 台に 1 台が中国車に - 仏メディア

2024 年 3 月 31 日、仏国際放送局 RFI (ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、中国製電気自動車 (EV) が市場シェアを急速に拡大している欧州において、政府や業界の関係者が憂慮を募らせていると報じた。 記事は、欧州の環境団体 Transport & Environment (T & E) が先日発表した報告で、今年欧州で販売される EV のうち 25% が中国製で、中国製の割合が昨年より 5.5 ポイント上昇する見込みだと予測したことを紹介。 自動車業界データサービス会社 Inovev のデータでは、昨年 1 - 6 月に欧州で販売された EV のうち 8% が中国ブランド EV で、前年同時期の 6% からやや増加したと伝えた。

その上で、中国製 EV の市場シェア急拡大に EU の首脳が憂慮を抱くとともに、35 年までに化石燃料車の新車販売を禁止する方針への批判がますます強まっていると伝えたほか、域内の自動車メーカーからも焦りの声が聞こえていると指摘。 仏ステランティスのカルロス・タバレス CEO が 2 月に高コストパフォーマンスな中国製 EV が欧州に「侵入」しつつあるとの見方を示す一方で、自らの EV ラインナップによって反転攻勢に出る姿勢も示したと紹介した。

また、T & E が、中国の製造チェーンはより先進的であり、リチウムイオン電池セルの価格が欧州メーカー性より少なくとも 20% は安いため、中国製 EV に対して関税をかけるだけではその「侵入」は防ぎきれないとし、各種インセンティブ性のある措置や法規によって地元メーカーの EV 生産量を増やすこと、さらには中国産蓄電池に対して関税をかけることがポイントになると論じたことを伝えた。 (川尻、Record China = 4-2-24)


中国の中古車市場で新エネ車が全く売れない理由 - 中国メディア

2024 年 3 月 31 日、環球網は、中国で新エネルギー車が急速に普及する一方で、中古車市場では新エネ車が敬遠される傾向が顕著になっていることを報じた。 記事は、北京市のある中古車販売業者がこのほど、一気に 7 万元(約 140 万円)も値崩れを起こすなど価格の変動が大きすぎることを理由に中古新エネ車の取り扱いを中止したことを明らかにしたほか、別の業者も「7 万 - 8 万元で新品の新エネ車を買えるならば、中古車の購入を考える人はいない。そして、高級車ほど新車を購入したがる傾向が強い」と語ったことを紹介した。

また、業界関係者からは「化石燃料車の値下がりは許容範囲内で、例えば 30 万元(約 600 万円)のベンツなら 7 - 8 万元下がればそこで歯止めがかかる。 しかし新エネ車の値下げは底なしだ」との声があり、新エネ車は化石燃料車に比べて価値が落ちるリスクが非常に高くなっており、業者としても手が出しづらい状況にあると伝えている。 そして、中国自動車流通協会のデータによると、今年 1 月の中国国内における中古車市場取引台数 168 万 8,400 台のうち、新エネ車はわずか 5.3% の 8 万 9,500 台にとどまったことを指摘。 価格面に加えて、新エネ車に対する政策面の不安要素も業界関係者に憂慮を抱かせる要因になっているとした。

その上で、同協会新エネ分科会の章弘(ジャン・ホン)秘書長が中古新エネ車市場不振の要因について、中古車のバッテリー残量に対する評価が難しいこと、車両全体のコンディション把握が難しく、バッテリー、電気制御、電気駆動の「三電」品質保証が得られないことを挙げたと紹介したほか、紛争発生時に仲裁や問題解決の拠よりどころとなる法律法規や統一的な基準が不足していることも中古新エネ車市場の発展を阻害していると伝えた。

さらに、北方工業大学産業イノベーションセンターの張翔(ジャン・シアン)研究員が「今の新エネ車は技術の更新が急速で古いモデルはすぐに生産が止まり、値崩れを起こす。 また、バッテリー技術がなおも未成熟な点も、中古新エネ車の購入に二の足を踏ませる要因の一つになっている」との見方を示したことを紹介した。 (川尻、Record China = 4-1-24)


初の固体電池を搭載した量産新エネ車「智己 L6」が間もなく発売

動力電池の分野では、高いエネルギー密度、安全性、低価格は「不可能な三角」と呼ばれている。 NIO (蔚来汽車)の李斌(リー・ビン)最高経営責任者 (CEO) は 2023 年末に 1,000 キロに及ぶ超長距離の航続を生中継したが、車両に搭載されていたのは半固体電池だった。 しかし、NIO の秦力洪(チン・リーホン)総裁によると、この電池パックのコストは高く、発売価格 29 万 8,000 元(約 625 万円)の NIO の小型 EV セダン「ET5」 1 台の価格に相当し、量産までにはまだ距離がある。

現在の液体リチウムイオン電池に比べて、固体電池はより高いエネルギー密度を持ち、より長い航続距離を有するだけでなく、電池の体積を縮小し、重量を低減し、完成車により良い省エネと消費削減を実現させるとともに、自動車内部の空間を拡大することができる。 安全性の面では、固体電池は液体リチウムイオン電池のリチウムデンドライト析出の問題を解決し、電池内部短絡の危険性を大幅に低減できる。

先日開催された中国電気自動車百人会フォーラムで、中国科学院の欧陽明高(オウヤン・ミンガオ)院士は固体電池の発展の必要性を改めて強調した。 しかし、現在、固体電池技術の前に横たわる難題は大規模な量産と車への搭載だ。 上海汽車集団傘下の新エネ車ブランド、智己汽車 (IM Motors) は 25 日、「間もなく発売される「智己 (IM) L6」は業界初の量産車に応用する超急速充電固体電池を率先して搭載し、新エネ車を固体電池時代に導く」と発表した。

航続距離で 1,000 キロの超長航続を実現しただけでなく、充電速度においても準 900V の超急速充電を実現したと同時に、熱暴走や発火が起きない超安全設計という特徴を備えており、ユーザーの航続距離や充電に関する不安や電池の安全性への懸念を解消する。 智己 L6 が固体電池を搭載するというニュースは市場の注目と一部の疑問を呼んでいる。 BYD (比亜迪)傘下の DENZA (騰勢)の趙長江(ジャオ・チャンジャン)社長は「今、半固体車載電池を宣伝しているのは文字ゲームだ」と発言した。

固体電池と液体電池を区別する重要な指標は電池内の液体の質量比率だ。 現在の業界観点によると、液体質量が 5 - 15% を占める電池は半固体電池であり、5% 以下は固体電池または準固体、類固体と呼ばれ、電池内に電解液が全く含まれていなければ全固体電池となる。 業界関係者は、技術の進歩に伴い、電池内の液体の割合が徐々に減少し、固体電池は「半固体-固体-全固体」の順に漸進的に発展するとみている。

市場状況を見ると、固体電池の開発に参加する企業は多いが、量産の新エネ車に応用される固体電池はまだない。 NIO、東風汽車、広州汽車、長安汽車など多くの自動車メーカーが半固体電池の搭載進展を絶えず披露しているが、量産可能な固体電池の発売に成功した企業は 1 社もない。 智己 L6 に搭載された半固体電池は上海上汽清陶能源科技から提供された。 同社は上海汽車集団と清陶(昆山)能源発展の合弁会社だ。

上汽清陶が開発した初代固体電池の搭載試験が 23 年 8 月に行われた。 単体のエネルギー密度は 368Wh/kg に達し、試験車両の最大航続距離は 1,083 キロで、10 分間の充電で航続距離は 400 キロ増加した。 智己汽車は 4 月 8 日に「智己 L6 技術発表会」を開催する予定で、固体電池を搭載した智己 L6 は 5 月に発売される予定だ。 実際の使用状況が宣伝通りかどうか、引き続き注目していきたい。 (Record China = 3-29-24)


EV の逆襲? 材料価格急落で「BEV = 高い」のイメージは過去のものに 中国の低コスト戦略に要注意だ

EV 素材価格の下落

日々のニュースではわからないが、改めて電気自動車 (EV) 素材価格に関する市況を見てみると驚くことがある。 それはリチウムイオン電池材料である炭酸リチウム、さらには三元正極の材料である、

コバルト / ニッケル / マンガン

の価格がほぼ 2022 年を境に下落しているのである。

ではバッテリー式電気自動車(以下 BEV)やプラグインハイブリッド車 (PHV) の販売量が 2022 年頃から下落しているのかといえば、そのようなことはない。 世界における BEV/PHV の販売量は、国際エネルギー機関 (IEA) で報道されているとおり 2022 年は 1,020 万台(対前年比 60% 増、内訳 BEV 710 万台、PHV 310 万台)だった。 また2023 年は 1,360 万台(対前年比 31% 増、内訳は BEV 950 万台、PHV 410 万台)となったようだ。 なお、2024 年は "踊り場" として成長鈍化するものの、それでも 2023 年を上回ると推定されている。

EV 素材価格が急落する理由

それにしても不思議ではないだろうか。 BEV/PHV の販売量がこれだけ増えれば、基幹部品である電池材料はレアメタル(希少金属)であるため、比例して値上がりするのが普通だろう。 しかし、EV 素材価格は 2022 年以降急落している。 これには三つの理由があると考えている。

世界的に供給量が増大

筆者(和田憲一郎)が i-MiEV (アイ・ミーブ)の開発に携わっていた頃、BEV は黎明期ということもあり、電池正極材の方向性が限定的だった。 例えば、エネルギー密度を高めるため、ニッケル、マンガン、コバルトの三つの希少金属を主成分とする三元系 (NMC) リチウムイオン電池や、安全性を優先するためリン酸鉄リチウムを使用するリン酸鉄リチウムイオン電池 (LFP 電池)などである。

しかし、中国において新型コロナが収まりかける 2020 年後半から、BEV/PHV の急拡大が始まった。 中国汽車工業協会の発表によれば、2021 年における BEV/PHV の販売量は対前年比 2.6 倍の 352 万台、2022 年には対前年比で約 2 倍となる 688 万台と急伸した。 そのため、リチウムイオン電池に使用される炭酸チリウムや三元系 (NMC) 電池の素材であるニッケル、マンガン、コバルトが材料不足となり価格急騰に至った。

緊急事態が発生した際、世界の自動車メーカーは即座に材料を変更することが困難であるため、初期の対策として資源企業に対し供給面の拡大を要請した。 これにより、全世界的な投資ブームが引き起こされた。 特にリチウムについては、チリ、オーストラリア、アルゼンチン、中国が主要な埋蔵国だった。 しかし、この投資ブームにより、これらの地域の供給量が増加する一方で、米国、カナダ、ボリビア、ジンバブエなども新たにリチウムの供給国として名を連ねるようになった。

その結果、2023 年にはリチウムの供給量が急増し、価格が急落する事態となった。 具体的には、炭酸リチウムの価格は、2022 年のピーク時の約 60 万元/t から、2024 年 2 月末時点でその 1/6 まで低下した。 さらに、2024 年の予測では、炭酸リチウムの供給量が約 41 万t に対し、需要は 19 万t余りに過ぎず、約 20 万tの供給過剰が見込まれている。

電池業界の転換

残り、ふたつの理由を説明しよう。

技術進歩による高価格材料からの方向転換

一方、三元系 (NMC) 電池の素材であるニッケル、マンガン、コバルトも、ほぼ 2022 年をピークに下落が続いている。 これは主要メーカーによる材料変更の影響がある。 例えば、比亜迪 (BYD) は「Blade Battery (ブレードバッテリー)」と呼ばれる LFP 電池を開発した。 これは LFP 電池であるものの、電池セル自体に強度を持たせてボディの一部とする CTB (Cell to Body) 構造を採用することで、空間利用率を向上させ、エネルギー密度の低さをカバーしている。つまり最大手の BYD でも三元系電池を採用していない。

またテスラは、米国仕様と中国仕様があるが、中国生産の Model Y では寧徳時代新能源科技 (CATL) 製の M3P と呼ばれる電池を採用した。 これは、LFP 電池にマンガンを加えたリン酸マンガン鉄リチウム (LMFP) 電池が近年登場しているが、M3P ではさらに他の金属要素も若干含めて製造しているようだ。 このように、LFP 電池よりエネルギー密度を高めた電池が登場しており、三元系電池の需要が減少している。

代替え材料への移行

もうひとつの注目すべき動きが、リチウムイオン電池に対して、安価で資源地を限定されない次世代電池として、ナトリウム電池が出現してきた。 ナトリウムは、これまでリチウムに比べるとエネルギー密度が低く、重量が重いなどの弱点があり製品開発が遅れていた。 しかし、CATL は 2023 年 4 月、奇瑞汽車に対してナトリウムイオン電池 (NIB) を供給することを公表した。 また BYD も次世代電池として、江蘇省蘇州市に大型のナトリウムイオン電池工場を建設する予定だ。 まだ動きとしては少しであるが、CATLやBYD が動き出していることが、炭酸リチウム価格の低迷につながっている。

価格競争の新たな局面

現在は電池素材の置換によって、BEV の価格を引き下げ、市場の要求に対応しようとしている。 特に BYD では、

「ガソリン車よりも安い電気自動車」

をキャッチフレーズに低価格戦略を打ち出した。 中国では、BYD 2024 年モデルにて「秦 PLUS EV」が 10 万 9,800 元(約 225 万円)から、PHV 「秦 PLUS DM-i」は 7 万 9,800 元(約 165 万円)からである。

ということは、BEV 黎明期に比べると、

「EV 素材のステージが変わったのではないか」

と思える。 日本ではBEV はまだ販売台数が少なく、価格が高いというイメージがあるが、中国メーカーを中心に一気に低価格戦略が始まった。 このような流れについていけないと、EV シフト競争でも取り残されてしまうように思えてならない。 (和田憲一郎、Merkmal = 3-25-24)


テスラが中国で生産縮小、EV 販売伸び悩む−競争は一段と激化

電気自動車 (EV) メーカー、米テスラが中国での生産を縮小した。 事情に詳しい関係者が明らかにした。 EV 販売が伸び悩んでいるほか、世界最大の自動車市場の中国で競争が激化している。 公に話す権限がないとして匿名を条件に述べた同関係者によれば、テスラは今月に入り、上海工場での「モデル Y3」と「モデル 3」の減産を指示、労働日数を週 6.5 日から 5 日に減らした。 生産ラインは 1 日 11.5 時間の 2 交代制で、これは変わらないという。

今月初めから生産量が削減されているが、従業員にはいつ生産が通常に戻るのか詳細は伝えられていない。 テスラの担当者はコメント要請に応じなかった。 中国での乗用車の販売台数は今年最初の 2 カ月に全体で 17% 増加し、新エネルギー車は 37.5% 増加した。

一方、全国乗用車市場情報連合会(乗連会)によれば、テスラの出荷台数は同時期に 13 万 1,812 台と、前年同期から 6% 減少した。 年初から値下げを実施しているにもかかわらず、中国向けの出荷は 53% にとどまった。 中国をはじめ欧米など主要地域では EV 需要が減速している。 上海郊外にあるテスラの工場では、国内向けと輸出向けの両方を製造している。 (Bloomberg = 3-23-24)


中国自動車メーカーが海外工場建設進める、EV 輸出による貿易摩擦回避へ - 台湾メディア

台湾メディアの中時新聞網は 15 日、中国の自動車メーカーについて「電気自動車 (EV) 輸出による貿易摩擦を回避するため、海外で工場建設を進めている」と報じた。 記事によると、中国の EV 輸出急増を受け、一部の国が不当競争を理由に中国製 EV の輸入制限を検討する中、中国の自動車メーカーは、海外で工場建設を進めている。 ロイター通信は、中国の奇瑞汽車 (Chery) がこのほど、イタリアでの完成車工場の建設に向けて同国政府と協議を行っていると報じた。

米電気自動車 (EV) 大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は 1 月、中国の自動車メーカーを「最も競争力がある」と評価した上で、「どのような関税、貿易障壁が設けられるかにもよるが、中国以外でも大きな成功を収めるだろう」とし、「貿易障壁がなければ、世界の同業のほとんどを打ち負かすだろう。 彼らは非常に優秀だ。」と述べた。 記事はまた、米ボイス・オブ・アメリカの報道を引用し、「米国が中国の EV による米国市場席巻を防ぐための措置を講じる中、中国の自動車メーカーは、工場を海外に移転または建設する戦略を計画し、実行し始めている」と指摘。

中国 EV 最大手の比亜迪 (BYD) がタイ、ブラジル、ハンガリー、ウズベキスタンに組立ラインを建設中で、さらにメキシコで工場用地を調査していること、奇瑞は 2014 年にブラジルに工場を設立し、アルゼンチンと英国にも工場を設立すると発表していること、上海汽車 (SAIC) がタイ、インドネシア、インドに工場を有していること、長城汽車 (Great Wall) がタイの工場で年 8 万台製造していること、ボルボとロータスを傘下に持つ吉利汽車 (Geely) がベラルーシ、英国、インドネシアに工場を有していることを伝えた。 (柳川、Record China = 3-19-24)


新エネ車企業の倒産・生産停止が相次ぐ、所有者は深刻な「修理難」に - 中国メディア

2024 年 3 月 15 日、中国メディアの澎湃新聞は、倒産や生産停止に追いやられた中国の新興電気自動車 (EV) メーカーが生産した車のオーナーが深刻な「修理難」に陥っている問題について報じた。

記事は、新興 EV メーカーだった威馬汽車が昨年初めに生産を停止し、ディーラーやアフターサービス拠点が続々閉店していったと紹介。 同社の EV オーナーである何さんが「その頃から SNS 上では修理が難しくなった、部品 1 つで数か月待ちなんて当たり前になったという話が次々出るようになった」と語り、購入から 2 年が経過しても何一つ故障がなく「自分はラッキーだ」と思っていた何さんにも昨年 9 月、ついにメーターパネル上のタイヤ圧力警告灯が点灯するトラブルが降り掛かったと伝えた。

そして、何さんが地元の修理工場に車を持ち込み、タイヤの空気圧に問題がないことを確認したものの警告灯は点灯したままだったとし、ディーラーや正規の修理工場がすでに閉鎖していたため他の修理工場を巡るも「メーカーのサーバーが止まっていて、故障コードを読み取れない」と言われる始末で問題が解決せず、半年が経過した今でも警告灯が点灯したままであることを紹介した。

また、このような苦悩を抱えているのは威馬汽車のオーナーだけでなく、天際汽車や愛馳汽車など複数の新興メーカーも倒産こそしていないものの生産やサービスを停止しており、オーナーが修理難に陥っていると指摘。 中国自動車流通協会によると、破産ないしは生産停止の EV ブランド車オーナーが 16 万人以上存在すると伝えた。

記事はその上で、中国社会科学院法学研究所の唐林?(タン・リンヤオ)氏が「EV の修理やアフターサービスには専門的な技術や部品の供給が必要。 メーカーが倒産すれば市場で平価な代替品を見つけるのは難しい。 また、消費者はアフターサービス問題で弱い立場に置かれがち。 こういった問題については市場だけで解決するのではなく、政策や法律法規が役割を発揮すべき。 例えば、業界内にアフターサービス保障の基金や機構の設置を義務付けるなど、問題が起きる前の予防的な介入を行う必要がある」との見解を示したことを紹介した。 (川尻、Record China = 3-15-24)


中国、昨年の新エネ車リコール台数は 160 万台、32.3% 増で過去最多 - 中国メディア

中国で昨年リコールされた新エネルギー車が 160 万台超で過去最多に上った。 中国メディアの界面新聞などが伝えた。 国家市場監督管理総局公式サイトの 13 日の発表によると、中国本土では 2023 年に計 214 回のリコールが実施され、対象となったのは 672 万 8,000 台。 前年よりそれぞれ 4.9%、49.9% 増加した。 このうち、新エネルギー車のリコールは 72 回。 対象は 160 万 3,000 台で、前年比 32.3% 増加し、過去最多を記録した。

また、消費者から同局に寄せられた自動車欠陥報告は計 2 万 3,200 件で、うち新エネルギー車に関するものが 5,216 件だった。 バッテリーやモーター、制御装置の不具合が 24.9% を占めたという。 このほか、ソフトウエアのアップデートで行う OTA (Over The Air)リコールは計 6 回で、対象は 117 万 3,000 台、前年比 32.2% 増となった。 中国自動車工業協会によると、23 年の中国本土の自動車販売台数は 12% 増の 3,009 万 4,000 台。 うち、新エネルギー車は 37.9% 増の 949 万 5,000 台となり、市場占有率は 31.6% に達した。 (北田、Record China = 3-14-24)


米フォード、中国工場を「輸出拠点」に転換の思惑  「とても儲かっている」とファーリー CEO が本音

アメリカ自動車大手のフォード・モーターが、中国戦略の大幅な見直しを進めている。 その要点の 1 つは、中国工場の輸出拠点化だ。 「中国からの輸出は今や非常に重要だ。 EV (電気自動車)であれエンジン車であれ、わが社の中国拠点の輸出ビジネスはとても儲かっている。」 フォードのジム・ファーリー CEO (最高経営責任者)は 2 月6 日、2023 年通期および同年 10 - 12 月期の業績説明会でそう述べた。

決算報告書によれば、フォードの 2023 年のグローバル売上高は 1,762 億ドル(約 26 兆 7 88 億円)、調整後 EBIT (利払い・税引き前利益)は 104 億ドル(約 1 兆 5,392億円)だった。 同社が力を注ぐ EV 事業は赤字が続いており、EBIT ベースで 47億ドル(約 6,956億円)の損失を計上した。

余剰生産能力を輸出に振り向け

フォードは今回の決算で、中国市場単体の業績は開示していない。 だが、決算報告書のなかで「北アメリカを除く地域の収益性とキャッシュフローが増加に転じた」と述べ、海外事業の業績改善を示唆。 その要因について「中国やその他の地域で投資を抑制した効果が反映された」と説明した。 中国事業に関して、フォードが輸出拠点化を含む戦略転換を打ち出したのは 2023 年 5 月のことだ。 中国市場への投資額を全体的に減らし、利益率の高い事業に集中すると宣言した。

具体的には、中国市場での販売車種は(利幅が大きい) SUV と(ピックアップトラックなどの)商用車を主力にし、中国工場の余剰生産能力をエントリークラスの EV とエンジン車の輸出に振り向けるというものだ。 フォードの決断の背景には、予想を超えるペースで進んだ中国市場の EV シフトがある。 ほとんどの外資系自動車メーカーが急速な変化に対応できず、中国市場でシェアを落としている。

開示情報によれば、フォードの中国市場での販売台数はピークの 2016 年の 127 万台から、2022 年には 49 万 6,000 台に減少。 同年の中国事業は約 6 億ドル(約 888 億円)の赤字に陥った。 そんななか、フォードの経営陣は、中国のEV市場において中国メーカーと正面から競うのはもはや賢明ではないと判断した。2023年8月には、経営権の8割超を握っていた中国の EV 開発子会社を、(完成車の)合弁会社である長安フォードの傘下に移管。 中国市場における EV 販売事業に関しても、合弁相手の長安汽車に主導権を委ねる体制に改めた。

VW や日産も輸出拠点化を計画

対中投資の縮小に伴い、長安フォードの工場には生産能力の余剰が生じる。 それを遊ばせないための方策が、輸出拠点への転換だ。 フォードの中国法人によれば、2023 年の中国からの輸出台数はすでに 10 万台を超えたという。 中国は世界最大の自動車市場であると同時に、今や最大の生産国・輸出国となった。 その規模がもたらすコストメリットは計り知れない。 フォード以外にもドイツのフォルクスワーゲン (VW)、日本の日産自動車、欧州のステランティスなどが、中国工場を輸出拠点化する計画を相次いで打ち出している。 (安麗敏、中国・財新/東洋経済 = 3-4-24)


中国 EV 最大手 BYD、ガソリン車にも脅威に

中国の自動車市場の競争は一段と激化している。 これは、中国製電気自動車 (EV) の価格低下を意味する。 国外の中国の競合会社にとっては凶報だ。 国内で利益率が縮小する中、中国の EV メーカーはますます世界市場に目を向けるようになっている。 また、欧米や日本の自動車メーカーのガソリン車における従来の強みも、必ずしも彼らを救うことにはならなそうだ。 中国 EV 最大手の比亜迪 (BYD) は、一部の内燃エンジン搭載車も値下げし始めている。

2022 年後半に始まった中国自動車市場の価格競争は、とどまる気配がない。 10 - 12 月期に EV 販売台数でテスラを抜いた BYD は先週、新たな「爆弾」を投下した。 一部車種の価格を 10% 以上引き下げたのだ。 同社のセダン「秦 PLUS DM-i」の基本価格は現在、約 1 万 1,090 ドル(約 167万円)とフォルクスワーゲン (VW) やトヨタ自動車などの同等のガソリン車よりも安くなっている。

BYD は「比油低」というスローガンで値下げを宣伝した。 これは「ガソリンよりも安い」という意味だ。 ローマ字表記は「Bi You Di」と、「Build Your Dreams」の頭文字を取ったBYD という社名をもじったものになっている。 問題の車種はプラグインハイブリッド車 (PHV) で、PHV はバッテリーが小さいため、純粋な EV よりも通常安い。 しかし、それでもこの戦略は重要な意味を持つ。 ガソリン車と真っ向から競合することになるためだ。 BYD の動きを受け、すでに国内外の他の自動車メーカーは追随を余儀なくされている。

中国 EV 市場は数年にわたり爆発的な成長を続け、中国で販売される自動車の 3 台に 1 台が今や EV となっているものの、ここへきて減速し始めている。 中国自動車工業協会 (CAAM) によると、1 月の PHV を含む新エネルギー車の販売台数は前年同月比では 79% 増となったものの、前月比では 39% 減となった。 BYD は 1 月の自動車販売台数が前月比 44% 減少したと発表した。 一部のメーカーは生き残れないだろう。 中国にはまだ自動車メーカーが多すぎる。 ノムラによると、中国には 180 の自動車ブランドがある。 そのうちの 3 分の 2 は最終的に消滅すると同社は予想している。

値下げは利益率も圧迫する。 BYD でさえも、それは避けられない。 ただ、原材料価格の下落が打撃を和らげる可能性はある。 ゴールドマン・サックスは、BYD のバッテリーコストが 2024 年に 22% 低下すると推定している。 中国の内燃機関エンジン搭載車市場を支配してきた外資系自動車メーカーも、世界最大の自動車市場にとどまりたいのであれば、利益率への打撃を黙って耐えるしかないだろう。

BYD は恐らく、高級車の販売拡大や輸出台数の引き上げをはじめ、利益率を補う別の方法を模索するだろう。 ゴールドマン・サックスによると、BYD の昨年の売上高の約 77% が大衆車の国内販売によるものだった。 今年はその割合が 64% に低下し、輸出が 2023 年の 12% から 16% に上昇するとゴールドマンは予想している。 残りは国内の高級車部門が占めるとみられる。

1月の販売台数には、すでに今後の見通しのヒントが隠れている。 BYD の 1 月の輸出台数は前月比横ばいとなった一方で、国内出荷台数は急減した。 また、同社の自動車販売台数に占める輸出の割合は、昨年 1 月はわずか 7% だったが、今年 1月は 18% だった。 中国は昨年、世界最大の自動車輸出国となった。 西側からの制裁を受けるロシアにガソリン車を輸出したことがその一因だが、ブラジルやタイなどへの EV 輸出が好調だったことも寄与した。

中国のEVメーカーは国内市場の厳しさが増すにつれ、国外に照準を合わせるようになるだろう。 特に BYD は大きな夢を描いている。 それは国外の競合他社にとっては悪夢になりかねない。 彼らの EV 事業だけでなく、従来のガソリン車事業にとってもだ。 (Jacky Wong、The Wall Street Journal = 3-1-24)


中国 EV 業界の伸び悩み鮮明 - HiPhi、6 カ月生産停止と従業員明かす

→ 18 日に生産を停止し、従業員による工場への立ち入りを禁じたという
→ 2 月末に 1 月分が支払われた後、給料は減額される - 従業員

中国の電気自動車 (EV) メーカー、華人運通は少なくとも半年間、工場の操業を停止をする。 業界の成長が伸び悩む中で、同社は苦戦を強いられている。 プレミアムブランド「HiPhi (高合汽車)」を展開する華人運通は 18 日に生産を停止し、従業員による工場への立ち入りを禁じた。 公に話す権限がないとして従業員の 1 人が匿名を条件に明らかにした。

2 月末に 1 月分の給料が支払われ、従業員らはその後、2 月 18 日 - 3 月 18 日の間に給料の 7 割を受け取る。 従業員向け文書を引用してこの従業員が語った。 それ以降は、最低賃金が支払われるという。 世界最大の EV 市場である中国は数年間にわたる急成長を遂げた後、消費者の需要後退と貿易摩擦の激化による輸出見通しへの悪影響から、減速に見舞われている。

華人運通はブルームバーグ・ニュースのコメント要請には応じず、営業所への電話取材も返答はなかった。 同社が苦境に陥っていると報じた財新などの現地メディアに対しては、操業停止を否定している。 中国メディアは 1 月、華人運通が広州や成都などで店舗を閉鎖し、一部サプライヤーへの支払いに遅延が生じていると伝えており、同社への圧力は高まっている。 華人運通は当時、通常通り営業していると説明していた。 華人運通のような比較的規模の小さいメーカーは激しい競争で大きな打撃を受けており、業界から完全撤退する企業も多い。 (Linda Lew、Bloomberg = 2-20-24)