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「血の海」の中国 EV 市場にまた新規参入、勝算はどこに? - 中国メディア

2025 年 8 月 28 日、中国メディアの鳳凰網は、生存競争がますます激化している中国の電気自動車 (EV) 業界に、他業界からまた新たなメーカーが満を持して参入してきたことを報じた。 記事は、ロボット掃除機大手の「追覓科技 (Dreame Technology)」が自動車製造への参入を正式に発表し、世界最高峰のスポーツカーブランドであるブガッティ・ヴェイロンをベンチマークとする超高級 EV を 27 年に発売する計画を示したと伝えた。

そして、同社が 17 年の設立当初からシャオミ(小米)のエコシステムに加わって技術力を高め、ロボット掃除機分野のトップ企業の一つとなったと紹介。 自らを「中国のアップル」と称し、参入する全ての市場でトップクラスに駆け上がる中国ブランドを自負しているとした。

また、アップルでさえ 10 年と 100 億ドル(約 1 兆 5,000 億円)を費やした挙げ句に開発を断念するほどハードルが高い上、中国国内の EV 市場の生き残りをかけた競争がますます激しくなる中で、新規参入して「世界最速の車」を製造するという野心的な目標を掲げたことについて、同社が「単なる流行追いではなく、成熟した EV サプライチェーンと自社の世界的なブランド力を生かせると判断した、慎重な決定だ」との姿勢を見せていると紹介。 清華大学出身の創業者・ユー・ハオ氏による発言からも、巨大な市場への挑戦を恐れない姿勢がうかがえると評した。

さらに、同社やユー氏の自信や強気な姿勢の源泉として、すでに中国の EV サプライチェーンが確立された中で参入できる後発者の強み、スマート掃除機分野での成功体験のほかに、「ODM モデル」により資金を調達する独自の経営計画があると指摘。 既存の車種(理想 L9 やシャオミ SU7 など)をベースに改造したサンプル車を少数制作して売り込み、その収入を自社開発の自動車プロジェクトに充てるものだと説明した。

記事はその上で、自動車産業は投資規模が大きいが、リターンが遅いというリスクを抱えており、ある新興 EV メーカーの CEO からは「400 億元(約 8,000 億円)なければ車を造るな」との声も聞かれると紹介。 同社は未上場であり、24 年の既存事業売上は 150 億元(約 3,000 億円)と報じられており、外部からの資金調達能力に懸念の声が上がっているとした。

さらに、同社が掲げる ODM 戦略は実際に進めていないと効果が分からず、同社が想定の資金調達サイクルを構築できるかは未知数だと指摘。 同じロボット掃除機メーカーの石頭科技が先行して EV 市場に参入するもここ半年の月間販売数が 1,400 台未満と販売不振に苦しんでいることも紹介した上で、小鵬汽車の何小鵬(ホー・シャオパン) CEO が「血の海」と表現するほど厳しい EV 市場にあって、同社の EV 事業は大きな不確実性を伴っていると評した。 (川尻、Record China = 8-30-25)


輸出「世界一」でも疲弊する中国自動車業界 「内巻」は止められるか

中国で乱立した電気自動車 (EV) メーカーが激しい値引き競争を繰り広げ、混乱を起こしている。 政府が定めた重点産業に多数の企業が参入し、勝ち残った企業が世界市場をも席巻する競争は、これまでも中国で繰り返されてきた。 ただ、業界全体が疲弊するほどの過当競争は中国で「内巻」と呼ばれ、危機感が強まっている。 政府も対策に乗り出すが、一筋縄ではいかなそうだ。 7 月上旬、中国・広東省広州市の中古車販売店。 中古車がずらりと並んだ約 1 万平方メートルの巨大店舗で、販売員が「走行距離が少ない」と紹介したのは、座席にビニールがかぶせられたままの EV だった。

 

総走行距離はわずか 4 キロメートル。 販売員は「ディーラーから直接運ばれてきた。 実質的には新車だ。」と明かす。 販売価格は新車価格より 7 万元(約 140 万円)ほど安く、ほぼ半額だ。 ディーラーが販売ノルマの達成や在庫を少しでも現金化する目的で、売れ残った車を販売したことにして新車登録だけ済ませ、中古車として持ち込んでいるのだという。

中国で今、実際は新車にもかかわらず、中古車市場に流れてくる通称「ゼロキロ中古車」が問題となっている。 自動車業界団体が運営するメディアによると、中古車市場で流通する新車登録から 3 カ月以下、総走行距離 50 キロ以下の「ゼロキロ中古車」の割合は昨年、12.7% に達していたという。 ゼロキロ中古車の存在はこれまで広く知られたものではなかった。 今年 5 月、中国自動車大手・長城汽車のトップが中国メディアのインタビューで「おかしな現象」として問題提起したことで表面化。 中国商務省が調査に乗り出す事態に発展した。

ゼロキロ中古車を生み出す「内巻」

この奇妙な現象の背景にあるのは、中国語で内巻と呼ばれる自動車業界内の激しすぎる競争だ。 内巻は、2020 年ごろから急速に広がった新語だ。 当初は大学受験や就職活動といった中国社会の「熾烈な内部競争によって疲弊する状況」を指す言葉として使われてきた。 今では中国産業界の過当競争や、それがもたらす過剰生産などの問題を指す言葉として使われることが多い。 特に問題が深刻化しているのが自動車業界だ。

中国は 09 年から購入補助金などの政策を通じ、国を挙げて EV の開発・普及を促してきた。 その結果、23 年には EV などの新エネルギー車 (NEV) が牽引する形で自動車輸出台数で初めて日本を抜き、世界一の輸出大国となった。 日本や欧米の自動車メーカーにとってドル箱だった中国市場でも、中国メーカーのシェアが 19 年の 37.9% から 24 年には 60.5% に急拡大しており、日米欧メーカーを苦境に追い込んでいる。

その裏で激化し続けているのが中国メーカー同士の内巻だ。 中国メディアなどによると、EV などの新エネルギー車メーカーの数は、20 年ごろには約 500 社にものぼった。 足元では 1 割程度の約 50 社まで減ったものの、淘汰はさらに進むとみられている。 中国国家統計局によると、かつては 7 - 8% あった自動車産業の売上高利益率は、25 年 1 - 4 月には 4.1% と過去最低水準まで落ち込んだ。 足元ではわずかに持ち直すも依然として 4% 台で、激化する内巻によって、売り上げが増えても利益があがらない状況が続いている。

値下げ競争でパニックに、内巻は深刻化

自動車業界も危機感をあらわにしている。 「5 月 23 日以降、ある自動車メーカーが大幅な値下げに踏み切ったため、それに追随する企業が続出し、『価格戦争』パニックを引き起こした。」 中国の自動車メーカーで作る中国自動車工業協会は 5 月 31 日、こんな異例の声明を発表した。

「あるメーカー」として暗に名指しされたのは、日本にも進出している中国の EV 最大手「BYD」だ。 5 月 23 日に 22 モデルで、最大 5 万 3 千元(約 110 万円)の大幅値下げに踏み切ったことに業界団体が反発したのだ。 声明は「『価格戦争』は企業の正常な経営を阻害し、サプライチェーン(供給網)の安全を脅かし、産業発展を悪循環に陥れている」と指摘する。

中国式産業政策が生み出す「強さ」と「副作用」

では、内巻はなぜ起こるのか? 内巻は、EV に限らずリチウムイオン電池や太陽光パネル、鉄鋼に至るまで中国産業界が繰り返してきた長年の問題だ。 中国の産業政策がもたらす副作用とも言える。 中国では、育てるべき産業や目標を中央政府が定めると、各地方政府は補助金などの優遇策で産業振興や経済成長を競い合う。 政府が振興する産業には巨額の資金が流れ込み、企業間の投資競争に発展することになる。

加えて、もともと中国では、改革開放前から企業の投資・生産の拡大志向が強い。 目標達成が最優先された計画経済時代の名残のようなもので、「投資飢餓症」と言われるほどだ。 需要を考慮せずに生産能力を増強し、過剰生産や過当競争に陥りやすいと指摘される。 熾烈な競争の末、勝ち残った企業は中国市場を手中に収めるのと同時に、安価で大量の中国製品は世界市場も席巻し、有数の巨大企業へと成長を遂げる。

EV では BYD が代表格だ。 今年上半期の全世界販売台数では世界最大手だった米テスラを抜いた。 日本車メーカーの牙城であった東南アジアでも、BYD を筆頭に中国メーカーがシェアを奪い始めている。 ただ、同時にもたらされるのが内巻という副作用だ。 企業の利益を圧迫するだけでなく、大量の敗者に費やされた投資や支援策は、巨額の債務や地方財政の悪化をもたらし、実体経済を傷める。

内巻は止められるか? 「競争が繁栄生む」ジレンマも抱え

中国政府も産業界の内巻を問題視し、対策に乗り出そうとしている。 習近平国家主席は今年 3 月の全国人民代表大会(全人代)の関連会議で、「『内巻式』競争を断ち切る必要性」を強調。 7 月 1 日には、自身が主宰する経済分野の重要会議である中央財経委員会で「企業間の無秩序な低価格競争を規制する」との方針を打ち出した。 各地方政府間が競い合うことで生まれる統一性のない産業振興策を阻止し、資源を最適配分する「全国統一大市場」構想なども打ち出している。

ただ、激しい競争は中国製造業の強さの源泉でもある。 BYD の王伝福会長は「過剰があって初めて競争が起こり、競争があって初めて繁栄が生まれる」と語る。 内巻対策に乗り出す中国政府は「ジレンマも抱えている(日本政府関係者)」と分析する向きもある。 中国は、長年の課題にどれだけ踏み込めるのか。 製造大国となった中国の動向は、日本を含む世界の企業や産業にも少なくない影響を与えることになる。 (広州・鈴木友里子、asahi = 8-23-24)

〈編者注〉 今年 5 月、BYD が価格競争を仕掛けた後も、まだ 20 社が追従できているのは、いずれの販売製品にも他を圧倒するような特色・魅力・デメリット克服力に欠けていることの現れでしょう。 車両の本来の目的である「重いものを遠くに届けるのが難しい」、そして「スピード競争には太刀打ちできない」のであれば、自ずとその市場には限りがあることが分かってしまいます。


トヨタ子会社、中国・大連に EV 用電池工場 新棟に 760 億円投資

トヨタ自動車の電池製造子会社「プライムプラネットエナジー & ソリューションズ (PPES)」は、中国・大連の合弁工場に、電気自動車 (EV) 用電池をつくる新棟を建てる。 投資額は 37 億元(約 760 億円)。 EV 化が進む中国で、電池供給網の整備を急ぐ。 新棟は 6 月下旬に着工した。 PPESは、稼働時期や製造する電池の種類などの詳細を詰めている。 PPES は現在、現地資本と合弁で運営する大連の工場で、ハイブリッド車 (HV) やプラグインハイブリッド車 (PHV) 用の電池をつくり、日系企業を中心に、国内外の自動車工場に供給している。

大連市政府のホームページによると、フル生産すれば年間の生産額は 40 億元に達する見込みだという。 トヨタはすでに中国で EV を現地生産しているほか、2027 年度には上海で高級車ブランド「レクサス」の EV 工場の稼働を目指す。 開発から製造まで、EV の中国シフトを進めている。 PPES はトヨタが 51%、パナソニックが 49% を出資している。 (大平要、高橋豪、asahi = 7-15-25)


「50 日で 2 万台突破!」 … "価格破壊の怪物 EV" が中国で爆発的ヒット、日産の本気が洒落にならない

日産 N7、人気爆発 価格競争力を備え 豊富な機能も確保

日産の電気自動車「N7」が中国市場で発売から 50 日間で確定受注 2 万台を突破し、大きな話題となっている。 4 月 27 日に発売された N7 は、119,900 元(約 244 万円)からの 5 グレード構成で、中型 EV 市場において価格と機能のバランスが取れた競争力のあるモデルと位置づけられている。

N7 は東風日産の新エネルギープラットフォームをベースに開発された初の EV セダンであり、合弁会社の電動化戦略を推進する重要な一手とされる。 当初は中国市場向けに設計されたものの、日本市場への導入を検討しているという報道も出ている。 ただし、現時点で日産からの正式な発表はない。

5 つのグレードで多様なニーズに対応

N7 は、160kW または 200kW のモーターとリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを組み合わせた 5 つのバリエーションを展開。 航続距離はそれぞれ 510km、525km、540km、625km、635km に設定されている。 充電性能も高く、最適な条件下では急速充電を使って 14 分でバッテリー残量を 30% から 80% まで回復可能とされる。 すべてのモデルに 6.6kW の外部給電機能を搭載し、アウトドアや緊急時の電源供給にも対応する。

全グレードに日産独自開発の OS、15.6 インチの 2.5K タッチスクリーン、車酔い軽減ソフトを搭載。 エントリーモデルには Snapdragon 8155 チップを、最上位グレードにはより高性能な Snapdragon 8295P が採用されている。 さらに、最上位モデルには日産とモメンタが共同開発したエンドツーエンド (E2E) 型の運転支援システムが組み込まれ、レベル 2+ 相当の運転支援機能を備える。

N7 の車体サイズは全長 4,930mm、全幅 1,895mm、全高 1,487mm、ホイールベース 2,915mm とされ、パーソナルユースはもちろん、ビジネス用途にも適しているとの評価が多い。 最上位グレード「Max」は最長航続距離と最新ハードウェアを備えており、受注全体の 60% 以上を占めるなど特に人気が高い。 想定を上回る受注により、一部では納車の遅延も生じているという。

ミニマルな外観と上質な内装

N7 はクローズドグリルや分割型ヘッドライト、フルワイドのライトバーを採用したミニマルなデザインが特徴。 照明システムには 700 個超の LED と 800 個超の OLED ユニットが使われており、カスタマイズ可能な「マジックキャンバスアニメーション」によって多彩な演出が可能となっている。 ホイールは、マルチスポークの空力重視デザインとスポーティーな 5 スポークデザインの 2 種類から選択できる。

内装も注目を集めている。 スエード調マイクロファイバー表皮やアルカンターラ風素材を使用し、高級感と快適性を両立。 上位グレードでは「クラウドコンフォート無圧力シート」が採用されており、長時間のドライブでも快適に過ごせる仕様となっている。 内装色には、フォレストグリーンとスノーホワイトを組み合わせた独自のツートンカラーも用意されている。 性能、技術、価格、デザインがバランスよく組み合わさった東風日産の N7 は、今後も高い人気を維持すると見られる。 国内を含む他地域への展開も噂されており、N7 が日産のグローバル EV 戦略における中核モデルとなるか、注目されている。 (山田雅彦、江南タイムズ = 7-9-25)


中国の EV バブルは間もなく崩壊する - 独メディア

独紙ディ・ヴェルトは「中国の電気自動車 (EV) バブルは間もなく崩壊する」との論評記事を掲載した。 記事は、「中国には世界最大の EV 市場があるが、おそらく最も脆弱である。 中国では 2024 年に 1,200 万台以上の EV およびハイブリッド車が販売された。 しかし、この成長には高い代償が伴っている。 補助金、破壊的な競争、そして疑わしい販売手法だ。」と指摘した。

その上で、「中国のこのシステムが過熱していることはすでに明白であり、本当の崩壊はこれからやってくる。 先頭を走る BYD の兆候が最も顕著である。 同社の成長戦略は次第に揺らいでいる。 市場の勢いが鈍化しているにもかかわらず、生産は全力で続けられている。 その結果生じるのは巨大な生産能力の過剰。 自動車業界において、これは生産ラインの停止と同じくらい致命的だ。」と論じた。 そして、「この過剰な生産能力の多くは輸出に向けられる計画だが、懲罰的な関税、EV への懐疑的な見方、中国製に対する根強い抵抗感を考慮すると、それは決して順調に行くものではない」と指摘した。

記事は、「これはかつての中国産業における過剰生産の事例を想起させる。 太陽光発電、風力発電、不動産。 いずれも急成長の後、崩壊を迎えた。」と言及。 「すでに一部の企業家は BYD を恒大と同列に語っている。 たとえそれが同業者間の単なる摩擦にすぎないとしても、共産党政権が今や警鐘を鳴らし始めているのならば、その声は真剣に受け止めるべきだ。」と論じた。

そして、ドイツの自動車メーカーについて「まず慎重さが大事。 中国のライバルは決して侮れないが、EV ブームが永遠に続くわけではない。 特にフォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツは、いつ崩壊してもおかしくない市場でどう立ち回るかを学ばなければならない。 パートナーであれ、合弁事業であれ、現地生産であれ、それらは決して "保護" ではなく、むしろ "依存" を深めるだけだ。 中国の EV バブルが崩壊すれば、その影響は世界中に及ぶことになる」と警鐘を鳴らした。

ディ・ヴェルトは別の記事で「最近、BYD が欧州市場でテスラを上回る販売台数を記録し、話題となったが、その販売戦略はやがて自らの首を絞めかねない」とも指摘。 専門家の話を交えて「個人や法人への販売だけでなく、自社のディーラーやレンタカー会社に販売して売り上げを水増しする方法があるが、これは市場での大幅な値崩れにつながる。 キャンペーン頼みのやり方では自動車の価値の安定性を損ない、長期的にはブランド自体を傷つけることになる」とし、「自動車において最も重要なのは、長期的に安定した価値を維持することである」との見方を示した。 (北田、Record China = 7-4-25)

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BYD が EV の価格調整を発表、専門家「値下げ競争の一時停戦のサイン」 - シンガポールメディア

2025 年 7 月 1 日、シンガポール華字メディアの聯合早報は、中国自動車大手の BYD が同社傘下の電気自動車 (EV) ブランドの価格を再調整すると発表したことについて、「価格競争の一時停戦のサイン」だと指摘し、「中国政府が各社に内巻きの価格競争の自主規制を求めた会合以降、徐々に持続可能な良性の競争への転換に希望が見えてきた」とする一方で、専門家からは「既定の販売目標が実現できなければ、第 4 四半期(10 - 12 月)にも価格競争が再発する」と警告する声があることを伝えた。

記事は初めに「6 月末までに『夏限定の一律価格』と銘打って 22 モデルを対象に 10 - 34% の値下げを実施していた BYD は、先週末に一転して 7 月から王朝シリーズや海洋シリーズの値段を新しく調整し直し、現行の値下げ価格の設定を廃止するプランがあると発表した。 聯合早報の記者が北京の BYD ブランドの直営店を取材したところ、同店舗の営業責任者が 7 月から価格調整を行うことは事実だと回答した。」と紹介した。

中国では自動車だけでなく、多くの業界や市場で価格競争の悪循環に陥り、政府の報告書にも今年初めて「内巻きの競争を総合的に治療、調整する必要がある」との文言が載った。 中国メディアによると、中国の自動車市場の価格競争が始まったのは 23 年ごろといわれ、だんだん激しさを増すばかりの値下げ合戦を憂慮した中国政府は 6 月上旬に BYD を含む主要メーカー 10 社以上の幹部を北京に集めて会合を開き、過度で非合理的な値下げを控えるよう、各社に自主規制を要求していた。

記事は続いて、3 人の専門家の意見を紹介した。 1 人目の北京大学新結構経済学研究院の沈鴻(シェン・ホン)研究員は、「政府が介入したことで EV の価格競争はしばらく落ち着きを見せるだろう。 短期間で再発する可能性は低く、業界が内巻きの競争からより良性で持続可能な発展へと向かうのではないか」と回答した。

2 人目のフィッチ・レーティングスのアジア太平洋企業格付け部門ディレクター、ヤン・ジン氏は、「自動車メーカーや金融機関、地方政府から『反内巻き』の声が上がっており、短期的には自動車の市場価格が落ち着く希望が見える」としながらも、「自動車市場の真価が分かるのは、購買が増える 9 - 10 月の時期で、その時に大手メーカーの価格安定戦略が通年の自動車市場の動向に影響を及ぼすだろう」と論じた。

3 人目のフランスの投資銀行ナティクシスの呉卓殷(ウー・ジュオイン)上級エコノミストは、「BYD の価格調整は同業他社へ価格安定を呼び掛けるサインのようなもので、短期的には価格競争のまん延を抑制する助けとなるだろう」としながらも、「EV メーカーがそれぞれの販売目標を達成できなければ、価格競争は今年の第 4 四半期にも再発する恐れがある」と指摘した。 (原邦之、Record China = 7-2-25)

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中国 EV 株が軒並み下落、BYD の大幅値下げで競争激化懸念広がる

中国の電気自動車 (EV) メーカー、比亜迪 (BYD) による最大 34% に及ぶ大幅値下げを受け、26 日の香港市場では中国 EV 株が軒並み下落した。 BYD の株価は一時 8.3% 安。 競合の理想汽車、長城汽車、吉利汽車も 5% 余り下落し、業界内の競争激化を巡る懸念が浮き彫りとなった。 BYD は、6 月末まで EV およびプラグインハイブリッド車 (PHV) の合計 22 車種で値引きを実施すると発表。 業界全体に新たな価格競争の波を巻き起こした。 EV 販売は年間で過去最高を記録しているものの、その伸びは鈍化している。

ティム・シャオ氏を含むモルガン・スタンレーのアナリストはリポートで、「一部の値下げは 4 月からすでに始まっていたものの、今回の正式な発表は市場の厳しさを明確に示す強いシグナルとなった」と指摘した。 BYD による今回の値下げは他のメーカーにも波及し、さらなる価格引き下げを招く可能性がある。 すでに利益率の低い状況にある自動車メーカーにとって、価格競争の激化は収益の圧迫を招き、業界再編や損失拡大につながりかねない。

シティ・リサーチのアナリストはリポートで、「BYD の値下げに他社も追随するだろう」とし、重慶長安汽車などに値下げの動きが出ていると指摘。 週末の値下げを受け、BYD 販売店への客足が前週比で 30 - 40%増加した可能性があるという。 (Danny Lee、Bloomberg = 5-26-25)