島根県の離島・海士町、リモートの時代だからこそ距離の不利を乗り越え、手軽な旅行先に

・ 自宅にいながら旅を満喫できる「リモートトリップ」を企画販売
・ 「生産者 x 観光ホテル」 お客様向け旬の食材を EC 販売へ

- 特大の絶品岩牡蠣を自宅で堪能 & 島旅を五感で満喫できるプランと島の幸詰め合わせで、旅行・観光業と一次産業を支援する -

株式会社島ファクトリー

株式会社島ファクトリー(島根県隠岐郡海士町)は、自宅にいながら五感で旅を満喫できる「リモートトリップ」と島の生産者の恵みを詰め合わせて「海士のてしごとマルシェ」を企画・販売します。 新型コロナウィルスの感染拡大を受け、外出自粛を余儀なくされている旅行好きの方をターゲットに、コロナ禍の影響で売り上げが落ち込む旅行・観光業、さらには一次産業を支援する企画として広く発信していく考えです。

新型コロナウィルスの感性拡大により、旅行・観光業は全国的に大きな打撃を受けています。 島根県沖の隠岐諸島の一つ、海士町(島前・中ノ島)も例外ではありません。 人口約 2,300 人の小さな島に年間約 30,000 人の旅行客が訪れますが、観光シーズンである 4 月 - 11 月を前に、島外からの観光客を迎え入れられない状況に陥ってしまいました。

宿泊施設、飲食店、土産物店、ガイド業、交通事業者など、旅行・観光に携わる事業者は窮地に追い込まれています。 さらに、観光客の減少や飲食店の営業自粛により、名産品である岩牡蠣やもずくといった海産物の生産に携わる一次産業にも悪影響が出ています。

このような状況を受け、一般社団法人海士町観光協会の子会社である株式会社島ファクトリーでは、今春、新たな取り組みとして、自宅にいながら旅行が楽しめる「リモートトリップ」、海士町産の野菜、海産物、牛肉、調味料や米などを詰め合わせた「海士のてしごとマルシェ」の企画・販売を始めました。 現在までに 3 回のリモートトリップを開催し、全国各地から計 62 名にご参加いただき、5 月 11 日から販売開始した詰め合わせセットは予想よりも多くの注文をもらっています。

リモートトリップの特徴は、五感で海士町への旅を満喫できること。 例えば、4 月に開催した第 1 回のリモートトリップでは、当日までに参加者に大きな岩牡蠣(個数はコースにより異なる)が届けられました。 参加者は、指定の時間にビデオ会議システム Zoom にアクセス。 島ファクトリーのスタッフのガイドでツアーがスタートすると、まずは島の人のお手本を見ながら、みんなで同時に岩牡蠣を開け、磯の香りあふれるプリプリの身を味わいました。

また、第 2、3 回のリモートトリップでは、岩牡蠣を堪能した後、島のバーチャル観光(島の人がドライブする映像をガイド付きで共有)を行い、自然が作り出す美しい景色を楽しみました。 さらに、島の人と交流したり、参加者同士で盛り上がったりと、海士町の魅力である「人とのつながり」を大切にした全 2 時間の行程となっています。

リモートトリップには、旅行で訪れるだけでは生まれなかったであろう島の人とのつながりや参加者同士のつながりが得られる、コロナ禍の影響で困窮する旅行・観光業を活気づけ、一次産業を支援することにもつながる、外出自粛で旅行ができない人々に喜びや楽しみ、ワクワクを提供できる、などのメリットがあり、「いつか実際に島を訪れてみたい」という将来の観光客の掘り起こしにもつながることが期待されます。

第 4 回リモートトリップはさらに新たな挑戦も。 リモートならではを生かし、一度に 2 ヶ所の旅行が出来るのもおもしろいのでは? とコロナ禍の情勢を逆手にとっての発想で、海士町と宮城県気仙沼を同時にリモートトリップできる企画を開催予定。

海士のてしごとマルシェは、海士町唯一のホテル、マリンポートホテル海士の宿泊客に対し提供している食事に使われる海士町の産品を、島を訪れられないこの状況下でもたくさんの人に楽しんでもらうための施策。 マリンポートホテル海士では、海士町産食材 100% 使用し、島の伝統的な料理や季節の旬の食材を楽しんでもらうことにこだわってきました。 島の特産の牡蠣、水が豊かな島こそのれんげ米、免疫力アップも期待できるもずくやアカモクなど全 14 品目を箱いっぱいに詰め込み、クール便でお届け、自宅で島の食材を堪能いただきます。

全国に先駆けてリモートトリップ(略称 : リモトリ)を実施した島ファクトリー、海士町としては、今後この取り組みのアイデア・知見を独占するのではなく、全国各地、特に地方・田舎の観光事業者と共有し、広げていきたいと考えています。 いつこの状況が収束するのか行く先が見えない、そんな不安な時期だからこそ、リモートトリップや島の食材を通して旅の感動を届けていきたいと考えています。 (PR Times = 5-19-20)


「今は来ないで」岡山県は大炎上、島根県は絶賛 … 明暗を分けたのは "言い方"?

新型コロナウイルスの感染対策で、全国の自治体が「今は来ないで」と訴えている。 5 月 2 日 - 6 日のゴールデンウイーク期間中などに、帰省や旅行で人の出入りが激しくなれば、感染が広がる恐れがあるからだ。 だが、ものは言いようだ。 「来たら後悔させてやる」と言わんばかりの発言をした知事には抗議が殺到した。 「会いたいからこそ、今は『会わない』ようにしませんか。 それが収束を早める。」と訴えた県には、「素敵なメッセージが心に響いた」と賛意が寄せられた。

いずれ感染症が収まれば、外出自粛で景気や社会活動が低迷した分、観光客や定住者の誘致が課題になるだろう。 しかし「今の言動が地域のイメージを左右し、後になって明暗が分かれるのではないか」と指摘する声もある。 「後悔」と口にしたのは、伊原木(いばらぎ)隆太・岡山県知事だ。 山形県が来県者の検温を始めたのに触発され、岡山県でも「県外からの帰省者や旅行客の流入抑止に向けた啓発活動」として実施しようと考えた。 高速道のパーキングエリアで 4 月 29 日、職員らが県外ナンバーの車に乗った人などの検温を行うと決めた。

その内容を発表した 4 月 24 日の記者会見で、「いかに歓迎していないか、警戒しているかっていうことを、主に他県の皆さんにお伝えできる人数」に対して検温し、「声を掛けられた人が、『マズイところに来てしまったな』と、後悔をしていただくようなことになればいいなと思っています」などと述べた。 これが報道されると、県庁には抗議の電話やメールが相次いだ。 「2 日間で 50 件程度の苦情がありました。 妨害してやる、危害を加えるというような内容もありました。」と公聴広報課の職員は話す。

「職員が疲弊してしまう」

結局、伊原木知事は検温を中止すると発表した。 そして、「皆さんがビックリするぐらいの言葉を使わなければ、県外で配信してもらえないという思いで、わざと使った面もある。大変多くの方に不快な思いをさせてしまった」と釈明した。 「普段は強い言葉を使わない人です。 命に関わる話なので、あえてきつい言い方をしたのだと思います。 しかも、県外の人に対してだけでなく、岡山の人も県外に出て迷惑をかけてはいけないと注意を呼び掛けたのですが、記事では県外の部分だけが切り取られてしまいました。」と公聴広報課の職員が知事の気持ちを代弁する。

ただし、伊原木知事は検温の撤回時、「高速道路会社には、県内の高速道路の効果的な場所でインターチェンジを閉じていただくようお願いする」と新たな他県民の流入抑止策をぶち上げた。 これがまた物議を醸すことになり、「土木部の担当課は今も電話が鳴りっぱなしです。 それはもう職員が疲弊してしまうほどです。」と前出の職員がため息をつく。

「知事発言で今後の観光に影響が出るかもしれない。」 "封鎖" を要望された高速道路はどうなったのか?

西日本高速道路の中国支社は「もちろんどこも封鎖していません。 岡山県への物流を滞らせるわけにはいきませんから」と話す。 5 月 1 日までの交通量は通常の 7 割ぐらいに減っているといい、「走行しているのはトラックなどの物流関係に絞られてきています」と語る。 流入抑制のターゲットになった観光地はどうか。美観地区を抱える同県倉敷市の観光課は「県外からの観光客はほとんど来ていません。 施設はほぼ休みですし、開いてる店舗も数えるほど。」と言う。

観光関係者の 1 人は「知事発言で今後の観光に影響が出るかもしれないと不安です」と眉を寄せる。 「コロナ禍が収まっても岡山には行きたくない」という声が出ているからだ。 「新型コロナウイルスの影響とダブルパンチにならないことを願うだけです」と言葉少なだった。

県外ナンバーへのあおり運転や投石が発生

県知事の発言は徳島でも話題を呼んだ。 徳島県内で 4 人目の感染者が確認されたことを公表した 4 月 21 日、飯泉(いいずみ)嘉門知事が「県内の各施設で県外ナンバー車の実態調査を行う」と明らかにした。 神奈川県から帰って来た人が感染するなどしていたのが理由だ。 この発表が引き金となって、県外ナンバーの車へのあおり運転、投石、傷つけ、暴言が発生した。 飯泉知事は「強いメッセージになり過ぎたかもしれない」と、他県ナンバーの車に嫌がらせをしないよう県民に呼び掛ける事態になった。

一方、「来ないで」というメッセージに多くの共感が集まった県がある。 島根県だ。 帰省者は、戻るのを待ち望む人がいるから帰って来る。 そこで 4 月 29 日、県民向けに「会いたいからこそ、今は『会わない』ようにしよう。 それが収束への早道だ。」と訴える全面広告を地元紙に掲載した。

地域ごとの方言で「帰省自粛」を呼びかけ

担当した広聴広報課の職員は「ウイルスの流行以前から、出身者に『ぜひ帰って来てください』と呼び掛けてきた県です。 『帰ってくるな』とだけは言いたくありませんでした。 そこで、方言を使ったら否定的なニュアンスが和らぐのではないかと考えました。」と話す。

島根県は東部の出雲地域と、西部の石見(いわみ)地域に分けられ、それぞれ言葉が違う。 このため出雲地域用は「早く会いたいけん、今は帰らんでいいけんね。」、石見地域用は「早く会いたいけぇ、今は帰らんでいいけぇね。」と大書した。 さらに全県共通のメッセージとして「ここ島根で生まれたそのつながりは、距離に負けるほど弱くはないと思うのです。 近いうちに、いつも通り会える日が必ず来ます。」と記した。 そして 県の公式 Facebook にも載せた。

大きな反響があった。 Facebook には「とても素敵なメッセージで心に響きました。 この新聞をきっかけに島根にいる親と会話したり、普段の GW では電話をすることのない島根の祖母とも電話をし、改めて地元が好きになりました。」とコメントした人もいた。 「いいね」は 5 月 1 日までに 1,200 件を超えた。

「今だからこそ丁寧に発信しないといけない」

「現在、飛騨はお休み中です。」 岐阜県の國島芳明・高山市長、都竹(つづく)淳也・飛騨市長、成原茂・白川村長の 3 人は 4 月 30 日、こんなメッセージを共同で発表し、3 人で語りかける YouTube 動画も流した。

動画では「観光地、お店、自然豊かな場所すらも、新型コロナウイルスから地域を守るために、ほぼお休みしております」、「この新型コロナウイルスが収束した折には、地域を挙げて皆様を歓迎させていただきます。 そして、飛騨の魅力を存分に楽しんでいただけるよう、精一杯のおもてなしをさせていただきます。 それまで、今しばらくお待ちいただきますようお願いいたします。」などとリレーで述べ、最後に「大変辛く、また失礼なお願いかとは存じますが、ご理解ご協力をいただければ幸いです」と深々を頭を下げた。

これほど丁寧に「お断り」されたら、誰しも悪い気はしないだろう。 むしろ、支援したくなるかもしれない。 それにしても「お休み中」とは、しゃれた言い方だ。

高山市の清水雅博・秘書課長は「文案は3首長が集まって練り、『お休み中』は都竹飛騨市長が発案しました。外出自粛が長引いて、社会の不安がどんどん大きくなっています。他を排除するような風潮も広まっています。こうした時の言葉は、発し方一つで敵対心を生みかねません。今だからこそ丁寧に発信しないといけないというのが3人の考えでした。飛騨は新幹線も通っていなければ、飛行場もない不便な所です。にもかかわらず、遠方から多くの人が観光に来てくれます。『お休み』という柔らかい言葉には、私達の感謝の気持ちが込められています」と解説する。

國島高山市長は、これとは別に独自のメッセージも出している。 ここでは医療資源が乏しく、感染者が出たら医療崩壊に直結しかねない地域事情を切々と訴えるなどした。 そして、子や孫を帰省させなかった市民に対しても「ふるさと高山を出て都会の大学に通う子どもたちが、不安の中、都会で一人耐え忍ぶ姿を想像する時、本当につらく悲しい気持ちとなります。 ふるさと飛騨高山は、高山で生まれ育った皆さんを誇りに思っていること、終息すれば、ふるさとはいつでも温かく迎え入れること、合わせてお伝えいただければ幸いです。」と記した。 飛騨の人情深さが感じられる文面だ。

「帰省断念」への感謝の気持ちを特産品のお礼で示す自治体もある。 宮崎県日南市だ。 「行かない、来ない、呼ばない宣言」を 4 月 21 日に行った崎田恭平市長は、4 月 29 日 - 5 月 10 日の間に帰省を断念し、航空機などをキャンセルした先着 50 人に、特産のマンゴー 1 キログラム分(時価 4,000 - 5,000 円相当)をプレゼントすると発表した。 「景気悪化の影響などからマンゴーの売れ行きが落ちています。 そこで PR を含めて、帰れない分、故郷を味わってほしいと考えました。」と担当職員は話す。

危機にこそ試される "首長の発信力"

千葉県勝浦市など房総半島の 6 市町村の首長が出した共同メッセージには誠実さが感じられる。 6 市町村は太平洋に面していることからサーフィンに訪れる人が多い。 しかし、高齢化が進み、医療資源も乏しいため、感染が拡大すると致命的な影響を受ける。 そこで「苦渋の決断」で自治体所有の駐車場を閉鎖した経緯を説明した。

「新型コロナウイルス感染症の危機が去りました暁には、わたくしどもの地域をあげて、従来にも増す熱意で皆様をお迎えさせて頂くことをお約束いたします」として、その時には「お互いに大輪の笑顔で、再会を祝しあえるように」とメッセージに書き込んだ。 何を発信するか。危機にこそ試されるのかもしれない。 その影響と結果は、収束後に明らかになるのだろう。 (葉上太郎、文春オンライン = 5-3-20)


島根県益田市が進めるスマートシティ化 推進体制強化で何が変わるのか

「ダブルトップ体制」で役割を分担

医療費の増大や都市化、過疎化、限界集落化などの社会課題を、ICT 技術の活用で解決/軽減することを目的にしたスマートシティ・プロジェクトが島根県益田市で進められている。 取り組みが始まったのは 2016 年。その後、2018 年 10 月に「社団法人益田サイバースマートシティ創造協議会 (MCSCC)」が設立されて取り組みが本格化し、現在では様々な実証実験が始まっている。

その MCSCC は、2020 年 4 月 1 日に人事異動を発表し、アーキテクトグランドデザイン (AGD) ファウンダーの豊崎禎久氏と元長崎市議の橋本剛氏の 2 名が代表理事に就任することを発表した。 これまで代表理事は 1 名体制だったが、これを 2 名体制に変更したことになる。 その目的は何なのか。さらには、益田市におけるスマートシティ・プロジェクトの現状や今後の展開などについて、代表理事に就任した豊崎氏と橋本氏に聞いた。

益田市のスマートシティ・プロジェクトの現状

- - 2020 年 4 月 1 日に、社団法人益田サイバースマートシティ創造協議会 (MCSCC) の代表理事に豊崎禎久氏と橋本剛氏の 2 名が就任しました。 まずは、益田市でのスマートシティ・プロジェクトの状況を教えてください。

豊崎 : 島根県益田市のスマートシティ・プロジェクトは、とても順調に進んでいます。 このスマートシティの特徴は「課題解決型」であることです。 従来のスマートシティの多くは、大都市(アーバン)が対象であり、テクノロジ・オリエンテッドな取り組みがほとんどでした。 このため、多くの取り組みが苦戦しているようです。 一方で益田市は人口がわずか 5 万人弱。 いわゆる田舎(ルーラル)です。 しかし、ルーラルであるからこそ、社会課題を抽出しやすい。 そうした社会課題に対して、最適なテクノロジを選んで適用し、解決していく。 これが MCSCC の基本的な考え方です。

現在、どのような実証実験を展開しているのか。 例えば、水害対策として、益田市内に張り巡らされた用水路の水位を測定する IoT (Internet of Things) システムを導入済みです。 リアルタイムに何カ所もの水位を測定し、そのデータを元に樋門を開閉することで水位を調整して浸水や冠水を未然に防ぐわけです。 水位計はバッテリーで駆動でき、測定結果は「LPWA (Low Power Wide Area)」と呼ぶ無線通信方式で近くの基地局に送ってから光ファイバ・ネットワーク経由でクラウド環境にアップします。

さらに益田市の壮年期の住民は血圧が高い傾向にあります。 そこで、IoT 機能が付いた血圧計を市民に配布し、測定した血圧データを収集して分析することで、個人の健康を見守る仕組みを導入しました。 収集したデータは、新しい血圧計などの開発にも役立てることが可能です。 このほか、市道の保守・管理に向けて、目視ではなく益田市が所有するパトロールカーにセンサーを 31 1個搭載してモニタリングするという実証実験にも着手しています。

- - このタイミングで代表理事を刷新した理由は何でしょうか。 さらに、2 名の代表理事という体制を採用した理由を教えてください。

豊崎 : そもそも前任者の又賀善茅氏は 2020 年 3 月末で任期満了であり、2020 年 4 月は新しい代表理事を選ぶ運びになっていました。 どう選ぶのかについては、今後、MCSCC が取り組まなければならない事業案件が数多くあります。 国との関係や、グローバル企業との協業、別の地方都市への展開、新しいテクノロジへの対応などなど。 それらを 1 人の代表理事だけでコントロールしていくには無理がある。 そこで「ダブルトップ体制」への移行を決断しました。

- - 豊崎氏と橋本氏の役割分担はどうなりますか。

豊崎 : 益田市において、これからスマートシティの構築をさらに進めて行くには、どうしても国とのやり取りが必要になります。 例えば、個人情報の扱いに関する法整備などです。 もちろん、我々が法律を作るわけではありませんが、法律作成の過程で「モノ」を申す必要があります。 さらに、国の助成金が必須なわけではないですが、現実的には助成金という形で支援してもらい、地方都市のインフラ整備を加速させることも 1 つの方策だと考えています。 そのためには、国の仕組みを良く分かっている人、すなわち農林水産省において官僚経験のある橋本さんに代表理事に就任していただくことが最適だと判断しました。

その一方で、我々が開発したスマートシティの仕組みをグローバルな都市に移植するビジネスの展開も検討しています。 このビジネスは国際競争を勝ち抜かなければなりません。 しかし、全員と戦っても勝ち目はない。 グローバルの中で、協業する相手を選び、そしてチームを編成しなければなりません。 それには「ハイテク環境」をよく理解している人材が必要になる。 そこで、もう 1 人の代表理事に私が就任したわけです。

橋本 : 私と豊崎さんのダブル体制を採ることで、私は国内を、豊崎さんはグローバルを担当し、私は政府の各省庁を、豊崎さんはロビイストの顔もあるので政治家を担当するといった明確な役割分担が可能になりました。

益田市は地方都市の「縮図」

- - 日本に数ある地方都市の中で、なぜ益田市を選んだのでしょうか。

豊崎 : 益田市は、調べれば調べるほど興味深い。 四季折々、自然が豊か。 市内には、2019 年 11 月より中国地方で先行公開されていた映画のタイトル「高津川」と同じ名前の清流が流れています(4 月 23 日時点では全国公開は延期されている)。

上流には環境に配慮した流水型ダム(穴あき)が設置されており、コンクリートで覆われた護岸が少ない。 従って、流域の雨量がしきい値を超えてしまうと、水害に見舞われてしまいます。 人口はわずか 5 万人弱。 少子高齢化が急ピッチに進んでおり、人口は減少する一方です。 このままでは、「消滅自治体」になってしまう危機感がある。 つまり課題が多く、日本の地方都市の「縮図」のような街だったのです。

2015 年 10 月 28 日にシマネ益田電子の会議室に、同社のエンジニアのほか、銀行や県庁/市役所の人たちを約 50 名集めてもらい、私が「課題解決型スマートシティ」のマスタープランを披露しました。 具体的には、益田市の将来はこうなる。 だからスマートシティを構築して、新しい街を作らなければならない。 そうすれば、人口を増やすのは難しいが、関係交流人口は増やせる。

北には石見銀山、南には津和野や萩といった全国的にも有名かつ魅力的な観光資源があります。 益田市にも数多くの室町時代の文化史跡・遺跡がありますが、残念ながら、観光ブランド力に乏しく、観光客はあまり訪れません。 しかし、歴史ある山陰地方にテクノロジのショーケースを作ることができれば、ビジネスや視察などで多くの人を集められると説いたわけです。

- - 益田市では、どのようにプロセスでスマートシティを構築していったのでしょうか。

豊崎 : まずは益田市の悩みをアンケートによって調査しました。 この第 1 回目の調査調作業には、橋本さんにも参加してもらいました。 この結果、水害という悩みを抽出できたのです。 街中に水路が張り巡らされているため、樋門を適切に調整しないと浸水や冠水が発生する。 水害は毎年発生しており、実際に市役所には市民から多くのクレームが来ていたと言います。

- - 水害という課題をどのように解決したのですか。

豊崎 : 課題が分かった時点ですでに、AGD とオムロン、慶応義塾大学大学院と共同で開発した IoT プラットフォームが完成していましたので、これを流用しました。 気圧センサーと LPWA 対応の通信機能を統合し、水位計に最適化したソフトウェアと筐体を 3 カ月程度で開発。 その後、すぐに島根県内の企業と共同で実証実験に着手しました。

- - もともとスマートシティのプロジェクトは長崎市で導入することを検討していたそうですが、なかなか始められなかった一方で、益田市では順調にスタートが切れました。 この違いは、何だと考えていますか。

橋本 : 長崎市は人口が約 41 万人で、全国的にみれば大都市です。 それだけに抱えている課題が多岐にわたり、それを的確に抽出するのが難しい。 一方の益田市は人口が 5 万人弱と少ないため、比較的簡単に課題を抽出できます。 このくらいの規模の地方都市から、IoT 技術を使った課題解決型スマートシティを構築するのが現実的でしょう。

実際に益田市でスマートシティの構築に携わっていると、大都市と地方都市の課題に大きな違いがあることに気づきます。 益田市が抱えている課題としてはまず、水害があり、その次に鳥獣害や高齢者対策などが続きます。 しかも高齢者対策の中身は大きく違う。 大都市では高齢者がギュッと集まって住んでいますが、益田市ではポツンポツンと離れて暮らしています。 そうした高齢者たちをいかにケアするのか。地方都市に特有の課題と言えるでしょう。

さらに人口減少で言えば、まばらに住んでいる人たちにどうやって行政サービスを提供していくかが大きな課題になります。 これは地方都市に共通した課題です。 こうした課題をひとつ一つ解決していくことで、益田市は大都市型ではなく、「地方都市型スマートシティの旗手」になることができると思います。 実は、私が農林水産省に勤務していたとき、まばらに住んでいる人たちに対する行政サービスの提供という課題にかかわっていました。 そのため、最初は少し応援するつもりで参加したのですが、気が付いたら代表理事に就任していたという具合です。

コスト削減が成功の必要十分条件

- - 日本では様々な企業が、大都市においてスマートシティの開発や導入に取り組んでいます。 益田市のスマートシティとの違いは何でしょうか。

豊崎 : 都市型のスマートシティは、資源やエネルギー、人手などの無駄を廃して、最適化や効率化を高めることで生産性を上げることが最大の目的です。 しかし、益田市のような地方都市では、人口が減っていくと同時に高齢者の割合がどんどん高まっていきます。 これはもう避けられません。 そうなると、従来のように担当者を貼り付けて行政サービスを提供していけるのか。 税収は減少していくので、正直なところ厳しいでしょう。

こうした条件の中で、住民の生活レベルを落とさないようにするにはどうすればいいのか。 1 つの解として、コンパクトシティの導入があります。 住民を 1 カ所に移住させて、そこで大都市のようにして暮らしてもらうわけです。 しかし実際には、今まで住んでいた土地を離れたくないという住民が少なくない。 そこでもう 1 つの解になるのがスマートシティです。 従来通り、住民には様々な場所に暮らしてもらい、デジタル・ネットワークを介して行政サービスを提供するわけです。 そもそも地方都市では投入できるリソースがどんどん少なくなっています。 その中で生活レベルを維持するには、スマートシティの導入は必要不可欠だと思います。

- - 地方都市におけるスマートシティは、そこには住む人たちの生活レベルを落とさないようにするための技術ということでしょうか。

豊崎 : もちろん、生活レベルをこれまで以上に高めることが理想です。 しかし、現実的には、生活レベルの維持や、生産性の維持が目標になるでしょう。

- - 税金で支える事業になるということでしょうか。

豊崎 : 都市型のスマートシティに比べれば、税金を使うタイプの事業が多くなると思います。 少なくとも、自治体が今までと同様の行政サービスを提供していくためには、国や自治体による一定の投資が必要でしょう。 しかし、これまでの益田市での取り組みは、民間投資だけで十分に賄えています。現在、国土交通省との間で補助金や助成金に関する話し合いを進めていますが、現時点ではまだ資金提供は一切受けていません。

- - なぜ民間投資だけで運営できているのでしょうか。

豊崎 : オムロン ヘルスケアなどから投資を受けているからです。 なぜ、投資してもらえるのか。 同社にとって益田市は、研究所の役割を果たしていることが最大の理由です。 益田市では、IoT 機能付き血圧計を高齢者に配布し、その測定データを日々収集しています。 実際に生活している高齢者の血圧データがリアルタイムで分かる。 こうしたデータは、島根大学医学部で医学的な研究に活用するほか、オムロン ヘルスケアでは血圧計の新規開発や改良に利用できます。 つまり、オムロン ヘルスケアは投資をしても、市民を対象とした研究費の中で回収できるわけです。

このほか、民間投資を受けると同時に、コストを最小限に抑える工夫も施しています。 具体的には、通信コストについてです。 通信事業者の携帯電話ネットワークを使って、血圧計で測定したデータを送信すると、通信事業者に利用料を支払わなければなりません。 これが重い。

そこで、この利用料をタダにするために LPWA を採用しました。 しかも幸いなことに益田市はテレビ放送の難視聴地域に指定されているため、市内全域に光ファイバ網が敷設されています。 これを利用したわけです。 具体的には、公民館などに基地局を設置し、各家庭から基地局に LPWA を使って血圧の測定データを送ります。 その後、光ファイバ網を利用してクラウド環境にデータを集めるわけです。 すでに国が構築していた通信インフラをうまく活用し、通信の仕組みを安価に作ったわけです。

- - 国のインフラ投資は必要不可欠ですか。

豊崎 : やはりインフラの整備には多くのお金がかかります。 このため防災や BCP (Business Continuity Plan : 事業継続計画)対策の観点で、国から支援を受けつつインフラを整備していくことは必須になるでしょう。

しかし、インフラ整備後にそれを管理・維持していくのは益田市の仕事ではなく、民間企業の仕事になるはずです。 そこで我々は、あくまで益田市の企業が中心となって特別目的会社 (SPC : Special Purpose Company) などを設立し、インフラの維持や行政サービスの展開を担うべきだと考えています。 その中で利用者からお金を集めることでマネタイズしていくわけです。 もちろん大きな利益を上げることが目的ではなく、最低限の行政サービスを維持することが目的です。

これまで行政サービスは、市の職員が一手に引き受けてきました。 しかし、そうした職員も高齢化し、退職していく。 その一方で、新しい職員をなかなか採用してもらえない。 益田市は平成の大合併で土地の面積は増え、島根県最大になりましたが、職員は減る一方です。 地方交付金も増えない。 従って、今後は民間企業や地域の方々が担っていかなければならない。 きっと無理なく続けられる事業モデルが存在するはずです。 それは何かを、現在探索しているところです。

- - 実際に、そうした事業モデルは作れると思いますか。

豊崎 : そう信じないとやっていけないでしょう (笑)。

実は、地元の NPO (Nonprofit Organization) に大きな可能性を感じており、頻繁にコミュニケーションをとっています。 益田市の方々は志が高く、たくさんの NPO が活動しています。 そうした NPO の代表者は、地域のことを真剣に考えています。 代表者たちを集めて議論してもらうと、新しいアイデアがどんどん出てくる。 このため、複数の NPO を束ねて新しい仕組みを作り、そこに地元企業などが参画して支援していく。 これが本当の意味での「自立できる仕組み」だと考えています。

日本は、他人任せの風潮が強い。 このためできることを実際に見せないと世の中は変わっていかない。 益田市が変われば、日本中で変わることができる地方都市が出てくるはずです。 日本人はモノマネが得意。 新しい事業モデルがうまく機能していることを見せれば、日本全国に広がっていく可能性が高いと思います。

「益田モデル」を日本各地の移植へ

- - 今後、益田市のモデルをどのように日本全国に展開していく計画ですか。

橋本 : 「益田モデル」と称して、順次、地方都市に移植していく予定です。 まずは熊本県八代市への移植を計画しています。 さらに愛媛県西条市も今後移植する計画に入っています。 私と豊崎さんの地元である長崎県についてもあきらめていません。 長崎市は大都市なので難しいですが、例えば平戸市や西海市などの小規模な都市、あるいは大都市内の離島のように小規模で完結した地域であれば適用しやすいでしょう。

- - なぜ次は、八代市や西条市なのでしょうか。

豊崎 : コアとなる人材をすでに確保できているからです。 八代市は、国内の電子柵市場で約 3 割の市場を抑えている末松電子製作所の代表取締役社長である末松謙一氏、西条市では石川智久氏がコアとなる人材です。 石川氏は、かつて理化学研究所で上級研究員を務め、がん治療や高齢者の個別化医療などの専門家です。 現在は西条市において、地方再興・個別化医療支援という NPO 法人を運営しています。

なぜコアとなる人材が必要なのか。 大企業を含めて、多くの人たちがスマートシティは儲かると考えているようです。 しかし、実際には今日明日には儲かりません。 少なくても 10 年の時間軸で考えなければならない。 従って、これだけ長い期間、粘り強く事業を牽引していくコア人材がどうしても必要になるわけです。

- - 八代市や西条市への移植には、どのくらいの時間がかかると考えていますか。

豊崎 : 八代市や西条市への移植には 2 - 3 年はかかるでしょう。 日本全国に「益田モデルがたくさん広がってきたなぁ」と感じるのは 10 年後ぐらいになると思います。 すでに根回しを始めています。 まずは与党とのコミュニケーションを始めており、実際に「早く移植を進めてほしい」という反応をいただいています。

- - 益田モデルをほかの地方都市に簡単に移植できるのでしょうか。

橋本 : 地方都市には、ベースとしての基本共通項があります。 しかし、地形や人々の気質などが違う。 その違いをコミュニケーションの段階で洗い出し、特異なものが浮かび上がれば、それに合わせて技術開発やサービス開発をしなければなりません。

豊崎 : イメージとしては、ジグソーパズルのピースを変えるという感じです。 その地方都市に合った最適なピースを埋め込んでいくわけです。

橋本 : 益田市は川がゆったり流れているので、下流の市内に水位計が必要になります。 一方で、長崎県内の都市は川の流れが急なため、川上で雨がドンと降れば下流で氾濫してしまいます。 そこで上流での降水量のセンシングが必要になります。 つまり、基本的な技術は同じですが、それに載せるものが変わってくるというイメージです。

- - 使用するセンサーや通信モジュールには同じものが使えるのでしょうか。

橋本 : 同じものを使う予定です。 そうすれば大量生産が可能になるので、コストを低減できるようになります。

豊崎 : 従って、各地方都市のエンジニアたちは、その地域に合わせたソフトウェアを開発することになるでしょう。 さらに、センサー・モジュールについても、その地域ごとに筐体をデザインすることで、見掛け上はオリジナルなものに変えることが可能になります。 データセンターはその地元に置く必要はないでしょう。 世界中に存在するサービスの中から、最もコストを・パフォーマンスが高いものを選んでアウトソーシングすればいい。 そうしてコスト・ミニマムにすることが肝要です。

インドネシアにも移植

- - 移植の対象は日本国内の地方都市だけでしょうか。

豊崎 : 海外への移植も並行して取り組んでいます。 具体的にはインドネシアへの移植を進めています。

移植する仕組みはジャパン・ブランドの「益田モデル」です。 しかし、インドネシアのような新興国では、スマートシティに対する要求がかなり異なります。 最大の関心事はクリーンテックです。 具体的には、太陽光発電などの再生可能エネルギーを中心としたマイクログリッドを構築し、電気自動車 (EV) を導入する仕組みを求めています。

インドネシアは新興国であり、日本に比べると生活水準が低い街がほとんどですが、観光地は世界水準にあり、かなり裕福なリゾート都市が少なくありません。 そうした都市に住む富裕層は、世界でも最先端クラスにある日本クオリティの医療を受けたいという希望があります。 従って、益田市で完成した遠隔医療診断やヘルスケアの仕組みを移植することに高い期待を持っています。 さらにインドネシアは、地震や津波、水害などの自然災害が多い場所です。 激しい雨が降れば、すぐに浸水や冠水に至る。 このため益田市で利用している水位計の仕組みを移植できるでしょう。

恐らく、インドネシアはクリーンテックを軸に益田モデルを組み合わせるという図式になると思います。 こうした図式は、なかなか日本の都市では実行できません。 このためインドネシアは、日本における益田市と同様に、クリーンテック+ヘルスケア+防災を組み合わせたスマートシティの新しいテストベッドになると捉えています。

- - LPWA やセンサーなど、現時点では最適な技術ですが、時間が経てばいずれも廃れてしまいます。 インフラを支える技術の移行について、どのように考えていますか。

豊崎 : LPWA に固執しているわけではありません。 テクノロジは常に進化するもの。基本概念だけを共通項にして、通信方式を含めてテクノロジは「プラグイン」にして利用しようと考えています。 ただし最上位に位置するデータセンター、すなわちストレージ装置はそう大きく変化しないでしょう。 このため通信網からストレージ装置へ、どのようなプロトコルで受け渡すのか。その API (Application Programming Interface) だけはきちんと規定しておきます。

通信方式についてはその都度、最適なものを選ぶつもりです。 そもそも益田市のスマートシティで LPWA を選択したのは、光ファイバ網がすでに敷設されていたからです。 ほかの地域では、通信事業者の携帯電話ネットワークを使うことになる可能性が高いので、「NB-IoT (Narrow Band IoT)」や「LTE Cat.M1」などを選択することになるでしょう。 さらに将来を見渡せば、BCP に注力した「IEEE802.15.4k」の採用も視野に入ってくると思います。

- - 通信インフラは、どの程度の期間で更新していく考えですか。

豊崎 : 携帯電話ネットワークは 3G から 4G に移行し、現在は 5G の導入が始まっています。 その更新期間(スパン)は約 10 年。 だからスマートシティの通信インフラの更新も約 10 年スパンになるでしょう。 10 年後には新しいテクノロジを適用したインフラ装置に入れ替える可能性が高い。 このためコストは最小限に抑えて、なるべく早く減価償却を終わらせたいと考えています。

以前、中国の大手通信機器メーカーの経営幹部が益田市の実証実験を視察に訪れ、我々が設置した LPWA 採用の水位計を見て「通信機器として非常識だ」という感想を漏らしました。 なぜならば、彼らの常識に照らし合わせると、水位計の取り付け方がとても貧弱だったからです。 彼らが言うには「防災用途であれば、まずは鉄塔を建てて、その上に通信機器を置くべきだ」と。 しかし、我々の方法でも十分な通信性能が確保できており、信頼性にも特に問題はない。 通信機器として低コスト化が徹底されていたわけです。 通信機器メーカーの常識から大きく外れていたため、彼らの目には脅威に映ったようです。

- - 益田市におけるスマートシティの構築について、今後の抱負をお聞かせください。

豊崎 : 日本が世界に先行して突き進んでいる超高齢化社会。 いずれ世界もこの課題に向き合うときがやってきます。 さらに世界は、地球規模の気候変動による気象災害の増加という新しい課題にも対処しなければなりません。 これらの課題を解決するサービスの中で、どのようなものがビジネスとして展開できるのか。 それは本来であれば国レベルで考えるべき事柄です。 しかし我々は、民間企業と地方自治体がタッグを組みことで課題を解決するサービスをビジネス化できることを証明しました。

これを国家の未来戦略に組み込んでいただきたいと考えています。 そして、益田市というテストベッドで生まれた仕組みを、日本の地方都市だけでなく、アジアなどの新興国にもプラットフォームとして展開して行きたいと思います。

益田市でのスマートシティ構築に多大なる支援をいただいた同市市長の山本浩章氏は、「益田は明治維新の火蓋が切られた街。 大村益次郎が率いる長州軍が、最初に幕府軍をうち破った近代夜明けの街を、IoT 夜明けの街にしたい」と語っています。 今後は、地域の課題を解決しながら、国の未来に真剣に貢献するという意気込みで、「課題解決型スマートシティ」の開発/構築に取り組んでいきます。 (山下勝己、MyNavi = 4-24-20)


隠岐の島に移住した医師 聖火ランで「やりがい伝える」

漁業や観光業が盛んな隠岐諸島の島後(どうご、島根県隠岐の島町)。 約 1 万 4 千人が暮らす町の高齢化率は 40% を超える。 人口は合併に伴って町が誕生した 2004 年から約 3,500 人減った。

聖火ランナーに選ばれた医師の松下耕太郎さん (59) は 2010 年にへき地医療を志し、広島市内の病院から、島にある二つの診療所の所長へと転身した。 きっかけは趣味で参加した「隠岐の島ウルトラマラソン」。  2 回目の参加となった 08 年大会の後、完走証とともに参加者全員に郵送されてきた文書に心が動かされた。 A4 判の用紙に「本町の医療は不安定で深刻な状況」、「後任医師の目処は立っていません」とあり、知り合いに医師がいたら紹介してほしいと結んでいた。

即断はできなかったが、大会への出場を続ける中で島への愛着も膨らみ、「代わりがいないへき地での医療に大きなやりがいがある」と、診療所の前任者がやめたのを機に移住を決断した。 同じ目線で話をしたいと、診療所では白衣より普段着が多い。 できる限り往診し、地域の集まりでは酒を酌み交わす。 ジョギング中に会った町民に体調をたずねることも忘れない。 「診療所より外で話す方が多い。 大根や白菜をくれてありがたいけど、持ったまま走るのは大変。」と笑う。 「全国の医師にへき地医療の現状ややりがいが伝わり、関心を持つ人が増えたらうれしい。」 そう願い、聖火をつなぐ。 (浪間新太、asahi = 3-4-20)